JP3748483B2 - 姿勢入力装置、姿勢入力機能を備えるペン型入力装置及びそのペン型入力装置を有するペン型入力システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンピュータ装置にカーソルの移動入力等をする姿勢入力装置、姿勢入力機能を備えるペン型入力装置及びそのペン型入力装置を有するペン型入力システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ装置等の入力装置としては、例えばキーボード、マウス、デジタイザ、ライトペン及びタブレット等が用いられている。コンピュータ装置の小型化に伴い、携帯端末装置のニーズが高まり利用者も年々増加している。そこで、小型の入力装置が求められるようになった。
【0003】
キーボードの小型化にはヒューマンインターフェイスの点で限界があり、携帯端末装置の入力装置としては実用性が低い。また、マウスはポインティングデバイスとしては小型化が可能であるが、図形及び文字等の入力には適さない。
【0004】
このため、携帯端末装置の入力装置としてはタブレットとペンを用いたペン型の入力装置が多く採用されている。このタブレットを用いたペン型の入力装置をさらに小型化しようとした場合にはタブレットの大きさが問題となる。
【0005】
また、コンピュータ装置の性能向上及び低価格化並びにコンピュータ装置のネットワークの充実により、例えばバーチャルショッピングモールのような3次元の仮想空間を取り扱うコンピュータ装置が増えてきている。上記3次元仮想空間に対する入力には、キーボード又はマウス等が多く用いられていて、その使い勝手はあまり良くなかった。
【0006】
これに対して、例えば特開平6-44005号公報に掲載された座標入力装置では、3個の加速度センサと3個のジャイロを用いて装置の傾きによる影響を取り除き正確に装置の座標を検出するようにして、携帯端末装置などに図形及び文字等を入力できるようにしている。
【0007】
また、例えば特開平8-21732号公報に掲載された姿勢方位位置計測装置では、3個のジャイロと3個の加速度センサを備え、3個のジャイロ及び3個の加速度センサを用いて検出した回転角速度及び加速度を基に姿勢角、方位各及び位置を演算し、その演算結果を出力している。姿勢角には重力加速度方向に対する角度である静的姿勢角とジャイロを用いて検出した回転角速度を基に求めた動的姿勢角とがある。特開平8-21732号公報に掲載された姿勢方位位置計測装置では、加速度センサを用いて検出した加速度から静的姿勢角を求め、ジャイロを用いて検出した回転角速度から動的姿勢角を求め、ジャイロを用いて検出した回転角速度の動きの大きさを基にノーマライズ処理により、両姿勢角を補完している。
【0008】
装置の動きが小さいときは、加速度センサが検出するのは、ほぼ重力加速度だけなので静的姿勢角を正しく求めることができる。また、回転角速度の信号レベルは下がるのでジャイロのS/N比及びオフセットの問題から正しい動的姿勢角を求めることは困難である。一方、装置の動きが激しいときは、加速度センサは重力加速度以外に操作に伴う加速度も検出するので静的姿勢角を算出しようとするとの誤差が大きい。また、回転角速度の信号レベルは大きくなるので、動的姿勢角を正確に求めることができる。そこで、特開平8-21732号公報に掲載された姿勢方位位置計測装置では、上記のように装置の動きが小さいときには静的姿勢角の比率を大きくし、装置の動きが大きいときには動的姿勢角の比率を大きくして両者から姿勢角を補完し、姿勢角を正確に求めるようにしている。
【0009】
また、特開平9-106322号公報に掲載されたヘッドマウントディスプレイにおける姿勢角検出装置では、3個のジャイロと3個の加速度センサを備え、加速度センサを用いて検出した加速度から静的姿勢角を求め、ジャイロを用いて検出した回転角速度から動的姿勢角を求め、使用者の頭部の動きに応じて静的姿勢角と動的姿勢角を選択して出力している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6-44005号公報に掲載された座標入力装置は、装置の位置を検出するものであり、装置の姿勢角を出力するものでなく、3次元仮想空間に対する入力には、その使い勝手はあまり良くない。
【0011】
また、特開平8-21732号公報に掲載された姿勢方位位置計測装置及び特開平9-106322号公報に掲載されたヘッドマウントディスプレイにおける姿勢角検出装置では、座標の変化を考慮していないため、正確な姿勢角を求めることが困難である。
【0012】
また、これらの装置では、加速度センサの取付位置に関する補正をしていないため、検出した加速度に回転運動による加速度が含まれていて、検出した加速度が実際の加速度と異なる。
【0013】
この発明はかかる短所を解消するためになされたものであり、正確な姿勢角の入力を行なうことを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る姿勢入力装置は、3個のジャイロと3個の加速度センサと演算部を有し、3個のジャイロはそれぞれ姿勢角入力装置を基準として設けた互いに直交する3軸から成るセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、3個の加速度センサはそれぞれXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力し、演算部は姿勢角演算部と重力方向ベクトル演算部と加速度方向ベクトル演算部と回転補正ベクトル演算部と姿勢角補正部を備え、姿勢角演算部はジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)における装置の姿勢角を算出し、重力方向ベクトル演算部は姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を基に重力方向ベクトルを算出し、加速度方向ベクトル演算部は加速度センサが出力した加速度を示す信号を基に加速度方向ベクトルを算出し、回転補正ベクトル演算部は重力方向ベクトル演算部が算出した重力方向ベクトルと加速度方向ベクトル演算部が算出した加速方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出し、姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正して、誤差の累積を防止し、正確な姿勢角を求める。
【0015】
さらに、姿勢角補正部は、回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルをサンプリング周期で2を割った値からサンプリング周期で30を割った値までの範囲内の予め定めた利得で縮小し、縮小した回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正して、使用者の操作に伴って発生した加速度成分を取り除く。
【0016】
また、姿勢角補正部は、回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルが予め定めたベクトルより大きい場合には姿勢角の回転補正ベクトルを縮小し、回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正し、突発的なノイズの発生により姿勢角の誤検出が発生することを防止する。
【0017】
さらに、姿勢角補正部は、加速度センサを用いて検出した加速度の大きさで回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを重み付けし、重み付けした姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正して、姿勢入力における安定性及び応答性を向上する。
【0018】
さらに、姿勢角出力部は、姿勢角の変化を算出し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値を越える場合は今回のサンプリングにより算出した姿勢角を出力し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値以下の場合は変化する前回のサンプリングにより出力した姿勢角をそのまま出力して、姿勢入力装置をポインティング等に使用する場合に姿勢角の振動により指示点がぶれることを防止する。
【0019】
さらに、傾斜角補正部は、各加速度センサの取付位置における傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサを用いて検出したセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正して傾斜運動中心部分におけるセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を求めて、傾斜運動と加速度センサの取付位置とによる加速度検出誤差をなくし、正確な加速度を検出する。
【0020】
また、ペン型入力装置は、3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を有し、3個の加速度センサはそれぞれペン型入力装置の長手方向をZs軸としたセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力し、3個のジャイロはそれぞれXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部を備え、ペン姿勢演算部は姿勢角演算部と重力方向ベクトル演算部と加速度方向ベクトル演算部と回転補正ベクトル演算部と姿勢角補正部を備え、姿勢角演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の姿勢角を算出し、重力方向ベクトル演算部は姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を基に重力方向ベクトルを算出し、加速度方向ベクトル演算部は加速度センサが出力した加速度を示す信号を基に加速度方向ベクトルを算出し、回転補正ベクトル演算部は重力方向ベクトル演算部が算出した重力方向ベクトルと加速度方向ベクトル演算部が算出した加速度方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出し、姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を補正し、ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出し、検出結果切替部は入力モードに応じてペン姿勢演算部が算出したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力する。よって、姿勢角の誤差の累積を防止し、正確な姿勢角を求められ、更には3次元仮想空間に対する入力及び筆記形状の入力を可能とする。
【0022】
また、姿勢角補正部は、回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルをサンプリング周期で2を割った値からサンプリング周期で30を割った値の範囲内の予め定めた利得で縮小し、縮小した回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正して、使用者の操作に伴って発生した成分を取り除く。
【0023】
また、姿勢角補正部は、回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルが予め定めたベクトルより大きい場合には姿勢角の回転補正ベクトルを縮小し、回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正し、突発的なノイズの発生により姿勢角の検出結果に突発的な誤差が発生することを防止する。
【0024】
さらに、姿勢角補正部は、加速度センサを用いて検出した加速度の大きさで回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを重み付けし、重み付けした姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正して、姿勢入力における安定性及び応答性を向上する。
【0025】
さらに、姿勢角出力部は、姿勢角の変化を算出し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値を越える場合は今回にサンプリングにより算出した姿勢角を出力し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値以下の場合は前回のサンプリングにより出力した姿勢角をそのまま出力して、例えばペン型入力装置をポインティング等に使用する場合に姿勢角の振動により指示点がぶれることを防止する。
【0026】
また、3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を有し、3個の加速度センサはそれぞれペン型入力装置の長手方向をZ s 軸としたセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向,Y s 軸方向及びZ s 軸方向の加速度を示す信号を出力し、3個のジャイロはそれぞれX s 軸周り,Y s 軸周り及びZ s 軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部を備え、ペン姿勢演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZ g 軸にした重力座標系(X g ,Y g ,Z g )におけるペン軸の姿勢角を算出し、ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出し、検出結果切替部は入力モードに応じて、ペン姿勢演算部が算出したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力する。そして、各加速度センサの取付位置における傾斜運動による加速度成分を算出し、ペン先部の軌跡を出力する筆記軌跡モードではペン先部を回転中心としてペン型入力装置が回転したとして各加速度センサを用いて検出したセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン先部におけるセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を求め、ペン軸の姿勢角を出力する姿勢入力モードではペン中央部を回転中心としてペン軸が回転したとして各加速度センサを用いて検出したセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン中央部におけるセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を求める傾斜加速度補正部を備えている。更に、姿勢入力モードで回転中心とするペン中央部にマークを設けて、姿勢入力の中心点を使用者が容易に認識できるようにする。
【0028】
さらに、ペン姿勢演算部による演算結果をホールドする指示又はリセットする指示を入力する指示入力部或いはペン姿勢演算部による姿勢の算出の指示を入力する指示入力部を備え、ペン軸の長手方向の向きと視線方向の対応を任意に再設定できるようにする。
【0029】
また、ペン型入力システムは、ペン型入力装置とコンピュータ装置と表示装置を有し、ペン型入力装置は3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を備え、3個の加速度センサはそれぞれペン型入力装置の長手方向をZs軸としたセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力し、3個のジャイロはそれぞれXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部とを備え、ペン姿勢演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の姿勢角を算出し、ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出し、検出結果切替部は入力モードに応じて、ペン姿勢演算部が算出したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力し、コンピュータ装置はペン型入力装置の出力結果を入力モードに応じて表示装置から表示するペン型システムであって、コンピュータ装置はペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて、表示画面内の仮想空間における視線方向を変更する表示範囲の変更モード、ペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて、表示画面内の仮想空間におけるカーソルを移動するモード又はペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて、表示画面内の仮想空間における物体の表示角度を変更するモードのいずれか1つ以上のモードを有し、コンピュータ装置はペン型入力装置の出力結果を入力モードに応じて表示装置から表示する。また、入力モードで回転中心とするペン中央部にマークを設けて、姿勢入力の中心点を使用者に認識できるようにする。
【0030】
さらに、上記コンピュータ装置はペン型入力装置の姿勢角検出結果に基づいて視線方向を変更するモードにおいて、ペン型入力装置の長手方向を視線方向とする。
【0031】
さらに、コンピュータ装置はZs軸方向の加速度変化を基に表示装置の画面の奥行き方向の表示範囲を規制する。
【0032】
【発明の実施の形態】
この発明の姿勢入力装置は、装置の姿勢を検出することにより、コンピュータ装置が取り扱う3次元仮想空間に対する入力を行なうことができるようにしたものである。
【0033】
この発明の姿勢入力装置は、3個のジャイロと3個の加速度センサと演算部を有する。3個のジャイロはそれぞれ装置を基準として設けた互いに直交する3軸から成るセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力する。3個の加速度センサはそれぞれXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力する。
【0034】
演算部は、初期姿勢角演算部と姿勢角演算部と重力方向ベクトル演算部と加速度方向ベクトル演算部と回転補正ベクトル演算部と姿勢角補正部とを備える。
【0035】
初期姿勢角演算部は、3個の加速度センサを用いて検出したXs軸方向,Ys軸方向,Zs軸方向の加速度を基に姿勢角の初期値を求める。ここで、姿勢角は、例えば回転角ベクトルを用いて表わす。姿勢角演算部は初期姿勢角演算部が算出した姿勢角の初期値とジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の姿勢角を算出する。
【0036】
重力方向ベクトル演算部は姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を正規化して重力方向ベクトルを算出する。加速度方向ベクトル演算部は加速度センサが出力した加速度を示す信号を正規化して加速度方向ベクトルを算出する。重力方向ベクトルと加速度方向ベクトルとは正規化されていて、また、重力方向ベクトルを加速度方向ベクトルの逆方向に近付けるので、回転補正ベクトル演算部は重力方向ベクトル演算部が算出した重力方向ベクトルと加速度方向ベクトル演算部が算出した加速度方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出する。
【0037】
姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルに予め定めた利得をかけて回転補正ベクトルを縮小し、縮小した後の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を補正する。ここで、上記予め定めた利得とは、例えば2/(サンプリング周期)の値から30/(サンプリング周期)の値までの範囲内の予め定めた利得である。これは、使用者による操作に伴って発生した加速度成分は上が数10Hzの周波数において存在し、また、下が1Hz以下の周波数においても存在し、ローパスフィルタ等を用いて取り除こうとしても周波数範囲が低すぎて、取り除くことが困難だからである。このように、一旦算出した姿勢角に対して補正を行なうので、ジャイロのオフセットなどの溜めに姿勢角が時間の経過と共にずれていくことを防止できる。
【0038】
また、この発明のペン型入力装置は、ペン軸の姿勢角及びペン先部の軌跡を算出し、入力モードに応じて、算出したペン軸の姿勢角又は算出したペン先部の軌跡を出力するものである。
【0039】
また、この発明のペン型入力装置は、3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を有する。3個の加速度センサはそれぞれXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力し、3個のジャイロはそれぞれXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力する。演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部を備える。ペン姿勢演算部は、上記姿勢入力装置の演算部と同様な構成を備え、3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の姿勢角を算出する。ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出する。検出結果切替部は入力モードに応じて、ペン姿勢演算部が算出したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力する。
【0040】
また、この発明のペン型入力システムは、上記のように構成されたペン型入力装置を有する。ペン型入力システムのコンピュータ装置は、ペン型入力装置の姿勢角検出結果に基づいて視線方向を変更するモード、ペン型入力装置の姿勢角検出結果に基づいてカーソルを移動するモード又はペン型入力装置の姿勢角検出結果に基づいて物体の表示角度を変更するモードのいずれか1つ以上のモードを有し、表示した3次元仮想空間に対する入力を行なう。
【0041】
【実施例】
図1はこの発明の一実施例の姿勢入力装置における加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cの配置図である。以下の説明では、姿勢入力装置を基準として設けた互いに直交する3軸から成る座標系をセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)という。また、重力加速度方向に伸びる軸をZg軸とする座標系を重力座標系(Xg,Yg,Zg)という。
【0042】
図に示すように、加速度センサ2a,2b,2cはそれぞれ姿勢入力装置を基準として設けた互いに直交する3軸から成るセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力する。加速度センサ2a,2b,2cは、小型で高感度であり、且つ、加速度に対する直線性が良好なものであれば良く、ピエゾ抵抗方式の加速度センサであっても、静電容量方式の加速度センサであっても良い。ジャイロ3a,3b,3cは、それぞれセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力する。ジャイロ3a,3b,3cはスケールファクタ(回転運動検出の正確さ)及びドリフトレート(出力オフセットの安定度)が良好であり、且つ、小型なものであれば良く、回転ジャイロ、振動ジャイロ及び光学式ジャイロ等のいずれの方式のジャイロでも良い。
【0043】
姿勢入力装置に加わる加速度のベクトルvectorAs(以後、ベクトルは変数の前にvectorを付けて表わす。)は、図2に示すように重力加速度ベクトルvectorgと使用者の操作に伴って発生した加速度である操作加速度ベクトルの合成から成る。各加速度センサ2a,2b,2cの取り付け位置が近いとすると、各加速度センサ2a,2b,2cの出力信号を基にセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度ベクトルAsを表現できる。
【0044】
ここで、重力加速度ベクトルvectorgは一定であり、操作加速度ベクトルは操作空間が限られていることから交流成分と考えることができる。また、操作加速度の大きさは重力加速度の大きさに比べてそれほど大きなものではない。したがって、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度のベクトルvectorAsは、重力加速度ベクトルvectorgの周りを振動しており、時間的に平均してみれば、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度のベクトルvectorAsはほぼ重力加速度ベクトルvectorgと同じ方向を向いている。
【0045】
また、姿勢入力装置は、図3に示すように演算部4を有する。演算部4は、例えばAD変換器41a〜41f、初期姿勢角演算部42、姿勢角演算部43、重力方向ベクトル演算部44、加速度方向ベクトル演算部45、回転補正ベクトル演算部46、姿勢角補正部47及び姿勢角出力部48を備える。各AD変換器41a〜41fはそれぞれ加速度センサ2a,2b,2cからの加速度信号及びジャイロ3a,3b,3cからの回転角速度信号をデジタル変換する。
【0046】
初期姿勢角演算部42は3個の加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axso,Ayso,Azso)から回転角ベクトルvectorφ{=(φx,φy,φz)}の初期値vectorφo{=(φxo,φyo,φzo)}を求める。ここで、回転角ベクトルvectorφの初期値vectorφoは、姿勢入力装置1が静止している際の回転角ベクトルである。
【0047】
姿勢角の初期値vectorφoの算出においては、Zs軸周りの回転をリセットしてφzo=0として、Xg軸をXs軸方向の加速度センサ2aの傾斜方向に一致させる。このとき、各加速度センサ2a,2b,2cに加わる加速度が重力加速度gだけであるとすると、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axso,Ayso,Azso)と回転角ベクトルvectorφの初期値vectorφo{=(φxo,φyo,φzo)}との間には、次ぎの関係が成り立つ。
【0048】
【数1】
【0049】
上記式から回転角ベクトルvectorφの初期値vecrtorφoの絶対値が求まる。ここで、(exo,eyo,0)は回転軸方向の単位ベクトルの初期値を示し、φoは回転軸周りの角度の初期値を示す。
【0050】
姿勢角入力の場合は姿勢角の初期値に誤差があっても、後に説明するように徐々に補正がかかるので、特に静止状態である必要はないが、上記式は各加速度センサ2a,2b,2cに加わる加速度が重力加速度gだけであるとした式なので静止状態又は準静的な状態で姿勢角の初期値を求めることが好ましい。
【0051】
上記のように二つの未知数φxo,φyoに対して三本の方程式が成り立つので、重力加速度gも未知数として取り扱うことができる。この式を用いれば、重力加速度gの値を定義しなくともφxo,φyoの絶対値を算出できる。
【0052】
ここでは、初期姿勢角演算部42は、重力加速度gを未知数として、以下の式を用いて回転角ベクトルの初期値(姿勢角の初期値)vectorφoを求める。
【0053】
【数2】
【0054】
姿勢角演算部43は、前のサンプリングの際の回転角ベクトルvectorφn-1とジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度ベクトルvectorω(ωxs,ωys,ωzs)から現在の回転角ベクトルvectorφn(姿勢角)を求める。ここで、n−1は前回のサンプリング回数を示し、nは今回のサンプリング回数を示す。1回目のサンプリングの際にはn−1はゼロなので、前のサンプリングの際の回転角ベクトルvectorφn-1として、姿勢角の初期値vecrtorφoを用いる。
【0055】
回転角ベクトルvectorφnの微分方程式は次式で表わすことができる。
【0056】
【数3】
【0057】
したがって、離散系で上式を積分し、次式を得ることができる。ここで、toはサンプリング周期を示す。
【0058】
【数4】
【0059】
上式の第3項を計算することにより、姿勢角の誤差が累積することを防止できる。
【0060】
重力方向ベクトル演算部44は、回転角ベクトルvectorφn(姿勢角)を基に重力方向(Zg軸方向)を示す重力方向ベクトル(kg)sを算出する。ここで、重力方向ベクトル(kg)sとは、Zg軸方向の単位ベクトルをセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)で表現したベクトルをいう。
【0061】
回転角ベクトルvectorφnから重力方向ベクトル(kg)sを算出するには、回転角ベクトルvectorφnを次式に示すように一度パラメータ(χ,ρx,ρy,ρz)に変換し、パラメータ(χ,ρx,ρy,ρz)を基に重力方向ベクトル(kg)sを求める。
【0062】
【数5】
【0063】
加速度方向ベクトル演算部45は加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度ベクトルvectorAs(Axs,Ays,Aza)を以下の式を用いて正規化して加速度方向ベクトルvectoraを求める。
【0064】
【数6】
【0065】
回転補正ベクトル演算部46は、加速度方向ベクトルvectoraと重力方向ベクトルvector(kg)sから回転補正ベクトルΔvectorφを求める。
【0066】
加速度方向ベクトルvectoraと重力方向ベクトルvector(kg)sが正規化されていること、及び、重力方向ベクトルvector(kg)sを加速度方向ベクトルvectoraの逆方向のベクトル−vectoraに近付けるように回転することから、次式を用いて回転補正ベクトルΔvectorφを算出する。
【0067】
【数7】
【0068】
加速度方向ベクトルvectoraの逆方向のベクトル−vecotoraは使用者の操作による加速度を含んでいるので、完全にZg軸上にあるわけではないが使用者の操作による加速度が交流成分によるものであること、及び重力加速度に比べてそれほど大きくないことから、時間平均でみればZg軸方向を向いていると考えることができる。
【0069】
姿勢角補正部47は、次式に示すように回転補正ベクトル演算部46が算出した回転補正ベクトルΔvectorφを適宜な利得Kで縮小し、縮小した後の回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部43が算出した回転角ベクトルvectorφn(姿勢角)を補正して補正後の姿勢角vectorφ補正を求める。
【0070】
【数8】
【0071】
姿勢角出力部48は、姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角vectorφ補正又は、装置1の姿勢を示す座標変換行列を出力する。
【0072】
上記構成の姿勢入力装置1の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0073】
初期姿勢角演算部42は、例えば静止状態において加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)及び回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を読み出し、姿勢角の初期値vectorφoを算出する(ステップS2)。
【0074】
その後、姿勢入力を開始し(ステップS3)、サンプリングタイミングになると(ステップS4)、姿勢角演算部43は加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)及び回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を読み出し、姿勢角vectorφnを算出する(ステップS5)。ここで、姿勢角演算部43は、既に説明したように累積誤差の発生を防止しているので、広いレンジで姿勢角vectorφnを算出することができる。
【0075】
加速度方向ベクトル演算部45は、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Aza)を基に既に説明したようにして加速度方向ベクトルvectoraを算出する(ステップS6)。また、重力方向ベクトル演算部44は姿勢角演算部43が算出した姿勢角vectorφnを基にZg軸方向を示す重力方向ベクトルvector(kg)sを算出する(ステップS7)。回転補正ベクトル演算部46は加速度方向ベクトル演算部45が算出した加速度方向ベクトルvectora及び重力方向ベクトル演算部44が算出した重力方向ベクトルvector(kg)sを基に回転補正ベクトルΔvectorφを算出する(ステップS9)。姿勢角補正部47は適宜な利得Kで縮小し、縮小した後の回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部43が算出した回転角ベクトルvectorφn(姿勢角)を補正して補正後の姿勢角vectorφ補正を求める(ステップS10)。このように、姿勢角演算部43が算出した姿勢角vectorφnに対して重力方向に関する補正を行なっているので、ジャイロ3a,3b,3cのオフセット等による積分誤差が累積し、姿勢角が時間と共にずれていくことを防止することができる。
【0076】
姿勢角出力部48は、このようにして求めた姿勢角vectorφ補正又は姿勢を示す座標変換行列を出力し(ステップS11)、演算部4は姿勢入力が終了するまで、上記姿勢入力処理(ステップS4〜S11)を繰り返す(ステップS12)。このように、予め定めたサンプリング周期で装置の姿勢角を検出し、例えばコンピュータ装置等のホスト装置に出力するので、ホスト装置で3次元空間等を扱っている場合の入力を容易に行なうことができる。
【0077】
ここで、姿勢角補正部47は回転補正ベクトル演算部46が算出した回転補正ベクトルΔvectorφを適宜な利得Kで縮小しているが、この利得の値を2/(サンプリング周波数)の値から30/(サンプリング周波数)の値の範囲内で予め定めるようにしても良い。例えばサンプリング周波数が1kHzの場合は利得は0.002から0.03となる。
【0078】
検出精度を高めるためには加速度方向ベクトルvectoraから使用者の操作に伴う成分を取り除くこと好ましい。使用者の操作に伴って発生した加速度成分の周波数は上が数10Hzあり、下が1Hz以下になっている。したがって、加速度方向ベクトルvectoraから使用者の操作に伴う成分を、ローパスフィルタ等を用いて取り除こうとしても周波数が低くすぎて重力加速度と分離することが困難である。また、フィルタのカットオフ周波数をあまり低くすると、位相遅れの問題が発生する。そこで、上記のように利得の値を2/(サンプリング周波数)の値から30/(サンプリング周波数)の値の範囲内に抑えることにより、使用者の操作に伴う加速度成分の周期より早い周期で平均化して、補正後の姿勢角vectorφ補正が振動することを防止できる。
【0079】
さらに、姿勢角補正部47は予め設定した補正角度の上限Δφlimitと補正角度の大きさΔφとを比較して、補正角度の大きさΔφが予め設定した補正角度の上限Δφlimitより大きい場合には、次式を用いて回転補正ベクトルΔvectorφを制限するようにしても良い。
【0080】
【数9】
【0081】
このように、回転補正ベクトル演算部46が算出した姿勢角の回転補正ベクトルΔvectorφが予め定めたベクトルΔφlimitより大きい場合には姿勢角の回転補正ベクトルΔvectorφを縮小することにより、突発的なノイズによる影響を小さくでき、突発的ノイズの影響で検出した姿勢が乱れることを防止できる。また、上式においては回転角度を制限するが、補正の回転軸は変えていない。空間の回転を各成分ごとに制限すると回転軸の方向が変わり、補正処理で誤動作する場合があったが、このように回転軸を変えないようにすることにより、誤動作を防止できる。
【0082】
また、姿勢角補正部47は加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)の大きさを基に回転補正ベクトル演算部46が算出した姿勢角の回転補正ベクトルΔvectorφを重み付けし、重み付けした後の回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部43が算出した姿勢角vectorφnを補正するようにしても良い。これまで説明したように、加速度方向ベクトルvectoraの逆方向のベクトル−vectoraが示す方向を重力方向とみなして補正処理を行なっている。これは姿勢入力装置1が静止していて検出する加速度が重力加速度だけの場合は理想的に働く。これに対して使用者の操作に伴う加速度が大きい場合は、速度方向ベクトルvectoraの逆方向のベクトル−vectoraを重力方向と一致するように補正することは困難である。そこで、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)の大きさが重力加速度の大きさにほぼ等しい場合には回転補正ベクトルΔvectorφに対する利得を大きくし、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)の大きさと重力加速度の大きさとに差がある場合には、その差の大きさに応じて回転補正ベクトルΔvectorφに対する利得を小さくした。これにより、誤差の発生を抑え、姿勢入力の安定性を向上することができる。
【0083】
さらに、姿勢角出力部48は、姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角vectorφ補正の変化に応じて、前回のサンプリングの際に姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)n-1と今回姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)nと選択して出力するようにしても良い。ここで、(vectorφ補正)n-1はn−1回目のサンプリングの際に算出した姿勢角を示し、(vectorφ補正)nはn回目のサンプリングの際に算出した姿勢角を示す。
【0084】
姿勢角出力部48は、例えば前回のサンプリングの際に姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)n-1と今回姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)nとを比較し、その差が予め定めた姿勢角の差の閾値Δφth以下{Δφth≧|(vectorφ補正)n−(vectorφ補正)n-1|}の場合には、前回のサンプリングにより出力した姿勢角(vectorφ補正)n-1を出力し、その差が予め定めた姿勢角の差の閾値Δφthを越える{Δφth<|(vectorφ補正)n−(vectorφ補正)n-1|}まで、同じ姿勢角を出力する。姿勢角出力部48は、前回のサンプリングの際の姿勢角(vectorφ補正)n-1との差が予め定めた姿勢角の差の閾値Δφthを越えると、今回サンプリングした際に算出した姿勢角(vectorφ補正)nを出力する。これにより、手ぶれによる影響を除去し、一定の姿勢を保持することができる。ここで、前回のサンプリングの際に姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)n-1と今回姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)nとを比較する代わりに、前回のサンプリングにより出力した姿勢角と今回姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)nとを比較するようにしても良い。姿勢角が予め定めた姿勢角の差の閾値Δφthの範囲内で徐々に変化した場合、上記のように、前回のサンプリングの際に姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)n-1と今回姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)nとを比較するとその差が累積し、急激な変化を起こすことになるが、前回のサンプリングにより出力した姿勢角と今回姿勢角補正部47が補正した後の姿勢角(vectorφ補正)nとを比較することにより、このように出力した姿勢角が急激に変化することを防止できる。
【0085】
さらに、図5に示すように姿勢入力装置1の大きさ及びレイアウトの制約から各加速度センサ2a,2b,2cの軸の原点位置がずれる場合がある。このとき、姿勢入力装置1がセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の原点を中心とした回転運動をすると、加速度センサ2a,2b,2cは回転中心から離れていることで、遠心力及び慣性力から生じる加速度を拾ってしまう。そこで、ジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を基に回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)を算出し、算出した回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)と回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)と加速度センサ2a,2b,2cの取付位置を基に次式を用いて加速度センサ2a,2b,2cが検出した加速度(Axs,Ays,Azs)を補正して補正後の加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を求めても良い。
【0086】
【数10】
【0087】
ここで、上記式において各加速度センサ2a,2b,2cの取付座標をそれぞれ(Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs),(Xcs,Ycs,Zcs)としている。上記式の第2項は慣性力による加速度成分を表わし、第3項は遠心力による加速度成分を表わしている。姿勢入力は完全な回転動作だけで行なわれるものではないので、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度を完全に重力加速度だけに補正することはできないが、上記のように補正することにより、使用者の操作に伴う成分を大幅に減らすことができる。
【0088】
また、センサ座標系(Xs,Ys,Zs)の原点は、使用者による操作の回転中心であることが好ましいので、その部分にマークを設け、使用者が回転中心とすべき場所を容易に認識できるようにすると良い。
【0089】
次ぎに、この発明のペン型入力装置について、図6の配置図及び図7の構成図を用いて説明する。
【0090】
ペン型入力装置5は、加速度センサ2a,2b,2c、ジャイロ3a,3b,3c及び演算部6を有する。加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cは、姿勢入力装置1の場合と同様にペンの長手方向をZs軸としたセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)におけるXs軸方向、Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号並びにXs軸周り、Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力する。
【0091】
演算部6は、AD変換器61a〜61f、ローパスフィルタ(以後「LPF」という。)62a〜62f、静止判別部63、初期回転ベクトル演算部64、傾斜加速度補正部65、ペン姿勢演算部66、ペン先軌跡演算部67及び検出結果切替部68を備える。AD変換器61a〜61fは、それぞれ加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cからの加速度信号及び回転角速度信号をデジタル変換する。LPF62a〜62fはそれぞれペン先部7と筆記面との摩擦力により生じる加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cからの信号から高周波成分を遮断する。これは、ペン先部7と筆記面との摩擦により加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cからの信号に高周波成分が発生するからである。
【0092】
静止判別部63はデジタル変換後の加速度センサ2a,2b,2cからの信号及びジャイロ3a,3b,3cからの信号の時間変化を監視して、ペン先部7が静止状態か否かを判別する。初期回転ベクトル演算部64は静止判別部63がペン先部7が静止状態であると判別すると、姿勢入力装置1の初期姿勢角演算部42と同様に数2で示す式を用いて回転角ベクトルの初期値vectorφoを求める。傾斜加速度補正部65は角加速度演算部651と加速度補正部652を有する。角加速度演算部651は、既に説明したようにジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を基に回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)を算出する。加速度補正部652は、角加速度演算部651が算出した回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)と回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)と加速度センサ2a,2b,2cの取付位置を基に数10で示した式を用いて加速度センサ2a,2b,2cが検出した加速度(Axs,Ays,Azs)を補正して補正後の加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を求める。
【0093】
ペン姿勢演算部66は回転ベクトル演算部661を有する。回転ベクトル演算部661は、姿勢入力装置1の姿勢角演算部43と同じく、数4で示す式を用いて初期回転ベクトル演算部64が算出した回転角ベクトルの初期値vectorφo又は前回サンプリングした際に回転ベクトル演算部661が演算した回転角ベクトルvectorφn-1と3個のジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を基に今回サンプリングの際の回転角ベクトルvectorφnを算出する。
【0094】
ペン先軌跡演算部67は座標変換演算部671と重力加速度除去部672と移動量演算部673を有する。座標変換演算部671は、例えば数6で示した式を用いて座標変換行列を求め、求めた座標変換行列と次式を用いてセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度(Axs,Ays,Azs)を重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axg,Ayg,Azg)に変換する。
【0095】
【数11】
【0096】
重力加速度除去部672は座標変換演算部671が変換した重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axg,Ayg,Azg)から重力加速度成分を除去する。移動量演算部673は重力加速度性分除去部672で重力加速度成分を除去した後の重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axg,Ayg,Azg)を2回積分して、ペン先部7の移動方向及び移動量を算出する。
【0097】
検出結果切替部68は入力モードに応じてペン姿勢演算部66が算出したペンの姿勢角又はペン先軌跡演算部67が算出したペン先部7の軌跡を出力する。例えば入力モードが装置の姿勢で仮想空間のカーソル位置を制御している姿勢入力モードである場合には、上記のようにペン姿勢演算部66が算出したペンの姿勢角を出力する。
【0098】
上記構成のペン型入力装置5の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0099】
演算部6は加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cから加速度信号及び回転角速度信号を入力し(ステップS21)、入力した信号を基に静止判別部63がペン先部7の静止状態を判別すると(ステップS22)、初期回転ベクトル演算部64は、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出したセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を基に回転角ベクトルの初期値vectorφoを求める(ステップS23)。
【0100】
次ぎに、静止判別部63がペン先部7の静止状態を判別すると(ステップS22)、再び加速度センサ2a,2b,2c及びジャイロ3a,3b,3cから加速度信号及び回転角速度信号を入力する(ステップS24)。傾斜加速度補正部65は、既に説明したようにジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を基に回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)を算出し、角加速度演算部651が算出した回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)と回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)と加速度センサ2a,2b,2cの取付位置を基に加速度センサ2a,2b,2cが検出した加速度(Axs,Ays,Azs)を補正して補正後の加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を求める(ステップS25)。
【0101】
ペン姿勢演算部66は、既に説明したように初期回転ベクトル演算部64が算出した回転角ベクトルの初期値vectorφo又は前回サンプリングした際に回転ベクトル演算部661が演算した回転角ベクトルvectorφn-1と3個のジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を基に今回サンプリングの際の回転角ベクトルvectorφnを算出する(ステップS26)。
【0102】
ここで、姿勢入力モードが設定されていると、検出結果切替部68はペン姿勢演算部66が算出した回転角ベクトルvectorφnを姿勢角としてホスト装置(不図示)に出力する(ステップS27,S28)。このように、姿勢角vectorφnを出力することにより仮想空間の大きさ、表示範囲及び装置の移動範囲等の制約をなくすことができる。また、例えばペンを垂直な状態から傾けることでジョイスティックと同様な操作を行なうことができ、装置の実空間の姿勢と仮想空間の姿勢の対応が直間的に判り易く使い勝手を良くできる。さらに、姿勢入力モードにおいて移動量などの演算を行なう必要が無くなるので、演算量を少なくでき、処理を迅速に行なうころができるようになる。
【0103】
姿勢入力モードが設定されていない場合には、座標変換演算部671は、既に説明したようにセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axg,Ayg,Azg)に変換する(ステップS29)。重力加速度除去部672は座標変換演算部671が変換した重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axg,Ayg,Azg)から重力加速度成分を除去する(ステップS30)。移動量演算部673は重力加速度性分除去部672で重力加速度成分を除去した後の重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axg,Ayg,Azg)を2回積分して、ペン先部7の移動方向及び移動量を算出する(ステップS31)。検出結果切替部68は姿勢入力モードが設定されていないので、移動量演算部673が算出したペン先部7の移動方向及び移動量を出力する(ステップS32)。このように、ペン型入力装置5のペン先部7の移動方向及び移動量を出力するので、ホスト装置(不図示)では、文字及び図形等を容易に入力することができる。
【0104】
ペン型入力装置5は、上記動作(ステップS24〜S32)を入力が終了するまで繰り返す(ステップS33)。
【0105】
ここで、上記実施例では加速度補正部652はペン先部7を回転中心としてペンが回転したとして角加速度演算部651が算出した回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)と回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)と加速度センサ2a,2b,2cの取付位置を基に数10で示した式を用いて加速度センサ2a,2b,2cが検出した加速度(Axs,Ays,Azs)を補正して補正後の加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を求めたが、姿勢入力の場合は手の位置を中心に回転運動すると、操作がし易い。したがって、加速度補正部652は筆記軌跡モードではペン先部7を回転中心としてペンが回転したとして各加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン先部7における加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を求め、ペン軸の姿勢角を出力する姿勢入力モードではペン中央部を回転中心としてペンが回転したとして各加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン中央部における加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を求めるようにしても良い。
【0106】
さらに、図9(a)に示すように姿勢入力モードにおいて回転中心とするペン中央部の外周部にマーク付けをしたり、図9(b)に示すように姿勢入力モードにおいて回転中心とするペン中央部の外周部とXs軸,Ys軸,Zs軸の各軸とが交わる部分にマーク付けをして、使用者が回転中心を容易に認識できるようにしても良い。
【0107】
また、ペン姿勢演算部66が、図10に示すように回転ベクトル演算部661、重力方向ベクトル演算部44、加速度方向ベクトル演算部45、回転補正ベクトル演算部46、姿勢角補正部47及び姿勢角出力部48を有するようにしても良い。これにより、姿勢入力装置1の演算部4のように回転ベクトル演算部661が算出した回転角ベクトルvectorφn(姿勢角)を補正して正しい回転角ベクトルvectorφn補正(姿勢角)を得ることができる。ここで、姿勢角補正部47は既に姿勢入力装置1の場合に説明した姿勢入力部47のいずれの動作を行なうようにしても良い。また、姿勢角出力部48の動作も姿勢入力装置1の場合に説明した姿勢角出力部48のいずれの動作を行なうようにしても良い。
【0108】
ペン姿勢演算部66による演算結果をホールドする指示又はリセットする指示を入力する指示入力部(不図示)或いはペン姿勢演算部66による姿勢の算出の指示を入力する指示入力部(不図示)を備えるようにしても良い。指示入力部は、例えばペン姿勢演算部66による演算結果をホールドする指示を入力する姿勢角ホールドスイッチ(不図示)、ペン姿勢演算部66による演算結果をリセットする指示を入力する姿勢角リセットスイッチ(不図示)又はペン姿勢演算部66による姿勢の算出の指示を入力する姿勢角入力スイッチ(不図示)のいずれか少なくとも一つ以上を備える。
【0109】
姿勢角ホールドスイッチをオンにしている間は、ペン姿勢演算部66による演算結果をホールドするので、ペン型入力装置6の姿勢を変えても仮想空間の視線等が変わらない。例えば仮想空間で右90°方向を向きたい場合には実空間でも表示装置を正面としてペン先部7を右90°方向に差し示せば向くことができるが、手首の角度が窮屈になる。このため、この方向を中心にして他の方向を指し示したい場合には使い勝手が良くない。そこで、このような場合に姿勢ホールドスイッチをオンにして手首を元に戻せは仮想空間を変えずに手首を元に戻すことができる。
【0110】
姿勢入力スイッチの場合は、姿勢角ホールドスイッチと全く逆で、上記のような場合は姿勢入力スイッチをオフにして手首を元に戻せは仮想空間を変えずに手首を元に戻すことができる。
【0111】
次ぎに、上記ペン型入力装置5を有するペン型入力システムについて説明する。ペン型入力システムはペン型入力装置5とコンピュータ装置(不図示)と表示装置(不図示)を有する。コンピュータ装置はペン型入力装置5の出力結果を入力モードに応じて表示装置から表示する。コンピュータ装置は、例えばペン型入力装置5の姿勢角検出結果に基づいて視線方向を変更するモード(以後「視線モード」という。)、ペン型入力装置5の姿勢角検出結果に基づいてカーソルを移動するモード(以後「カーソルモード」という。)又はペン型入力装置5の姿勢角検出結果に基づいて物体の表示角度を変更するモードのいずれか1つ以上のモードを有する。
【0112】
例えば図11に示すように視線モードにおいては、ペン型入力装置5の角度を点線で示す角度から実線で示す角度に変えると、仮想空間の表示範囲Aを点線で示す範囲から実際の角度だけ移動して実線で示す範囲に変えて表示装置に表示する。ここで、図ではほぼ水平に視線を振っているが、ペンの姿勢により上下左右のどの方向を向くこともでき、また、首を傾けてみるようにフレームを回転することもできる。
【0113】
また、図12に示すようにカーソルモードにおいては、仮想空間の表示範囲Aは変えずに、ペン型入力装置5の角度を点線で示す角度から実線で示す角度に変えると予め設定した距離(仮想空間での操作者からカーソルまでの距離)からカーソルがどのように移動するかを算出し(角度×設定距離=移動距離)、例えばカーソルの位置を図中Bで示す位置から図中Cで示す位置に移動する。
【0114】
また、ペン型入力装置5の姿勢角検出結果に基づいて物体の表示角度を変更するモードにおいては、ペン型入力装置5に姿勢に対応して仮想空間内のオブジェクトを回転する。これにより、仮想空間内のオブジェクトを容易に操作することができる。
【0115】
さらに、上記コンピュータ装置は視線モードにおいてペンの長手方向を視線方向とすると操作性が良い。
【0116】
さらに、上記コンピュータ装置はZs軸方向の加速度変化を基に表示装置の画面の奥行き方向の表示範囲を制御するようにしても良い。姿勢変化の際には重力加速度の軸方向の成分が変わるので、Zs軸方向の検出加速度も変化するが、このときは画面の奥行き方向の制御は行なわないようにする。姿勢がほぼ一定の状態で、Zs軸方向の加速度変化を検出した場合はその加速度方向に向かって画面の奥行きを制御する。例えばペン先部7の方向にペン型入力装置5を動かした場合は仮想空間内で操作者の位置を視線方向に移動する。逆にペン型入力装置5を後方に移動した場合は、仮想空間内で操作者の位置を視線方向の逆方向に移動する。
【0117】
また、上記Zs軸方向の加速度変化を基にした分類を増やして、例えば「速く前進、前進、停止、後退、速く後退」のようにすれば表示範囲のコントロールに柔軟性を持たせることができる。あるいは、ペン軸方向に振動を加えると、仮想空間内を操作者が歩くようにステップ状に操作者の位置(表示範囲)を進めることもできる。
【0118】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように、Xs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を基に装置の姿勢角を算出し、算出した装置の姿勢角を基に重力方向ベクトルを算出し、Xs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を基に加速度方向ベクトルを算出し、算出した重力方向ベクトルと加速方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出し、算出した姿勢角の回転補正ベクトルを基に装置の姿勢角を補正するので、誤差の累積を防止し、正確な姿勢角を求めることができる。
【0119】
さらに、算出した姿勢角の回転補正ベクトルをサンプリング周期で2を割った値からサンプリング周期で30を割った値までの範囲内の予め定めた利得で縮小し、縮小した回転補正ベクトルを用いて装置の姿勢角を補正するので、使用者の操作に伴って発生した加速度成分を取り除くことができる。
【0120】
また、算出した姿勢角の回転補正ベクトルが予め定めたベクトルより大きい場合には姿勢角の回転補正ベクトルを縮小するので、突発的なノイズの発生により姿勢角の検出結果が乱れることを防止することができる。
【0121】
さらに、検出した加速度の大きさで姿勢角の回転補正ベクトルを重み付けし、重み付けした姿勢角の回転補正ベクトルを基に装置の姿勢角を補正するので、姿勢入力における安定性及び応答性を向上することができる。
【0122】
さらに、姿勢角の変化を算出し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値を越える場合は今回のサンプリングにより算出した姿勢角を出力し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値以下の場合は変化する前回のサンプリングにより出力した姿勢角をそのまま出力するので、ポインティング等に使用する場合に姿勢角の振動により指示点がぶれることを防止することができる。
【0123】
さらに、各加速度センサの取付位置における傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサを用いて検出した加速度を補正して、正確な加速度を検出することができる。
【0125】
さらに、Xs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を基にペンの姿勢角を算出し、算出したペンの姿勢角を基に重力方向ベクトルを算出し、Xs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を基に加速度方向ベクトルを算出し、算出した重力方向ベクトルと加速度方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出し、算出した姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出したペンの姿勢角を補正するので、ペン型入力装置において姿勢角の誤差の累積を防止し、正確な姿勢角を求めることができる。
【0126】
また、ペン先部の軌跡を出力する筆記軌跡モードではペン先部を回転中心としてペンが回転したとして検出した加速度を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン先部における加速度を求め、ペンの姿勢角を出力する姿勢入力モードではペン中央部を回転中心としてペンが回転したとして各加速度センサを用いて検出した加速度を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペンの中央部における加速度を求め、更に姿勢入力モードで回転中心とするペンの中央部にマークを設けたので、姿勢入力の中心点を使用者が容易に認識できる。
【0128】
さらに、ペン姿勢演算結果をホールドする指示又はリセットする指示或いは姿勢の算出の指示を入力するので、ペンの長手方向の向きと視線方向の対応を再設定できる。
【0129】
また、ペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて表示画面内の仮想空間における視線方向を変更する表示範囲の変更モード、ペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて表示画面内の仮想空間におけるカーソルを移動するモード又はペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて表示画面内の仮想空間における物体の表示角度を変更するモードのいずれか1つ以上のモードを有し、容易に仮想空間を操作できるようにする。
【0130】
さらに、視線モードにおいてペンの長手方向を視線方向とするので、操作勝手がよい。
【0131】
さらに、Zs軸方向の加速度変化を基に表示装置の画面の奥行き方向の表示範囲を規制するので、仮想空間での移動を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】姿勢入力装置における加速度センサ及びジャイロの配置図である。
【図2】各加速度ベクトルの関係を表わす説明図である。
【図3】姿勢入力装置の演算部の構成図である。
【図4】姿勢入力装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】他の姿勢入力装置の加速度センサ及びジャイロの配置図である。
【図6】ペン型入力装置における加速度センサ及びジャイロの配置図である。
【図7】ペン型入力装置の演算部の構成図である。
【図8】ペン型入力装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】ペン型入力装置の回転中心を示すマーク設けた場合の斜視図である。
【図10】他のペン姿勢演算部の構成図である。
【図11】視線モードにおける変化を示す斜視図である。
【図12】カーソルモードにおける変化を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 姿勢入力装置
2 加速度センサ
3 ジャイロ
4 演算部
42 初期姿勢角演算部
43 姿勢角演算部
44 重力方向ベクトル演算部
45 加速度方向ベクトル演算部
46 回転補正ベクトル演算部
47 姿勢角補正部
48 姿勢角出力部
5 ペン型入力装置
6 演算部
63 静止判別部
64 初期回転ベクトル演算部
65 傾斜加速度補正部
651 角加速度演算部
652 加速度補正部
66 ペン姿勢演算部
661 回転ベクトル演算部
67 ペン先軌跡演算部
671 座標変換演算部
672 重力加速度除去部
673 移動量演算部
68 検出結果切替部
Claims (16)
- 3個のジャイロと3個の加速度センサと演算部を有し、3個のジャイロはそれぞれ姿勢入力装置を基準とした互いに直交する3軸から成るセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、3個の加速度センサはそれぞれXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力し、演算部は姿勢角演算部と重力方向ベクトル演算部と加速度方向ベクトル演算部と回転補正ベクトル演算部と姿勢角補正部を備え、姿勢角演算部はジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)における姿勢入力装置の姿勢角を算出し、重力方向ベクトル演算部は姿勢角演算部が算出した姿勢入力装置の姿勢角を基に重力加速度の方向の単位ベクトルである重力方向ベクトルを算出し、加速度方向ベクトル演算部は加速度センサが出力した加速度を示す信号を基に加速度センサを用いて検出した加速度の方向の単位ベクトルである加速度方向ベクトルを算出し、回転補正ベクトル演算部は重力方向ベクトル演算部が算出した重力方向ベクトルと加速度方向ベクトル演算部が算出した加速度方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出し、姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正することを特徴とする姿勢入力装置。
- 上記姿勢角補正部は、サンプリング周期で2を割った値からサンプリング周期で30を割った値までの範囲内の予め定めた利得で、回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを縮小し、縮小した回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した姿勢角を補正する請求項1記載の姿勢入力装置。
- 上記姿勢角補正部は、回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルが予め定めたベクトルより大きい場合には姿勢角の回転補正ベクトルを縮小し、回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した姿勢角を補正する請求項1記載の姿勢入力装置。
- 上記姿勢角補正部は、加速度センサを用いて検出した加速度の大きさで回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを重み付けし、重み付けした後の回転補正ベクトルを用いて姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正する請求項1記載の姿勢入力装置。
- 上記姿勢角の変化を算出し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値を越える場合は今回サンプリングにより算出した姿勢角を出力し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値以下の場合は前回のサンプリングにより出力した姿勢角をそのまま出力する姿勢角出力部を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の姿勢入力装置。
- 上記各加速度センサの取付位置における傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサを用いて検出したセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正して傾斜運動中心部におけるセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を求める傾斜加速度補正部を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の姿勢入力装置。
- 3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を有し、
3個の加速度センサはそれぞれペン型入力装置の長手方向をZs軸としたセンサ座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力し、
3個のジャイロはそれぞれXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、
演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部を備え、
ペン姿勢演算部は姿勢角演算部と重力方向ベクトル演算部と加速度方向ベクトル演算部と回転補正ベクトル演算部と姿勢角補正部を備え、姿勢角演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の姿勢角を算出し、重力方向ベクトル演算部は姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を基に重力加速度の方向の単位ベクトルである重力方向ベクトルを算出し、加速度方向ベクトル演算部は加速度センサが出力した加速度を示す信号を基に加速度センサを用いて検出した加速度 の方向の単位ベクトルである加速度方向ベクトルを算出し、回転補正ベクトル演算部は重力方向ベクトル演算部が算出した重力方向ベクトルと加速度方向ベクトル演算部が算出した加速度方向ベクトルとを基に姿勢角の回転補正ベクトルを算出し、姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を補正し、
ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出し、
検出結果切替部は入力モードに応じて、ペン姿勢演算部が補正したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力することを特徴とするペン型入力装置。 - 上記姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルをサンプリング周期で2を割った値からサンプリング周期で 30 を割った値の範囲内の利得で縮小し、姿勢角演算部が算出した装置の姿勢角を補正する請求項7記載のペン型入力装置。
- 上記姿勢角補正部は回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルが予め定めたベクトルより大きい場合には姿勢角の回転補正ベクトルを縮小し、姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を補正する請求項7記載のペン型入力装置。
- 上記姿勢角補正部は、加速度センサを用いて検出した加速度の大きさで回転補正ベクトル演算部が算出した姿勢角の回転補正ベクトルを重み付けし、重み付けした姿勢角の回転補正ベクトルを基に姿勢角演算部が算出したペン軸の姿勢角を補正する請求項7記載のペン型入力装置。
- 上記姿勢角の変化を算出し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値を越える場合は今回のサンプリングの際に算出した姿勢角を出力し、算出した姿勢角の変化が予め定めた基準値以下の場合は前回のサンプリングにより出力した姿勢角をそのまま出力する姿勢角出力部を有する請求項7記載のペン型入力装置。
- 3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を有し、3個の加速度センサはそれぞれペン型入力装置の長手方向をZ s 軸としたセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向,Y s 軸方向及びZ s 軸方向の加速度を示す信号を出力し、3個のジャイロはそれぞれX s 軸周り,Y s 軸周り及びZ s 軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部を備え、ペン姿勢演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZ g 軸にした重力座標系(X g ,Y g ,Z g )におけるペン軸の姿勢角を算出し、ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出し、検出結果切替部は入力モードに応じて、ペン姿勢演算部が算出したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力し、上記各加速度センサの取付位置における傾斜運動による加速度成分を算出し、ペン先部の軌跡を出力する筆記軌跡モードではペン先部を回転中心としてペン型入力装置が回転したとして各加速度センサを用いて検出したセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )の加速度を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン先部におけるセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )の加速度を求め、ペン軸の姿勢角を出力する姿勢入力モードではペン中央部を回転中心としてペン軸が回転したとして各加速度センサを用いて検出したセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )の加速度を傾斜運動による加速度成分を用いて補正してペン中央部におけるセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )の加速度を求める傾斜加速度補正部を備えるペン型入力装置において、
上記姿勢入力モードで回転中心とするペン中央部にマークを設けたことを特徴とするペン型入力装置。 - 上記ペン姿勢演算部による演算結果をホールドする指示又はリセットする指示を入力する指示入力部或いはペン姿勢演算部に対する姿勢角の算出の指示を入力する指示入力部を備える請求項7乃至12のいずれかに記載のペン型入力装置。
- ペン型入力装置とコンピュータ装置と表示装置を有し、
ペン型入力装置は3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を備え、
3個の加速度センサはそれぞれペン型入力装置の長手方向をZ s 軸としたセンサ座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向,Y s 軸方向及びZ s 軸方向の加速度を示す信号を出力し、
3個のジャイロはそれぞれX s 軸周り,Y s 軸周り及びZ s 軸周りの回転角速度を示す信号を出力し、
演算部はペン姿勢演算部とペン先軌跡演算部と検出結果切替部とを備え、
ペン姿勢演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号を基に重力加速度方向に伸びる軸をZ g 軸にした重力座標系(X g ,Y g ,Z g )におけるペン軸の姿勢角を算出し、
ペン先軌跡演算部は3個のジャイロが出力した回転角速度を示す信号及び3個の加速度センサが出力した加速度を示す信号を基にペン先部の軌跡を算出し、
検出結果切替部は入力モードに応じて、ペン姿勢演算部が算出したペン軸の姿勢角又はペン先軌跡演算部が算出したペン先部の軌跡を出力し、
コンピュータ装置はペン型入力装置の出力結果を入力モードに応じて表示装置から表示するペン型システムであって、
コンピュータ装置はペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて、表示画面内の仮想空間における視線方向を変更する表示範囲の変更モード、ペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて、表示画面内の仮想空間におけるカーソルを移動するモード又はペン型入力装置の姿勢角検出結果の変化に基づいて、表示画面内の仮想空間における物体の表示角度を変更するモードのいずれか1つ以上のモードを有することを特徴とするペン型入力システム。 - 上記コンピュータ装置はペン型入力装置の姿勢角検出結果に基づいて視線方向を変更するモードにおいてペン型入力装置の長手方向を視線方向とする請求項14記載のペン型入力システム。
- 上記コンピュータ装置はZ s 軸方向の加速度変化を基に表示装置が表示する画面の奥行き方向の表示範囲を制御する請求項14又は15に記載のペン型入力システム。
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