JP3754284B2 - コンクリート養生シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートダム等のマッシブなコンクリート構造物や、橋梁スラブ、橋脚等一般的なコンクリート構造物の鉛直面及び水平面の構築に好適な、コンクリート湿潤養生用マットに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート工事においては、如何にして高品質のコンクリート構造物を構築するかが重大な課題である。このため、コンクリート打設後の乾燥収縮ひび割れと水分逸散による若材齢時の強度発現の遅延を防止する方法が採られている。かかる方法としては、材齢7日程度、コンクリート表面を湿潤状態に保つための工夫がなされている。
【0003】
ダムにおいては、水平打ち継ぎ面に対しては打設直後から、上流面に対しては型枠スライド直後から、いずれも長期間散水養生を行っている。
【0004】
また、橋梁のスラブ等に対する湿潤養生には、一般的なコンクリート用養生マットを用い、散水を併用している。
【0005】
しかし、かかるひび割れ対策は、以下のような問題点があった。
ダムにおいては、長期間、散水養生するために、多量の養生水を必要とするので、高アルカリの濁水の排出が多量に発生し、中和等の濁水処理に多大な経費を要する。
【0006】
また、一般的なコンクリート用の養生マットは、一定もしくは不定期に散水を併用するので、散水量の確保が難しく、散水量が少ないと、乾燥が早くなり、十分な湿潤養生ができない。しかも、かかる養生マットは、散水を併用するので、コンクリート側面の湿潤養生の必要性が高いにもかかわらず、施工上、設置するのが困難で、養生できないのが実状である。
【0007】
このため、比較的簡便な保水養生マットがある。かかる保水養生マットでは、発泡ウレタンのシートに水を含ませるものや、コンクリート中の水分を蒸発させないようにする断熱養生マットの片側に、湿潤用マットが設けてあるもの(特開平6−285832号公報明細書)等が考えられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者は、特開平6−285832号公報明細書記載のコンクリート養生用マットでは、スポンジや、織布等の繊維自体が吸水する保水部材等を用いるために、保水養生マットの設計や作製が複雑になって、施工性に劣ることを見出した。
【0009】
かかる保水部材では、離水の速度が速いため、コンクリートに必要な養生時間を確保するために、外側の断熱養生マットにより、保水部材の離水が遅くなるように設計されなければならない。
【0010】
本発明は、コンクリートを養生するための湿潤材の膨潤形状を制御し、コンクリート面との密着性に優れ、長期間に亘って水分を保持できる、コンクリート養生シートを得ることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コンクリート表面に敷設され、コンクリート表面の減少した分の水分を補給し、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する、コンクリート養生シートであって、前記コンクリート養生シートが、基材シートと、前記基材シートの前記コンクリート表面に敷設される側に固定されている複数の突出体とを備えており、前記各突出体の間に空間が形成されており、前記各突出体が2〜20mmの幅を有しており、前記各突出体が、二次元的に配列されており、前記各突出体が、水を吸収することによって膨潤する湿潤材から形成されており、前記コンクリート養生シートを前記コンクリート表面に敷設する際、前記各突出体が、水を吸収することで膨潤し、前記各突出体の側面が前記各空間内に膨出し、前記各空間が狭められ、前記コンクリート養生シートが平板状を保持し、前記各突出体の表面がコンクリート表面に接触し、前記各突出体が前記コンクリート表面に水分を補給することを特徴とする、コンクリート養生シートに係るものである。
【0012】
また、本発明は、コンクリート表面に敷設され、コンクリート表面の減少した分の水分を補給し、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する、コンクリート養生シートであって、前記コンクリート養生シートが、基材シートと、前記基材シートの前記コンクリート表面に敷設される側に固定されている複数の突出体とを備えており、前記各突出体の間に空間が形成されており、前記各突出体が2〜20mmの幅を有する長尺体であり、前記各突出体が、水を吸収することによって膨潤する湿潤材から形成されており、前記コンクリート養生シートを前記コンクリート表面に敷設する際、前記各突出体が、水を吸収することで膨潤し、前記各突出体の側面が前記各空間内膨出し、前記各空間が狭められ、前記コンクリート養生シートが平板状を保持し、前記各突出体の表面がコンクリート表面に接触し、前記各突出体が前記コンクリート表面に水分を補給することを特徴とする、コンクリート養生シートに係るものである。
【0013】
本発明者は、コンクリートを効率的に保水養生するため、種々のコンクリート養生マットを試作し、検討した。
【0014】
その結果、本発明者は、特開平6−285832号公報明細書記載のコンクリート養生用マットで、スポンジや、織布及び不織布等の繊維状の保水部材に替えて、高分子吸収剤を含有するポリマーを用いると、吸水時間が遅くなり、離水時間が極端に遅くなることを知見した。
【0015】
本発明者が検討したところ、かかる高分子吸収剤を含むポリマーは、水分の吸収にはある程度の時間がかかるが、水分の放出が極端に少ないことを見出した。
【0016】
かかる知見の下、本発明者が詳細に検討したところ、かかるポリマーは、コンクリートを十分に養生するのに必要な保水性能を単独で有し、防水シートを必要としないため、コンクリート養生用の湿潤材として極めて優れることを突き止めた。
【0017】
しかし、本発明者が更に検討を進めたところ、本発明者は、かかる高分子吸収剤を含んだポリマーが、水分を吸収すると体積を極端に増加し、平坦だった表面も、不規則に膨潤するために、皺が付いたように凹凸状になってしまうことを知見した。
【0018】
つまり、かかるポリマーは、水を吸収して三次元的に膨潤するが、吸水前の初期の面積に比べ、吸水後の面積が極端に広くなってしまい、養生シートを敷き詰めても、突き合わせがバラバラになって、養生シートの敷設初期の状態を保つことができないのである。
【0019】
かかる湿潤材が吸水すると、三次元的に膨張するため、養生シートが平板状を保持できなくなり、コンクリート表面と離れてしまう。
【0020】
かかる知見の下、本発明者は、湿潤材の膨潤形状を制御し、長期間に亘って水分を保持できる、コンクリート養生シートを得るため、種々の保水養生シートを試作し、検討した。
【0021】
その結果、本発明者は、かかる湿潤材を複数の独立した形とし、二次元的に配列することで、かかる湿潤材の膨潤形状を制御でき、コンクリート養生性能が高められることを突き止め、本発明に到達した。
【0022】
本発明では、「二次元的に配列する」とは、少なくとも2つの軸の方向に向かって配列することをいう。
【0023】
本発明のコンクリート養生シートは、水の吸収によって膨潤する湿潤材を複数の突出体として、基材シートのコンクリート表面に敷設される側に固定される。
【0024】
かかる各突出体は、それらの間に空間が形成されており、2〜20mmの幅を有しており、二次元的に配列されている。
【0025】
また、本発明にかかる突出体は、長尺体であることができる。本発明では、「長尺体」とは、通常の細長いものの意味で用い、幅に対する長さが1:2以上のものをいう。
【0026】
本発明では、コンクリート養生シートは、その突出体の側が、養生すべきコンクリート表面に敷設される。その際、本発明にかかる各突出体は、水を吸収することによって膨潤し、各突出体の側面が各突出体の間の空間内に膨出し、これらの各空間が狭められる。
【0027】
かかる湿潤材がこのように横に膨張しても、本発明では、コンクリート養生シートとしては微小な変化量として捉えることができる。結果的に、本発明では、かかる湿潤材の厚み方向へのみの膨張が、コンクリート養生シートの初期の形態を変化させる。
【0028】
また、本発明では、かかる湿潤材は、水分を吸収して膨張しても、皺のような凹凸状に変化しないので、コンクリート養生シートは、突き合わせが乱れたりすることなく、保水前の初期の敷設形態を保持することができる。
【0029】
本発明のコンクリート養生シートによれば、湿潤材から形成される各突出体の側面が、水を吸収して膨潤する際、各突出体の間の空間を狭めるように膨出し変形するので、突出体の不均一な膨潤が抑制され、コンクリート養生シートの保水による変形が防止され、コンクリート養生シートとコンクリート面との密着性が著しく高められ、コンクリートを長期間に亘って十分に養生することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明を実施の形態によって説明する。
本発明のコンクリート養生シートは、コンクリート表面に敷設され、コンクリートを湿潤状態に保ち養生するものである。
【0031】
本発明にかかる基材シートは、特に限定されることなく、種々の材質からなるシートを用いることができる。
【0032】
かかる基材シートの材質としては、水分の蒸散抑制効果を得るために、空隙の無いシート状の基材を用いることができる。
【0033】
また、本発明では、基材シートとして、非通気性の膜と不織布又は織布との積層体からなるシートを用いることができる。かかる基材シートは、強度の必要な養生箇所にも適用でき、ポリエチレンフィルム等よりも一層高い強度を有する。
【0034】
かかる非通気性の膜には、種々のメンブレンを用いることができる。また、かかる基材シートとしては、例えば、ターポリン(商品名)のような繊維入りの強化塩化ビニルシートも含まれる。
【0035】
本発明は、かかる基材シートの片側に、保湿効果のための湿潤材を突出体として一定間隔で配置したものである。
【0036】
コンクリート躯体は、材齢を重ねるにつれて、その表面の水分が奪われるが、水分を吸収した湿潤材からコンクリート表面の減少した分の水分を補給しようとするものである。
【0037】
しかし、前述のように、かかる湿潤材を全面に配した保水養生シートは、湿潤材の不均一な膨張によって、養生シートを変形させる。そのため、本発明では、湿潤材を養生シートの平面方向に連続させずに、独立させ、一定間隔で離間させて配列する。
【0038】
このため、本発明では、かかる基材シートのコンクリート表面に敷設される側に、複数の突出体の形状で、湿潤材を二次元的に配列し固定する。
【0039】
かかる突出体は、水を吸収することによって膨潤する湿潤材から形成されている。かかる湿潤材は、種々の高分子吸収材を含有するポリマーを用いることができる。かかる湿潤材は、水分を吸収し、吸収した水分を緩徐に放出する。
【0040】
理想的には、かかる湿潤材は、コンクリート躯体から減少しただけの水分を供給することが望ましい。
【0041】
湿潤材が一度に過剰の水分(水滴)を供給しても、余剰水はコンクリート面から蒸発し、コンクリートを養生するのに無駄が多い。
【0042】
湿潤材によるコンクリートへの長期間の水分供給を期待するなら、水分の吸収にある程度時間がかかっても、水分の放出が少ない湿潤材が望ましい。
【0043】
一般的に、高分子吸収剤と言われる薬品を配合したポリマーが、上記機能を有している。
【0044】
かかる高分子吸収剤としては、架橋ポリエチレンオキサイド等の、ポリエチレンオキサイド系高分子吸収剤を用いることができる。
【0045】
本発明では、ポリマーは、かかる高分子吸収剤が配合される母剤として働く。かかるポリマーとしては、クロロプレンゴム又はハイパロンゴム等を主体としたゴム系と、ポリ塩化ビニル系と、ポリウレタン系等の二液反応型及び湿気硬化型等のものを用いることができる。
【0046】
かかる突出体は、互いに離間しており、各突出体の間に空間が形成される。かかる空間は、コンクリート養生シートをコンクリート表面に敷設する際、各突出体の側面が膨出するためのものであり、各突出体の側面の膨出部によって狭められる。
【0047】
本発明にかかる突出体は、2〜20mmの幅を有している。かかる範囲の幅であれば、湿潤材が水を吸収しても、コンクリート養生シートが極端に変形することがない。好ましくは、かかる突出体の幅は、4〜10mmである。
【0048】
本発明では、かかる突出体は、種々の形状に形成することができる。例えば、複数個の島状体又は複数本の長尺体として、基材シートのコンクリート接触面に配列することができる。
【0049】
前述の突出体の幅は、突出体を島状体とする場合、最大幅を意味し、また、突出体を長尺体とする場合は、短辺側の長さを意味する。
【0050】
突出体を島状体とする場合、かかる突出体を上から見て、円形状、多角形状、矩体形状、ブロック形状、種々の機械的形状等に形成することができる。
【0051】
また、突出体を長尺体とする場合、かかる突出体を上から見て、波線状、鋸歯状、直線状、種々の機械的形状等に形成できる。
【0052】
本発明では、膨潤する前の各突出体の占有面積を、基材シートの面積の20〜60%とすることができる。かかる突出体は、膨潤して、コンクリート表面を養生するのに十分な水分供給面積を提供する。
【0053】
本発明のコンクリート養生シートでは、その中心部及び辺縁部の各突出部に水を吸収させることにより、かかる突出体を三次元的に均質に膨潤させることができる。かかるコンクリート養生シートは、湿潤材の膨潤による変形が著しく抑えられる。
【0054】
また、本発明のコンクリート養生シートは、初期の敷設形態を保持することから、コンクリート養生シートの中央部も端部も均一にコンクリート躯体表面に触れることができ、コンクリート躯体の全面に減少した水分を緩徐に供給させることができる。
【0055】
さらに、本発明のコンクリート養生シートでは、基材シートと各突出部とコンクリートとの間に空気層を形成し、この空気層を水蒸気によって飽和し、この空気層を断熱層として働かせることができる。
【0056】
本発明にかかる突出体は、湿潤材が水分を吸収することで、厚み方向に厚みが増し、突出体と基材シートとコンクリートの間に空気層ができる。
【0057】
この空気層は、湿潤材の表面から放散している水分で、飽和状態を保つことができ、この空気層が断熱作用を与えるために、外気との温度差が緩和され、保水状態の継続が助長される。
【0058】
本発明のコンクリート養生シートは、特に制限されることなく、種々の製法によって製造することができる。
【0059】
本発明では、基材シートと各突出体とを一体化可能な素材とし、これらを一体成形することで、コンクリート養生シートを製造するのが好適である。かかる一体成形されたコンクリート養生シートは、より一層高い強度を有し、ゴツゴツしているコンクリート表面でも、コンクリート養生シートの変形を大幅に抑えることができる。
【0060】
図面を参照して、本発明をより一層詳細に説明する。
図1は、本発明の一例のコンクリート養生シートの平面図である。図2は、図1のコンクリート養生シートをA−A線で切断した時の部分断面図である。図3は、膨潤した図1の突出体を示す平面図である。図4は、膨潤した図2の突出体をB−B線で切断した時の部分断面図である。
【0061】
図5は、本発明の他の例のコンクリート養生シートの平面図である。図6は、図5のコンクリート養生シートをC−C線で切断した時の部分断面図である。
【0062】
図1及び2に示す本発明の一例のコンクリート養生シート1は、コンクリート表面に敷設され、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する。
【0063】
コンクリート養生シート1は、基材シート2と、基材シート2のコンクリート表面に敷設される側に、X方向及びY方向に向かって配列され固定されている複数の突出体3とを備えている。
【0064】
各突出体3は、互いに離間しており、各突出体3の間には、空間4が形成されている。各突出体3は、2〜20mmの幅を有し、水を吸収することによって膨潤する湿潤材から形成されている。
【0065】
コンクリート養生シート1は、コンクリート表面に敷設する際、図3及び4に示すように、各突出体3が、水を吸収することで三次元的に膨潤し、膨潤体5を形成する。
【0066】
膨潤体5では、各突出体3の側面3aが各空間4内に膨出し、各空間4が狭められ、コンクリート養生シート1の変形が防止される。
【0067】
図2に示す基材シート2は、非通気性の膜6とその上の不織布又は織布7から形成されている。
【0068】
図5及び6に示す本発明の他の例のコンクリート養生シート11は、突出体13が、2〜20mmの幅を有する細長いものであり、図5に示すように、突出体13を上から見た時、各突出体13が波状パターンで形成される。
【0069】
コンクリート養生シート11は、突出体13の形状が異なる以外、図1のコンクリート養生シート1と同様の構成であり、基材シート12、突出体13、空間14、非通気性の膜16及び不織布又は織布17を有し、水を吸収して突出体13の側面13aが膨出する。
【0070】
【実施例】
本発明を、図面を参照して、実施例に基づいてより一層詳細に説明する。
図7は、比較例1の養生マットの斜視図である。図8は、図7の養生マットの部分断面図である。図9は、比較例2の養生マットの斜視図である。図10は、吸水した比較例2の養生マットを示す拡大図である。
【0071】
実施例1
図1及び2に示すコンクリート養生シートを製造した。コンクリート養生シートの大きさは、幅広いにこしたことはないが、扱い易い1mの幅、長さも長いにこしたことはないが、30mの長尺ものとした。
【0072】
基材シートとしては、60gf/m2(0.588399N/m2)の強度のレーヨン不織布に、40μmの厚さのポリエチレンフィルムをラミネートしたものを使用した。
【0073】
湿潤材としては、2液反応型のウレタンに、高分子吸収剤(「アクアコークT」、架橋ポリエチレンオキサイド)を配合し、これを基材シートに塗布し、硬化させて、複数の突出体を形成した。
【0074】
突出体の塗布形状は、厚み300μm、直径4.5mmとした。配置位置は、中心距離で7.0mmを離した正方配列とした。
【0075】
このようにして製造したコンクリート養生シートについて、以下の性能を評価した。
【0076】
性能評価
評価として、(1)保水性、(2)保湿性及び(3)吸水後の形状変化を検証した。
試験方法は以下の通りである。
【0077】
(1)保水性
i)試験環境
試験は、温度及び湿度変動の影響を除外するため、気温20、30及び40℃で、相対湿度60%R.H.の恒温恒湿室内で行った。
ii)試験ケース
試験は、実際の養生対象面を想定して、材料をバット上に水平に静置する場合と、鉛直のアクリル板表面に密着させる場合の2通りの設置ケースを設けた。また、外気温条件としては、前述の温度20、30及び40℃の3水準を設定した。よって試験ケースは、2×3=6ケースである。
【0078】
iii)試験手順
試験の手順を以下に示す。
1)各ケースとも、10×10cmの材料を3供試体作る。
2)各供試体の乾燥重量を測定する。
3)各供試体を吸水させるバットの質量を測定する。
4)それぞれのバットに200mLの水を入れ、質量を測定する。
【0079】
5)水が入ったバットにそれぞれの供試体を静かに入れる。
6)それぞれの供試体を一昼夜吸水させた後、水と供試体の入ったバットを秤に載せる。
7)秤の上で、水中から供試体を引き上げ、バット上で30秒水切りを行い、水+バットの質量を測定する。
8)バットの水を捨て、バットに再び供試体を戻し、供試体+バットの質量を測定する。
【0080】
9)6)〜8)の手順を各供試体に対して行う。
10)鉛直のアクリル板面に供試体を密着させるケースの場合は、この後、アクリル板面に供試体を密着させる。なお、測定中の供試体がアクリル板から落下するのを防止するため、供試体はクリップを用いて上部を留めている。なお、このケースの場合も、質量測定は、一旦シートをバットに戻して行っている。
11)水切り直後及び水切り後1、2、4、6、8、24、48及び72時間に、バット+供試体の質量を測定する。同時に、供試体と養生対象面(バット表面及びアクリル板面)の湿潤状態や供試体の養生対象面に対する密着性を目視により確認する。
【0081】
12)11)で求められたバット+供試体の質量より、供試体の乾燥質量とバット質量を差し引き、各供試体の保水量を求める。
【0082】
(2)保湿性
i)試験環境
試験は、外気の温度及び湿度変動の影響を防ぐため、温度20℃、相対湿度60%R.H.の一定の状態に保たれた恒温恒湿室にて実施する。
ii)供試体形状
養生を施すコンクリート供試体は、500mm×500mm×500mmの立方体とする。養生は、上面と1側面に対して行い、養生を行わない面は、水分の逸散を防ぐために、型枠を存置したままにする。温度計測位置は、養生面の中央とする。
【0083】
(3)吸水後の形状変化
一昼夜水に浸した50cm角の供試体を平板の上に置き、状態を目視により観察する。
【0084】
保水性及び保湿性の試験結果を、図11〜15に示した。また、吸水後の形状変化を表1に示した。
【0085】
図11は、20℃での保水性を示すグラフである。図12は、30℃での保水性を示すグラフである。図13は、40℃での保水性を示すグラフである。図14は、上面での養生の保湿性を示すグラフである。図15は、側面での養生の保湿性を示すグラフである。
【0086】
実施例2
図5及び6に示すコンクリート養生シートを製造した。
実施例1と同様の基材シート及び湿潤材を使用し、突出体の配置を変更した。突出体の塗布形状は、厚み300μmで幅5mmのビード状とし、間隔5mmで配置した。実施例1と同様に、このコンクリート養生シートの性能を評価した。保水性及び保湿性の試験結果は、実施例1と同様なために割愛した。吸水後の形状変化は、表1に示した。
【0087】
比較例1
図7及び8に示すコンクリート養生用マットを作製した。
マット21は、従来品として、軟質発泡ウレタンフォーム22+ポリプロピレンクロスシート23の複合品を使用した。実施例1と同様に、このマットの性能を評価し、結果を図11〜15及び表1に示した。
【0088】
比較例2
図9及び10に示すコンクリート養生用マットを作製した。
マット31は、ポリエステルの長繊維32を不織布としたものからなり、マット31は、長繊維32自体が水分を吸収して、図10に示すように、膨張体33を形成する。実施例1と同様に、このマットの性能を評価し、結果を図11〜15及び表1に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
図11〜13に示すように、実施例1及び2のコンクリート養生シートは、比較例1及び2の養生マットに比べ、保水性が著しく高く、水平面及び鉛直面のいずれの場合にも同等の保水性を示した。
【0091】
また、図14及び15に示すように、実施例1及び2のコンクリート養生シートは、比較例1及び2の養生マットに比べ、保湿性が極めて高く、長期間の保水養生が可能であった。
【0092】
さらに、表1に示すように、実施例1及び2のコンクリート養生シートは、突出体の変形が著しく少なくなり、養生すべきコンクリート面との密着性は、比較例1及び2と比べ遜色ないことが分かった。なお、比較例として特に示していないが、基材シートの全面に湿潤材からなる膜を形成して養生マットを作製した場合、吸水後の養生マットは変形が激しく、コンクリート面との密着は不可能であった。
【0093】
実施例1及び2のコンクリート養生シートは、保水性、保湿性及び形状保持性を兼ね備え、施工が容易なコンクリート養生マットである。一方、比較例1及び2の従来の養生マットは、水平面に対しては、散水を繰り返すことで必要な水分をコンクリート躯体に供給することが可能であるが、擁壁等の鉛直面では保水性が極めて劣っている。
【0094】
本実施例のコンクリート養生シートは、鉛直の面に対して散水をしなくても保水でき、形状の変形が著しく抑えられるので、コンクリート面との不均一な接触やコンクリート面からの脱落を防止することができる。また、本実施例のコンクリート養生シートは、水を垂れ流しにしなくても良いので、経済的であり、且つ、コンクリートの打設作業を可能な限り乾燥した状態で行えるので、作業環境的に長所がある。
【0095】
【発明の効果】
本発明のコンクリート養生シートによれば、湿潤材から形成される各突出体の側面が、水を吸収して膨潤する際、各突出体の間の空間を狭めるように膨出し変形するので、突出体の不均一な膨潤が抑制され、コンクリート養生シートの保水による変形が防止され、コンクリート養生シートとコンクリート面との密着性が著しく高められ、コンクリートを長期間に亘って十分に養生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一例のコンクリート養生シートの平面図である。
【図2】 図1のコンクリート養生シートをA−A線で切断した時の部分断面図である。
【図3】 膨潤した図1の突出体を示す平面図である。
【図4】 膨潤した図2の突出体をB−B線で切断した時の部分断面図である。
【図5】 本発明の他の例のコンクリート養生シートの平面図である。
【図6】 図5のコンクリート養生シートをC−C線で切断した時の部分断面図である。
【図7】 比較例1の養生マットの斜視図である。
【図8】 図7の養生マットの部分断面図である。
【図9】 比較例2の養生マットの斜視図である。
【図10】 吸水した比較例2の養生マットを示す拡大図である。
【図11】 20℃での保水性を示すグラフである。
【図12】 30℃での保水性を示すグラフである。
【図13】 40℃での保水性を示すグラフである。
【図14】 上面での養生の保湿性を示すグラフである。
【図15】 側面での養生の保湿性を示すグラフである。
【符号の説明】
1,11 コンクリート養生シート
2,12 基材シート
3,13 突出体
3a,13a 突出体の側面
4,14 空間
5 膨潤体
6,16 非通気性の膜
7,17 不織布又は織布
21,31 マット
22 軟質発泡ウレタンフォーム
23 ポリプロピレンクロスシート
32 ポリエステルの長繊維
33 膨張体
Claims (2)
- コンクリート表面に敷設され、コンクリート表面の減少した分の水分を補給し、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する、コンクリート養生シートであって、
前記コンクリート養生シートが、基材シートと、前記基材シートの前記コンクリート表面に敷設される側に固定されている複数の突出体とを備えており、前記各突出体の間に空間が形成されており、前記各突出体が2〜20mmの幅を有しており、前記各突出体が、二次元的に配列されており、前記各突出体が、水を吸収することによって膨潤する湿潤材から形成されており、前記コンクリート養生シートを前記コンクリート表面に敷設する際、前記各突出体が、水を吸収することで膨潤し、前記各突出体の側面が前記各空間内に膨出し、前記各空間が狭められ、前記コンクリート養生シートが平板状を保持し、前記各突出体の表面がコンクリート表面に接触し、前記各突出体が前記コンクリート表面に水分を補給することを特徴とする、コンクリート養生シート。 - コンクリート表面に敷設され、コンクリート表面の減少した分の水分を補給し、コンクリートを湿潤状態に保ち養生する、コンクリート養生シートであって、
前記コンクリート養生シートが、基材シートと、前記基材シートの前記コンクリート表面に敷設される側に固定されている複数の突出体とを備えており、前記各突出体の間に空間が形成されており、前記各突出体が2〜20mmの幅を有する長尺体であり、前記各突出体が、水を吸収することによって膨潤する湿潤材から形成されており、前記コンクリート養生シートを前記コンクリート表面に敷設する際、前記各突出体が、水を吸収することで膨潤し、前記各突出体の側面が前記各空間内膨出し、前記各空間が狭められ、前記コンクリート養生シートが平板状を保持し、前記各突出体の表面がコンクリート表面に接触し、前記各突出体が前記コンクリート表面に水分を補給することを特徴とする、コンクリート養生シート。
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