JP3752128B2 - 髄内釘の位置決め装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は髄内釘の位置決め装置に係り、特に、髄内釘と交差する姿勢で髄内釘に方向に組みつけられるインプラントの挿入を案内若しくは補助するために用いられる髄内釘の位置決め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、大腿骨の骨折を治療するための器具として従来から髄内釘が用いられている。髄内釘は大腿骨の髄内に導入され、髄内釘に形成された横孔に大腿骨の外側から骨ねじを交差するように挿通させることによって、骨折部両側の骨部分を髄内釘に対して回転方向及び軸線方向に固定するようになっている。
【0003】
一方、近年、大腿骨の近位端側の骨折、特に、大腿骨の骨頭近傍(例えば頚部)の骨折を治療するために、大腿骨の全長よりもかなり短い髄内釘が用いられている。この種の髄内釘は、通常の髄内釘と同様に、上記骨ねじが挿通する横孔を先端部(大腿骨の遠位端側に配置される端部)寄りに備えているとともに、基端部(大腿骨の近位端側に配置される端部)寄りに配置されるように形成され、大腿骨の骨頭に向けて斜めに形成された傾斜孔を備えている。この傾斜孔にはラグスクリュウと呼ばれる骨ねじが大腿骨の外側から導入され、このラグスクリュウの先端は傾斜孔を抜けて大腿骨の骨頭内にねじ込まれる。
【0004】
上記の髄内釘を大腿骨に取り付ける際には、髄内釘の基端部に連結されるように構成された位置決め装置(ターゲットデバイス、指標装置、取付装置などとも呼ばれる。)が使用される。この位置決め装置は、通常、概略L型の形状を備えており、髄内釘の基端部に連結される連結アーム部と、該連結アーム部に対して屈曲した形状で繋がった位置決め部とを備えている。この位置決め部は、連結アーム部の先端に形成された連結端部を髄内釘の基端部に連結した状態で、髄内釘の軸線とほぼ並行して下方へ伸びるように形成される。位置決め部には、髄内釘に形成された傾斜孔や横孔に向けて正確に伸びる軸線を備えた案内孔などを有する案内手段が設けられている。
【0005】
上記位置決め装置を用いる場合、予め大腿骨の近位端から髄内へ向けてドリル、リーマなどを用いて穿孔し、まず、髄内釘の基端部に連結アーム部の連結端部を連結し、髄内釘を大腿骨の近位端から導入する。髄内釘が大腿骨の髄内に完全に導入されると、位置決め装置の案内手段を用いて大腿骨の外側からガイドピン(ガイドワイヤ)を大腿骨内に導入し、上記傾斜孔を通して大腿骨の骨頭の内側まで挿入する。その後、ガイドピンの骨頭内の位置をX線撮影などによって確認し、問題がなければ、ガイドピンを受け入れる軸孔を有するドリルやリーマなどを用いて傾斜孔に合致した孔を大腿骨に形成する。そして、その後、ガイドピンを受け入れる軸孔を有するラグスクリュウをガイドピンに沿って大腿骨に導入し、ラグスクリュウが傾斜孔を通過して骨頭の内部にまで入り込むようにねじ込む。ラグスクリュウの骨内の位置を正確に設定することは、髄内釘を確実に固定しその回旋を防止するために、また、骨折した骨頭を解剖学的な正しい位置に置くために、非常に重要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の位置決め装置の構造においては、ラグスクリュウを髄内釘の傾斜孔を通して骨頭内にねじ込む必要があるが、通常、ラグスクリュウを正規の方向にねじ込むために、予めガイドピンの挿入方向を正確に設定する必要がある。このガイドピンの挿入方向は、患者の正面側からX線を照射して得た直写画像と、患者の側方斜め上方から、すなち、ガイドピンの挿入方向とほぼ直交する方向に、X線を照射して得た軸写画像とを見て確認される。
【0007】
上記の直写画像では、ガイドピンが大腿骨の骨頭内において上下方向(患者の頭部側若しくは足部へ向かう方向)にずれていないかどうかを確認することはできるが、前後方向(患者の前方側若しくは後方側に向かう方向)にずれていないかどうかを確認することはできない。一方、軸写画像においては、ガイドピンが大腿骨の骨頭内において前後方向にずれていないかどうかを確認することはできるが、上下方向にずれているかどうかを確認することはできない。したがって、手術する医者は、上記直写画像と軸写画像とから長年の経験を元にガイドピンの3次元的な位置を想定し、必要であればガイドピンの挿入方向を修正するためにガイドピンを抜去し、挿入方向を修正して再度ガイドピンを挿入し直すようにしている。
【0008】
上記のように、従来の位置決め装置を用いた手術方法は、手術を行う医者の経験や感に頼るところがきわめて大きく、確実且つ安定した手術結果を得ることが難しいという問題点がある。特に、上記直写画像と軸写画像だけでは、挿入されたガイドピンの骨頭内の位置を知ることはできるが、ガイドピンの挿入方向そのものを知ることができないので、ガイドピンの位置ずれを修正する場合でも、経験や感に頼らざるを得ないという問題点がある。
【0009】
また、ガイドピンを挿入する前に予め大腿骨に対するガイドピンの挿入位置の予測を立てることができず、ガイドピンを挿入した後に上記直写画像及び軸写画像によってガイドピンの挿入位置を確認するまではガイドピンの挿入位置の適否を知ることができないので、一回で最適位置に挿入することができない場合には再度挿入し直さなければならないという問題点がある。
【0010】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、ラグスクリュウなどのインプラントを導入するための位置決め作業に際して、ガイドピン、ラグスクリュウその他の部材(すなわち、インプラント或いはインプラントを導入するための案内部材など)の挿入方向や導入方向を正確に知ることができる髄内釘の位置決め装置を提供することにある。また、ガイドピン、ラグスクリュウその他の部材を挿入したり導入したりする前に予め予め挿入方向や導入方向の予想を行うことが可能な髄内釘の位置決め装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の髄内釘の位置決め装置は、骨端部から長骨内に導入される髄内釘に装着され、該髄内釘に交差する姿勢で組み付けられるインプラントの挿入を案内若しくは補助するために用いられる髄内釘の位置決め装置であって、前記髄内釘の基端部に連結される連結端部を有する連結アーム部と、該連結アーム部に接続されて前記髄内釘にほぼ並行するように伸び、前記インプラント若しくは前記インプラントを案内する案内器具の案内若しくは位置決めを行う案内手段を備えた位置決め部とを有し、前記連結アーム部の外面上には、延長形状を備えた延長部材を前記連結アーム部材の延長方向に向けて挿通させ、前記連結端部を越えて挿入できるように、案内可能に構成された案内構造が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、案内構造によって案内された延長部材を、連結アーム部の延長方向に向けて挿通させ、前記連結端部を越えて伸びる状態に挿入できるように構成されていることにより、髄内釘を長骨内に導入させた状態で、延長部材のうち連結端部を越えて伸びる部分を観察することによって、位置決め装置によって案内されるインプラント若しくはインプラントを案内するための案内部材(ガイドピン)などの挿入位置及び挿入方向を予測することが可能になるため、インプラントや案内部材を正確な挿入位置及び挿入方向で長骨内に導入することが可能になり、インプラントや案内部材の導入位置の修正を不要とすることができるとともに、術者の経験や感に頼らないで手術を行うことが可能になる。
【0013】
本発明において、前記案内構造は、前記案内方向に貫通した貫通孔であることが好ましい。この手段によれば、延長部材を貫通孔に挿通させ、連結端部を越えるように延長部材の先端部を体内に挿入することによって、簡単な操作で確実に延長部材を配置させることが可能になる。
【0014】
本発明において、前記案内構造は、前記案内方向に伸びる案内溝であってもよい。案内溝に延長部材を挿通させ、連結端部を越えるように延長部材の先端部を体内に挿入することができる。
【0015】
本発明において、前記連結アーム部の外面には前記案内方向に伸びる凹溝が形成され、前記案内構造は前記凹溝内に設けられていることが好ましい。この手段によれば、案内構造が連結アーム部の外面に形成された凹溝内に設けられていることによって、案内構造における連結アーム部の外形からはみ出す量をなくし、或いは低減することができるので、髄内釘の導入作業の妨げを極力低減することができるとともに、案内構造に挿通させた延長部材が連結アーム部の外形からはみ出さないようにすることができ、或いは、延長部材における連結アーム部の外形からはみ出す量を低減することができるので、延長部材の挿通操作を容易に行うことができる。
【0016】
本発明において、前記延長部材はガイドワイヤであることが好ましい。この発明によれば、延長部材としてガイドワイヤ(ガイドピン)を用いることによって、手術に用いる器具の数を低減することができるとともに、体内にも容易に挿入することが可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照して本発明に係る髄内釘の位置決め装置の実施形態について詳細に説明する。図1は本実施形態の位置決め装置及びこれによって大腿骨に導入された髄内釘の全体構成を示す分解斜視図である。本実施形態の位置決め装置20は、髄内釘10を大腿骨の近位端から髄内へ導入するとともに、髄内釘10に対して交差する骨ネジ等の導入方向を位置決めするためのものである。
【0018】
本実施形態の位置決め装置を用いて取り付けられる髄内釘10は、図示のように、比較的太く形成された基部11と、比較的細く、基部11に対して僅かに軸線が傾斜するように形成された挿入部12とからなり、基部11には、後述するラグスクリュウを挿通させるための斜めに貫通した2つの傾斜孔11a,11bが形成され、また、内部に図示しない雌ねじを有する基端部11cが設けられている。一方、挿入部12には、後述する骨ねじを挿通させるための横孔12aと、この横孔12aのさらに先端側を2つに分岐するように髄内釘10の軸線方向に延長するスリット12bとが形成されている。
【0019】
本実施形態の位置決め装置20は、上記髄内釘10の基端部11cに連結される連結端部21aを有する連結アーム部材21と、この連結アーム部材21の他端部21bに接続される位置決め部材22とから概略構成される。連結アーム部材21は、髄内釘10に連結された状態で、少なくとも連結端部21a側の部分が髄内釘10における軸線が上方へ伸びる方向へ斜めに伸びるように形成されている。
【0020】
連結アーム部材21の連結端部21aには、連結アーム部材21と髄内釘10とを連結するためのボルト23を挿入して軸線方向に係合させるための段付きの挿通孔21cが形成されている。また、他端部21bには、連結アーム部材21と位置決め部材22とを接続するためのボルト24を挿入して軸線方向に係合させるための段付きの挿通孔21fが形成されている。
【0021】
連結端部21aの端部には、髄内釘10の基端部11cに形成された図示しない切欠き状の係合凹部に嵌合するように形成された図示しない係合凸部が形成され、この係合凸部を基端部11cの係合凹部に嵌合させた状態で、ボルト23を挿通孔21cに挿入し、基端部11cに形成された図示しない雌ねじに螺合させることによって、髄内釘10をその軸線周りに回転しないように、しっかりと連結アーム部材21に連結することができる。このとき、連結アーム部材21の軸線と、髄内釘10の軸線と、傾斜孔11aの軸線とは共通の仮想平面上に含まれるように構成されている。
【0022】
連結アーム部材21における連結端部21a側の部分の上面には、連結アーム部材21の延長方向に伸びる縦溝21dが形成されている。この縦溝21dにおける連結端部21a側の端部は、上記挿通孔21cの内部にそのまま開口しており、また、この縦溝21dにおける他端部21b側の端部は、連結アーム部材21が伸びる方向にそのまま開口している。すなわち、この縦溝21dの両端部はその延長方向に開放された形状になっている。
【0023】
縦溝21dの内部には、案内孔21gを備えた案内構造部21hが設けられている。この案内孔21gは、案内構造部21hの内部を連結アーム部21の延長方向に貫通している。
【0024】
連結アーム部材21には、上下方向(患者の頭部若しくは足部に向かう方向)に貫通した複数の貫通孔21eが形成されている。これらの貫通孔21eは軽量化を図るためのものであるので、貫通孔でなく、所定の深さ位置まで穿設された穴部や凹部であっても構わない。
【0025】
また、連結アーム部材21には、前後方向に貫通した複数の貫通孔21iが形成されている。これらの貫通孔21iは軽量化を図るためのものであるとともに、X線を患者の前面側若しくは背面側から照射して撮影したX線画像、すなわち直写画像の撮影方向が正規の方向(すなわち、大腿骨の延長方向に対して直交する方向、或いは、髄内釘や位置決め装置に対して直交する方向)に一致しているかどうかを確認するためのものである。直写画像の撮影方向が正規の方向に一致していれば、これらの貫通孔21iは、その断面形状そのまま(例えば丸断面であれば丸形状、角断面であれば角形状)で直写画像中に表され、一方、撮影方向が正規の方向に対して所定角度だけ斜めになっていれば、その断面形状が潰れた形状(例えば丸断面であれば潰れた円形状、角断面であれば菱形形状や長方形形状などの断面角形を潰した形状)で写ったり、上記の所定角度が大きければ全く断面形状が画像に写らなかったりする。したがって、直写画像における貫通孔21iの断面形状やその有無を確認することによって、直写画像の撮影方向が正規の方向と一致しているかどうか、一致していなければどの程度斜めになっているのかを簡単に知ることができる。
【0026】
位置決め部材22は、連結アーム部材21に対する接続端部22aから、下方の案内支持部22bに至るまで、髄内釘10に対して並行して伸びるように構成されている。接続端部22aには、上記ボルト24に螺合する雌ねじ部と、上記の連結アーム部材21の他端部21bに形成された係合凹部に嵌合する係合凸部とが設けられている。したがって、この係合凸部を連結アーム部材21の係合凹部に嵌合させるようにして連結アーム部材21と位置決め部材22とを突合せ、この状態で、ボルト24を挿通孔21fに挿通させ、さらに雌ねじ部22cに螺合させることによって、位置決め部材22をその延長軸線の周りに回転させることができないように、しっかりと連結アーム部材21に対して接続することができる。このとき、連結アーム部材21の軸線と位置決め部材22の軸線とは、上記の仮想平面上に共に含まれる。
【0027】
案内支持部22bは、位置決め部材22の下半分において上下方向に伸びるように形成されたすり割り状のスリット22sによって2つに分割されたものとなっている。このスリット22sの相互に対向する内面には、半円筒面を有する凹溝がスリット22sを挟んでその両側に相互に対応する位置に形成され、その結果、大小様々な内径及び様々な貫通方向を有する5つの案内孔22d,22e,22f,22g,22hが形成される。
【0028】
案内支持部22bの下端部における、スリット22sを挟んだ一方の部分には雌ねじを備えたねじ孔が形成され、他方の部分にはそのねじ孔に対応する位置に図示しない段付きの挿通孔が形成されている。これらのねじ孔及び挿通孔には、挿通孔の形成された側から雄ねじ付きの締結軸23が挿入され、締結軸23の先端部は上記ねじ孔に螺合するとともに、締結軸23の中間部が挿通孔の段付き部に係合し、締結軸23が所定深さよりも挿入できないように構成されている。したがって、締結軸23のねじ込み度合いによってスリット22sによって形成された案内支持部22bの間隙量を調節できるようになっている。締結軸23の外端部には操作レバー24が回動自在に連結されており、操作レバー24を締結軸23の軸線に対して交差する姿勢とした図示の状態で、操作レバー24を旋回させることによって締結軸23を容易に回転させることができる。
【0029】
位置決め部材22には、上記貫通孔21iと同じ方向に貫通した貫通孔22iが形成されており、これらの貫通孔22iもまた、貫通孔21iと同様に、位置決め装置の軽量化するとともに、直写画像の撮影方向を確認するために設けられている。
【0030】
上記実施形態においては、連結アーム部材21と位置決め部材22とをボルト24によって接続した状態で使用する。そして、髄内釘10が連結アーム部材21の連結端部21aに連結された状態で、リーマ等によって穿孔された大腿骨の近位端から髄内釘10を髄内に導入する。すなわち、骨盤側方の切開部から髄内釘10の先端部を差込み、大腿骨Aの大転子部Bの上部に形成された開口から髄内に導入する。このようにして、図1に示すように髄内釘10が大腿骨Aの髄内に配置される。
【0031】
髄内釘10が大腿骨Aの髄内に導入されると、次に、図2に示すように、案内構造部21hの案内孔21gにガイドワイヤ32を挿通し、ガイドワイヤ32の先端部32aを体内に導入する。図2はX線によって撮影された直写画像に対応するものであって、その直写画像においては、ガイドワイヤ32は連結アーム部材21の外面上から、連結端部21aを越えて骨頭Cに向かって伸びる。このとき、直写画像では、ガイドワイヤ32のうち連結端部21aを越えた部分から先の部分が明確に表される。
【0032】
案内孔21gを挿通したガイドワイヤ32は、髄内釘10、連結アーム部材21、位置決め部材22及び傾斜孔11aの各軸線が含まれる上記仮想平面に沿って体内に伸びているため、その先端部32aの指し示す方向及び位置によって、傾斜孔11a内を通過して導入される予定のガイドピン31の骨頭C内における位置を予測することができる。すなわち、髄内釘10の髄内への打ち込み深さが深すぎる状態においては、後の工程において傾斜孔11aを挿通して導入されるガイドピン31は骨頭Cの下部に導入されてしまうが、この状態では、案内構造部21hに案内されたガイドワイヤ32の先端部32aは骨頭Cの下部の頚部を指し示すこととなる。逆に、髄内釘10の髄内への打ち込み深さが浅すぎる状態においては、傾斜孔11aを挿通したガイドピン31は骨頭Cの上部に導入されてしまうが、この状態では、ガイドワイヤ32は骨頭Cの上端部を指し示すこととなる。
【0033】
したがって、図2に示すようにガイドワイヤ32の先端部32aが骨頭Cの中心位置を指し示すならば、傾斜孔11aを通してガイドピン31を適正な位置に挿入することができるが、ガイドワイヤ32の先端部32aが骨頭Cの中心よりも上方又は下方を指し示す場合には、髄内釘10の打ち込み深さが適切でないことになる。なお、本実施形態においては、ガイドワイヤ32の指し示す方向が骨頭Cの中心に向かう場合を正規の状態としているが、案内構造部21hの案内構造の案内位置によっても上記の髄内釘10の打ち込み深さとガイドワイヤ32との位置関係は若干異なることとなるので、両者の関係は予め適宜に設定し、その設定に従ってガイドピン31の挿入位置を適宜に予想すればよい。
【0034】
図3は、図2に示す矢印Fの方向(患者の側方斜め外側)から見た状態、すなわち上記の軸写画像に対応する様子を示す説明図である。この軸写画像においては、ガイドワイヤ32は連結アーム部材21の軸線に沿って伸び、さらに連結端部21aを越えて伸びて、その先端部32aは大腿骨の骨頭Cを指し示す。このとき、軸写画像においては、ガイドワイヤ32のうち、連結端部21aを越えた部分から先に伸びた部分が明確に表される。
【0035】
この状態では、ガイドワイヤ32の延長方向は、後の工程において傾斜孔11aを挿通して挿入されるガイドピン31の延長方向とほぼ一致する。したがって、軸写画像においてガイドワイヤ32の延長方向がまっすぐに骨頭Cの中心に向けて伸びていれば、ガイドピン31をまっすぐに挿入することができるが、ガイドワイヤ32の先端部32aが指し示す方向が骨頭Cの中心からずれていれば、ガイドピン31もまた骨頭Cの中心からずれた方向(前後方向)に挿入されてしまう。したがって、軸写画像におけるガイドワイヤ32の指し示す方向によってガイドピン31の前後の挿入方向を予測することができる。
【0036】
特に、髄内へ導入された髄内釘10は、その軸線を中心として大腿骨Aに対して回転することができるが、その回転方向の姿勢によって骨頭Cの内部へ向かうガイドピン31の方向が決定される。この方向は、通常、ガイドピン31を位置決め部材22の案内構造によって挿入してみなければわからない。しかし、本実施形態では、案内構造部21hに挿通されたガイドワイヤ32がガイドピン31と同じ仮想平面上に含まれており、上記回転方向に対してはガイドピン31と同様の方向を指し示すこととなるため、ガイドピン31を骨内に挿入する前にその挿入方向を確認することができる。
【0037】
上記のようにして、案内構造部21hに挿通されたガイドワイヤ32によって後工程で導入されるガイドピン31の挿入方向を確認した後、髄内釘10の打ち込み深さや軸線周りの回転姿勢を修正し、髄内釘10を大腿骨Aの正規の深さ及び正規の回転姿勢に収める。
【0038】
次に、図1に示す案内孔22fに、スリーブ状の案内器具を挿入し、操作レバー24を回転させて案内支持部22bによって案内器具を挟圧し、固定する。そして、案内器具によってガイドピン31を案内しながら大腿骨A内に挿入し、髄内釘10の傾斜孔11aを通過させて、ガイドピン31の先端を骨頭C内に到達させる。その後、ドリルやリーマなどの穿孔具を用いてガイドピン31に沿って孔を形成し、さらにガイドピン31に沿って図示しないラグスクリュウをガイドピン31に沿って骨内に導入する。
【0039】
なお、案内支持部22bの案内孔22dは、上記と同様にして髄内釘10の傾斜孔11bを通過するガイドピンやラグスクリュウなどを案内するためのものである。また、案内孔22g及び22hは、髄内釘10のスリット12b内を水平方向に通過する骨ねじ33を案内するための図示しない案内器具を取り付けるものであり、案内孔22eは、髄内釘10の横孔12aを通過する骨ねじ33を案内するための図示しない案内器具を取り付けるためのものである。
【0040】
本実施形態においては、案内構造部21hによって案内されたガイドワイヤ32を、連結アーム部材21の延長方向に向けて挿通させ、前記連結端部21aを越えて伸びる状態に挿入できるように構成されていることにより、髄内釘10を大腿骨A内に導入させた状態で、ガイドワイヤ32のうち連結端部21aを越えて伸びる部分を観察することによって、位置決め装置20によって案内されるインプラント若しくはインプラントを案内するための案内部材(ガイドピン)などの挿入位置及び挿入方向を予測することが可能になるため、インプラントや案内部材を正確な挿入位置及び挿入方向で大腿骨内に導入することが可能になり、インプラントや案内部材の導入位置の修正を不要とすることができるとともに、術者の経験や感に頼らないで手術を行うことが可能になる。
【0041】
また、案内構造部21aは、前記案内方向に貫通した貫通孔21gを備えているので、ガイドワイヤ32を貫通孔21gに挿通させ、連結端部21aを越えるようにガイドワイヤ32の先端部32aを体内に挿入することによって、簡単な操作で確実に延長部材を配置させることが可能になる。
【0042】
なお、本発明においては、案内構造部21hには、貫通孔21gに限らず、ガイドワイヤ32等の延長部材を挿通させ、その延長部材を連結端部を越えて挿入できるように案内できるものであればよく、例えば、案内溝であってもよい。
【0043】
さらに、本実施形態では、連結アーム部材21の外面には前記案内方向に伸びる凹溝21dが形成され、前記案内構造部21hは前記凹溝21d内に設けられているので、案内構造部21hにおける連結アーム部の外形からはみ出す量をなくし、或いは低減することができるので、案内構造部21hの突出によって髄内釘10の導入作業が妨げられる度合を極力低減することができる。また、案内構造部21hに挿通させたガイドワイヤ32が連結アーム部材21の外形からはみ出さないようにすることができ、或いは、ガイドワイヤ32における連結アーム部材21の外形からはみ出す量を低減することができるので、ガイドワイヤ32の挿通操作(体内への挿入操作)を容易に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、案内構造部21hに挿通させる延長部材としてガイドワイヤ(ガイドピン)32を用いていることによって、体内に容易に挿入することが可能になる。また、ガイドピン31と同じものを兼用することができるので、手術に用いる器具の数を低減することもできる。
【0045】
なお、本発明の位置決め装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、大腿骨の骨頭や頚部などの大腿骨上部に発生した骨折を治療するための、骨頭に向けて斜めに導入されるラグスクリュウを備えた髄内釘を取り付けるための位置決め装置として構成されているが、このような髄内釘だけに限らず、種々の長骨内に導入されるように構成された従来から使用されてきた種々の髄内釘の本体に対して、上記の骨ねじのような各種のインプラントを長骨に対して所定の位置関係で取り付けるための位置決め装置として構成することも可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、案内構造によって案内された延長部材を、連結アーム部の延長方向に向けて挿通させ、前記連結端部を越えて伸びる状態に挿入できるように構成されていることにより、髄内釘を長骨内に導入させた状態で、延長部材のうち連結端部を越えて伸びる部分を観察することによって、位置決め装置によって案内されるインプラント若しくはインプラントを案内するための案内部材(ガイドピン)などの挿入位置及び挿入方向を予測することが可能になるため、インプラントや案内部材を正確な挿入位置及び挿入方向で長骨内に導入することが可能になり、インプラントや案内部材の導入位置の修正を不要とすることができるとともに、術者の経験や感に頼らないで手術を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る髄内釘の位置決め装置の実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】同実施形態の使用状態を説明するための直写画像に対応する側面図である。
【図3】同実施形態の使用状態を説明するための軸写画像に対応する説明図である。
【符号の説明】
10 髄内釘
11c 基端部
20 位置決め装置
21 連結アーム部材
21a 連結端部
21d 縦溝
21g 案内孔
21h 案内構造部
22 位置決め部材
31 ガイドピン
32 ガイドワイヤ
Claims (5)
- 骨端部から長骨内に導入される髄内釘に装着され、該髄内釘に交差する姿勢で組み付けられるインプラントの挿入を案内若しくは補助するために用いられる髄内釘の位置決め装置であって、
前記髄内釘の基端部に連結される連結端部を有する連結アーム部と、該連結アーム部に接続されて前記髄内釘にほぼ並行するように伸び、前記インプラント若しくは前記インプラントを案内する案内器具の案内若しくは位置決めを行う案内手段を備えた位置決め部とを有し、
前記連結アーム部の外面上には、延長形状を備えた延長部材を前記連結アーム部材の延長方向に向けて挿通させ、前記連結端部を越えて挿入できるように、案内可能に構成された案内構造が設けられていることを特徴とする髄内釘の位置決め装置。 - 請求項1において、前記案内構造は、前記案内方向に貫通した貫通孔であることを特徴とする髄内釘の位置決め装置。
- 請求項1において、前記案内構造は、前記案内方向に伸びる案内溝であることを特徴とする髄内釘の位置決め装置。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記連結アーム部の外面には前記案内方向に伸びる凹溝が形成され、前記案内構造は前記凹溝内に設けられていることを特徴とする髄内釘の位置決め装置。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、前記延長部材はガイドワイヤであることを特徴とする髄内釘の位置決め装置。
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