JP3747352B2 - 弁体及び弁座の摺合せ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安全弁、逃し弁等の弁体及び弁座を機械的に摺合せる装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
安全弁、逃し弁等は、その使用特性上、閉弁状態では僅かな漏洩も許されないのが一般的である。従って、これらの弁は、新規製作時、保全時或いは作動後において、弁体の平らな弁座面及び弁箱の平らな弁座面を高度に滑らかな平面に仕上げるため、摺合せが行われている。図5及び図6に、それぞれ弁体、弁箱において、従来より行われている摺合せの仕方の一例を示している。
【0003】
図5において、この例では、弁体31は略円柱形状であり、その一方の端面から突出してリング状の平面即ち弁座面31aが設けられ、少なくとも弁座面31aを含む突出部分がインコネル材で構成されている。該弁座面31aを摺合せるため、前記弁体31は、弁座面31aの設けられた端面を上側にして配置され、上方から摺合せ定盤32が被せられる。該摺合せ定盤32は、前記弁座面31aを覆うに十分な端面を具備する円筒形状であり、平面状に仕上げられた端面即ち摺合せ面32aを弁座面31aに対峙して配置される。
【0004】
図6において、弁箱の略中央部に円筒部41が形成され、円筒部41のリング状の平坦な端面が弁座面41aとして構成され、少なくとも弁座面41aを含む円筒端部がステライト材で構成されている。該弁座面41aを摺合せするため、弁箱の円筒部41は、弁座面41aの設けられた端面を上側にして配置され、上方から摺合せ定盤42が被せられる。該摺合せ定盤42は、前記弁座面41aを覆うに十分な平面を具備する円板形状であり、平面状に仕上げられた端面即ち摺合せ面42aを弁座面41aに対峙して配置される。尚、前記摺合せ定盤32、42は鋳鉄材で構成されている。
【0005】
このように配置された弁座面31aと摺合せ定盤32、或いは弁座面41aと摺合せ定盤42において、摺合せを行う場合は、弁座面31a、弁座面41aに摺合せ用コンパウンドを均一にまぶし、摺合せ定盤32、42を人手により保持すると共に、所定の面圧で押し付けながら、人力又はエアモータ等の機械駆動力により回転させる。摺合せ用コンパウンドについては、#400から#2000までの粒度のものを、摺合せの仕上り程度に合せて適宜変更して使用する。
【0006】
即ち、硬度の高い弁座面31a、弁座面41aに対し、硬度の低い材料で構成される摺合せ定盤32、42を、固い粒子である摺合せ用コンパウンドを介して回転(相対運動)させることにより、摺合せ定盤32、42を摩耗させながら弁座面31a、弁座面41aを微小量づつ削りとり、滑らかな平面に仕上げている。また、摺合せ用コンパウンドの代りとして、フィルムの一面に砥粒をコーティングしたペーパを摺合せ定盤32、42の摺合せ面に張り付けることも行われている。図5では、摺合せ定盤32の上側端面或いはその近傍を人手によって手回しする。図6では、摺合せ定盤42を継手43を介してハンドル44により手回しする、或いは継手43を図示しないエアモータにより回転する。
【0007】
摺合せ作業に際し、摺合せ定盤32、42が弁座面31a、弁座面41aに対して常時一定の位置で回転する(同一箇所が接触する)と、摺合せ定盤32、42の接触箇所は直ちに摩耗して平面度が損なわれる。また、摺合せ用コンパウンドは余剰分が摺合せ面の内外の境界部に集積する傾向があり、摺合せ用コンパウンドの不均一な分布により、摺合せ定盤32が不均一に摩耗し、弁座面31a、弁座面41aの滑らかで平坦な平面仕上げができなくなる。従って、摺合せ定盤32、42の摺合せ面の広範囲が均等に摩耗すると共に、摺合せ用コンパウンドの不均一分布が発生しないように、摺合せ定盤32は、単純な一定位置において回転されるのではなく、半径方向の変動(揺動)を加えながら回転されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の弁体の平面弁座面及び弁箱の平面弁座面の摺合せは以上のように行われていたので、次ぎのような課題が存在している。即ち、摺合せ定盤32、42の手回し、或いはエアモータによる回転を問わず、摺合せ作業が、作業者の視覚或いは勘に依存して実施されている。作業者は、弁座面31a又は弁座面41aの仕上り状態、コンパウンドの適合性を身体で読取りながら作業している。作業中に加える左右の手の力は均等ではないが、摺合せ定盤32、42を均一で常時同等な面圧を維持しながら回転する必要がある。面圧が高くなると焼付きを起こして摺合せ面に筋状の傷が発生し、低くなると滑らかな面に仕上がらない。
【0009】
また、摺合せ定盤32、42の摺合せ面32a、42aを均等に摩耗させ、弁座面31a、弁座面41aを滑らかな平面に仕上げるために、摺合せ定盤32、42を揺動を加えながら回転する。弁の口径即ち摺合せ面の大きさが異なると、摺合せ定盤32、42の変更と共に揺動量を変化させる。更には、摺合せ定盤32、42の摺合せ面32a、42aは、コンパウンド溜めとなる微小な窪みを全面に加工する当たり取りという作業、摺合せ作業中に摩耗して損なわれる平面度の修正作業が必要である。
【0010】
従って、弁体及び弁座の摺合せ作業は、長年にわたる経験を持つ作業者の仕事であり、経験の少ない、或いは未経験の作業者では、要求される仕上り程度を達成できない。しかし、経験者と雖も、それぞれに個人差があり、仕上り程度が異なり、作業時間に長短が発生する。また、人手による作業であり、その他の類似の作業と比較して、相対的に長時間の作業となる。それゆえ、原子力機器に設置された弁の摺合せ作業の場合、長時間の機器或いは弁への密着作業により、放射線の被爆量が増大する可能性がある。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、長年の経験を必要とせず、仕上り程度に個人差が発生せず、作業時間を短縮する弁体の平面弁座面及び弁箱の平面弁座面の摺合せを行う装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上のような目的を達成するするために、本発明による弁体及び弁座の摺合せる装置は以下のように構成されている。即ち、保持リングと、該保持リングの内部に相対回転を固定して挿入された減速用遊星歯車装置と、該減速用遊星歯車装置の入力側に一端を連結されると共に他端を駆動装置に連結される1次回転軸及び出力側に一端を連結されると共に他端を摺合せ定盤に連結される2次回転軸とを備えると共に、偏芯円筒形状の揺動ブッシュを前記保持リングと前記減速用遊星歯車装置との間に回転可能に挿入して設け、揺動用遊星歯車装置を前記減速用遊星歯車装置の出力側に設け、前記2次回転軸を前記揺動用遊星歯車装置の太陽歯車の軸芯に貫通して回転固定させ、前記揺動用遊星歯車装置の星歯車の保持器を前記減速用遊星歯車装置に連結固定し、前記揺動用遊星歯車装置の内歯車を前記揺動ブッシュのフランジ部に連結固定したことにより、回転と共に揺動を可能にしている。
【0013】
更に詳細には、前記保持リングと前記揺動ブッシュとの間又は前記減速用遊星歯車装置と前記揺動ブッシュとの間に、偏芯円筒形状の揺動量調整ブッシュを相対回転可能に、且つ前記揺動ブッシュとの相対回転を固定可能に挿入して設けたことにより、揺動量の変更を可能にしている。
【0014】
更に詳細には、前記2次回転軸の先端に固着されて前記摺合せ定盤に連結される自在継手を含み、この自在継手に、前記摺合せ定盤に形成された凹のR面に対面する凸のR面を形成すると共に、該自在継手の凸のR面の曲率半径を前記摺合せ定盤の凹のR面の曲率半径よりも小さく形成していることにより、摺合せ面の均一な摺合せを可能にしている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による弁体及び弁座の摺合せる装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明による弁体及び弁座の摺合せ装置の断面図、図2は本発明による摺合せ装置と摺合せ定盤との連結部を示す部分断面図、図3は図1のIII−III線に沿った断面図である。
【0016】
図において、摺合せ装置100は、概略的には、減速用遊星歯車装置16を介して連結される1次回転軸15及び2次回転軸18が、円筒形状の保持リング4内に貫通して直線状に配置され、保持リング4と減速用遊星歯車装置16との間には、偏芯円筒形状であると共に相対回転可能な内側の揺動ブッシュ7及び外側の揺動量調整ブッシュ6が、揺動用遊星歯車装置9を介して2次回転軸18と連結されて構成されている。
【0017】
詳細には、減速用遊星歯車装置16は、略円筒形状のギヤケースブッシュ21内に内挿固定され、ギヤケースブッシュ21は前記揺動ブッシュ7に、相対回転可能に内挿されている。該ギヤケースブッシュ21の一方の開口端にはフランジ21aが設けられ、減速用遊星歯車装置16の軸芯と回転軸を一致させたエアモータ14が固着されている。該エアモータ14の出力軸が前記1次回転軸15の一端に連結され、1次回転軸15の他端が減速用遊星歯車装置16の一端(入力端)に連結されている。減速用遊星歯車装置16の他端(出力端)には前記2次回転軸18の一端が連結されている。
【0018】
尚、前記ギヤケースブッシュ21は、本発明に必須の構成要素ではなく、減速用遊星歯車装置16を直接揺動ブッシュ7に挿入し、フランジ21aを変形して減速用遊星歯車装置16の入力側端面部に固着する構成としてもよい。その場合には、後述する保持器9dを拘束し回転を止めておけば、ギヤケースブッシュ21の外周で揺動ブッシュ7が回転し、ギヤケースブッシュ21はアーム22,24で固定されるため回転しない。また、遊星気車装置16の外周部即ち内歯車も回転しない。更に、揺動ブッシュ6,7を一体部品と置き換えても揺動量は変えられないが好適に動作する。
【0019】
前記揺動用遊星歯車装置9は、減速用遊星歯車装置16と中心軸線を直線状に一致させて配置されている。前記2次回転軸18は、揺動用遊星歯車装置9の太陽歯車9aの軸芯を貫通すると共に、スプライン機構等により、太陽歯車9aと回転固定されている。揺動用遊星歯車装置9の星歯車9bを保持する保持器9dの入力側端面部が、ギヤケースブッシュ21の他方の開口端、即ち減速用遊星歯車装置16の出力側端面部に連結固定されている。
【0020】
揺動用遊星歯車装置9の太陽歯車9aの外周に星歯車9bを介して噛み合う内歯車9cが、揺動用遊星歯車装置9の出力側端面部を覆うカバー10と共に、前記揺動ブッシュ7に形成されたフランジ部7aに、カバー締付けボルト19により連結固定されている。前記2次回転軸18は、前記カバー10の軸芯に設けられた軸受12に回転支持され、他端をカバー10の外部へ突出させている。尚、前記カバー10及び軸受12は、本発明に必須の構成要素ではなく、前記内歯車9cのみが、前記揺動ブッシュ7に形成されたフランジ部7aに連結固定されてもよい。
【0021】
前記揺動ブッシュ7及び前記揺動量調整ブッシュ6には、両構成要素の相対回転位置を適宜に固定するキー1のためのキー溝7a、6aが相対する外周及び内周に形成されている。前記保持リング4には、外部にアーム24が固着され、アーム24には、更に、ストッパー23が固着されている。前記ギヤケースブッシュ21のフランジ21aには、貫通孔22aを形成された回り止め22が固着されている。該回り止め22の貫通孔22aには、前記ストッパー23が挿入されている。尚、該貫通孔22aは、前記ストッパー23の外径に対し、余裕を持たせて大きく形成されている。
【0022】
前記2次回転軸18の他端即ち外部に突出した先端部には、自在継手20が固着されている。該自在継手20は、前記2次回転軸18と軸芯を一致させて、先端部に円柱形状のボス部20aを、その手前側に外周がボス部20aより大きい角柱形状の伝達部20cを、そしてボス部20aと伝達部20cとの間に凸のR面20bをそれぞれ形成されている。他方、円盤形状或いは円筒形状の摺合せ定盤25には、その軸芯に、前記自在継手20のボス部20a、凸のR面20b及び伝達部20cにそれぞれ対応する円形の穴部25a、凹のR面25b及び角形の被伝達部25cが、前記自在継手20を多少の余裕をもって挿入可能に形成されている。尚、該摺合せ定盤25の凹のR面25bの曲率半径は、前記自在継手20の凸のR面20bの曲率半径よりも大きく形成されている。
【0023】
以上記述したように構成される摺合せ装置100において、揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6が偏芯位置に設定された状態における、その動作を以下に説明する。エアモータ14が、図示しない空気源から圧力空気を供給さて回転すると、1次回転軸15が回転駆動される。1次回転軸15の回転は、減速用遊星歯車装置16により減速されて2次回転軸18に伝達され、2次回転軸18が回転駆動される。2次回転軸18の回転により、自在継手20が回転し、自在継手20の先端部を挿入された摺合せ定盤25が回転駆動される。
【0024】
2次回転軸18は、また、揺動用遊星歯車装置9の太陽歯車9aを回転駆動し、星歯車9bを介して内歯車9cを減速して回転駆動する。太陽歯車9aは星歯車9bを介して内歯車9cと噛み合っているが、星歯車9bを保持する保持器9dがギヤケースブッシュ21に連結固定されていることにより、太陽歯車9aの回転により内歯車9cが回転駆動される。即ち、揺動用遊星歯車装置9の内歯車9c及びこれに連なる揺動ブッシュ7、揺動量調整ブッシュ6及びカバー10が、揺動用遊星歯車装置9の保持器9d及びこれに連なるギヤケースブッシュ21に対し、軸受12を介して相対的に回転する。
【0025】
他方、ギヤケースブッシュ21は、フランジ21a、回り止め22、ストッパー23及びアーム24を介して保持リング4と連結され、ギヤケースブッシュ21と保持リング4とは、相対的に回転することができない。従って、揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6が、保持リング4の内周とギヤケースブッシュ21の外周との間で相対的に回転する。揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6は、外周と内周とが偏芯していることにより、周方向に厚みが連続的に変化している。
【0026】
その結果、揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6が相対的に回転すると、保持リング4とギヤケースブッシュ21との半径方向の間隔が連続的に変化し、ギヤケースブッシュ21の軸芯が、保持リング4の軸芯の回りに、揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6の偏芯量を直径とする円運動をする。揺動用遊星歯車装置9及びその軸芯に挿入されている2次回転軸18についても、保持器9dがギヤケースブッシュ21に一体的に固着されていることにより、同様に、円運動する。即ち、2次回転軸18の先端部は、エアモータ14の回転を減速用遊星歯車装置16により減速されて伝達されると共に、保持リング4に対して、その軸芯の回りを旋回する更に減速された回転を行う。
【0027】
2次回転軸18の先端部に固着された自在継手20は、摺合せ定盤25の軸芯に形成された穴部25a、凹のR面25b及び被伝達部25cにより構成される連結部へ挿入されて、摺合せ定盤25と連結されている。自在継手20のボス部20aが摺合せ定盤25の穴部25aへ挿入されることにより、摺合せ装置100の押付け圧力が摺合せ定盤25の中心に掛るように誘導される。自在継手20の凸のR面20bが摺合せ定盤25の凹のR面25bと接触することにより、摺合せ装置100の軸芯と摺合せ定盤25の軸芯との直線度が多少ずれ、摺合せ定盤25が摺合せ面に沿って傾斜して配置される場合でも、摺合せ定盤25の全周に均一な押付け力を加えることができる。自在継手20の伝達部20cが摺合せ定盤25の被伝達部25cへ挿入されることにより、2次回転軸18の回転駆動力が摺合せ定盤25へ伝達される。
【0028】
図3において、ギヤケースブッシュ21、揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6は、ギヤケースブッシュ21の軸芯C21と揺動ブッシュ7の外周に対する軸芯C7とが偏芯量sを、揺動ブッシュ7の軸芯C7と揺動量調整ブッシュ6の外周に対する軸芯C6とが偏芯量sを持って構成されている。揺動量調整ブッシュ6の内周には、最大肉厚部、その両側45度及び90度、即ち、最大肉厚部を中心とする内周180度を四当分する合計5箇所の位置に、キー溝6a1、6a2、6a3、6a4、6a5が形成されている。最大肉厚部の位置を揺動量調整ブッシュ6のそれと一致させて内挿された揺動ブッシュ7の外周には、揺動量調整ブッシュ6の一端(図3では下側)のキー溝6a5の位置に、1箇所のキー溝7bが形成されている。
【0029】
図3の位置、即ち、揺動ブッシュ7のキー溝7bを揺動量調整ブッシュ6のキー溝6a5の位置に合せてキー1により固定された場合、ギヤケースブッシュ21の軸芯C21に対する揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6の偏芯量は最大の2sとなる。摺合せ装置100では、保持リング4の位置を固定して揺動ブッシュ7及び揺動量調整ブッシュ6が回転するので揺動量調整ブッシュ6の軸芯C6の位置が固定され、逆に、ギヤケースブッシュ21の軸芯C21が、半径2sの円を描いて揺動量調整ブッシュ6の軸芯C6の周りを回る。
【0030】
揺動量調整ブッシュ6と揺動ブッシュ7とを相対移動(回転)すると、揺動量調整ブッシュ6の軸芯C6が揺動ブッシュ7の軸芯C7の周りを半径sの円を描いて回る。その結果、揺動量調整ブッシュ6の軸芯C6とギヤケースブッシュ21の軸芯C21との距離(偏芯量)が変化し、ギヤケースブッシュ21の軸芯C21の回転半径が変化する。
【0031】
図3に示される位置から揺動ブッシュ7又は揺動量調整ブッシュ6を180度回転し、揺動ブッシュ7のキー溝7bを揺動量調整ブッシュ6のキー溝6a1の位置に合せると、揺動量調整ブッシュ6の軸芯C6とギヤケースブッシュ21の軸芯C21とが重なり、偏芯量が0(零)となる。従って、揺動ブッシュ7のキー溝7bを揺動量調整ブッシュ6の5箇所のキー溝6aの何れかに合せることにより、段階的に設定された任意の偏芯量を選定することができる。
【0032】
尚、揺動量調整ブッシュ6に形成されるキー溝6aは、等角度間隔に配置された5箇所に限定されるものではなく、任意の間隔で任意の数の箇所に形成してもよい。また、例えば、揺動ブッシュ7の外周又は揺動量調整ブッシュ6の内周の一方の周に1箇所のキー溝を形成し、他方の周に沿って目盛を付け、揺動ブッシュ7と揺動量調整ブッシュ6との任意の相対回転位置でキー溝にキー1を押し込んで固定することにより、最大値以下の任意の偏芯量を連続的に選定することができる。
【0033】
図示の実施形態では、揺動ブッシュ7の外側に揺動量調整ブッシュ6が配置されているが、揺動ブッシュ7の内側に揺動量調整ブッシュ6が配置されても同様の作用を発揮することが可能である。また、揺動ブッシュ7と揺動量調整ブッシュ6とが相対回転することにより偏芯量を選択的に変化させることが可能なように構成されているが、揺動ブッシュ7と揺動量調整ブッシュ6とを一体化し、一定の偏芯量としてもよい。
【0034】
以上の摺合せ装置100は、図4に簡略に示すように、圧力調整弁51、電磁弁52、ボール弁53、タイマ54、電源スイッチ55等を具備するコントローラ50により作動され、このコントローラ50によって、摺合せに必要な摺合せ定盤の回転速度、摺合せ時間が制御される。電源スイッチもしくは起動スイッチ55を投入することにより、摺合せ作業が行われ、タイマ54がタイムアップすると自動的に停止する。圧力調整弁51、ボール弁53により、エアモータ14へ供給される圧力空気の供給量及び圧力が所定値に制御され、その結果回転数が定常に維持され、定常状態の安定した摺合せ作業が行われる。電磁弁52及びタイマ53により、エアモータ14へ供給される圧力空気を供給遮断すると共に、供給時間が設定され、作業量を定量化されることにより摺合せの仕上り状態を把握することが可能になる。
【0035】
【発明の効果】
本発明による弁体及び弁座の摺合せ装置は以上のように構成されていることにより、以下のような効果を得ることができる。即ち、摺合せ装置において、機械的に定常な回転及び揺動を可能にしたことにより、摺合せ定盤を、常時、均一に回転させると共に揺動させることが可能になった。その結果、摺合せ定盤の摺合せ面を均等に摩耗させ、弁座面、弁座面を滑らかな平面に容易に仕上げることが可能になり、摺合せ定盤の摺合せ面の修正作業が大幅に減少した。
【0036】
また、揺動ブッシュ及び揺動量調整ブッシュにおいて、揺動量の変更を可能にしたことにより、揺動量の変更及び設定を容易に行うことが可能となり、常時、均一な摺合せ作業が行われる。
【0037】
また、自在継手を用いた場合には、摺合せ定盤32のほぼ中心部が押されるため、摺合せ面の均一な摺合せを可能になり、摺合せ定盤32の全摺合せ面において均一で常時同等な面圧を維持しながら回転することを容易に可能にする。
【0038】
以上のことから、弁体及び弁座の摺合せ作業は、作業の機械化に伴って、作業者の経験の多少にほぼ無関係に、同様な仕上り程度を個人差なく達成できるようになり、個人差のない短縮された時間内に終了できるようになる。従って、原子力機器に設置された弁の摺合せ作業の場合、放射線の被爆量を減少させ、作業者の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による弁体及び弁座の摺合せ装置を示す断面図である。
【図2】 本発明による弁体及び弁座の摺合せ装置と摺合せ定盤との連結部を示す部分断面図である。
【図3】 図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】 本発明による摺合せ装置を制御するためのコントローラを概略的に示す平面図である。
【図5】 従来より行われている弁体の摺合せの仕方を示す状態図である。
【図6】 従来より行われている弁箱の摺合せの仕方を示す状態図である。
【符号の説明】
1…キー、4…保持リング、6…揺動量調整ブッシュ、7…揺動ブッシュ、7a…揺動ブッシュのフランジ部、9…揺動用遊星歯車装置、9a…揺動用遊星歯車装置の太陽歯車、9b…揺動用遊星歯車装置の星歯車、9c…揺動用遊星歯車装置の内歯車、9d…揺動用遊星歯車装置の保持器、14…エアモータ(駆動装置)、15…1次回転軸、16…減速用遊星歯車装置、18…2次回転軸、20…自在継手、20b…自在継手の凸のR面、21…ギヤケースブッシュ、22…回り止め、25…摺合せ定盤、25b…摺合せ定盤の凹のR面、100…摺合せ装置。
Claims (3)
- 保持リング(4)と、該保持リング(4)の内側に相対回転を固定して挿入された減速用遊星歯車装置(16)と、該減速用遊星歯車装置(16)の入力側に一端を連結されると共に他端を駆動装置(14)に連結される1次回転軸(15)と、前記減速用遊星歯車装置(16)の出力側に一端を連結されると共に他端を摺合せ定盤(25)に連結される2次回転軸(18)とを備えると共に、偏芯円筒形状の揺動ブッシュ(7)を前記保持リング(4)と前記減速用遊星歯車装置(16)との間に回転可能に挿入して設け、揺動用遊星歯車装置(9)を前記減速用遊星歯車装置(16)の出力側に設け、前記2次回転軸(18)を前記揺動用遊星歯車装置(9)の太陽歯車(9a)の軸芯に貫通して回転固定させ、前記揺動用遊星歯車装置(9)の星歯車(9b)の保持器(9d)を前記減速用遊星歯車装置(16)に連結固定し、前記揺動用遊星歯車装置(9)の内歯車(9c)を前記揺動ブッシュ(7)のフランジ部(7a)に連結固定した弁体及び弁座の摺合せ装置。
- 前記保持リング(4)と前記揺動ブッシュ(7)との間又は前記減速用遊星歯車装置(16)と前記揺動ブッシュ(7)との間に、偏芯円筒形状の揺動量調整ブッシュ(6)を相対回転可能に、且つ前記揺動ブッシュ(7)との相対回転を固定可能に挿入して設けた請求項1に記載の摺合せ装置。
- 前記2次回転軸(18)の先端に固着されて前記摺合せ定盤(25)に連結される自在継手(20)を含み、該自在継手(20)には、前記摺合せ定盤(25)に形成された凹のR面(25b)に対峙する凸のR面(20b)を形成すると共に、該凸のR面(20b)の曲率半径を前記凹のR面(25b)の曲率半径よりも小さく形成している請求項1又は2に記載の摺合せ装置。
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