JP3754109B2 - アラニンアナログ耐性微生物およびビオチンの製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は新規アラニンアナログ耐性微生物およびこれを利用するビオチンの製造法に関する。本発明により得られるビオチンは、医薬品、化粧品の原料、飼料添加物等として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
ビオチン(ビタミンH)はビタミンB群の一種で、カルボキシル化酵素の補酵素として脂肪酸合成や糖代謝に関与している。このビオチンは、医薬品、化粧品の原料または飼料添加物等として化学合成法により、年間約10トン製造されているが、その工程が複雑なことから、かなり高価である。一方、醗酵法によるビオチンの生産は古くから研究されているが、生産性が低いため実用化されていない。
そこで遺伝子組換え技術を用いてビオチンを製造し、安価なビオチンを提供する方法が期待されている。これらの製造方法に用いられる遺伝子工学的に改良した微生物としては、エシェリヒア(Escherichia)属に属するものとしてα−デヒドロビオチン耐性株(例、特開昭61−149091号公報等)などが知られている。これらエシェリヒア属に属する微生物以外のものとして以下の微生物が知られている。例えばバチルス(Bacillus)属に属するものとしては、バチルス・スフェリカスを形質転換し、ついでテノイルトリフルオロアセトン耐性を付与した微生物(特開平4−11894号公報)が、あるいは、セラチア(Serratia)属に属するものとしては、セラチア・マルッセンスSB411にエチオニン耐性を付与し、次いでS−アミノエチルシステイン耐性を付与し、その後ビオチン遺伝子断片を含む組換えプラスミドで形質転換させた微生物(特開平5−199867号公報)が、同様にビオチン構造類似物質であるアクチチアジン酸又は5−(2−チエニル)−n−吉草酸耐性を付与した形質転換体(特開平2−27980号公報)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のビオチンの生産方法では、ビオチンの工業的製造には不十分なため、ビオチンの生産性をさらに向上させる生産方法が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ビオチンの生合成にアラニンが利用されることに着目し、ビオチン生産菌のアラニン生合成を強化することによりビオチンの蓄積量が向上すると予想した。そこでビオチン生産菌からアラニンアナログ耐性株を分離したところ、ビオチン蓄積量が著しく増大した株を取得できた。この知見に基づきさらに鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)ビオチンオペロンの全部を含むプラスミドを有するアラニンアナログ耐性微生物、
(2)微生物が、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属又はセラチア(Serratia)属に属する微生物である上記(1)記載の微生物、
(3)アラニンアナログが、β−クロロ−D−アラニンである上記(1)記載の微生物、および
(4)上記(1)記載の微生物を培地で培養し、培養物中にビオチンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするビオチンの製造法を提供するものである。
【0005】
アラニンアナログとしては、例えばβ−クロロ−D−アラニン、β−クロロ−L−アラニン、β−2−チエニル−DL−アラニン、DL−アラニンヒドロキサメート、DL−1,2,4−トリアゾール−3−アラニン、D−サイクロセリン等があげられる。このうち、β−クロロ−D−アラニン、β−2−チエニル−DL−アラニン等が好ましい。特に好ましくはβ−クロロ−D−アラニンである。
ビオチンオペロンとしては、例えばエシェリヒア属、バチルス属、セラチア属由来のビオチンオペロン等があげられる。エシェリヒア属由来としてはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のビオチンオペロン(特開昭61−202686号等)があげられる。該ビオチンオペロンには、ビオチン生合成に関与するbioA、bioB、bioF、bioC、bioDの5つの遺伝子がコードされている。また、これらのビオチンオペロンの一部を改変したものも本発明では用いることができ、例えば、エシェリヒア・コリのビオチンオペロンの制御領域及び bioB開始コドン近傍のいずれかの塩基配列が野生型に比べて少なくとも1塩基対変異しているもの等が挙げられる。ここでビオチンオペロンの制御領域とは、bioAとbioBの間に存在するr鎖を示す配列表の配列番号1、及びより詳細には〔図1〕に示す塩基配列のうち bioB開始コドンATGのAを1として−1番目の塩基対から−86番目の塩基対までの領域をいい、bioB開始コドン近傍とは、bioB開始コドンATGのAを1として1番目の塩基対から6番目の塩基対までの領域をいう。さらに具体的には、bioB開始コドンATGのAを1として上流−53番目、−5番目、下流4番目の少なくともいずれかひとつのGC対がAT対に変異されたもの等が挙げられる(特開平5−219956号)。
【0006】
本発明で用いるプラスミドとしては、例えばエシェリヒア属、バチルス属またはセラチア属に属する微生物に保持され、かつ遺伝子が発現できるものがあげられる。好ましくはエシェリヒア属に属する微生物に保持されているプラスミドである。該プラスミドとしては、例えば pXBA312(エシェリヒア・コリDRK−3323〔pXBA312〕(FERM BP−2117)由来、特開平2−502065号公報)、後述の実施例1で得られるpXBRP319(エシェリヒア・コリMM44/pXBRP319〕(IFO 15721,FERM BP−4724)由来)、およびそれらの誘導体等があげられる。
本発明の微生物としては、ビオチン生成蓄積能を有する微生物であればよく、例えばエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属またはセラチア(Serratia)属などに属する微生物があげられる。このうちエシェリヒア属に属する微生物が好ましい。該微生物としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられ、好ましい例としては後述の実施例1で得られたエシェリヒア・コリBD10/pXBRP319(IFO 15722,FERMBP−4725)等があげられる。
【0007】
本発明のアラニンアナログ耐性およびビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを有する微生物としては、好ましくはアラニンアナログ耐性およびビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドで形質転換された微生物である。
本発明の微生物は、例えば親株となる微生物にアラニンアナログ耐性を付与し、得られたアラニンアナログ耐性株にビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入する、あるいは、親株となる微生物にビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入し、得られた微生物にアラニンアナログ耐性を付与する、またはビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを保持している親株となる微生物にアラニンアナログ耐性を付与することにより得られる。
本発明で用いる親株となる微生物としては、ビオチン生成蓄積能を有する微生物であればいずれでもよく、例えばエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属またはセラチア(Serratia)属に属する微生物等があげられる。エシェリヒア属に属する微生物としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物などがあげられ、具体的にはエシェリヒア・コリ IFO 14410、エシェリヒア・コリ W−3110(IFO 12713)およびその由来株エシェリヒア・コリ DR−85(特開昭61−202686号)、エシェリヒア・コリ DR−332(特開昭62−155081号)、エシェリヒア・コリ DRK−3323(特表平2−502065号)、エシェリヒア・コリ BM4062(特表昭64−500081号)などがあげられる。上記のエシェリヒア・コリIFO 14410およびエシェリヒア・コリIFO12713は、リスト・オブ・カルチャーズ(List of Cultures)第9版、1992年(IFO発行)にそれぞれ収載されている公知株であり、財団法人醗酵研究所から入手することができる。
【0008】
バチルス属に属する微生物としては、例えばバチルス・スフェリカス(Bacillus sphaericus)に属する微生物などがあげられ、より具体的にはバチルス・スフェリカスIFO 3525およびその由来株バチルス・スフェリカスNZ−8802(特開平4−11894号)などがあげられる。上記のバチルス・スフェリカスIFO 3525は、リスト・オブ・カルチャーズ(List of Cultures)第9版、1992年,(IFO発行)に収載されている公知株であり、財団法人醗酵研究所から入手できる。
セラチア属に属する微生物としては、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)に属する微生物などがあげられ、具体例としてはセラチア・マルセッセンスSn 41およびその由来株セラチア・マルセッセンスTA5024(特開平2−27980号)、セラチア・マルセッセンスSB411およびその由来株セラチア・マルセッセンスET2、セラチア・マルセッセンスETA23(特開平5−199867号)などがあげられる。
上記した微生物は、そのまま用いてもよいが、さらにこれらの変異株を用いてもよい。これらの微生物の中で、ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを保持しないものは、必要に応じ、後工程で、ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入すればよい。
【0009】
アラニンアナログ耐性株を得る方法としては、自体公知の方法、例えばN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(N−methyl−N'−nitro−N−nitrosoguanidine,以下、NTGと略すこともある)などの薬剤で処理する方法、紫外線を照射する方法などがあげられる。
次に変異処理した菌体の懸濁液を適当な濃度、例えば親株が生育できない濃度のアラニンアナログを含む培地(例、寒天平板培地)にまき、生育するコロニーを分離することによりアラニンアナログ耐性株を得ることができる。
上記の方法で得られたアラニン耐性株を培養し、培養上清中のビオチンを定量することによりビオチンの蓄積量が向上した菌を選ぶことができる。
ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入する方法としては、自体公知の方法に従って行えばよい。
まず、ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを構築する方法としては自体公知の方法、例えば、制限酵素によるDNAの切断、T4DNAリガーゼによるDNAの結合などを行い、目的とするプラスミドを構築する方法〔モレキュラー・クローニング ア・ラボラトリー・マニュアル コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Habor Laboratory)1982〕等があげられる。
上記のプラスミドを用いて宿主細菌を形質転換する方法としては、自体公知の方法、例えばエシェリヒア属に属する細菌を宿主とする場合は、上記のモレキュラー・クローニング ア・ラボラトリー・マニュアル コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Habor Laboratory), 1982に記載されている方法等があげられる。
【0010】
上記の方法により得られた本発明の微生物を培地で培養し、ビオチンを培地に生成させる。
本発明の培養に用いられる培地は、用いられる微生物が利用し得る栄養源を含むものなら、液状でも固状でもよいが、大量に処理するときには液体培地を用いるのがより適当である。培地には同化し得る炭素源、消化し得る窒素源,無機物質,微量栄養素等が適宜配合される。炭素源としては、たとえばブドウ糖,乳糖,ショ糖,麦芽糖,デキストリン,でん粉,マニトール,ソルビトール,グリセロール,油脂類(例、大豆油,オリーブ油,ヌカ油,ごま油,ラード,チキン油など),各種脂肪酸(例、ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸など)等が用いられる。窒素源としては、たとえば肉エキス,酵母エキス,乾燥酵母,大豆粉,脱脂大豆粉,コーン・スチープ・リカー,ペプトン,綿実粉,癈糖蜜,尿素,チオ尿素,アンモニア,アンモニウム塩類(例、硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,硝酸アンモニウム,酢酸アンモニウムなど)等が用いられる。さらにナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウムなどを含む塩類,鉄,マンガン,亜鉛,コバルト,ニッケルなどの金属塩類,リン酸,ホウ酸などの塩類、酢酸,プロピオン酸などの有機酸の塩類が適宜用いられる。さらに、アミノ酸(例、グルタミン酸,アスパラギン酸,アラニン,リジン,バリン,メチオニン,プロリン等),ペプチド(例、ジペプチド,トリペプチド等),ビタミン類(例、B1,B2,ニコチン酸,B12,C等),核酸類(例、プリン,ピリミジンおよびその誘導体)等を用いてもよい。培地のpHを調節する目的で無機または有機の酸、アルカリ類等を加えてもよく、あるいは消泡の目的で油脂類,界面活性剤等の適量が使用される。培地のpHは約4〜10が好ましく、特にpH約6〜9が好ましい。
【0011】
培養の手段としては静置培養、振とう培養、通気撹拌培養のいずれでもよい。大量の培養の際は通気撹拌培養が好ましい。培養の温度は約15〜37℃、好ましくは約30〜37℃である。培養時間は培養条件によって適宜選択されるが約1〜10日、好ましくは約2〜4日である。
培養方法としては自体公知の方法、例えばバッチ培養、フィード培養などがあげられる。
得られた培養液を遠心分離し、その上清に蓄積されたビオチンを定量する。
ビオチンの定量方法としては、自体公知の方法に従えばよく、例えば、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を定量菌とするバイオアッセイ法(「ザ・ビタミンズ」(The Vitamins),第7巻、303頁(1967)、「ビタミン学、実験法〔II〕」475頁、日本ビタミン学会編(1985年)等)等が挙げられる。
上記の方法で微生物を培養し、培養物中にビオチンを生成蓄積させ、次にこの培養物からビオチンを採取する。生成したビオチンは主として培養液中に存在するので、培養液を自体公知の方法(例、ろ過、遠心分離等)により菌体を分離し、得られたろ液からビオチンを分離、精製するのが有利である。また、培養液から直接に精製してもよい。
上記の分離、精製する方法としては、例えば、適当な溶媒に対する溶解性および溶解度の差、溶液からの析出法および析出速度の差、種々の吸収親和力の差、イオン交換体によるイオン交換クロマトグラフィーあるいは減圧濃縮,凍結乾燥,結晶化,再結晶,乾燥などの手段が単独あるいは任意の順序に組合わせて、または反復して利用される。
本発明で得られるビオチンは、医薬品や化粧品の原料、飼料添加物等として使用しうる。
【0012】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。培地中の%はW/V%を示す。
下記実施例で得られたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)MM44/pXBRP319およびエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BD10/pXBRP319は、1994年6月10日より各々受託番号IFO 15721およびIFO 15722として財団法人醗酵研究所(IFO)に寄託され、また1994年6月29日よりブタペスト条約下受託番号 FERM BP−4724およびFERM BP−4725として通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にそれぞれ寄託されている。
【0013】
実施例1
(1)エシェリヒア・コリDRK−3323/pXBA312(FERM BP−2117)(特表平2−502065号)から単離したプラスミドpXBA312(図2参照)を制限酵素EcoRIで切断した後、PstIで部分分解し、アガロースゲル電気泳動、電気溶出法により完全長のビオチンオペロンを含むEcoRI−PstI断片(6.0Kbp)を単離した。得られたpXBA312のEcoRI−PstI断片とプラスミドpBR322のEcoRI−PstI断片(3.6Kbp)とを連結してプラスミドpXBA319を得た。
プラスミドpMW119(ニッポンジーン,日本)を制限酵素AatIIとAvaIで切断後、アガロースゲル電気泳動と電気溶出法により、AatII−AvaI断片(0.4Kbp)を得、ついでブランティングキット(宝酒造,日本)を用いて、AatII−AvaI断片の両端を平滑化した。得られたAatII−AvaI断片をpXBR319のSmaI部位に連結することによりプラスミドpXBRP319を得た。
(2)エシェリヒア・コリ IFO 14410〔(財)醗酵研究所より入手〕をNTGで変異処理して得られた優良株に上記(1)で得られたプラスミドpXBRP319を導入し、さらにNTGで変異処理したのち各種の薬剤耐性株を分離した。この中からビオチン蓄積量が多い菌株を選び、エシェリヒア・コリMM44/pXBRP319を得た。
(3)上記(2)で得られたエシェリヒア・コリMM44/pXBRP319を20mlの2xYT培地(酵母エキス10g/L,ペプトン16g/L および塩化ナトリウム5g/L 含有)に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液の0.2mlを20mlの2xYT培地に移し、37℃で6時間振とう培養した。得られた培養液を遠心分離し、集められた菌体をTM緩衝液(マレイン酸5.08g/L,トリス6.05g/L,pH6.0)で2回洗浄した。この洗浄菌体を200μg/mlのNTGを含むTM緩衝液に懸濁し、37℃で25分間処理した。遠心分離して処理菌体を集め、TM緩衝液で2回洗浄したのち、同じ緩衝液に懸濁した。得られた懸濁液を、1mg/mlのβ−クロロ−D−アラニンを含むM9最少培地の寒天平板にまき、37℃で5日間放置することによってβ−クロロ−D−アラニン耐性株のコロニーが出現した。このうち1株を選び、エシェリヒア・コリBD10/pXBRP319と命名した。
【0014】
実施例2
実施例1で得られたエシェリヒア・コリBD10/pXBRP319をグルコース2%,炭酸カルシウム1%,コーンスティープリカー4%,硫安0.4%,KH2PO4 0.1%,K2HPO4 0.2% およびMgSO4・7H2O 0.01%からなる種培地(pH7.1)30mlを含む200ml容フラスコで37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液の0.6mlをグルコース5%,コーンスティープリカー5%,硫安0.2%,DL−アラニン0.3%,KH2PO4 0.1%,K2HPO4 0.2%,MgSO4・7H2O 0.01%,FeSO4・7H2O 0.001%,MnSO4・4〜6H2O 0.001%およびチアミン塩酸塩0.002%からなる主培地(pH7.1)30mlを含む200ml容フラスコに移し、37℃で30時間振とう培養した。培養後の培養液を遠心分離し、得られた培養上清中のビオチン蓄積量をラクトバチルス・プランタルムIFO 3070を定量菌として前記のバイオアッセイ法(「ザ・ビタミンズ」(The Vitamins),第7巻、303頁(1967))により定量したところ140mg/L であった。
【0015】
【発明の効果】
本発明の微生物は優れたビオチン生産能を有しており、この微生物を培養することにより、ビオチンを大量に生産することができる。
【0016】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:114
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖
配列の種類:Genomic DNA
起源
生物名:エシェリヒア コリ(Esherichia coli)
配列
CGTCCGTTGT CATAATCGAC TTGTAAACCA AATTGAAAAG ATTTAGGTTT ACAAGTCTAC 60
ACCGAATTAA CAACAAAAAA CACGTTTTGG AGAAGCCCCA TGGCTCACCG CCCA 114
【図面の簡単な説明】
【図1】ビオチンオペロンの制御領域及びbioB開始コドン近傍の塩基配列を示す。
【図2】プラスミドpXBA312のDNAの制限酵素切断地図を示す。
【産業上の利用分野】
本発明は新規アラニンアナログ耐性微生物およびこれを利用するビオチンの製造法に関する。本発明により得られるビオチンは、医薬品、化粧品の原料、飼料添加物等として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
ビオチン(ビタミンH)はビタミンB群の一種で、カルボキシル化酵素の補酵素として脂肪酸合成や糖代謝に関与している。このビオチンは、医薬品、化粧品の原料または飼料添加物等として化学合成法により、年間約10トン製造されているが、その工程が複雑なことから、かなり高価である。一方、醗酵法によるビオチンの生産は古くから研究されているが、生産性が低いため実用化されていない。
そこで遺伝子組換え技術を用いてビオチンを製造し、安価なビオチンを提供する方法が期待されている。これらの製造方法に用いられる遺伝子工学的に改良した微生物としては、エシェリヒア(Escherichia)属に属するものとしてα−デヒドロビオチン耐性株(例、特開昭61−149091号公報等)などが知られている。これらエシェリヒア属に属する微生物以外のものとして以下の微生物が知られている。例えばバチルス(Bacillus)属に属するものとしては、バチルス・スフェリカスを形質転換し、ついでテノイルトリフルオロアセトン耐性を付与した微生物(特開平4−11894号公報)が、あるいは、セラチア(Serratia)属に属するものとしては、セラチア・マルッセンスSB411にエチオニン耐性を付与し、次いでS−アミノエチルシステイン耐性を付与し、その後ビオチン遺伝子断片を含む組換えプラスミドで形質転換させた微生物(特開平5−199867号公報)が、同様にビオチン構造類似物質であるアクチチアジン酸又は5−(2−チエニル)−n−吉草酸耐性を付与した形質転換体(特開平2−27980号公報)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のビオチンの生産方法では、ビオチンの工業的製造には不十分なため、ビオチンの生産性をさらに向上させる生産方法が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ビオチンの生合成にアラニンが利用されることに着目し、ビオチン生産菌のアラニン生合成を強化することによりビオチンの蓄積量が向上すると予想した。そこでビオチン生産菌からアラニンアナログ耐性株を分離したところ、ビオチン蓄積量が著しく増大した株を取得できた。この知見に基づきさらに鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)ビオチンオペロンの全部を含むプラスミドを有するアラニンアナログ耐性微生物、
(2)微生物が、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属又はセラチア(Serratia)属に属する微生物である上記(1)記載の微生物、
(3)アラニンアナログが、β−クロロ−D−アラニンである上記(1)記載の微生物、および
(4)上記(1)記載の微生物を培地で培養し、培養物中にビオチンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするビオチンの製造法を提供するものである。
【0005】
アラニンアナログとしては、例えばβ−クロロ−D−アラニン、β−クロロ−L−アラニン、β−2−チエニル−DL−アラニン、DL−アラニンヒドロキサメート、DL−1,2,4−トリアゾール−3−アラニン、D−サイクロセリン等があげられる。このうち、β−クロロ−D−アラニン、β−2−チエニル−DL−アラニン等が好ましい。特に好ましくはβ−クロロ−D−アラニンである。
ビオチンオペロンとしては、例えばエシェリヒア属、バチルス属、セラチア属由来のビオチンオペロン等があげられる。エシェリヒア属由来としてはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のビオチンオペロン(特開昭61−202686号等)があげられる。該ビオチンオペロンには、ビオチン生合成に関与するbioA、bioB、bioF、bioC、bioDの5つの遺伝子がコードされている。また、これらのビオチンオペロンの一部を改変したものも本発明では用いることができ、例えば、エシェリヒア・コリのビオチンオペロンの制御領域及び bioB開始コドン近傍のいずれかの塩基配列が野生型に比べて少なくとも1塩基対変異しているもの等が挙げられる。ここでビオチンオペロンの制御領域とは、bioAとbioBの間に存在するr鎖を示す配列表の配列番号1、及びより詳細には〔図1〕に示す塩基配列のうち bioB開始コドンATGのAを1として−1番目の塩基対から−86番目の塩基対までの領域をいい、bioB開始コドン近傍とは、bioB開始コドンATGのAを1として1番目の塩基対から6番目の塩基対までの領域をいう。さらに具体的には、bioB開始コドンATGのAを1として上流−53番目、−5番目、下流4番目の少なくともいずれかひとつのGC対がAT対に変異されたもの等が挙げられる(特開平5−219956号)。
【0006】
本発明で用いるプラスミドとしては、例えばエシェリヒア属、バチルス属またはセラチア属に属する微生物に保持され、かつ遺伝子が発現できるものがあげられる。好ましくはエシェリヒア属に属する微生物に保持されているプラスミドである。該プラスミドとしては、例えば pXBA312(エシェリヒア・コリDRK−3323〔pXBA312〕(FERM BP−2117)由来、特開平2−502065号公報)、後述の実施例1で得られるpXBRP319(エシェリヒア・コリMM44/pXBRP319〕(IFO 15721,FERM BP−4724)由来)、およびそれらの誘導体等があげられる。
本発明の微生物としては、ビオチン生成蓄積能を有する微生物であればよく、例えばエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属またはセラチア(Serratia)属などに属する微生物があげられる。このうちエシェリヒア属に属する微生物が好ましい。該微生物としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられ、好ましい例としては後述の実施例1で得られたエシェリヒア・コリBD10/pXBRP319(IFO 15722,FERMBP−4725)等があげられる。
【0007】
本発明のアラニンアナログ耐性およびビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを有する微生物としては、好ましくはアラニンアナログ耐性およびビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドで形質転換された微生物である。
本発明の微生物は、例えば親株となる微生物にアラニンアナログ耐性を付与し、得られたアラニンアナログ耐性株にビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入する、あるいは、親株となる微生物にビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入し、得られた微生物にアラニンアナログ耐性を付与する、またはビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを保持している親株となる微生物にアラニンアナログ耐性を付与することにより得られる。
本発明で用いる親株となる微生物としては、ビオチン生成蓄積能を有する微生物であればいずれでもよく、例えばエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属またはセラチア(Serratia)属に属する微生物等があげられる。エシェリヒア属に属する微生物としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物などがあげられ、具体的にはエシェリヒア・コリ IFO 14410、エシェリヒア・コリ W−3110(IFO 12713)およびその由来株エシェリヒア・コリ DR−85(特開昭61−202686号)、エシェリヒア・コリ DR−332(特開昭62−155081号)、エシェリヒア・コリ DRK−3323(特表平2−502065号)、エシェリヒア・コリ BM4062(特表昭64−500081号)などがあげられる。上記のエシェリヒア・コリIFO 14410およびエシェリヒア・コリIFO12713は、リスト・オブ・カルチャーズ(List of Cultures)第9版、1992年(IFO発行)にそれぞれ収載されている公知株であり、財団法人醗酵研究所から入手することができる。
【0008】
バチルス属に属する微生物としては、例えばバチルス・スフェリカス(Bacillus sphaericus)に属する微生物などがあげられ、より具体的にはバチルス・スフェリカスIFO 3525およびその由来株バチルス・スフェリカスNZ−8802(特開平4−11894号)などがあげられる。上記のバチルス・スフェリカスIFO 3525は、リスト・オブ・カルチャーズ(List of Cultures)第9版、1992年,(IFO発行)に収載されている公知株であり、財団法人醗酵研究所から入手できる。
セラチア属に属する微生物としては、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)に属する微生物などがあげられ、具体例としてはセラチア・マルセッセンスSn 41およびその由来株セラチア・マルセッセンスTA5024(特開平2−27980号)、セラチア・マルセッセンスSB411およびその由来株セラチア・マルセッセンスET2、セラチア・マルセッセンスETA23(特開平5−199867号)などがあげられる。
上記した微生物は、そのまま用いてもよいが、さらにこれらの変異株を用いてもよい。これらの微生物の中で、ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを保持しないものは、必要に応じ、後工程で、ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入すればよい。
【0009】
アラニンアナログ耐性株を得る方法としては、自体公知の方法、例えばN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(N−methyl−N'−nitro−N−nitrosoguanidine,以下、NTGと略すこともある)などの薬剤で処理する方法、紫外線を照射する方法などがあげられる。
次に変異処理した菌体の懸濁液を適当な濃度、例えば親株が生育できない濃度のアラニンアナログを含む培地(例、寒天平板培地)にまき、生育するコロニーを分離することによりアラニンアナログ耐性株を得ることができる。
上記の方法で得られたアラニン耐性株を培養し、培養上清中のビオチンを定量することによりビオチンの蓄積量が向上した菌を選ぶことができる。
ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを導入する方法としては、自体公知の方法に従って行えばよい。
まず、ビオチンオペロンの一部または全部を含むプラスミドを構築する方法としては自体公知の方法、例えば、制限酵素によるDNAの切断、T4DNAリガーゼによるDNAの結合などを行い、目的とするプラスミドを構築する方法〔モレキュラー・クローニング ア・ラボラトリー・マニュアル コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Habor Laboratory)1982〕等があげられる。
上記のプラスミドを用いて宿主細菌を形質転換する方法としては、自体公知の方法、例えばエシェリヒア属に属する細菌を宿主とする場合は、上記のモレキュラー・クローニング ア・ラボラトリー・マニュアル コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Habor Laboratory), 1982に記載されている方法等があげられる。
【0010】
上記の方法により得られた本発明の微生物を培地で培養し、ビオチンを培地に生成させる。
本発明の培養に用いられる培地は、用いられる微生物が利用し得る栄養源を含むものなら、液状でも固状でもよいが、大量に処理するときには液体培地を用いるのがより適当である。培地には同化し得る炭素源、消化し得る窒素源,無機物質,微量栄養素等が適宜配合される。炭素源としては、たとえばブドウ糖,乳糖,ショ糖,麦芽糖,デキストリン,でん粉,マニトール,ソルビトール,グリセロール,油脂類(例、大豆油,オリーブ油,ヌカ油,ごま油,ラード,チキン油など),各種脂肪酸(例、ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸など)等が用いられる。窒素源としては、たとえば肉エキス,酵母エキス,乾燥酵母,大豆粉,脱脂大豆粉,コーン・スチープ・リカー,ペプトン,綿実粉,癈糖蜜,尿素,チオ尿素,アンモニア,アンモニウム塩類(例、硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,硝酸アンモニウム,酢酸アンモニウムなど)等が用いられる。さらにナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウムなどを含む塩類,鉄,マンガン,亜鉛,コバルト,ニッケルなどの金属塩類,リン酸,ホウ酸などの塩類、酢酸,プロピオン酸などの有機酸の塩類が適宜用いられる。さらに、アミノ酸(例、グルタミン酸,アスパラギン酸,アラニン,リジン,バリン,メチオニン,プロリン等),ペプチド(例、ジペプチド,トリペプチド等),ビタミン類(例、B1,B2,ニコチン酸,B12,C等),核酸類(例、プリン,ピリミジンおよびその誘導体)等を用いてもよい。培地のpHを調節する目的で無機または有機の酸、アルカリ類等を加えてもよく、あるいは消泡の目的で油脂類,界面活性剤等の適量が使用される。培地のpHは約4〜10が好ましく、特にpH約6〜9が好ましい。
【0011】
培養の手段としては静置培養、振とう培養、通気撹拌培養のいずれでもよい。大量の培養の際は通気撹拌培養が好ましい。培養の温度は約15〜37℃、好ましくは約30〜37℃である。培養時間は培養条件によって適宜選択されるが約1〜10日、好ましくは約2〜4日である。
培養方法としては自体公知の方法、例えばバッチ培養、フィード培養などがあげられる。
得られた培養液を遠心分離し、その上清に蓄積されたビオチンを定量する。
ビオチンの定量方法としては、自体公知の方法に従えばよく、例えば、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を定量菌とするバイオアッセイ法(「ザ・ビタミンズ」(The Vitamins),第7巻、303頁(1967)、「ビタミン学、実験法〔II〕」475頁、日本ビタミン学会編(1985年)等)等が挙げられる。
上記の方法で微生物を培養し、培養物中にビオチンを生成蓄積させ、次にこの培養物からビオチンを採取する。生成したビオチンは主として培養液中に存在するので、培養液を自体公知の方法(例、ろ過、遠心分離等)により菌体を分離し、得られたろ液からビオチンを分離、精製するのが有利である。また、培養液から直接に精製してもよい。
上記の分離、精製する方法としては、例えば、適当な溶媒に対する溶解性および溶解度の差、溶液からの析出法および析出速度の差、種々の吸収親和力の差、イオン交換体によるイオン交換クロマトグラフィーあるいは減圧濃縮,凍結乾燥,結晶化,再結晶,乾燥などの手段が単独あるいは任意の順序に組合わせて、または反復して利用される。
本発明で得られるビオチンは、医薬品や化粧品の原料、飼料添加物等として使用しうる。
【0012】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。培地中の%はW/V%を示す。
下記実施例で得られたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)MM44/pXBRP319およびエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BD10/pXBRP319は、1994年6月10日より各々受託番号IFO 15721およびIFO 15722として財団法人醗酵研究所(IFO)に寄託され、また1994年6月29日よりブタペスト条約下受託番号 FERM BP−4724およびFERM BP−4725として通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にそれぞれ寄託されている。
【0013】
実施例1
(1)エシェリヒア・コリDRK−3323/pXBA312(FERM BP−2117)(特表平2−502065号)から単離したプラスミドpXBA312(図2参照)を制限酵素EcoRIで切断した後、PstIで部分分解し、アガロースゲル電気泳動、電気溶出法により完全長のビオチンオペロンを含むEcoRI−PstI断片(6.0Kbp)を単離した。得られたpXBA312のEcoRI−PstI断片とプラスミドpBR322のEcoRI−PstI断片(3.6Kbp)とを連結してプラスミドpXBA319を得た。
プラスミドpMW119(ニッポンジーン,日本)を制限酵素AatIIとAvaIで切断後、アガロースゲル電気泳動と電気溶出法により、AatII−AvaI断片(0.4Kbp)を得、ついでブランティングキット(宝酒造,日本)を用いて、AatII−AvaI断片の両端を平滑化した。得られたAatII−AvaI断片をpXBR319のSmaI部位に連結することによりプラスミドpXBRP319を得た。
(2)エシェリヒア・コリ IFO 14410〔(財)醗酵研究所より入手〕をNTGで変異処理して得られた優良株に上記(1)で得られたプラスミドpXBRP319を導入し、さらにNTGで変異処理したのち各種の薬剤耐性株を分離した。この中からビオチン蓄積量が多い菌株を選び、エシェリヒア・コリMM44/pXBRP319を得た。
(3)上記(2)で得られたエシェリヒア・コリMM44/pXBRP319を20mlの2xYT培地(酵母エキス10g/L,ペプトン16g/L および塩化ナトリウム5g/L 含有)に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液の0.2mlを20mlの2xYT培地に移し、37℃で6時間振とう培養した。得られた培養液を遠心分離し、集められた菌体をTM緩衝液(マレイン酸5.08g/L,トリス6.05g/L,pH6.0)で2回洗浄した。この洗浄菌体を200μg/mlのNTGを含むTM緩衝液に懸濁し、37℃で25分間処理した。遠心分離して処理菌体を集め、TM緩衝液で2回洗浄したのち、同じ緩衝液に懸濁した。得られた懸濁液を、1mg/mlのβ−クロロ−D−アラニンを含むM9最少培地の寒天平板にまき、37℃で5日間放置することによってβ−クロロ−D−アラニン耐性株のコロニーが出現した。このうち1株を選び、エシェリヒア・コリBD10/pXBRP319と命名した。
【0014】
実施例2
実施例1で得られたエシェリヒア・コリBD10/pXBRP319をグルコース2%,炭酸カルシウム1%,コーンスティープリカー4%,硫安0.4%,KH2PO4 0.1%,K2HPO4 0.2% およびMgSO4・7H2O 0.01%からなる種培地(pH7.1)30mlを含む200ml容フラスコで37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液の0.6mlをグルコース5%,コーンスティープリカー5%,硫安0.2%,DL−アラニン0.3%,KH2PO4 0.1%,K2HPO4 0.2%,MgSO4・7H2O 0.01%,FeSO4・7H2O 0.001%,MnSO4・4〜6H2O 0.001%およびチアミン塩酸塩0.002%からなる主培地(pH7.1)30mlを含む200ml容フラスコに移し、37℃で30時間振とう培養した。培養後の培養液を遠心分離し、得られた培養上清中のビオチン蓄積量をラクトバチルス・プランタルムIFO 3070を定量菌として前記のバイオアッセイ法(「ザ・ビタミンズ」(The Vitamins),第7巻、303頁(1967))により定量したところ140mg/L であった。
【0015】
【発明の効果】
本発明の微生物は優れたビオチン生産能を有しており、この微生物を培養することにより、ビオチンを大量に生産することができる。
【0016】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:114
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖
配列の種類:Genomic DNA
起源
生物名:エシェリヒア コリ(Esherichia coli)
配列
CGTCCGTTGT CATAATCGAC TTGTAAACCA AATTGAAAAG ATTTAGGTTT ACAAGTCTAC 60
ACCGAATTAA CAACAAAAAA CACGTTTTGG AGAAGCCCCA TGGCTCACCG CCCA 114
【図面の簡単な説明】
【図1】ビオチンオペロンの制御領域及びbioB開始コドン近傍の塩基配列を示す。
【図2】プラスミドpXBA312のDNAの制限酵素切断地図を示す。
Claims (4)
- ビオチンオペロンの全部を含むプラスミドを有するアラニンアナログ耐性微生物。
- 微生物が、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属又はセラチア(Serratia)属に属する微生物である請求項1記載の微生物。
- アラニンアナログが、β−クロロ−D−アラニンである請求項1記載の微生物。
- 請求項1記載の微生物を培地で培養し、培養物中にビオチンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするビオチンの製造法。
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