JPH1150197A - 耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板 - Google Patents

耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板

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JPH1150197A
JPH1150197A JP14957198A JP14957198A JPH1150197A JP H1150197 A JPH1150197 A JP H1150197A JP 14957198 A JP14957198 A JP 14957198A JP 14957198 A JP14957198 A JP 14957198A JP H1150197 A JPH1150197 A JP H1150197A
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Saiji Matsuoka
才二 松岡
Kazunori Osawa
一典 大澤
Shusaku Takagi
周作 高木
Masahiko Morita
正彦 森田
Takashi Obara
隆史 小原
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass%、 Cr:0.2 〜2.0 mass% を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、主相が初析
フェライト、第2相がマルテンサイト、針状フェライト
および残留オーステナイトからなる鋼組織とし、かつ第
2相中の針状フェライトを主相の初析フェライトよりも
硬化させる。 【効果】 強度−伸びバランスが 24000 MPa・%以上、
加工・焼付硬化量が 100MPa 以上で、動的n値が0.35以
上という優れた成形性と耐衝撃特性を兼ね備えるだけで
なく、FL/TSが 0.50 以上という耐疲労特性にも優
れた高強度高加工性熱延鋼板を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車用鋼板と
しての用途に用いて好適な耐衝撃特性および耐疲労特性
に優れた高強度高加工性熱延鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の軽量化が指向される中、成形性
に優れる高強度薄鋼板に対する要求が殊の外強くなって
いる。また、最近では、自動車の安全性も重視され、そ
のためには衝突時における安全性の目安となる耐衝撃特
性の向上も要求されている。さらに、経済性に対する配
慮も必要とされ、かかる経済性を考慮した場合には、冷
延鋼板に比べると熱延鋼板の方が有利である。
【0003】上記の現状を背景として、これまでにも種
々の高強度熱延鋼板が開発されている。例えば、特公平
6-41617号公報、特公平5-65566号公報および特公平5
-67682号公報には、高加工性高強度熱延鋼板として、残
留オーステナイト:5%以上を含むフェライト、ベイナ
イトおよび残留オーステナイトの組織になる鋼(以下、
TRIP鋼という)の製造方法が開示されている。しか
しながら、このTRIP鋼は、伸びが高く、成形性は良
好ではある(TS×El≧ 24000 MPa・%)ものの、現在の
厳しい耐衝撃特性を満足するまでにはいかないところに
問題を残していた。また、プレス成形時における加工硬
化量(WH)およびその後の塗装焼付時における焼付硬
化量(BH)が、70 MPa程度と低いという問題もあっ
た。この加工・焼付硬化量(WH+BH)が低いと、加
工−塗装焼付後における強度保証の面での不利が大き
い。
【0004】一方、耐衝撃特性に優れた高強度熱延鋼板
としては、特開平9−111396号公報に開示されているよ
うに、フェライトとマルテンサイトの2相組織になるい
わゆるDual Phase鋼(以下DP鋼という)が開発されて
いる。しかしながら、このDP鋼は、耐衝撃特性には優
れるものの、伸びが十分とはいえず、成形性の点に問題
を残していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したとおり、現在
までのところ、十分な成形性と厳しい安全性の両者を満
足する熱延鋼板は見当たらず、その開発が望まれてい
た。この発明は、上記の要望に有利に応えるもので、優
れた成形性と耐衝撃特性を兼ね備え(具体的には、強度
−伸びバランス(TS×El)が 24000 MPa・%以上、(W
H+BH)が 100 MPa以上、動的n値が0.35以上)、さ
らには耐疲労特性にも優れた(FL/TS≧ 0.50 )高
強度高加工性熱延鋼板を提案することを目的とする。
【0006】ここに、動的n値とは、発明者らが耐衝撃
特性の指標として新たに見出したもので、この動的n値
を用いることによって、耐衝撃特性を従来よりも一層的
確に評価することができる。すなわち、従来、耐衝突安
全性については、強度との関連で考察され、単に強度が
大きければ耐衝突安全性も高いとされてきたが、強度と
耐衝突安全性とは必ずしも一義的な関係にあるわけでは
ないことが判明した。そこで、この点につき、鋭意研究
を重ねた結果、耐衝突安全性を向上させる、つまり高速
での変形時(自動車の衝突時にはひずみ速度
【外1】 が2×103/s まで増加)におけるエネルギーを、鋼板で
より多く吸収するためには、鋼板を
【外2】 の条件で引張変形させた時のn値(以下、動的n値とい
う)を高くすることが有効であることが解明されたので
ある。ここでは、伸び10%における瞬間n値を動的n値
とする。なお、この動的n値を高くすることは、高速変
形時における強度向上にも有効であることが併せて見出
された。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、この発明の解明経
緯について説明する。さて、発明者らは、上記の目的を
達成すべく、まず従来鋼であるTRIP鋼について、そ
の組織と特性との関係について調査した。その結果、T
RIP鋼においては、成形性の向上に有利な残留オース
テナイトを十分な量得るためには、ベイナイト相を生成
させることが不可欠とされてきたが、このベイナイト相
が耐衝撃特性を劣化させる原因になっていることが判明
した。
【0008】そこで、発明者らは、かようなベイナイト
相とくに炭化物の生成を抑制したところ、すなわち、主
相である初析フェライト以外の第2相を、従来のベイナ
イト+残留オーステナイトから、針状フェライト+マル
テンサイト+残留オーステナイトの混合組織に変更した
ところ、所期した目的の達成に関し、望外の成果が得ら
れたのである。さらに、第2相中の針状フェライトを、
主相の初析フェライトよりも硬化させると、耐疲労特性
が有利に改善されることも併せて見出した。この発明
は、上記の知見に立脚するものである。
【0009】すなわち、この発明は、 C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass%、 Cr:0.2 〜2.0 mass% を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、主相が初析
フェライトで、第2相がマルテンサイト、針状フェライ
トおよび残留オーステナイトからなる鋼組織を有し、か
つ第2相中の針状フェライトが主相の初析フェライトよ
りも硬化していることを特徴とする耐衝撃特性および耐
疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板である。
【0010】この発明では、鋼の成分組成につき、上記
した基本組成の他、オーステナイト生成元素として P:0.01〜0.2 mass%、 Al:0.01〜0.3 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を、またさらには強度
改善成分として Ti:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.1 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有させることもで
きる。
【0011】また、この発明において、針状フェライト
の硬化程度については、EBSD(Electron Back Scat
tering Diffraction)を使用して、初析フェライトと針
状フェライトそれぞれのEBSDパターンの鮮映度(Im
age Quality :IQ)で各転位密度を評価し、その値の
比すなわちIQP /IQA (ここでIQP : 初析フェラ
イトのEBSDパターン鮮映度、IQA : 針状フェライトの
EBSDパターン鮮映度)が、次式 IQP /IQA ≧ 1.2 の範囲を満足するように調整することが好ましい。かく
して、両振り平面曲げ疲労試験における耐疲労限と引張
強さの比(FL/TS)が 0.50 以上という優れた耐疲
労特性が得られるのである。
【0012】さらに、この発明においては、鋼組織中に
占める第2相の比率を3〜40%とすることが好ましく、
さらに第2相における各相の比率については、マルテン
サイト:10〜80%、残留オーステナイト:8〜30%、針
状フェライト:5〜60%とすることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体的に説明す
る。図1に、従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態
曲線図(CCT図)を示す。同図に示したとおり、従来
のTRIP鋼は、熱間圧延後、初析フェライト域に若干
保持して初析フェライト(ポリゴナルフェライトともい
う)を析出させ、同時に未変態オーステナイト相への固
溶炭素の濃縮を促進して、オーステナイトの安定度を増
したのち、ベイナイト域に導き、この領域を徐冷するこ
とによって、ベイナイト変態を生じさせつつ、所定量の
オーステナイトを残留させていた。しかしながら、この
ようにして製造されたTRIP鋼は、強度および加工性
の面では優れるものの、十分な耐衝撃特性が得られない
ことは前述したとおりである。
【0014】そこで、発明者らは、ベイナイト変態を回
避すべく数多くの実験と検討を重ねた結果、(1) 鋼成分
としてCrを少量含有させると、上記CCT図におけるベ
イナイト変態域のノーズが後退して、ベイナイトの析出
(特に炭化物の析出)が抑制され、代わりに針状フェラ
イト(アシキュラーフェライトともいう)が析出する、
(2) かようにして形成された、針状フェライト、残留オ
ーステナイトおよびマルテンサイトからなる第2相は、
成形性を阻害することなしに、耐衝撃特性を格段に向上
させることを究明したのである。
【0015】図2に、この発明の成分系における代表的
CCT図を示す。同図に示したとおり、Crを少量添加す
ることによってベイナイト変態域のノーズが後退し、代
わりに針状フェライト域が顕著に出現するので、この針
状フェライト域に短時間保持し、好ましくはその後に急
冷することによって、第2相を針状フェライト、残留オ
ーステナイトおよびマルテンサイトからなる混合組織と
することができ、かくして優れた成形性と耐衝撃特性と
を兼ね備えた熱延鋼板を得ることができたのである。
【0016】ここに、針状フェライトとは、結晶粒の長
径が概ね10μm 以下、アスペクト比が1:1.5 以上、そ
してセメンタイト析出量が5%以下のものをいう。な
お、従来のTRIP鋼のベイナイト中には、セメンタイ
トの析出が多く認められる(10%以上)ので、この発明
の針状フェライトとTRIP鋼のベイナイトとは明確に
区別されるものである。
【0017】図3(a) に、この発明に従い得られる第2
相の特徴的な相構成を、また図3(b) には、従来のTR
IP鋼の第2相の相構成を、それぞれ模式で示す。従来
のTRIP鋼の第2相は、ベイナイト中に残留オーステ
ナイトが点在する相構成になっているのに対し、この発
明の第2相は、針状フェライトとマルテンサイトが層状
にならび、その界面(マルテンサイト側)に残留オース
テナイトが点在する形態になっている。このように、第
2相中に針状フェライトを析出させたことが、この発明
の特徴の一つであり、この針状フェライト相がTS×Elを
増加させると共に、動的n値を向上させるものと考えら
れる。なお、発明者らの知見によれば、針状フェライト
とマルテンサイトの界面面積率が大きくなるほど、動的
n値は大きくなる傾向にあることが確認されている。
【0018】さらに、発明者らの実験によれば、図2に
示す冷却工程において、針状フェライト域での保持温度
をできるだけ低目に設定すると、針状フェライト中の転
位密度が増加し、その結果、耐疲労特性が効果的に向上
することが見出された。ここに、針状フェライト中の転
位密度は、EBSDによってパターン鮮映度として評価
することができ、このEBSDで評価した針状フェライ
トのEBSDパターン鮮映度(IQA )に対する初析フェラ
イトのEBSDパターン鮮映度(IQP )の比が次式 IQP /IQA ≧ 1.2 の範囲を満足するように針状フェライト域での保持温度
を制御することによって優れた耐疲労特性を得ることが
できる。
【0019】また、この発明において、上記した第2相
の鋼組織中に占める比率は3〜40%とすることが好まし
い。というのは、相比率が3%に満たないと十分な耐衝
撃特性が得られず、一方40%を超えると伸びひいては強
度−伸びバランスがが低下するからである。より好まし
い比率は10〜30%である。なお、この発明において、相
比率は、鋼試料を研磨後、2%硝酸+エチルアルコール
溶液でエッチングし、顕微鏡写真を画像解析することに
より算出した。
【0020】さらに、第2相における各相の比率につい
ては、マルテンサイト:10〜80%(好ましくは30〜60
%)、残留オーステナイト:8〜30%(好ましくは10〜
20%)、針状フェライト:5〜60%(好ましくは20〜50
%)とすることが望ましい。というのは、マルテンサイ
トの比率が10%に満たないと十分な耐衝撃特性が得られ
ず、一方80%を超えると伸びひいては強度−伸びバラン
スが低下するからである。また、残留オーステナイトの
比率が8%に満たないと十分な伸びが得られず、一方30
%を超えると耐衝撃特性が低下するからである。さら
に、針状フェライトの比率が5%に満たないとやはり良
好な耐衝撃特性が得られず、一方60%を超えると伸びが
低下するからである。
【0021】なお、鋼組織全体に占める各相の比率とし
ては、マルテンサイトおよび針状フェライトはそれぞれ
5〜15%、残留オーステナイトは2〜10%程度とするの
が好適である。また、この発明において、鋼組織は全
て、主相である初析フェライトと、第2相であるマルテ
ンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトの
混合相からなっているとは限らず、ベイナイト相などが
若干析出する場合もあるが、かような第3相が混入して
も、その比率が第2相全体の10%以下であれば特性上何
ら問題はない。
【0022】次に、この発明において、鋼板の成分組成
を前記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.05〜0.40mass% Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オー
ステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしなが
ら、含有量が0.05mass%未満では、その効果に乏しく、
一方0.40mass%を超えると延性を低下させるので、C量
は0.05〜0.40mass%の範囲に限定した。
【0023】Si:1.0 〜3.0 mass% Siは、残留オーステナイトの生成に不可欠な元素であ
り、そのためには少なくとも 1.0mass%の添加を必要と
するが、 3.0mass%を超える添加は、延性の低下を招く
だけでなく、スケール性状を低下させ表面品質上も問題
となるので、Si含有量は 1.0〜3.0 mass%の範囲に限定
した。
【0024】Mn:0.6 〜3.0 mass% Mnは、鋼の強化元素として有用なだけでなく、残留オー
ステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしなが
ら、含有量が 0.6mass%未満ではその効果に乏しく、一
方 3.0mass%を超えると延性の低下を招くので、Mn量は
0.6〜3.0 mass%の範囲に限定した。
【0025】Cr:0.2 〜2.0 mass% このCr添加は、この発明の特徴の一つである。Crを添加
することにより、前述したように、第2相が針状フェラ
イト化する。そのためには、0.2 mass%以上の添加が必
要であるが、 2.0mass%を超えて添加すると粗大なCr炭
化物が生成して延性が阻害され、強度−伸びバランスお
よび動的n値とも劣化するので、Cr量は0.2 〜2.0 mass
%の範囲に限定した。好ましくは 0.3〜1.8 mass%であ
る。
【0026】図4および図5に、Cr量と強度−伸びバラ
ンスおよび動的n値との関係について調べた結果をそれ
ぞれ示す。図4,5より明らかなように、Cr含有量が
0.2mass%以上、 2.0mass%以下の範囲で、TS×El≧240
00 (MPa・%)、動的n値≧0.35の優れた加工性および耐
衝撃特性が得られている。
【0027】以上、基本成分について説明したが、この
発明では、オーステナイト生成元素としてPやAl、また
強度改善成分としてTiやNbを、以下の範囲で適宜含有さ
せることができる。 P:0.01〜0.2 mass% Pは、残留オーステナイト生成元素として有用である
が、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏
しく、一方 0.2mass%を超えると耐二次加工性が劣化す
るので、添加する場合には0.01〜0.2 mass%の範囲とす
ることが望ましい。
【0028】Al:0.01〜0.3 mass% Alも、Pと同様、残留オーステナイト生成元素として有
用なものであるが、含有量が0.01mass%に満たないとそ
の添加効果に乏しく、一方 0.3mass%を超えると延性の
低下を招くので、添加する場合には0.01〜0.3 mass%の
範囲とすることが望ましい。
【0029】Ti:0.005 〜0.25mass%、Nb:0.003 〜0.
1 mass% TiおよびNbはいずれも、主相であるフェライトを細粒化
させることによって、強度の向上に有効に寄与するの
で、必要に応じて添加することができる。特にTiを含有
させると、針状フェライトのノーズが短時間側に移行
し、コイルミドル部と比較して冷却速度が速くなるコイ
ル端部においても十分針状フェライトが析出するので、
歩留りが向上する効果もある。しかしながら、含有量が
あまりに少ないとその添加効果に乏しく、一方過度の添
加は延性の低下を招くので、それぞれ上記の範囲で含有
させることが好ましい。
【0030】次に、この発明鋼の製造方法について説明
すると、この発明鋼は、要するに、第2相としてマルテ
ンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトか
らなる混合組織を形成させれば良いのであるから、前掲
図2に示した冷却曲線に沿って、冷却させれば良い。そ
して、針状フェライト域での保持温度、換言するとコイ
ル巻取り温度をできるだけ低く設定して、針状フェライ
ト中の転位密度を増加させることにより、効果的に耐疲
労特性を向上させるのである。
【0031】すなわち、 780〜980 ℃程度で熱間仕上げ
圧延後、 620〜780 ℃の初析フェライト域のノーズ近傍
まで冷却したのち、この温度域に1〜10秒程度保持(ま
たは緩冷却)することにより、主相である初析フェライ
トを析出させ、ついで 250〜350 ℃の針状フェライト域
まで冷却してコイルに巻取り、この領域に2〜60分程度
保持(または緩冷却)後、好ましくは50℃/h以上の速度
で室温まで冷却することにより、針状フェライト、マル
テンサイトおよび残留オーステナイトからなる第2相を
形成させると共に、第2相中の針状フェライトを硬化さ
せるのである。
【0032】
【実施例】表1に示す種々の成分組成になる鋼スラブ
を、1200℃に加熱後、粗圧延し、ついで仕上げ温度:88
0 ℃で熱間仕上げ圧延を終了したのち、60℃/sの速度で
700℃まで冷却し、この温度に10秒保持してから、同じ
く60℃/sの速度で表2に示す種々の温度まで冷却したの
ち、コイルに巻取り、巻取り後15分間保持してから、10
0 ℃/hの速度で室温まで冷却した。得られた熱延板か
ら、引張試験片を切り出し、それらの試験片について、
ひずみ速度:2×10-2/sの条件で引張試験を実施し、降
伏強さ(YS)、引張強さ(TS)および伸び(El)を求めた。ま
た、ホプキンソンプレッシャーバー試験材(材料とプロ
セス vol.9 (1996)P.1108〜1111)を用いて、ひずみ速
度:2×103/s の条件で引張試験を実施し、伸びが10%
の時の瞬間n値(動的n値)を求めた。さらに、周波
数:20Hzの両振り平面曲げ試験法による疲労限(FL)
を測定すると共に、EBSDを用いて針状フェライトの
硬化指数(IQP /IQA )を求めた。またさらに、プ
レス成形時における加工硬化量(WH)およびその後の
塗装焼付時(170℃)における焼付硬化量(BH)につい
ても測定した。なお、WH,BHは、ひずみ速度:2×
10-2/sの引張試験機を用い、図6により求めた。各熱
延鋼板の鋼組織、IQP /IQA 、TS×Elバランス、W
H+BH、FL/TSおよび動的n値について調べた結果
を、表2に併記する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】表2に示したとおり、この発明に従い、第
2相として、マルテンサイト、針状フェライトおよび残
留オーステナイトの混合組織を形成させ、かつ第2相中
の針状フェライトを主相の初析フェライトよりも硬化さ
せたものはいずれも、TS×El≧ 24000 MPa・%、動的n
値≧0.35という優れた強度−伸びバランスおよび耐衝撃
特性のみならず、WH+BH≧100 MPa 、FL/TS≧0.50
という優れた加工・焼付硬化性および耐疲労特性が得ら
れている。
【0036】
【発明の効果】かくして、この発明に従い、主相を初析
フェライトとし、かつ第2相をマルテンサイト、針状フ
ェライトおよび残留オーステナイトの混合組織にすると
共に、第2相中の針状フェライトを主相の初析フェライ
トよりも硬化させることにより、優れた成形性と耐衝撃
特性を兼ね備えるだけでなく、耐疲労特性にも優れた熱
延鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態曲線
図(CCT図)である。
【図2】この発明の成分系における代表的連続冷却変態
曲線図(CCT図)である。
【図3】(a) この発明に従い得られる第2相の特徴的な
相構成および(b) 従来のTRIP鋼の第2相の相構成を
示す模式図である。
【図4】Cr量と強度−伸びバランスとの関係を示すグラ
フである。
【図5】Cr量と動的n値との関係を示すグラフである。
【図6】加工硬化量(WH)および焼付硬化量(BH)
の説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 周作 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 森田 正彦 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass%、 Cr:0.2 〜2.0 mass% を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、主相が初析
    フェライトで、第2相がマルテンサイト、針状フェライ
    トおよび残留オーステナイトからなる鋼組織を有し、か
    つ第2相中の針状フェライトが主相の初析フェライトよ
    りも硬化していることを特徴とする耐衝撃特性および耐
    疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼組成が、さらに P:0.01〜0.2 mass%、 Al:0.01〜0.3 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になる
    ことを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた
    高強度高加工性熱延鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼組成が、
    さらに Ti:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.1 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になる
    ことを特徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた
    高強度高加工性熱延鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、針状フ
    ェライトの硬化程度が、EBSDパターンの鮮映度(I
    Q)で評価して、次式 IQP /IQA ≧ 1.2 ここでIQP : 初析フェライトのEBSDパターン鮮映度 IQA : 針状フェライトのEBSDパターン鮮映度 の範囲を満足するものである耐衝撃特性および耐疲労特
    性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項1,2,3または4において、鋼
    組織中に占める第2相の比率が3〜40%であることを特
    徴とする耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高
    加工性熱延鋼板。
  6. 【請求項6】 請求項1,2,3,4または5におい
    て、第2相中のマルテンサイトの比率が10〜80%、残留
    オーステナイトの比率が8〜30%、針状フェライトの比
    率が5〜60%であることを特徴とする耐衝撃特性および
    耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板。
JP14957198A 1997-06-06 1998-05-29 耐衝撃特性および耐疲労特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板 Expired - Fee Related JP3752844B2 (ja)

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