JP3752561B2 - 多板クラッチ構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は多板クラッチ構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下に従来の多板クラッチ構造について説明する。
【0003】
図4に示すように従来の多板クラッチ構造1は、円筒形のドラム2内にハブ4のスプライン4aに咬合するドライブプレート5と、ドラム2のスプライン2aに咬合するドリブンプレート6が交互に重ね合わせて嵌装され、またこのドラム2内の底面側にこれらドライブプレート5とドリブンプレート6とを押圧作動するピストン7と、ドラム2内の開口部側に位置してこれらプレート5、6の脱出を防止するためのスナップリング8がリテーニングプレート9を介して嵌装されて構成されている。そしてリテーニングプレート9、ドライブプレート5およびドリブンプレート6とで摩擦プレート10を形成している。
【0004】
以上のような多板クラッチ構造1では、ピストン7はその背面側に供給される油圧によってリターンスプリング(図示せず)に抗して摩擦プレート10を押圧する方向に移動して摩擦プレート10を締結するように作用する。また、リテーニングプレート9、ドリブンプレート6はドラム2と共回りし、ドライブプレート5はハブ4と共回りしてこれらは各々異速回転しており、ピストン7に油圧が作動して各プレート5、6が押圧されると、これらは互いに摩擦しながら次第に締結されてドラム2とハブ4とが同速回転になりハブ4の回転力が伝達される。
【0005】
そして、ドラム2とハブ4とが異速回転中には油が軸芯から油路を経由して供給されて、遠心力によりハブ4に形成された穴4bから摩擦プレート10に供給され摩擦プレート10の潤滑と冷却が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来の構成では、摩擦プレート10が締結される前はリターンスプリングによりピストン7が押し戻されているため、各摩擦プレート10間には隙間があるので油はその隙間を通るが、ピストン7が作動して各摩擦プレート10が押圧されて摩擦を始めると、各プレート間にはドライブプレート5のフェーシング5aに形成された僅かな断面積の溝から油が供給されることになり、ほとんどの油はリテーニングプレート9の端面およびピストン7の溝7aから流れ去り、締結時の油の流れを回転数に同期させたストロボを使って観察すると、ほんの僅かなフェーシング溝からにじみ出るほどしか摩擦界面に流れ出ず、摩擦プレート10に発生する摩擦熱を冷却することができず、このためクラッチ焼けを発生することがあるという問題点を有していた。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点を解決するもので、摩擦プレートの摩擦界面への油の供給量を増加させて摩擦熱を冷却しクラッチ焼けの発生を防止する多板クラッチ構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明の多板クラッチ構造は、ドラム内の底面側に軸方向に移動可能なピストンを備え、ドラム内の開口部側にリテーニングプレートを備え、前記ピストンと前記リテーニングプレートとの間にドライブハブのスプラインに咬合する複数のドライブプレートと、前記ドラムのスプラインに咬合する複数のドリブンプレートとが交互に重ね合わせて嵌装され、前記ピストンの移動によって前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとを締結するようにした多板クラッチ構造において、前記リテーニングプレートの内面側に内方に突出するオイルダムを形成し、前記ピストンの外周側寄りに油溝を形成して、これらオイルダムと油溝との間に油溜まりを形成した構成を有している。
【0009】
【作用】
この構成によって、オイルダムと油溝との間の油溜まりから遠心力による油圧によって、油が強制的にドライブプレートとドリブンプレートとの間に流れるので、摩擦界面への油の供給量が増加し摩擦熱を冷却しクラッチ焼けの発生を防止することができる。
【0010】
【実施例】
以下本発明の一実施例について、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0011】
図に示すように自動変速機の多板クラッチ構造11は、回転軸27に駆動されるドライブハブ14と、このハブ14の回転力をドラム12に伝達する摩擦プレート20とを備えている。円筒形のドラム12内にはハブ14のスプライン15に咬合するドライブプレート16とドラム12のスプライン13に咬合するドリブンプレート17が交互に重ね合わせて嵌装され、またドラム12内にはこれらドライブプレート16とドリブンプレート17に作動するピストン18と、これらプレート16、17の脱出を防止するためのリテーニングプレート19とが嵌装されている。そしてリテーニングプレート19、ドライブプレート16およびドリブンプレート17とで摩擦プレート20を形成している。
【0012】
また、ピストン18は背面側に供給される油圧によってリターンスプリング21に抗してドライブプレート16とドリブンプレート17とを押圧する方向に移動してこれらプレート16、17を締結するように作用する。
【0013】
また、図3に示すように、リテーニングプレート19の内面側には内方に突出するオイルダム22が形成されており、ピストン18の外面寄り(外周側より)には油溝23が形成されていて、これらオイルダム22と油溝23との間には油溜まり24が形成されている。また、ドライブプレート16の両面にはフェノール樹脂などで形成されたフェーシング25を備え、このフェーシング25には小断面の溝(図示せず)が形成されている。
【0014】
以上のように構成された多板クラッチ構造11は、リテーニング19、ドリブン17の各プレートはドラム12と共回りし、ドライブプレート16はハブ14と共回りしてこれらは各々異速回転しているが、ピストン18に油圧が作動して各プレート16、17が押圧されると、これらは摩擦しながら次第に締結されてドラム12とハブ14とが同速回転になりハブ14の回転力がドラム12に伝達される。
【0015】
このとき、ハブ14の回転による遠心力によって油溜まり24に油圧が発生し、小断面のフェーシング溝に油が強制的に流されるので、摩擦プレート20の摩擦界面への油の供給量が増加し、摩擦界面の摩擦熱が冷却されてクラッチ焼けを防止することができる。
【0016】
また、多板クラッチ構造11の組立て時にドラム12に各摩擦プレート10とハブ14とを図示をしない組立治具を用いて位置決めしながら交互に組み込み、さらにオイルダム24を備えるリテーニングプレート19を組込んで部分組立てすることにより、これらを一体で自動変速機に組み込むことができるのでハブ14が抜けることがない。
【0017】
さらに、クラッチの未締結時もリテーニングプレート19内面とピストン溝23とに流れる油を少なくでき、各摩擦プレート20に流れる油量を増加させてフリクションロスを減少させ燃費を向上させることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように本発明は、ドラム内の底面側に軸方向に移動可能なピストンを備え、ドラム内の開口部側にリテーニングプレートを備え、前記ピストンと前記リテーニングプレートとの間にドライブハブのスプラインに咬合する複数のドライブプレートと、前記ドラムのスプラインに咬合する複数のドリブンプレートとが交互に重ね合わせて嵌装され、前記ピストンの移動によって前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとを締結するようにした多板クラッチ構造において、前記リテーニングプレートの内面側に内方に突出するオイルダムを形成し、前記ピストンの外周側寄りに油溝を形成して、これらオイルダムと油溝との間に油溜まりを形成することにより、遠心力による油溜まりからの油圧によって、油が強制的にドライブプレートとドリブンプレートとの間に流れるので、これらプレートの摩擦界面への油の供給量が増加し摩擦熱を冷却してクラッチ焼けの発生を防止することができる優れた多板クラッチ構造を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における多板クラッチ構造の断面図である。
【図2】同多板クラッチ構造の拡大断面図である。
【図3】同多板クラッチ構造の要部拡大断面図である。
【図4】従来の多板クラッチ構造の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
11 多板クラッチ構造
12 ドラム
14 ハブ
16 ドライブプレート
17 ドリブンプレート
18 ピストン
19 リテーニングプレート
22 オイルダム
23 油溝
14 油溜まり
Claims (1)
- ドラム内の底面側に軸方向に移動可能なピストンを備え、ドラム内の開口部側にリテーニングプレートを備え、前記ピストンと前記リテーニングプレートとの間にドライブハブのスプラインに咬合する複数のドライブプレートと、前記ドラムのスプラインに咬合する複数のドリブンプレートとが交互に重ね合わせて嵌装され、前記ピストンの移動によって前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとを締結するようにした多板クラッチ構造において、前記リテーニングプレートの内面側に内方に突出するオイルダムを形成し、前記ピストンの外周側寄りに油溝を形成して、これらオイルダムと油溝との間に油溜まりを形成したことを特徴とする多板クラッチ構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22458195A JP3752561B2 (ja) | 1995-08-10 | 1995-08-10 | 多板クラッチ構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP22458195A JP3752561B2 (ja) | 1995-08-10 | 1995-08-10 | 多板クラッチ構造 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH0953656A JPH0953656A (ja) | 1997-02-25 |
JP3752561B2 true JP3752561B2 (ja) | 2006-03-08 |
Family
ID=16815984
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22458195A Expired - Lifetime JP3752561B2 (ja) | 1995-08-10 | 1995-08-10 | 多板クラッチ構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3752561B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100848070B1 (ko) * | 2006-11-29 | 2008-07-23 | 현대 파워텍 주식회사 | 자동변속기의 클러치 어셈블리 |
DE102013222213A1 (de) * | 2013-10-31 | 2015-04-30 | Zf Friedrichshafen Ag | Schaltelement eines Automatgetriebes für Kraftfahrzeuge |
-
1995
- 1995-08-10 JP JP22458195A patent/JP3752561B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0953656A (ja) | 1997-02-25 |
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