JP3816376B2 - 軽量多孔質焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、従来有効利用の途が殆どなかったもみ殻灰を原料にして、例えば濾過材、吸着フィルター、バイオテクノロジー分野等での担持体等として用いられる軽量多孔質焼結体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、食器、衛生器、或いは電気、電子材料等の工業製品として用いられている陶磁器は、粘土、セリサイト、ロウ石等の可塑性原料を用いてこれを高温焼成により焼結または溶融せしめて製造されているが、これらの可塑性原料が近年枯渇化の傾向にあり、この分野においては新たな代替原料の開発が急務となっている。また、従来の陶磁器は一般に重いものが多く、新たな用途の拡がりに伴って軽量化の要請も多くなってきている。
【0003】
一方、稲の脱穀の際に生じるもみ殻は、農業廃棄物として毎年多量に排出され、その一部が燃料として用いられてはいるものの、その殆どが有効利用の途がなく、そのまま廃棄するか、或いは焼却してもみ殻灰としてからこれを廃棄処分にしているのが現状である。近年の資源の有効活用、リサイクル利用の気運の高まりの中、このようなもみ殻やもみ殻灰についても有効利用の具体的方策をたてることが強く望まれていたところである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、もみ殻灰にはケイ酸(SiO2 )が多く含有され、もみ殻灰のかさ密度が0.25程度と小さいことに着目し、このようなもみ殻灰は陶磁器の原料成分として利用し得て、かつ得られる焼結体が軽量なものになるのではないかと考えた。
【0005】
この発明は、前記技術的背景に鑑みつつ上記着想のもとになされたものであって、未利用のまま廃棄されていたもみ殻灰を原料にして、軽量でかつ多孔質の焼結体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、もみ殻灰、無機質骨材及びセメントを含む固形原料であって、もみ殻灰の含有率が20〜60重量%、無機質骨材の含有率が20〜60重量%、セメントの含有率が10〜50重量%の範囲である固形原料に水が加えられてなる原料組成物を成形して成形体を得る工程と、セメントの水和反応により前記成形体を硬化させる養生工程と、前記養生を行った成形体を高温で焼成して外部に通ずる連続状の多孔質構造を有した多孔質焼結体を得る焼結工程とを含むことを特徴とする軽量多孔質焼結体の製造方法によって達成される。
【0007】
本製造方法によれば、軽量で多孔質の焼結体を得ることができる。この焼結体の多孔質構造は、図1の電子顕微鏡写真に示すように、外部に通ずる連続状の多孔質構造を呈するものであり、例えば濾過材、吸着フィルター、バイオテクノロジー分野等での担持体等として用いることができる。なお、前記軽量性は、もみ殻灰を原料の1つに用いていること及び多孔質構造であることが大きく寄与しているものと考えられる。
【0008】
また、従来の陶磁器の製造においては焼結による収縮の程度が大きかった(例えば収縮率10〜30%程度)のに対し、本製造方法によれば、もみ殻灰を原料に用いることで焼結による収縮を抑制する(例えば収縮率2%程度)ことができ、これにより所望の形状を正確に形成できる利点があるし、このように焼結時の収縮が小さいので前記連続状の多孔質構造を形成できるものと考えられる。
【0009】
更に、本製造方法は、従来未利用のまま廃棄されていたもみ殻灰を主原料の1つとするものであるから、資源の有効利用を図り得るし、もみ殻灰の廃棄を回避できて環境保全にも貢献できると共に、低コストで軽量多孔質焼結体を製造できる。
【0010】
この発明の製造方法では、固形原料における、もみ殻灰の含有率を20〜60重量%、無機質骨材の含有率を20〜60重量%、セメントの含有率を10〜50重量%の範囲に設定するので、1500℃以下の温度で焼結を行うことができるものとなる(即ち高温の焼成温度を要しない)し、養生工程後の(焼結前の)成形体の強度が十分に得られて成形体のハンドリング性に優れ、かつ得られる焼結体の強度も十分に向上させることができる。
【0011】
上記原料組成物は、固形原料100重量部に対して水が10〜50重量部混合されたものからなるのが、好ましい。水の配合量をこのような範囲に設定することにより、セメントの水和反応を十分に促進させることができると共に、成形しやすいものとなる。
【0012】
無機質骨材としては珪石及び珪酸塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の骨材を用いるのが、焼結体の強度をより向上できる点で好ましい。
【0013】
焼結工程での焼成温度は800〜1500℃に設定するのが好ましい。このような範囲に設定すれば、焼結体の製造効率を向上できると共に、連続状の多孔質構造を備えた焼結体を確実に製造できる。
【0014】
また、原料組成物に、パルプ繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び鉱物繊維からなる群より選ばれる1種または2種以上の繊維を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記繊維の配合量を2〜5重量部に設定するのが、好ましい。このような特定繊維を特定量含有せしめることで、成形体の保形性を向上できるし、養生工程後の(焼結前の)成形体の強度、更には焼結体の強度を一層向上させることができると共に、焼結体の寸法安定性も向上させることができる。
【0015】
更に、原料組成物に、水溶性繊維素類及び水溶性ポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上の粘性付与剤を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記粘性付与剤の配合量を0.5〜4重量部に設定するのが、好ましい。これにより原料組成物に粘性や滑性を十分に付与でき、押出成形を行う場合においても成形性良く成形体を得ることができ、ひいては高品質の焼結体を製造できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の軽量多孔質焼結体の製造方法は、もみ殻灰、無機質骨材及びセメントを含む固形原料に水が加えられてなる原料組成物を成形して成形体を得る工程と、セメントの水和作用により前記成形体を硬化させる養生工程と、前記養生を行った成形体を高温で焼成して多孔質焼結体を得る焼結工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
本製造方法により得られた焼結体の電子顕微鏡写真を図1に示す。この図1から明らかなように、得られた焼結体は、外部に通ずる連続状の多孔質構造を呈している。本製造方法は、もみ殻灰を原料の1つに用いると共に、得られた焼結体が上記のような多孔質構造を有するので、非常に軽量なものとなる。
【0018】
更に、もみ殻灰を原料に用いているので、焼結による収縮が非常に小さく、従って所望の形状を正確に形成できる利点がある。
【0019】
加えて、従来は廃棄されていたもみ殻灰を有効利用しているので、低コストで多孔質焼結体を製造できるし、もみ殻灰の廃棄を回避できて環境保全にも貢献できる。
【0020】
この発明において、製造原料として用いるもみ殻灰は、精米脱穀等によって得られるもみ殻を燃焼して得られる灰であれば、どのようなものでも用いることができ、もみ殻を燃料として用いた後の灰(通常、黒色)も含む。一般に、燃焼温度が低いと灰の色は黒く、燃焼温度が500℃程度では灰は非晶質シリカであり、燃焼温度が1000℃程度では結晶化が進み白色を呈し、このようにもみ殻灰の色調や結晶の種類は、焼成の際の雰囲気や焼成温度、焼成時間によって異なるが、これらのいずれをも使用することができ、もみ殻灰の色調や結晶の種類等は特に問わない。
【0021】
もみ殻灰の組成の典型例を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
本製造方法では、このようなもみ殻灰を原料の1つに用いることで、軽量性を確保できると共に、焼結時の収縮を十分に抑制し得て、連続状の多孔質構造の形成を可能にしているものと考えられる。
【0024】
前記固形原料中のもみ殻灰の含有率は20〜60重量%の範囲とする。20重量%未満では、養生後の成形体の耐火度が高くなって焼結するのに著しく高温の焼成温度が必要となる上に、軽量化を十分に図ることができなくなるし、焼結時の収縮の抑制が不十分となって連続状の多孔質構造の形成割合が低下する。一方、60重量%を超えると、十分な強度を確保するのが困難となって焼結体の形状維持が難しく、例えば手で触れても表面がぼろぼろと欠落する恐れがある。
【0025】
また、無機質骨材は、焼結体における骨格形成、即ち強度の向上のために必須の原料成分である。この無機質骨材としては、特に限定されるものではないが、例えば二酸化珪素を主成分とする珪石(石英等)、川砂、山砂、海砂、或いは珪酸塩等が挙げられる。前記珪酸塩としては、例えば粘土、長石、高炉滓(スラッグ)、フライアッシュ等が挙げられる。これらの中でも、珪石や珪酸塩を用いるのが、焼結体の強度をより向上できる点で、好ましい。特に好ましいのは無機質骨材として珪石を用いる構成であり、焼結体の強度をより一層向上できる利点がある。
【0026】
前記固形原料中の無機質骨材の含有率は20〜60重量%の範囲とする。20重量%未満では、十分な強度を確保するのが困難となって焼結体の形状維持が難しく、例えば手で触れても表面がぼろぼろと欠落する恐れがある。一方、60重量%を超えると、養生後の成形体の耐火度が高くなって焼結するのに著しく高温の焼成温度が必要となる。
【0027】
また、製造原料として用いるセメントとしては、どのような種類のものでも用いることができ、例えばポルトランドセメント、マグネシアセメント、アルミナセメント、混合セメント、天然セメント等を例示でき、これらの1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。このようなセメントを必須成分として含有せしめることで、セメントと、もみ殻灰及び無機質骨材との間の水和反応により、養生工程後の(焼結前の)成形体の強度を確保することができ、該成形体のハンドリング性が良好なものとなる。中でも、アルミナセメントを用いるのが好ましい。
【0028】
前記固形原料中のセメントの含有率は10〜50重量%の範囲とする。10重量%未満では、養生工程後の(焼結前の)成形体の強度が低下してハンドリング性が悪くなる。一方、50重量%を超えると、養生後の成形体の耐火度が高くなって焼結するのに著しく高温の焼成温度が必要となる。
【0029】
前記原料組成物には、更に、パルプ繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び鉱物繊維からなる群より選ばれる1種または2種以上の繊維を含有せしめるのが好ましく、かつ前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記繊維の配合量を2〜5重量部に設定するのが好ましい。このような特定繊維を特定量含有せしめることで、養生前の成形体の保形性を向上できるし、養生工程後の(焼結前の)成形体の強度、更には焼結体の強度や軽量性を向上できると共に、焼結体の寸法安定性も向上できる。配合量が2重量部未満では前記効果(強度の向上等)が殆ど得られないし、配合量が5重量部を超えても同様に前記効果が期待できないので、好ましくない。
【0030】
更に、前記原料組成物に、水溶性繊維素類及び水溶性ポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上の粘性付与剤を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記粘性付与剤の配合量を0.5〜4重量部に設定する場合には、成形性を顕著に向上できる利点がある。即ち、成形を押出成形で行う場合等には原料組成物に粘性や滑性が不足していると成形が困難になって良好な成形体が得られがたいのであるが、このような場合であっても、前記特定の粘性付与剤を特定量含有せしめることで、成形性良く成形体を得ることができ、ひいては高品質の焼結体を製造できる。また、前記粘性付与剤は、焼成時に燃えて揮散してしまうので、より多孔度の大きい焼結体を製造することができ、ひいては得られる焼結体のかさ密度をより小さく設計できるし、焼結体の吸水率もより大きいものとなる。配合量が0.5重量部未満では前記効果(成形性向上)が殆ど得られないし、配合量が4重量部を超えても同様に前記効果が期待できないので、好ましくない。
【0031】
前記水溶性繊維素類としては、特に限定されるものではないが、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微小パルプ等を例示できる。また、前記水溶性ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルのケン化物等を例示できる。
【0032】
前記原料組成物中における水の配合量は、前記固形原料(もみ殻灰、無機質骨材、セメント等)100重量部に対して10〜50重量部に設定するのが好ましい。10重量部未満では十分な成形体が得られないばかりでなく、セメントの水和反応の進行が遅くなるので、好ましくない。また50重量部を超えると余剰水が多くなって養生前の成形体の保形性が低下するので、好ましくない。
【0033】
なお、前記原料組成物を成形する際の成形法として押出成形法を採用する場合には、原料組成物中における水の配合量は、前記固形原料100重量部に対して30〜50重量部に設定するのが特に好ましい。
【0034】
前記原料組成物を作成するに際しては、各材料成分の配合順序は特に限定されない。例えば、水を最後に配合せしめるようにしても良いし、途中段階で配合せしめるようにしても良い。
【0035】
また、前記原料組成物には、必要に応じて、この発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤等を配合せしめることもできる。
【0036】
前記原料組成物を成形する際の成形法は、特に限定されず、例えば型枠成形、加圧成形、押出成形等を例示できる。中でも、高品質の多孔質焼結体を生産性良く製造できる点で、加圧成形又は押出成形で成形するのが好ましい。
【0037】
また、養生工程での養生法についても特に限定されず、例えば自然養生、水中養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等を例示できる。このような養生工程を経てセメントの水和反応を進行させて凝結、硬化させることによってハンドリングに必要な強度を確保する。
【0038】
また、焼結工程における焼成温度は、高温であれば特に限定されないものの、800〜1500℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では焼結を完了させるのに時間を要して焼結体の製造効率が低下するので好ましくない。一方、1500℃を超えると原料が溶融して多孔質構造が得られなくなるので好ましくない。中でも、焼成温度は1000〜1300℃の範囲に設定するのがより好ましく、この焼成温度で1〜2時間保持するのが最も良い。
【0039】
なお、前記焼成温度に到達するまでの昇温速度は5〜10℃/分に設定するのが好ましい。また、一般に陶磁器原料を焼成して陶磁器を製造する時には、焼成温度から常温にまで降温する際の降温速度は、その際のひび割れ、クラック発生を防止するために、極力遅くする必要があるが、本発明の焼結体では焼結時の収縮率が非常に小さいので、例えば5〜10℃/分程度の速い降温速度で降温してもひび割れ等が発生しない。従って、焼成後の降温速度を大きく設定することもできるので、生産効率良く軽量多孔質焼結体を製造できる利点もある。
【0040】
この発明の製造法で得られた軽量多孔質焼結体は、断熱材、遮音材、調湿性建材、土木材、濾過材、吸着フィルター、バイオテクノロジー分野等での担持体等として用いることができる。また、該軽量多孔質焼結体に酵素や触媒等を担持して水質浄化材等として用いることもできる。なお、この発明の製造法で得られた軽量多孔質焼結体の用途は、前記例示の用途に特に限定されるものではない。
【0041】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明はこれら実施例に示す製造方法に特に限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
もみ殻灰(平均粒径350μm、黒色)40重量部、珪石(平均粒径4.63μm)40重量部、アルミナセメント(平均粒径14.5μm)20重量部、水15重量部を十分に混合して均一な原料組成物を得た。なお、ここで用いたもみ殻灰、珪石、アルミナセメントは、それぞれ表1に示す組成からなる。
【0043】
次に、この原料組成物を金型に入れ、200kg/cm2 の圧力で加圧成形することによって、成形体を得た。この成形体を、25℃、湿度90%の養生槽中で24時間保持して水和反応により硬化させた(養生工程)。次いで、50℃において24時間乾燥させた後、成形体を大気中において1300℃の焼成温度で1時間焼成して焼結体を得た。なお、1300℃に到達するまでの昇温速度は10℃/分とし、この後の降温速度は10℃/分とした。
【0044】
<実施例2、3>
原料組成物の組成比を表2に示すような割合に設定した以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0045】
<実施例4>
珪石40重量部に代えて高炉滓40重量部を原料組成物に含有せしめるものとした以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0046】
<実施例5>
もみ殻灰(平均粒径350μm、黒色)40重量部、珪石(平均粒径4.63μm)40重量部、アルミナセメント(平均粒径14.5μm)20重量部、パルプ繊維2重量部、カルボキシメチルセルロース(信越化学製、商品名「メトロース90SH15000」)2.5重量部、水50重量部を十分に混合して均一な原料組成物を得、該原料組成物を混練して押出圧力20〜21kg/cm2 で押出成形して成形体を得た。この成形体を、25℃、湿度90%の養生槽中で24時間保持して水和反応により硬化させた(養生工程)。次いで、50℃において24時間乾燥させた後、成形体を大気中において1300℃の焼成温度で1時間焼成して焼結体を得た。なお、1300℃に到達するまでの昇温速度は10℃/分とし、この後の降温速度は10℃/分とした。
【0047】
<実施例6、7>
原料組成物の組成比を表2に示すような割合に設定した以外は、実施例5と同様にして焼結体を得た。
【0048】
【表2】
【0049】
<比較例1>
もみ殻灰40重量部に代えて、火山噴出物シラスを加熱発泡して得られるシラスバルーン40重量部を原料組成物に含有せしめるものとした以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0050】
実施例1〜7の焼結体は、電子顕微鏡で観察するといずれも図1に示すような連続状の多孔質構造を呈していた。これに対し、比較例1の焼結体では、図2に示すように連続状の多孔質構造は認められなかった。
【0051】
上記のようにして得られた各焼結体に対し下記測定法により評価を行った。これらの結果を表3に示す。
【0052】
<グリーン強度及び曲げ強度測定法>
成形体のグリーン強度(養生後)及び焼結体の曲げ強度測定は、JIS R1601の曲げ強さ試験法の3点曲げ法に準拠して測定した。
【0053】
<かさ密度測定法>
焼結体の重量をその外容積で除した値をかさ密度とした。
【0054】
<比強度測定法>
焼結体の強度を焼結体の比重で除した値を比強度とした。
【0055】
<収縮率>
線収縮率を採用し、下記算出式により求めた。
【0056】
{(焼結前の長さ)−(焼結後の長さ)}÷(焼結前の長さ)×100
【0057】
<吸水率測定法>
焼結体を水中煮沸後冷却し表面の水を拭き取った後の重量から、焼結体の乾燥重量を引いて吸水量を求め、該吸水量を焼結体の乾燥重量で除した値を吸水率とした。
【0058】
【表3】
【0059】
表から明らかなように、この発明の製造方法で製造された実施例1〜7の焼結体は、いずれも軽量で、連続状の多孔質構造を有し、かつ焼結による収縮率が非常に小さかった。また、原料組成物への水の混合量が多く、かつカルボキシメチルセルロースを混合せしめた系である実施例5〜7の焼結体は、実施例1〜4のものと比較して、かさ密度が小さく、吸水率が大きくなっており、多孔質構造による空洞体積が実施例1〜4のものよりも大きいという特徴を備えている。
【0060】
これに対して、比較例1のシラスバルーン系の焼結体は、軽量性が不十分であるし、連続状の多孔質構造を有しておらず、また焼結による収縮率も大きかった。
【0061】
【発明の効果】
この発明に係る焼結体の製造方法は、もみ殻灰、無機質骨材及びセメントを含む固形原料に水が加えられてなる原料組成物を成形して成形体を得る工程と、セメントの水和反応により前記成形体を硬化させる養生工程と、前記養生を行った成形体を高温で焼成して多孔質焼結体を得る焼結工程とを含むことを特徴とするものであるから、軽量でかつ多孔質の焼結体を製造することができる。また、本製造方法では、もみ殻灰を原料に用いているので、焼結による収縮が非常に小さく、従って所望の形状を忠実に形成できる利点がある。更に、従来廃棄されていたもみ殻灰を原料に用いるので、資源の有効利用になるし、低コストで軽量多孔質焼結体を製造できる。加えて、焼結時の収縮が非常に小さいことから、焼成後の降温速度を大きくしてもひび割れ等が発生しないので、降温速度を大きく設定して生産効率良く焼結体を製造できる利点もある。また、固形原料における、もみ殻灰の含有率が20〜60重量%、無機質骨材の含有率が20〜60重量%、セメントの含有率が10〜50重量%の範囲であるので、成形体のハンドリング性及び焼結体の強度を十分に向上させることができる。
【0062】
原料組成物が、固形原料100重量部に対して水が10〜50重量部混合されたものからなる場合には、セメントの水和反応を十分に促進できると共に、養生前の成形体の保形性も向上できる。
【0063】
無機質骨材として、珪石及び珪酸塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の骨材を用いる場合には焼結体の強度をより向上できる。
【0064】
焼結工程での焼成温度が800〜1500℃である場合には、生産性を向上できるし、連続状の多孔質構造を十分に形成できる。
【0065】
原料組成物に、パルプ繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び鉱物繊維からなる群より選ばれる1種または2種以上の繊維を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記繊維の配合量を2〜5重量部に設定する場合には、養生前の成形体の保形性を向上できるし、養生後の成形体の強度及び焼結体の強度や軽量性を向上させることができると共に、焼結体の寸法安定性も向上できる。
【0066】
原料組成物に、水溶性繊維素類及び水溶性ポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上の粘性付与剤を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記粘性付与剤の配合量を0.5〜4重量部に設定する場合には、原料組成物に粘性や滑性を十分に付与できて、押出成形を行う場合でも成形性良く成形でき、ひいてはより高品質の焼結体を製造できる。更に、これら粘性付与剤は、焼成時に燃えて揮散してしまうので、より多孔度の大きい焼結体を製造することができ、これによりかさ密度のより小さい、吸水率のより大きい多孔質焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の製造方法で得られた焼結体の電子顕微鏡写真である。
【図2】 比較例のシラスバルーン系焼結体の電子顕微鏡写真である。
Claims (6)
- もみ殻灰、無機質骨材及びセメントを含む固形原料であって、もみ殻灰の含有率が20〜60重量%、無機質骨材の含有率が20〜60重量%、セメントの含有率が10〜50重量%の範囲である固形原料に水が加えられてなる原料組成物を成形して成形体を得る工程と、
セメントの水和反応により前記成形体を硬化させる養生工程と、
前記養生を行った成形体を高温で焼成して外部に通ずる連続状の多孔質構造を有した多孔質焼結体を得る焼結工程とを含むことを特徴とする軽量多孔質焼結体の製造方法。 - 前記原料組成物が、前記固形原料100重量部に対して水が10〜50重量部混合されたものからなる請求項1に記載の軽量多孔質焼結体の製造方法。
- 前記無機質骨材として、珪石及び珪酸塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の骨材を用いる請求項1または2に記載の軽量多孔質焼結体の製造方法。
- 前記焼結工程での焼成温度が800〜1500℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の軽量多孔質焼結体の製造方法。
- 前記原料組成物に、パルプ繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び鉱物繊維からなる群より選ばれる1種または2種以上の繊維を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記繊維の配合量を2〜5重量部に設定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の軽量多孔質焼結体の製造方法。
- 前記原料組成物に、水溶性繊維素類及び水溶性ポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上の粘性付与剤を含有せしめるものとし、前記もみ殻灰、無機質骨材及びセメントの総量100重量部に対して前記粘性付与剤の配合量を0.5〜4重量部に設定する請求項1〜5のいずれか1項に記載の軽量多孔質焼結体の製造方法。
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