JP3749434B2 - 耐磨耗性金属肉盛り方法及び両面耐磨耗性クラッド鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、母材鋼板の表面に耐磨耗性硬化金属層を形成するための溶接肉盛り方法及びこの方法を用いて製造される両面耐磨耗性クラッド鋼板に関する。
【従来の技術】
【0002】
従来より、気体輸送で粉状の輸送媒体を搬送する場合、両面磨耗を受けることが多く、搬送気流の当たり面が磨耗を受けるエロージョン磨耗が多い。そして、この種の用途では、薄板が要求される場合が大半で、曲面をもつライナーが望まれる場合も少なくない。このような用途としては、竪型ローラミルの分級機コーン、エアセパレータ、セメント工場のサイクロン内筒ライナー、ドライヤのクロスリフタ等がある。
【0003】
両面に耐磨耗性金属層をもち、しかも薄厚の両面クラッド鋼板は、これまでは、母材鋼板の片側の表面に耐磨耗性金属を溶接肉盛りした2枚の片面クラッド鋼板を背中合わせに重ね、それぞれの母材同士を溶接接合することで製造されていた。これは次のような理由による。
【0004】
両面に耐磨耗性金属層をもつ両面クラッド鋼板は、易溶接鋼からなる母材鋼板の両面を耐磨耗性金属を溶接肉盛りすることにより、製作が可能である。しかし、肉盛り金属には、耐磨耗性に優れた高クロム鋳鉄系の耐磨耗硬化金属が使用される。このため、両面側の硬化金属に多数の割れが発生し、割れ同士が母材を貫通して伝搬し合い、クラッド鋼板自体を破断させる危険性があった。
【0005】
母材鋼板を厚肉にして、硬化金属に発生した割れを伝搬させないように配慮すれば、クラッド鋼板自体の破断は回避されるが、肉厚が非常に大きくなり、上記用途への適用が困難になる。
【0006】
湾曲した両面クラッド鋼板が望まれる場合は、両面が硬化金属で肉盛りさているため、外曲げ加工を受ける硬化金属面は、曲げ引っ張り応力を受け、割れの発生が顕著になり、伸びがないため、割れの開口幅が大きくなる。このため、曲げ加工が非常に困難であり、甚だしい場合には、両側の硬化金属の割れが曲げ応力により母材に伝搬して、クラッド鋼板自体を破断させる。
【0007】
母材鋼板の片側の表面に耐磨耗性金属を溶接肉盛りした片面クラッド鋼板を内曲げした後、外曲げ側の母材表面に硬化金属を溶接肉盛りすることも考えられるが、母材が薄いために溶接歪みが顕著となり、所定の曲げ半径が維持できないなどの問題がある。
【0008】
このような事情から、薄厚の両面クラッド鋼板は、これまでは、片面クラッド鋼板を背中合わせに接合することで製造されており、湾曲板が要求される場合は、内曲げした片面クラッド鋼板と外曲げした片面クラッド鋼板の母材同士を接合するが、前述した硬化金属の割れによって外曲げでの曲げRが著しく制限されるため、大Rのものしか製造することができなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、片面クラッド鋼板を背中合わせに接合して構成された薄厚の両面クラッド鋼板は、母材鋼板が2枚重ねとなるため、肉厚の増大が避けられず、重量も嵩む問題があった。また、曲げ加工が要求される場合は、その曲げRが著しく制限される問題があった。
【0010】
本発明の目的は、薄肉の母材鋼板に対して、また、湾曲した薄肉母材の外曲げ側に、溶接歪みを抑えつつ耐磨耗性硬化金属層を形成できる耐磨耗性金属肉盛り方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、両面側に耐磨耗性硬化金属層を有する構成であるにもかかわらず、薄肉化が可能であり、しかも、小Rの湾曲板の製造が可能な両面クラッド鋼板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の耐磨耗性金属肉盛り方法は、母材鋼板の表面に、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板を溶接接合し、その打ち抜き鋼板の各貫通孔に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして、前記表面に耐磨耗性硬化金属層を形成するものである。
【0013】
また、本発明の両面クラッド鋼板は、母材鋼板の両面に耐磨耗性硬化金属層を形成し、両面側の耐磨耗性硬化金属層のうちの少なくとも一方を、前記母材鋼板の表面に溶接接合された、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板の各貫通孔に、耐磨耗性金属を溶接肉盛りした構成としたものである。
【0014】
打ち抜き鋼板は、鋼板に多数の貫通孔(通常は丸孔)を規則的に設けたものであり、打ち抜き金網、パンチングメタル等とも呼ばれている。貫通孔の並び方によって並列型、角千鳥型、60°千鳥型に分類される。孔径は1〜20mm、ピッチは2〜30mm、板厚は0.6〜9mmの各範囲内であり、これらの組み合わせにより非常に多くの種類が市販されている。
【0015】
母材鋼板の表面にこの打ち抜き鋼板を溶接接合し、打ち抜き鋼板の各貫通孔に耐磨耗性金属を溶接肉盛りすることにより、母材鋼板の表面に耐磨耗性硬化金属層が形成される。
【0016】
即ち、打ち抜き鋼板の各貫通孔に溶接肉盛りされた硬化金属は、母材鋼板の表面だけでなく、貫通孔周囲の打ち抜き鋼板に溶け込む。隣接する硬化金属部が連続するように、耐磨耗性金属を貫通孔周囲の打ち抜き鋼板に溶け込ませるならば、母材鋼板の表面に殆ど切れ目のない耐磨耗性硬化金属層が形成される。こうして形成される硬化金属層は以下のような特徴を有する。
【0017】
(1)打ち抜き鋼板は、耐磨耗性クラッド鋼板の強度補完材として機能する。
【0018】
元来、代表的な薄肉の耐磨耗性クラッド鋼板は、母材鋼板の厚みが6mmで硬化金属層の厚みが3mm程度であるが、溶接肉盛りで製作されるため、溶け込みが発生し、母材鋼板の残厚は3〜4mmになる可能性がある。このため、硬化金属に割れが発生していると、溶け込み部分まで割れは進展しており、空気搬送装置の使用環境で磨耗面に風圧による強い曲げ応力が作用した場合、割れを起点にして母材鋼板が破断する危険性が考えられる。
【0019】
従来、例えば分級機のエアセパレータ羽根に寿命延長のために耐磨耗性クラッド鋼板が使用されてきたが、羽根回転による風圧を受け、羽根中央部が破断する事故がしばしば発生した。このため、曲げ応力に耐えられるように、羽根の裏面にフラットバーを補強材として溶接して使用した。このような使用経験から判断して、大面積をもつ用途には、破断事故を未然に防止するために、耐磨耗性クラッド鋼板の裏面に補強材の溶接付けが効果的である。
【0020】
この観点から、打ち抜き鋼板は、母材鋼板の表面上で網の目状に広がって強度補完材として機能し、母材鋼板の破断を効果的に防ぐ。加えて、その貫通孔内に形成された硬化金属部に対して、打ち抜き鋼板は軟質のリブ材として機能し、凝固収縮割れを効果的に防ぐ。このため、母材鋼板の裏面側に耐磨耗性金属の溶接肉盛り層が形成されている場合にも、母材鋼板を貫通する割れが発生しにくく、1枚の母材鋼板の両面に硬化金属層を形成した両面クラッド鋼板の製作が可能になる。
【0021】
(2)非常に薄い両面クラッド鋼板の製作が可能である。
【0022】
母材鋼板の表面に打ち抜き鋼板を接合し、その貫通孔に耐磨耗性金属を肉盛りするが、硬化金属の厚みが打ち抜き鋼板の厚みに吸収されるため、非常に薄い両面クラッド鋼板の製作が可能になる。
【0023】
例えば、母材鋼板の厚みが6mm、硬化金属層の厚みが3mmの場合、これを2枚貼り合わせて両面クラッド鋼板にすると、総厚は18mmになるが、片面クラッド鋼板の裏面に3.2mmの打ち抜き鋼板を接合し、その貫通孔に肉盛りを行って両面クラッド鋼板を製作すると、その厚みは約12.2mmになり、約33%の減厚及び重量減が達成できる。
【0024】
特に、空気輸送機器での粉塵磨耗を受けるサイクロン、ダンパー、分散板等、両面にエロージョン磨耗を受ける用途では、できる限り重量軽減が要求されるので、33%の重量減は非常に有効であり、従来、重量の面から制約を受けていた装置への適用も可能となる。
【0025】
(3)湾曲板の製作が容易である。
【0026】
片面クラッド鋼板の場合、硬化金属層を内側にした内曲げは可能である。外曲げ側の母材鋼板表面に、同一Rで曲げ加工した打ち抜き鋼板を接合し、その貫通孔に肉盛りを行う。この肉盛りは後述するように溶接変形を抑制できる。また、硬化金属の割れを抑制できる。従って、母材鋼板の肉厚が小さい場合も、その変形及び貫通割れが抑止され、小Rの湾曲板の製作が可能になる。
【0027】
(4)打ち抜き鋼板の使用により、分散、低入熱肉盛りが可能になり、溶接変形を抑制できる。
【0028】
打ち抜き鋼板の肉厚を3.2mmとし、その貫通孔の孔径を8〜16mmとすると、貫通孔への肉盛り溶接は、手溶接棒や溶接ワイヤを使用して行うことができる。手溶接棒の場合は、4mm径のものを使用して、約180Aの溶接電流で1層で肉盛りすることができる。溶接ワイヤの場合は、1.6mmのワイヤ径で、160〜180Aの溶接電流により、1層の肉盛りが可能である。これらの電流値は非常に低い。肉盛り自体が栓溶接の如きスポット的な溶接になるので、アークを発生してから溶接が完了するまでの時間が非常に短く、溶接入熱も制限され、限定的な溶接となる。1ヵ所に極小の溶接入熱で肉盛りが行われ、それが大きな表面積に多数分散しており、局部的な熱集積がないので、従来の全面的な溶接肉盛りに比べ、入熱が分散されて溶接変形を生じにくい。1点ごとに肉盛りを進行させるので、変形具合を観察しながら肉盛りを行い、もし変形を発生するようならば、その箇所の肉盛りを中断して離れた箇所の肉盛りを進めればよい。
【0029】
このような理由により、母材鋼板が薄い場合もその変形が効果的に抑制される。
【0030】
(5)打ち抜き鋼板の貫通孔に肉盛りされた硬化金属の割れが少ない。
【0031】
貫通孔を単独に栓溶接と同じ方法で肉盛りし、肉盛りが連続しないため、割れが少ない。ビードが連続する直線肉盛りの場合、凝固仮定で溶接ビードが収縮し、ビード横割れが発生する。貫通孔を単独に溶接し、更に離れた箇所を分散して溶接すれば、ビード同士の引っ張りが少ない。円形ビードと言う形状からも応力集中が少なく、形状的にも割れにくい。
【0032】
本発明では、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板を溶接接合し、その打ち抜き鋼板の各貫通孔に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして形成される耐磨耗性硬化金属層は、母材鋼板の片面に設けることができ、両面に設けることもできる。片面に設ける場合、もう一方の面には通常の全面的な溶接肉盛りを行っておけばよい。
【0033】
母材鋼板の肉厚は4.5〜9.0mmが好ましい。なぜなら、軽量薄肉化の点から厚い母材鋼板は使用しない。4.5mm未満の場合は貫通孔を肉盛りした場合に母材鋼板への溶け込みが増し、鋼板強度が低下する。9.0mm以上では重くなり過ぎる。
【0034】
打ち抜き鋼板の厚みは2.3〜6.0mmが好ましい。この鋼板も薄ければ軽量化になるが、2.3mm未満では貫通孔に肉盛りされる硬化金属の厚みが薄くなな、6.0mm超では厚くなり過ぎる。
【0035】
貫通孔の孔径は10〜20mmが好ましい。なぜなら、10mm未満の孔径の場合、貫通孔が小さくなり過ぎて孔を埋めるのが困難になり、20mm超では、個々の肉盛り金属が大きくなるため、変形が生じやすくなる。
【0036】
貫通孔のピッチは12.5〜30mmが好ましい。なぜなら、ピッチが大きくなると貫通孔の周囲のリブ部が広がり、補強材としての機能は増すが、耐磨耗性は低下する。逆にピッチが小さくなると、硬化金属の量が増し、耐磨耗性が向上するが、変形抵抗が低下する。
【0037】
開口率で言えば40〜58%が好ましい。なぜなら、開口率が小さいと、貫通孔の周囲のリブ部が広がり、補強材としての機能は増すが、耐磨耗性は低下する。逆に開口率が大きくなると、硬化金属の量が増し、耐磨耗性が向上するが、変形抵抗が低下する。
【0038】
通常の全面的な溶接肉盛りによって形成される硬化金属層の厚みは3〜6mmが好ましい。なぜなら、3mm未満では耐磨耗性が低下し、6mm超では厚肉化・重量増加が問題になる。主な使用目的がエロージョン磨耗に対する耐性であり、過共析炭化物系合金やタングステンカーバイト系合金の肉盛りワイヤが使用される。これらの合金は高価であるが、3〜6mmの肉厚で十分な耐磨耗性を与える。
【0039】
母材鋼板の材質は易溶接鋼であれば種類を問わないが、通常はSS400軟鋼、ステンレス鋼板が使用される。
【0040】
打ち抜き鋼板の材質も同じ理由からSS400軟鋼、ステンレス鋼板が好ましい。
【0041】
肉盛り用の耐磨耗性金属は、エロージョン磨耗に強い材質が好ましく、具体的には過共析炭化物系合金や高炭素・高クロム鋳鉄系合金、タングステンカーバイト系合金が好ましい。特に軟鋼希釈の影響を受けにくい過共析炭化物系合金が適切である。
【0042】
なお、本発明の肉盛り方法は、薄厚の両面クラッド鋼板の製造だけでなく、被肉盛り部材が複雑な形状の箇所や溶接姿勢が困難な箇所、変形、抜け落ち等で肉盛りが困難な箇所等に対する硬化層の形成にも適用することかできる。このような箇所の被肉盛り部材に適当な肉厚をもつ打ち抜き鋼板を張り付け、その貫通孔に耐磨耗性金属の肉盛りを行うことにより、その被肉盛り部材の表面に耐磨耗性の硬化金属層を簡単かつ安定に形成することかできる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の両面クラッド鋼板の1例につきその構成及び製作手順を示す斜視図である。
【0044】
まず、図1(a)に示すように、片面クラッド鋼板の母材側の表面に打ち抜き鋼板31を溶接する。片面クラッド鋼板は、母材鋼板10の一方の表面に、通常の全面的な溶接肉盛りにより耐磨耗性の硬化金属層20が形成されている。打ち抜き鋼板31は、円形の貫通孔32を千鳥状に配列した形状になっている。
【0045】
母材鋼板10の表面に打ち抜き鋼板31が接合されると、図1(b)に示すように、打ち抜き鋼板31の各貫通孔32に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして、母材鋼板10の表面に多数の肉盛り部34を形成する。多数の肉盛り部34は、打ち抜き鋼板31のリブ部33を溶融させることにより合体して、母材鋼板10の表面に耐磨耗性の硬化金属層30を形成する。
【0046】
肉盛り施工は、できるだけ磨耗面に未肉盛り部が残存するのを避けるように行うが、打ち抜き鋼板31のリブ部33の一部は磨耗面に残存する可能性がある。リブ部33が残存した部分は耐磨耗性に劣るが、打ち抜き鋼板31の貫通孔32が千鳥状に配列さている場合は、この磨耗部が直線にならず、エロージョン磨耗の影響が低減する。また、未肉盛り部分をできるだけ減少させるために、リブ部33の幅を小さくするのが有効である。
【0047】
肉盛りは又、ここでは片側からの作業となるので、溶接歪みに留意して作業を進めるのがよい。
【0048】
R曲げ面が要求される場合は、片面クラッド鋼板に対し、その硬化金属層20が内側となる内曲げを予め実施しておき、同様のRに曲げ加工した打ち抜き鋼板31を母材鋼板10の表面、即ち外曲げ側の表面に張り付ける。これに続く溶接肉盛りでの変形を抑制するために、拘束板に固定することが推奨される。
【0049】
図2は本発明の両面クラッド鋼板の別の例につきその構成を示す斜視図である。
【0050】
この例では、母材鋼板10の両面側に、打ち抜き鋼板31を用いた硬化金属層30が形成されている。この両面クラッド鋼板は、母材鋼板10の両面に打ち抜き鋼板31を張り付けたあと、それぞれの貫通孔32に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして製作されるが、各側の溶接歪みを打ち消すように各側で交互に肉盛りを行うのがよい。
【0051】
R曲げ面が要求される場合は、母材鋼板10を予め曲げ加工しておき、その両面に同様のRに曲げ加工した打ち抜き鋼板31を張り付ける。これに続く溶接肉盛りでの変形を抑制するために、拘束板に固定することが推奨される。
【0052】
図3は本発明の両面クラッド鋼板の更に別の例につきその構成を示す斜視図である。
【0053】
この例では、母材鋼板10の表面に張り付けられた打ち抜き鋼板31の貫通孔32に硬化金属を肉盛りする前に、貫通孔32の孔底面(母材鋼板10の表面)に軟鋼ワイヤ等を用いて予備肉盛りを行っている。即ち、例えば3.2mmの打ち抜き鋼板31を使用する代わりに4.5mmの打ち抜き鋼板31を使用し、貫通孔31に孔底面から1.5〜2.0mm程度の高さに軟鋼等を予備肉盛りする。
【0054】
この予備肉盛り部11の上から貫通孔32に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして両面クラッド鋼板を完成させると、予備肉盛り部11によって打ち抜き鋼板31及び母材鋼板10が強化されていることにより、過酷な風圧等を受けても母材鋼板10の破断が防止される。
【0055】
予備肉盛りは全ての貫通孔32に行う必要はなく、貫通孔32に選択的に行えばよい。予備肉盛り用の材料は母材鋼板10に類似させればよく、母材鋼板10がステンレス鋼の場合はステンレス鋼を選択すればよい。
【0056】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0057】
肉厚が6mmの母材鋼板の一方の表面に通常の溶接肉盛りにより厚さが3mmの耐磨耗性硬化金属層を形成した幅1200mm×長さ2500mmの片面クラッド鋼板からプラズマ切断により幅943mm×長さ1000mmのテストピースを採取し、耐磨耗性硬化金属層を内側にした半径600mm×90°の内曲げを行った。母材鋼板の化学成分を表1に示す。
【0058】
また、板厚が3.2mm、孔径が16mm、孔ピッチが21mm、開口率が52.4%で、片面クラッド鋼板と同じ形状の軟鋼からなる千鳥抜きの打ち抜き鋼板を、片面クラッド鋼板の母材表面に沿うように曲げ加工し、その母材表面に溶接接合した。溶接は、軟鋼溶接ワイヤを使用し、打ち抜き鋼板の貫通孔を使用した栓溶接とした。溶接金属の厚みは1〜1.5mmとし、溶接箇所は全孔の10%程度で全面に分散させた。
【0059】
接合後の打ち抜き鋼板の各貫通孔に耐磨耗性金属を溶接肉盛りした。溶接ワイヤの化学成分を表2に示す。溶接電流は180A、溶接電圧は26〜30V、ワイヤ突き出し長さは35mmとした。打ち抜き鋼板の貫通孔間に存在する軟鋼リブ部の幅は5mmであるが、このリブ部ができるだけ溶融するように、溶接トーチを円運動させて、少なくとも表面には軟鋼リブ部が現れないように配慮した。肉盛りによる硬化金属部の高さは、打ち抜き鋼板の肉厚を超えるように約4mmとした。軟鋼リブ部の下部は未溶融のまま残っているので、両面クラッド鋼板の強度補完材としても機能する。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
製造された両面クラッド鋼板では、変形を防止するように溶接順序を考慮しつつ、打ち抜き鋼板に対する肉盛り施工を行ったので、僅かの変形修正で完成させることができた。打ち抜き鋼板側を溶接肉盛りするので、片面クラッド鋼板を予め小さめに曲げ加工しておくと、打ち抜き鋼板側の肉盛り時の歪みによる引っ張りで所定の曲率が得られ、歪みが残る場合も僅かの矯正で済む。別に製作した厚肉の拘束板を使用する方法のあることも前述した通りである。
【0063】
製造された両面クラッド鋼板に対しショットブラスト磨耗試験を行った。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
平均硬度は、無作為に選んだ溶着金属上の15点の平均硬度である。ショットブラスト磨耗試験では、ブラスト材に銅スラグを使用し、流速40M/秒で30°、60°、90°の角度で衝突させた。測定値は、標準資料の軟鋼SS400の磨耗係数を100とする磨耗容積比により示した。内曲げ側の耐磨耗性肉盛り層のエロージョン値は、30°で軟鋼の200倍である。外曲げ側の打ち抜き鋼板を使用した耐磨耗性硬化金属層では、軟鋼の500倍となり、内曲げ側の通常硬化層の2.5倍の寿命を示す。
【0066】
両面側に打ち抜き鋼板を使用した耐磨耗性硬化金属層を形成した。母材鋼板の肉厚を4.5mm、その両面に接合する打ち抜き鋼板の肉厚を2.4mmとした。これにより、全厚が9.3mmの非常に薄い両面クラッド鋼板が製造された。母材鋼板の肉厚を3.2mmにすれば、全厚が8mmの両面クラッド鋼板の製造も可能である。
【0067】
ステンレス鋼は靱性に優れ、曲げ応力を受けても破断を防止できるので、母材鋼板の肉厚を薄くする場合はステンレス鋼を使用することが望まれる。また、打ち抜き鋼板にもステンレス鋼を使用すれば、より高靱性のクラッド鋼板が製造可能となる。製作では、歪みを打ち消すように表裏交互に肉盛りを行えば、歪みの少ない板を製造できる。若しくは、片面の肉盛りを完了してから、一旦歪み取りを行い、もう片面の肉盛りを行えばよい。打ち抜き鋼板の孔ピッチが一定であるから、溶接ロボットを使用した完全自動の肉盛り施工が可能である。溶接ロボットの使用により、製作時間が短縮でき、コスト低減が可能になる。
【0068】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明の耐磨耗性金属肉盛り方法は、母材鋼板の表面に、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板を溶接接合し、その打ち抜き鋼板の各貫通孔に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして、前記表面に耐磨耗性硬化金属層を形成することにより、薄肉の母材鋼板に対して、また、湾曲した薄肉母材の外曲げ側に、溶接歪みを抑えつつ耐磨耗性硬化金属層を形成できる。
【0069】
また、本発明の両面クラッド鋼板は、母材鋼板の両面に耐磨耗性硬化金属層を形成し、両面側の耐磨耗性硬化金属層のうちの少なくとも一方を、前記母材鋼板の表面に溶接接合された、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板の各貫通孔に、耐磨耗性金属を溶接肉盛りすることにより、両面側に耐磨耗性硬化金属層を有する構成であるにもかかわらず、薄肉化が可能であり、しかも、小Rの湾曲板の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の両面クラッド鋼板の1例につき、その構成及び製作手順を示す斜視図である。
【図2】本発明の両面クラッド鋼板の別の例につき、その構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の両面クラッド鋼板の更に別の例につき、その構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 母材鋼板
11 予備肉盛り部
20 通常肉盛りによる硬化金属層
30 打ち抜き鋼板を使用した硬化金属層
31 打ち抜き鋼板
32 貫通孔
33 リブ部
34 肉盛り部
Claims (5)
- 母材鋼板の表面に、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板を溶接接合し、その打ち抜き鋼板の各貫通孔に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして、前記表面に耐磨耗性硬化金属層を形成することを特徴とする耐磨耗性金属肉盛り方法。
- 隣接する硬化金属部が連続するように、耐磨耗性金属を貫通孔周囲の打ち抜き鋼板に溶け込ませることを特徴とする請求項1に記載の耐磨耗性金属肉盛り方法。
- 母材鋼板の両面に耐磨耗性硬化金属層が形成されており、両面側の耐磨耗性硬化金属層のうちの少なくとも一方が、前記母材鋼板の表面に溶接接合された、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板の各貫通孔に、耐磨耗性金属を溶接肉盛りした構成であることを特徴とする両面耐磨耗性クラッド鋼板。
- 一方の耐磨耗性金属層が、前記母材鋼板の表面に接合された、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板の各貫通孔に、耐磨耗性金属を溶接肉盛りして形成され、他方の耐磨耗性金属層が、母材鋼板の表面に耐磨耗性金属を溶接肉盛りして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の両面耐磨耗性クラッド鋼板。
- 両方の耐磨耗性金属層が、前記母材鋼板の表面に接合された、多数の貫通孔を有する打ち抜き鋼板の各貫通孔に、耐磨耗性金属を溶接肉盛りして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の両面耐磨耗性クラッド鋼板。
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