JP3724837B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、右前輪ブレーキおよび左後輪ブレーキに出力液圧を作用させ得る第1出力ポート、ならびに左前輪ブレーキおよび右後輪ブレーキに第1出力ポートとは独立して出力液圧を作用させ得る第2出力ポートを有し、マニュアル操作に応じた液圧を第1および第2出力ポートからそれぞれ出力可能な液圧発生手段を備える車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクチュエータの作動が正常であるときにアクチュエータを車輪ブレーキに接続する状態と、アクチュエータの作動が異常となったときに液圧発生手段としてのマスタシリンダを車輪ブレーキに接続する状態とを、切換弁により切換えるようにし、アクチュエータの作動異常時にマスタシリンダの出力液圧をフェイルセーフ用として用いるようにしたブレーキ装置が、たとえば特開平5−65060号公報等により既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものでは、アクチュエータの出力液圧をコントローラで自在に制御することができるので、車輪ブレーキのブレーキ力調整が容易である。しかるに、各四輪のブレーキ力をそれぞれ制御する自動ブレーキ制御およびブレーキ力の左右配分制御を行なうためには、各車輪ブレーキ毎にアクチュエータが必要である。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、一対のアクチュエータにより自動ブレーキ制御およびブレーキ力の左右配分制御を可能とした車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、右前輪ブレーキおよび左後輪ブレーキに出力液圧を作用させ得る第1出力ポート、ならびに左前輪ブレーキおよび右後輪ブレーキに第1出力ポートとは独立して出力液圧を作用させ得る第2出力ポートを有し、マニュアル操作に応じた液圧を第1および第2出力ポートからそれぞれ出力可能な液圧発生手段を備える車両用ブレーキ装置において、入力電気量に応じた液圧をそれぞれ出力可能な第1および第2アクチュエータと、右前輪ブレーキを第1出力ポートに接続するとともに右後輪ブレーキを第2出力ポートに接続した状態ならびに右前輪および右後輪ブレーキを第1アクチュエータに接続した状態を切換可能な第1切換弁手段と、左前輪ブレーキを第2出力ポートに接続するとともに左後輪ブレーキを第1出力ポートに接続した状態ならびに左前輪および左後輪ブレーキを第2アクチュエータに接続した状態を切換可能な第2切換弁手段とを含み、第1および第2アクチュエータのみの作動により、四輪のブレーキ力の左右配分制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、右後輪ブレーキおよび第1切換弁手段間、ならびに左後輪ブレーキおよび第2切換弁手段間には比例減圧弁がそれぞれ介設される。
【0007】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、第1切換弁手段は、右前輪ブレーキを第1出力ポートおよび第1アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な右前輪用切換弁と、右後輪ブレーキを第2出力ポートおよび第1アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な右後輪用切換弁とで構成され、第2切換弁手段は、左前輪ブレーキを第2出力ポートおよび第2アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な左前輪用切換弁と、左後輪ブレーキを第1出力ポートおよび第2アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な左後輪用切換弁とで構成される。
【0008】
さらに請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の構成に加えて、右前輪用切換弁および右前輪ブレーキ間ならびに右後輪用切換弁および右後輪ブレーキ間の一方には、第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータが介設され、左前輪用切換弁および左前輪ブレーキ間ならびに左後輪用切換弁および左後輪ブレーキ間の一方には、第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータが介設される。
【0009】
【実施例】
以下、図面により本発明をフロントエンジン・フロントドライブ車両のブレーキ装置に適用したときの一実施例について説明する。
【0010】
図1ないし図3は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の構成を示す図、図2は右前輪および右後輪ブレーキに対応するアクチュエータ、開閉弁および比例減圧弁の構成を示す断面図、図3は比例減圧弁の比例減圧特性図である。
【0011】
先ず図1において、このブレーキ装置は、マニュアル操作に応じた液圧を出力可能な液圧発生手段としてのマスタシリンダMと、入力電気量に応じた液圧をそれぞれ出力可能な第1および第2アクチュエータA1 ,A2 とを備える。
【0012】
マスタシリンダMはタンデム型のものであり、ブレーキペダル1のブレーキ操作力が負圧ブースタ2を介してマスタシリンダMに入力される。該マスタシリンダMは、右前輪ブレーキBFRおよび左後輪ブレーキBRLに出力液圧を作用させ得る第1出力ポート31 と、左前輪ブレーキBFLおよび右後輪ブレーキBRRに出力液圧を作用させ得る第2出力ポート32 とを備えるものであり、第1および第2出力ポート31 ,32 からはブレーキ操作力に応じた液圧が相互に独立して出力される。
【0013】
右前輪ブレーキBFR、左前輪ブレーキBFL、右後輪ブレーキBRRおよび左後輪ブレーキBRLは、第1および第2切換弁手段41 ,42 により、マスタシリンダMと、第1および第2アクチュエータA1 ,A2 とに切換えて接続される。
【0014】
第1切換弁手段41 は、右前輪ブレーキBFRを第1出力ポート31 に接続するとともに右後輪ブレーキBRRを第2出力ポート32 に接続するが右前輪ブレーキBFRおよび右後輪ブレーキBRRを第1アクチュエータA1 とは遮断する状態、ならびに右前輪ブレーキBFRを第1出力ポート31 から遮断するとともに右後輪ブレーキBRRを第2出力ポート32 から遮断するが右前輪ブレーキBFRおよび右後輪ブレーキBRRを第1アクチュエータA1 に接続した状態を切換可能なものである。また第2切換弁手段42 は、左前輪ブレーキBFLを第2出力ポート32 に接続するとともに左後輪ブレーキBRLを第1出力ポート31 に接続するが左前輪ブレーキBFLおよび左後輪ブレーキBRLを第2アクチュエータA2 とは遮断する状態、ならびに左前輪ブレーキBFLを第2出力ポート32 から遮断するとともに左後輪ブレーキBRLを第1出力ポート31 から遮断するが左前輪ブレーキBFLおよび左後輪ブレーキBRLを第2アクチュエータA2 に接続した状態を切換可能なものである。
【0015】
而して第1切換弁手段41 は、右前輪ブレーキBFRを第1出力ポート31 および第1アクチュエータA1 に択一的に切換えて接続可能な右前輪用切換弁5FRと、右後輪ブレーキBRRを第2出力ポート32 および第1アクチュエータA1 に択一的に切換えて接続可能な右後輪用切換弁5RRとで構成され、第2切換弁手段42 は、左前輪ブレーキBFLを第2出力ポート32 および第2アクチュエータA2 に択一的に切換えて接続可能な左前輪用切換弁5FLと、左後輪ブレーキBRLを第1出力ポート31 および第2アクチュエータA2 に択一的に切換えて接続可能な左後輪用切換弁5RLとで構成される。しかも各切換弁5FR,5RR,5FL,5RLは電磁切換弁である。
【0016】
右後輪用切換弁5RRおよび右後輪ブレーキBRR間には、右後輪用切換弁5RR側から順に、第1比例減圧弁61 および第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 が介設され、左後輪用切換弁5RLおよび左後輪ブレーキBRL間には、左後輪用切換弁5RL側から順に、第2比例減圧弁62 および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ72 が介設される。また第1アクチュエータA1 と右前輪用切換弁5FRおよび右後輪用切換弁5RRとの間には第1開閉弁81 が介設され、第2アクチュエータA2 と左前輪用切換弁5FLおよび左後輪用切換弁5RLとの間には第2開閉弁82 が介設される。
【0017】
図2を併せて参照して、第1アクチュエータA1 は、制御弁10と、リニアソレノイド11とから構成されるものである。
【0018】
制御弁10のハウジング12には、出力室13と、該出力室13との間に隔壁14を介在させた解放室15と、一端を該解放室15に連ならせた摺動孔16と、摺動孔16よりも大径にして該摺動孔16の他端に一端を同軸に連ならせるとともに他端を開放した作動室17とが設けられており、駆動ロッド18を備えるリニアソレノイド11は、駆動ロッド18を作動室17内に同軸に配置して作動室17の外端を塞ぐようにしてハウジング12に取付けられる。
【0019】
摺動孔16には、一端を解放室15に臨ませたスプール弁体19が摺動自在に嵌合され、解放室15内でスプール弁体19の一端および隔壁14間には戻しばね20が縮設される。而して該戻しばね20のばね力により、スプール弁体19はその他端を駆動ロッド18に常時当接させるように付勢される。
【0020】
隔壁14には、スプール弁体19よりも小径に形成された反力ピン21が液密にかつ摺動自在に貫通されており、出力室13に臨む反力ピン21の一端とハウジング12との間には、反力ピン21の他端をスプール弁体19の一端に常時当接させる程度の弱いばね力を発揮するばね22が縮設される。
【0021】
摺動孔16には、解放室15側の第1環状凹部23と、作動室17側の第2環状凹部24とが軸方向に間隔をあけて設けられ、第1および第2環状凹部23,24間で摺動孔16の内面に一端を開口させる連通路25がハウジング12に設けられ、該連通路25の他端は出力室13に連通される。またスプール弁体19には環状溝26が設けられており、該環状溝26は、スプール弁体19が図2で示すように後退位置に在るときには第2環状凹部24を連通路25に連通させるが第1環状凹部23を連通路25と遮断し、スプール弁体19が前進したときには第1環状凹部23を連通路25に連通させるが第2環状凹部24を連通路25とは遮断する。
【0022】
ハウジング12には、解放室15および第2環状凹部24にそれぞれ通じる第1および第2解放ポート27,28と、第1環状凹部23に通じる入力ポート29と、出力室13に通じる出力ポート30とが設けられ、図1で示すように、第1および第2解放ポート27,28はマスタシリンダMに付設されているリザーバRに連通され、入力ポート29は液圧供給源31に連通される。
【0023】
液圧供給源31は、前記リザーバRから作動液を汲上げるポンプ32と、該ポンプ32に接続されるアキュムレータ33と、アキュムレータ33の圧力を検出する圧力検出器34とを備え、常時一定の液圧を供給可能である。
【0024】
リニアソレノイド11は、図示しないコントローラから入力される電気量に応じた軸方向推力を駆動ロッド18からスプール弁体19に与えるものであり、スプール弁体19は、リニアソレノイド11からの前記軸方向推力で連通路25すなわち出力室13を第1環状凹部23すなわち入力ポート29に連通する方向に押圧されることになる。一方、スプール弁体19には、戻しばね20により前記軸方向推力に対抗するばね力が与えられるとともに、出力室13の液圧が反力ピン21に作用することにより反力ピン21からの反力が前記軸方向推力に対抗して与えられることになる。このようにして、スプール弁体19は、リニアソレノイド11の推力と、戻しばね20のばね力ならびに反力ピン21からの反力とが均衡するように、出力室13すなわち出力ポート30を第2環状凹部24すなわち第2解放ポート28に連通させる後退位置と出力ポート30を入力ポート29に連通させる前進位置との間で摺動孔16内を移動し、これにより出力ポート30からリニアソレノイド11の入力電気量に応じた制動液圧が出力されることになる。
【0025】
第1アクチュエータA1 の出力ポート30は、第1開閉弁81 を介して右前輪用切換弁5FRおよび右後輪用切換弁5RRに接続される。第1開閉弁81 の弁ハウジング36には、一端を閉じた大径摺動孔37と、大径摺動孔37よりも小径にして大径摺動孔37の他端に一端が同軸に連なる小径摺動孔38と、小径摺動孔38よりも小径にして小径摺動孔38の他端に一端が同軸に連なる弁孔39と、弁孔39の他端に連なる弁室40とが設けられており、弁孔39および弁室40間には、弁孔39の他端を中心部に開口させたテーパ状の弁座41が形成される。
【0026】
弁室40には右前輪用切換弁5FRおよび右後輪用切換弁5RRに接続される管路42が連結されており、該弁室40内には、弁座41に着座可能な球状の弁体43と、該弁体43を弁座41に着座せしめる方向に付勢するばね44とが収納される。
【0027】
大径摺動孔37には、大径摺動孔37の一端閉塞部との間にパイロット室45を形成して大径ピストン46が液密にかつ摺動自在に嵌合され、小径摺動孔38には、大径ピストン46に同軸にかつ一体に連設される小径ピストン47が液密にかつ摺動自在に嵌合される。しかも弁孔39には、ロッド48が遊挿されており、該ロッド48の一端は小径ピストン47に一体かつ同軸に連設あるいは同軸に当接され、ロッド48の他端は弁体43に当接可能である。また弁ハウジング36における大径摺動孔37および小径摺動孔38間の段部と、大径ピストン46との間にはばね49が縮設される。
【0028】
また弁ハウジング36には、第1アクチュエータA1 の出力ポート30に通じる通路50が設けられており、該通路50は、弁孔39の中間部内面に開口されるとともに、絞り51を介してパイロット室45に連通される。
【0029】
かかる構成の第1開閉弁81 にあっては、第1アクチュエータA1 の出力ポート30から所定値以上の液圧が出力されると、パイロット室45の液圧により大径ピストン46がばね49のばね力に抗してパイロット室45の容積を増大する側に移動し、ロッド48で弁体43が押されて弁座41から離反することにより開弁する。また第1アクチュエータA1 の出力ポート30からの出力液圧が所定値未満であるときには、ばね49のばね力により大径ピストン46がパイロット室45の容積を減少させる側に移動し、弁体43を弁座41に着座させるようにロッド48が移動して、第1開閉弁81 が閉弁することになる。しかも絞り51により通路50の液圧低下に対してパイロット室45の液圧低下を遅らせることができ、第1開閉弁81 は通路50の液圧が充分に低下してから閉弁することになり、弁室40での残圧の発生はない。
【0030】
第1比例減圧弁61 のハウジング52には、一端を閉じたシリンダ孔53と、該シリンダ孔53の他端に同軸に一端が同軸に連なるとともに他端が閉塞された大径孔54とが設けられ、シリンダ孔53には、該シリンダ孔53の一端閉塞部との間に出力液圧室55を形成して受圧ピストン56が摺動自在に嵌合される。また受圧ピストン56に設けられた小シリンダ孔57には、バルブ移動ピストン58が摺動自在に嵌合され、バルブ移動ピストン58および受圧ピストン56間には入力液圧室59が形成される。而してハウジング52には、右後輪用切換弁5RRに接続された入力ポート60と、第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 に接続される出力ポート61とが設けられており、入力ポート60は入力液圧室59に連通され、出力ポート61は出力液圧室55に連通される。
【0031】
受圧ピストン56の出力液圧室55側端部には、出力液圧室55に通じる弁孔62と、該弁孔62を中心部に開口させて入力液圧室59に臨むテーパ状の弁座63とが同軸に設けられており、入力液圧室59内には、弁座63に着座可能な弁体64が収納され、弁体64およびバルブ移動ピストン58間には閉じばね65が縮設される。しかも弁体64には、弁孔62に遊嵌される開弁ロッド66が一体に突設される。
【0032】
弁体64にはコネクタ67の一端が取付けられる。このコネクタ67の他端側には、バルブ移動ピストン58に一体に連設されたストッパ68が、弁体64から離反する方向に移動したときにコネクタ67に係合可能として挿通される。
【0033】
受圧ピストン56の出力液圧室55と反対側の端部には止め輪69が嵌着されるとともに、止め輪69よりも出力液圧室55側で該止め輪69に対向する段部70が設けられており、入力液圧室59とは反対側からバルブ移動ピストン58に係合する座金71の受圧ピストン56に対する軸方向相対移動が前記止め輪69および段部70で規制される。
【0034】
また大径孔54の他端閉塞部および受圧ピストン56間には第1調圧ばね72が縮設され、大径孔54の他端閉塞部および座金71間には第1調圧ばね72よりもばね荷重の小さな第2調圧ばね73が縮設される。
【0035】
このような第1比例減圧弁61 の比例減圧作動を説明するにあたって、シリンダ孔53の横断面積をA1 、受圧ピストン56における小シリンダ孔57の横断面積をA2 、弁孔62の弁座63への開口端横断面積をA3 、第1および第2調圧ばね72,73の設定荷重をFS 、入力ポート60への入力液圧をPI 、出力ポート61からの出力液圧をPO とする。
【0036】
而してPI ≦FS /(A1 −A2 )の状態では、第1比例減圧弁61 は開弁したままであり、PI =PO である。したがって図3の実線で示す直線L1 のように、出力液圧PO は入力液圧PI の変化に比例して変化することになる。
【0037】
入力液圧PI が増大して、PI >FS /(A1 −A2 )となると、受圧ピストン56は、第1および第2調圧ばね72,73を圧縮して出力液圧室55の容積を増大する側に移動する。一方、バルブ移動ピストン58は、大径孔54の他端閉塞部に当接した状態にあって移動することはなく、弁体64はその開弁ロッド66をシリンダ孔53の一端閉塞部に当接させる位置に閉じばね65により保持されている。したがって弁体64が弁座63に着座して弁孔62が閉じられることになるが、入力液圧PI がさらに増加すると、受圧ピストン56は出力液圧室55の容積を縮小する側に移動して、弁体64が弁座63から離反して弁孔62を開放することになり、このような受圧ピストン56の軸方向移動により、入力液圧PI を比例的に減圧した出力液圧PO が得られることになる。すなわち、PI >FS /(A1 −A2 )の状態では、 PO =FS /(A1 −A2 )+PI ×{(A2 −A3 )/(A1 −A3 )} となり、図3の実線で示す直線L2 のように、出力液圧PO は入力液圧PI を一定比率{(A2 −A3 )/(A1 −A3 )}で減少した値となる。
【0038】
左前輪ブレーキBFLおよび左後輪ブレーキBRLに対応する第2アクチュエータA2 、第2開閉弁82 および第2比例減圧弁62 は、上記右前輪ブレーキBFRおよび右後輪ブレーキBRRに対応する第1アクチュエータA1 、第1開閉弁81 および第1比例減圧弁61 と同様に構成される。
【0039】
図1に特に注目して、第1比例減圧弁61 および右後輪ブレーキBRR間に介設される第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 は、第1比例減圧弁61 および右後輪ブレーキBRR間に介設される常開型電磁弁751 と、右後輪ブレーキBRRおよび第1リザーバR1 間に介設される常閉型電磁弁761 と、右後輪ブレーキBRRから第1比例減圧弁61 側への作動液の流通を許容して常開型電磁弁751 に並列に接続されるチェック弁771 とで構成され、第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ72 は、第2比例減圧弁62 および左後輪ブレーキBRL間に介設される常開型電磁弁752 と、左後輪ブレーキBRLおよび第2リザーバR2 間に介設される常閉型電磁弁762 と、左後輪ブレーキBRLから第2比例減圧弁62 側への作動液の流通を許容して常開型電磁弁752 に並列に接続されるチェック弁772 とで構成される。
【0040】
第1リザーバR1 には吸入弁781 を介して第1戻しポンプ791 の吸入口が接続されており、第1戻しポンプ791 の吐出口は吐出弁801 を介して、マスタシリンダMにおける第2出力ポート32 に接続される。また第2リザーバR2 には吸入弁782 を介して第2戻しポンプ792 の吸入口が接続され、第2戻しポンプ792 の吐出口は吐出弁802 を介して、マスタシリンダMの第1出力ポート31 に接続される。
【0041】
次にこの実施例の作用について説明すると、ブレーキペダル1を踏込み操作した通常のブレーキ時には、第1および第2切換弁手段41 ,42 ならびに第1および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 ,72 は図1で示す状態に在る。すなわち第1切換弁手段41 は、右前輪ブレーキBFRをマスタシリンダMの第1出力ポート31 に接続するとともに右後輪ブレーキBRRをマスタシリンダMの第2出力ポート32 に接続した状態に在り、第2切換弁手段42 は、左前輪ブレーキBFLを第2出力ポート32 に接続するとともに左後輪ブレーキBRLを第1出力ポート31 に接続した状態に在り、第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 は第1比例減圧弁61 を右後輪ブレーキBRRに接続した状態に在り、第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ72 は第2比例減圧弁62 を左後輪ブレーキBRLに接続した状態に在る。したがって、このときのブレーキ配管状態は、所謂X配管状態である。
【0042】
この状態では、ブレーキペダル1の踏込み操作によってマスタシリンダMの第1出力ポート31 から出力される液圧は、右前輪ブレーキBFRに直接作用するとともに左後輪ブレーキBRLに第2比例減圧弁62 で減圧されて作用し、第2出力ポート32 から出力される液圧は、左前輪ブレーキBFLに直接作用するとともに右後輪ブレーキBRRに第1比例減圧弁61 で減圧されて作用する。
【0043】
この際、第1切換弁手段41 の右前輪用および右後輪用切換弁5FR,5RR、ならびに第2切換弁手段42 の左前輪用および左後輪用切換弁5FL,5RLでシール不良等が在っても、第1および第2アクチュエータA1 ,A2 が非作動状態にあって第1および第2開閉弁81 ,82 が閉弁状態に在るので、各車輪ブレーキBFR,BRR,BFL,BRLまたはマスタシリンダMから第1および第2アクチュエータA1 ,A2 側に作動液が漏出してしまうことはない。
【0044】
このようなブレーキ時に、四輪の各制動力を配分制御する際には、第1切換弁手段41 により右前輪ブレーキBFRおよび右後輪ブレーキBRRが第1アクチュエータA1 に接続され、第2切換弁手段42 により左前輪ブレーキBFLおよび左後輪ブレーキBRLが第2アクチュエータA2 に接続される。したがって第1および第2アクチュエータA1 ,A2 への入力電気量を個別に制御することにより、制動力の左右配分制御が可能となる。しかも右後輪ブレーキBRRおよび左後輪ブレーキBRLに作用する液圧は、第1および第2比例減圧弁61 ,62 の比例減圧特性で定まる値まで減圧されるものであり、第1および第2比例減圧弁61 ,62 によって制動力の前後配分が定まることになる。
【0045】
またブレーキ時に車輪がロックする可能性が生じたときのアンチロックブレーキ制御時に、第1切換弁手段41 では、右前輪用切換弁5FRが右前輪ブレーキBFRを第1アクチュエータA1 に接続した状態となり、また右後輪用切換弁5RRは第1比例減圧弁61 をマスタシリンダMの第2出力ポート32 に接続した状態となり、第2切換弁手段42 では、左前輪用切換弁5FLが左前輪ブレーキBFLを第2アクチュエータA2 に接続した状態となり、左後輪用切換弁5RLが第2比例減圧弁62 をマスタシリンダMの第1出力ポート31 に接続した状態となる。したがって、第1および第2アクチュエータA1 ,A2 への入力電気量を個別に制御することにより、右および左前輪ブレーキBFR,BFLの制動力を個別に制御することができる。さらに第1および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 ,72 を個別に制御することにより、右および左後輪ブレーキBRR,BRLの制動力を個別に制御することができる。すなわち、各四輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能となる。
【0046】
ブレーキペダル1を踏込み操作していない非ブレーキ操作時に、前方の車両との衝突の可能性判断等により自動ブレーキ制御を行なう際には、ブレーキ時の制動力配分制御と同様に、第1切換弁手段41 により右前輪ブレーキBFRおよび右後輪ブレーキBRRが第1アクチュエータA1 に接続され、第2切換弁手段42 により左前輪ブレーキBFLおよび左後輪ブレーキBRLが第2アクチュエータA2 に接続される。これにより第1および第2アクチュエータA1 ,A2 への入力電気量を制御して、各車輪ブレーキBFR,BRR,BFL,BRLで制動力を発揮させることが可能となる。しかもこの自動ブレーキ時にも、制動力の左右配分制御ならびに制動力の前後配分制御が可能である。
【0047】
さらに非ブレーキ操作時のトラクション制御にあたっては、第1切換弁手段41 における右前輪用切換弁5FRによって駆動輪ブレーキである右前輪ブレーキBFRが第1アクチュエータA1 に接続され、第2切換弁手段42 における左前輪用切換弁5FLによって駆動輪ブレーキである左前輪ブレーキBFLが第2アクチュエータA2 に接続される。これにより第1および第2アクチュエータA1 ,A2 への入力電気量を個別に制御して、右および左車輪ブレーキBFR,BFLで相互に独立した制動力をそれぞれ発揮させることが可能であり、制動力による左、右独立のトラクション制御が可能となる。
【0048】
ところで、上記実施例では、フロントエンジン・フロントドライブ車両であることに伴ってトラクション制御時に第1および第2アクチュエータA1 ,A2 を右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFRに接続するようにしたが、リヤドライブ車両の場合には、第1および第2アクチュエータA1 ,A2 を右後輪ブレーキBRRおよび左後輪ブレーキBRLに接続するようにすればよい。また第1および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ71 ,72 が右前輪用切換弁5FRおよび右前輪ブレーキBFR間、ならびに左前輪用切換弁5FLおよび左前輪ブレーキBFL間にそれぞれ介設されていてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、右前輪ブレーキおよび左後輪ブレーキに出力液圧を作用させ得る第1出力ポート、ならびに左前輪ブレーキおよび右後輪ブレーキに第1出力ポートとは独立して出力液圧を作用させ得る第2出力ポートを有し、マニュアル操作に応じた液圧を第1および第2出力ポートからそれぞれ出力可能な液圧発生手段を備える車両用ブレーキ装置において、入力電気量に応じた液圧をそれぞれ出力可能な第1および第2アクチュエータと、右前輪ブレーキを第1出力ポートに接続するとともに右後輪ブレーキを第2出力ポートに接続した状態ならびに右前輪および右後輪ブレーキを第1アクチュエータに接続した状態を切換可能な第1切換弁手段と、左前輪ブレーキを第2出力ポートに接続するとともに左後輪ブレーキを第1出力ポートに接続した状態ならびに左前輪および左後輪ブレーキを第2アクチュエータに接続した状態を切換可能な第2切換弁手段とを含み、第1および第2アクチュエータのみの作動により、四輪のブレーキ力の左右配分制御を行うようにしたので、一対のアクチュエータを有する簡単な構成により四輪の自動ブレーキ制御は勿論のこと、ブレーキ力の左右配分制御が可能となり、特にブレーキ力の左右配分制御にあたっては旋回時に、第1および第2アクチュエータを作動することにより、車輪の荷重が増加する側ならびに減少する側の各前後輪ブレーキを一括して制御可能であるから、ブレーキ力の左右配分制御を簡単、的確に行うことができる。しかも、第1および第2アクチュエータが作動しない状態では、マスタシリンダの第1ポートの出力液圧を右前輪ブレーキおよび左後輪ブレーキに作用させ、同第2ポートの出力液圧を左前輪ブレーキおよび右後輪ブレーキに作用させ得るX配管状態を確保することができる。
【0051】
また請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、右後輪ブレーキおよび第1切換弁手段間、ならびに左後輪ブレーキおよび第2切換弁手段間には比例減圧弁がそれぞれ介設されるので、比例減圧弁による制動力の前後配分により、四輪のブレーキ力配分制御が可能となる。
【0052】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、第1切換弁手段は、右前輪ブレーキを第1出力ポートおよび第1アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な右前輪用切換弁と、右後輪ブレーキを第2出力ポートおよび第1アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な右後輪用切換弁とで構成され、第2切換弁手段は、左前輪ブレーキを第2出力ポートおよび第2アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な左前輪用切換弁と、左後輪ブレーキを第1出力ポートおよび第2アクチュエータに択一的に切換えて接続可能な左後輪用切換弁とで構成されるので、駆動輪ブレーキの液圧を第1および第2アクチュエータで個別に制御して、制動力による左、右独立のトラクション制御が可能となる。
【0053】
さらに請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の構成に加えて、右前輪用切換弁および右前輪ブレーキ間ならびに右後輪用切換弁および右後輪ブレーキ間の一方には、第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータが介設され、左前輪用切換弁および左前輪ブレーキ間ならびに左後輪用切換弁および左後輪ブレーキ間の一方には、第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータが介設されるので、四輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車両用ブレーキ装置の構成を示す図である。
【図2】 右前輪および右後輪ブレーキに対応するアクチュエータ、開閉弁および比例減圧弁の構成を示す断面図である。
【図3】 比例減圧弁の比例減圧特性図である。
【符号の説明】
31 第1出力ポート
32 第2出力ポート
41 第1切換弁手段
42 第2切換弁手段
5FL 左前輪用切換弁
5FR 右前輪用切換弁
5RL 左後輪用切換弁
5RR 右後輪用切換弁
61 ,62 比例減圧弁
71 第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ
72 第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ
A1 第1アクチュエータ
A2 第2アクチュエータ
BFL 左前輪ブレーキ
BFR 右前輪ブレーキ
BRL 左後輪ブレーキ
BRR 右後輪ブレーキ
M 液圧発生手段としてのマスタシリンダ
Claims (4)
- 右前輪ブレーキ(BFR)および左後輪ブレーキ(BRL)に出力液圧を作用させ得る第1出力ポート(31 )、ならびに左前輪ブレーキ(BFL)および右後輪ブレーキ(BRR)に第1出力ポート(31 )とは独立して出力液圧を作用させ得る第2出力ポート(32 )を有し、マニュアル操作に応じた液圧を第1および第2出力ポート(31 ,32 )からそれぞれ出力可能な液圧発生手段(M)を備える車両用ブレーキ装置において、入力電気量に応じた液圧をそれぞれ出力可能な第1および第2アクチュエータ(A1 ,A2 )と、右前輪ブレーキ(BFR)を第1出力ポート(31 )に接続するとともに右後輪ブレーキ(BRR)を第2出力ポート(32 )に接続した状態ならびに右前輪および右後輪ブレーキ(BFR,BRR)を第1アクチュエータ(A1 )に接続した状態を切換可能な第1切換弁手段(41 )と、左前輪ブレーキ(BFL)を第2出力ポート(32 )に接続するとともに左後輪ブレーキ(BRL)を第1出力ポート(31 )に接続した状態ならびに左前輪および左後輪ブレーキ(BFL,BRL)を第2アクチュエータ(A2 )に接続した状態を切換可能な第2切換弁手段(42 )とを含み、第1および第2アクチュエータ(A 1 ,A 2 )のみの作動により、四輪のブレーキ力の左右配分制御を行うようにしたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
- 右後輪ブレーキ(BRR)および第1切換弁手段(41 )間、ならびに左後輪ブレーキ(BRL)および第2切換弁手段(42 )間には比例減圧弁(61 ,62 )がそれぞれ介設されることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ装置。
- 第1切換弁手段(41 )は、右前輪ブレーキ(BFR)を第1出力ポート(31 )および第1アクチュエータ(A1 )に択一的に切換えて接続可能な右前輪用切換弁(5FR)と、右後輪ブレーキ(BRR)を第2出力ポート(32 )および第1アクチュエータ(A1 )に択一的に切換えて接続可能な右後輪用切換弁(5RR)とで構成され、第2切換弁手段(42 )は、左前輪ブレーキ(BFL)を第2出力ポート(32 )および第2アクチュエータ(A2 )に択一的に切換えて接続可能な左前輪用切換弁(5FL)と、左後輪ブレーキ(BRL)を第1出力ポート(31 )および第2アクチュエータ(A2 )に択一的に切換えて接続可能な左後輪用切換弁(5RL)とで構成されることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ブレーキ装置。
- 右前輪用切換弁(5FR)および右前輪ブレーキ(BFR)間ならびに右後輪用切換弁(5RR)および右後輪ブレーキ(BRR)間の一方には、第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ(71 )が介設され、左前輪用切換弁(5FL)および左前輪ブレーキ(BFL)間ならびに左後輪用切換弁(5RL)および左後輪ブレーキ(BRL)間の一方には、第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ(72 )が介設されることを特徴とする請求項3記載の車両用ブレーキ装置。
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