JP3750966B2 - 電池ケース用Al−Mn系合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電池ケースの成形用素材となるAl−Mn系合金板およびその製造方法を提示するもので、特に成形特性に優れるため安定的・効率的な電池ケース製造が可能で、さらに自動車内放置等で想定される70〜90℃の加熱および内圧発生時にも変形が少ないため、軽量・安全が要求される小型軽量の角形Liイオン電池のような電子機器用電池のケース素材として好適な素材を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
電池ケース用プレス成形素材として、鉄系材料に代りAl合金を用いることは電池ケースの軽量化のために有利である。
例えば、従来、携帯電話等に搭載される角形の小型Liイオン二次電池の角型ケースは、複数工程の絞り しごき加工を組み合わせた多段のプレス加工により成形されるものであり、スチール板を成形素材とするのが一般的であったが、軽量化の要求によりアルミニウム合金板を素材とするものが一部で実用化されている。この角型電池等のケース用材として、耐食性に優れるAl−Mn系の材料が好適である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
小型Liイオン二次電池の場合、電池ケースに陰極と陽極及び電解質の電池構成部分を充填した後に、この電池ケース上部に蓋部分を接合し、さらに外側を樹脂で覆った状態で使用される。ここで、電池ケースと蓋の接合は現状ではレーザー溶接で行われているが、これを機械的に嵌合して接合することも試みられている。
この機械的嵌合は多くの場合曲げ変形を伴う加工によるが、この曲げ部位での肌荒れに起因する微小クラックが生じる場合がある。また、この電池ケースのプレス成形時に、不均一な変形により耳の発生が大きくなると、材料歩留りが低下して好ましくない。
【0004】
また、このような電池ケースが加熱され内圧が発生した場合に、フクレ変形が生じる場合がある。たとえば、角形のLiイオン二次電池等が携帯電話等に搭載された場合、充電、放電の繰り返しによる発熱や、夏場の外気温の高い条件での自動車内放置状態を考えると、最高では70〜90℃の温度にさらされると推定される。このような過酷の条件下に長時間置かれると、電池内部で反応が進み気泡等の発生により内圧が高まって電池ケースにフクレ変形を生じる可能性がある。さらに、このフクレ変形量が過大になった際には、携帯電話等に組み込まれた電子部品を圧迫したり、電子部品外側の電池ケースに変形等の不具合を生じ、また、電池ケースの蓋部分との溶接部分等に亀裂を生じた場合には、電池の電解物質等の漏れを生じ、構成する電子部品に不具合を生じる等の問題が生じ易くなる。
このように、フクレが起ることにより電子機器の機能が損われ、場合によっては安全上の問題が生じることも考えられる。
【0005】
従って、アルミニウム製の電池用角形ケースの材料には、曲げ性等を含めた成形特性が優れることと、温度上昇による内圧の増加等による電池ケースのフクレ変形が少ないことが求められており、これら特性のバランスの取れた材料の開発が待たれている。
【0006】
本発明は、上記の技術課題を解消して、曲げ性を含む成形特性に優れ、軽量で温度上昇と内圧の増加等によるフクレが少ない電池ケース成形素材用Al−Mn系合金板を提供する事を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、角型の小型電池ケースを加熱して内圧を与えたときのフクレは特定部位への応力集中による塑性変形と、温度および内圧保持中に進行するクリープ変形により生じることを解明し、曲げ性などの成形特性に優れ、かつ電池ケースが耐加熱加圧フクレ性を満足するようなAl−Mn系合金材料の金属組織上の必要条件や、その具体的な製造方法について種々検討し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本第一発明は、Mn0.8〜2%を含み、Siが0.04〜0.2%に、Feが0.04〜0.6%に制御され、残部不可避的不純物とAlからなる組成で、Mn固溶量が0.15%以上で、圧延方向の耐力YSが
150≦YS[N/mm2 ] ≦64×(Mn固溶量[wt.%])+170
の範囲にあり、圧延方向断面での結晶粒平均面積が100μm2 以上かつ500μm2未満であることを特徴とする成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース用Al−Mn系合金板である。
また本第二発明は、さらにCu0.05〜0.25%、Cr0.02〜0.1%を含むAl−Mn系合金板である。
また本第三発明はこれらの組成の合金を480〜620℃で1〜20h保持する均質化処理ののち、材料温度が410℃を越えないように制御した熱間圧延を行い、その後、圧下率40〜70%の最終冷間圧延を施し、さらに160〜210℃で1〜8hの焼鈍を行うものである。
また本第四発明は本第三発明の熱間圧延後に15〜80%の圧下率の冷間圧延を施したのち、昇温速度5℃/s以上で380〜580℃に加熱し、0〜200s保持して直ちに冷却速度5℃/s以上で降温する条件で中間焼鈍を行う工程を加えたものである。
また本第五、第六発明は上記発明の最終焼鈍を昇温・冷却速度を5℃/s以上として210〜260℃で0〜200sの焼鈍を行うこととしたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細を説明する。
まず本発明の合金組成について説明する。
【0010】
本発明のAl−Mn合金は、Mn0.8〜2%を含み、不純物元素であるSiが0.04〜0.2%に、Feが0.04〜0.5%に制御され、必要によりCu0.05〜0.25%、Cr0.02〜0.1%を含み、残部他の不可避的不純物とAlからなる組成とする。
【0011】
Mnは、固溶量を0.15%以上に制御することにより、耐加熱フクレ性向上に寄与する添加元素である。これは、固溶したMnが加熱・内圧負荷時のクリープ変形の際の転位移動の抵抗として働くためである。Mn添加量0.8%未満ではこの効果が不足し、また機械的強度も低くなるため不適当である。Mn添加量2%を越えると粗大な晶出物が多くなり成形性が問題となるため電池ケース成形用素材として不適当である。
【0012】
Siは、含有量が多いほどMnの析出を促進する作用を持つ。そこで0.2%を越えてSiを含有すると固溶Mnによるフクレ防止効果が阻害され、耐加熱フクレ性が低下するため不適当である。また、Siを0.04%未満に低減することはこれ以上の特性向上に結びつかないにもかかわらず、高純度地金を必要とし高コストとなるので不適当である。
【0013】
Feは、多く含むと粗大な晶出物を生じ易く成形性に問題が生じるので、0.04〜0.6%に制御する必要がある。Feを0.04%未満に低減することはこれ以上の特性向上に結びつかないにもかかわらず、高純度地金を必要とし高コストとなるので不適当である。Feが0.6%を越えて添加されると、成形性に悪影響を及ぼすため不適当である。
【0014】
0.05〜0.25%のCuを添加することにより、機械的強度および耐加熱フクレ性が向上する。
また、Crを0.02〜0.1%添加することで結晶粒の微細化、安定化がはかられ、機械的強度および耐加熱フクレ性が向上するとともに、諸特性のバラツキが低減される。
【0015】
このほか、アルミニウム合金の鋳造の際に一般的に添加されるTi系あるいはTi−B系の微細化剤に起因するTiは0.1%以下、Bは0.03%以下の範囲で含んでもよい。
なお、Al−Mn合金として生産量の多いアルミ缶胴材には1%程度のMgが添加されており、この缶胴材と同一の設備で溶解鋳造した場合等にMgが不純物として入ることがあるが、この場合には一般的な不純物元素の許容量0.05%未満であれば差支えない。
【0016】
次にMn固溶量について説明する。
固溶Mnは、クリープ変形における転位の移動に対する抵抗として働くことにより、耐加熱フクレ性の向上に寄与する。これが0.15%未満であるとMnによる耐加熱フクレ性が不十分となる。したがってMn固溶量は0.15%以上とする。
【0017】
また、本発明のAl−Mn合金板の圧延方向の耐力は、式1の範囲に制御される。
150≦YS[N/mm2 ] ≦64×(Mn固溶量[wt.%])+170 (式1)
これより低い耐力であると、成形された電池ケースに内圧がかかった時に単なる塑性変形でのフクレが生じやすいため不適当である。また、この範囲より高い耐力であると、成形前の材料中の可動転位の量が多く、結果として成形後の組織中にある可動転位が多くなるのでクリープ変形が生じやすいため不適当である。
式1のように、耐力の上限をMn固溶量と関係して規定するのは、固溶Mnが耐力増に寄与している部分をキャンセルして可動転位量をより直接的に制御するように工夫したものである。
【0018】
次に本発明の組織限定について説明する。
本発明のAl−Mn合金板の組織は、圧延方向断面での結晶粒平均面積が100μm2 以上で500μm2 未満であることを特徴とする。500μm2 以上であると曲げ部等で肌荒れや微小クラックを生じるため不適当である。また、クリープ変形には素材中の空孔の拡散が関与し、拡散が速い場合にクリープ変形がより助長される。結晶粒が特に小さく粒界が多い場合、粒界を通って拡散が生じることによりクリープ変形が大きくなる。そこで、結晶粒の平均面積が100μm2 より小さいとクリープ変形によるフクレが増大し不適当である。このため上記の範囲内と限定する。
【0019】
次に本発明の製造方法について説明する。
【0020】
鋳造方法は通常の半連続鋳造法(DC法)および板連続鋳造法(CC法)のいずれも用いることができる。高いMn固溶量を容易に実現するにはCC法を用いるのが有利であるが、諸特性の安定性ではDC材が有利である。
【0021】
鋳造後の均質化処理は480〜620℃で1〜20h保持する条件で行う。この温度の規定より低温あるいは短時間の加熱であると、均質化処理の効果が不十分となり、最終的に粗大な結晶粒の材料となりやすく、成形時の不均一変形により耳が大きくなるので不適当である。また、これより高温度での均質化処理は、局部的な溶融が生じる恐れがあるため不適当である。また、この範囲より長時間であると、Mnの析出が過度に起り、加熱および内圧負荷時のケースふくれが大きくなるため不適当である。
【0022】
均質化処理後、材料を熱間圧延温度まで冷却して、連続して熱間圧延を行うことが可能である。また、均質化処理後、十分に材料を冷却し、熱間圧延前にこれを320〜410℃で予備加熱してもかまわない。後者の場合、均質化処理後に面削加工を行うことも可能である。
【0023】
熱間圧延中の材料温度は、410℃を越えないように制御する必要がある。この温度より高くなると、熱間圧延中に粗大な再結晶粒が形成され、結果的にこれが最終板の結晶粒を粗大化し、曲げ性などの成形特性を低下させる恐れがあるため不適当である。また、410℃を越える熱間圧延温度ではMnの析出が過度に生じて、成形された電池ケースの耐加熱フクレ性が低下するので不適当である。熱間圧延では少なくとも50%以上の圧下を加えることが望ましい。また、予備加熱後、熱間圧延終了までは1h以内である事が望ましい。
【0024】
本発明の一つの製造法としては、熱間圧延の次に圧下率を40〜70%の最終冷間圧延を施す。圧下率がこれより低いと、機械的強さが不足し、初期の塑性変形により大きなフクレが起こってしまうため不適当である。また70%を越えると、耐力などの機械的強度は高くなるが成形が困難となり、また多くの可動転位を組識中に含み最終的に成形された後の電池ケースでも可動転位が多くなるため、クリープ変形が起こりやすくなりフクレの発生を招くので不適当である。
【0025】
また、本発明の別の方法としては、熱間圧延後15〜80%の圧下率の冷間圧延を行ない、急速加熱冷却による中間焼鈍を施し、次に圧下率40〜70%の冷間圧延を施すものである。
中間焼鈍前の冷間圧延の圧下率は15%より低いと中間焼鈍での再結晶が不安定となり安定した特性が得られず、80%より大きいと中間焼鈍時の再結晶粒が過度に細かくなる恐れがある。
中間焼鈍は昇温5℃/s以上で380〜580℃に加熱し、0〜200s保持して直ちに冷却速度5℃/s以上で降温する条件で行うが、この様な急速加熱冷却による焼鈍方法でないとMnの析出が生じ、Mn固溶量が低くなるので不適当である。この中間焼鈍は、連続焼鈍ライン(CAL)により実施することが望ましい。なお0sの保持とは、所定温度に到達後に保持すること無しに直ちに冷却することを意味する。
中間焼鈍後の最終冷間圧延での圧下率を40〜70%とする。これより低いと機械的強さが不足するし、これに伴い初期の塑性変形により大きなフクレが起こってしまうため不適当である。一方70%を越えると、耐力などの機械的強度は高くなるがプレス成形が困難となり、また多くの可動転位を組識中に含み最終的に成形された後の電池ケースでも可動転位が多くなるためクリープ変形が起こりやすくなるので不適当である。
【0026】
冷間圧延後に最終焼鈍を行うが、これは成形特性を確保した上で電池ケースの耐加熱加圧フクレ性を向上させるために必要な工程である。すなわち、この焼鈍により圧延加工で導入された可動転位が低減するか、あるいは固溶Mnが微細な偏析状態を形成し、これが転位の移動に対する抵抗として働くことにより、クリープ変形が抑制されるのである。
この最終焼鈍では、昇温・冷却速度10〜150℃/h、焼鈍温度160〜210℃、保持時間1〜8hの焼鈍条件、あるいは昇温・冷却速度を5℃/s以上として210〜260℃で0〜200sとする焼鈍条件が好適である。前者はバッチ式の焼鈍装置により行うのに適した条件で、後者は急速加熱および冷却が可能な連続焼鈍ライン(CAL)により実施するのに適した条件である。ここで、規定温度より低いか保持時間が短いと十分な電池ケースの耐加熱加圧フクレ性向上が達成されず、逆に規定温度より高いか保持時間が長すぎると機械的強度が低下してしまうので不適当である。なお0sの保持とは、所定温度に到達後に保持すること無しに直ちに冷却することを意味する。
【0027】
本発明の合金板を用いた電池ケースの成形法は、特に限定するものではないが、本発明材は絞りおよびしごきを組み合せた多段プレス成形に対して好適である。
電池ケースに対する蓋の接合方法として、本発明材を用いれば機械的な圧着による方法を採用できるが、レーザー溶接や接着法を用いることもできるし、これらを組み合せて用いる場合に対しても本発明材は好適である。
【0028】
【実施例】
表1に示す本発明規定組成の合金をDC法で鋳造し、表2の条件で0.8mmの圧延板とした。なお表1に示す合金のうち合金AはAl缶材のリサイクル材と同一炉での鋳造により本発明の不可避的的不純物レベルのMgが混入したものを想定したものである。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
できた圧延板のMn固溶量を以下の手順のフェノール抽出分析で測定した。
1)試料を0.5g採取
2)無水フェノール100ml中で170〜180℃×30min溶解
3)10min空気中で放冷
4)フェノール凝固防止のため140℃でベンジルアルコール50ml添加
5)冷却
6)一定体積(250ml)となるようベンジルアルコールで希釈
7)ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターと
ポアサイズ0.02μmの陽極酸化膜フィルターで濾過
8)濾液を原子吸光分析しMn固溶量を算出
また、材料の耳率はスイフトカップ試験方法に準じて以下の条件でカップの絞り加工を行い、耳率=(山部分の平均値−谷部分の平均値)/(谷部分の平均値)として測定した。
絞りダイス−−内径=34.6mmφ、肩r=8mm
絞りポンチ−−内径=32.0mmφ、肩r=4mm
しわ押さえ力−−200kg
ブランク径−−56mmφ(絞り比1.75)
潤滑剤−−ジョンソンワックス#700
次に材料を多段プレス成形機により、図1のような厚さ8mm、幅30mmで角がR2mmの断面を持ち、高さ50mmの角型ケースとした。
次いで、ケース端部を切断し、送圧管のついた蓋と機械的に接合した。この際、図1のようにケース開口部の端を0.6mmの蓋材を挟んだ状態で180゜曲げして、曲げ部分のクラックの発生を目視観察し、○クラックなし、×クラック発生で評価した。
次いで、Liイオン電池が自動車車内に放置されて高温になり電池内容物の反応により内圧が生じた状態を模して、このケースを85℃で保持しながら、2kg/cm2 の内圧をかけ24h保持する加熱内圧フクレ試験を実施し、フクレが最大となった部位でフクレ量を測定した。ここでフクレ量とはケース外形における厚さの増加量を意味し、試験前のケース厚さと、加熱内圧付加して所定時間保持した後に除圧し室温に冷却した後のケース厚さとの差である。
それらの結果を表3に示す。なお表には固溶Mn量を元に本発明における耐力値の限定式 150≦YS[N/mm2]≦64×(Mn固溶量[wt%])+170 の右項の計算値も掲げた。
【0032】
【表3】
【0033】
表に示すように比較例では電池ケース成形段階で割れが生じたり、曲げ部での肌荒れによる微小クラックが生じたのに対し、本発明実施例のものはすべて問題なく成形でき、優れた成形性を有していることを示している。また本発明材はいずれも耳率が低く歩留りの良いプレス成形に適することがわかる。
また本発明実施例のフクレ量は比較例と比べて格段に少なく、耐加熱フクレ性に優れることが明らかである。
これに対して比較例のNG1はMn量が本発明の規定より少ないものであり、その結果Mn固溶量が少なくなり、耐力が低くフクレが大きくなってしまったものである。
またNG2はMn量が本発明の規定より多いものであり、電池ケース成型時に割れが発生してしまい耳率の測定ができず、またその後の加熱内圧フクレ試験は行っていない。
NG3はSi量が高いもので、Mn固溶量が少なくフクレが大きくなっているものである。
NG4はSi量,Fe量ともに高いもので、Mn固溶が少なく、耐力が大きすぎ、フクレが大きくなっているものである。
NG5は合金組成は本願発明の範囲を満たしているが、均質化処理温度が低温で、また最終焼鈍が無いものであり、結晶粒が粗大化しており曲げ性が低下してクラックが発生しており、このため加熱内圧フクレ試験は行っていない。
NG6は均質化処理温度が低温で中間焼鈍と冷間圧延を施したものの最終焼鈍が無いものであり、結晶粒が粗大化しており曲げ性が低下してクラックが発生しており、このため加熱内圧フクレ試験は行っていない。
NG7は均質化処理温度が低温のもので結晶粒が粗大化しており曲げ性が低下してクラックが発生しており、このため加熱内圧フクレ試験は行っていない。
NG8は最終焼鈍なしのもので、耐力が大きくフクレが大きくなっている。
NG9は熱延温度が本発明の範囲を超えて高温のもので、Mn固溶量が少なく、耐力が大きく、フクレ量が大きくなってしまっている。
NG10は最終焼鈍なしのもので、耐力が大きく、フクレ量が大きくなっている。
NG11は最終焼鈍温度が本発明の規定より低温のもので、耐力が大きく、フクレ量も大になっている。
NG13は冷間圧延率が大きいもので、耐力が高くフクレ量も大となっている。
NG14は最終焼鈍温度が本発明の範囲より高温のもので、耐力が低くフクレ量が大となっている。
このように本発明の範囲から外れたものは成形性や耳率で問題があるかあるいはフクレ量が大きくなってしまっている。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のAl−Mn系合金は、適切に制御された金属組織を持つことにより、曲げ性を含めた成形特性に優れると同時に、これを素材とした電池ケースでは、固溶Mnによる加熱内圧負荷時の転位移動抵抗の増加と可動転位の低減によりクリープ変形が起こりにくくなり、加熱および内圧が作用する場合のフクレが低減されている。
従って本発明に係るAl−Mn系合金板は軽量・安全が要求される小型軽量の角形Liイオン電池のような電子機器用電池のケース素材として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の加熱内圧フクレ試験方法を示す平面図ならびに断面図である。
【符号の説明】
1‥‥‥電池ケース
2‥‥‥蓋
3‥‥‥送圧管
Claims (6)
- Mn0.8〜2%を含み、Siが0.04〜0.2%に、Feが0.04〜0.6%に制御され、残部不可避的不純物とAlからなる組成で、Mn固溶量が0.15%以上で、圧延方向の耐力YSが
150≦YS[N/mm2 ]≦64×(Mn固溶量[wt.%])+170
の範囲にあり、圧延方向断面での結晶粒平均面積が100μm2 以上かつ500μm2未満であることを特徴とする成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース用Al−Mn系合金板。 - Mn0.8〜2%を含み、Siが0.04〜0.2%に、Feが0.04〜0.6%に制御され、さらにCu0.05〜0.25%、Cr0.02〜0.1%を含み、残部不可避的不純物とAlからなる組成で、Mn固溶量が0.15%以上で、圧延方向の耐力YSが
150≦YS2 ≦64×(Mn固溶量[wt.%])+170
の範囲にあり、圧延方向断面での結晶粒平均面積が100μm2 以上かつ500μm2未満であることを特徴とする成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース成形素材用Al−Mn系合金板。 - 480〜620℃で1〜20h保持する均質化処理ののち、材料温度が410℃を越えないように制御した熱間圧延を行い、その後、圧下率40〜70%の最終冷間圧延を施し、さらに160〜210℃で1〜8hの焼鈍を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース成形素材用Al−Mn系合金板の製造方法。
- 480〜620℃で1〜20h保持する均質化処理ののち、材料温度が410℃を越えないように制御した熱間圧延を行い、次いで15〜80%の圧下率の冷間圧延を施したのち、昇温速度5℃/s以上で380〜580℃に加熱し、0〜200s保持して直ちに冷却速度5℃/s以上で降温する条件で中間焼鈍を行い、その後、圧下率40〜70%の最終冷間圧延を施し、さらに160〜210℃で1〜8hの焼鈍を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース成形素材用Al−Mn系合金板の製造方法。
- 480〜620℃で1〜20h保持する均質化処理ののち、材料温度が410℃を越えないように制御した熱間圧延を行い、その後、圧下率40〜70%の最終冷間圧延を施し、さらに昇温・冷却速度を5℃/s以上として210〜260℃で0〜200sの焼鈍を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース成形素材用Al−Mn系合金板の製造方法。
- 480〜620℃で1〜20h保持する均質化処理ののち、材料温度が410℃を越えないように制御した熱間圧延を行い、15〜80%の圧下率の冷間圧延を施したのち、昇温速度5℃/s以上で380〜580℃に加熱し、0〜200s保持して直ちに冷却速度5℃/s以上で降温する条件で中間焼鈍を行い、その後、圧下率40〜70%の最終冷間圧延を施し、さらに昇温・冷却速度を5℃/s以上として210〜260℃で0〜200sの焼鈍を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の成形特性および耐加熱フクレ性に優れた電池ケース成形素材用Al−Mn系合金板の製造方法。
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