JP3752844B2 - 耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用鋼板としての用途に用いて好適な耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化が指向される中、成形性に優れる高強度薄鋼板に対する要求が殊の外強くなっている。
また、最近では、自動車の安全性も重視され、そのためには衝突時における安全性の目安となる耐衝撃特性の向上も要求されている。
さらに、経済性に対する配慮も必要とされ、かかる経済性を考慮した場合には、冷延鋼板に比べると熱延鋼板の方が有利である。
【0003】
上記の現状を背景として、これまでにも種々の高強度熱延鋼板が開発されている。
例えば、特公平6-41617号公報、特公平5-65566号公報および特公平5-67682号公報には、高加工性高強度熱延鋼板として、残留オーステナイト:5%以上を含むフェライト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの組織になる鋼(以下、TRIP鋼という)の製造方法が開示されている。
しかしながら、このTRIP鋼は、伸びが高く、成形性は良好ではある(TS×El≧ 24000 MPa・%)ものの、現在の厳しい耐衝撃特性を満足するまでにはいかないところに問題を残していた。
また、プレス成形時における加工硬化量(WH)およびその後の塗装焼付時における焼付硬化量(BH)が、70 MPa程度と低いという問題もあった。
この加工・焼付硬化量(WH+BH)が低いと、加工−塗装焼付後における強度保証の面での不利が大きい。
【0004】
一方、耐衝撃特性に優れた高強度熱延鋼板としては、特開平9−111396号公報に開示されているように、フェライトとマルテンサイトの2相組織になるいわゆるDual Phase鋼(以下DP鋼という)が開発されている。
しかしながら、このDP鋼は、耐衝撃特性には優れるものの、伸びが十分とはいえず、成形性の点に問題を残していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、現在までのところ、十分な成形性と厳しい安全性の両者を満足する熱延鋼板は見当たらず、その開発が望まれていた。
この発明は、上記の要望に有利に応えるもので、優れた成形性と耐衝撃特性を兼ね備え(具体的には、強度−伸びバランス(TS×El)が 24000 MPa・%以上、(WH+BH)が 100 MPa以上、動的n値が0.35以上)、さらには耐疲労特性にも優れた(FL/TS≧ 0.50 )高強度高加工性熱延鋼板を提案することを目的とする。
【0006】
ここに、動的n値とは、発明者らが耐衝撃特性の指標として新たに見出したもので、この動的n値を用いることによって、耐衝撃特性を従来よりも一層的確に評価することができる。
すなわち、従来、耐衝突安全性については、強度との関連で考察され、単に強度が大きければ耐衝突安全性も高いとされてきたが、強度と耐衝突安全性とは必ずしも一義的な関係にあるわけではないことが判明した。
そこで、この点につき、鋭意研究を重ねた結果、耐衝突安全性を向上させる、つまり高速での変形時(自動車の衝突時にはひずみ速度
【外1】
が2×103/s まで増加)におけるエネルギーを、鋼板でより多く吸収するためには、鋼板を
【外2】
の条件で引張変形させた時のn値(以下、動的n値という)を高くすることが有効であることが解明されたのである。
ここでは、伸び10%における瞬間n値を動的n値とする。
なお、この動的n値を高くすることは、高速変形時における強度向上にも有効であることが併せて見出された。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、まず従来鋼であるTRIP鋼について、その組織と特性との関係について調査した。
その結果、TRIP鋼においては、成形性の向上に有利な残留オーステナイトを十分な量得るためには、ベイナイト相を生成させることが不可欠とされてきたが、このベイナイト相が耐衝撃特性を劣化させる原因になっていることが判明した。
【0008】
そこで、発明者らは、かようなベイナイト相とくに炭化物の生成を抑制したところ、すなわち、主相である初析フェライト以外の第2相を、従来のベイナイト+残留オーステナイトから、針状フェライト+マルテンサイト+残留オーステナイトの混合組織に変更したところ、所期した目的の達成に関し、望外の成果が得られたのである。
さらに、第2相中の針状フェライトを、主相の初析フェライトよりも硬化させると、耐疲労特性が有利に改善されることも併せて見出した。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0009】
すなわち、この発明は、
C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、
Mn:0.6 〜3.0 mass%、 Cr:0.2 〜2.0 mass%
を含有し、残部はFe および不可避的不純物の組成になり、主相が初析フェライトで、第2相がマルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトからなる鋼組織を有し、かつ第2相中の針状フェライトが主相の初析フェライトよりも硬化しており、該針状フェライトの硬化程度が、EBSDパターンの鮮映度(IQ)で評価して、次式
IQ P /IQ A ≧ 1.2
ここでIQ P : 初析フェライトの EBSD パターン鮮映度
IQ A : 針状フェライトの EBSD パターン鮮映度
の範囲を満足するものであることを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板である。
【0010】
この発明では、鋼の成分組成につき、上記した基本組成の他、オーステナイト生成元素として
P:0.01〜0.2 mass%、 Al:0.01〜0.3 mass%
のうちから選んだ少なくとも一種を、またさらには強度改善成分として
Ti:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.1 mass%
のうちから選んだ少なくとも一種を含有させることもできる。
【0011】
また、この発明において、針状フェライトの硬化程度については、上述したように、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)を使用して、初析フェライトと針状フェライトそれぞれのEBSDパターンの鮮映度(Image Quality :IQ)で各転位密度を評価し、その値の比すなわちIQP /IQA (ここでIQP : 初析フェライトのEBSDパターン鮮映度、IQA : 針状フェライトのEBSDパターン鮮映度)が、次式
IQP /IQA ≧ 1.2
の範囲を満足するように調整する必要がある。
かくして、両振り平面曲げ疲労試験における耐疲労限と引張強さの比(FL/TS)が 0.50 以上という優れた耐疲労特性が得られるのである。
【0012】
さらに、この発明においては、鋼組織中に占める第2相の比率を3〜40%とすることが好ましく、さらに第2相における各相の比率については、マルテンサイト:10〜80%、残留オーステナイト:8〜30%、針状フェライト:5〜60%とすることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体的に説明する。
図1に、従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態曲線図(CCT図)を示す。
同図に示したとおり、従来のTRIP鋼は、熱間圧延後、初析フェライト域に若干保持して初析フェライト(ポリゴナルフェライトともいう)を析出させ、同時に未変態オーステナイト相への固溶炭素の濃縮を促進して、オーステナイトの安定度を増したのち、ベイナイト域に導き、この領域を徐冷することによって、ベイナイト変態を生じさせつつ、所定量のオーステナイトを残留させていた。
しかしながら、このようにして製造されたTRIP鋼は、強度および加工性の面では優れるものの、十分な耐衝撃特性が得られないことは前述したとおりである。
【0014】
そこで、発明者らは、ベイナイト変態を回避すべく数多くの実験と検討を重ねた結果、
(1) 鋼成分としてCrを少量含有させると、上記CCT図におけるベイナイト変態域のノーズが後退して、ベイナイトの析出(特に炭化物の析出)が抑制され、
代わりに針状フェライト(アシキュラーフェライトともいう)が析出する、
(2) かようにして形成された、針状フェライト、残留オーステナイトおよびマルテンサイトからなる第2相は、成形性を阻害することなしに、耐衝撃特性を格段に向上させる
ことを究明したのである。
【0015】
図2に、この発明の成分系における代表的CCT図を示す。
同図に示したとおり、Crを少量添加することによってベイナイト変態域のノーズが後退し、代わりに針状フェライト域が顕著に出現するので、この針状フェライト域に短時間保持し、好ましくはその後に急冷することによって、第2相を針状フェライト、残留オーステナイトおよびマルテンサイトからなる混合組織とすることができ、かくして優れた成形性と耐衝撃特性とを兼ね備えた熱延鋼板を得ることができたのである。
【0016】
ここに、針状フェライトとは、結晶粒の長径が概ね10μm 以下、アスペクト比が1:1.5 以上、そしてセメンタイト析出量が5%以下のものをいう。
なお、従来のTRIP鋼のベイナイト中には、セメンタイトの析出が多く認められる(10%以上)ので、この発明の針状フェライトとTRIP鋼のベイナイトとは明確に区別されるものである。
【0017】
図3(a) に、この発明に従い得られる第2相の特徴的な相構成を、また図3(b) には、従来のTRIP鋼の第2相の相構成を、それぞれ模式で示す。
従来のTRIP鋼の第2相は、ベイナイト中に残留オーステナイトが点在する相構成になっているのに対し、この発明の第2相は、針状フェライトとマルテンサイトが層状にならび、その界面(マルテンサイト側)に残留オーステナイトが点在する形態になっている。
このように、第2相中に針状フェライトを析出させたことが、この発明の特徴の一つであり、この針状フェライト相がTS×Elを増加させると共に、動的n値を向上させるものと考えられる。
なお、発明者らの知見によれば、針状フェライトとマルテンサイトの界面面積率が大きくなるほど、動的n値は大きくなる傾向にあることが確認されている。
【0018】
さらに、発明者らの実験によれば、図2に示す冷却工程において、針状フェライト域での保持温度をできるだけ低目に設定すると、針状フェライト中の転位密度が増加し、その結果、耐疲労特性が効果的に向上することが見出された。
ここに、針状フェライト中の転位密度は、EBSDによってパターン鮮映度として評価することができ、このEBSDで評価した針状フェライトのEBSDパターン鮮映度(IQA )に対する初析フェライトのEBSDパターン鮮映度(IQP )の比が次式
IQP /IQA ≧ 1.2
の範囲を満足するように針状フェライト域での保持温度を制御することによって優れた耐疲労特性を得ることができる。
【0019】
また、この発明において、上記した第2相の鋼組織中に占める比率は3〜40%とすることが好ましい。
というのは、相比率が3%に満たないと十分な耐衝撃特性が得られず、一方40%を超えると伸びひいては強度−伸びバランスがが低下するからである。より好ましい比率は10〜30%である。
なお、この発明において、相比率は、鋼試料を研磨後、2%硝酸+エチルアルコール溶液でエッチングし、顕微鏡写真を画像解析することにより算出した。
【0020】
さらに、第2相における各相の比率については、マルテンサイト:10〜80%(好ましくは30〜60%)、残留オーステナイト:8〜30%(好ましくは10〜20%)、針状フェライト:5〜60%(好ましくは20〜50%)とすることが望ましい。
というのは、マルテンサイトの比率が10%に満たないと十分な耐衝撃特性が得られず、一方80%を超えると伸びひいては強度−伸びバランスが低下するからである。
また、残留オーステナイトの比率が8%に満たないと十分な伸びが得られず、一方30%を超えると耐衝撃特性が低下するからである。
さらに、針状フェライトの比率が5%に満たないとやはり良好な耐衝撃特性が得られず、一方60%を超えると伸びが低下するからである。
【0021】
なお、鋼組織全体に占める各相の比率としては、マルテンサイトおよび針状フェライトはそれぞれ5〜15%、残留オーステナイトは2〜10%程度とするのが好適である。
また、この発明において、鋼組織は全て、主相である初析フェライトと、第2相であるマルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトの混合相からなっているとは限らず、ベイナイト相などが若干析出する場合もあるが、かような第3相が混入しても、その比率が第2相全体の10%以下であれば特性上何ら問題はない。
【0022】
次に、この発明において、鋼板の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.05〜0.40mass%
Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.05mass%未満では、その効果に乏しく、一方0.40mass%を超えると延性を低下させるので、C量は0.05〜0.40mass%の範囲に限定した。
【0023】
Si:1.0 〜3.0 mass%
Siは、残留オーステナイトの生成に不可欠な元素であり、そのためには少なくとも 1.0mass%の添加を必要とするが、 3.0mass%を超える添加は、延性の低下を招くだけでなく、スケール性状を低下させ表面品質上も問題となるので、Si含有量は 1.0〜3.0 mass%の範囲に限定した。
【0024】
Mn:0.6 〜3.0 mass%
Mnは、鋼の強化元素として有用なだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が 0.6mass%未満ではその効果に乏しく、一方 3.0mass%を超えると延性の低下を招くので、Mn量は 0.6〜3.0 mass%の範囲に限定した。
【0025】
Cr:0.2 〜2.0 mass%
このCr添加は、この発明の特徴の一つである。Crを添加することにより、前述したように、第2相が針状フェライト化する。そのためには、0.2 mass%以上の添加が必要であるが、 2.0mass%を超えて添加すると粗大なCr炭化物が生成して延性が阻害され、強度−伸びバランスおよび動的n値とも劣化するので、Cr量は0.2 〜2.0 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.3〜1.8 mass%である。
【0026】
図4および図5に、Cr量と強度−伸びバランスおよび動的n値との関係について調べた結果をそれぞれ示す。
図4,5より明らかなように、Cr含有量が 0.2mass%以上、 2.0mass%以下の範囲で、TS×El≧24000 (MPa・%)、動的n値≧0.35の優れた加工性および耐衝撃特性が得られている。
【0027】
以上、基本成分について説明したが、この発明では、オーステナイト生成元素としてPやAl、また強度改善成分としてTiやNbを、以下の範囲で適宜含有させることができる。
P:0.01〜0.2 mass%
Pは、残留オーステナイト生成元素として有用であるが、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.2mass%を超えると耐二次加工性が劣化するので、添加する場合には0.01〜0.2 mass%の範囲とすることが望ましい。
【0028】
Al:0.01〜0.3 mass%
Alも、Pと同様、残留オーステナイト生成元素として有用なものであるが、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.3mass%を超えると延性の低下を招くので、添加する場合には0.01〜0.3 mass%の範囲とすることが望ましい。
【0029】
Ti:0.005 〜0.25mass%、Nb:0.003 〜0.1 mass%
TiおよびNbはいずれも、主相であるフェライトを細粒化させることによって、強度の向上に有効に寄与するので、必要に応じて添加することができる。特にTiを含有させると、針状フェライトのノーズが短時間側に移行し、コイルミドル部と比較して冷却速度が速くなるコイル端部においても十分針状フェライトが析出するので、歩留りが向上する効果もある。
しかしながら、含有量があまりに少ないとその添加効果に乏しく、一方過度の添加は延性の低下を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させることが好ましい。
【0030】
次に、この発明鋼の製造方法について説明すると、この発明鋼は、要するに、第2相としてマルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトからなる混合組織を形成させれば良いのであるから、前掲図2に示した冷却曲線に沿って、冷却させれば良い。
そして、針状フェライト域での保持温度、換言するとコイル巻取り温度をできるだけ低く設定して、針状フェライト中の転位密度を増加させることにより、効果的に耐疲労特性を向上させるのである。
【0031】
すなわち、 780〜980 ℃程度で熱間仕上げ圧延後、 620〜780 ℃の初析フェライト域のノーズ近傍まで冷却したのち、この温度域に1〜10秒程度保持(または緩冷却)することにより、主相である初析フェライトを析出させ、ついで 250〜350 ℃の針状フェライト域まで冷却してコイルに巻取り、この領域に2〜60分程度保持(または緩冷却)後、好ましくは50℃/h以上の速度で室温まで冷却することにより、針状フェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトからなる第2相を形成させると共に、第2相中の針状フェライトを硬化させるのである。
【0032】
【実施例】
表1に示す種々の成分組成になる鋼スラブを、1200℃に加熱後、粗圧延し、ついで仕上げ温度:880 ℃で熱間仕上げ圧延を終了したのち、60℃/sの速度で700 ℃まで冷却し、この温度に10秒保持してから、同じく60℃/sの速度で表2に示す種々の温度まで冷却したのち、コイルに巻取り、巻取り後15分間保持してから、100 ℃/hの速度で室温まで冷却した。
得られた熱延板から、引張試験片を切り出し、それらの試験片について、ひずみ速度:2×10-2/sの条件で引張試験を実施し、降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)および伸び(El)を求めた。
また、ホプキンソンプレッシャーバー試験材(材料とプロセス vol.9 (1996) P.1108〜1111)を用いて、ひずみ速度:2×103/s の条件で引張試験を実施し、伸びが10%の時の瞬間n値(動的n値)を求めた。
さらに、周波数:20Hzの両振り平面曲げ試験法による疲労限(FL)を測定すると共に、EBSDを用いて針状フェライトの硬化指数(IQP /IQA )を求めた。
またさらに、プレス成形時における加工硬化量(WH)およびその後の塗装焼付時(170℃)における焼付硬化量(BH)についても測定した。なお、WH,BHは、ひずみ速度:2×10-2/sの引張試験機を用い、図6により求めた。
各熱延鋼板の鋼組織、IQP /IQA 、TS×Elバランス、WH+BH、FL/TSおよび動的n値について調べた結果を、表2に併記する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示したとおり、この発明に従い、第2相として、マルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトの混合組織を形成させ、かつ第2相中の針状フェライトを主相の初析フェライトよりも硬化させたものはいずれも、TS×El≧ 24000 MPa・%、動的n値≧0.35という優れた強度−伸びバランスおよび耐衝撃特性のみならず、WH+BH≧100 MPa 、FL/TS≧0.50という優れた加工・焼付硬化性および耐疲労特性が得られている。
【0036】
【発明の効果】
かくして、この発明に従い、主相を初析フェライトとし、かつ第2相をマルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトの混合組織にすると共に、第2相中の針状フェライトを主相の初析フェライトよりも硬化させることにより、優れた成形性と耐衝撃特性を兼ね備えるだけでなく、耐疲労特性にも優れた熱延鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態曲線図(CCT図)である。
【図2】この発明の成分系における代表的連続冷却変態曲線図(CCT図)である。
【図3】 (a) この発明に従い得られる第2相の特徴的な相構成および(b) 従来のTRIP鋼の第2相の相構成を示す模式図である。
【図4】 Cr量と強度−伸びバランスとの関係を示すグラフである。
【図5】 Cr量と動的n値との関係を示すグラフである。
【図6】加工硬化量(WH)および焼付硬化量(BH)の説明図である。
Claims (5)
- C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、
Mn:0.6 〜3.0 mass%、 Cr:0.2 〜2.0 mass%
を含有し、残部はFe および不可避的不純物の組成になり、主相が初析フェライトで、第2相がマルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトからなる鋼組織を有し、かつ第2相中の針状フェライトが主相の初析フェライトよりも硬化しており、該針状フェライトの硬化程度が、EBSDパターンの鮮映度(IQ)で評価して、次式
IQ P /IQ A ≧ 1.2
ここでIQ P : 初析フェライトの EBSD パターン鮮映度
IQ A : 針状フェライトの EBSD パターン鮮映度
の範囲を満足するものであることを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。 - 請求項1において、鋼組成が、さらに
P:0.01〜0.2 mass%、 Al:0.01〜0.3 mass%
のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。 - 請求項1または2において、鋼組成が、さらに
Ti:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.1 mass%
のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。 - 請求項1,2または3において、鋼組織中に占める第2相の比率が3〜40%であることを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。
- 請求項1,2,3または4において、第2相中のマルテンサイトの比率が10〜80%、残留オーステナイトの比率が8〜30%、針状フェライトの比率が5〜60%であることを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。
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