JP3752763B2 - 磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法に関し、特に低ボロン含有Fe−B−Si系アモルファス合金について、その磁気特性の改善をばらつきの低減に併せて達成しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
軟磁気特性に優れたアモルファス合金としては、種々のFe−B−Si系合金組成が知られている。例えば、ChenらやLuborskyらの米国特許第 4300950号明細書には、80〜84at%の鉄、12〜15at%のボロンおよび約6at%以下の珪素を含んだ合金組成が開示されている。また、米国特許第 5370749号明細書には、77〜80at%の鉄、12〜16at%のボロンおよび5〜10at%の珪素よりなる合金が開示されている。
このように、従来知られているFe−Si−B系アモルファス合金は、そのほとんどがボロンの含有量を10at%以上と指定している。
この理由は、ボロンはこの種合金の非晶質化にとって重要であり、ボロン含有量が高い程合金のアモルファス形成能が強く、また熱的安定性にも優れるからである。
【0003】
実際、従来報告されているボロン含有量が10at%以下のFe−Si−B系アモルファス合金の磁気特性は、鉄損および磁束密度ともにボロン含有量が10at%以上の組成のものに比べると劣っていた。
従って、ボロン含有量が10at%以下のFe−Si−B系アモルファス合金に関する報告は極めて少なく、Cを経年変化の安定性および非晶質形成能の改善材として添加したものが特開昭57−145964号公報および特開昭58-42751号公報に、また表面処理性の改善剤としてMnを添加したものが特開昭61−136660号公報に、さらに鋳造性の改善剤としてCrを添加したものが特開昭58−210154号公報に挙げられている程度である。
しかも、かかる既知合金系の低ボロン域における特性は、上述したとおり、あまり良くはなかった。
【0004】
また、板厚管理による鉄損の改善は、特開平4−333547号公報に、高周波帯域での鉄損低減を要件とする記載がみられる。しかしながら、上記公報で対象とする周波数帯域は、その実施例に記載されているとおり、100kHz, 200kHz, 500kHz, 1MHz といった極めて高い帯域であって、このように高い周波数帯域では鉄損の大部分は渦電流損で占められていることは周知の事実であり、板厚を薄くすれば渦電流損が下がることは公知である。
【0005】
これに対し、この発明が対象とするような商用周波数帯域では、鉄損に及ぼす板厚の影響として、Fe−Si−B系アモルファス合金の場合は鉄損を最小とする板厚にはある最適値(佐藤駿 1993年、東北大学博士論文によれば36μm )があり、それ以下に板厚を低下させてもヒステリシス損失が増加するため総鉄損値はかえって増加する旨の報告(同 1993年、東北大学博士論文)がある。
【0006】
また、リボン粗度に関しては、特開昭62−192560号公報に、粗度管理による占積率の向上が紹介されているが、それによれば、鉄損、磁束密度に関してはリボン粗度が低減すると磁壁移動が容易になるためヒステリシス損は低下するが、磁区の粗大化が起こるため渦電流損は増加すると報告されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、従来報告されているボロン含有量が10at%以下のFe−Si−B系アモルファス合金の磁気特性は、鉄損、磁束密度ともにボロン含有量が10at%以上の組成のものに比べて劣り、またばらつきが著しいところに問題を残していた。
しかしながら、ボロンは高価な元素であるので、従来よりも低い10at%以下のボロン含有量で、高ボロン含有アモルファス合金と特性的に遜色のないものが得られれば、その経済的効果は計り知れない。
この発明は、上記の要請に有利に応えるもので、アモルファス合金の板厚および表面粗さの適正化を図ることにより、ボロン含有量が10at%以下であってもボロン含有量が10at%以上のものと遜色のない優れた磁気特性が得られ、またばらつきも小さい磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の有利な製造方法提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりである。
.B6〜10at%および Si 10 17at %を含有し、残部は Fe および不可避的不純物の組成になるFe−B−Si系合金溶湯を、単ロール法により急冷凝固して、板厚:15〜25μm のアモルファスリボンを製造するに際し、
射出圧力:0.3 〜0.6 kgf/cm2 、ロール周速:35 m/s以上、雰囲気中 CO 2 濃度: 50 %以上の条件下で急冷凝固することを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
2.上記1において、 Fe −B− Si 系合金溶湯が、さらに、C: 0.1 〜2 at %、 Mn 0.2 1.0 at %およびP: 0.02 〜2 at %のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
【0013】
.上記1または2において、アモルファスリボンを製造する際のノズルスリット厚みを 0.4〜1.0 mmとしたことを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
【0014】
.上記1または2において、アモルファスリボンを製造する際のノズル・ロール間ギャップを 0.1〜0.2 mmとしたことを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を由来するに至った実験結果について説明する。
図1に、Fe78Si22-XX 組成アモルファス合金のB含有量と鉄損との関係について調べた結果を示すが、Fe−Si−B系アモルファス合金においては、B含有量が10at%以下になると、B含有量が10at%以上の場合に比べて、鉄損特性が劣化するだけでなく、そのばらつきが大きくなる。
【0017】
そこで、発明者らは、この原因を解明すべく、種々のパラメータが磁気特性に及ぼす影響について調査した。
その結果、鉄損特性に影響を及ぼすパラメータとしては板厚と表面粗さが殊の外強く、鉄損W(W13/50)と板厚tおよび表面粗さRa(カットオフ値:0.8 mm)との間には次式(1) の関係があることが判明した。
W=a+b・t+c・Ra --- (1)
ただし、a,b,cは、Fe,Si,B,C,PおよびMn等の成分組成によって定まる係数で、次の範囲を満足する。
0<a<0.02, 0.001<b<0.004, 0.05<c<0.2
【0018】
上記の (1)式で特筆すべきは、表面粗さの係数cが、ボロン含有量が10at%以上のアモルファス合金とボロン含有量が10at%以下のアモルファス合金とでは、全く逆の傾向を示すことである。
すなわち、従来のボロン含有量が10at%以上のアモルファス合金では、表面粗さが 0.8μm 以下になると係数cが急激に増大し、かえって鉄損の劣化を招いていた。
この理由は、特開昭62−192560号公報に報告されているように、リボンの表面粗さが向上すると磁壁移動が容易になるためヒステリシス損は低下するものの、同時に磁区の粗大化がおこるため渦電流損はかえって増加し、結果的に総鉄損は増大するからである。
【0019】
これに対し、ボロン含有量が10at%以下の低ボロンアモルファス合金では、表面粗さを 0.8μm 以下としても係数cは成分系毎に一定していて、大きくなることはなかった。
従って、ボロン含有量が10at%以下のアモルファス合金では、従来、鉄損特性の面から不利とされていた 0.8μm 以下の領域まで表面粗さを低減することにより、鉄損特性の一層の向上が期待できるわけである。
【0020】
そこで、発明者らは、特にボロン含有量が10at%以下のアモルファス合金について、その鉄損特性およびそのばらつきに及ぼす板厚および表面粗さの影響について綿密な検討を行った。
図2に、Fe78Si148 組成およびFe78Si9 13組成のアモルファス合金における板厚と鉄損との関係について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、ボロン含有量が10at%以下のアモルファス合金は、ボロン含有量が10at%以上のアモルファス合金よりも幾分薄めの15〜25μm の範囲でとりわけ良好な鉄損値を示す。
この理由は、板厚が25μm 超になると表面が局所的に結晶化するためであり、また板厚が15μm 未満では、パドルへのガス巻き込みやノズルの部分詰まりによる筋が発生し、表面性状が劣化するためと考えられる。
そこで、この発明では、アモルファス合金の板厚については、15〜25μm の範囲に限定した。より好ましい範囲は15〜20μm である。
【0021】
次に、表面粗さが鉄損特性に及ぼす影響について調査した。
Fe78Si148 組成およびFe78Si157 組成の合金溶湯について、鋳造時における射出圧力とロール周速と種々に変化組み合わせることにより、板厚は 20 μm の一定とする一方、表面粗さは種々に異なる試料を作製した。
図3に、各試料の表面粗さ(ロール面側)と鉄損特性との関係について調べた結果を示す。
また同図には、比較のため従来のFe78Si9 13組成の合金についての調査結果も併せて示す。
なお、表面粗さは、カットオフ値λc として一般的な値である 0.8mmを採用した場合の中心線平均粗さRa0.8 で評価した。
【0022】
同図より明らかなように、低ボロンアモルファス合金は、表面粗さRa0.8 が小さくなるほど鉄損特性は改善されている。
これに対し、従来の高ボロンアモルファス合金は、表面粗さRa0.8 : 1.0 μm 程度で極小値を示し、それよりも表面粗さが小さくなると鉄損値はかえって高くなった。
【0023】
従ってこの発明では、アモルファス合金の表面粗さにつき、Ra0.8 で 0.8μm 以下の範囲に限定したのである。
好ましい範囲は 0.6μm 以下、より好ましい範囲は 0.3μm 以下である。
なお、表面粗さRa0.8 が 0.8μm 超では良好な鉄損が得られない理由は、表面が粗くなるとリボンのガスポケット率が増加し、製板時における冷却速度の大幅な低下をきたし、これにより表面に局所的に結晶核が形成され、表面の磁区に乱れが生じることによるものと考えられる。
【0024】
上述したとおり、表面粗さRa0.8 を 0.8μm 以下に制限することによって、鉄損値を効果的に低減することができる。
しかしながら、稀にではあるが、表面粗さと鉄損値とが整合しない場合が観察された。
そこで、次に発明者らは、この原因について調査したところ、かような鉄損値のばらつきは、表面粗さを測定する際のカットオフ値に起因することを究明した。
すなわち、種々の鉄損を示すリボンロール面側の表面粗さと鉄損値との関係を調査した結果、表面粗さを測定する際のカットオフ値によって異なった相関が得られたのである。
【0025】
図4,5および6にそれぞれ、Fe78Si148 組成のアモルファス合金(板厚:20μm )について、カットオフ値を 2.5 mm, 0.8mm, 0.25 mm に設定した場合の中心線平均粗さRaと鉄損との関係について調査した結果を示す。
図4に示した、カットオフ値:2.5 mmの場合には、表面粗さRa2.5 と鉄損値との間には相関が見られない。
この点、図5に示したとおり、カットオフ値を 0.8mmと小さくした場合には、表面粗さRa0.8 と鉄損値とはかなり強い相関を呈している。
しかしながら、まだ幾分かのばらつきが見られる。
これに対し、図6に示したように、カットオフ値を0.25mmとした場合には、表面粗さRa0.25と鉄損値とは極めて良い相関を呈するようになる。
【0026】
上述したとおり、カットオフ値によって、表面粗さと鉄損値との相関に差異が生じる理由は、次のとおりと考えられる。
すなわち、磁壁のピン止めサイトとして寄与するのは、リボン表面のエアポケット(直径:10〜20μm 、深さ:1〜2μm )のような急峻な起伏であり、試料の部位に因る板厚のゆらぎや表面のうねり(波長:1〜2mm、深さ:2〜3μm )のような緩やかな起伏は、あまり急激な静磁エネルギーの変化を生じないため、磁壁のピン止めサイトとしてはあまり寄与しないことによるものと、推察される。
【0027】
この発明において、表面粗さの評価に用いているJIS B 0601 に規定の中心線平均粗さRaは、測定の基準となる測定面上にある2点を結ぶ直線を規定し、表面の起伏とこの基準線とで囲まれた面積の大きさで表される。
この2点間の距離をカットオフ値という。
大きなカットオフ値で測定した場合は、エアポケットが存在しない試料においても、表面の長周期のうねりによって大きなRa値を表示するので、あまり大きなカットオフ値での測定はエアポケットの有無を反映しているとは言い難い。
それ故、2.5 mmや 0.8mmといったカットオフ値での測定結果は、磁気特性との相関が不明瞭になるものと考えられる。
【0028】
これに対し、エアポケットのみを評価するには、エアポケットの極く周辺での起伏を検出し、かつ表面のうねりを拾わない程度の短距離のカットオフ値を採用する必要があると考えられ、カットオフ値:0.25mmという小さな値が、0.8 mmやそれ以上のカットオフ値よりはエアポケットの有無の評価に適しているために、磁気特性との相関が明瞭に観察されるのである。
【0029】
次に、この発明の成分組成範囲について説明する。
B:6〜10at%
Bは、アモルファス形成能を向上させる有用元素であるが、含有量が6at%に満たないとその効果に乏しく、一方10at%を超える添加は高価なフェロボロンの含有量が多くなるので低B化による低コスト化というこの発明の趣旨に反し、またB量が10at%を超えると鉄損の表面粗さ依存性が小さくなり、表面粗さを管理する意味合いが薄れるので、B量は6〜10at%の範囲に制限した。
より好ましい範囲は6〜8at%の範囲である。
【0030】
Si:10〜17at%
Siは、磁歪の低減および熱安定性の向上に有効に寄与するが、10at%未満ではその添加効果に乏しく、一方17at%を超えるとリボンの脆化が問題となるので、Si量は10〜17at%の範囲に制限した
残部は、 Fe および不可避的不純物である。
また、この発明では、Fe−B−Si系にC,MnおよびP等の成分を適宜添加することもでき、その好適組成範囲は次のとおりである。
【0031】
C:0.1 〜2at%
Cは、アモルファス形成能を高めると共に、磁束密度および鉄損の改善に有効な元素であるが、0.1 at%未満ではその添加効果に乏しく、一方2at%を超えるとリボンの熱的安定性が低下するので、C量は0.1 〜2at%とすることが好ましい。より好適な範囲は 0.1〜1at%である。
【0032】
Mn:0.2 〜1.0 at%
Mnは、結晶化の抑制に有効に作用するが、 0.2at%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 1.0at%を超えると磁束密度の低下をきたすので、0.2 〜1.0 at%とするのが好ましい。より好適な範囲は 0.2〜0.7 at%である。
【0033】
P: 0.02 〜2 at
Pは、アモルファス形成能を強化するだけでなく、表面粗さの改善にも有効に寄与するが、0.02at%に満たないと表面粗さの改善効果が無く、一方2at%を超えるとリボンの脆化や熱的安定性の低下が問題となるので、0.02〜2at%とすることが好ましい。なお、脆化や熱的安定性に対して厳しい要求のある広幅材については、0.02〜1at%の範囲が好適である。
【0034】
次に、この発明に従う製造方法について説明する。
前述したとおり、この発明では、表面粗さをRa0.8 で 0.8μm 以下、さらにはRa0.25で 0.3μm 以下に抑制することが重要である。
そこで、発明者らは、表面粗さの調整に強く作用する製造条件について検討したところ、製造条件の中でも特に射出圧力とロール周速とが表面粗さに及ぼす影響が大きく、これらを所定の範囲に制御すれば所望の目的が達成されることを究明した。
【0035】
図7に、Fe78Si148 組成の合金溶湯を、単ロール法により、板厚を20μm の一定にする条件下で、ロール周速と射出圧力とを同時に変化させてアモルファスリボンを製造した場合におけるロール周速と表面粗さとの関係について調査した結果を示す。
なお、その他の製造条件は、ノズルスリット厚み:0.7 mm、ロール・ノズル間ギャップ:0.15mmである。
同図より明らかなように、ロール周速が上昇するにつれて表面粗さは小さくなり、ロール周速:35 m/s以上でRa0.8 を 0.8μm 以下とすることができた。
なお、ロール周速があまりに速くなると、回転ぶれの影響が大きくなり、かえって表面粗さは劣化するので、上限は50 m/s以下程度とするのが好ましい。
【0036】
次に、図8に、図7と同じ条件でアモルファスリボンを製造した場合における射出圧力と表面粗さとの関係について調査した結果を示す。
同図より明らかなように、射出圧力が大きくなるにつれて表面粗さは小さくなり、射出圧力:0.3 kgf/cm2 以上でRa0.8 を 0.8μm 以下とすることができた。
しかしながら、射出圧力が 0.6 kgf/cm2を超えて大きくなるとパドルブレークが発生する危険が生じるので、射出圧力は 0.3〜0.6 kgf/cm2 とする必要がある。
【0037】
上述したとおり、ロール周速:35 m/s以上とすることによって、また射出圧力を 0.3〜0.6 kgf/cm2 とすることによって、表面粗さRa0.8 を 0.8μm 以下にすることができるが、例えばロール周速を速くするとそれに伴って板厚は小さくなり、一方射出圧力を増大すると板厚は大きくなるので、板厚がこの発明で所期した15〜25μm を満足するように、上記の範囲からロール周速および射出圧力を選択することが肝要である。
【0038】
なお、その他の製造条件については、ノズルスリット厚みおよびロール・ノズル間ギャップが重要で、それぞれノズルスリット厚み:0.4 〜1.0 mm、ロール・ノズル間ギャップ:0.10〜0.20mmの範囲に制限することが好ましい。
というのは、ノズルスリット厚みが 0.4mmに満たないと、製造したリボンの表面粗度が増大して鉄損が増加する傾向にあり、一方、1.0 mmより広い場合には射出圧が 0.3 kgf/cm2以下でもパドルブレークが発生し、それ以上の高射出圧での製板が不可能となる可能性が高いからである。
また、ノズル・ロール間ギャップが 0.1mmより狭い場合にも、製造したリボンの表面粗度が増大して鉄損の増加を招き、一方、1.0mm より広い場合にはやはり高射出圧での製板が不可能となるおそれが大きい。
【0039】
かくして、板厚を15〜25μm 、表面粗さをRa0.8 で 0.8μm 以下に制御することにより、鉄損(W13/50)が 0.15 W/kg以下で、かつばらつきが標準偏差で0.03W/kg以下の鉄損に優れたアモルファスリボンを安定して得ることができるのである。
さらに、表面粗さをRa0.25で 0.3μm 以下に制御すれば、鉄損のばらつきを標準偏差で0.02W/kg以下の低減することができ、一層有利である。
【0040】
ところで、発明者らは、上記した一連の実験の過程で、アモルファスリボンの表面粗さは鋳造雰囲気にも左右され、特に雰囲気中のCO2 濃度を50%以上とすることが、表面粗さの改善に極めて有効であることを見出した。
【0041】
図9に、Fe78Si148 組成の合金溶湯を、ロール周速:35 m/s、射出圧力:0.4 kgf/cm2 、ノズルスリット厚み:0.7 mm、ロール・ノズル間ギャップ:0.15mmの条件で急冷凝固してアモルファスリボンを製造した時の、雰囲気中CO2 濃度と表面粗さRa0.8 との関係について調べた結果を示す。
同図より明らかなように、雰囲気中CO2 濃度を50%以上とすることにより、表面粗さRa0.8 をより一層低減することができた。
【0042】
【作用】
この発明は、低ボロンアモルファス合金と従来の高ボロンアモルファス合金とでは、全く逆の粗度依存性を示すことの新規知見に立脚して開発されたものである。
すなわち、従来から、高ボロンアモルファス合金では、あまりに表面粗さが良くなると却って磁区が粗大化し、鉄損は低下するため、表面粗さはある程度粗い方が良いとされていた。
これに対し、低ボロンアモルファス合金は、表面粗さが改善されるほど鉄損は低下し、しかもその依存性は極めて大きい。
従って、この発明に従い、薄肉でかつ表面粗さが小さいアモルファス合金を製造することにより、低ボロン含有Fe−Si−B系アモルファス合金においても磁気特性を飛躍的に向上させることができるのである。
【0043】
表面粗さが改善されると磁壁移動が容易になるので、鉄損のなかでもヒステリシス損が減少することが知られているが、従来の高ボロン含有Fe−Si−B系アモルファス合金の代表例であるFe78Si9 13合金の場合は、ロール面側の表面粗さRa0.8 が 1.0μm 以下の範囲では、表面粗さが改善されるほど鉄損はむしろ増加することが知られている。このような挙動を示す理由は、表面粗さが向上すると磁区の粗大化が生じ、渦流損がヒステリシス損の減少分以上に増大するためであると説明されている。
従って、従来は、表面粗さを必要以上に向上させる必要はなく、しかも鉄損の粗さ依存性があまり大きくないため表面粗さを制御しようという発想自体がなかったのである。
【0044】
これに対し、この発明の低ボロン含有Fe−Si−B系アモルファス合金では、表面粗さが向上するほど鉄損が減少しており、しかもその依存性は大きい。
また、鉄損の板厚依存性を見ると、どちらも板厚と共に鉄損は低下するが、その依存性はボロン10at%以下のFe−Si−B系アモルファス合金の方が大きい。
従って、殊に低ボロンアモルファス合金において、板厚と表面粗さが磁気特性に及ぼす影響が大きく、従って板厚と表面粗さを適切な範囲に管理することにより、高ボロンアモルファス合金と遜色のない鉄損特性が得られるのである。
【0045】
【実施例】
実施例1
表1〜3に示す成分組成になる各種Fe−B−Si系合金溶湯を、単ロール法により、同じく表1〜3に示す条件下で急冷凝固して、アモルファス合金リボンを作製した。
得られた各製品薄帯の板厚、表面粗さ(Ra0.8, Ra0.25)、鉄損および磁束密度について調査した結果を、それぞれ表1〜3に併記する。
【0046】
【表1】
Figure 0003752763
【0047】
【表2】
Figure 0003752763
【0048】
【表3】
Figure 0003752763
【0049】
同表より明らかなように、この発明に従い得られたアモルファスリボンは、低Bであるにもかかわらず、従来の高B含有アモルファスリボンと同等もしくはそれ以上の優れた鉄損特性が得られている。
【0050】
実施例2
表4〜12に示す成分組成になる各種Fe−B−Si系合金溶湯を、単ロール法により、同じく表4〜12に示す条件下で急冷凝固して、アモルファス合金リボンを作製した。
得られた各製品薄帯の板厚、表面粗さ(Ra0.8, Ra0.25)、鉄損および磁束密度について調査した結果を、それぞれ表4〜12に併記する。
【0051】
【表4】
Figure 0003752763
【0052】
【表5】
Figure 0003752763
【0053】
【表6】
Figure 0003752763
【0054】
【表7】
Figure 0003752763
【0055】
【表8】
Figure 0003752763
【0056】
【表9】
Figure 0003752763
【0057】
【表10】
Figure 0003752763
【0058】
【表11】
Figure 0003752763
【0059】
【表12】
Figure 0003752763
【0060】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、ボロン含有量が10at%以下の低ボロン含有Fe−B−Si系アモルファス合金において、従来の高ボロン含有Fe−B−Si系アモルファス合金と遜色のない優れた鉄損特性を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Fe78Si22-XX 組成アモルファス合金のB含有量と鉄損との関係を示したグラフである。
【図2】 Fe78Si148 組成およびFe78Si9 13組成アモルファス合金の板厚と鉄損との関係を示したグラフである。
【図3】 Fe78Si148 組成、Fe78Si157 組成およびFe78Si9 13組成アモルファス合金の表面粗さRa0.8 と鉄損との関係を示したグラフである。
【図4】 Fe78Si148 組成アモルファス合金の表面粗さRa2.5 と鉄損との関係を示したグラフである。
【図5】 Fe78Si148 組成アモルファス合金の表面粗さRa0.8 と鉄損との関係を示したグラフである。
【図6】 Fe78Si148 組成アモルファス合金の表面粗さRa0.25と鉄損との関係を示したグラフである。
【図7】 Fe78Si148 組成の合金溶湯を急冷凝固する際のロール周速と表面粗さRa0.8 との関係を示したグラフである。
【図8】 Fe78Si148 組成の合金溶湯を急冷凝固する際の射出圧力と表面粗さRa0.8 との関係を示したグラフである。
【図9】 Fe78Si148 組成の合金溶湯を急冷凝固する際の雰囲気中CO2 濃度と表面粗さRa0.8 との関係を示したグラフである。

Claims (4)

  1. 6〜10at%および Si 10 17at %を含有し、残部は Fe および不可避的不純物の組成になるFe−B−Si系合金溶湯を、単ロール法により急冷凝固して、板厚:15〜25μm のアモルファスリボンを製造するに際し、
    射出圧力:0.3 〜0.6 kgf/cm2 、ロール周速:35 m/s以上、雰囲気中 CO 2 濃度: 50 %以上の条件下で急冷凝固することを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
  2. 請求項1において、 Fe −B− Si 系合金溶湯が、さらに、C: 0.1 〜2 at %、 Mn 0.2 1.0 at %およびP: 0.02 〜2 at %のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
  3. 請求項1または2において、アモルファスリボンを製造する際のノズルスリット厚みを 0.4〜1.0 mmとしたことを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
  4. 請求項1または2において、アモルファスリボンを製造する際のノズル・ロール間ギャップを 0.1〜0.2 mmとしたことを特徴とする、磁気特性に優れた低ボロンアモルファス合金の製造方法。
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