JP3751556B2 - 衣料用洗浄剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は衣料用洗浄剤組成物及び該洗浄剤を用いた洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
衿や袖口に付着した皮脂や蛋白に由来する汚れ、肌着の黄ばみやカレー、ミートソース等の食べこぼしのシミ汚れは非常に頑固な汚れであり、通常の洗濯では満足できるレベルまで落とすことは難しく、前洗いや漬け置き洗浄などの方法が行われている。また、より簡便な方法として塗布洗浄剤が提案されている。特開平11−269500号公報、特開平10−298599号公報には塗布用洗浄剤の技術が開示されている。また、特開平11−193399号公報には塗布用漂白剤の技術が開示されている。しかしながら、これら技術を用いても上記のような頑固な汚れを除去する効果は満足できるレベルまで達していない。
【0003】
一方、過酸化水素を含有するアルカリ性の液体漂白剤組成物が提案されている。特開平7−144905号公報、特開平4−349109号公報には特定の安定化剤を用いた組成物が優れた漂白効果と安定性を示すことが開示されている。しかしながら、これら組成物はシミ汚れなどの漂白に対して効果を示す汚れにはある程度の除去効果を示すものの、洗浄作用によって除去しなければならない皮脂や蛋白に由来する汚れに対しては、満足できる洗浄効果を得ることができない。
【0004】
その他、特開昭55−47208号公報、特開昭56−151798号公報、特開昭56−151800号公報、特開昭61−155208号公報、及び特開昭63−291998号公報には、保存安定性のために特定の有機ホスホン酸を含有するpHが7以上の液体漂白剤が記載されているが、いずれも、直接塗布する洗浄方法において満足できるシミ汚れ除去効果を得ることはできない。
【0005】
本発明の課題は、特に被洗浄物に対して希釈することなく直接接触させる洗浄方法において、皮脂や蛋白に由来する汚れに対して高い洗浄効果を有する洗浄手段を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)過酸化水素〔以下、(a)成分という〕を0.2〜6質量%、(b)浸透剤〔以下、(b)成分という〕を0.5〜50質量%、(c)カルシウム安定度定数が3〜13の分子量1000未満の化合物(c1)〔以下、(c1)成分という〕及びカルボキシ基を有する不飽和化合物を重合して得られる重量平均分子量1000〜100000の化合物(c2)〔以下、(c2)成分という〕から選ばれる1種以上〔以下、(c)成分という〕を0.1〜10質量%、並びに(d)水を含有し、20℃におけるpHが9〜12の洗浄剤組成物であって、該組成物100mlの20℃におけるpHを7にするために必要な0.1規定硫酸水溶液の量が40〜1000mlである衣料用洗浄剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の衣料用洗浄剤組成物を、希釈することなく、衣料に付着した汚れに直接接触させる工程を有する衣料の洗浄方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の(a)成分は過酸化水素であり、洗浄剤組成物中に0.2〜6質量%、好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1.5〜4.5質量%含有される。この範囲において、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0009】
本発明の(b)成分は浸透剤である。ここで、本発明でいう浸透剤とは(a)成分が繊維内部にまで浸透する時間を短縮させる助剤であり、洗浄剤組成物中に0.5〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%含有される。なお、有機過酸前駆体又は有機過酸は(b)成分としてカウントしないこととする。
【0010】
浸透剤として用いることができる化合物としては、水溶性溶剤〔以下、(b1)成分という〕及び界面活性剤〔以下、(b2)成分という〕が好ましい。
【0011】
また、下記標準試験により求まる浸透力比が3以上、好ましくは5以上となる(b)成分を用いるのが好ましい。
【0012】
<標準試験>
(a)成分5質量%、及び(b)成分が(b1)成分の場合は10質量%、(b)成分が(b2)成分である場合には1質量%をそれぞれ溶解した20℃の水溶液1000mlを1Lガラス製ビーカーに入れ、縦2cm、横2cm、厚さ0.2cmに切り抜いたウールフェルトを静かに浮かべ、ウールフェルトが完全に水面下に沈むまでの時間(秒)を測定する。この操作を10回繰り返し、最も大きい時間と最も小さい時間を除いて平均を求めTsとする。(b)成分を含有しない水溶液についても同様の方法で時間を測定しTrとする。浸透力比を下式により求める。
浸透力比=Tr/Ts。
【0013】
(b1)成分の水溶性溶剤としては、(イ)炭素数1〜5の1価アルコール、(ロ)炭素数2〜12の多価アルコール、(ハ)下記の一般式(1)で表される化合物、(ニ)下記の一般式(2)で表される化合物、(ホ)下記の一般式(3)で表される化合物が好適である。
【0014】
【化1】
Figure 0003751556
【0015】
〔式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示すが、R3及びR4の双方が水素原子となる場合を除く。aは0〜10の数を、bは0〜10の数を示すが、a及びbの双方が0である場合を除く。R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R5は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R6、R7は、それぞれ水素原子及びヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。〕。
【0016】
(イ)の炭素数1〜5の1価アルコールとしては、一般的にエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが挙げられる。これらの低級アルコールを配合することにより低温における系の安定性を更に向上させることができる。
【0017】
(ロ)の炭素数2〜12の多価アルコールとしては、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0018】
(ハ)の化合物は、一般式(1)において、R1、R2がアルキル基である場合の炭素数は1〜4が特に好ましい。また、一般式(1)中、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの平均付加モル数のa及びbは、それぞれ0〜10の数である(a及びbの双方が0である場合を除く)が、これらの付加順序は特に限定されず、ランダム付加したものであってもよい。(ハ)の化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=2〜3)ポリオキシプロピレン(p=2〜3)グリコールジメチルエーテル(pは平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(p=3)グリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。このうち、洗浄力及び使用感の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
【0019】
また、(ニ)の化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンが好適なものとして例示され、(ホ)の化合物としてはアルキルグリセリルエーテル化合物が挙げられ、好ましくはR5が炭素数3〜8のアルキル基の化合物である。
【0020】
これらのなかでも本発明の性質を満たすために(イ)、(ロ)、(ハ)、(ホ)の水溶性溶剤が好ましく、特にエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜4)グリコールモノフェニルエーテルから選ばれる溶剤が好ましい。
【0021】
(b2)成分の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、および両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0022】
陰イオン界面活性剤としては、分子中に炭素数10〜18、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜15のアルキル基又はアルケニル基と、−SO3M基及び/又は−OSO3M基〔M:対イオン〕を有する陰イオン界面活性剤が好ましい。具体的には上記炭素数を有するアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、アルキレンオキシド平均付加モル数1〜6のポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)平均付加モル数が1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、もしくは炭素数10〜15のアルキルベンゼンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる一種以上を配合することが好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が貯蔵安定性の点から良好である。
【0023】
非イオン界面活性剤としては、一般式(4)の化合物が好ましい。
8−T−[(R9O)c−H]d (4)
〔式中、R8は、炭素数7〜18、好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R9は炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。cは2〜200、好ましくは4〜50、特に好ましくは5〜20の数を示す。Tは−O−、−CON−又は−N−であり、Tが−O−の場合はdは1であり、Tが−CON−又は−N−の場合はdは2である。〕。
【0024】
一般式(4)の化合物の具体例として以下の化合物を挙げることができる。
8−O−(C24O)e−H (4−a)
〔式中、R8は前記の意味を示す。eは2〜200、好ましくは3〜100、より好ましくは4〜20の数である。〕
8−O−(C24O)f−(C36O)g−H (4−b)
〔式中、R8は前記の意味を示す。f及びgはそれぞれ独立に2〜15、好ましくは2〜10の数であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0025】
【化2】
Figure 0003751556
【0026】
〔式中、R8は前記の意味を示す。h及びiの合計は3〜20、好ましくは3〜15、特に好ましくは2〜10の数である。〕。
【0027】
本発明ではこれらの中でも特に(4−a)及び(4−b)から選ばれる非イオン界面活性剤が好ましい。
【0028】
陽イオン界面活性剤としては、下記一般式(5)のモノ長鎖アルキル(もしくはアルケニル)トリ短鎖アルキル型陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0029】
【化3】
Figure 0003751556
【0030】
〔式中、R10は炭素数8〜18、好ましくは10〜18、特に好ましくは10〜16のアルキル基またはアルケニル基であり、R11、R12、R13は同一又は異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。X-は陰イオン、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、炭素数1〜3の置換基を1〜3個有していてもよいアリールスルホン酸イオンである。〕。
【0031】
両性界面活性剤としては下記一般式(6)の化合物又は一般式(7)の化合物から選ばれる化合物が好ましい。
【0032】
【化4】
Figure 0003751556
【0033】
〔式中、R14は炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基又はアルケニル基であり、R16、R17は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R15は炭素数1〜5、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Uは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、jは0又は1、好ましくは1の数である。〕
【0034】
【化5】
Figure 0003751556
【0035】
〔式中、R18は炭素数9〜23、好ましくは9〜17、特に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R19は炭素数1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは2又は3のアルキレン基である。Vは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、kは0又は1の数、好ましくは0である。R20、R21は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、R22はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。Dは、−SO3 -、−OSO3 -から選ばれる基であり、特に−SO3 -が洗浄効果の点から良好である。〕。
【0036】
本発明において浸透剤として特に好ましい界面活性剤としては一般式(4−a)及び/又は(4−b)の非イオン界面活性剤、一般式(5)の陽イオン界面活性剤、一般式(6)及び/又は一般式(7)の両性界面活性剤から選ばれる1種以上であり、最も好ましい化合物は一般式(4−a)及び/又は(4−b)の非イオン界面活性剤である。
【0037】
本発明では(c)成分として、カルシウム安定度定数が3〜13、好ましくは3〜10、特に好ましくは3〜8の化合物の分子量1000未満の化合物〔(c1)成分〕及びカルボキシ基を有する不飽和化合物を重合して得られる分子量1000〜100000の化合物〔(c2)成分〕から選ばれる1種以上を用いる。ここで、(c1)成分のカルシウム安定度定数とは以下の測定方法で求められる。
【0038】
<カルシウム安定度定数の測定方法>
緩衝液として0.1mol/リットルのNH4Cl−NH4OH(pH10.0)溶液を調製する。この緩衝液を用いて全ての試料溶液を調製した。また、これら試料溶液の温度をすべて20℃にして測定を行った。Ca2+濃度の測定にはオリオン(株)製のイオンメーター920AとCa2+イオン電極を用いた。先ず、塩化カルシウム濃度と電極の電位の関係を求め、検量線を作成する。塩化カルシウムの5.36×10-2mol/リットル溶液、(c)成分の5.36×10-4mol/リットル溶液を調製する。(c)成分溶液100mlに塩化カルシウム溶液を1ml加え、5分間撹拌する。残存しているCa2+濃度をCa2+イオン電極を用いて測定する。キレート剤はCa2+と1:1でキレート錯体を形成すると仮定して下記の式からカルシウム安定度定数(Ca安定度定数)を求める。
【0039】
【数1】
Figure 0003751556
【0040】
(c1)成分の具体的に好ましい化合物としては、▲1▼クエン酸(3.2)、ジグリコール酸(3.1)に代表される多価カルボン酸、▲2▼エチレンジアミン4酢酸(12.2)、ニトリロトリ酢酸(6.6)、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン3酢酸(7.2)、メチルグリシン2酢酸(6.3)、アスパラギン酸2酢酸(7.0)、グルタミン酸2酢酸(6.5)に代表されるアミノポリカルボン酸、▲3▼1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(6.8)、アミノトリメチレンホスホン酸(5.4)に代表されるホスホン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩から選ばれる1種以上が好適である。これらの( )の数字は当該化合物のCa安定度定数である。
【0041】
(c2)成分として具体的に好ましい化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、グリオキシ酸(又はグリオキシ酸低級アルキルエステル)から選ばれる化合物を重合して得られる高分子化合物、又はこれらのアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩が好適である。グリオキシ酸又はその低級アルキルエステルは酸触媒などを用いて重合することができる。また、低級アルキルエステルを重合する場合は、得られた高分子化合物をアルカリで加水分解する。
【0042】
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸を用いる場合は通常のラジカル重合反応で目的の化合物を得ることができる。重合方法としては、塊重合、溶液重合あるいは乳化重合などを用いることができる。また、重合開始剤としては2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸、過硫酸塩を使用することができる。
【0043】
(c2)成分の重量平均分子量は、好ましくは3000〜100000、より好ましくは5000〜100000、特に好ましくは5000〜80000であり、ここで分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングルコールを標準として求めることができる。
【0044】
本発明の(c2)成分として最も好ましい化合物は、重量平均分子量5000〜40000、好ましくは5000〜20000のポリアクリル酸もしくはその塩又はポリメタクリル酸もしくはその塩、重量平均分子量10000〜80000、好ましくは30000〜80000のアクリル酸とマレイン酸のコポリマーもしくはその塩から選ばれるものであり、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーを選択する場合はアクリル酸/マレイン酸の質量比は90/10〜50/50、好ましくは80/20〜60/40が洗浄効果の点から好ましい。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を(d)成分である水に溶解させた水溶液の形態であり、20℃のpHは洗浄効果の点から9〜12、好ましくは9.5〜11である。また、該組成物100mlの20℃におけるpHを7にするために必要な0.1規定硫酸水溶液の量(以下、アルカリ能という)が40〜1000ml、好ましくは50〜500ml、特に好ましくは130〜250mlである。このような性質を該組成物に付与する目的から、本発明ではアルカリ剤〔以下、(e)成分という〕を、組成物中1〜20質量%、更に1〜10質量%、特に3〜7質量%含有することが好ましい。(e)成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸2水素カリウムから選ばれる1種以上が好適であり、特に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムが好ましく、炭酸カリウムが最も好ましい。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄効果を高める目的から、有機過酸前駆体又は有機過酸〔以下、(f)成分という〕を含有することが好ましい。有機過酸前駆体としては洗浄効果の点からベンゼン環に置換基を有していてもよいアルカノイルオキシベンゼンが好ましく、特に炭素数6〜14、好ましくは7〜13のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸もしくは炭素数6〜14、好ましくは7〜13のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸又はこれらの塩が好ましい。具体的に好ましい例としてはオクタノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、オクタノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ノナノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、デカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0047】
これらの中でも特にノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩が洗浄効果の点から好ましい。
【0048】
有機過酸としては上述の有機過酸前駆体と過酸化水素が反応して生成する化合物が好ましく、具体的には過オクタン酸、過ノナン酸、過デカン酸、過ウンデカン酸、過ドデカン酸、過3,5,5−トリメチルヘキサン酸が好適である。また、これら有機過酸と上記有機過酸前駆体が反応することで生成する過酸化ジアルカノイルも本発明では好適な漂白活性化剤として作用する。具体的には過酸化ジオクタノイル、過酸化ジノナノイル、過酸化ジデカノイル、過酸化ジウンデカノイル、過酸化ジドデカノイルであり、異なるアルキル鎖長のアルカノイル基を有する過酸化ジアルカノイルを用いることも可能である。
【0049】
本発明では(f)成分を組成物中0.01〜5質量%、更に0.01〜3質量%、特に0.01〜1.5質量%含有することが洗浄効果の点から好ましい。
【0050】
本発明の残部は水である。特にイオン交換水又は蒸留水などの重金属又は重金属イオンを極力除いた水を用いることが好ましい。本発明では塩素イオンも好ましくなく、塩素イオンも極力減少させた剤を用いることが好ましい。重金属、重金属イオン及び塩素イオンは過酸化水素の分解を促進させ、洗浄効果を低下させる。本発明において最も好ましくは、重金属、重金属イオン及び塩素イオンを極力除いた水を使用した上で、前記(c1)成分を併用することである。
【0051】
本発明の洗浄剤組成物は、水を、好ましくは70〜98質量%、より好ましくは80〜95質量%含有する。
【0052】
その他、本発明の洗浄剤組成物には、繊維に対する白さを増すために蛍光増白剤として、チノパールCBS(チバ・ガイギー社製)、チノパールSWN(チバ・ガイギー社製)や、カラー・インデックス蛍光増白剤28、40、61、71等のような蛍光増白剤や、洗浄性能を向上させるために酵素(セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ)することができる。また染料や顔料のような着色剤、香料、シリコーン類、殺菌剤、紫外線吸収剤等の種々の微量添加物を適量配合してもよい。
【0053】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び所望により配合されるその他成分が所定量となるように水に溶解する方法で調製できるが、使用する直前に調製されることが、高い洗浄効果を得る上で好適である。そのために、各成分を別々の容易に収容する容器入りの形態として、適用直前に本発明の洗浄剤組成物が形成されるような態様とすることができる。その一例として、(a)成分を含む組成物からなるA剤と、その他の成分を含有する組成物からなるB剤を、それぞれ分離して保持する容器に収容した二剤型洗浄剤が挙げられる。この場合、(b)成分、(c)成分は、A剤、B剤の少なくとも一方に配合され、好ましくは両方に配合される。また、二剤型洗浄剤において(e)成分を併用する場合は、(a)成分を含有するA剤とは別のB剤に(e)成分を配合することが好ましい。各成分は、混合後の組成が本発明の範囲となるようにA剤、B剤中に配合される。
【0054】
本発明の洗浄剤組成物は、弱アルカリ性洗剤と共に洗濯浴に希釈して洗濯機などで洗浄する方法を用いても差し支えないが、衣料に付着した皮脂及び/蛋白汚れに、希釈することなく、直接接触させて洗浄する方法が高い効果を得るために好ましい。接触させる方法としては、衣料に該組成物を浸漬させる方法、汚れの付着している部分に直接塗布や滴下して付着させる方法、及びトリガー式スプレーヤーなどのスプレー付き容器に充填してスプレーする方法を挙げることができ、簡便性の点から汚れの付着している部分に直接塗布や滴下して付着させる方法が好ましい。接触させる時間としては洗浄効果の点から好ましくは5〜480分、より好ましくは5〜300分、特に好ましくは10〜300分、特に好ましくは30〜200分が好適である。また、接触させる温度としては好ましくは2〜50℃、より好ましくは5〜40℃である。
【0055】
接触洗浄後の衣料は水道水ですすぎ洗いをするか、弱アルカリ洗剤と共に洗濯し、すすぎ洗いをすることが好適であり、特に弱アルカリ性洗剤で洗濯することが洗浄効果をより効率よく除去する上で好ましい。すすぎ後は脱水し、自然乾燥または乾燥機により乾燥する。
【0056】
【実施例】
表1に示す配合成分を用いて表1に示す洗浄剤組成物を調製した。この洗浄剤組成物を、下記で調製した汚染布4枚にそれぞれ1mlづつ塗布し、20℃で1時間放置後、0.0667重量%濃度の市販洗剤溶液を使ってターゴトメーターにて洗浄した(80rpm×10分)後、水道水ですすぎ乾燥させて、下式により洗浄率を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
【数2】
Figure 0003751556
【0058】
反射率は日本電色工業(株)製NDR−10DPで460nmフィルターを使用して測定した。
【0059】
(汚染布の調製)
(1)カレー汚れ/皮脂汚れ複合汚れ汚染布の調製
ハウス食品製レトルトカレー(カレーマルシェ)の固形分をメッシュで除去した後、得られた液500gに、牛脂50g、オレイン酸15g、パルミチン酸10gを加え、煮沸するまで加熱し、カレー汚れ/皮脂汚れ複合汚れモデルを調製した。この液に木綿金布#2003を浸し、約15分間煮沸した。そのまま火よりおろし、約2時間程度放置後、布を取りだし、余分に付着しているカレー液をへらで除去し自然乾燥させた。その後プレスし、10cm×10cmの試験片(表1中、複合汚れ汚染布と表記する)として実験に供した。
【0060】
(2)蛋白汚れ汚染布の調製
粉ミルク(明治乳業(株)製ステップ)10gを100mlの水道水に溶解し、10cm×10cmに裁断した木綿金布#2003に1ml塗布し、70℃の恒温槽で10日間貯蔵した後、試験片として実験に供した。
【0061】
【表1】
Figure 0003751556
【0062】
1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EOp10)
2)RO(C24O)n(C36O)m−H(R:ラウリル、n:10、m:2)
3)RO(C24O)n−H(R:炭素数12の分岐アルキル基、n:10)
4)アルキル(炭素数12〜15)ベンゼンスルホン酸ナトリウム
5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム(EOp3)
6)α−オレフィン(炭素数14)スルホン酸ナトリウム
7)N−テトラデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド
8)N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−1−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン
9)プロピレングリコール
10)1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(Ca安定度定数6.8)
11)ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量10000)
12)ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム
13)p−トルエンスルホン酸ナトリウム
上記1)〜9)の化合物は、何れも浸透力比が5以上であり、本発明の浸透剤に相当する。
*1;pHは20℃にて測定した値であり、10%硫酸水溶液又は30%NaOH水溶液を用いて表記したpH値に調整した。
*2;0.1規定硫酸必要量は、洗浄剤組成物100mlの20℃におけるpHを7にするために必要な0.1規定硫酸水溶液の量(ml)である。

Claims (5)

  1. (a)過酸化水素を0.2〜6質量%、(b)浸透剤としての水溶性溶剤(b1)を0.5〜50質量%、(c)ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩から選ばれる1種以上のカルシウム安定度定数が3〜13の分子量1000未満の化合物(c1)並びに重量平均分子量5000〜40000のポリアクリル酸もしくはその塩又はポリメタクリル酸もしくはその塩、重量平均分子量10000〜80000のアクリル酸とマレイン酸のコポリマーもしくはその塩から選ばれる化合物(c2)から選ばれる1種以上を0.1〜10質量%、(d)水、並びに(e)炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれるアルカリ剤を含有し、20℃におけるpHが9〜12の洗浄剤組成物であって、該組成物100mlの20℃におけるpHを7にするために必要な0.1規定硫酸水溶液の量が40〜1000mlである衣料用洗浄剤組成物。
  2. (f)ノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩から選ばれる有機過酸前駆体を含有する請求項1記載の衣料用洗浄剤組成物。
  3. 更に(b)浸透剤として界面活性剤(b2)を含有する請求項1又は2記載の衣料用洗浄剤組成物。
  4. 請求項1〜3の何れか1項記載の衣料用洗浄剤組成物を、希釈することなく、衣料に付着した汚れに直接接触させる工程を有する衣料の洗浄方法。
  5. 請求項1〜3の何れか1項記載の衣料用洗浄剤組成物を調製するための二剤型洗浄剤であって、(a)成分を含む組成物からなるA剤と、(e)成分を含有する組成物からなるB剤を、それぞれ分離して保持する容器に収容した二剤型洗浄剤。
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