JP3752709B2 - 内燃機関のスロットル制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車載用内燃機関の吸気調量バルブであるスロットルバルブの開度をモータ等を通じて電気的に制御する内燃機関のスロットル制御装置に関し、特に上記スロットルバルブの制御ハンチングを防止する上で好適な制御装置構造の具現に関する。
【0002】
【従来の技術】
スロットルバルブの開度を電気的に制御するスロットル制御装置は、アクセル操作量に対するスロットル開度の特性を任意に設定することができることから、例えば加速要求等、車両の運転状態に的確に対応することのできるシステムとして近年注目を集めている。図13に、こうしたスロットル制御装置の一例についてその構造を模式的に示す。
【0003】
この図13に示されるように、同スロットル制御装置にあっては、電磁クラッチ18を介してDC(直流)モータ19からの動力(トルク)がスロットルバルブ5に伝達されるようになっている。これら電磁クラッチ18及びDCモータ19は、同図においては図示を割愛した電子制御装置によってそれぞれその駆動が制御される。なお、同図13においては、図の上方がスロットルバルブ5の開弁方向を示し、図の下方がスロットルバルブ5の閉弁方向を示している。
【0004】
一方、スロットルバルブ5には同バルブの開度を検出するスロットルセンサ16が、またアクセル側にもその操作量(開度)を検出するアクセルセンサ17がそれぞれ設けられている。それらセンサ16及び17の出力は何れも、上記図示を割愛した電子制御装置に取り込まれて、スロットル開度及びアクセル操作量がそれぞれモニタされる。
【0005】
そして、図13(a)に示す、上記クラッチ18がON(オン)される通常の制御時には、上記電子制御装置を通じて、
(1)アクセルセンサ17によって検出されるアクセルレバー62の位置、すなわちアクセル操作量(開度)とスロットルセンサ16によって検出されるスロットルバルブ5の開度とを取り込む。
(2)これら取り込んだアクセル操作量及びスロットル開度をもとに、スロットルバルブ5の制御指令値を演算する。
(3)この演算した制御指令値に応じて上記モータ19を駆動し、スロットルバルブ5を開閉する。
といったフィードバック制御が実行される。
【0006】
なおこのとき、アクセルリターンスプリング61によって閉方向に付勢されている上記アクセルレバー62とバルブリターンスプリング51によってやはり閉方向に付勢されている中間レバー53とは、常に所定の間隙が保持されるよう、上記電子制御装置を通じてスロットルバルブ5の開度が制御される。
【0007】
中間レバー53は、スロットルバルブ5と物理的に連結されて退避走行用スプリング52により開方向に付勢されているバルブレバー54との兼ね合いで、
(イ)この図13(a)に示す通常の制御時にはバルブレバー54の動きに伴って移動する。
(ロ)図13(b)に示す上記クラッチ18のOFF(オフ)時には、上述の如く退避走行用スプリング52によって開方向に付勢されている同バルブレバー54の動きを規制する。
といった態様で作用するレバーである。
【0008】
特にクラッチ18のOFF(オフ)時、上記(ロ)の規制を実現するために、同スロットル制御装置にあっては、バルブリターンスプリング51と退避走行用スプリング52とで、その各トルクの関係を
バルブリターンスプリング51のトルク> 退避走行用スプリング52のトルク
といった関係に設定している。
【0009】
このクラッチ18がOFFとなって、上記モータ19とスロットルバルブ5との連結が断たれているときの同装置の動きについて、図13(b)を参照して更に説明する。
【0010】
電磁クラッチ18がOFFとなっていて且つ、アクセル操作量(開度)が所定値以下である場合、スロットルバルブ5は、上記バルブリターンスプリング51と退避走行用スプリング52とのトルク関係に基づき、同図13(b)に示される態様で、中間レバーストッパ55の位置に保持される。
【0011】
そしてこのときには、アクセルレバー62と中間レバー53との上述した制御関係も解除されているため、ドライバがアクセルペダルを所定値以上に踏み込むことによってアクセルレバー62が中間レバー53に当接し、以後は、その踏み込み量に応じて中間レバー53が押し上げられるようになる。
【0012】
こうして中間レバー53が押し上げられることにより、退避走行用スプリング52によって開方向に付勢されている上記バルブレバー54がこれに追従して開方向に動き、ひいてはスロットルバルブ5も、これに追従して開弁されるようになる。これは、該スロットル制御装置に異常等が来たした際のフェイルセーフとしていわゆる退避走行を行う際に利用される動作モードである。
【0013】
また、この退避走行モードでは、ドライバがアクセルペダルから足を離すことによって、アクセルリターンスプリング61により閉方向に付勢されている上記アクセルレバー62がアクセル全閉ストッパ63の位置に戻され、それに伴い、スロットルバルブ5も、バルブリターンスプリング51と退避走行用スプリング52との上記トルク関係に基づき、同図13(b)に示される態様で、中間レバーストッパ55の位置に戻される。
【0014】
なおこれら図13(a)及び(b)において、ストッパ56は、上記スロットルバルブ5の全閉位置に対応して配設されるバルブ全閉ストッパである。同スロットル機構においては上述のように、電磁クラッチ18をOFFとしたとき、上記スロットルバルブ5がこのバルブ全閉ストッパ56の位置ではなく、これよりもやや開いた上記中間レバーストッパ55の位置に戻されるようにしている。これは、同電磁クラッチ18のOFFに伴ってスロットルバルブ5が全閉となり、内燃機関が急停止してしまうといったような事態を避けるための配慮である。
【0015】
また、上記スロットルセンサ16及びアクセルセンサ17としては、それぞれ2つのセンサ出力が互いに比較される2重系のものを想定している。スロットルセンサ16及びアクセルセンサ17としてこうした2重系のものを採用することにより、それらセンサ自身の故障等についても的確に対処することができるようになる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このように、スロットルバルブの開度を電気的に制御するスロットル制御装置にあっては、その通常の制御に際し、アクセル操作量に対するスロットル開度の特性を上記演算するスロットルバルブの制御指令値に応じて任意に設定することができるようになっている。そしてこのため、例えば加速要求等、車両の運転状態に的確に対応することができるようになることは上述した。
【0017】
また、こうしたスロットル制御装置にあっては、センサの故障やその他の原因によって電気的なスロットル制御が不能となった場合でも、上記電磁クラッチをOFFとすることで、退避走行モードとして上述した最低限のスロットル操作は確保されるようになる。
【0018】
ところが、同スロットル制御装置の上記構成によると、上記電磁クラッチ18をONとした通常の制御にあって、図14に示されるように、スロットルバルブ5が上記中間レバーストッパ55の位置付近に制御される場合には、DCモータ19による駆動トルクの反転に起因して、同バルブ5のハンチングを引き起こす可能性がある。以下に、同装置のこうした動作態様について詳しく説明する。
【0019】
例えばいま、図14(a)に示されるように、スロットルバルブ5が上記中間レバーストッパ55よりもやや下側(閉弁側)の位置に制御されているとすると、上記DCモータ19は、スロットルバルブ5を上側(開弁側)に付勢している上記退避走行用スプリング52のトルクに釣り合うだけのトルクF1を同バルブ5の閉弁側に発生する必要がある。
【0020】
また逆に、図14(b)に示されるように、スロットルバルブ5が上記中間レバーストッパ55よりもやや上側(開弁側)の位置に制御されているとすると、上記DCモータ19は、スロットルバルブ5を下側(閉弁側)に付勢している上記バルブリターンスプリング51のトルクと上側(開弁側)に付勢している上記退避走行用スプリング52のトルクとの差分に釣り合うだけのトルクF2を同バルブ5の開弁側に発生する必要がある。
【0021】
このように、同スロットル制御装置にあっては、上記中間レバーストッパ55の位置を境に、DCモータ19の発生するトルクの方向が逆転する。
そしてこのため、同中間レバーストッパ55の位置付近でスロットルバルブ5を制御しようとすると、DCモータ19による発生トルクの逆転が繰り返されることがあり、こうしてモータトルクの逆転が繰り返される場合には、上記制御が困難となって、スロットルバルブ5にハンチングが生じることとなる。
【0022】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、上記スロットル機構におけるスロットルバルブのハンチングを防止して、より信頼性の高いスロットル制御を実現することのできる内燃機関のスロットル制御装置を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
こうした目的を達成するため、請求項1記載の発明では、内燃機関のスロットルバルブを閉弁方向に付勢する第1の付勢手段と、同スロットルバルブを開弁方向に付勢する第2の付勢手段と、同スロットルバルブを当該車両のアクセル操作と独立に、且つこれら第1及び第2の付勢手段による付勢力に抗して開閉駆動するスロットル駆動手段と、同スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサと、前記アクセル操作量を検出するアクセルセンサと、前記スロットル駆動手段と前記スロットルバルブとの機械的な連結を断続するクラッチ手段と、このクラッチ手段による連結の有無を切換制御するクラッチ制御手段と、前記クラッチ手段が連結無しに制御されているとき、前記第1及び第2の付勢手段による付勢力を所定にバランスせしめて、前記スロットルバルブを所定開度位置に保持する保持手段と、前記クラッチ手段が連結有りに制御されているとき、前記各センサの出力に基づいて前記スロットル駆動手段を通じた前記スロットルバルブの開閉量をフィードバック制御するスロットル制御手段と、同じく前記クラッチ手段が連結有りに制御されている状態にあって、このスロットル制御手段によるスロットルバルブの制御指令値が、同スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置近傍を示すとき、当該制御指令値を補正する指令値補正手段とを具えてスロットル制御装置を構成する。
【0024】
また、請求項2記載の発明では、該請求項1記載の発明の構成において、前記指令値補正手段を、前記制御指令値が増加する方向で前記所定開度位置の近傍となったとき、同制御指令値を増加補正し、前記制御指令値が減少する方向で前記所定開度位置の近傍となったとき、同制御指令値を減少補正するものとして構成する。
【0025】
また、請求項3記載の発明では、同請求項1記載の発明の構成において、前記指令値補正手段を、前記制御指令値が前記所定開度位置近傍で保持されるとき、同制御指令値を増加若しくは減少補正するものとして構成する。
【0026】
また、請求項4記載の発明では、同請求項1記載の発明の構成において、前記指令値補正手段を、前記制御指令値が前記所定開度位置近傍となったとき、前記スロットル制御手段によるスロットルバルブの制御ゲインを低める方向に補正するものとして構成する。
【0027】
また、請求項5記載の発明では、同請求項1記載の発明の構成において、前記指令値補正手段を、前記制御指令値が前記所定開度位置近傍となったとき、前記アクセル操作量の変化が所定値以下の条件で、前記スロットル制御手段のフィードバック制御を禁止し、前記スロットルバルブを当該位置に保持するものとして構成する。
【0028】
また、請求項6記載の発明では、これら請求項1〜5の何れかに記載の発明の構成において、前記指令値補正手段を、前記スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置を学習し、該学習した位置に基づいて前記制御指令値の前記所定開度位置近傍への推移を検知するものとして構成する。
【0029】
これら各発明による作用は以下の通りである。
まず、請求項1記載の発明の、
(a)内燃機関のスロットルバルブを閉弁方向に付勢する第1の付勢手段。
(b)同スロットルバルブを開弁方向に付勢する第2の付勢手段。
(c)同スロットルバルブを当該車両のアクセル操作と独立に、且つこれら第1及び第2の付勢手段による付勢力に抗して開閉駆動するスロットル駆動手段。
(d)同スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサ。
(e)前記アクセル操作量を検出するアクセルセンサ。
(f)前記スロットル駆動手段と前記スロットルバルブとの機械的な連結を断続するクラッチ手段。
(g)このクラッチ手段による連結の有無を切換制御するクラッチ制御手段。
(h)前記クラッチ手段が連結無しに制御されているとき、前記第1及び第2の付勢手段による付勢力を所定にバランスせしめて、前記スロットルバルブを所定開度位置に保持する保持手段。
(i)前記クラッチ手段が連結有りに制御されているとき、前記各センサの出力に基づいて前記スロットル駆動手段を通じた前記スロットルバルブの開閉量をフィードバック制御するスロットル制御手段。
(j)同じく前記クラッチ手段が連結有りに制御されている状態にあって、このスロットル制御手段によるスロットルバルブの制御指令値が、同スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置近傍を示すとき、当該制御指令値を補正する指令値補正手段。
を具える構成において、上記(a)、(b)、及び(h)の各手段は、主に上記クラッチ手段が連結無しに制御されるときに上記スロットルバルブを安全な位置に退避せしめる手段である。また上記(c)〜(g)、及び(i)の各手段は、該スロットル制御装置としての主に前記通常の制御において用いられる手段である。
【0030】
ここで、上記(c)のスロットル駆動手段は、通常の制御とはいえ、上記第1及び第2の付勢手段による付勢力に抗してスロットルバルブを開閉駆動するものであることから、同スロットルバルブが上記(h)の保持手段によって保持される所定開度位置近傍に制御される場合には、このスロットル駆動手段による駆動トルクの反転に起因して、スロットルバルブのハンチングを引き起こす可能性があることは前述した。
【0031】
そこで請求項1記載の発明では、上記(j)の指令値補正手段を設けて、上記(c)のスロットル駆動手段によるスロットルバルブの制御指令値が、同スロットルバルブの上記(h)の保持手段によって保持される所定開度位置近傍を示すとき、当該制御指令値を補正するようにしている。
【0032】
こうした制御指令値の補正により、その制御されるスロットルバルブは、例えば上記所定開度位置近傍から強制的に外されるなど、上記スロットル駆動手段による駆動トルクの反転が生じにくい状態となり、上記ハンチングの発生も好適に回避されるようになる。
【0033】
また、請求項2記載の発明によるように、上記(j)の指令値補正手段を、
・前記制御指令値が増加する方向で前記所定開度位置の近傍となったとき、同制御指令値を増加補正し、前記制御指令値が減少する方向で前記所定開度位置の近傍となったとき、同制御指令値を減少補正するもの。
として構成すれば、スロットルバルブが前記所定開度位置近傍をクロスして開閉制御される際の同所定開度位置近傍でのハンチングの発生を好適に回避することができるようになる。
【0034】
しかも、同制御構造によるように、上記制御指令値の変化方向に応じて各々同一方向にスロットルバルブの開度をステップ補正するようにしたことで、通常の制御におけるアクセル操作との対応が大きく崩れることのない円滑な指令値補正が実現されるようにもなる。
【0035】
また、請求項3記載の発明によるように、同指令値補正手段を、
・前記制御指令値が前記所定開度位置近傍で保持されるとき、同制御指令値を増加若しくは減少補正するもの。
として構成すれば、スロットルバルブが前記所定開度位置近傍に保持されようとする際であれ、同スロットルバルブの実際の位置を該所定開度位置近傍から遠ざけることができるようになる。このため、スロットルバルブをこうした所定開度位置近傍に保持すべく制御指令が発せられている場合であっても、同スロットルバルブのハンチングは好適に回避されるようになる。
【0036】
また、請求項4記載の発明によるように、同指令値補正手段を、
・前記制御指令値が前記所定開度位置近傍となったとき、前記スロットル制御手段によるスロットルバルブの制御ゲインを低める方向に補正するもの。
として構成すれば、例えばスロットルバルブが前記所定開度位置近傍をクロスして開閉制御される際であれ、その制御位置が該所定開度位置近傍に達したところで一時的にその制御ゲインが落とされ、当該フィードバック系としての反応が鈍化されることとなる。このため、やはり同スロットルバルブのハンチングは起こりにくい状況となり、その発生が好適に回避されるようになる。
【0037】
また、請求項5記載の発明によるように、同指令値補正手段を、
・前記制御指令値が前記所定開度位置近傍となったとき、前記アクセル操作量の変化が所定値以下の条件で、前記スロットル制御手段のフィードバック制御を禁止し、前記スロットルバルブを当該位置に保持するもの。
として構成すれば、スロットルバルブが前記所定開度位置近傍にあった場合でも、加速や減速にかかるアクセル操作が行われない限り、そのフィードバック制御は解除され、同スロットルバルブの位置も当該位置に保持されるようになる。少なくともこのような制御状態にあっては、スロットルバルブのハンチングは起こらない。
【0038】
なお、上記(c)のスロットル駆動手段が、パルス信号のデューティ比制御に応じてその駆動トルクを発するDCモータである場合、このデューティ比制御を解除し、数mA(ミリアンペア)の保持電流を同DCモータに付与することで、上記スロットルバルブの当該位置への保持は実現される。
【0039】
一方、請求項6記載の発明によるように、同(j)の指令値補正手段を、
・前記スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置を学習し、該学習した位置に基づいて前記制御指令値の前記所定開度位置近傍への推移を検知するもの。
として構成すれば、スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置が該保持手段の経年変化や前記スロットルセンサの取付誤差等に起因して変化する場合であれ、この所定開度位置は、同指令値補正手段によって常に正しく認識されるようになる。
【0040】
そして、この常に正しく認識される位置情報に基づいて前記制御指令値の前記所定開度位置近傍への推移が検知されることで、上述したハンチングを回避するための指令値補正もより的確に実行されることとなる。
【0041】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に、この発明にかかる内燃機関のスロットル制御装置についてその第1の実施形態を示す。
【0042】
この実施形態にかかるスロットル制御装置は、そのスロットル構造として先の図13及び図14に例示した構造のものに適用されて、そのスロットルバルブのハンチングを好適に防止することのできる装置として構成されている。
【0043】
はじめに、図1を参照して、同実施形態にかかるスロットル制御装置が適用される内燃機関、並びにその周辺装置の概略構成について説明する。
図1において、内燃機関1は、例えばV型6気筒の4サイクルエンジンとして構成されている。
【0044】
この内燃機関1において、その吸気通路2には、上流にエアクリーナ3が設けられ、該エアクリーナ3の下流側には、同機関1への吸入空気量を検出するエアフローメータ4が設けられている。このエアフローメータ4によって検出される吸入空気量は、空気量信号Qaとして、後述する電子制御装置20に取り込まれるようになる。
【0045】
また、吸気通路2の上記エアフローメータ4の下流側にはスロットルバルブ5が設けられ、このスロットルバルブ5の開閉に応じて、当該機関1に供給される空気量が調整される。上述のように、このスロットルバルブ5、並びにその周辺構造は、先の図8に示される構造となっており、その周辺装置として配設されているスロットルセンサ16及びアクセルセンサ17の出力もそれぞれスロットル開度信号VTA及びアクセル開度信号Apとして、後述する電子制御装置20に取り込まれる。
【0046】
また、吸気通路2は、インテークマニホールド6を介して同機関1の各気筒に接続されており、この吸気通路2から吸入され、上記スロットルバルブ5により調量された空気は、該インテークマニホールド6を経て、機関1の各気筒に分配供給されるようになる。
【0047】
一方、このインテークマニホールド6には、機関1の各気筒にそれぞれ対応して燃料噴射弁であるインジェクタ7が配設されている。それら各インジェクタ7を通じて噴射供給される燃料は、上記調量され、分配供給される吸気通路2からの吸入空気と混合されて、同機関1の各気筒に供給される。
【0048】
機関1の各気筒においては、吸気バルブ8の開閉に伴ってこの混合気が燃焼室9に導入され、該導入された混合気が点火プラグ10の点火により燃焼されることで、ピストン11が押し下げられクランクシャフト12へのトルク付与が行われる。また、燃焼後の排気ガスは、排気バルブ13の開閉に伴い排気通路14を経て外部に排出される。
【0049】
また、上記クランクシャフト12の近傍には、その回転角を検出するクランク角センサ15が配設されている。このクランク角センサ15からは、クランク角で30度毎にパルス信号が出力され、この出力されたパルス信号が、同機関1の回転数信号Neとして電子制御装置20に取り込まれる。
【0050】
電子制御装置20は、上記取り込まれる空気量信号Qaや回転数信号Neに基づいてインジェクタ7の駆動を制御するとともに、上記取り込まれるスロットル開度信号VTA及びアクセル開度信号Apに基づいてスロットルバルブ5を開閉制御する例えばマイクロコンピュータを有して構成される装置である。
【0051】
次に、この電子制御装置20並びにその周辺の構成について、同図1の参照のもとに更に説明する。
電子制御装置20において、CPU21は、上記空気量信号Qaや回転数信号Ne、更にはスロットル開度信号VTA、アクセル開度信号Ap等を所要に処理して、内燃機関1の運転においてその都度必要とされる燃料噴射量やスロットルバルブ55の開度等を演算する部分である。
【0052】
また、ROM22は、いわゆるプログラムメモリとして、内燃機関1の運転を制御するための各種プログラム、すなわち燃料噴射制御プログラムやスロットル制御プログラム等が予め格納されたメモリである。CPU21では、このROM22に格納されているプログラムに従って、上記各種の演算処理を実行する。
【0053】
また、RAM23は、いわゆるデータメモリとして、上記センサの出力データやCPU21による演算処理データ等が一時格納されるメモリである。後述する各種のフラグも、このRAM23に対してセットされる。
【0054】
また、インジェクタ駆動回路24は、上記空気量信号Qaや回転数信号Neに基づきCPU21を通じて演算される燃料噴射量に対応したパルス幅の信号を形成して上記インジェクタ7を駆動する回路である。これによりインジェクタ7からは、上記演算された燃料噴射量に対応した量の燃料が機関1の各気筒に対して噴射供給されるようになる。
【0055】
また、電磁クラッチ駆動回路25は、機関1の運転状態に応じてCPU21から与えられるON(オン)/OFF(オフ)指令に基づき前記電磁クラッチ18のON(連結有り)/OFF(連結無し)を切換制御する回路である。この電磁クラッチ18がONに制御されることで通常のDCモータ19によるスロットル制御が可能な状態となり、同クラッチ18がOFFに制御されることで、例えば退避走行時等、アクセル操作に半メカニカルに対応したスロットル操作が可能な状態となることは、図8に基づいて既述した通りである。
【0056】
また、A/D変換回路27は、上記取り込まれる空気量信号Qa、スロットル開度信号VTA、及びアクセル開度信号Ap等をA(アナログ)/D(ディジタル)変換してCPU21に出力するための回路であり、D/A変換回路28は、CPU21によって演算されるスロットルバルブ5の開度指令値(スロットル指令値)TTPをD/A変換してDCモータ駆動回路30に出力するための回路である。
【0057】
DCモータ駆動回路30は、同図1に併せ示されるように、PID制御回路31、PWM(パルス幅変調)回路32、及びドライバ33を具えて前記DCモータ19を駆動する回路である。
【0058】
因みに該DCモータ駆動回路30において、PID制御回路31は、上記D/A変換されたスロットル指令値TTPと前記スロットルセンサ16の出力であるスロットル開度信号VTAとに基づき、その偏差を縮小すべく比例(P)・積分(I)・微分(D)処理を施して、DCモータ19の駆動量(制御量)を演算する回路である。この演算された駆動量は、上記PWM回路32によって対応するデューティ比信号に変換され、該変換されたデューティ比信号がドライバ33を介してDCモータ19に印加される。すなわち、電磁クラッチ18がONとなっている場合、スロットルバルブ5は、DCモータ駆動回路30を通じたこうしたDCモータ19の駆動によって、上記スロットル指令値TTPにより指令されている開度にフィードバック制御されることとなる。なお、PWM回路32によって変換された上記デューティ比信号は、CPU21にも取り込まれてその内容がモニタされる。
【0059】
図2〜図6は、電子制御装置20によるスロットルバルブ5の制御に関して、その処理手順、処理態様を具体的に示したものであり、以下、これら図2〜図6を併せ参照して、同実施形態にかかるスロットル制御装置としてのスロットル制御態様を更に詳述する。
【0060】
まず、図2に示す同スロットル制御のメインルーチンについて説明する。
電子制御装置20は、その電源(図示せず)の投入に伴い、同図2に示されるメインルーチンの実行を開始する。なお同ルーチンは、例えば4ms(ミリ秒)の周期にて繰り返し実行されるものとする。
【0061】
さて、このメインルーチンにおいて、電子制御装置20はまず、ステップS100にて、イニシャルチェックを実行する。このイニシャルチェックでは、電気系統各部の通信異常の有無についてのチェックやRAM値のミラーチェック等が行われる。
【0062】
こうしてイニシャルチェックを終えると、電子制御装置20は次に、ステップS200にて、プライマリチェックを実行する。このプライマリチェックでは、主に前記中間レバーストッパ55(図13、図14参照)の位置についての学習処理が行われる。なお、このプライマリチェックの詳細については、後に、図3を参照して具体的に説明する。
【0063】
このプライマリチェックを終えた電子制御装置20は次いで、ステップS300にて、フラグ処理を実行する。このフラグ処理では、例えばトラクション制御や、アイドル回転制御、定速走行制御、非線形制御(通常のスロットル制御)等、内燃機関1の運転状態に応じてそれら各種制御内容(制御状態)を示すフラグをRAM23にセットする処理が行われる。
【0064】
その後、電子制御装置20は、ステップS400にて、上記セットされている制御内容(制御状態)フラグに対応したスロットルバルブ5の開度指令値TTPを演算する。そして、必要であれば、すなわちスロットルセンサ16により検出されるスロットルバルブ5の開度が上記学習された中間レバーストッパ55の位置近傍を示すときには、ステップS500にて、その演算した開度指令値TTPを補正する処理を併せ実行する。この補正処理の詳細については、後に、図4を参照して具体的に説明する。
【0065】
こうしてその都度のスロットルバルブ5の開度指令値TTPを演算し、或いは補正した電子制御装置20は、ステップS600にて、それら演算し、若しくは補正した開度指令値TTPを、D/A変換回路28を介して上記DCモータ駆動回路30に出力する。
【0066】
なお、内燃機関1の始動後は、スロットル制御のメインルーチンとして、上記ステップS300〜S600にかかる処理のみが、同電子制御装置20において繰り返し実行される。
【0067】
次に、図3を併せ参照して、上記メインルーチンのステップS200の処理として実行されるプライマリチェックについて具体的に説明する。
電子制御装置20は、上記イニシャルチェックを終えると、プライマリチェックとして、図3に示される手順にて、前記スロットル機構(図13、図14参照)における中間レバーストッパ55の位置を学習する。なお、同学習処理は、図示しないキースイッチがIG(イグニション)−ONから機関始動まで操作される間を利用して実行される。
【0068】
さて、このプライマリチェックルーチンにおいて、電子制御装置20は、ステップS201、ステップS202、及びステップS203にて、それぞれ
・IG−ONであること。
・電磁クラッチ18がOFFに制御されていること。
・スタータがOFFである(クランキングが開始されていない)こと。
が満たされていることを条件に、同プライマリチェックを開始する。これら条件が1つでも満たされない場合には、計時用のカウンタをクリアした後(ステップS210)、同ルーチンを抜けて、メインルーチンに復帰する。なお、上記電磁クラッチ18がOFFに制御されていることで、スロットルバルブ5が上記中間レバーストッパ55の位置に保持されるようになることは、図13を参照して既述した通りである。
【0069】
これら条件が全て満たされている場合、電子制御装置20は、ステップS204にて、前記スロットルセンサ16の出力すなわちスロットル開度情報VTAの読み込みを開始する。そして、ステップS205にて、この開度情報VTAが変化していないか否かを判断し、変化している旨判断される場合には、上記同様、計時用のカウンタをクリアした後(ステップS210)、同ルーチンを抜けて、メインルーチンに復帰する。なおここで、開度情報VTAiは、今回読み込まれた開度情報VTAの値であり、開度情報VTAi-1は、前回読み込まれた同開度情報VTAの値である。該スロットル開度情報VTAが変化している場合とは、スロットルバルブ5が上記中間レバーストッパ55の位置に完全に保持されていない場合であり、そのような場合、同位置についての学習は中止される。
【0070】
このステップS205において、上記スロットル開度情報VTAが変化していない旨判断される場合、電子制御装置20は更に、上記計時用カウンタのカウント値をアップしつつ所定時間の経過を待ち(ステップS206及びステップS207)、例えば32ms等、所定時間に達したところで、
|VTA−VTSP| ≦ 所定値1
といった関係が満たされることを条件に(ステップS208)、ステップS209にて、中間レバーストッパ55の位置についての学習値VTSPをそのときのスロットル開度情報VTAに基づき更新する。
【0071】
なおここで、上記「所定値1」とは、上記学習値VTSPの上下限ガード値であり、上記読み込んだスロットル開度情報VTAとその時点での学習値VTSPとの差の絶対値がこの所定値1(上下限ガード値)を超えるときにも、上記中間レバーストッパ55の位置についての学習は中止される。
【0072】
こうした態様で中間レバーストッパ55の位置についての学習が行われることにより、スロットルバルブ5の中間レバーストッパ55によって保持される所定開度位置が該ストッパ55や中間レバー53などの経年変化やスロットルセンサ16の取付誤差等に起因して変化する場合であれ、同所定開度位置は、電子制御装置20によって常に正しく認識されるようになる。なお、上記更新された学習値VTSPは、前記RAM23若しくは図示を割愛したバックアップRAM等に格納保存される。
【0073】
次に、図4を併せ参照して、上記メインルーチンのステップS500の処理として実行される補正処理について具体的に説明する。
電子制御装置20は、先の制御内容(制御状態)フラグに対応したスロットルバルブ5の開度指令値TTPを演算すると、この補正処理を通じて、該演算した指令値TTPの値が上記学習した中間レバーストッパ55の位置近傍の値か否かをチェックし、中間レバーストッパ55の位置近傍の値であれば、同図4に示される補正ルーチンを通じてこれを補正する。
【0074】
すなわちこの補正ルーチンにおいて、電子制御装置20は、ステップS511にて、
|TTP−VTSP| ≦ 所定値2
といった比較に基づいて、上記演算したスロットルバルブ5の開度指令値TTPの値が上記学習した中間レバーストッパ55の位置VTSPの近傍の値か否かをチェックする。ここで、「所定値2」は、この近傍の範囲か否かを判定するための判定値である。
【0075】
該チェックの結果、同開度指令値TTPの値が中間レバーストッパ55の位置VTSPの近傍ではない旨判断される場合、電子制御装置20は、そのまま当該補正ルーチンを抜け、上記演算した開度指令値TTPの値を前記DCモータ駆動回路30に対し出力する(図2ステップS600)。
【0076】
他方、開度指令値TTPの値が中間レバーストッパ55の位置VTSPの近傍である旨判断される場合、電子制御装置20は、更にステップS512で、この開度指令値TTPが減少する傾向にあるか、或いは増加する傾向にあるかを判断する。同図4において、値「TTPi」は今回算出された開度指令値を示し、値「TTPi-1」は前回算出された開度指令値を示している。
【0077】
そして電子制御装置20では、同指令値TTPが減少する傾向にある、すなわち減少する方向で中間レバーストッパ55の位置VTSPの近傍に達した旨判断される場合には、ステップS513にて、この指令値TTPに、例えば
TTP = VTSP−α
といった減少補正を施し、逆に、同指令値TTPが増加する傾向にある、すなわち増加する方向で中間レバーストッパ55の位置VTSPの近傍に達した旨判断される場合には、ステップS514にて、この指令値TTPに、例えば
TTP = VTSP+α
といった増加補正を施す。この補正された開度指令値TTPの値も、上記同様、前記DCモータ駆動回路30に対して出力される(図2ステップS600)。
【0078】
図5は、こうした補正処理が施されなかった場合、また図6は、こうした補正処理が施された場合のそれぞれ同装置によるスロットル制御態様を示したものである。
【0079】
次に、これら図5及び図6を併せ参照して、この第1の実施形態の装置によるスロットル制御態様を更に詳述する。なお、これら図5及び図6において、図5(a)及び図6(a)は、前記DCモータ19に付与されるデューティ比信号の挙動を示し、図5(b)及び図6(b)は、電子制御装置20を通じて演算される上記スロットルバルブ5の開度指令値TTP(目標開度)の推移を示し、図5(c)及び図6(c)は、同スロットルバルブ5の実際の挙動としての前記スロットルセンサ16の出力推移を示している。
【0080】
さて、スロットルバルブ5が前記中間レバーストッパ位置(VTSP)近傍に制御される際、図5(b)に示されるように、その指令値TTPに何等補正処理が施されなかった場合には、図5(a)に示されるように、モータトルクの反転が繰り返されることに起因して、図5(c)に「バルブハンチングA」或いは「バルブハンチングB」として示されるようなスロットルバルブ5のハンチングが生じることとなる。ここで、同図5(c)の「バルブハンチングA」とは、上記スロットルバルブ5が中間レバーストッパ55の位置(VTSP)をクロスして開閉制御される際に生じやすいハンチングであり、「バルブハンチングB」とは、同スロットルバルブ5が中間レバーストッパ55の位置(VTSP)付近に保持制御される際に生じやすいハンチングである。
【0081】
ところが、スロットルバルブ5の同等の制御において、図6(b)の特に時間領域Aでの処理として示されるように、その指令値TTPに、同第1の実施形態の装置としての上述した補正が施される場合には、
・指令値TTPが増加して中間レバーストッパ55の位置近傍に達したときには「VTSP+α」としてステップ補正される。
・指令値TTPが減少して中間レバーストッパ55の位置近傍に達したときには「VTSP−α」としてステップ補正される。
といった態様で、同位置(VTSP)からその指令値TTPが遠ざけられるようになる。
【0082】
このため、少なくとも同スロットルバルブ5が中間レバーストッパ55の位置(VTSP)をクロスして開閉制御される際であれ、モータトルクの反転が繰り返されることはなく、それに起因するバルブハンチングの発生も、図6(c)に示されるように好適に回避されることとなる。
【0083】
以上のように、同第1の実施形態にかかる装置によれば、
(1)スロットルバルブ5が前記中間レバーストッパ55の位置近傍をクロスして開閉制御される際の同位置近傍でのハンチングの発生を好適に回避することができる。
(2)しかも、制御指令値TTPの変化方向に応じて各々同一方向にスロットルバルブ5の開度をステップ補正するようにしたことで、アクセル操作との対応が大きく崩れることのない円滑な指令値補正が実現されるようにもなる。
(3)また、上記中間レバーストッパ55の位置をその都度学習するようにしたことで、経年変化やセンサ取付誤差によらずに同位置を常に正しく認識することができる。
(4)そして、この常に正しく認識される学習情報VTSPに基づいて制御指令値TTPの前記中間レバーストッパ55の位置近傍への推移が検知されるため、上述したハンチングを回避するための指令値補正もより的確に実行されることとなる。
等々、多くの優れた効果が得られるようになる。
【0084】
なお、同第1の実施形態の装置にあっては上述のように、指令値TTPをその推移方向に応じてステップ補正することとしたが、この指令値補正処理としては他にも、次の第2〜第4の実施形態として例示するような各種の処理形態を採用することができる。以下、それら各実施形態について、それぞれその要点を順次説明する。
【0085】
(第2実施形態)
この第2の実施形態では主に、先の図5(c)に示される「バルブハンチングB」についてその発生を防止する。
【0086】
具体的には、同第2の実施形態にかかる装置にあって、電子制御装置20は、前記メインルーチン(図2)におけるステップS500の補正処理として、図7に示される補正処理ルーチンを実行する。
【0087】
すなわちこの補正処理ルーチンにおいて、電子制御装置20はまず、ステップS521にて、先の第1の実施形態と同様、
|TTP−VTSP| ≦ 所定値2
といった比較に基づいて、スロットルバルブ5の開度指令値TTPが中間レバーストッパ55の位置についての前記学習値VTSP近傍か否かをチェックした後、この学習値VTSP近傍である旨判断される場合には更に、ステップS522にて、
|TTPi−TTPi-1| ≦ 所定値3
といった比較に基づいて、当該指令値TTPが保持されている状態か否かをチェックする。ここで、「TTPi」及び「TTPi-1」はそれぞれ前述のように、「今回算出された開度指令値」及び「前回算出された開度指令値」であり、また「所定値3」は、この指令値TTPが保持されている状態か否かを判定するための判定値である。
【0088】
そして、当該指令値TTPが上記中間レバーストッパ55の位置(VTSP)近傍で保持されている旨判断される場合、電子制御装置20は、同指令値TTPがこのストッパ位置(VTSP)よりも上(開弁側)か下(閉弁側)かを判断し(ステップS523)、上(開弁側)であれば、ステップS524にて、
TTP = VTSP+β
といった増加補正を施し、下(閉弁側)であれば、ステップS525にて、
TTP = VTSP−β
といった減少補正を施す。
【0089】
図8に、第2の実施形態にかかる装置のこうした補正処理に基づくスロットル制御態様を例示する。なお、この図8においても、図8(a)は前記DCモータ19に付与されるデューティ比信号の挙動を示し、図8(b)は電子制御装置20を通じて演算される上記スロットルバルブ5の開度指令値TTP(目標開度)の推移を示し、図8(c)は、同スロットルバルブ5の実際の挙動としての前記スロットルセンサ16の出力推移を示している。
【0090】
ここでも、先の図5と同等のスロットル制御を想定している。すなわち、制御指令値TTPの上記
・中間レバーストッパ55の位置(VTSP)近傍にある。
・大きな変化がなく、ほぼ保持されている。
といった条件下において、何等補正が施されなかった場合には、図5(c)に「バルブハンチングB」として示されるようなスロットルバルブ5のハンチングを招くこととなる。
【0091】
ところが、スロットルバルブ5の同制御において、図8(b)の特に時間領域Bでの処理として示されるように、その指令値TTPに、同第2の実施形態の装置としての上述した補正が施される場合には、
・指令値TTPが中間レバーストッパ55の位置近傍で且つ、同位置の上(開弁側)に保持されている場合には「VTSP+β」としてステップ補正される。
・指令値TTPが中間レバーストッパ55の位置近傍で且つ、同位置の下(閉弁側)に保持されている場合には「VTSP−β」としてステップ補正される。
といった態様で、当該位置からその指令値TTPが遠ざけられるようになる。
【0092】
したがってこの場合も、図8(a)に示されるようにモータトルクの反転が繰り返されることはなく、それに起因するバルブハンチングの発生も、図8(c)に示されるように好適に回避されることとなる。
【0093】
(第3実施形態)
この第3の実施形態では、制御指令値TTPが前記中間レバーストッパ55の位置についての学習値VTSP近傍となったとき、同スロットルバルブ5の前記フィードバック制御にかかるゲインを低める方向に補正する。
【0094】
具体的には、同第3の実施形態にかかる装置にあって、電子制御装置20は、前記メインルーチン(図2)におけるステップS500の補正処理として、図9に示される補正処理ルーチンを実行する。
【0095】
すなわちこの補正処理ルーチンにおいて、電子制御装置20はまず、ステップS531にて、先の第1或いは第2の実施形態と同様、
|TTP−VTSP| ≦ 所定値2
といった比較に基づいて、スロットルバルブ5の開度指令値TTPが中間レバーストッパ55の位置についての学習値VTSP近傍か否かをチェックする。
【0096】
そして、この開度指令値TTPが学習値VTSP近傍である旨判断される場合には、ステップS532にて上記制御ゲインを低める変更を行う。これは、前記PID制御回路31の比例項(P項)定数をより小さい値に変更することで対応することができる。
【0097】
他方、同開度指令値TTPが学習値VTSP近傍ではない旨判断される場合には、ステップS533の処理として、通常の制御ゲインに基づく通常のフィードバック制御を行う。
【0098】
図10に、該第3の実施形態にかかる装置のこうした補正処理に基づくスロットル制御態様を例示する。
例えばスロットルバルブ5が前記中間レバーストッパ55の位置近傍をクロスして開閉制御される場合において、上記補正処理が施されなかった場合には、その何れの時間領域においても、上記通常の制御ゲインに基づく応答性の高いフィードバック制御が行われる。そしてこのときには、上記中間レバーストッパ55の位置をクロスする同図10の時間領域Cとして示す領域において、スロットルバルブ5に、破線にて示す態様でのハンチングが生じやすくなる。
【0099】
ところが、スロットルバルブ5の同制御において上述のように、中間レバーストッパ55の位置(学習値VTSP)近傍においてフィードバック制御にかかる制御ゲインを低める補正が施される場合には、その応答性が鈍り、同図10に実線にて示される態様で、バルブハンチングの発生が回避されるようになる。
【0100】
このように、同第3の実施形態にかかる装置によっても、スロットルバルブ5のハンチングは起こりにくい状況となり、その発生が好適に回避されるようになる。
【0101】
(第4実施形態)
この第4の実施形態では、制御指令値TTPが前記中間レバーストッパ55の位置についての学習値VTSP近傍となったとき、前記アクセル操作量の変化が所定値以下の条件で、スロットルバルブ5のフィードバック制御を禁止し、同スロットルバルブ5を当該位置に保持する。
【0102】
具体的には、同第5の実施形態にかかる装置にあって、電子制御装置20は、前記メインルーチン(図2)におけるステップS500の補正処理として、図11に示される補正処理ルーチンを実行する。
【0103】
すなわちこの補正処理ルーチンにおいて、電子制御装置20はまず、ステップS541にて、これまでの実施形態と同様、
|TTP−VTSP| ≦ 所定値2
といった比較に基づいて、スロットルバルブ5の開度指令値TTPが中間レバーストッパ55の位置についての前記学習値VTSP近傍か否かをチェックした後、この学習値VTSP近傍である旨判断される場合には更に、先の第2の実施形態と同様、ステップS542にて、
|TTPi−TTPi-1| ≦ 所定値3
といった比較に基づいて、当該指令値TTPが保持されている状態か否かをチェックする。
【0104】
そして、当該指令値TTPが上記中間レバーストッパ55の位置(VTSP)近傍で保持されている旨判断される場合、電子制御装置20は、次のステップS543にて、
ΔAp ≦ 所定値4
といった比較に基づき前記アクセル操作量(アクセル開度)Apが変化していないか否かをチェックし、変化していない旨判断されることを条件に、ステップS544にて、スロットルバルブ5の前記フィードバック制御を中止するとともに、前記DCモータ19に数mA(ミリアンペア)程度の保持電流を付与するなどして、同スロットルバルブ5を当該位置へ保持する。
【0105】
図12に、第4の実施形態にかかる装置のこうした処理に基づくスロットル制御態様を例示する。なお、この図12において、図12(a)はフィードバック制御(F/B)の有無を示し、図12(b)は前記DCモータ19に付与されるデューティ比信号の挙動を示し、図12(c)は電子制御装置20を通じて演算される上記スロットルバルブ5の開度指令値TTP(目標開度)の推移を示し、図12(d)は、同スロットルバルブ5の実際の挙動としての前記スロットルセンサ16の出力推移を示し、図12(e)は前記アクセル操作量(アクセル開度)Apの推移を示している。
【0106】
図12(c)、図12(e)、及び図12(a)に示されるように、同第4の実施形態にかかる装置にあっては上述のように、
・制御指令値TTPが中間レバーストッパ55の位置(学習値VTSP)近傍で保持されていること。
・アクセル操作量(アクセル開度)Apが変化していないこと。
の論理積条件に基づき、同条件が満たされている間、フィードバック制御(F/B)が停止される。そして、このフィードバック制御(F/B)が停止されている間は、前記DCモータ19に対して数mAの保持電流が付与され、スロットルバルブ5は、図12(d)に示される態様で当該位置に保持される。
【0107】
これにより、該中間レバーストッパ55の位置近傍においてスロットルバルブ5にハンチングを引き起こす要因は好適に排除されることとなる。なおその後、加速や減速にかかるアクセル操作が行われれば、上記条件が解除され、通常のスロットル制御に戻される。
【0108】
このように、同第4の実施形態にかかる装置によっても、スロットルバルブ5のハンチングは好適に回避されるようになる。
ところで、上記第1〜第4の実施形態にあっては何れも、そのプライマリチェックとして前記中間レバーストッパ55の位置を学習し、その学習値VTSPとの対比のもとに、スロットルバルブ5が同中間レバーストッパ55の位置近傍にあるか否かを判定するようにした。
【0109】
このため上述のように、それら部品の経年変化やセンサ取付誤差によらずに同位置を常に正しく認識することができるようにはなるものの、同装置にとって、このような学習処理は必須ではない。すなわち、この中間レバーストッパ55の位置を単に定数として記憶しておくだけでも、スロットルバルブ5が中間レバーストッパ55の位置近傍にあるか否かについての上記各実施形態に準じた判定を行うことはできる。
【0110】
また、同実施形態にかかる装置では、図13及び図14に例示した構造を有するスロットル機構をそのスロットル制御の対象としたが、
・内燃機関のスロットルバルブを閉弁方向に付勢する第1の付勢手段。
・同スロットルバルブを開弁方向に付勢する第2の付勢手段。
・同スロットルバルブを当該車両のアクセル操作と独立に、且つこれら第1及び第2の付勢手段による付勢力に抗して開閉駆動するスロットル駆動手段。
・前記スロットル駆動手段と前記スロットルバルブとの機械的な連結を断続するクラッチ手段。
・このクラッチ手段による連結の有無を切換制御するクラッチ制御手段。
・前記クラッチ手段が連結無しに制御されているとき、前記第1及び第2の付勢手段による付勢力を所定にバランスせしめて、前記スロットルバルブを所定開度位置に保持する保持手段。
を少なくとも有するものであれば、上記実施形態と同様に、或いは上記実施形態に準じた態様で、この発明にかかるスロットル制御装置の構成を適用することはできる。
【0111】
また、同スロットル制御装置が適用される内燃機関の種類も任意であり、いわゆる電子式スロットルが適用されてその吸気量の調量が行われるエンジンでさえあれば、前述したV型6気筒4サイクルエンジン等、それらエンジン形式によって適用が限定されるものでも勿論ない。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、制御不能時のフェイルセーフ機能を具えるスロットル制御装置にあって、スロットルバルブのハンチング等は好適に回避されることとなり、いわゆる電子スロットル装置としてのより信頼性の高いスロットル制御が実現されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のスロットル制御装置の一実施形態を示すブロック図。
【図2】同装置のスロットル制御メインルーチンを示すフローチャート。
【図3】同装置のプライマリチェックルーチンを示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態としての指令値補正手順を示すフローチャート。
【図5】補正処理を行わない場合のスロットルバルブ制御態様を示すタイムチャート。
【図6】第1の実施形態による指令値補正態様を示すタイムチャート。
【図7】第2の実施形態としての指令値補正手順を示すフローチャート。
【図8】第2の実施形態による指令値補正態様を示すタイムチャート。
【図9】第3の実施形態としての指令値補正手順を示すフローチャート。
【図10】第3の実施形態による指令値補正態様を示すタイムチャート。
【図11】第4の実施形態としての指令値補正手順を示すフローチャート。
【図12】第4の実施形態による指令値補正態様を示すタイムチャート。
【図13】同装置が適用されるスロットル構造を模式的に示す略図。
【図14】同装置が適用されるスロットル構造を模式的に示す略図。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…吸気通路、3…エアクリーナ、4…エアフローメータ、5…スロットルバルブ、6…インテークマニホールド、7…インジェクタ、8…吸気バルブ、9…燃焼室、10…点火プラグ、11…ピストン、12…クランクシャフト、13…排気バルブ、14…排気通路、15…クランク角センサ、16…スロットルセンサ、17…アクセルセンサ、18…電磁クラッチ、19…DCモータ、20…電子制御装置、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…インジェクタ駆動回路、25…電磁クラッチ駆動回路、27…A/D変換回路、28…D/A変換回路、30…DCモータ駆動回路、31…PID制御回路、32…PWM(パルス幅変調)回路、33…ドライバ、51…バルブリターンスプリング、52…退避走行用スプリング、53…中間レバー、54…バルブレバー、55…中間レバーストッパ、56…バルブ全閉ストッパ、61…アクセルリターンスプリング、62…アクセルレバー、63…アクセル全閉ストッパ。
Claims (6)
- 内燃機関のスロットルバルブを閉弁方向に付勢する第1の付勢手段と、
同スロットルバルブを開弁方向に付勢する第2の付勢手段と、
同スロットルバルブを当該車両のアクセル操作と独立に、且つこれら第1及び第2の付勢手段による付勢力に抗して開閉駆動するスロットル駆動手段と、
同スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサと、
前記アクセル操作量を検出するアクセルセンサと、
前記スロットル駆動手段と前記スロットルバルブとの機械的な連結を断続するクラッチ手段と、
このクラッチ手段による連結の有無を切換制御するクラッチ制御手段と、
前記クラッチ手段が連結無しに制御されているとき、前記第1及び第2の付勢手段による付勢力を所定にバランスせしめて、前記スロットルバルブを所定開度位置に保持する保持手段と、
前記クラッチ手段が連結有りに制御されているとき、前記各センサの出力に基づいて前記スロットル駆動手段を通じた前記スロットルバルブの開閉量をフィードバック制御するスロットル制御手段と、
同じく前記クラッチ手段が連結有りに制御されている状態にあって、このスロットル制御手段によるスロットルバルブの制御指令値が、同スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置近傍を示すとき、当該制御指令値を補正する指令値補正手段と、
を具えることを特徴とする内燃機関のスロットル制御装置。 - 前記指令値補正手段は、前記制御指令値が増加する方向で前記所定開度位置の近傍となったとき、同制御指令値を増加補正し、前記制御指令値が減少する方向で前記所定開度位置の近傍となったとき、同制御指令値を減少補正する
請求項1記載の内燃機関のスロットル制御装置。 - 前記指令値補正手段は、前記制御指令値が前記所定開度位置近傍で保持されるとき、同制御指令値を増加若しくは減少補正する
請求項1記載の内燃機関のスロットル制御装置。 - 前記指令値補正手段は、前記制御指令値が前記所定開度位置近傍となったとき、前記スロットル制御手段によるスロットルバルブの制御ゲインを低める方向に補正する
請求項1記載の内燃機関のスロットル制御装置。 - 前記指令値補正手段は、前記制御指令値が前記所定開度位置近傍となったとき、前記アクセル操作量の変化が所定値以下の条件で、前記スロットル制御手段のフィードバック制御を禁止し、前記スロットルバルブを当該位置に保持する
請求項1記載の内燃機関のスロットル制御装置。 - 前記指令値補正手段は、前記スロットルバルブの前記保持手段によって保持される所定開度位置を学習し、該学習した位置に基づいて前記制御指令値の前記所定開度位置近傍への推移を検知する
請求項1〜5の何れかに記載の内燃機関のスロットル制御装置。
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