JP3750100B2 - ガムベースおよびチューインガム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガムベースとチューインガムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チューインガムの咀嚼特性を特徴づけるガムベースの原料として、天然ゴムやポリイソブチレンが使用されている。
天然ゴムは、ヘビアブラジリエンシス(Hevea Brasiliensis)から採取する天然ゴムラテックスより調製されるものである。その天然ゴムラテックスは、約60%の水分と約30%のゴム分の他、非ゴム成分として数%のタンパク質、脂質、無機質、炭水化物などからなり、通常、ゴム分が約60%になるまで遠心分離機を用いて濃縮精製し、それに腐敗防止のためアンモニアを0.2〜0.7%を添加したものを、精製天然ゴムラテックスと称し、各種製品の原料となっているものである。
ポリイソブチレンは、化学合成高分子で工業製品として生産されているが、ガムベースに使用されるものは、安全性の高い特殊食品グレードのものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記天然ゴムは、ガムベースに弾力性を賦与する重要な原料であるが、これを多量に使用すると、咀嚼時に凝集性を強く感じ滑らかな食感を減殺してしまい、また、天然ゴム特有の臭いや味が強調されるため、多量使用は困難となる。
ポリイソブチレンは、咀嚼特性を調整する重要な原料であるが、化学合成高分子であるために、微生物に対する耐性が高く、長期間にわたり分解されずその物性を維持するとされている。このことが、噛みカスの分解を妨げ、チューインガムの噛みカスのポイ捨てに由来する「噛みカス公害」の原因の一つとなっているとともに、上記のように特殊食品グレードを必要とするために生産量が少なく高価なものになってしまう。
【0004】
ところで、天然ゴムラテックスから天然ゴムを濃縮精製する際に生じる漿液(セラム)には、粒子径の小さいゴム分(平均粒径0.1〜0.5μm)が含まれているが、ゴム工業便覧(社団法人日本ゴム協会編集発行)に指摘されているように、その漿液は天然ゴムラテックスの品質を劣化させる原因となるので、本来精製天然ゴムラテックスを得る段階で取り除かなければならない成分である。
【0005】
すなわち、漿液中のゴム分が固形化した微粒子天然ゴムは、一般にセラムゴムまたはスキムゴムと呼ばれ、通常の天然ゴムとは異なった物性をもっているために、これまでは、タンパク質、無機質、炭水化物等の不純物が多く品質の劣るものとして扱われてきたところのものである。
【0006】
しかし、発明者らは、漿液から調製することができる微粒子天然ゴムが、天然ゴムに比べ、凝集性が低くいとともに特有の臭いや味が低減され、したがって、ガムベースに多量使用することができ、しかも、微生物による分解性が高く、天然ゴムやポリイソブチレンの上記のごとき欠点を解消することができる、との知見を得て本発明を完成した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明ガムベースは、ヘビアブラジリエンシス( Hevea Brasiliensis )から採取する天然ゴムラテックスから天然ゴムを濃縮精製する際に生じる漿液(セラム)に含まれる平均粒径0.1〜0.5μmのゴム粒子を固形化して得られる微粒子天然ゴムを使用してなるものである。その微粒子天然ゴムとしては、加熱処理されたもの、天然ゴムラテックスの漿液に無機塩を添加して濃縮精製したもの、あるいは、同漿液に無機塩と蛋白分解酵素とを添加してゴム分を濃縮精製してなるものが好適である。
本発明チューインガムは、上記したガムベースを使用しているものである。
【0008】
天然ゴムより微粒子天然ゴムを分離精製し、それをガムベースならびにチューインガムに用い、あるいはまた、その微粒子天然ゴムを加熱処理することにより得られる一層粘性の低い加熱処理微粒子天然ゴムをガムベースならびにチューインガムに用いたのは、本発明が初めてで、これによって、従来にない新しい食感をもったガムベースならびにチューインガムを製造できることとなった。
【0009】
すなわち、微粒子天然ゴムまたは加熱処理微粒子天然ゴムを用いたガムベースと天然ゴムを用いたガムベースとを比較すると、前者は粘性が低くしたがって凝集感の低いのが特徴である。
しかし、そのガムベースを用いたチューインガムは、チューインガムの重要な食感の一つである弾力性を失わず、良好にして新規な食感を与える。また、微粒子天然ゴムおよび加熱処理微粒子天然ゴムは、凝集感が低減されるため、通常の天然ゴムに比べより多く配合することが可能になる。
【0010】
さらに、微粒子天然ゴムまたは加熱処理微粒子天然ゴムを用いた場合、通常の天然ゴムを用いた場合と異なり、独特の臭いや味が気になることがないのでチューインガムの香味を損なうことがない。
【0011】
また、微粒子天然ゴムまたは加熱処理微粒子天然ゴムを用いることによって、前記ポリイソブチレンを使用する場合と相違し、チューインガムの噛みカスをより分解性の高いものにすることが可能であるとともに、微粒子天然ゴムまたは加熱処理微粒子天然ゴムは、天然ゴムラテックスを精製する際に生じる副産物である漿液より得ることができるので、比較的高価なポリイソブチレンに比べて、製品のコストダウンを図るのにも役立つと認められる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において使用する微粒子天然ゴム、すなわち、天然ゴムラテックスから天然ゴムを濃縮精製する際に生じる漿液から微粒子天然ゴムを調製する方法としては、通常の漿液に酸を加え回収する方法、漿液に適当量の無機塩を加えゴム分をクリーム層として濃縮精製しこれを回収する方法、漿液に適当量のクリーミング剤を加えゴム分をクリーム層として濃縮精製しこれを回収する方法等を挙げることできる。
【0013】
すなわち、所望の微粒子天然ゴムを調製できるのであれば、その分離精製方法はどのような方法であってもかまわない。しかしながら、本発明者らの開発に係るところの、漿液に無機塩を単独で添加して、あるいは、漿液に無機塩と蛋白質分解酵素の双方を添加し、ゴム分をクリーム層として濃縮精製し、さらに、ゴム分が凝集するまで水洗することにより回収する方法(特願平9−166232号「微粒子天然ゴムの製造方法」)は、純度の高い微粒子天然ゴムを得ることができ、最も好ましいと認められる。
【0014】
なお、この方法によれば、上記のようにして回収した微粒子天然ゴムを、ローラーやバンバリーニーダーを用いて水または温水で洗浄しながら練成することにより、さらに純度の高い微粒子天然ゴムとすることができる。
【0015】
微粒子天然ゴムは、加熱処理によって容易にその粘性を低下せしめることが可能である。すなわち、撹拌(練成)しながら温度、時間を適宜調整し加熱することにより、咀嚼基材としての目的に合致した所望の粘性の微粒子天然ゴムとすることができる。
【0016】
その温度範囲は、加熱処理を行う微粒子天然ゴムの量により異なるが、微粒子天然ゴムが軟化する温度であればよく、安全性・経済性を考慮すれば80〜180℃の範囲が好ましい。
また、処理時間は、加熱処理を行う微粒子天然ゴムの量、処理温度、必要とする物性により異なり、低温であれば長時間、高温であれば短時間となる。
【0017】
さらに具体的には、小スケールでは、微粒子天然ゴム10gをステンレスのカップに入れ、30分毎にステンレスのへラを用いて撹拌しながら約4時間、140℃で加熱することにより、咀嚼基材として適当な加熱処理微粒子天然ゴムを得ることができる。
【0018】
この場合、より粘性の低い微粒子天然ゴムを得るには、より高温でまたはより長時間の処理を行えばよい。また、一層効率的に加熱処理を行うためには、ニーダーミキサーを用い練成しながら加熱するとか、エクストルーダーを用い加熱するとかするとよいものである。さらにまた、微粒子天然ゴムを水洗しながら練成する際に連続して加熱処理を行うのも効率的である。
【0019】
微粒子天然ゴムの調製例1
漿液(固形分7.0%)1,000mlに、0.5%酢酸水をゴム分が完全に凝集するまで加えた。凝集した微粒子天然ゴムを水で洗浄しながら圧延しシート状とした。シート状微粒子天然ゴムを減圧条件下105℃で乾燥し、微粒子天然ゴムを得た。
【0020】
微粒子天然ゴムの調製例2
漿液(固形分7.0%)2,500mlに、食塩250g、アルカリプロテアーゼ1.0gを加え、40℃で12時間静置した。上層に微粒子天然ゴム分がクリーム状に濃縮されたとき、下層の溶液を取り除き、5.0%の食塩水2,000mlを加え撹拌し均一にした。次に40℃で12時間静置し再びクリーム層を得た。この食塩水洗浄を微粒子天然ゴムが凝集するまで繰り返した。凝集した微粒子天然ゴムを水で洗浄しながら圧延しシート状とした。シート状微粒子天然ゴムを減圧条件下105℃で乾燥し、微粒子天然ゴムを得た。
【0021】
微粒子天然ゴムの調製例3
調製例2で得た微粒子天然ゴム10gをステンレスのビーカーに入れ、140℃で3時間ステンレスのヘラで撹拌しながら処理し、加熱処理微粒子天然ゴムを得た。
【0022】
実施例(ガムベース)1〜3
表1の「ガムベース配合例」に掲げるガムベース原料と配合割合(重量%)により、常法に基づき、すなわち、ニーダー使用により120℃で溶解混合して、ガムベースの実施例1〜3と、比較例1を製造した。
なお、分子量30万のポリイソブチレン、天然ゴム(SMR)、調製例1の微粒子天然ゴムおよび調製例2の微粒子天然ゴムは予め高剪断性の混合機でワックス、エステルガムとプレブレンドして使用した。
【0023】
【表1】
Figure 0003750100
【0024】
実施例(チューインガム)4〜6
比較例1および実施例1〜3のガムベースを50℃まで冷却し、表2の「チューインガム配合例」に掲げる原料と配合割合(重量%)に従い混合機に投入し、さらに砂糖、ブドウ糖、水飴、軟化剤、色素、香料を投入混合し、それを射出成型機によりシート状に押し出し、圧延、裁断工程を経て1枚当たり3.2gのチューインガムの比較例2と実施例4〜6を作成した。
【0025】
【表2】
Figure 0003750100
【0026】
実施例(ガムベース)7,8
表3の「ガムベース配合例」に掲げるガムベース原料と配合割合(重量%)により、常法に基づき、すなわち、ニーダー使用により120℃で溶解混合し、ガムベースの実施例7,8と、比較例3および比較例4(比較例1と同じ)を製造した。
なお、分子量30万のポリイソブチレンおよび天然ゴム(SMR)は予め高剪断性の混合機でワックス、エステルガムとプレブレンドして使用した。
【0027】
【表3】
Figure 0003750100
【0028】
実施例(チューインガム)9,10
比較例3および実施例7,8のガムベースを50℃まで冷却し、表4の「チューインガム配合例」に掲げる原料と配合割合(重量%)に従い混合機に投入し、さらに砂糖、ブドウ糖、水飴、軟化剤、色素、香料を投入混合し、それを射出成型機によりシート状に押し出し、圧延、裁断工程を経て1枚当たり3.2gとしたチューインガムの比較例5および実施例9,10を作成した。
【0029】
【表4】
Figure 0003750100
【0030】
試験例1
調製例2の微粒子天然ゴム5gを、130℃で、0,1,4時間処理した加熱処理微粒子天然ゴムについて、その物性をフローテスタ(島津製:CFT−500)で見掛けの粘性を測定した。結果を図1に示した。加熱時間が長くなるに従い加熱処理微粒子天然ゴムの見掛けの粘性は低下していくことがわかる。
【0031】
Figure 0003750100
【0032】
試験例2
比較例2および実施例4〜6のチューインガムについて30名の専門パネルにより香味ならびにテクスチャーについて官能評価を行った。
香味についてはゴム臭の強さを「強く感じる」「やや強く感じる」「感じる」「弱く感じる」「感じない」の5段階で評価した。その結果を表5に記した。
テクスチャーについてはなめらかさを「良好」「やや良好」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で評価し、粘着性の程度を「強く感じる」「やや強く感じる」「感じる」「弱く感じる」「感じない」の5段階で評価した。その結果を表6に記した。
【0033】
【表5】
Figure 0003750100
【0034】
【表6】
Figure 0003750100
【0035】
天然ゴムを含有する比較例1のガムベースを使用した比較例2のチューインガムはゴム臭が強く、なめらかな食感に欠け凝集感が強いが、微粒子天然ゴムを含有する実施例1〜3のガムベースを使用した実施例4〜6のチューインガムはゴム臭が低減され、よりなめらかな食感になることがわかる。
さらに、実施例4と5を比較すると、精製度の高い調製例2の微粒子天然ゴムを用いた実施例5はさらにゴム臭の低減がなされていた。
また、調製例3の加熱処理微粒子天然ゴムを使用した実施例6は、食感の上でなめらかさの向上が著しく改善されていることがわかる。
【0036】
試験例3
比較例5および実施例9のチューインガムについて30名の専門パネルにより硬さについて官能評価を行った。両チューインガムを比較し同程度または硬いと感じた方を選び評価した。その結果を表7に記した。
【0037】
【表7】
Figure 0003750100
【0038】
比較例5のチューインガムは、比較例3のガムベースを使用したもので、ポリイソブチレン(6万)を10重量%配合し、加熱処理微粒子天然ゴムを無配合としているのに対し、実施例9のチューインガムは、実施例7のガムベースを使用したもので、ポリイソブチレン(6万)を5重量%、加熱処理微粒子天然ゴムを同じく5重量%配合している(表3,4参照)ところ、これら両チューインガムの硬さを同程度に感じたものが圧倒的に多いことから、微粒子天然ゴム特に加熱処理微粒子天然ゴムは、ポリイソブチレンの代替品として十分通用すると判断できる。
【0039】
試験例4
比較例1のガムベースを使った比較例2のチューインガムおよび実施例8のガムベースを使った実施例10のチューインガムについて、香味(ゴム臭)、テクスチャー(なめらかさ)および硬さ感を総合した官能評価を、30名の専門パネルの各々の理想とするチューインガムを10点とし減点法で行った。その結果を表8に記した。
【0040】
【表8】
Figure 0003750100
【0041】
これより、ポリイソブチレンと天然ゴムに代えて加熱処理微粒子天然ゴムを配合した実施例8のガムベースを用いた実施例10のチューインガムが、十分な咀嚼性をもっていることがわかる。
さらに、実施例10のチューインガムは、比較例2のチューインガムに比べて香味の点で優れており、ペパーミント香料の香味がよりクリアーになった。
これは加熱処理微粒子天然ゴムが通常の天然ゴムと比較してゴム臭、苦味が低減されたことに起因していると認められる。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明ガムベースおよびチューインガムは、ヘビアブラジリエンシス( Hevea Brasiliensis )から採取する天然ゴムラテックスから天然ゴムを濃縮精製する際に生じる漿液(セラム)に含まれる平均粒径0.1〜0.5μmのゴム粒子を固形化して得られる微粒子天然ゴムを使用したことを特徴とするもので、チューインガムの重要な食感の一つである弾力性を失わず、良好にして新規な食感を与え、かつ、微粒子天然ゴムは、凝集感が低減されるため、通常の天然ゴムに比べより多く配合することが可能になる。
【0043】
さらに、微粒子天然ゴムを使用することにより、通常の天然ゴムを使用する場合と異なり、独特の臭いや味が気になることがないのでチューインガムの香味を損なうことがない。
【0044】
また、微粒子天然ゴムを用いることによって、ポリイソブチレンを使用する場合と相違し、チューインガムの噛みカスをより分解性の高いものにすることが可能であるとともに、微粒子天然ゴムは、天然ゴムラテックスを精製する際に生じる副産物である漿液より得ることができるので、高価なポリイソブチレンに比べて、製品のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱処理微粒子天然ゴムの物性の測定結果を示す図である。

Claims (5)

  1. ヘビアブラジリエンシス( Hevea Brasiliensis )から採取する天然ゴムラテックスから天然ゴムを濃縮精製する際に生じる漿液(セラム)に含まれる平均粒径0.1〜0.5μmのゴム粒子を固形化して得られる微粒子天然ゴムを使用してなることを特徴とするガムベース。
  2. 微粒子天然ゴムが加熱処理微粒子天然ゴムであることを特徴とする請求項1記載のガムベース。
  3. 微粒子天然ゴムが、天然ゴムラテックスを遠心分離して得た漿液に無機塩を添加してゴム分を濃縮精製してなるものであることを特徴とする請求項1または2記載のガムベース。
  4. 微粒子天然ゴムが、天然ゴムラテックスを遠心分離して得た漿液に無機塩と蛋白分解酵素とを添加してゴム分を濃縮精製してなるものであることを特徴とする請求項1または2記載のガムベース。
  5. 請求項1,2,3または4に記載のガムベースを使用していることを特徴とするチューインガム。
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