JP3749500B2 - キャスター用車輪 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、台車、椅子等の家具の脚部に取り付けられるキャスターに使用されるキャスター用車輪に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のキャスター用車輪については、硬質ゴム弾性体あるいは硬質樹脂材料により形成されている。ゴム弾性体製の車輪の場合は、クッションが良好であり、路面からの振動、騒音の伝播を吸収することができ、また路面に設けられた段差や障害に当接したときに受ける衝撃が少なく、これを容易に乗り越えることが可能である。しかし、ゴム弾性体製の車輪は、ゴム弾性体が路面との摩擦により摩耗し易く、耐久性が不十分である。これに対して、硬質樹脂製の車輪の場合、路面との摩擦による摩耗の問題は少ないが、路面からの振動、騒音が伝播し易く、特に段差や障害に当接したときに受ける衝撃が大きく、車輪がこれら段差等をスムーズに乗り越えることができないという問題がある。
【0003】
これに対して、車輪が硬質樹脂材料製であっても、段差や障害等を乗り越えるときの衝撃が少なくなるような提案が、例えば実公平6−30483号公報、特公平7−77842号公報、特開平11−59110号公報等において開示されている。しかし、これら公報に記載された内容については、車軸を押しバネ等により支持させるもの、ブラケットに中途部で枢着された車輪支持アームをコイルスプリングで支持して搖動させるもの、車輪をクッションで支えるもの等、いずれも車輪を機構的に弾性支持するものである。そのため、キャスターの構造が複雑になり、キャスターが高価になるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題を解決しようとするもので、路面との摩擦による摩耗が少なく、かつ車輪自体の構造により、段差や障害に当接したときの衝撃を小さくすることが可能なキャスター用車輪を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明の構成上の特徴は、軸孔によってキャスターの車軸に挿嵌されて車軸に回転自在に支持されると共に外周面に外係止部を有する樹脂製で円環状の車輪本体と、車輪本体の径方向外方に車輪本体の外周面から離間して同軸状に配置され、その内周面に内係止部を有する樹脂製で円環状の接地部材と、弾性体製の円環体であってその内周面に外係止部に係合固定される第1係合部を設けると共にその外周面に内係止部に係合固定される第2係合部を設け、車輪本体外周面と接地部材内周面との間に非接着で挿嵌固定される緩衝部材とを設け、外係止部、内係止部、第1及び第2係合部が、それぞれ車輪本体、接地部材及び緩衝部材の軸方向中間位置を跨って両側に配設されており、外係止部及び第1係合部のいずれか一方が径方向に突出すると共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で且つ互いに周方向中間位置にて突出するように配置された第1突出部になっており、いずれか他方が径方向に凹むと共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で凹んで配置されて第1突出部に係合固定される第1凹部になっており、また、内係止部及び第2係合部のいずれか一方が径方向に突出すると共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で且つ互いに周方向中間位置にて突出するように配置された第2突出部になっており、いずれか他方が径方向に凹むと共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で凹んで配置されて第2突出部に係合固定される第2凹部になっていることにある。
【0006】
上記のように構成した請求項1の発明においては、キャスター用車輪は、樹脂製で円環状の車輪本体と樹脂製で円環状の接地部材との間に、弾性体製の緩衝部材が挿嵌され、緩衝部材の第1及び第2係合部が、車輪本体の外係止部及び接地部材の内係止部にそれぞれ係合することにより固定されている。このように、接地部材が樹脂製であるため、路面との摩擦による摩耗が少なく、車輪の耐久性が確保される。また、路面からの振動や騒音の伝播が弾性体製の緩衝部材により吸収され、特に、車輪が段差や障害に当接したときに、緩衝部材が衝撃を受けて伸縮することにより、衝撃を吸収することができる。そのため、請求項1の発明によれば、車輪が段差や障害に当接したときに受ける衝撃を緩和しつつ、段差等をスムーズに乗り越えることができる。さらに、弾性体製の緩衝部材は、車輪本体及び接地部材に対して非接着であるため、車輪本体と接地部材に挟まれて弾性体の耐久性上好ましい圧縮変形するが、車輪本体及び接地部材間で耐久性上好ましくない引張り応力を受けることがない。また、車輪は、その構造によって、振動、衝撃等を吸収することができるため、キャスター自体の構造を簡易にすることができる。
【0007】
また、本発明においては、外係止部と第1係合部との係合、及び内係止部と第2係合部との係合が、それぞれ凹部と凸部により緊密かつ確実に行われ、車輪本体と緩衝部材、緩衝部材と接地部材との連結が信頼性良く達成される。さらに、本発明においては、外係止部と第1係合部、及び内係止部と第2係合部の係合固定が軸方向中間位置を跨って両側で行われることにより、車輪本体と緩衝部材と接地部材との連結が軸方向中間位置を跨って両側で安定して行われる。そのため、車輪が、軸方向のいずれからの押圧力を受けても、車輪本体と緩衝部材と接地部材との連結状態が安定して維持される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。図1及び図2は、キャスター用の車輪10を正面図及びII−II線方向の断面図により示したものである。また、図3は、車輪10が装着されたキャスターを正面図により示したものである。車輪10は、樹脂製で円環状の車輪本体11と、車輪本体の径方向外方に車輪本体11の外周面から離間して同軸状に配置された樹脂製で円環状の接地部材21と、ゴム弾性体製の円環体であって車輪本体11と接地部材21との間に挿嵌することにより固定される緩衝部材31とを設けている。
【0009】
車輪本体11は、図2及び図4に示すように、軸孔12aを有する管状のボス部12と、ボス部12の外周面から離間して同軸状に配置されたボス部12より軸方向長さの短い環状のリム部14と、ボス部12及びリム部14間を軸方向中間位置で全周にわたって連結する薄肉で円環状のスポーク部13とを一体で設けている。ボス部12とスポーク部13との連結部分は、軸方向両側面が凹曲面状に連続しており、スポーク部13とリム部14との連結部分も、軸方向両側面が凹曲面状に連続している。車輪本体11は、樹脂射出成形により一体で形成されている。
【0010】
そして、リム部14の外周面には、図4に示すように、円環状の溝である外係止凹部15が、軸方向の中間にて周方向に沿って設けられている。外係止凹部15は、軸方向の幅がリム部14の軸方向幅の略1/3程度になっている。外係止凹部15は、その軸方向両端の軸方向略1/3長さ部分にて、周方向に沿って所定間隔で底面から突出した四角柱状の突出部16を設けている。軸方向一方側の突出部16は、軸方向他方側の突出部16に対して互いに周方向の中間位置に配置されている。軸方向両側の各突出部16の周方向間の凹みが第1凹部となっている。また、リム部14の外周面の軸方向両端には、軸方向にわずかな幅でかつ径方向にわずかに突出したリング状の係止リング部17が、周方向全周にわたって延設されている。
【0011】
接地部材21は、幅が車輪本体11のリム部14の軸方向幅と略同一であり、外周面が軸方向中間で径方向にわずかに突出した山状の接地面22になっており、その内周面には、図5に示すように、軸方向の中間部分にて周方向に沿った円環状の溝である内係止凹部23を設けている。内係止凹部23は、軸方向の幅が車輪本体11のリム部14に設けられた外係止凹部15と軸方向幅と同一である。内係止凹部23は、その軸方向両端の軸方向略1/3長さ部分にて、周方向に沿って所定間隔で底面から突出した突出部24を設けている。軸方向一方側の突出部24は、軸方向他方側の突出部24に対して互いに周方向の中間位置に配置されている。軸方向両側の各突出部24の周方向間の凹みが第2凹部となっている。また、接地部材21内周面の軸方向両端には、軸方向にわずかの幅でかつ径方向にわずかに突出したリング状の係止リング部25が、周方向全周にわたって延設されている。
【0012】
緩衝部材31は、軸方向幅が、車輪本体11の一対の係止リング部17間の寸法に略等しくなっており、図6及び図7に示すように、その内周面31a及び外周面31bの軸方向の中間部分に、周方向全周にわたって突出した第1係合凸部32及び第2係合凸部35を設けている。第1係合凸部32は、車輪本体11のリム部14外周面に設けた外係止凹部15と同一幅で、かつその突出高さが外係止凹部15の深さと略同一になっている。第1係合凸部32は、その軸方向両端にて、周方向に沿って所定間隔で軸方向略2/3の幅でかつ周方向の所定長さで内周面31aから突出した複数の第1突出部33を設けている。第1突出部33の周方向長さは、上記車輪本体11のリム部14外周面に設けた外係止凹部15の突出部16間の周方向間隔と略同一になっている。軸方向一方側の第1突出部33は、軸方向他方側の第1突出部33に対して互いに周方向の中間位置に配置され、各々の周方向両端部分が軸方向の中間位置で重なり合っている。第1係合凸部32の第1突出部33は、上記外係止凹部15の突出部16の間に挿嵌されて、外係止凹部15に係止されるようになっている。
【0013】
第2係合凸部35は、その軸方向両端にて、周方向に沿って所定間隔で軸方向略2/3の幅でかつ周方向の所定長さで外周面から突出した複数の第2突出部36を設けている。第2突出部36の周方向長さは、上記接地部材21の内周面に設けた内係止凹部23の突出部24間の周方向間隔と略同一になっている。軸方向一方側の第2突出部36は、軸方向他方側の第2突出部36に対して互いに周方向の中間位置に配置され、各々の周方向両端部分が第2係合凸部35の軸方向の中間位置で重なり合っている。第2係合凸部35の第2突出部36は、上記内係止凹部23の突出部36間に挿嵌されて、内係止凹部23に係止されるようになっている。
【0014】
緩衝部材31は、車輪本体11のリム部14の外周面に挿嵌され、第1係合凸部32の第1突出部33が外係止凹部15の突出部16間に挿嵌されて係止されることにより車輪本体11に固定され、緩衝部材31の外周面に、接地部材21が挿嵌され、第2係合凸部35の第2突出部36が内係止凹部23の突出部24間に挿嵌されて係止されることにより緩衝部材31に固定され、車輪10が形成される。
【0015】
この車輪10は、図3に示すように、台車等に固定する取付ねじ2を有するキャスター1の車軸3を、車輪本体11の軸孔12aに挿通させることにより、車輪10はキャスター1に回転自在に支持される。車軸3は、図8に示すように、長尺状のボルト4と、ナット5と、ボルト4が挿通される円筒形のベアリング6とにより構成されている。ベアリング6は、円筒形の金属スリーブ7と、金属スリーブ7の外周に挿嵌された円筒形で樹脂製の回転部材8とを設けている。回転部材8は、周方向に等間隔な複数箇所に、軸方向両端を除いて軸方向に延びると共に径方向に貫通した複数のスリット8aを有しており、スリット8aには金属丸棒9が嵌め込まれている。スリット8aに嵌め込まれた金属丸棒9は、回転部材8の内外周面からわずかに突出している。これにより、金属スリーブ7と回転部材8は、金属丸棒9を介して相互に回転自在にされている。また、ベアリング6の回転部材8の外周面に挿嵌された車輪10は、金属丸棒9に接触することにより、ベアリング6に回転自在に支持される。車輪10の挿嵌された車軸3は、キャスター1の両側板に設けた取付孔(図示しない)にボルト4を挿通させて、その突出端にナット5を螺着して締付けることにより、キャスター1に固定される。
【0016】
上記のように構成した実施形態においては、キャスター用車輪10は、車輪本体11と接地部材21との間に、ゴム弾性体製の緩衝部材31が挿嵌され、緩衝部材31の第1及び第2係合凸部32,35が、車輪本体11の外係止凹部15及び接地部材21の内係止凹部23にそれぞれ係合固定されている。これにより、車輪本体11と緩衝部材31、緩衝部材31と接地部材21との連結が、第1及び第2係合凸部32,35と外及び内係止凹部15,23との係合により信頼性良く達成される。また、車輪本体11と緩衝部材31と接地部材21との相互の連結が、軸方向中間位置で安定して行われるため、車輪10が、軸方向のいずれからの押圧力を受けても、車輪本体11と緩衝部材31と接地部材21との連結状態が安定して維持される。さらに、車輪10の接地部材21が樹脂製であるため、路面との摩擦による摩耗が少なく、その結果、車輪10の耐久性が確保される。また、路面からの振動や騒音が緩衝部材31により吸収されるため、キャスターが取りつけられる台車等への振動等の伝播が抑えられる。
【0017】
さらに、車輪10が段差や障害に当接したときに、ゴム弾性体製の緩衝部材31が衝撃を受けて伸縮することにより、衝撃を吸収することができる。そのため、本実施形態によれば、車輪10は、段差や障害に当接したときに受ける衝撃を緩和しつつ、段差等をスムーズに乗り越えることができる。また、ゴム弾性体製の緩衝部材31は、車輪本体11及び接地部材21に対して非接着であるため、車輪本体11と接地部材21に挟まれてゴム弾性体の耐久性上好ましい圧縮変形するが、車輪本体11及び接地部材21間で耐久性上好ましくない引張り応力を受けることがない。そのため、緩衝部材31の耐久性が確保される。
【0018】
なお、上記各実施形態においては、車輪本体11、接地部材21に係止凹部15,23を設け、緩衝部材31に係合凸部32,35になっているが、凹部と凸部を逆にしてもよく、また凹部と凸部の組合せを変更してもよい。また、上記各実施形態においては、緩衝部材については、ゴム弾性体が用いられているが、これに代えて弾性体エラストマを用いることも可能である。さらに、上記各実施形態においては、車軸3にベアリングを用いているが、ベアリングを用いない単なる軸であってもよく、単なる軸の場合には、車輪本体の材質を摩擦の小さい樹脂とすることが望ましい。その他、上記各実施形態に示したキャスター用車輪については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更実施することが可能である。
【0019】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、キャスター用車輪は、車輪本体と接地部材との間に、弾性体製の緩衝部材が挿嵌固定されているため、路面からの振動や騒音の伝播や、車輪が段差や障害に当接したときの衝撃を、緩衝部材によって吸収することができる。そのため、請求項1の発明によれば、キャスターから台車等への振動等の伝播を抑えることができると共に、車輪が段差等をスムーズに乗り越えることができる。さらに、緩衝部材は、車輪本体及び接地部材に対して非接着であるため、主として弾性体の耐久性上好ましい圧縮変形するため、その耐久性が確保される。また、接地部材が樹脂製であるため、路面との摩擦による摩耗が少なく、車輪の耐久性が確保される。また、振動等の吸収が、車輪本体のみで行われるため、キャスタ−自体の構造が簡易にされ、その結果、キャスターが安価に提供される。
【0020】
また、外係止部と第1係合部との係合、及び内係止部と第2係合部との係合が、それぞれ凹部と凸部により緊密かつ確実に行われるため、車輪本体と緩衝部材、緩衝部材と接地部材との連結が信頼性良く達成される。また、車輪本体と緩衝部材と接地部材との連結が軸方向中間位置で安定して行われるため、車輪が、軸方向のいずれからの押圧力を受けても、車輪本体と緩衝部材と接地部材との連結状態が安定して維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である車輪を概略的に示す正面図である。
【図2】車輪を示す図1のII−II線方向の断面図である。
【図3】車輪が装着されたキャスターを概略的に示す正面図である。
【図4】車輪本体を概略的に示す側面図である。
【図5】接地部材を示す軸心位置での断面図である。
【図6】緩衝部材を概略的に示す側面図である。
【図7】緩衝部材を概略的に示す軸心位置での断面図である。
【図8】車軸を示す正面図及び左側面図(ナットを省く)である。
【符号の説明】
3…車軸、6…ベアリング、10…車輪、11…車輪本体、12…ボス部、12a…軸孔、14…リム部、15…外係止凹部、16…突出部、17…係止リング部、21…接地部材、23…内係止凹部、24…突出部、25…係止リング部、31…緩衝部材、32…第1係合凸部、33…第1突出部、34…リム部、35…第2係合凸部、36…第2突出部。
Claims (1)
- 軸孔によってキャスターの車軸に挿嵌されて該車軸に回転自在に支持されると共に外周面に外係止部を有する樹脂製で円環状の車輪本体と、該車輪本体の径方向外方に該車輪本体の外周面から離間して同軸状に配置され、その内周面に内係止部を有する樹脂製で円環状の接地部材と、弾性体製の円環体であってその内周面に前記外係止部に係合固定される第1係合部を設けると共にその外周面に前記内係止部に係合固定される第2係合部を設け、前記車輪本体外周面と前記接地部材内周面との間に非接着で挿嵌固定される緩衝部材とを設け、
前記外係止部、内係止部、第1及び第2係合部が、それぞれ前記車輪本体、接地部材及び緩衝部材の軸方向中間位置を跨って両側に配設されており、
前記外係止部及び第1係合部のいずれか一方が径方向に突出すると共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で且つ互いに周方向中間位置にて突出するように配置された第1突出部になっており、いずれか他方が径方向に凹むと共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で凹んで配置されて前記第1突出部に係合固定される第1凹部になっており、
また、前記内係止部及び第2係合部のいずれか一方が径方向に突出すると共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で且つ互いに周方向中間位置にて突出するように配置された第2突出部になっており、いずれか他方が径方向に凹むと共に軸方向両側が周方向に沿って所定間隔で凹んで配置されて前記第2突出部に係合固定される第2凹部になっていることを特徴とするキャスター用車輪。
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