JP3746312B2 - 多孔質用材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は多孔質用材製造方法、特に、鋳物工場集塵ダスト及び下水汚泥焼却灰等を原料とし園芸用土や河川浄化用材として有用な多孔質用材製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋳物工場から発生する集塵ダストは超微粉末であるため加湿した後、有償で埋立て処分されているが、最近、再資源化の観点から、これを単独であるいは粘土等の窯業原料と混合して焼成することが考えられている。他方、下水汚泥の焼却により生じる焼却灰については、下水汚泥焼却灰に下水汚泥の脱水ケーキを添加して造粒し、これを1000〜1200℃で焼成して軽量骨材を得る方法(特公昭61−14099号公報)、下水道汚泥焼却灰とセラミック材料とを混合し、所定形状に成形した後、1100〜1200℃で加熱昇温して焼結させ、建材用セラミックスとして利用する方法(特開平2−129061号公報)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鋳物工場集塵ダストを単体で焼結させたものは、密度が高く発泡性が低いため、軽量骨材として利用し難く、また、吸水率が低く中心部が黒色を呈しているため園芸用土として用いるにも不適当であり、用途が極めて限られるという問題がある。また、集塵ダストを窯業原料と混合して焼結させたものは、集塵ダストの利用率は最大でも50%程度であり、窯業原料を多量に併用しなければならないという問題がある。他方、下水汚泥焼却灰を単独であるいはセラミック原料と混合して焼成したものは、路盤材や増量材として有効利用されるようになってきてはいるが、鋳物工場集塵ダストの場合と同様、窯業原料やセラミック原料を多量に添加しなければならず、産業廃棄物の利用度が低いのが現状である。
【0004】
また、園芸用土や河川浄化用材の品質指標として圧縮強度、吸水率、pH値及び色調などがあるが、通常、10kgf以上の圧縮強度と15%以上の吸水率を持つことが要求されるだけでなく、使用中に有害物質が溶出しないことが必須条件である。しかしながら、従来法では、これらの諸要件を十分に満たすものが得られていないのが現状である。
【0005】
従って、本発明は、産業廃棄物の利用度を高めるべくなされたもので、鋳物工場集塵ダストを下水汚泥焼却灰と共に用いて、アメニティ、園芸或は河川浄化用材等として有用な多孔質用材を安価に製造する方法を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、鋳物工場集塵ダスト39〜89重量%と下水汚泥焼却灰10〜60重量%との混合物の焼結体からなり、吸水率を20%以上、圧縮強度を20Kgf以上とする多孔質用材を提供するものであって、これを下記の方法により製造するようにしたものである。
【0007】
即ち、本発明によれば、前記多孔質用材は、鋳物工場集塵ダストを下水汚泥焼却灰と混合して鋳物工場集塵ダスト39〜89重量%、下水汚泥焼却灰10〜60重量%からなる混合物を調製し、当該混合物を所定形状に成形した後、得られた成形体を酸素含有率10%〜35%の酸化性雰囲気中450〜750℃の温度で仮焼し、次いで750〜1000℃の温度で焼成することにより製造することができる。また、焼成助剤を0.5〜5重量%添加した後、成形しても良い。
【0008】
【作用】
鋳物工場集塵ダストは、超微粉でSiOを主成分とし多量の粘土分と共に多量の炭素を含むため、通常の焼成では成形体の表面の炭素は酸化されてCO、COなど酸化物として気化逸散するが、内部の炭素がそのまま残留して均質な焼結体を得ることができず、利用ができなくなるが、焼成雰囲気の酸素含有率を10〜35%に維持しつつ、450〜750℃の温度で仮焼すると、直径30mm前後の成形体でも180分程度で内部の炭素も酸化され、その後750〜1000℃の温度で焼成すると、吸水率が高く機械的強度の強い焼結体となり、種々の用途に利用可能となる。
【0009】
なお、仮焼雰囲気の酸素含有率を10〜35%とするのは、これが10%未満では内部の炭素を酸化させ、気化逸散させることができず、また、35%以上では焼成に要する費用が高くなり、産業廃棄物の処理には適さないからである。通常は、酸素補給源として空気を用いるのがコスト的に有利である。
【0010】
また、焼成は、仮焼により均質になった成形体の強度を安定させると共に、外観の色調を整える為に行われるが、焼成温度が750℃未満では強度の安定及び色調の調整を十分に行うことができず、焼成温度が高くなるほど強度は向上するが1000℃を超えると、ガラス化が進み20%以上の吸水率を確保できず、また経済的な操業ができなくなるので焼成温度は750〜1000℃とするのが好適である。
【0011】
更に、鋳物工場集塵ダストに下水汚泥焼却灰を添加して成形し、これを仮焼及び焼成の二段階で熱処理すると、下水汚泥焼却灰がSiO、CaO、Pを主成分とし、しかも、いわゆるイグロスを20〜40%も含むため、これが焼成時に気化、焼失することで多孔性を高める作用をもたらす。下水汚泥焼却灰の添加量を60重量%以下にしたのは、下水汚泥焼却灰は焼成品の多孔性を高める作用がある反面、機械的強度を低下させる欠点があるため、その添加量が60重量%を超えると、成形性及び多孔性は確保できるが20Kgf以上の圧縮強度が得られなくなるからである。
【0012】
【実施例1】
原料として表1に示す組成の鋳物工場集塵ダスト及び下水汚泥焼却灰を、焼成助剤として硼酸、水ガラス、長石及びゆう薬をそれぞれ用い、これらを表2に示す割合で配合し、その混合物に20%の水を加えて押出し造粒機で4mmφ×10mmの円筒状に造粒し、これらを50〜60℃で乾燥させた。乾燥粒子を450〜750℃にまで昇温し、酸素含有率を10%以上に維持しながら粒径に応じて30〜180分仮焼して粒子中の炭素を酸化させ気化逸散させた。次いで、得られた仮焼粒子を750〜1000℃で2〜5時間焼成し、焼結粒子を得た。
【0013】
各焼結粒子について、圧縮強度、吸水率、pH及び色調など諸特性について測定した。その結果を表3に示す。なお、圧縮強度の測定は島津製作所社製オートグラフを用い、記録紙速度10mm/分、荷重速度10mm/分で直径方向に荷重をかけて、行い、色調については客観的に求める為マンセルNoでの対比を求めた。また、凍結融解試験は、JIS A5209 陶磁器タイルの凍結融解試験法に基づいて試料20個をまとめて5回反復して行った。表2及び表3中、試料番号に*を付した試料は参考例である。
【0014】
【表1】
組成 (重量%)
C SiO AlO CaO PO その他 揮発ロス
集塵ダスト 14.4 58.7 9.75 0.83 0.05 6.71 9.55
焼却灰 5.2 18.7 9.17 19.2 10.9 12.32 24.50
【0015】
【表2】
試料 組成(重量%)
番号 集塵ダスト 焼却灰 硼酸 ゆう薬 水ガラス 長石
100 0 0 ― ― ―
2 60 40 0 ― ― ―
3 50 50 0 ― ― ―
4 40 60 0 ― ― ―
25 75 0 ― ― ―
18 82 0 ― ― ―
15 85 0 ― ― ―
99 0.5 0.5 ― ― ―
9 89 10 1 ― ― ―
10 79 20 1 ― ― ―
11 59 40 1 ― ― ―
12 39 60 1 ― ― ―
13 25 74 1 ― ― ―
14 18 81 1 ― ― ―
15 14 85 1 ― ― ―
16 99 0.5 ― 0.5 ― ―
17 59 40 ― 1.0 ― ―
18 18 81 ― 1.0 ― ―
19 99 0.5 ― ― 0.5 ―
20 59 40 ― ― 1.0 ―
21 18 81 ― ― 1.0 ―
22 99 0.5 ― ― ― 0.5
23 59 40 ― ― ― 1.0
24 18 81 ― ― ― 1.0
【0016】
【表3】
試料 発色 pH 吸水率 圧縮強度 凍結融解試験
番号 (%) (Kgf)
5.5YR6.5/12 6.66 27.1 23.6 異常無し
2 7.5YR7.5/5.5 7.04 34.6 21.6 異常無し
3 5YR7/4.5 7.10 36.5 22.1 異常無し
4 10YR7.5/1.5 7.15 35.0 21.8 異常無し
10YR7/4 7.40 35.8 15.9 異常無し
2.5Y8.5/2.5 7.50 33.9 15.8 異常無し
2.5Y9/4 7.30 40.0 16.4 異常無し
5YR6/13 6.50 26.5 23.9 異常無し
9 2.5YR5/6.5 6.86 28.5 24.1 異常無し
10 10R/5 7.18 30.1 24.2 異常無し
11 7.5YR6.5/3 7.54 37.0 22.5 異常無し
12 10YR7.5/2 8.24 29.2 23.0 異常無し
13 7.5YR8/12 7.30 33.6 19.2 異常無し
14 10YR8/2 7.35 38.0 17.3 異常無し
15 10YR8/3 7.35 41.6 19.0 異常無し
16 2.5YR5/10 6.70 30.0 24.5 異常無し
17 2.5YR5/6.5 7.16 38.7 24.5 異常無し
18 2.5YR8/2 7.43 39.7 19.0 異常無し
19 2.5YR5/10 6.70 28.3 27.5 異常無し
20 2.5YR5/6.5 7.00 33.3 20.8 異常無し
21 10YR8/2 7.27 41.6 12.5 異常無し
22 2.5YR5/10 6.65 29.5 25.1 異常無し
23 2.5YR5/6.5 7.15 37.7 23.7 異常無し
24 10YR8/2 7.30 41.4 12.9 異常無し
【0017】
また、前記試料について溶出試験を行った結果、カドミウム、シアン化合物、有機燐、鉛、六価クロム、ひ素、総水銀、アルキル水銀、PCB、トリクロロエチレンのいずれも検出されなかった。また、前記試料の比表面積は約0.3m/g、細孔の大きさが1〜5μmであった。
【0018】
【実施例2】
鋳物工場集塵ダスト89重量%、焼却灰10重量%、硼酸1重量%を混合し、これに18%の水を加えて転動ミキサーに5分間かけて造粒し、500℃で仮焼した後、950℃で2時間焼成し、これを2mmφの篩いにかけて、その篩下を試料とした。この試料1kgを内径40mmφ、長さ1020mm、厚さ2mmの筒に充填し、その一端側を水槽につけて垂立させ、水槽に水を時々補給しながら室内に放置したところ、円筒内の水位は約1月で水槽の液面から約60cmの高さまで上昇した。
【0019】
また、前記焼結粒子を70mmφの素焼鉢に入れ、黄色い花の咲いたミヤコグサ10本を茎で切り取り、これを鉢の深さの約半分まで差し込み、この鉢を皿に入れて水の深さが10mmとなるように灌水し、肥料は与えず皿に水を補給するだけで、その変化を観察したところ、試験開始後、1週間経過した頃黄色い花の中に莢が形成され、10日後にはほぼ花が落ちたが、莢が約10個成長していた。鉢から抜き取ってみると、切り口から白い根が成長していた。さらに、10日経過すると、鉢の周りに黒い種子が散在しており、莢は殆どなくなっていた。このとき、茎及び葉は枯れることなく緑を保ち、一葉には体長20mmの青虫が一匹ついており食い荒らされていた。これらの結果から、本発明に係る多孔質用材は園芸用土として適していることが判る。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、鋳物工場集塵ダスト39〜89重量%と下水汚泥焼却灰10〜60重量%からなる混合物を焼結して多孔質用材を得るようにしたので、産業廃棄物だけで園芸用土や河川浄化用材を得ることができ、廃棄物の再利用を図り、省資源を実現することができる。しかも、圧縮強度が高く、吸水性に富むので、園芸用土として極めて有用であり、安価に製造することができるなど、優れた効果が得られる。また、比表面積が約0.3m/gと著しく大きく、しかも、気孔率も高いため、この用材を河川等に侵漬しておくと、内部に吸着した酸素が水中に徐々に放出され、その酸素により水中のBODを低下させる作用をもたらし、河川等の浄化に寄与する。

Claims (3)

  1. 鋳物工場集塵ダストを下水汚泥焼却灰と混合して鋳物工場集塵ダスト39〜89重量%、下水汚泥焼却灰10〜60重量%からなる混合物を調製し、当該混合物を所定形状に成形した後、得られた成形体を酸素含有率10%〜35%の酸化性雰囲気中450〜750℃の温度で仮焼し、次いで750〜1000℃の温度で焼成することを特徴とする多孔質用材の製造方法。
  2. 前記混合物に焼成助剤を0.5〜5重量%添加した後、成形する請求項1に記載の方法。
  3. 仮焼及び焼成を連続的に行う請求項1又は2に記載の方法。
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