JP3746476B2 - 加工液供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はワイヤ放電加工機の加工液供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の加工液供給装置として例えば特許文献1に示されたものがある。その構成を図5に示す。これは、加工ヘッドに固定されたケーシング21と、該ケーシング21に対して摺動可能に配置された可動素子27と、該可動素子27に対し摺動可能に配置されたノズル29とを備え、前記ケーシング21、可動素子27およびノズル29が加工ヘッドの底部と共に吐出室22を画成してなるものにおいて、可動素子27およびノズル29を、ノズル29の周縁部として肩部31の一端面に沿う圧力室50ならびに肩部31の他端面に沿う第2の室40が形成される形状を有するものとし、ノズル29に、圧力室50を吐出室22と連通可能とするオリフィス58を形成し、可動素子27には、第2の室40を大気圧に連通可能とするオリフィスを形成し、さらに、肩部31の両側における圧力室50および第2の室40は、ノズル29に対して圧力室50内の圧力および吐出室22内の圧力を相互に逆向きに作用させる構成としたことを特徴としている。
【0003】
さらに上記従来例は、前述した構成の液体吐出装置の作動方法を提案するものである。その作動方法は、圧力室50からの液体がノズル29に及ぼす推力と、吐出室22からの加工液がノズル29に及ぼす圧力の成分のうち、前記推力と平行な成分とを少なくとも部分的に平衡させることを特徴としている。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−292127号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような加工液供給装置は、加工液流量が大きく、吐出室内の圧力が小さい場合、可動素子が動かない。また、ノズル先端の構成が複雑になり、ノズル部が大きくなり、加工するワーク形状を制限してしまう。
【0006】
また、一般にワイヤ放電加工機は、上下に取り付けられた加工液供給装置から加工液を噴出しながら加工する。加工液は、放電によって発生した加工屑や気泡を除去する効果や、ワイヤの冷却をする効果を持つ。ワイヤ周辺の加工液流速が大きいほど、上記の効果が大きくなり、加工速度は上昇する。ワーク上面とノズル先端を接触させると、加工液はすべて加工溝内に流入し、ワイヤ周辺の加工液流速が大きくなる。
【0007】
従来の加工液供給装置は、主軸に固定されているため、隙間ゲージなどを用いて、ノズル先端とワーク上面を0.1mm以下になるように作業者が位置決めし、加工速度が決定されていた。この方法では、最大加工速度が得られないだけでなく、ワークに0.1mm程度の寸法誤差があった場合、ノズル先端とワークが接触したり、また、隙間が大きくなりすぎてワイヤ周辺の流速が低下し、加工速度が低下するなどの問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係る加工液供給装置は、ワークに対して前進/後退可能なノズル可動部を有するワイヤ放電加工機の加工液供給装置であって、加工液を吐出する円筒部とその上部に一体に形成される鍔部とからなるノズル可動部、上記鍔部の下面に対向するオリフィスが形成された中間ブロック、上記中間ブロックの内部で上記オリフィスと上記鍔部との間に形成され、上記ノズル可動部が位置する第1の空間、及び上記鍔部の上部に形成され上記第1の空間に連通すると共に、上記オリフィスよりも開口面積が大きい第2の空間を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の請求項1に記載の加工液供給装置において、ノズル可動部の上端と上記ノズル可動部の上方に設けられた上部部材との間に空間確保用のストッパーを取り付けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項1に記載の加工液供給装置において、ノズル可動部の上端と上記ノズル可動部の上方に設けられた上部部材との間にバネを取り付けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の加工液供給装置において、ノズル可動部の加工液出口の径は、加工液入口の径に比べて大きくされていることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る加工液供給装置の断面図である。図において、1はノズルのケーシング、8はケーシング1の内側に配置された中間ブロックである。3はケーシング1および中間ブロック8の中心に設けられた摺動穴に遊嵌されているノズル可動部で、加工液を吐出する円筒部3aと円筒部の上部に一体に形成された鍔部3bとからなり、ワーク5に対して前進/後退(図では下向き/上向き方向に移動)可能になされている。10は中間ブロック8により画成された第1の空間で、この空間にはノズル可動部3の円筒部3a上部と鍔部3bが位置している。4はケーシング1と中間ブロック8との間に形成された加工液通路で、一端は加工液入口7に、また他端は後述のオリフィス2近傍の通路9にそれぞれ連なっている。
【0013】
2は通路9と第1空間10との間を結ぶように中間ブロック8に形成されたオリフィスで、その上端はノズル可動部3の鍔部3bに対向している。16はノズル可動部3の上方に設けられた上部部材で、ノズル可動部3との間に、第1空間10に連なる第2空間11を形成し、ノズル可動部3が後退(図では上昇)した場合にも空間が確保できるようにストッパー13が突設されている。12は上部部材16の穴およびノズル可動部3の開口部を通して張設されたワイヤ電極、5は被加工物であるワーク、14はワーク5の加工溝である。6はノズル可動部3の先端とワーク5との隙間、矢印Aは加圧ポンプ(図示せず)により供給される加工液の流れを示している。なお、ノズル可動部3は最上部に移動したときでも下端がノズルのケーシング1より僅か下方に出るように配置されている。
【0014】
次に動作を説明する。上記構成において、矢印Aに示すように、加圧ポンプにより押し出されて加工液入口7から流入した加工液は、中間ブロック8とケーシング1の間の通路4を流れ、オリフィス2から第1空間10に流出する。流出した加工液はノズル可動部3の鍔部3bの下面に勢いよく当たり、その運動エネルギーによりノズル可動部3に上向き(後退)の力を加える。加工液は第1空間10を経てから第2空間11に到達する。第2空間11に達すると、加工液の速度は減少し、静圧が上昇する。この静圧はノズル可動部3に下向き(前進)の力として加わり、ノズル可動部3を押し下げようとして、ノズル可動部3に加わる上向きの力と下向きの力がバランスする。
【0015】
上記の加工液の通路において、オリフィス2の開口面積は他の流路と比較して最も小さくなるように設計されている。ノズル可動部3の加工液出口の外周とワーク5上面との隙間が作る円周面の面積が、オリフィス2の開口面積よりも小さくなると、加圧ポンプの動作点はこの開口面積、つまりノズル可動部3の先端とワーク5上面との隙間によって決定され、加工液は高圧、小流量となる。流量がある程度減少すると、ノズル可動部3に働いていた上向きの力と下向きの力のバランスが変わり、下向きの力が大きくなる。その結果、ノズル可動部3は下降し、ノズル可動部3先端とワーク5上面が接触するため、ノズル可動部3の出口先端から流出する加工液は、すべて加工溝14内に流入する。よって加工速度が向上する。
【0016】
この加工液供給装置の動作を図2に示す。ワーク5に凹凸がある場合、ノズル可動部3の先端とワーク5の上面との隙間がある範囲では、ノズル可動部3に働く下向き力が上向き力より大きく、ノズル可動部3は下に押し下げられる(a部分)。ワーク5にへこみがある場合も(b部分)、この動作によりノズル可動部3の先端がワーク5の上面に接触したまま加工することができる。また、ノズル可動部3の先端とワーク5の上面との隙間がある程度大きくなると(c部分)、ノズル可動部3に作用する運動エネルギーが下向き力より大きくなり、ノズル可動部3は上昇する。
【0017】
従来のノズルを用いて、ノズル可動部3の先端とワーク5の上面に隙間をとって加工したときの加工速度は250mm2/minであったのに対し、本発明のノズルを用いると270mm2/minに加工速度を向上できた。
【0018】
また、加工前、作業者はノズル先端の位置決めするのに、従来は隙間ゲージを用いての1μmずつ主軸を動かすという作業をやっていた。これにはかなり時間を必要とした。これに対して本発明によれば、ノズル可動部3先端をワーク5上面から1mm程度に目視で位置決めすればよく、大幅に時間の短縮ができる
【0019】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図3に示す。本実施の形態では、ノズル可動部3の下向き力(前進)を大きくするため、ノズル可動部3の上端と上部部材16との間にバネ15を取り付けたものである。その他の構成は図1と同様である。
【0020】
このバネ15の挿入により、ノズル可動部3の加工液出口の外周とワーク5の上面の隙間とで作る円周面の面積がオリフィス2の面積と同等のときでも、バネ15の力を借りてノズル可動部3の先端をワーク5の上面まで押し下げることができる。つまり、ノズル可動部3の可動範囲が大きくなる効果がある。
【0021】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3におけるノズル可動部の断面図である。ノズル可動部3とワーク上面とが離れた場合、ワーク5の加工溝上面に大きな速度で加工液が衝突した方が加工速度を大きくできる。一方、ノズル可動部3とワーク5面とが接触している状態では、ノズル可動部3の加工液出口の面積が大きいほうが加工速度は上がる。そこで、本実施の形態3では、図4に示すように、ノズル可動部3の出口3cの径を入口3dに比べ大きくしたものである。
【0022】
ノズル可動部3の先端とワーク5の上面が離れた場合、ポンプの動作点は、ノズル可動部3の内径の内、小さい方の面積によって決定される。内径面積が小さいほど、噴出される加工液流速は大きくなり、加工速度は向上する。このため、本実施の形態3によれば、ノズル可動部3がワーク5面から離れているときも、接触しているときも効果的に加工速度を向上させることができる。
【0023】
【発明の効果】
この発明に係る加工液供給装置は、オリフィスから流出する加工液の運動エネルギー(上向き力)と可動部上面に働く圧力(下向き力)とをバランスさせることにより、小さい力でノズル可動部をワーク上面と接触させて、ワイヤ放電加工機での高速加工を実現できる。
【0024】
また、ノズル可動部先端とワーク上面との隙間が大きくなると、自動的に可動部が上昇し、再びその隙間が小さくなると下降して可動部がワーク上面と接触し、最大高速での加工が可能となる。
【0025】
また、加工前、作業者がノズル先端の位置決めする際、ノズル先端をワーク上面から1mm程度に目視で位置決めすればよく、大幅に時間の短縮ができる。
【0026】
また、ノズル可動部に下向きのバネ力を加えるようにしているので、ノズル可動部の可動範囲を大きくすることができる。
【0027】
また、ノズル可動部の内径の面積を、出口側で大きくすることにより、最速の加工速度を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1にかかる加工液供給装置を示す断面図である。
【図2】 実施の形態1の動作を説明するノズル可動部とワークとの位置関係を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態2にかかる加工液供給装置を示す断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態3にかかる加工液供給装置のノズル可動部を示す断面図である。
【図5】 従来の加工液供給装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング、 2 オリフィス、
3 ノズル可動部、 3a 筒部、
3b 鍔部、 3c ノズル可動部加工液出口、
3d ノズル可動部加工液入口、 4 加工液通路、
5 ワーク、 6 隙間、
7 加工液入口、 8 中間ブロック、
9 通路、 10 第1の空間、
11 第2の空間、 12 ワイヤ電極、
13 ストッパー、 14 加工溝、
A 加工液の流れ。
Claims (4)
- ワークに対して前進/後退可能なノズル可動部を有するワイヤ放電加工機の加工液供給装置であって、
加工液を吐出する円筒部とその上部に一体に形成される鍔部とからなるノズル可動部、
上記鍔部の下面に対向するオリフィスが形成された中間ブロック、
上記中間ブロックの内部で上記オリフィスと上記鍔部との間に形成され、上記ノズル可動部が位置する第1の空間、及び
上記鍔部の上部に形成され上記第1の空間に連通すると共に、上記オリフィスよりも開口面積が大きい第2の空間を備えたことを特徴とする加工液供給装置。 - 上記ノズル可動部の上端と上記ノズル可動部の上方に設けられた上部部材との間に空間確保用のストッパーを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の加工液供給装置。
- 上記ノズル可動部の上端と上記ノズル可動部の上方に設けられた上部部材との間にバネを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の加工液供給装置。
- 上記ノズル可動部の加工液出口の径は、加工液入口の径に比べて大きくされていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の加工液供給装置。
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