JP3751705B2 - 真皮コラーゲン線維束正常化剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は真皮コラーゲン線維束正常化剤及びこれを有効成分として含有する皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
シワは人類にとって、老いの象徴とも言うべき老化現象であって、容貌に及ぼす影響が多いことから、化粧料や皮膚外用医薬の解決すべき課題として長年取り上げられてきた。しかしながら、どの様なメカニズムでシワが形成されるかについては諸説が乱立しており、未だに明らかにされていないのが現状である。従って、シワの形成を抑制したり、形成されたシワをもとのシワの少ない状態に戻す方法はまだ得られていない。シワと同様にフィブローシスや傷跡や火傷跡に形成されるケロイドについてもその形成メカニズムは知られておらず、これらの形成を抑制したり、形成されたこれらの異常を治療したりする方法もまだ知られていなかった。
【0003】
シワ、フィブローシス、ケロイドの形成と真皮コラーゲン線維束の状態との関係について、何等検討されていなかった。
【0004】
副腎皮質ホルモンが、シワ、フィブローシス、ケロイド等の形成によって生じた真皮コラーゲン線維束の異常を正常化する作用を有していることも全く知られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な状況下なされたものであり、シワ、フィブローシス、ケロイド等の形成によって生じた真皮コラーゲン線維束の異常を正常化する手段を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者等はシワ、フィブローシス、ケロイドの形成メカニズムを求めて鋭意研究を重ねた結果、シワのうち光照射によって生じたシワが、真皮コラーゲン線維束の異常をメカニズムにしていることを見いだした。更に検討を重ねた結果、フィブローシスや火傷や傷の治癒時に生じるケロイド形成時にも真皮コラーゲン線維束の異常をメカニズムとしていることを見いだした。この真皮コラーゲン線維束の異常を正常化させる薬剤を求めて更に研究を重ねた結果、副腎皮質ホルモンにその様な作用を見いだし発明を完成させるに至った。以下、本発明について実施の形態を中心に詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)シワの形成と真皮コラーゲン線維束の構造との関係
シワの形成と真皮コラーゲン線維束の構造との関係を、マウス光照射モデルを用いて説明する。この実験例から真皮コラーゲン線維束の構造の乱れが光照射によるシワの形成のメカニズムであることが判る。又、これと同様にフィブローシスやケロイドにも真皮コラーゲン線維束の構造の乱れが認められており、これがメカニズムであることが示唆されている。
【0008】
<実験例>
光老化モデルでの皮膚の状態の変化の検討
ヘアレスマウス(Skh:HR−1、雌性、8週齢)に紫外線B(東芝SEランプ、60mJ/cm2)を連日照射し、照射開始後2、5、10週間に皮膚及び皮膚表面形態レプリカを採取した。採取皮膚はNaOH法によりコラーゲン線維束構造を走査電子顕微鏡により観察した。図1に倍率50倍での皮膚表面形態(A:非照射コントロール、B:照射2週間、C:照射5週間、D:照射10週間)、図2に倍率50倍での真皮表面形態(E:非照射コントロール、F:照射2週間、G:照射5週間、H:照射10週間)、図3に倍率500倍での真皮コラーゲンの線維束の構造(I:非照射コントロール、J:照射2週間、K:照射5週間、L:照射10週間)、図4に倍率2500倍での真皮コラーゲンの線維束の構造(M:非照射コントロール、N:照射2週間、O:照射5週間、P:照射10週間)を示す。これらの図より、しわが形成される際、それに対応するように真皮の表面にも溝が形成されており、皮膚表面の形態の変化は真皮の表面の形態の変化対応していること、更に真皮表面の変化は真皮に於けるコラーゲン線維束の構造の変化、即ち、線維束が明確でなくなる等の線維束の秩序の低下を反映していることが判る。ここで、図4の顕微鏡像を次の判定基準でスコアーを付した。即ち、スコアー0:観察領域全域で線維束構造が認められない、スコアー1:過半領域で線維束構造の崩壊又は異常構造への変移が認められる、スコアー2:一部に線維束構造の崩壊又は変性が認められるが、全体的にはほぼ正常な構造が認められる、スコアー3:全面に亘り正常な線維束構造が認められ、崩壊・変性はほぼ認められないの基準である。この結果を図5に示す。又、皮膚表面の構造について、レプリカへの入射角20度でのキセノンランプによる光照射を行い出来たシワの陰影を画像解析により定量し、シワの生成量とした。この測定結果を図6に示す。このシワ量とスコアー値の平均との相関係数を算出したところ、0.91であり、シワの形成と真皮コラーゲン線維束の乱れ(秩序)の間に強い関係があり、真皮コラーゲン線維束の乱れがシワ形成のメカニズムであることがわかる。
【0009】
(2)本発明の真皮コラーゲン線維束正常化剤
本発明の真皮コラーゲン線維束正常化剤は副腎皮質ホルモンを含む。本発明の副腎皮質ホルモンとしては、フルオシノニド、ベクロメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンが挙げられる。これらのものは既に公知の物質であり、既に商品として市販されている。本発明ではこれらの副腎皮質ホルモンをそのまま剤形化して使用することも可能であるが、誘導体や塩として使用することも可能である。誘導体としては、官能基を有していても良い芳香族又は脂肪族エステル又はエーテル、スルホン酸エステル、燐酸エステル等が例示でき、塩としては生理的に許容されるこれらの塩であれば特段の限定はされず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属塩、リジンやアルギニンのような塩基性アミノ酸塩、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩等が例示できる。
【0010】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は上記真皮コラーゲン線維束正常化剤から選ばれる1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤における真皮コラーゲン線維束正常化剤の好ましい含有量は、0.00001〜10重量%であり、より好ましくは0.00005〜5重量%であり、更に好ましくは0.0001〜1重量%である。本発明の皮膚外用剤にはこれら真皮コラーゲン線維束正常化剤以外に、通常皮膚外用剤で用いられる任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が例示できる。本発明の皮膚外用剤は真皮コラーゲン線維束の異常を伴う疾患に対して好適に適用されることを特徴とする。真皮コラーゲン線維束の異常を伴う疾患としては、例えば、シワの異常形成、フィブローシス、火傷や創傷治癒時のケロイド形成等が好ましく挙げられ、中でもシワの異常形成への適用が好ましく、シワの異常形成の中では光の長期照射に起因するシワの異常形成への適用が特に好ましい。本発明の皮膚外用剤は、そのコラーゲン線維束の正常化作用の程度に応じて、医薬品としても化粧料としても使用することが出来る。作用を少なくするには含有させるステロイドの含有量を下げれば良く、化粧料に好ましいステロイドの含有量は0.00001〜0.0001重量%であり、更に好ましくは0.00003〜0.00007重量%である。特にシワの異常形成に対して投与する場合は、作用の少ない化粧料として長期間投与するのが好ましい。本発明の皮膚外用剤は既に生じた真皮コラーゲン線維束の異常を正常化する治療作用のみならず、真皮コラーゲン線維束が異常化をすることを妨げる予防作用、真皮コラーゲン線維束の異常が更に悪化するのを防ぐ治療的予防作用を有する。本発明の皮膚外用剤の取りうる剤形としては、ローション剤、ゲル製剤、乳液、クリーム、軟膏等通常皮膚外用剤で使用されている剤形であれば特段の限定無く適用できる。これらは通常知られている方法に従って製造できる。
【0011】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明がこれら実施例にのみ限定を受けるものではないことは言うまでもない。
【0012】
<実施例1>
上記の動物モデル例を用い、光照射により生じたシワ等の皮膚の悪化状態の変化が本発明の皮膚外用剤であるデキサメタゾンローションによりどの様に変化するかを調べた。デキサメタゾンローションはデキサメタゾン(ローション剤1)は0.05重量部のデキサメタゾンに99.95重量部のエタノールを加え、ソニケートして可溶化して作成した。上記の光照射ヘアレスマウス(Skh:HR−1、雌性、8週齢)を用い、1群は0.05%ローション剤1を、もう1群にはエタノールのみをそれぞれ0.05mlづつ8週間連日投与した。この動物の皮膚を上記と同様に処理し、皮膚表面形態、真皮表面形態、コラーゲン線維束構造をそれぞれ観察した。図7に倍率50倍の皮膚表面形態を、図8に倍率50倍の真皮表面形態を、図9に倍率500倍のコラーゲン線維束構造を、図10に倍率2500倍のコラーゲン線維束構造を示す。コアー値についてはエタノール投与群が0.78であり、ローション剤1投与群が1.71であった。これより、皮膚状態の改善値は1.71/0.78=2.28と算出される。皮膚表面形態の走査顕微鏡写真を見て判るようにこのローション剤1の投与によって優れて改善していることが判る。
【0013】
<実施例2〜4>
下記の表1に示す処方に従ってクリームを作成した。即ち、ロを混練りし、イで希釈した後、80℃に温調し、これに予め80℃に温調したハを徐々に加え乳化し、攪拌冷却しクリームを得た。これを上記の光老化スクリーニング法に従って評価したところ、真皮コラーゲン線維束構造の改善値は表1に示す値となった。これらのクリームをシワに悩むパネラー1群20名に2ヶ月間使用し、シワの状況をアンケートで調査した。これらの結果も表1に併せて記す。この結果より本発明の皮膚外用剤はコラーゲン線維束を正常化する作用に優れることが判る。尚、処方の数値は重量部を表す。
【0014】
【表1】
Figure 0003751705
【0015】
<実施例5〜9>
下記表2の処方に従って軟膏を作成した。即ち処方成分をニーダーで混練りし軟膏を得た。これらは全て電子顕微鏡観察で上記光照射ヘアレスマウスモデルにおいて真皮コラーゲン線維束の正常化作用を認めた。
【0016】
【表2】
Figure 0003751705
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、シワ、フィブローシス、ケロイド等の形成によって生じた真皮コラーゲン線維束の異常を正常化する手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光老化モデルでの皮膚表面形態の変化を表す図である。
【図2】 光老化モデルでの真皮表面形態の変化を表す図である。
【図3】 光老化モデルでのコラーゲン線維束構造を示す図である。(500倍)
【図4】 光老化モデルでのコラーゲン線維束構造を示す図である。(2500倍)
【図5】 光照射による線維束構造スコアーを示す図である。
【図6】 光照射によるシワ量を表す図である。
【図7】 シワの治癒過程の皮膚表面形態の変化を表す図である。
【図8】 シワの治癒過程の真皮表面形態の変化を表す図である。
【図9】 シワの治癒過程のコラーゲン線維束の構造変化を表す図である。(500倍)
【図10】 シワの治癒過程のコラーゲン線維束の構造変化を表す図である。(2500倍)

Claims (3)

  1. フルオシノニド、ベクロメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンからなる群から選択される副腎皮質ホルモン、その誘導体および生理的に許容されるこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上からなる真皮コラーゲン線維束正常化剤。
  2. 請求項1に記載の真皮コラーゲン線維束正常化剤から選択される1種又は2種以上を有効成分として含有する、真皮コーラゲン線維束異常を伴う疾病用の皮膚外用剤。
  3. 真皮コラーゲン線維束異常を伴う疾病が、光によるシワの異常形成、フィブローシス又はケロイドである、請求項2に記載の皮膚外用剤。
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