JP3752177B2 - 追記型光学的情報記録媒体、その製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に形成された薄膜に、レーザービーム等の高エネルギー光ビームを照射することにより、信号品質の高い情報信号を記録・再生することのできる追記型の光学的情報記録媒体、その製造方法、記録方法及び記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明基板上に薄膜を形成し、この薄膜に微小なスポットに絞り込んだレーザー光を照射して情報信号を記録再生する記録媒体は公知である。追記型の記録媒体としては、基板上にTeとTeO2の混合物であるTeOx(0<x<2〉記録薄膜を形成したものが知られている(特開昭50−46317号公報)。この記録媒体からは、再生用光ビームの照射により大きな反射率変化を得ることができる。
【0003】
TeOx記録薄膜は、レーザーアニール等の初期化処理を施すことなく成膜後の非晶質状態のままで、レーザー光を照射して結晶の記録マークを形成することができる。これは非可逆過程であって上書きによる修正や消去ができないため、この記録薄膜を用いた媒体は、追記型の記録媒体として利用できる。この記録薄膜は耐湿性等の環境信頼性が高いため、誘電体の保護層等を必要としない。製造コストを削減するために、TeOx記録薄膜は、単層膜として用いられている。
【0004】
TeOx記録薄膜では、記録後信号が飽和するまで、すなわち記録薄膜中のレーザー光照射による結晶化が十分進行するまでに若干の時間を要する。このため、この記録薄膜を用いた媒体は、そのままでは、例えばデータをディスクに記録して一回転後にそのデータを検証するコンピュータ用データファイルのように、高速応答性が要求される媒体としては不適当である。この欠点を補うために、TeOxに第3の元素としてPd、Auを添加することが提案されている(特開昭60−203490号公報、特開昭61−68296号公報、特開昭62−88152号公報)。
【0005】
Pd及びAuは、TeOx薄膜中において、レーザー光照射時にTeの結晶成長を促進する働きをしていると考えられ、これによって、Te及びTe−Pd合金又はTe−Au合金の結晶粒が高速で生成する。Pd及びAuは、耐酸化性が高く、TeOx薄膜の高い耐湿性を損なうことがない。
【0006】
媒体1枚あたりが扱える情報量を増やすための基本的手段として、レーザー光の短波長化、レーザー光を集光する対物レンズの開口数を大きくしてレーザー光のスポット径を小さくするという手段が知られている。また、マークエッジ記録やランド&グルーブ記録が導入されている。さらに、複数の情報層を積層した多層構造も提案されている。多層構造を有する媒体において、複数の情報層のいずれか一つを選択するための層認識手段及び切り換え手段も提案されている。
【0007】
このような高密度記録に対応するため、TeOxに第3の元素としてPd、Au等を添加した記録材料の組成、及び膜厚を改良した記録媒体も提案されている(特開平9−326135号公報、WO98/09823号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、記録媒体では、フォーカシング・トラッキング等のサーボ制御を行うために、記録前の状態で一定以上の反射率が必要とされる。記録前よりも記録後の反射率が高い反射率増加型の媒体では、記録後にはさらに反射率が高くなる。このため、反射率増加型では、記録前及び記録後のいずれか一方の状態で反射率を0に近づけられず、信号のコントラストを大きくする上では不利となる。これに対し、反射率減少型の媒体では、記録前の反射率を高く保ちながら記録後の反射率を低くできるため、サーボ制御の面でも好ましく、かつ信号のコントラストを大きくする上でも有利である。
しかし、TeOx記録薄膜を用いた従来の記録媒体は、いずれも記録前よりも記録後の反射率が高い反射率増加型であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
TeOx記録薄膜を用いた記録媒体を反射率減少型とすることはこれまで検討されていない。これは、おそらくTeOxが反射率増加型の材料、即ち結晶化に伴い反射率が上昇する材料であることに起因している。本発明者が検討したところ、TeOx記録薄膜は、その組成や膜厚を変えても、反射率減少型にすることはできなかった。しかし、さらに検討を重ねた結果、本発明者は、TeOx記録薄膜を用いた反射率減少型の記録媒体を作製することに成功した。
【0010】
即ち、本発明の記録媒体は、透明基板と、この透明基板上に配置された少なくとも1つの情報層とを備え、この情報層がTe、O及びMを含有する材料からなる記録層を有し、上記透明基板側から入射する光ビームについて、上記記録層に情報を記録する前の反射率よりも、上記記録層に情報を記録した後の反射率が低いことを特徴とする。但し、Mは、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au及びBiから選ばれる少なくとも1つの元素である。
【0011】
上記記録薄膜を用いた反射率減少型の記録媒体は、例えば、少なくとも1つの反射調整層を情報層に追加することにより得ることができる。この反射調整層の例には、後述する反射層や誘電体層が含まれる。反射調整層は、典型的には、光学干渉効果により、この層が存在しない状態では記録層に情報を記録する前の反射率よりも記録層に情報を記録した後の反射率が高いが、この層が存在する状態では記録前の反射率よりも記録後の反射率が低くなるように媒体からの反射を調整する。反射調整層は、単層であっても複数の層であってもよい。
【0012】
本発明は、さらに、上記記録媒体の製造方法、記録方法、記録装置も提供する。本発明の製造方法の一形態では、本発明の記録媒体を製造するに際し、保護基板上に情報層を形成し、この情報層上に透明基板を形成することを特徴とする。このように保護基板上に情報層を形成する方法は、例えば厚さ0.4mm以下の薄い透明基板に適している。
【0013】
本発明の製造方法の別の一形態では、本発明の記録媒体を製造するに際し、少なくとも記録層を形成した後に、60℃以上で5分以上保持するアニール処理を施す工程を実施することを特徴とする。この製造方法によれば、より高いC/N比を実現できる。
【0014】
本発明の記録方法は、光ビームに対して相対的に移動する上記記録媒体に、透明基板の側から光ビームをピークパワーとこのピークパワーよりも小さいパワーとの間で変調させながら照射して記録マークを形成することにより、情報の記録を行い、上記光ビームに対する上記記録媒体の線速度Vと、照射する光ビームを上記ピークパワーに保持する時間Tとの積VTが、上記線速度Vが大きくなるにつれて大きくなるように、上記時間Tを設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の記録装置は、媒体回転手段と、この媒体回転手段により回転する上記記録媒体に光ビームを照射して記録マークを形成する光ビーム照射手段と、この光ビーム照射手段により照射される光ビームをピークパワーとこのピークパワーよりも小さいパワーとの間で変調する光ビーム変調手段とを含み、この光ビーム変調手段が、上記光ビームに対する上記記録媒体の線速度Vと、照射する光ビームを上記ピークパワーに保持する時間Tとの積VTが、上記線速度Vが大きくなるにつれて大きくなるように、上記時間Tを設定することを特徴とする。この記録装置は、情報の再生機能を併有する記録装置、いわゆる記録再生装置も包含する。
【0016】
媒体の線速度が大きくなるにつれて、記録マーク間の熱干渉は小さくなる。その結果、同じ長さの記録マークを同じピークパワー照射時間で形成すると、線速度が大きくなるにつれて記録マークが小さくなる。本発明の記録方法及び記録装置によれば、記録媒体の線速度Vとピークパワーの照射時間Tとの積VTが、線速度Vが大きくなるにつれて大きくなるように照射時間Tを設定することにより、記録マークの大きさの相違を補償できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
TeOx記録薄膜を用いた媒体を反射率減少型とすることは、これまで検討されておらず、その可能性も指摘されていない。しかし、本発明者の検討によると、本来的に反射率増加型である記録薄膜を用いた媒体の特性を変更できるいくつかの条件が存在することがわかった。そして、更なる検討の結果、高い反射率を確保しながら、高密度の情報の記録及び再生においても、高いC/N比と高い感度を実現できることが確認された。
【0018】
本発明の好ましい一形態では、情報層が、記録層に関して透明基板と反対側に反射層を備えている。この反射層は、屈折率nが3以下又は消衰係数kが1以上、特にnが2.0以下又はkが2.0以上の材料が好ましい。nとkとの条件は、同時に備えているとさらによく、従って、例えばnが3以下かつkが1以上がより好ましい。反射層の膜厚は、5nm以上200nm以下が好適である。
【0019】
反射層を含む場合、情報層は、記録層と反射層との間、及び透明基板と記録層との間から選ばれる少なくとも一方に、屈折率nが1.5以上の材料からなり、膜厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下である誘電体層をさらに含むことが好ましい。本明細書において、λは情報の再生に用いる光ビーム(例えばレーザー光)の波長である。
【0020】
この誘電体層は、反射層を形成しない場合にも好ましい反射調整効果を奏しうる。この場合、誘電体層は記録層よりも透明基板側に配置するとよい。即ち、本発明の好ましい別の一形態では、情報層が、透明基板と記録層との間に誘電体層を備えており、この誘電体層は、屈折率nが1.5以上の材料からなり、膜厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下である。
【0021】
本発明の記録媒体では情報層は1層に制限されない。例えば、透明基板側から、第1情報層及び第2情報層をこの順に備えていてもよい。記録容量を増すために、さらに第3情報層、第4情報層,,,を備えていても構わない。このように、記録媒体が、さらに少なくとも1つの追加の情報層を含んで合計でn層の情報層(nは2以上の整数)を有する場合は、各情報層の間に分離層を介在させることが好ましい。この分離層は、各情報層を光学的に分離して不要な光学干渉を排除する。
【0022】
記録媒体がn層の情報層(nは2以上の整数)を有する場合は、n層の情報層において、上記で説明した情報層は、透明基板から最も遠くに位置することが好ましい。反射層によりレーザー光の透過が制限されるからである。一方、上記情報層が反射層を含まない場合、例えば透明基板と記録層との間に配置された誘電体層により反射率減少型への変換を実現している場合は、n層の情報層において、上記情報層は透明基板から最も近くに位置することが好ましい。高い透過率が得られるからである。追加の情報層は、レーザー光による情報の再生が可能であればその構成に特に制限はない。
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。図1及び図2は、本発明の記録媒体の一構成例の部分断面図である。
【0024】
図1に示した記録媒体は、透明基板1上に、記録層2、反射層3及び保護基板4がこの順に設けられて構成されている。図2に示した記録媒体は、透明基板1上に、誘電体層7、記録層2及び保護基板4がこの順に設けられて構成されている。これらの記録媒体において、記録層2と反射層3、及び誘電体層7と記録層2は、それぞれ情報層10として機能している。これらの媒体では、透明基板1の側からレーザー光5を、対物レンズ6で集光して照射することにより、記録層2に情報が記録され、或いは記録された情報が再生される。再生のために照射される波長λのレーザー光は、情報が記録された領域に照射されると相対的に小さい反射率を示す。
【0025】
図3に示した記録媒体は、透明基板1上に、第1情報層10、分離層9、第2情報層20、保護基板4がこの順に設けられて構成されている。第2情報層20と保護基板4との間に、さらに追加の情報層を配置してもよい。追加の情報層として、第3情報層30及び第4情報層40を配置した例を図4に示す。図示したように、各情報層の間には分離層9を配置するとよい。この媒体に対しても、透明基板1の側からレーザー光5を対物レンズ6で所定の情報層に集光し、情報が記録又は再生される。情報層が複数含まれる媒体では、いずれか一つの情報層が上記で説明した特徴を備えていればよい。
【0026】
透明基板1の材料としては、レーザー光5の波長において略透明の材料、例えば、ポリカーボネイト樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、ガラス、又はこれらを適宜組み合わせた材料を用いることができる。透明基板の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1.5mm程度とするとよい。0.3mm以下の厚さは、レンズ開口数(NA)の高い光学系を用いた、より高密度の記録に適している。
【0027】
記録層2の材料としては、Te、O及びM(Mは上記記載の元素)を主成分とする材料が好適である。本明細書において、主成分とは、80原子%を超える1又は2以上の成分をいい、2以上の成分が主成分である場合には、成分の合計が80原子%以上であればよい。元素Mの好ましい例には、Pd及びAuが含まれる。Pd及び/又はAuの添加により、十分な結晶化速度及び高い環境信頼性が実現しやすくなる。この材料は、酸素原子(O原子)を25原子%以上60原子%以下、M原子を1原子%以上35原子%以下含有する組成を有することが好ましい。
【0028】
O原子が25原子%未満では、記録層の熱伝導率が高くなりすぎて、記録マークが過大となることがある。このため、記録パワーを上げてもC/N比が上がりにくい。これに対し、O原子が60原子%を超えると、記録層の熱伝導率が低くなりすぎて、記録パワーを上げても記録マークが十分大きくならないことがある。このため、高いC/N比と高い感度が実現しにくくなる。
【0029】
M原子が1原子%未満では、レーザー光照射時にTeの結晶成長を促進する働きが相対的に小さくなって記録層2の結晶化速度が不足することがある。このため、高速でマークを形成できなくなる。これに対し、M原子が35原子%を超えると、非晶質−結晶間の反射率変化が小さくなって、C/N比が低くなることがある。
【0030】
記録層2には、Te、O及びM以外の元素が含まれていてもよい。例えば、熱伝導率や光学定数の調整、又は耐熱性・環境信頼性の向上等を目的として、S、N、F、B及びCから選ばれる少なくとも1種の元素を添加してもよい。これらの添加元素は、記録層全体の20原子%以内とすることが好ましい。
【0031】
記録層2の膜厚は、2nm以上70nm以下が好ましい。十分なC/N比が得やすくなるからである。この膜厚が2nm未満では十分な反射率及び反射率変化が得られないためC/N比が低くなることがある。この観点から、記録層は5nm以上がさらによい。一方、この膜厚が70nmを超えると、記録層の薄膜面内の熱拡散が大きくなって高密度記録においてC/N比が低くなるおそれがある。
【0032】
反射層3の材料としては、屈折率nが3以下及び/又は消衰係数kが1以上の材料を用いるとよい。n及びkの好ましい範囲は、それぞれ2.0以下、2.0以上である。具体的には、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Pd、Pt、Bi、Sb、Sn、Zn、Cr等を含む金属、半金属若しくは合金材料、又はTiN、ZrN等の誘電体を用いればよい。
【0033】
反射層3を配置する場合には、反射層3の冷却能がレーザー光の吸収による記録層2の発熱を拡散し、その結果、記録感度が低下することがある。このため、反射層の材料の熱伝導率は低いことが好ましい。従って、上記材料の中でも、Ni、Pd、Pt、Bi、Sb、Sn、Zn及びCrから選ばれる少なくとも1種を主成分とする金属又は合金が好適である。
【0034】
但し、記録層2と反射層3との間に誘電体層を配置する場合は、反射層への熱拡散が抑制されるため、熱伝導率の高い反射層を設けても記録感度はさほど低下しない。従って、この場合は、必ずしも反射層3として熱伝導率の低い材料を選択しなくてもよい。
【0035】
保護基板4の材料としては、透明基板1の材料として例示した材料を用いればよいが、透明基板1と異なる材料を用いてもよく、レーザー光5の波長において透明でなくてもよい。保護基板4の厚さは、特に限定されないが、0.05〜3.0mm程度が好適である。
【0036】
誘電体層7の材料としては、屈折率nが1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上の材料が好ましい。具体的には、例えばZnS、ZnS−SiO2、TiO2、ZrO2、Si、SiC、Si3N4、GeN等を主成分とする材料が適している。誘電体層7の膜厚は、反射率変化を大きくできる膜厚を選択するとよく、その具体的範囲は上記に例示したとおりである。
【0037】
複数の情報層が配置されている場合も、少なくとも1つの情報層が、透明基板に近い側から、記録層2及び反射層3をこの順に、又は誘電体層7及び記録層2をこの順に設けて構成することが好ましい。しかし、その他の情報層は、記録層2とは異なる組成を有する記録層を含んでいてもよく、追記型に限らず、書き換え型や再生専用型の記録層を含んでいてもよい。
【0038】
分離層9としては、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。分離層9の厚さは、第1情報層10及び第2情報層20のいずれか一方を再生する際に他方からのクロストークが小さくなるように、少なくとも、焦点深度ΔZを上回る厚さであることが好ましい。焦点深度ΔZは、対物レンズ6の開口数NAとレーザー光5の波長λにより決定され、集光点の強度が無収差の80%を基準とすると、一般に、ΔZ:λ/{2(NA)2}と近似できる。例えば、λ=405nm、NA=0.65の場合は、ΔZ=0.479μmである。この光学系を用いる場合は、±0.5μm以内は焦点深度内となってしまうので、分離層9の厚さを1.0μmよりも大きくするとよい。
【0039】
また、分離層9の厚さは、複数の情報層に高密度の情報の記録・再生を可能にするため、情報層の間の距離が対物レンズ6の集光可能な範囲にあるように設定するとよい。分離層の厚さは、具体的には、透明基板1の厚さと合わせて、対物レンズの許容できる基材厚公差内にすることが好ましい。
【0040】
上述の記録媒体2枚を、それぞれの保護基板4の側を対向させて貼り合わせていわゆる両面構造としてもよい。両面構造とすると、媒体1枚あたりに蓄積できる情報量をさらに2倍にすることができる。
【0041】
記録層2、反射層3、誘電体層7等の各層は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の通常の気相薄膜堆積法により形成すればよい。
【0042】
これらの薄膜層及び分離層9は、透明基板1上に順次形成した後に保護基板4を形成又は貼り合せてもよいし、逆に保護基板4上に順次形成した後に透明基板1を形成又は貼り合せてもよい。後者は透明基板1が0.4mm以下のように薄い場合に適している。この場合、レーザー光案内用の溝であるグルーブやアドレス信号等の凹凸パターンは、予め所望の凹凸パターンが形成されたスタンパ等から転写して、保護基板4及び分離層9の表面に形成しておくとよい。その際、分離層9のように、その厚さが薄く、インジェクション法の適用が困難な場合は、2P法(photo-polymerization法)を用いてもよい。
【0043】
本発明の記録媒体は、グルーブ、グルーブ間のランド、又はグルーブとランドとの両方を記録トラックとして用いることができる。記録トラックの間隔は、特に制限されないが、高密度記録のためには記録再生に用いるレーザー光の波長をλ、レンズ開口数をNAとしたときに、λ/NA以下、特に0.8λ/NA以下が好適である。
【0044】
本発明の記録媒体は、高温度条件下で一定時間以上保持してアニールすることにより、より高いC/N比及びより低いジッタ値を得やすくなる。これは、このアニ−ル工程により、記録層中にランダムに拡散している各原子の一部が適度に結合して微小な結晶核を形成し、記録に際して結晶化がよりスムーズに行われるためと考えられる。こうして、マークエッジがよく揃い、マーク形状がよく整ったマーク形成が可能となる。
【0045】
アニール温度は、記録層2の組成によっても異なるが、発明者が実験により確認したところによると、60℃以上であって、透明基板が溶融しない温度、即ちその軟化点又は融点以下、例えばポリカーボネイトの場合は120℃以下が好ましい。アニール時間は、記録層の組成及びアニール温度によっても異なるが、発明者の実験によれば、C/N比向上等の効果が飽和するためには、少なくとも5分は必要である。さらに長時間アニールしてもよいが、効果が飽和した後にアニールを継続しても、基本的には、記録再生特性に変化は見られない。
【0046】
以下、本発明の記録媒体の光学設計及び光学特性について説明する。多層膜について各層の材料の屈折率、消衰係数及び膜厚を定め、全ての界面について、エネルギー保存則に基づいて光エネルギー収支の連立方程式を立て、これを解くと、多層膜全体における、入射する光ビームに対する反射率、透過率及び各層の吸収率を求めることができる(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年等)。この手法を用いて、以下の各構成について、光学計算を行った。
【0047】
以下の構成は、レーザー光の入射側を左側として表示する。
・構成A :基板/記録層/基板
・構成B :基板/誘電体層/記録層/基板
・構成C :基板/記録層/誘電体層/基板
・構成D :基板/誘電体層/記録層/誘電体層/基板
・構成A':基板/記録層/反射層/基板
・構成B’:基板/誘電体層/記録層/反射層/基板
・構成C’:基板/記録層/誘電体層/反射層/基板
・構成D’:基板/誘電体層/記録層/誘電体層/反射層/基板
【0048】
入射する光ビームの波長は、405nm又は660nmとした。また、基板の光学定数n−ikは、いずれの波長においても1.6−i0.0とした。誘電体層の光学定数は、その依存性を調べるために、n=1.5〜3.0の範囲で変化させ、k=0.0として計算した。記録層の光学定数は、Te−O−Pd(原子数比Te:O:Pd=42:53:5)を用いることを想定して、波長405nmにおいて非晶質で2.5−i0.6、結晶で2.0−i1.6、波長660nmにおいて非晶質で2.5−i0.6、結晶で3.0−i1.6とした。これらはいずれも、石英基板上に成膜した膜厚約20nmのサンプルを、分光器で反射率及び透過率を測定し、その値から計算により求めたものである。なお、記録層の結晶状態のサンプルは、オーブン内で結晶化温度近傍の280℃で2分間保持して結晶化させたものを用いた。反射層の光学定数は、その依存性を調べるためにn=0.5〜4.0、k=0.5〜8.0の範囲で変化させて計算した。
【0049】
記録層が結晶及び非晶質のときの反射率をそれぞれRcry及びRamoとし、記録により生じる反射率差ΔR(ΔR=Rcry−Ramo)を求めた。ここでは、各波長及び各構成において、誘電体層又は反射層の膜厚を任意に変化させた場合のΔRの最小値ΔRminを算出した。
【0050】
構成A、B、C及びDについて、記録層の膜厚が20nm及び40nmの場合に、誘電体層の屈折率nを変化させた場合の結果を図5に示す。図5によると、いずれの波長においても、又はいずれの記録層の膜厚においても、構成A及び構成Cでは、誘電体層の屈折率nの値を変えてもΔRminが0より小さくならず、反射率減少型にはならない。これに対し、誘電体層を光入射側に有する構成Bでは、誘電体層の屈折率nを大きくするほどΔRminは小さくなり、反射率減少型となる。構成Dでも、構成Bとほぼ同様の反射率変化が得られる。これらの媒体では、屈折率が高いほど大きな反射率変化が得られた。
【0051】
従って、反射率減少型で大きな反射率変化を得るためには、少なくとも、記録層の光入射側には誘電体層を設け、その屈折率nを1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上とするとよい。これに対し、反光入射側に誘電体層を設けてもあまり効果がない。
【0052】
図6に、構成Bにおける反射率差ΔRの光入射側誘電体層の膜厚依存性を示す。ここでは、波長が660nm又は405nm、記録層の膜厚が20nm、誘電体層の屈折率nが2.5の場合について例示する。図6によると、ΔRが小さくなるのは、波長をλ、誘電体層の屈折率をnとすると、波長により若干異なるが、概ね0.1λ〜0.25λを中心として0.01λ〜0.3λの範囲であることがわかる。
【0053】
構成A’、B’、C’及びD’について、記録層の膜厚が20nmで誘電体層の屈折率nが2.0の場合に、反射層の屈折率n及び消衰係数kを変化させた場合の結果を(表1)に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1において◎はΔRmin<−15、○は−15≦ΔRmin<−10、Δは−10≦ΔRmin<−5、×は−5≦ΔRminを示す。表1によると、構成及び波長によって若干の相違はあるものの、反射層の屈折率nが小さいほど、消衰係数kが大きいほどΔRminは小さくなる。表1によると、反射層は、例えば、nが2.0以下又はkが2.0以上であることが好ましい。nが2.0以下かつkが2.0以上であるとさらによい。図5に示したように、構成A〜Dにより、ΔRminを−15%より小さくすることはできなかった。しかし、表1に示したように、反射層を用いるとΔRminを−15%より小さくすることが可能となった。
【0056】
波長660nmにおいては、反射層のみを追加した構成A’でも、反射率変化が大きい反射率減少型となり、構成B’、C’及びD’のように誘電体層を追加すれば、さらに反射率変化を大きくすることができた。一方、波長405nmにおいては、反射層のみを追加した構成A’ではΔRminを−5%よりも小さくすることはできなかった。しかし、この波長では、構成C’及びD’のように、光入射側と反対側、即ち記録層と反射層との間に誘電体層を設けることにより、ΔRminを十分に小さくすることができた。このような波長域による相違は、記録層の結晶の屈折率nの違い、即ち、波長405nmでは波長660nmに比べて結晶の屈折率が1.0程度小さくなっていることに起因していると考えられる。
【0057】
一般に、非晶質の光学定数は波長依存性が小さいが、結晶の光学定数は波長依存性が大きくなることが多い。Teを含む材料はこの傾向が顕著であり、波長が短くなるにつれて結晶の屈折率nが小さくなる。このため、赤色波長域のように結晶のnが大きい波長域(例えば600〜800nm)では、誘電体層を追加しなくともΔRminを十分小さくできるが、青紫色波長域のように結晶のnが小さい波長域(例えば350〜450nm)では、記録層と反射層の間に誘電体層を追加しなければ、ΔRminを十分小さくできない。青紫波長域では、誘電体層の追加の効果は、赤色波長域における効果を上回った。
【0058】
図7に示した記録再生装置の一例では、レーザーダイオード11を出たレーザー光5は、ハーフミラー12及び対物レンズ6を通して、モーター13によって回転している光ディスク14上にフォーカシングされ、情報信号の記録再生が行われる。情報信号の記録を行う際には、レーザー光5の強度を複数のパワーレベル間で変調する。レーザー強度を変調するためには、レーザー強度変調回路16を用いればよい。レーザー強度の変調には、具体的には、半導体レーザーの駆動電流を変調して行えばよいが、電気光学変調器、音響光学変調器等を用いてもよい。
【0059】
マークを形成する部分に対しては、例えばピークパワーP1の単一矩形パルスを適用してもよいが、特に長いマークを形成する場合は、過剰な熱を省き、マーク幅を均一にするために、ピークパワーP1及びボトムパワーP3(但し、P1>P3)の間で変調された複数のパルスの列からなる記録パルス列を用いることが好ましい。マークを形成しない部分に対しては、バイアスパワーP2(但し、P1>P2)で一定に保てばよい。
【0060】
異なる線速V1及びV2(但しV1<V2)で物理的な長さの等しいマークをそれぞれ形成する際には、レーザー光をピークパワーP1で発光させる時間をT1及びT2とした場合、T1・V1がT2・V2よりも小さくなる(T1V1<T2V2)ようにするとよい。これは、線速が高くなる程マーク間の熱干渉が小さくなるため、T1・V1とT2・V2を等しくすると、線速が高いV2の場合にマークが小さくなってしまうからである。
【0061】
マークの長さやその前後のスペースの長さ、さらには隣のマークの長さ等の各パターンによってマークエッジ位置に不揃いが生じ、ジッタ増大の原因となることがある。上記の記録再生方法を適用すると、これを防止し、ジッタを改善するために、上記パルス列の各パルスの位置又は長さをパターン毎にエッジ位置が揃うように必要に応じて調整し、補償することができる。
こうして記録された情報信号を再生するためには、パワーレベルPrの連続光を光ディスクに照射し、その反射光をフォトディテクター15に入射させ、その反射光量変化を再生信号として検出すればよい。
【0062】
なお、図3及び図4に示したような複数の情報層を備えた記録媒体に情報を記録又は再生する場合、複数の情報層のいずれかを選択する必要がある。このためには層認識手段及び層切り替え手段が必要となるが、これらの手段としては、従来から知られているものを用いればよい。層認識手段及び層切り替え手段は、既に商品化されている再生専用光ディスクDVDの記録再生装置にも搭載されている。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0064】
(実施例1)
透明基板としては、ポリカーボネイト樹脂を用いた。透明基板の直径は約12cm、厚さは約0.6mm、グルーブ及びランド幅は共に0.6μm、グルーブ深さは約70nmとした。
【0065】
透明基板のグルーブが形成された表面に、Te−Pd(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約30nmのTe−O−Pd記録層、Al−Cr(原子数比98:2)ターゲットを用いて膜厚約40nmのAl−Cr反射層の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。いずれも直径100mm、厚さ6mm程度のターゲットを用い、記録層はDC電源で100W、反射層はDC電源で500Wの条件で成膜した。記録層はArとO2の混合ガス(流量比45:55)、反射層はArのみを、いずれもガス圧約0.2Paに保った雰囲気中で成膜した。こうして形成された膜面上に紫外線硬化性樹脂を介してダミー基板を貼り合わせ、紫外線光を照射して硬化させた。このディスクを90℃で2時間程度アニールしてディスクAを得た。
【0066】
ディスクAのTe−O−Pd記録層の組成は、オージェ電子分光法による元素分析によると、原子数比でTe:O:Pd=42:53:5であった。Te−O−Pd記録層の非晶質状態における光学定数n−ikは波長660nmにおいて非晶質で2.5−i0.6、結晶で3.0−i1.6であり、ポリカーボネイトは1.6−i0.0、Al−Crは2.0−i6.0であった。これらの光学定数から計算すると、本実施例のディスクの反射率はRamo=35.0%、Rcry=19.1%、ΔR=−15.9%、非晶質状態の場合の記録層の光吸収率はAamo=40.0%となる。
【0067】
さらに、アニール工程を省略した以外は上記と同様にしてディスクBを、Al−Cr反射層を除いた以外は上記と同様にしてディスクCを作製した。ディスクCについてディスクAと同様の計算を行うと、Ramo=7.4%、Rcry=18.4%、ΔR=11.0%、Aamo=30.6%となる。分光器を用いてこれらの値を実測したところ、ほぼ計算どおりの結果となった。
【0068】
ディスクA〜Cのグルーブ及びランドに対し、波長660nm、NA0.6の光学系を用い、線速8.2m/sで回転させながら、9.7MHzの単一信号を記録した。記録に用いたパルス波形はピークパワーP1及びバイアスパワーP2の間で変調された単一の矩形パルスで、パルス幅は25.8nsとした。P2は1.0mWとし、再生パワーPrも同じく1.0mWとした。この条件で、未記録のトラックに1回だけ記録を行い、その信号のC/N比をスペクトラムアナライザーで測定した。
【0069】
その結果、ディスクAについては、グルーブではP1=10mWで54dB、ランドではP1=10mWで52dBのC/N比が得られた。これに対し、ディスクBについては、グルーブではP1=10mWで53dB、ランドではP1=10mWで51dBのC/N比が得られた。ディスクCについては、グルーブではP1=12mWで51dB、ランドではP1=12mWで5、dBのC/N比が得られた。
【0070】
このように、反射層を設けることにより、ΔRの絶対値が大きい反射率減少型の媒体を提供できた。特にアニールを施せば、高いC/N比が得られるようになり、Ramoを大きくできるために反射率が高く、Aamoを大きくできるために感度が高い記録媒体が得られた。
【0071】
(実施例2)
保護基板として、ポリカーボネイト樹脂を用いた。保護基板の直径は約12cm、厚さは約1.1mm、グルーブピッチは約0.32μm、グルーブ深さは約20nmとした。
【0072】
保護基板のグルーブが形成された側の表面に、第2情報層として、Al−Cr(原子数比98:2)ターゲットを用いて膜厚約40nmのAl−Cr反射層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約30nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約20nmのTe−O−Pd記録層の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。いずれも直径100mm、厚さ6mm程度のターゲットを用い、反射層はDC電源で500W、誘電体層はRF電源で500W、記録層はDC電源で100Wの条件で成膜した。また、反射層及び誘電体層はArのみ、記録層はArとO2の混合ガス(流量比45:55)を、いずれもガス圧約0.2Paに保った雰囲気中で成膜した。
【0073】
第2情報層の上に分離層として紫外線硬化性樹脂を塗布し、その上からグルーブピッチ約0.32μm、グルーブ深さ約20nmのグルーブが形成されたポリカーボネイト上にAl薄膜コーティングを施したスタンパ基板を押しつけた状態で紫外線光を照射して硬化させた。その後にスタンパ基板を剥離することで分離層にグルーブを形成した。
【0074】
この分離層の上に、第1情報層として、膜厚約10nmのTe−O−Pd記録層、膜厚約25nmのZn−S誘電体層の各層を、第2情報層と同様にしてこの順に積層した。第1情報層の上に、紫外線硬化性樹脂を介して厚さ約0.09mmのポリカーボネイト基板を貼り合せ、紫外線光を照射して硬化させることで、厚さ約0.1mmの透明基板を形成した。さらに、このディスクを90℃で2時間程度アニールしてディスクDを得た。
【0075】
Te−O−Pd記録層の非晶質状態における光学定数n−ikは波長405nmにおいて非晶質で2.5−i0.6、結晶で2.0−i1.6であり、ポリカーボネイトは1.6−i0.0、Zn−Sは2.5−i0.0、Al−Crは0.7−i4.0であった。これらの光学定数から計算すると、ディスクDは、第1情報層でRamo=9.6%、Rcry=2.5%、ΔR=−7.1%、Aamo=19.8%、記録層が非晶質状態の時の透過率はTamo=69.6%、第2情報層でRamo=30.8%、Rcry=4.8%、ΔR=−26.0%、Aamo=49.8%となる。分光器を用いてこれらの値を実測したところ、ほぼ計算どおりの値が得られた。
【0076】
ディスクDの第1情報層のグルーブ及び第2情報層のランドに対し、波長405nm、NA0.85の光学系を用い、線速度5.0m/sで回転させながら、12.3MHzの単一信号を記録した。記録に用いたパルス波形はピークパワーP1及びバイアスパワーP2の間で変調された単一の矩形パルスで、パルス幅は20.4nsとした。P2は1.0mWとし、再生パワーPrは第1情報層に対しては1.0mW、第2情報層に対しては1.5mWとした。この条件で、未記録のトラックに1回だけ記録を行い、その信号のC/N比をスペクトラムアナライザーで測定した。
【0077】
その結果、本実施例のディスクは、第1情報層のグルーブではP1=8mWで50dB、第2情報層のランドではP1=10mWで50dBのC/N比が得られた。いずれも実用的な記録媒体として十分なC/N比及び感度を有していた。
【0078】
この第1情報層は、透過率が約70%と高いため、これと同様の構成を有する情報層を複数用いることにより、汎用のレーザーの出力で記録可能な3層以上の情報層を有する記録媒体を実現することも可能である。
【0079】
(実施例3)
保護基板としては、ポリカーボネイト樹脂を用いた。保護基板の直径は約12cm、厚さは約1.1mm、グルーブピッチは約0.32μm、グルーブ深さは約20nmとした。
【0080】
保護基板のグルーブが形成された側の表面に、第4情報層として、Al−Cr(原子数比98:2)ターゲットを用いて膜厚約40nmのAl−Cr反射層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約15nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約20nmのTe−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約15nmのZn−S誘電体層、の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。この第4情報層の表面に、紫外線硬化性樹脂を用いて2P法により保護基板と同じ溝パターンを転写し、厚さ約13μmの分離層を形成した。
【0081】
この分離層の表面に、第3情報層として、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約10nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数比90、10)ターゲットを用いて膜厚約10nmのTe−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約30nmのZn−S誘電体層の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。この第3情報層の表面に、紫外線硬化性樹脂を用いて2P法により保護基板と同じ溝パターンを転写し、厚さ約13μmの分離層を形成した。
【0082】
この分離層の表面に、第2情報層として、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約15nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約8nmのTe−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約30nmのZn−S誘電体層の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。この第2情報層の表面に、紫外線硬化性樹脂を用いて2P法により保護基板と同じ溝パターンを転写し、厚さ約13μmの分離層を形成した。
【0083】
この分離層の表面に、第1情報層として、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約20nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約6nmのTe−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜厚約35nmのZn−S誘電体層の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。この第1情報層の表面に、ポリカーボネイトのシートを紫外線硬化樹脂を用いて貼り合わせ、厚さ0.08mmの透明基板とした。
【0084】
各層の成膜は、いずれも、直径100mm、厚さ6mm程度のターゲットを用い、反射層はDC電源500W、誘電体層はRF電源500W、記録層はDC電源100Wで成膜した。また、反射層及び誘電体層は、Arのみ、記録層はAr及びO2の混合ガス(流量比45:55)を、いずれも、ガス圧約0.2Paに保った雰囲気で成膜した。さらに、このディスクを90℃で2時間程度アニールしてディスクEとした。
【0085】
ディスクEの各情報層のグルーブに対し、波長405nm、NA0.85の光学系を用い、線速度5.0m/sで回転させながら、12.3MHzの単一信号を記録した。記録に用いたパルス波形は、ピークパワーP1及びバイアスパワーP2の間で変調された単一の矩形パルスで、パルス幅は20.4nsとした。P2は0.5mWとし、再生パワーPrは、第1情報層を再生する場合は0、5mW、第2情報層を再生する場合は0.6mW、第3情報層を再生する場合は0.7mW、第4情報層を再生する場合は1.0mWとした。再生パワーは、レーザー光入射側から離れるにつれて大きくなるように設定されている。この条件で、未記録のトラックに1回だけ記録を行い、その信号のC/N比をスペクトルアナライザーで測定した。
【0086】
その結果、ディスクEからは、第1情報層ではP1=9.0mWで51dB、第2情報層ではP1=9.5mWで51dB、第3情報層ではP1=11.0mWで50dB、第4情報層ではP1=10.5mWで52dBのC/N比が得られた。こうして、情報層を多層としても、十分なC/N比及び感度を有する記録媒体となることが確認できた。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、記録前の反射率が高く、高密度な情報の記録再生においてもC/N比及び感度の高い良好な記録再生特性が得られる追記型の光学的情報記録媒体、その製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の断面図である。
【図2】 本発明の光学的情報記録媒体の別の一構成例の断面図である。
【図3】 本発明の光学的情報記録媒体のまた別の一構成例の断面図である。
【図4】 本発明の光学的情報記録媒体のさらに別の一構成例の断面図である。
【図5】 各波長・各記録層膜厚における反射率差ΔRと誘電体層の屈折率nとの関係の一例を示す図である。
【図6】 反射率差ΔRと誘電体層の屈折率nとの関係の一例を示す図である。
【図7】 本発明の光学的情報記録媒体の記録装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 記録層
3 反射層
4 保護基板
5 レーザー光
6 対物レンズ
7 誘電体層
8 第1情報層
9 分離層
10 第1情報層
20 第2情報層
30 第3情報層
40 第4情報層
11 レーザーダイオード
12 ハーフミラー
13 モーター
14 光ディスク
15 フォトディテクター
16 レーザー強度変調回路
Claims (17)
- 透明基板と、前記透明基板上に配置された少なくとも1つの情報層とを備え、前記情報層がTe、O及びMを含有する材料からなる記録層を有し、前記透明基板側から入射する光ビームについて、前記記録層に情報を記録する前の反射率よりも、前記記録層に情報を記録した後の反射率が低いことを特徴とする追記型光学的情報記録媒体。
但し、Mは、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au及びBiから選ばれる少なくとも1つの元素である。 - 前記情報層が、前記記録層に関して前記透明基板と反対側に反射層を備え、前記反射層が、屈折率nが3以下又は消衰係数kが1以上の材料からなることを特徴とする請求項1に記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記反射層が、屈折率nが2.0以下又は消衰係数kが2.0以上の材料からなることを特徴とする請求項2に記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記反射層の膜厚が5nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記情報層が、前記記録層と前記反射層との間、及び前記透明基板と前記記録層との間から選ばれる少なくとも一方に、屈折率nが1.5以上の材料からなり、膜厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下である誘電体層を備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
但し、λは情報の再生に用いる光ビームの波長である。 - 前記情報層が、前記透明基板と前記記録層との間に、屈折率nが1.5以上の材料からなり、膜厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下である誘電体層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の追記型光学的情報記録媒体。
但し、λは情報の再生に用いる光ビームの波長である。 - 前記誘電体層の膜厚が0.05λ/n以上0.3λ/n以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記誘電体層の膜厚が0.01λ/n以上0.2λ/n以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記情報層を含む合計n層の情報層を有し、前記n層の情報層の間にそれぞれ分離層が配置されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
ただし、nは2以上の整数である。 - 前記情報層を含む合計n層の情報層を有し、前記情報層が、前記n層の情報層において前記透明基板から最も遠くに位置することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
ただし、nは2以上の整数である。 - 前記情報層を含む合計n層の情報層を有し、前記情報層が、前記n層の情報層において前記透明基板から最も近くに位置することを特徴とする請求項6に記載の追記型光学的情報記録媒体。
ただし、nは2以上の整数である。 - 前記記録層において、酸素原子の含有割合が25原子%以上60原子%以下、M原子の含有割合が1原子%以上35原子%以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記記録層の膜厚が2nm以上70nm以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 前記記録層に情報を記録した後における前記光ビームの反射率から、前記記録層に情報を記録する前における前記光ビームの反射率を差し引いた反射率差ΔRが−5%よりも低いことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
- さらに保護基板を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体。
- 請求項15に記載の追記型光学的情報記録媒体の製造方法であって、前記保護基板上に少なくとも1つの情報層を形成し、前記情報層上に前記透明基板を形成することを特徴とする追記型光学的情報記録媒体の製造方法。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の追記型光学的情報記録媒体の製造方法であって、少なくとも前記記録層を形成した後に、60℃以上で5分以上保持するアニール処理を施すことを特徴とする追記型光学的情報記録媒体の製造方法。
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