JP3747210B2 - 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、液晶表示装置および画像表示装置 - Google Patents

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、液晶表示装置および画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、位相差の制御性に優れ、液晶表示装置の視野角やコントラストの改善に好適な光学フィルムおよびその製造方法、並びに該光学フィルムを備えた液晶表示装置に関する。
従来、各種液晶表示装置には、画像着色を解消したり又は視野角を拡大するために、位相差フィルムが使用されている。この位相差フィルムは、一般的に、一軸延伸や二軸延伸等の延伸工程によって面内の位相差を制御して作製されるものである。
また、該位相差フィルムを偏向膜と積層して光学フィルムを構成する場合、偏向膜の透過軸と位相差フィルムの遅相軸とは平行となるように配置する必要があるところ、該偏向膜は、帯状のシートを長手方向に延伸することによって透過軸が幅方向に形成されたものが一般的であるため、このような偏光膜と位相差フィルムとを連続的に貼り合わせようとすれば、位相差フィルムには幅方向の遅相軸を形成しておくことが好ましい。
しかし、複屈折層となるフィルムを幅方向に延伸して作製した位相差フィルムには、面内の配向軸が幅方向によって異なるという、所謂ボーイング現象が起こりやすく、幅方向に均一な配向軸を有する位相差フィルムを作製することは困難であった。
そこで、フィルムを幅方向に延伸して位相差フィルムを作製する場合、フィルムを一旦幅方向に延伸した後、さらに該フィルムの幅を元に戻すという緩和操作により、幅方向の遅相軸の均一性を向上させるという方法も行われている。しかし、この方法では、フィルムの物性値のバラツキ等の影響を受けたり、また緩和の効果が小さいフィルムがあるため、安定的に生産する事は難しい。また延伸ゾーンの直後に冷却ゾーンを設ける事によってボーイング現象を抑制する試みがなされているが(非特許文献1)、ボーイング現象の抑制は不十分であった。
T.Yamadaら,Intn. Polym. Process., Vol.X, Issue 4, 334-340 (1995)
一方、テンター延伸機のチャック間でフィルムを弛ませ、熱収縮させて位相差フィルムを作製する方法が報告されているが(特許文献1)、フィルムが熱収縮性のものに限定されたり、フィルムが厚すぎると弛ませた時にシワが入ってしまい、安定的にフィルムを弛ませる事が難しいという問題があった。
特開平6−51116号公報
また、延伸フィルムの幅を延伸倍率の平方根となるように送り込む方法(特許文献2)や、縦延伸において収縮する幅を規定したもの(特許文献3)、一旦延伸した後に熱緩和させるものがあるが(特許文献4)、上述のようにフィルムの幅方向に配向させたい場合は適用困難であり、安定生産性が困難であった。
特開平3−23405号公報 特開平2−191904号公報 特開平5−249316号公報
このように、例えば幅方向に屈折率のバラツキが少ない二軸配向性の光学フィルムを得ることは非常に困難であることに鑑み、本発明は、所定の軸方向において屈折率のバラツキの少ない(即ち、配向角分布の小さい)二軸配向性の光学フィルムを容易に製造し得る光学フィルムの製造方法を提供することを一の課題とする。
また、本発明は、配向角分布の小さい二軸配向性の光学フィルムを提供すること、さらに該光学フィルムを備えた液晶表示装置および画像表示装置を提供することを他の課題とする。
前記課題を解決すべく、本発明の光学フィルムの製造方法は、複屈折層を備えてなる光学フィルムの製造方法であって、基材に成膜材料を塗工して塗膜を形成し、該基材のガラス転移温度±20℃の温度に保ちつつ該基材に張力をかけて延伸し、該基材の延伸を介して前記塗膜をも延伸させた後、さらに該基材を同一方向に収縮させ、該基材の収縮を介して前記塗膜を緩和させて二軸配向性の複屈折層を形成することを特徴とする。
このように、複屈折層となる成膜材料の塗膜を直接延伸せず、ガラス転移温度±20℃の温度に保たれた基材を延伸することによって該基材に塗布された塗膜を間接的に延伸させて複屈折層を形成することにより、複屈折層の厚み分布や弾性率分布等による影響を最小限に抑え、該延伸方向において配向角分布の小さい光学フィルムを容易に製造することができる。
また、該基材を同一方向に収縮させ、該基材の収縮を介して前記塗膜を緩和させることにより、緩和される方向における配向角分布をより均一なものとすることができ、しかも、複屈折層の成膜材料が熱収縮性のものでない場合にも、このような配向角分布の更なる均一化を図りつつ光学フィルムを製造することが可能となる。
前記複屈折層の緩和率は0.9以上1.0未満が好ましく、且つ総延伸倍率は1.0より大きいことが好ましい。尚、ここでいう総延伸倍率とは、延伸倍率と緩和率との積を意味する。
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、前記基材が帯状であり、該基材の延伸方向が該基材の幅方向であることを特徴とする。上述のような延伸操作を基材の幅方向に施すことにより、幅方向に配向角分布が均一な光学フィルムを得ることができる。該光学フィルムは、例えば、透過軸が幅方向に形成された一般的な偏向膜とのロールの長軸同士を貼り合わせる、いわゆるロールトゥーロールの貼り合わせに好適となる。
さらに、本発明に係る光学フィルムは、上記何れかの光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明に係る光学フィルムは、上述したように、複屈折層が塗膜を直接延伸して得られたものでなく、ガラス転移温度±20℃の温度に保たれた基材を延伸することによって該基材に塗布された塗膜を間接的に延伸させて形成されたものであるため、複屈折層の厚み分布や弾性率分布等による影響が最小限に抑えられ、延伸方向において配向角分布の小さい光学フィルムとなる。
また、本発明に係る液晶表示装置は、このような光学フィルムを備えてなることを特徴とする。さらに、本発明に係る画像表示装置は、このような光学フィルムを備えてなることを特徴とする。
以上のように、本発明の光学フィルムの製造方法によれば、複屈折層の延伸方向の厚み分布や弾性率分布等による悪影響を抑え、延伸方向に配向角分布が均一な二軸配向性の光学フィルムを容易に製造することが可能となる。
また、本発明の光学フィルムは、延伸方向に配向角分布が均一なものとなる。さらに、本発明の液晶表示装置および画像表示装置は、前記本発明の光学フィルムを備えたものであるため、透過光の屈折率が正確に制御された高性能のものであり、しかも、製造が容易なものとなる。
以下、本発明に係る光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明は、光学フィルムを製造する方法であり、特にnx>ny>nzの複屈折層を有する二軸配向性の光学フィルムを製造する方法である。本明細書においては、nx、ny及びnzはそれぞれ、x方向、y方向及びz方向の3方向の主屈折率であり、x方向は複屈折率層の面内において最大の屈折率を示す方向である、y方向は面内においてx方向と直交する方向であり、z方向はフィルムの厚み方向とする。
本発明において、基材は、少なくとも1以上のポリマーフィルムを備えたものが好ましく、1層又は2層以上であってもよい。2層以上とする場合、例えば、1層目をポリマーフィルムとし、2層目以上としてポリマーフィルムやポリマー溶液を塗布し乾燥したものなどを使用することができる。
該ポリマーフィルムとしては、特に限定されるわけではないが、透明で光学的等方性を有するポリマーフィルム等が好ましい。また、光学的に異方性な基材であっても、補償板としての用途に応じたものであれば使用することができる。斯かるポリマーフィルムの例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフイン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルフアイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系ポリマース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノルボルネン系樹脂、イソブテン/N−メチルマレイミド共重合体とスチレン/アクリルニトリル共重合体の混合物等のフィルムを挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロース系ポリマー、ノルボルネン系樹脂、イソブテン/N−メチルマレイミド共重合体とスチレン/アクリルニトリル共重合体の混合物等が特に好ましい。また、これらのポリマーフィルムに、親水化処理や疎水化処理、基材の溶解性を低減する処理等の表面処理を施したものを用いることもできる。
前記ポリマーフィルムの厚みは、通常10μm以上200μm以下とすることができ、好ましくは20μm以上150μm以下、特に好ましくは30μm以上100μm以下である。10μmより薄い場合はフィルムの強度が弱いために延伸あるいは収縮させた場合に延伸むらが生じるおそれがあるため好ましくない。200μm以上の場合は延伸において必要な張力が大きくなりすぎ工業生産には適さないおそれがあるため好ましくない。
複屈折層の成膜材料としては、例えば、非液晶性材料、特に非液晶性ポリマーを好適に使用できる。非液晶性材料は、液晶性材料とは異なり、塗布される基材の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成するものである。このため、前記基材としては、未配向性のものであってもその表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を必要としない。
前記非液晶性ポリマーとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC110アルキル基で置換されたフェニル基、およびC110アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC110アルキル基で置換されたフェニル基、およびC110アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(1)中、Zは、例えば、C620の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R72基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C252基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。
7は、それぞれ独立に、水素またはC(R93である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC620のアリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フツ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C110のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C13アルキル基、C13ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C13アルキル基、およびC13ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C13アルキル基、C13ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C13アルキル基、およびC13ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、および3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
前記複屈折層の成膜材料である前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C16の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC14の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C16の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC14の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としでは、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
また、これらの他に、前記複屈折層の成膜材料である前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C13アルキル基およびC13ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、前記(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C13アルキル基、C13ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C19アルコキシカルボニル基、C19アルキルカルボニルオキシ基、C112アリールオキシカルボニル基、C112アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C112アリールカルバモイル基、ならびに、C112アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C13アルキル基、C13ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
前記複屈折層の成膜材料を塗工する際の溶液濃度は適宜決定して構わないが、基材層への塗工性(異物混入、塗工時のムラやスジ)を考慮すると、通常0.5重量%以上50重量%以下、好ましくは1重量%以上40重量%以下、さらに好ましくは2重量%以上30重量%以下とすることができる。0.5重量%以下であると、溶液粘度が低すぎるため所定の膜厚まで1回で塗工する事が困難となり、30重量%以上であると溶液粘度が高すぎるために、塗工面が荒れるなどの不具合が発生する場合がある。
前記成膜材料の溶液において、前記成膜材料を溶解させる溶媒としては、前記成膜材料を溶解でき、かつ基材層を極度には浸食しないものであればよく、使用する成膜材料及び基材層に応じ適宜選択することができる。具体的には、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、酢酸エチル、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル、メチルイソブチルケトン、メチルエーテルケトン、シクロペンタノン、二硫化炭素等及びこれらの混合溶媒等が用いられる。また、用いる成膜材料によっては硫酸も使用できる。
前記成膜材料溶液は、前記成膜材料及び溶媒に加えて、目的に応じ界面活性剤等の他の添加物を加えても良い。
前記成膜材料溶液を前記基材上に塗工する方法は、特に限定されず、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ブレードコート法等により行うことができる。これらの方法により前記成膜材料溶液を、得られるフィルムが所望の膜厚になるように基材上に配した後、乾燥させることにより塗膜を得ることができる。乾燥温度は溶媒の種類等に応じて適宜選択することができるが、通常40℃以上250℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下とすることができる。乾燥は一定温度下で行っても良いし段階的に温度を上昇させて行っても良い。乾燥時間は通常10秒間以上60分間以下、好ましくは30秒間以上30分間以下とすることができる。30秒以下であると、溶媒が多量に残って製品の信頼性に問題を生じる場合があり、30分以上であると工業生産性に適しない。
前記成膜材料を基材に塗工する領域は、基材全体ではなく、延伸時の把持箇所を除いた領域とすることが好ましい。例えば、基材が帯状であり、該帯状の基材を幅方向に延伸する場合には、延伸時の把持箇所である基材の幅方向両端部を除き、基材の中央部分に成膜材料を塗工することが好ましい。
また、前述のようなポリマーを含む成膜材料溶液を基材上に配して塗膜を構成する際には、乾燥による溶剤の揮発によって塗膜を膜厚方向に収縮させて分子配向に異方性を生じさせ、塗膜が負の一軸配向性フィルムとなるようにすることが好ましい。
さらに、前記成膜材料として重合可能な低分子化合物を用いる場合には、成膜材料溶液を基材上に配し、乾燥させて低分子化合物の面配向物を得た後、必要に応じて熱や光により架橋させることにより、負の一軸性フィルムとすることもできる。
尚、負の一軸性フィルムとは、面内の主屈折率nx及びnyがほぼ同一であり、且つ面内の主屈折率nx及びnyが、nzより大きい関係を満たすフィルムをいう。具体的にはnxとnyとの差は0.001以下程度であれば、負の一軸性を有するものとして用いることができる。
主屈折率nx,ny及びnzの値は、前記塗工および乾燥によって塗膜を作製する場合に、用いる成膜材料及び作製する条件に依存して決めることができ、さらに目的に応じて膜厚を選択することにより、光学的に重要なパラメータである面内と厚み方向のレタデーション値((nx−nz)と膜厚dの積で得られる値)を制御することができる。
前記負の一軸性配向性フィルムを作製する際には、面内方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差、すなわちnx−nzは、ある程度大きいことが好ましく、通常0.002以上、好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上、特に好ましくは0.02以上とすることが望ましい。該屈折率差が小さい場合は、面内と厚み方向に関する所望のレタデーションを得るために、フィルムの膜厚を厚くしなければならない。後で述べるように該膜厚が厚すぎる場合には、延伸工程において均一な構造が得られにくくなるため、nx−nzの値は0.002以上であることが好ましい。
前記負の一軸配向性フィルムの厚み方向のレタデーション値、即ち(nx−nz)×dで与えられる値は通常20nm以上2000nm以下、より好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上600nm以下とする。20nm未満の場合はレタデーション値が小さすぎて、光学素子としての機能に欠けるおそれがあるため好ましくない。2000nmを超える場合は塗布や乾燥時にむらができ不均一なフィルムを与えるおそれがあるのであまり好ましくない。また、前記負の一軸配向性フィルムの膜厚は、通常0.2μm以上100μm以下、好ましくは0.5μm以上50μm以下、さらに好ましくは1μm以上20μm以下とすることができる。0.2μm未満の場合は、フィルムの複屈折値(nx−nz)にもよるが、概してレタデーション値が小さくなるため、光学素子としての機能に欠けるおそれがあるため好ましくない。100μmを超える場合は塗布や乾燥時にむらができ不均一なフィルムを与えるおそれがあるため好ましくない。
また、前記負の一軸配向性フィルムの膜厚は、後の延伸工程において前記負の一軸配向性フィルムを前記基材と共に延伸させる際、前記基材の膜厚よりも小さいことが好ましく、前記基材の膜厚の半分よりも小さいことがさらに好ましい。前記基材の膜厚に対して前記負の一軸配向性フィルムの膜厚を相対的に小さくすることにより、延伸させた際に均一な延伸を行うことができる。
前記負の一軸配向性フィルムを基材上に配した状態で該基材を延伸すると、該基材に張力が課せられ、ポリマーフィルムを備えてなる基材が均一に延伸あるいは収縮し、この均一な延伸あるいは収縮が前記負の一軸配向性フィルムに作用し、該一軸配向性フィルムが間接的に延伸あるいは収縮されることとなるので、負の一軸配向性フィルムを直接的に延伸あるいは収縮した場合等に比べて均一な延伸を行うことができる。特に、前記基材の膜厚に対して前記負の一軸性フィルムの膜厚を相対的に小さくして延伸すると、前記基材に主に張力が課せられ、均一な延伸が可能となるため特に好ましい。
本発明は、延伸するための把持箇所を基材のみとするものであるが、このように、延伸するための把持箇所を基材のみとすることにより、成膜材料の塗膜と基材とを共に把持して延伸した場合と比較して把持箇所から該塗膜までの延伸応力の伝わり方が、基材が緩和層的な役割を担うために緩やかとなり、結果的に幅方向に均一になる。これに対し、前記塗膜と基材とを共に把持して延伸した場合、把持箇所の延伸応力が該塗膜に急激に伝達するため、幅方向に均一なものを得ることが困難となる。
また、本発明の一実施形態としては、図1に示すように、帯状の基材の中央部に複屈折層の成膜材料を塗工し、成膜材料を塗工していない幅方向両端の略中央部を把持して幅方向外側へ張力をかけて延伸する方法を採用し得る。この場合、成膜材料を塗工しない両端の合計幅をAとし、成膜材料を塗工する中央部分の幅をBとすると、AはBに対して1%以上とすることが好ましい。これは、AがBに対して1%未満であると、基材にかけた張力が成膜材料の塗膜に悪影響を及ぼし、本発明の効果が得られ難いからである。
また、図1に示した一実施形態によれば、基材のみが延伸される領域Cと、基材と塗膜とが延伸される領域Bとがある。領域Cの実際の延伸倍率(実行延伸倍率と言う)をSSUB、領域Bの実行延伸倍率をSC+SUBとすると、SSUB>SC+SUBとなるように、基材を選択し、延伸条件を設定することが望ましい。これは、上述したように、SSUB>SC+SUBとすることによって基材が緩和層としての役割を担い、より一層優れた効果が得られるからである。
前記延伸は、前記負の一軸性フィルムを、基材としての前記ポリマーフィルムと共に、加熱しつつ行うこが好ましい。特に加熱温度は、基材のガラス転移点(Tg)±20℃の範囲であり且つ負の一軸性フィルムのガラス転移点以下が好ましい。通常40℃以上250℃以下、好ましくは80℃以上220℃以下、さらに好ましくは100℃以上200℃以下とすることにより、基材のTg±20℃とすることができる。基材のガラス転移点−20℃未満の温度であると、延伸を行うのに膨大な張力を必要とし、かつ成膜材料が塗布してある部分と塗布していない部分との境界に応力が集中して基材が破断してしまう場合があり、また基材のガラス転移点+20℃を超えた温度であると、基材のみが延伸されてしまい実質的な位相差を発現すべきである成膜材料の塗膜が十分に延伸されないという不具合が生じる。また、成膜材料のガラス転移点以上で延伸しようとすると、基材に対する温度が高すぎるため、前記負の一軸性フィルムの延伸を制御できなくなる。
前記延伸は、一方向に張力をかける一軸延伸操作、又は互いに直交する二方向に張力をかける二軸延伸操作等により行うことができる。本発明の方法においては、上述のような塗工工程で既に負の一軸性の異方性が得られているので、二軸配向性フィルムを得るためには一軸延伸操作で十分であるが、光学特性の調整や均一性を向上させるために二軸延伸操作を施してもかまわない。
前記一軸延伸を行う場合、延伸倍率は通常1.01倍以上2.0倍以下、好ましくは1.01倍以上1.5倍以下、さらに好ましくは1.01倍以上1.3倍以下とする。延伸倍率が1.01倍未満であると延伸による効果が十分でなくフィルムが負の一軸配向性に近い構造にしかならないおそれがあるため好ましくない。延伸倍率を2.0倍より大きくすれば、延伸むらが生じてフィルムが不均一な屈折率構造となってしまうおそれがある。
前記延伸を行うことにより、3つの主屈折率のうちny及びnzを大きく変化させることなくnxだけを大きく変化させ、nx>ny>nzの二軸配向構造を得ることができる。よって、(nx−nz)×dの値を相対的には大きく変化させることなく、面内のレタデーション値((nx−ny)×d)を延伸段階で大幅に制御することができる。なお、前記一軸延伸を行った場合は、通常、延伸方向が前記x方向(3方向の主屈折率のうち最大の屈折率を有する方向)となり、前記二軸延伸を行った場合は、延伸倍率の大きい方向が前記x方向となる。
本発明の方法を工業的に行う場合、ロール状に巻かれた帯状の基材を連続的に引き出し、該基材に成膜材料を塗工して塗膜(好ましくは、負の一軸配向性フィルム)を形成し、さらに連続的に前述のような延伸を行うことが好ましい。延伸として一軸延伸を行う場合、工業的な観点からは縦延伸の方が容易であるが、以下のような場合には、基材の幅方向に延伸すること(横延伸)が好ましい。即ち、例えばロール状の二軸配向性の光学フィルムとロール状の偏光フィルムとを連続的に貼合する場合、偏光フィルムは一般的にフィルムの幅方向に透過軸を有し、これと張り合わせる位相差フィルムはその遅相軸が該透過軸と平行となるように張り合わせる必要がある。従って、横延伸によって幅方向に遅相軸が形成された前記光学フィルムによれば、このような偏光フィルムとのロールトゥーロールによる連続的な張り合わせが可能となる。
なお、横延伸する場合、フィルムの搬送のためにある程度の張力が長手方向にも必要になる場合もあるが、この場合の長手方向の張力に対し幅方向の延伸の張力を十分に大きくすることにより、実質的な幅方向の一軸延伸を行うことができる。
前記延伸終了後、得られた二軸配向性フィルムは、必要に応じて室温まで冷却される。冷却速度や手段は特に制限されない。ただし、冷却前に急激に延伸時の張力を解放すると、得られたフィルムにしわが入りやすいため、該張力を解放する前に、冷却工程の一部又は全部を実施することが好ましい。
このようにして得られた二軸配向性フィルム(即ち、複屈折層)、又は該二軸配向性フィルムと基材との積層体は、そのまま、又は必要に応じて他の光学用フィルム、例えば他の屈折率構造を有する位相差フィルムや偏光板等と組み合わせ、製品である本発明の光学フィルムとすることができる。具体的には、例えば、工業的に一般に製造されている形式の、ヨウ素を含潰したポリビニルアルコール膜を2枚の基材フィルムで保護した形の偏光板の中に、前記二軸配向性フィルムを組み込んで一体化し、製品である本発明の光学フィルムとすることもできる。
本発明の製造方法によれば、均一性の高い光学フィルムを製造することができ、屈折率構造の制御が容易であるため、品質の高い、優れた機能を発揮する二軸配向性の光学フィルムを製造することができる。とりわけ液晶ディスプレーの分野は、視覚に訴える用途であるため、使用する光学部材の均一性やパラメータの妥当性が非常に厳しく評価されるところ、本発明の製造方法によれば、そのような要求にも十分応えることができる光学フィルムを製造できる。
本発明の光学フィルムは、光軸をフィルム面に投影したときの遅相軸のバラツキが、成膜材料溶液の塗工端を除いて、通常±5°以内に制御されたものとなる。また、基材として上述のような好適なポリマーフィルムを用いた場合、遅相軸のバラツキは±3°以内に制御され、延伸温度の均一性及び延伸張力の均一性が高い条件で製造すれば、遅相軸のバラツキを±2°以内に制御することも可能となる。さらに、一軸延伸のみに限定すれば、遅相軸のバラツキは通常±2°以内となり、条件を制御すれば±1°、最高±0.5°となるように制御することも可能となる。
本発明の光学フィルムの用途は、特に限定されないが、例えば、位相差フィルム、偏光板と組み合わせた光学補償層一体型偏光板等として用いることが出来る。
本発明の液晶表示装置は、上述のような本発明の光学フィルムを備えたものである。液晶表示装置の形式は特に限定されず、例えばSTN(SuperTwisted Nematic)セル、TN(Twisted Nenatic)セル、VA(Vertical Aligned)セル、OCB(Optically Controled Birefringence)セル、HAN(Hybrid Aligned Nematic)セル、及びこれらに規則正しい配向分割を施したもの、ランダムな配向分割を行ったもの等の、各種のセルを含むものとすることができ、また、単純マトリックス方式、TFT(Thin Film Transistor)電極やMIM(Metal Insulator Metal)電極等を用いたアクティブマトリックス方式、セルの面内方向に駆動電圧を印加するIPS(In−Plane Switching)方式、プラズマアドレッシング方式等の各種の駆動方式を採るものとすることができる。また、バックライトシステムを備えた透過型のもの、あるいは反射板を供えた反射型のもの、さらには投射型のものとすることもできる。
本発明の液晶表示装置における、前記光学フィルムを備える態様は、特に限定されないが、通常、偏光板と駆動セルとの間であって、駆動セルの上側及び/又は下側の位置に、1枚若しくは複数枚前記光学フィルムを配置する態様を挙げることができる。なかでも駆動セルの上側と下側に当該フィルムを1枚ずつ配置する態様が好ましい。またさらに別の光学用フィルム、例えば本発明の光学フィルムとは異なる屈折率構造を有する位相差フィルム、散乱フィルム、レンズシート等と組み合わせた態様とすることもできる。
また、本発明の光学フィルムは、有機エレクトロルミネセンス装置のような他の画像表示装置においても用いることができる。
有機エレクトロルミネセンス装置は、例えば、電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、該有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなるものであるが、斯かる構成の有機エレクトロルミネセンス装置においては、例えば、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に本発明の光学フィルムを設けることができる。
以下に実施例を述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析法は以下の通りである。
(配向角および位相差測定)自動複屈折計(王子計測機器製 KOBRA-21ADH)
(膜厚測定)波長700〜900nmの光干渉法より計算(大塚電子製 自記分光光度計MCPD-2000)
(実施例1)
複屈折層の成膜材料として、下記式(24)で表されるポリイミドの粉末を、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび2,2’−ビス(トリフオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルから合成した。
このポリイミド粉末を、メチルイソブチルケトンに10重量%添加、攪拌して溶解させ、ポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液を、ブレードコート法にて基材であるイソブテン/N-メチルマレイミド共重合体とスチレン/アクリルニトリル共重合体の混合物からなるポリマーフィルム(Tg135℃、厚み40μm、幅1300mm)に連続的に塗工し、100℃で乾燥した。なお、塗工幅は、フィルム中央部1100mmとし、成膜材料の厚みは6.2μmとした。この時の屈折率はnx=ny>nzであり、負の一軸配向性を有していた。これを135℃にて、テンター延伸機を用いて横延伸した。基材幅と塗工幅の差が200mmあり、テンター延伸機における把持箇所は、成膜材料の塗工されていない基材部分の中央部とした。また、成膜材料の塗工されていない領域の幅Aと、成膜材料の塗工されている領域の幅Bの比A/Bは、10%であった。また、延伸倍率は1.1倍とし、延伸後の緩和率(延伸した後に同じ方向に収縮させる操作を緩和といい、緩和率=(緩和後の幅÷緩和前の幅)であらわす)は0.96倍とした。
その結果、成膜材料が塗工された領域Bの実行延伸倍率は1.028倍であり設定倍率より小さく、成膜材料が塗工されていない領域A(基材層のみの部分)の実行延伸倍率は1.288倍と設定倍率より大きかった。
得られた積層体は、屈折率がnx>ny>nzであり、二軸配向性の光学フィルムであった。また、該光学フィルムの幅方向の位相差および配向角を前記自動複屈折計(KOBRA−21ADH)にて測定したところ、配向角の分布(配向角の最大値−最小値)は1°と非常に均一であり、正面位相差Δnd(=(nx−ny)×d)の分布(Δndの最大値−最小値)も2.7nmと非常に均一であった。
(比較例1)
実施例1と同様に、ポリイミド溶液を基材に1100mm幅で塗布した。これを、基材のみの箇所が無くなるように塗工幅1100mmにあわせて一旦スリットし、把持箇所と把持していない箇所をまったく同じ構成とした。その後135℃、延伸倍率1.050倍、緩和率0.960倍となるようにして、実施例1と同様に横延伸した。実行延伸倍率は1.020倍であり、試料の配向角分布は2.4°、Δnd分布は5.8nmであった。
(比較例2)
比較例1と同様にして、延伸倍率1.100倍、緩和率0.960倍で横延伸した。実行延伸倍率は、1.066倍であり、配向角分布は1.9°、Δnd分布は8.6nmであった。
(比較例3)
延伸する際の温度を基材のTg−20℃以下である110℃とし、延伸倍率を1.050倍とする以外は、実施例1と同様にして横延伸しようと試みた。しかし幅方向に対して、基材のみの部分と,基材層と塗膜の積層部分との境界で基材が破断してしまい、横延伸することはできなかった。
(比較例4)
延伸する際の温度を基材のTg+20℃を超える160℃とし、延伸倍率を1.050倍、緩和なしとする以外は、実施例1と同様にして横延伸した。しかし、成膜材料を塗工していない領域の実行延伸倍率が1.452倍となったにもかかわらず、成膜材料を塗工した領域の実行延伸倍率は1倍であり、実質的な位相差を発揮すべき形成材料の塗膜は延伸されていなかった。

本発明の一実施形態において、基材および成膜材料の塗膜の断面を示した図。
符号の説明
1 基材
2 成膜材料を塗工した塗膜
3 延伸装置の把持手段
A 成膜材料が塗工されていない領域
B 成膜材料が塗工された領域
C 基材のみが延伸される領域

Claims (7)

  1. 複屈折層を備えてなる光学フィルムの製造方法であって、
    基材に成膜材料を塗工して塗膜を形成し、該基材のガラス転移温度±20℃の温度に保ちつつ該基材に張力をかけて延伸し、該基材の延伸を介して前記塗膜をも延伸させた後、さらに該基材を同一方向に収縮させ、該基材の収縮を介して前記塗膜を緩和させて二軸配向性の複屈折層を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記塗膜の緩和率が0.9以上1.0未満であり且つ総延伸倍率が1.0より大きいことを特徴とする請求項記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記成膜材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドからなる群より選択される1種又は2種以上の非液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記基材が帯状であり、該基材の延伸方向が該基材の幅方向であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の光学フィルムの製造方法によって得られた光学フィルム。
  6. 請求項5記載の光学フィルムを備えてなることを特徴とする液晶表示装置。
  7. 請求項5記載の光学フィルムを備えてなることを特徴とする画像表示装置。
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