JP3748361B2 - 電気素子内蔵型配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気素子内蔵型配線基板に関し、高周波特性に優れ、小型、高密度実装を可能にするために、電気素子を内蔵してなる低インダクタンスの電気素子内蔵型配線基板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の高性能化、小型化の要求に伴い、回路部品の高密度、高機能化に対応した配線基板が要求されている。このような配線基板としては、例えば、特開平11−220262号公報に開示されているようなものが知られている。
【0003】
この公報に開示された配線基板では、樹脂製の配線基板内部に、チップ状のコンデンサやインダクタから選ばれる少なくとも一つの電気素子を埋設して構成されており、半導体素子とはビアホール導体により電気的に接続されている。
【0004】
このような配線基板では、コンデンサ等の電気素子を半導体素子の近傍に配置し、電子回路の配線長を短くできるため、配線部のインダクタンスを低減することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年においては、半導体素子に関して、動作周波数のより高周波化が進むにつれて、電気素子自体のインダクタンスの低減のみならず、その配線部の低インダクタンス化が要求されるようになってきているが、上記特開平11−220262号公報では、電気素子を内蔵した配線基板のインピーダンスが大きくなり、効果的なノイズ除去が困難であった。
【0006】
即ち、上記特開平11−220262号公報では、半導体素子やチップ状の電気素子を配線基板に内蔵する構造についての記載はあるものの、配線基板のビアホール導体や電気回路を形成する導体層との関係、さらには、複数の電気素子に接続されたビアホール導体間の関係については記載されておらず、例えば、電気の流れる向きが同一方向のビアホール導体が近接した場合には、低周波では、ビアホール導体間における相互インダクタンスの影響は殆ど無いが、高周波になると、それらの影響が顕著となり配線部のインダクタンスが増加するという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、電気素子を内蔵した配線基板のインダクタンスを効果的に低減できる電気素子内蔵型配線基板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気素子内蔵型配線基板は、絶縁基板の内部に複数のチップ状の電気素子として静電容量の異なるコンデンサを内蔵した電気素子内蔵型配線基板において、前記複数の電気素子が、それぞれ第1外部電極および第2外部電極を具備するとともに、前記電気素子と前記絶縁基板表面との間の絶縁基板内部に、その厚み方向に所定間隔を置いて第1導体層および第2導体層を形成してなり、前記複数の電気素子の前記第1、第2外部電極を、前記第1、第2導体層にビアホール導体を介して電気的に接続するとともに、隣設する前記電気素子間における最も近接する一対のビアホール導体を、それぞれ異なる導体層に接続したものである。
【0009】
このような構成によれば、配線基板に、複数のチップ状の電気素子を内蔵することにより、高機能化した配線基板を提供できるとともに、隣設する電気素子間において、電気素子の外部電極に接続されたビアホール導体のうち、最も近接する一対のビアホール導体を、それぞれ異なる導体層に接続することにより、即ち、最も近接する一対のビアホール導体を流れる電流の向きを逆にすることにより、ビアホール導体を含む配線部の相互インダクタンスを低減することができる。
【0010】
例えば、電気素子としてコンデンサを用いた場合、複数のコンデンサを並列接続し、さらに、最も近接する一対のビアホール導体において、電流の向きを逆にすることにより、コンデンサならびに配線部のインダクタンスを低減することができる。
【0011】
上記電気素子内蔵型配線基板は、隣設する電気素子間において、最も近接する一対のビアホール導体の間隔が0.5mm以下の場合に好適に用いることができる。この場合、配線基板の小型、高密度化ができ、そのような形態においても、インダクタンスの低い配線基板を形成することができる。
【0012】
上記電気素子内蔵型配線基板では、電気素子が、電気素子本体の主面に導体を形成してなる外部電極を具備することが望ましい。このような構成を採用することにより配線基板内に形成したビアホール導体の一端を電気素子本体の主面に形成された導体に容易且つ強固に接合できる。
【0013】
上記電気素子内蔵型配線基板では、電気素子が、それぞれ複数の第1外部電極および複数の第2外部電極を具備することが望ましい。例えば、コンデンサの主面に複数の第1、第2外部電極を形成することにより、電気素子内を流れる電流を分散できることから、コンデンサの電磁界分布を均一化し、自己インダクタンスを低くすることができる。さらには、例えば、電気素子本体の表面に交互に異なる極性の外部電極を形成した場合には、さらに、電磁界分布が均等化され、自己インダクタンスを大きく低減することができる。
【0014】
上記電気素子内蔵型配線基板では、電気素子として、コンデンサを用いることにより、デカップリングコンデンサとして機能させることができ、配線基板に搭載した半導体素子が動作した際のスイッチングノイズを効果的に低減できる。
【0015】
上記電気素子内蔵型配線基板では、絶縁基板の内部に静電容量の異なるコンデンサを内蔵することが重要である。これは、異なる共振周波数を有する複数のコンデンサを、一体化した形態で機能させることができるために、低インピーダンスの領域を広域化でき、広い周波数の領域において、インダクタンスを低く抑えることができる。
【0016】
上記電気素子内蔵型配線基板では、絶縁基板として、熱硬化性樹脂からなる有機樹脂が望ましい。有機樹脂を用いることで、低温での熱処理が可能となり、電気素子の特性を変化させることなく、電気素子を容易に埋設して内蔵できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(配線基板の構造)
本発明の配線基板の一形態について、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。本発明の配線基板Aは、絶縁層1、3、5、7、9を5層積層して構成された絶縁基板11の両表面に表面導体層13a、13bを形成して構成されている。また、これらの絶縁層1、3、5、7、9には、その厚み方向にビアホール導体15が形成されている。
【0018】
絶縁基板11の上面の表面導体層13aには、例えば、半導体素子2がはんだバンプ4により接続されている。
【0019】
ビアホール導体15は、絶縁基板11の表面の表面導体層13a、13bと、絶縁基板11の内部の導体層17、19を電気的に接続したり、絶縁基板11の両表面の表面導体層13a、13bを電気的に接続している。
【0020】
絶縁層7には、2つのキャビティ21が形成されており、その内部には、それぞれコンデンサ素子からなる電気素子23が、相互に短絡しない程度の適当な間隔をおいて埋設され、キャビティ21の上下面の絶縁層5、9に樹脂接着剤24により接着されている。
【0021】
絶縁基板11中に内蔵されている電気素子23は、例えば、図2に示すように、複数の内部電極層25a、25bと複数の誘電体層26とを交互に積層してなる電気素子本体28と、該電気素子本体28の外周部にそれぞれ設けられた4個の第1外部電極27a、4個の第2外部電極27bとから構成されており、内部電極層25aは第1外部電極27aと、内部電極層25bは第2外部電極27bとそれぞれ電気的に接続されている。尚、外部電極27a、27bは電気素子本体28の外周に所定間隔を置いて交互に設けられている。
【0022】
尚、上記のように、外部電極27a、27bが電気素子23の端面から主面にかけて形成されている構造であれば、図3(a)に示すように、外部電極29を4つ形成した電気素子、図3(b)に示すように外部電極30を2つ形成した電気素子も用いることができる。
【0023】
そして、図1に示したように、電気素子23と半導体素子搭載面表面との間の絶縁基板11内部には、その厚み方向に所定間隔をおいて、即ち、絶縁層3を挟持するように、第1導体層17、および第2導体層19が形成されており、図4(a)に示すように、電気素子23aの23bと対向する端部には手前側から外部電極27a、27b、27aが形成されている。電気素子23aの外部電極27aはビアホール導体15aにより第1導体層17に接続され、外部電極27bは第2導体層19にビアホール導体15bにより接続されている。
【0024】
一方、隣設している電気素子23bの端部には手前側から電気素子23aの場合と同じく外部電極27a、27b、27aが形成され、外部電極27aはビアホール導体15bにより第2導体層19に接続され、外部電極27bは第1導体層17にビアホール導体15aにより接続されている。
【0025】
図4(b)に示しているように、電気素子の各外部電極に接続されたビアホール導体のうち、最も近接する一対のビアホール導体15a、15bは、それぞれ異なる導体層に接続されており、この場合には、最も近接するビアホール導体に流れる電流は対向した向きに流れる。一方、図4(c)に示しているように、各電気素子の外部電極に接続された最近接するビアホール導体15a、15bを、同じ第1導体層17に接続した場合には、電流は同じ方向へ流れる。
【0026】
そして、最も近接するビアホール導体15a、15bの間隔をLとした場合、この間隔Lは0.5mm以下とされている。なお、第1導体層17には、第2導体層19に接続するビアホール導体15bと接触しないように開口部39が形成されている。
【0027】
(絶縁層材料)
本発明の配線基板Aにおける絶縁基板11の材質としては、上記のような電気素子内蔵構造が形成可能であれば、いわゆる焼結体からなるセラミック系絶縁材料、または絶縁成分として、少なくとも有機樹脂を含有する有機系絶縁材料のいずれであってもよいが、予め形成された複数の電極を具備する電気素子23を基板内部に埋設した構造を形成する上では、焼成工程を必要としない有機樹脂を含有するもの、特に無機フィラーと有機樹脂からなる絶縁材料が望ましい。
【0028】
また、配線基板Aにおける絶縁基板11は、熱硬化性樹脂と無機フィラーとの複合体からなる絶縁層1、3、5、7、9によって構成されている。無機フィラーは、例えば、SiO2、Al2O3、BaTiO3の群から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0029】
無機フィラーとして、SiO2を用いた場合は絶縁層の比誘電率を小さくすることができる。また、無機フィラーとして、Al2O3を用いた場合には配線基板の熱伝導率を高めることができる。無機フィラーとして、BaTiO3を用いた場合には絶縁層の比誘電率を高めることができる。特に、電子機器の小型化、高性能化を目的として、高速伝送を行うためには、低誘電率のSiO2を用いることが望ましい。
【0030】
上記の絶縁層に含まれる熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル(APPE)系樹脂、エポキシ系樹脂およびシアネート系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。APPE樹脂は比誘電率が低く、誘電損失が低く、吸水率が低く、さらに、ガラス転移点が高いために、高耐熱性であることから、特に好ましい。さらに、混合物はフィラーとのぬれ性を改善するために、分散剤やカップリング剤を含んでもよい。
【0031】
(製法)
絶縁層形成用として、ポリフェニレンエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂と、SiO2、Al2O3などの不定形の無機質フィラーとの混合材料からなる未硬化状態の絶縁シートを作製する。
【0032】
そして、図5(a)、(b)、(c)、(e)に示すように、絶縁層1、3、5、9となる絶縁シート45、47、49、51にビアホール53を炭酸ガスレーザーやパンチングなどによって形成する。次に、図3(d)に示すように、上記絶縁層7となる絶縁シート55に対して、電気素子23を内蔵するキャビティ57、およびビアホール59を形成する。
【0033】
次に、図5(f)に示すように、絶縁層45、47、49、51、55のビアホール53、59に、Cu粉末を含有する導電性ペーストを充填して、ビアホール導体61を形成する。
【0034】
その後、この絶縁シート45、47、49、51の表面に、導体層63を形成する。これらの導体層63は、例えば、銅箔、Al箔などの金属箔を絶縁シート45、47、49、51の表面に転写した後、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト除去の工程によって、所定のパターンの導体層を形成する方法、または、あらかじめ、樹脂フィルムの表面に前記絶縁シートの表面に転写する方法がある。このうち、後者の方法は、絶縁シートがエッチング液などにさらされることがなく、絶縁シートが劣化することがない点で後者の方が好適である。
【0035】
そして、絶縁シート55のキャビティ57、ビアホール59内に電気素子23を設置し、電気素子23の両表面に球状の無機フィラーを含む樹脂接着剤24を塗布した後、この絶縁シート55の上下に、前記絶縁シート45、47、49、51を積層し、この積層物を前記絶縁シート中の熱硬化性樹脂が硬化する温度よりも、低い温度で予め予備加熱を行い、電気素子23に塗布した樹脂接着剤24を硬化することにより、内蔵した電気素子23と絶縁層の界面の接着を強固にし、後の硬化過程における基板の変形を抑えることができる。この後、熱硬化性樹脂が硬化する温度で加熱加圧して配線基板を硬化する。
【0036】
このように、無機フィラーと熱硬化性樹脂との混合材料からなる未硬化の絶縁シートにビアホール導体や配線回路層を形成した後、積層して配線基板を作製することから、高密度の配線基板を作製することができる。
【0037】
(作用)
以上のように構成された電気素子内蔵型配線基板には、電気素子23として、例えば、高周波化、低電圧化する半導体素子の電源補償回路部品となるコンデンサを用いることができる。さらに、小型、高容量でしかも低インダクタンスのセラミックコンデンサが好適に用いられる。
【0038】
また、電気素子内蔵型配線基板に複数のコンデンサを内蔵することもできる。例えば、並列に接続したコンデンサの特性は、コンデンサの数をnとした場合、静電容量はn倍に、一方、自己インダクタンスは1/n倍になる性質を示すことにより、低インダクタンスのデカップリングコンデンサを配線基板の内部に形成することができる。
【0039】
更に、静電容量の異なるコンデンサを内蔵した場合にも、コンデンサ同士を一体化した形態で機能させることができることから、静電容量の違いにより、共振周波数が異なることを利用して、共振周波数の領域、即ち、低インピーダンスの周波数領域を拡大できることから、電気素子内蔵型配線基板の低インダクタンス化を効果的に図ることができる。
【0040】
図4(a)、(b)に示したように、隣設する電気素子23a、23bにおいて、最も近接し、対を成しているビアホール導体15a、15bの間隔をLとした場合、この間隔Lが狭いほどビアホール導体を流れる電流による磁界が強くなる。そこで、電流の向きを逆方向にすることにより、磁界を相殺することができ、ビアホール導体に起因したインダクタンスを低減することができる。このため、最も近接する一対のビアホール導体の間隔を0.5mm以下として、小型、高密度化を図る場合に、特に、本発明の構造が効果的である。
【0041】
他方、図4(c)に示しているように、各電気素子の外部電極に接続された最近接するビアホール導体15a、15bを、同じ第1導体層17に接続した場合には、電流は同じ方向へ流れるため、ビアホール導体間の磁界が大きくなり相互インダクタンスが高くなるが、本発明では、最も近接する一対のビアホール導体をそれぞれ異なる導体層に接続したため、電流の向きが逆になり、インダクタンスを低減できる。
【0042】
さらに、電気素子内蔵型配線基板のインダクタンスを低減する方法としては、内蔵した電気素子23と半導体素子搭載面との間の絶縁層の厚みを薄くすることが効果的である。具体的には、基板表面から電気素子との間の距離を0.3mm以下とすることが望ましい。
【0043】
これらの絶縁層は、1層当りの厚みが、50〜150μm程度であって、電気素子内蔵型配線基板の電気設計において、インピーダンス整合を行う場合に任意に調整することも可能である。また、電気素子23を内蔵する絶縁層にあっては、電気素子などの大きさに応じて適宜所定の厚みに積層形成することができる。
【0044】
尚、本発明では、絶縁基板11内に電気素子23として、コンデンサを内蔵した例について説明したが、電気素子としてコンデンサ以外のインダクタ、LC部品等を内蔵してもよい。
【0045】
【実施例】
先ず、内蔵する電気素子として、例えば、セラミックコンデンサを次のように作製した。BaTiO3系の複数のセラミック誘電体シートの表面に、Niの金属ペーストを用いて図2(b)、(c)に示したような内部電極パターンをスクリーン印刷した。その後、それらのシートを温度55℃、圧力150kg/cm2下で積層密着させ、グリーンの状態でカッターを用いて切断した後、還元雰囲気1250℃の温度において焼成してコンデンサ素体を作製した。
【0046】
そして、このコンデンサ素体の表面に、Cu/Niのペーストを外部電極形成部に塗布して温度850℃で焼付け、図2(a)に示したようなセラミックコンデンサを作製した。なお、このコンデンサは、その寸法が1.6mm×1.6mm×0.3mm、静電容量が10nF、自己インダクタンスが80pHのものと同じサイズで、静電容量が5nF、自己インダクタンスが80pHのものであった。
【0047】
次に、図1に示すような電気素子内蔵型配線基板を、表1に示すように、コンデンサの外部電極個数、絶縁基板内に内蔵するコンデンサの個数、最も近接するビアホール導体間の間隔、そして、対向するビアホール導体を流れる電流の向きを変更して作製した。
【0048】
先ず、APPE樹脂に対し、不定形のシリカ粉末を所定量の割合となるように、ワニス状態の樹脂と粉末を混合し、ドクターブレード法により、厚さ120μmの絶縁シートを作製し、それらの絶縁シートに、炭酸ガスレーザーにより、ビアホール(直径0.1mm)を形成し、そのビアホールに、Cu粉末を含有する導電性ペーストを充填してビアホール導体を形成し、図1の絶縁層1、3、5、9となる絶縁シート45、47、49、51を作製した。
【0049】
次に、上記絶縁シート45、47、49、51と同等の試料厚の絶縁シート55に、炭酸ガスレーザーによるトレパン加工により、収納するコンデンサの大きさよりもわずかに大きいキャビティ用貫通孔と、同じく、炭酸ガスレーザーにより、ビアホール(直径0.1mm)を形成し、そのビアホールに、Cu粉末を含有する導電性ペーストを充填してビアホール導体を形成し、図1の絶縁層7となる絶縁シート55を作製した。
【0050】
次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる転写シートの表面に接着剤を塗布し、厚さ12μm、表面粗さ0.8μmの銅箔を一面に接着した。そして、ドライフィルムレジストを貼り、露光、現像を行った後、これを塩化第二鉄溶液を用いたスプレー式エッチング装置を用いて、非パターン部をエッチング除去して、銅箔からなる導体層を形成した転写シートを作製した。
【0051】
そして、ビアホール導体を含む絶縁シート45、47、49、51の表面に、転写シートの導体層側を130℃、20kg/cm2の条件で圧着した後、転写シートを剥がして、導体層を絶縁シート45、47、49、51に転写した。
【0052】
次に、キャビティ用貫通孔、およびビアホール導体を形成した絶縁シート55のキャビティ内に積層セラミックコンデンサを仮設置した。
【0053】
そして、コンデンサ素子の両表面に、球状シリカを含んだエポキシ系樹脂接着剤24を塗布した。その絶縁シート55の表面および裏面に、上記の工程を経て作製された導体層およびビアホール導体を有する絶縁シート45、47、49、51を仮積層した。
【0054】
そして、この積層物を真空ホットプレス装置内に置き、圧力10kg/cm2、昇温速度7℃/min.で加熱し、100℃に到達したところで、30分間の保持を行い、コンデンサ素子を絶縁層に固着した。その後、同じ昇温速度で、圧力40kg/cm2で、220℃まで昇温し、最高温度220℃で、1時間加熱して、完全硬化させて、絶縁層1、3、5、7、9の厚みが0.1mmと0.08mmの図1に示した電気素子内蔵配線基板を作製した。そして、作製した電気素子内蔵配線基板に対して、以下の検討を行った。
【0055】
インピーダンスアナライザを用いて、周波数1.0MHz〜1.8MHzにおいて、インピーダンスの周波数特性を測定し、同時に、1MHzでのコンデンサの静電容量を測定し、そして、f0=1/(2π(L/C)1/2)(式中、f0:共振周波数(Hz)、C:静電容量(F)、L:インダクタンス(H))に基づいて、共振周波数からインダクタンスを計算で求めた(L(室温))。また、インピーダンスが0.1Ω以下を示す周波数範囲(Δf)はインピーダンス特性曲線から読み取りで求めた。これらの結果を表1に記載した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から明らかなように、最も近接する一対のビアホール導体の電流の向きを対向させて形成した本発明の試料No.1、9、11では、電流の向きを同じ方向に形成した試料No.2、10、12に比較して、配線基板のインダクタンスを低減できた。また、1層あたりの絶縁層厚みを0.08mmに薄くして作製した試料No.13では、0.1mmで作製した試料(No.1)に比較して、さらにインダクタンスを低減することができた。
【0058】
また、静電容量が10nFと5nFのコンデンサを内蔵した試料No.3では、同じ静電容量のセラミックコンデンサを内蔵した場合(試料No.1)に比較して、例えば、0.1Ω以下のインピーダンスを示す周波数幅が92MHzとなり、インピーダンスの低い周波数幅を広げることができた。
【0059】
さらに、最も近接したビアホール導体の間隔を2mmから0.5mmまで狭くした場合(試料番号4、5、6)では、ビアホール導体の電流の向きを逆向きに形成することによってインダクタンスを低くできることがわかる。
【0060】
また、内蔵するコンデンサの数を4個と8個に増やした場合の試料番号7、8では、コンデンサの並列接続の効果により、更に、インダクタンスの低減を図ることができた。
【0061】
【発明の効果】
上述した通り、本発明によれば、隣設する電気素子の電極に接続されたビアホール導体のうち、最も近接するビアホール導体同士を、それぞれ異なる導体層に接続することにより、即ち、最も近接する一対のビアホール導体を流れる電流の向きを逆にすることにより、ビアホール導体を含む配線部の相互インダクタンスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気素子内蔵型配線基板の概略断面図である。
【図2】本発明で用いられる電気素子(コンデンサ素子)を説明するためのものであって、(a)は全体斜視図、(b)、(c)は内部電極のパターン図である。
【図3】本発明で用いられる電気素子(コンデンサ素子)を説明するためのものであって、(a)は4端子、(b)2端子の模式図である。
【図4】(a)は、本発明の電気素子内蔵型配線基板における電気素子の外部電極と、ビアホール導体の接続状況を示す斜視図であり、(b)は対向するビアホール導体の向きが逆の場合の模式図であり、(c)は電流の向きが同じ場合の模式図である。
【図5】本発明の電気素子内蔵型配線基板の工程図である。
【符号の説明】
A 電気素子内蔵型配線基板
1、3、5、7、9 絶縁層
11 絶縁基板
15、15a、15b ビアホール導体
17 第1導体層
19 第2導体層
23、23a、23b 電気素子
27a、27b、29、30 外部電極
Claims (6)
- 絶縁基板の内部に複数のチップ状の電気素子として静電容量の異なるコンデンサを内蔵した電気素子内蔵型配線基板において、前記複数の電気素子が、それぞれ第1外部電極および第2外部電極を具備するとともに、前記電気素子と前記絶縁基板表面との間の絶縁基板内部に、その厚み方向に所定間隔を置いて第1導体層および第2導体層を形成してなり、前記複数の電気素子の前記第1、第2外部電極を、前記第1、第2導体層にビアホール導体を介して電気的に接続するとともに、隣設する前記電気素子間における最も近接する一対のビアホール導体を、それぞれ異なる導体層に接続したことを特徴とする電気素子内蔵型配線基板。
- 隣設する電気素子間において、最も近接する一対のビアホール導体の間隔が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の電気素子内蔵型配線基板。
- 電気素子は、電気素子本体の主面に導体を形成してなる外部電極を具備することを特徴とする請求項1または2記載の電気素子内蔵型配線基板。
- 電気素子は、それぞれ複数の第1外部電極および複数の第2外部電極を具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の電気素子内蔵型配線基板。
- 絶縁基板は少なくとも有機樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の電気素子内蔵型配線基板。
- 電気素子と半導体素子搭載面との間の距離が0.3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載の電気素子内蔵型配線基板。
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