JP3751126B2 - 総義歯床 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は総義歯床の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のヒトの急速な高齢化に伴い、予防歯科学の発展はあるものの、総義歯床使用患者の減少を達成することはなかなか困難である。そのような総義歯床使用患者の約半数は、使用している総義歯床について、はずれやすい、または浮き上がる、という不満を訴えている。
このような不満を減少または解消するために従来種々の考案が提案されている。
また実開昭63−189210のように総義歯床の歯肉接触面111に負圧発生用の空洞を設ける提案もある。しかし一部の場所に空洞を設けて定常的に負圧を生じさせると、その部分の歯肉が異常に刺激されて浮腫や内出血を生ずる危険がある。従って健康上実用に供し難い。
特開昭59−144450や特公平7−53644に記載のものはスポンジゴムなどの弾性プラスチック材料で作った分厚い台座のようなものを総義歯床と歯茎の間の部分に貼り付けることを提案している。しかしこのような分厚い台座を総義歯と歯茎の間に挿入すると大きな圧力を歯茎に与え、また咬合力をプラスチック材の弾力により損ない、健康上も咀嚼力上も実用にはならない。
【0003】
特開平4−138154に記載のものは歯茎に吸着する吸盤(2)を口腔内の歯茎(4)に吸着させるようにし、この吸盤(2)を総義歯に固定するものである。しかしこのような構造の吸盤を口腔内に長時間残置すると、歯茎は陰圧によって引っ張り続けられるので変形や潰瘍を生じ、粘膜や骨を損傷する。したがって一見実用性がありそうに見えるが口腔の健康上使用することはできない。
さらに実開昭63−40908の提案は総義歯床の周囲末端部のみを3ミリ以上と見られる厚みのあるゴム状軟質レジンで作る提案であるが、この場合そのようなゴム軟質レジンでは厚みがあることに問題があり、一部のみを特殊材料として所望の断面で滑らかに総義歯床と連結し、そしてそのような構成をとったからと云って密着性と歯茎への非刺激性とを両立させることは困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上の諸先行技術の殆どにおいては総義歯床の歯茎への安定装着部に負圧を常に与えておくという考え方に基づいている。このような考え方は、総義歯床が口腔内に非常に長時間にわたって固定的に同位置に装着され続けるものである。しかも装着時の接触部位は歯茎や粘膜というデリケートなものである、という事実を無視した考え方に基づいている。したがって、上記諸先行技術を現実に総義歯床に実施したものを装着すれば、口腔内組織を損傷し、又は痛みを生じ、またそれらがないほど緩くはめ合わされる場合には希望に反して総義歯床の浮き上がりや外れが生じやすいなどの不都合を生じる。したがって先行技術には実用に好適なものがなかった。
【0005】
発明者が多数の歯科診療の実例を通して得た知見経験によれば、総義歯床の外れやすさや浮き上がりを痛みを生ぜずに防止するためには、解剖的維持力、粘着力、咀嚼圧、総義歯床縁辺部での閉鎖、などの諸点について良好な総義歯床が必要となる。これらの諸点の内、解剖的維持力、粘着力、咀嚼圧などについては顎堤や粘膜の形態、唾液の性質、咬合力の強さなどは、総義歯床の作成技術が所定以上のレベルであれば患者固有のものとして定まったものであって、作成技術によって維持力が大きく左右されるものではない。しかし総義歯床の床縁部分の口腔粘膜に密着すべき部分の閉鎖については、患者に痛みや不快感を与えず良好な閉鎖を行うことが諸先行例の場合には不可能であった。従って総義歯床の設計制作においては痛みや不快感を与えずよい閉鎖を実現することが重要な課題として残されていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の第1の総義歯床は、顎提粘膜の形状に沿って形成した第1当接面を備える総義歯床本体と、総義歯床本体の前記第1当接面の縁辺部から所定幅をもって張り出された、伸縮屈曲弾力性をもつ閉鎖弁膜とからなり、この閉鎖弁膜は、顎提粘膜に当接する第2当接面を備え、この第2当接面は顎提粘膜の形状に沿って形成されていることを特徴とする。
(2)また本発明の第2の総義歯床は、顎提粘膜の形状に沿って形成した第1当接面を備える総義歯床本体と、総義歯床本体の前記第1当接面の実質的な全面に当接する第1部分およびこの第1部分に連続して前記第1当接面の縁辺部から所定幅まで張り出された第2部分からなり、伸縮屈曲弾力性をもつ閉鎖弁膜とからなり、この閉鎖弁膜の第1部分および第2部分は、顎提粘膜に当接する第2当接面を備え、この第2当接面は顎提粘膜の形状に沿って形成されていることを特徴とする。
(3)本発明の総義歯床のある好ましい実施では、前記(1)又は(2)の閉鎖弁膜の内側(顎堤の粘膜に当接する側)の表面(すなわち第2当接面)が唾液に関して親水性をもつように構成される。
(4)本発明の総義歯床のある好ましい実施では、前記(1)又は(2)の閉鎖弁膜が生体用シリコン系樹脂の0.1〜3mm厚の膜で構成される。
(5)本発明の総義歯床のある好ましい実施では、前記(1)又は(2)の閉鎖弁膜が、総義歯床本体の前記第1当接面の縁辺端部に気密に取り付けられ、顎堤粘膜にその弾力で密着する形に形成されるように構成される。
(6)本発明の総義歯床のある好ましい実施では、前記(1)又は(2)の総義歯床は上総義歯床であり、上総義歯床の少なくとも奥端部の総義歯床本体に前記閉鎖弁膜を設けたものである。
(7)本発明の総義歯床のある好ましい実施では、前記(1)又は(2)の総義歯床は下総義歯床であり、下総義歯床の馬蹄形歯床の少なくとも内側弧状部に前記閉鎖弁膜を設けたものである。
【0007】
【好ましい実施形態の記述】
[本発明の構成]
本発明の構成に先立って、本発明の理解を明瞭にするため、本発明の特徴である閉鎖弁膜を有しない従来の総義歯床の構造を、図9について先ず説明する。その従来の総義歯床には上総義歯床20’と下総義歯床10’とがある。上総義歯床20’は上顎堤やそれに続く部分の粘膜に密着する上顎総義歯床連結部23とその周囲に巡る上総義歯床20’の歯茎部21に植設された上顎義歯22を有する。また下総義歯床10’は上総義歯床20’と異なり舌3の舌根部33を避けるため連結部が無く、平面図で見るとほぼ馬蹄形に作られ、その下総義歯床10’の歯茎部11に下顎義歯12が植設されている。14は下顎の骨である。
このような従来の上総義歯床20’及び下総義歯床10’を装着して堅いものを前歯でかみ切ろうとする作業を行うとしばしば上総義歯床20’及び下総義歯床10’が前方に引っ張られる。このため、それぞれ上顎堤及び下顎堤に、唾などによる表面張力で付着していた総義歯床20’,10’が、前記引っ張り力によって脱離し、前方に飛び出すことがしばしば生ずる。
また、下総義歯床10’については、舌3を前方に出そうとする動作などで、舌根部33が下総義歯床10’を前方に押す作用が生じるので簡単に前方に脱離しやすい欠点があった。
さらに上総義歯床下総義歯床の何れも、くしゃみやせきなどの大きく急激な口腔の形の変化と大きい流速の気流の吐気の通過によっても引き起こされやすかった。
【0008】
この発明においては上総義歯床の縁辺部、そのうちでも図7に示すように少なくとも特に奥端部の縁辺部に前記閉鎖弁膜を設けることが重要である。但し、実際の実施品においては、縁辺部のみに閉鎖弁膜を滑らかに且つ強固に取り付けることが必ずしも容易でない場合があるから、図1A、図2A、図5A及び図6Aに示すように上総義歯床の顎堤に当接する断面山形の凹面(上総義歯床の裏面)の全面から縁辺部の外へ所定の幅のところまで連続して閉鎖弁膜を設けることも好ましい。
また本発明の総義歯床においては、下総義歯床の縁辺部、そのうちでも図8に示すように少なくとも特に馬蹄形の総義歯床の内側の弧状部に前記閉鎖弁膜を設けることが重要である。但し実際の実施品においては、上総義歯床の場合と同様の理由により、下総義歯床の顎堤に当接する断面が山形の凹面(下総義歯床の裏面)の全面から縁辺部の外へ所定の幅のところまで連続して閉鎖弁膜を設けることも好ましい。
図1ないし図8に本発明の実施例の上総義歯床及び下総義歯床を示し、この実施例に基づいて以下詳細に本発明の説明を行う。
【0009】
[上総義歯床]
図1の上半分に立面正面断面を、また図2に立面側面断面を、さらに図3に下面図を、それぞれ示すように上顎用総義歯床20(以下簡単のため上総義歯床20と称す)は、その上顎義歯22(以下簡単のため義歯22と称す)を植設した義歯歯茎部21の外側縁辺部に外側閉鎖弁膜26を設け特に少なくともその口の中で奥端部27の奥側縁辺部に奥側の閉鎖弁膜25を設けてある。奥端部の閉鎖弁膜25と前記外側閉鎖弁膜26とは勿論一体に連結されて機密性を保つように作られている。場合によっては図7に示す別実施例のように奥端27の奥側縁辺部の閉鎖弁膜25のみを設け、それ以外の外側の閉鎖弁膜26を省略するか、又はごく小さい幅(総義歯床の歯茎部21の端からの突出の幅)としてもよい。このような構造とすることによって、上総義歯床を上顎に装着した場合その外周部の閉鎖弁膜26は上総義歯床歯茎部の外側と頬の内側とに密着する。また、奥端部の閉鎖弁膜25は上顎奥端部の上顎粘膜に密着するためのものである。従って、総義歯床20は唾液の介在により上顎の歯茎とそれに続く部分の粘膜との間を閉鎖弁膜25、26による閉鎖により空気の出入りがなく気密に装着される。この場合、外周部及び奥端部の閉鎖弁膜26、27は伸縮屈曲弾力性を持つ柔軟な薄い弁膜であるから、それ自身が歯茎頬内側上部、又は上顎奥部の各粘膜に不要の押し圧力を与えることは全くない。その上総義歯床の正常な装着時においては図5に断面を示すようにその外周部の閉鎖弁膜26、及び奥端部の閉鎖弁膜25はともに、頬或いは唇の内側、及び上顎奥端部の粘膜にその柔軟伸縮弾力性を持って密着する。
図1A、図2A、図5A及び図6Aでそれぞれ示す変形実施例においては、上総義歯床20の裏面(顎底及び上顎口蓋に当接する面)全面に、及びその裏面部分25’からさらに縁辺部の外へ所定の幅の部分26にまで、連続して閉鎖弁膜を一体に設けてある。ある種の生体用シリコン系樹脂などで総義歯床の樹脂との接着力が余り大きくないものの場合、この構成によって両者の安定した接着が得られる。
また図7に示す変形例においては、上総義歯床20の裏面から縁辺部の外へ所定の幅で張り出して設けた閉鎖弁膜25を特に奥端部の部分に設け、他の部分については張り出して設けた閉鎖弁膜25を省いた。顎堤部分から外方に張り出した閉鎖弁膜の存在に特に過敏な患者などにとっては、張り出した閉鎖弁膜の設置場所が少ない方が好ましい場合がある。多くの実験により、そのように設置場所が少ない場合には、閉鎖弁膜設置の効果が特に大きい場所、すなわち図7に示すように特に奥端部25にこれを設けることが有効であることが分かった。
【0010】
[下総義歯床]
下顎用の下総義歯床10は図1と図2の下半分及び図4に示すように、中央後ろ半分に舌3の下部の舌根部33に当たらないように設けた凹みを持ち平面図でやや開いた馬蹄形の形を有する。その総義歯床10の歯茎部11の上に、下顎義歯12が植設されている。そして総義歯床の外周部には、外周閉鎖弁膜16が設けられ、また特に少なくとも馬蹄形の内側部に内側閉鎖弁膜15が設けられ、かつこれら両閉鎖弁膜15、16は奥の端の近くで一体に連結されている。従って、この下総義歯床10を着用装着した場合、図1及び図2に示すように正常時においては、外側閉鎖弁膜16及び内側閉鎖弁膜15がそれぞれ下顎の歯茎の両側に唾液など口腔分泌物を介在して密着する。場合によっては図8に示す別実施例のように内側閉鎖弁膜15のみを設け、それ以外の外側閉鎖弁膜16を省略するか、又はごく小さい幅(総義歯床の歯茎部11の端からの突出の幅)としてもよい。
図1A、図2A、図5A及び図6Aでそれぞれ示す変形実施例においては下総義歯床10の裏面全面に、及びその裏面部分15’からさらに縁辺部の外へ所定の幅の部分15、16にまで連続して閉鎖弁膜を一体に設けてある。ある種の生体用シリコン樹脂などで総義歯床の樹脂との接着力が余り大きくないものの場合、この構成によって両者の安定した接着が得られる。
また図8に示す変形例においては、下総義歯床10の裏面から縁辺部の外へ所定の幅で張り出して設けた閉鎖弁膜15を特に内側と奥端部の部分に設け、他の部分については張り出して設けた閉鎖弁膜15、16を省いた。顎堤部分から外方に張り出した閉鎖弁膜の存在に特に過敏な患者などにとっては、張り出した閉鎖弁膜の設置場所が少ない方が好ましい場合がある。多くの実験により、そのように設置場所が少ない場合には、閉鎖弁膜設置の効果が特に大きい場所、すなわち図8に示すように特に内側と奥端部にこれを設けることが有効であることが分かった。
【0011】
[上義歯及び下義歯に共通な事項]
上総義歯床及び下総義歯床のそれぞれの縁辺部に設けた閉鎖弁膜は、それぞれこれらの総義歯床を口腔内に装着したとき、それぞれ当接粘膜に軽く密着する形状に必要に応じて立体的に成形されている。また、その閉鎖弁膜は口腔内に存在する唾液を介して口腔内の粘膜に密着するよう、唾液に関して親水性を持つ表面材料であることが望ましい。本発明において唾液に関して親水性という事は、唾液は蒸留水と異なり若干の分泌物を含むので、そのような分泌物を含む唾液に対しても閉鎖弁膜の粘膜当接面側が十分に濡れる性質を持つことを言う。総義歯床縁辺部に設ける閉鎖弁膜の総義歯床本体からの出張っている幅は一律にする必要はなく、その患者の口腔内の構造に応じて最も適当な寸法に部分部分の出張り幅を調整するべきものである。しかし上述したように、少なくとも上の総義歯床の奥端部の閉鎖弁膜25と下の総義歯床の内側の閉鎖弁膜15についてはそれぞれ設けることが有効である。
【0012】
[本発明の動作]
上記の総義歯床10、20を口腔に装着して舌3を平常の自然な位置に置き、口を閉じた状態又はそれに近い状態にしたときは、上及び下の総義歯床20、10は上顎と下顎により義歯の咬合面が咬合する位置関係に保持される。このため、双方が口腔中に安定して位置する。この場合上記の各層総義歯床20、10の縁辺部における薄い閉鎖弁膜25、26、15、16は、それ自身の弾性によって最寄りの歯茎部や顎粘膜に緩く当接する。
舌を前方や上方に押し出すのでなくまた後方に引っ込めるのでもない平常の位置に置いて自然に口を開いた場合、特設の外力が加わっていないので、上下何れの総義歯20、10も図2又は図2Aに示す口を閉じた場合と略同様に上下各顎の歯茎に密着している。図1又は図1Aに示すようにその薄い閉鎖弁膜25、26、15、16の歯茎に当接する側の歯茎とのインターフェイス部は別段減圧や負圧を生ずる作用を受けていないので実質的に大気圧である。従って総義歯床およびその縁辺部の薄い閉鎖弁膜で覆われた部分の下の粘膜は、平常は負圧によるストレスを受けず、血行不良や浮腫の発生などを生じない。
【0013】
[下総義歯床の離脱防止作用]
舌3を前方に突き出すような動作をしたときには、図6又は図6Aに示すように舌根部33が変形して前上方に移動する。従って、特に下の総義歯床10は前上方に引っ張られ、総義歯床10の歯茎部が口腔の歯茎部及びそれに続く部分の粘膜から持ち上げられようとする。このとき図6又は図6Aに示すように薄い閉鎖弁膜の縁辺部が口腔内の粘膜に当接した状態のまま下の総義歯床が前上方向に引っ張られようとするので、薄い閉鎖弁膜15、16とそれが当接している歯茎部やそれに続く口腔内の部分の粘膜との間のインターフェイス部に空隙が出来ようとする。しかしその出来ようとする空隙の周囲は薄い閉鎖弁膜15、16によって粘膜に当接しているためこの空隙内は当然周囲の気圧より低い気圧(以下それを負圧と呼ぶ)となる。このため下総義歯床10には負圧がかかり、下総義歯床10をその下及びそれに続く粘膜に押しつける力が働く。この力が、舌根33の下総義歯床を前上方に引っ張る力にうちかち、下総義歯床10が下顎の歯茎部11及びそれに続く部分の粘膜から前上方へ脱離するのを防ぐ。
【0014】
舌根33が引っ込んで下の総義歯床10を前上方に脱離させる力がなくなると同時に、上記の負圧は消滅する。従って舌根を前方に押し出そうとするごく短時間の間以外は負圧は存在しない。この点で本発明は、総義歯床の脱離防止のために固定的、継続的な負圧を用いる従来の技術と大きく異なる。すなわち本発明によれば総義歯床10が脱離しようとする一時的な短時間以外は、総義歯床10とそれが当接されている歯茎部13及びそれに続く部分の粘膜との間は負圧がなく、周囲気圧と同一圧力しか存在しない。従って歯茎部13及びそれに続く部分の粘膜が総義歯床10やその縁辺部の薄い閉鎖弁膜により連続的に押圧されることはない。従って口腔内に押圧や負圧の連続により貧血や浮腫を生じることがない。
【0015】
[上総義歯床の離脱防止作用]
以上に、下顎用の総義歯床についてその作用を述べたが、上顎用の総義歯床20の作用も本質的には同様である。但し上の総義歯床20は舌根33などで前方に押し出すような作用を受けないので、それが前方又は前下方への脱離を生じる力は、主として前義歯により食物を強く噛み切るような作業、あるいはくしゃみやせきなどの風圧を伴う口腔の急激な変形の場合ぐらいなものである。このような上総義歯床20を離脱させる力が生じると、上総義歯床20の周囲の縁辺部に設けた薄い閉鎖弁膜25、26と、同総義歯床20が当接する歯茎部及びそれに続く部分の粘膜との間のインターフェイス部には、図6又は図6Aに示すように総義歯床20が脱離しようとするときにだけ空間が生じる。しかしこのインターフェイス部の空間は閉鎖弁膜及び総義歯床により閉鎖されているのでここに一時的に負圧が生じる。それ故その一時的に生じる負圧により上の総義歯床20を引き留める力が生じる。従ってこの引き留め力により、下の総義歯床10の場合と同様、脱離が防がれる。
上顎用総義歯床20の場合でも、下顎用の総義歯床10の場合と同様、それが上顎に正常状態で当接しているときには薄い閉鎖弁膜25、26はその緩い弾性によって口腔の粘膜に軽く当接しているだけである。それ故、正常時には上の総義歯床20と歯茎部、さらにそれに続く部分の粘膜との間に別段の負圧は生ぜず、粘膜に血行不良や浮腫を生じるおそれはない。
【0016】
【発明の効果】
以上の記述で、上顎用及び下顎用の上下の総義歯床の実施例についてそれぞれ説明したように、この発明にかかる総義歯床は、その縁辺部に薄い閉鎖弁膜を設け、それにより総義歯床裏面と歯茎部とそれに続く部分の粘膜と総義歯床の裏面にある当接面とのインターフェイスを周囲の空間から閉鎖した。この閉鎖弁膜による閉鎖によって、上及び下の総義歯床が歯茎部及びそれに続く部分の粘膜から脱離しようとするときだけ閉鎖されたインターフェイス部に生まれる空間に負圧が生じ、それぞれの総義歯の脱離を引き留める力が働く。従って舌の大きな運動、咀嚼、噛み切り、くしゃみ、せきなどで総義歯床が口腔内の定位置から脱離することが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の上の総義歯床及び下の総義歯床を口腔内に装着し、舌を正常位置に置いたときの口腔内の略中央部での正面立面断面図。
【図1A】変形実施例の上の総義歯床を口腔内に装着し、舌を正常位置に置いたときの口腔内の略中央部での正面立面断面図。
【図2】図1の状態の口腔内の正中線を含む断面での側面立面断面図。
【図2A】前記変形実施例の正中線を含む断面での側面立面断面図。
【図3】図1及び図2に示す実施例の上の総義歯床の下面図。
【図4】図1及び図2に示す実施例の下の総義歯床の平面図。
【図5】同じ実施例の上の総義歯床及び下の総義歯床を装着し、舌を前方位置に置くことにより下の総義歯床が浮き上り、また上の総義歯床が何かの原因で前方へ離脱しかけている状態の口腔内の略中央部での正面立面断面図。
【図5A】前記変形実施例の上の総義歯床及び下の総義歯床を装着し、舌を前方位置に置くことにより下の総義歯床が浮き上り、また上の総義歯床が何かの原因で前方へ離脱しかけている状態の口腔内の略中央部での正面立面断面図。
【図6】図5の状態の口腔内の正中線を含む断面での側面立面断面図。
【図6A】前記変形実施例の口腔内の正中線を含む断面での側面立面断面図。
【図7】別の実施例の、上の総義歯床の下面図。
【図8】別の実施例の、下の総義歯床の平面図。
【図9】従来の上の総義歯床及び下の総義歯床を口腔内に装着した口腔内の略中央部での正面立面断面図。
【符号の説明】
2 吸盤
3 舌
4 歯茎
10、10’ 下総義歯床
11 歯茎部
12 下顎義歯
15 内側閉鎖弁膜
16 外周閉鎖弁膜
20 上顎用総義歯床
20’ 上総義歯床
21 義歯歯茎部
22 上顎義歯
23 上顎総義歯床連結部
25 閉鎖弁膜
26 外側閉鎖弁膜
27 奥端部
33 舌根部
111 歯肉接触面
Claims (7)
- 顎提粘膜の形状に沿って形成した第1当接面を備える総義歯床本体と、
総義歯床本体の前記第1当接面の縁辺部から所定幅をもって張り出された、伸縮屈曲弾力性をもつ閉鎖弁膜とからなり、
この閉鎖弁膜は、顎提粘膜に当接する第2当接面を備え、この第2当接面は顎提粘膜の形状に沿って形成されていることを特徴とする総義歯床。 - 顎提粘膜の形状に沿って形成した第1当接面を備える総義歯床本体と、
総義歯床本体の前記第1当接面の実質的な全面に当接する第1部分およびこの第1部分に連続して前記第1当接面の縁辺部から所定幅まで張り出された第2部分からなり、伸縮屈曲弾力性をもつ閉鎖弁膜とからなり、
この閉鎖弁膜の第1部分および第2部分は、顎提粘膜に当接する第2当接面を備え、この第2当接面は顎提粘膜の形状に沿って形成されていることを特徴とする総義歯床。 - 前記閉鎖弁膜の第2当接面が唾液に関して親水性をもつことを特徴とする請求項1又は2記載の総義歯床。
- 前記閉鎖弁膜は生体用シリコン系樹脂の0.1〜3mm厚の膜からなることを特徴とする請求項1又は2記載の総義歯床。
- 前記閉鎖弁膜は、総義歯床本体の前記第1当接面の縁辺部に気密に取り付けられ、顎堤粘膜にその弾力で密着する形に形成されていることを特徴とする請求項1記載の総義歯床。
- 前記総義歯床は上総義歯床であり、上総義歯床の少なくとも奥端部の総義歯床本体に前記閉鎖弁膜を設けたものである請求項1又は2記載の総義歯床。
- 前記総義歯床は下総義歯床であり、下総義歯床の馬蹄形歯床の少なくとも内側弧状部に前記閉鎖弁膜を設けたものである請求項1又は2記載の総義歯床。
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