JP3745852B2 - スクータ形自動二輪車のエンジン配置構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はシートの前方下部に低床式踏板を有するスクータ形自動二輪車に関し、特に、エンジンの配置構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ形自動二輪車のエンジン配置構造は、図4に示すような後方配置形のユニットスイング方式が主流であり、エンジン1と変速機ケース2が一体化されたパワーユニット3を、前端の支軸4を介して上下揺動自在にフレームに支持しており、パワーユニット3とこれの後端部に装着された後車輪5とを、リヤクッション6により一体的に弾性支持している。
【0003】
別の形式としては図5に示すような前下方配置形があり、ダウンチューブ8及び踏板9の前下方に、エンジン1及び伝動杆等の伝動装置10を配置している。
【0004】
上記各従来技術が記載された先行文献としては、特開昭61−81884号公報があり、該公報の第1図及び第3図に上記各形式のスクータ形自動二輪車が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図4に示す後方配置形のユニットスイング方式では、車輛重心が後車輪側に偏るため、前車輪7の接地荷重が小さくなると共にリヤクッション6のばね下荷重が大となり、旋回性能及び高速走行性能は期待できない。従来は低,中速度域で走行する小排気量のスクータが主流であり、これらのスクータでは上述のような運動性能よりもコストや踏板の足置性が重視されている。しかし、近年、スクータの大排気量化及び高出力化に伴い、旋回性能及び高速走行性能等の各種運動性能が要求されてきており、図4のような構造では、十分に対応することが困難な状況となっている。
【0006】
一方、図5に示す前下方配置形では、前記後方配置形よりも重心位置が中央寄りになるが、エンジン本体が下側のダウンチューブ8及び踏板9よりも下方に配置されているため、重心が前寄りとなると共に大きく下方へと偏ってしまい、運動性能の大きな向上は望めない。それに加えて、最低地上高さが低くなり、バンク角が制限され、この点でも旋回性能等が低下する。
【0007】
【発明の目的】
本願発明の目的は、運動性能及びバンク角を十分に確保でき、大排気量化及び高出力化に十分対応することができるスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本願請求項1記載の発明は、ヘッドパイプから後下方へと延びると共に途中で後方へと折れ曲がって腰掛け式シートの前下端部近傍へ延びる左右1対の上側ダウンチューブと、該上側ダウンチューブよりも下方へと間隔をおいて配置される下側ダウンチューブであって上記ヘッドパイプから後下方へと延びると共に途中で後方へと折れ曲がる左右1対の下側ダウンチューブとを備え、下側ダウンチューブの両側に低床式踏板を備えたスクータ形自動二輪車において、エンジンは、上記4本のダウンチューブで囲まれると共に、シートの前端部と低床式踏板の前端部との前後方向幅間に位置している。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造において、前記左右一対の下側ダウンチューブは、途中で後方へと折れ曲がってリヤアームの前端支軸近傍へ延び、発進クラッチは、前記エンジンと共に前記4本のダウンチューブで囲まれている。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造において、前記エンジンは、クランク軸が下側ダウンチューブの下端部分よりも上側に位置するように配置されている。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造において、前記エンジンのクランク軸と平行で伝動機構を介してクランク軸に連動連結する変速用駆動側回転軸を、前記4本のダウンチューブで囲まれたスペース内に配置し、駆動側回転軸に、発進クラッチ及びVベルト式変速機の駆動調車を設けている。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明を適用したスクータ形自動二輪車の左側面図であり、車体フレームの前端ヘッドパイプ11は、前車輪12が懸架されたフロントフォーク13を回動自在に支持すると共にヘッドランプ14を支持しており、フロントフォーク13の上端部にはハンドルバー15が固定されている。
【0011】
車体フレームは、上側ダウンチューブ20と下側ダウンチューブ21をそれぞれ左右1対備えており、上側ダウンチューブ20は、前記ヘッドパイプ11の上端部から後下方へと斜めに延びると共に途中で後方へと湾曲し、腰掛式シート17の前下端部17aの近傍まで延びており、下側ダウンチューブ21は、上記上側ダウンチューブ20から下方へと間隔をおいて配置され、前記ヘッドパイプ11の下端部から後下方へと斜めに延びると共に途中で後方へと略水平に延び、スイング式リヤアーム22の前端支軸23の近傍まで延び、さらに後上方へと延びている。
【0012】
車体フレームには、これの上側及び左右両側を覆うメインカバー25と前側を覆う前面カバー29等の各種カバーが取り付けられており、メインカバー25の左右両側には、下側ダウンチューブ21の下端水平部分に概ね沿うように左右1対の低床式踏板26が設けられている。該踏板26は前記スイング式リヤアーム22の支軸23の近傍から概ね水平前方へと延びると共に途中からやや前上がりに傾斜し、その前端部26aは前面カバー29につながっている。
【0013】
図3はカバーを外して示す要部の左側面図であり、エンジン33は上下ダウンチューブ20,21で形成された狭い空間に収めるためにそのシリンダ中心線Cが略水平状態に近い前倒し姿勢で配置されており、エンジン後部の上下と前部の上部にそれぞれ左右1対の取付ブラケット32が形成されており、各取付ブラケット32は、フレームの各クロスメンバー27に形成されたエンジンマウント28に、弾性部材などを介して取り付けられている。エンジン33は、前端部から順に、シリンダヘッド35、シリンダブロック34及びクランクケース36を一体的に有し、クランクケース36は後方へと張り出す軸ケース部36aを一体に備えている。38は気化器、39はラジエター、40は吸気用のインテークエアボックスである。
【0014】
エンジン33のクランク軸41は下側ダウンチューブ21よりも上に位置しており、より詳細には、図3から明確なように、クランク軸41は下側ダウンチューブ21の下端部分よりも上側に位置しており、エンジン33全体の上下方向幅は、オイルパン42を除いて、下側ダウンチューブ21と上側ダウンチューブ20の間に収まっており、エンジン全体の前後方向幅は、シート17の前端部17aと踏板26の前端部26aの前後方向幅内に収まっている。
【0015】
リヤアーム22の支軸23は、下側ダウンチューブ21に溶着された左右1対のブラケット54間に固定されており、上記支軸23にリヤアーム22の前端部が回動自在に嵌合支持され、リヤアーム22の後端部は後車輪30を支持すると共にリヤクッション31を介して上下揺動自在に上部フレームに懸架されている。
【0016】
図2はカバーを外して示す要部の平面図であり、左右1対の上側ダウンチューブ20は、エンジン後端部に対応する位置までは比較的狭い左右間隔を保った状態で後方へと延び、それ以後はハの字形に広がり、後部のフレームへとつながっており、一方、下側ダウンチューブ21は、ヘッドパイプ11の直後から広く左右に広がり、後方へと延びている。エンジン33の左右幅が4本のダウンチューブ20,21で囲むスペース内にコンパクトに収まるように、クランク軸41と平行な回転軸44を、クランクケース36の軸ケース部36a内に回転自在に支持し、ケース部36a内の回転軸44部分に遠心型発進クラッチ45及び駆動調車推力発生機構46を装着すると共に、ケース部外にVベルト式自動変速機51の駆動調車48を装着してある。回転軸44とクランク軸41とは、1対のスプロケット49,50及びチェーン52よりなる1次減速用伝動機構47により連動連結している。
【0017】
リヤアーム22の支軸23には筒軸55が回転自在に嵌合しており、該筒軸55には上記Vベルト式自動変速機51の被駆動調車57が設けられると共に2次減速用伝動機構60の駆動スプロケット58が固着されている。被駆動調車57は前記駆動調車48とVベルト53により連動連結している。駆動スプロケット58は後車輪30の被駆動スプロケット62にチェーン61を介して連動連結し、2次減速用伝動機構60を構成している。
【0018】
前記Vベルト式自動変速機51の駆動調車48及び被駆動調車57は、可変径シーブを有する周知の変速機であり、それぞれ軸方向に固定された固定シーブと軸方向に移動可能な可動シーブとから構成され、両シーブ間の間隔が変化することにより、変速比を自動的に変更するようになっている。
【0019】
【その他の実施の形態】
(1)遠心クラッチ45などを備えた回転軸44と、クランク軸41との間の伝動機構としては、チェーンのような巻掛伝動機構の他に、ギヤ伝動機構を備えることもできる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本願請求項1、2又は3記載の発明によると、左右1対の上側ダウンチューブ20と、該上側ダウンチューブ20よりも下方へと間隔をおいて配置される左右1対の下側ダウンチューブ21とでエンジン33を囲み、又はエンジン33と共に発進クラッチ45を囲み、かつ、腰掛式シート17の前端部17aと低床式踏板26との間の前後方向幅内に前記エンジン33等を位置させるようにしているので、エンジン33が車体全体の略中央の重心近くに位置することになると共に、リヤショック31のばね下荷重を軽減することができ、しかも最低地上高を高く維持して、大きなバンク角を確保することができる。従って、旋回性能及び高速走行性能等の運動性能が向上し、特に、大排気量高出力のスクータ形自動二輪車に適したエンジン配置となる。
【0021】
(2)4本のダウンチューブ20,21でエンジンの略全体を囲んでいることになるので、4本のダウンチューブ20,21はエンジン33を覆う役割を果たす。
【0022】
(3)請求項4記載の発明によると、クランク軸41に発進クラッチ等を装着するのではなく、クランク軸41とは別の回転軸44をクランク軸41と平行にクランクケース36に支持し、前記回転軸44に発進クラッチ45及び駆動調車推力発生機構46等を装着しているので、エンジン全体の左右幅をコンパクトにすることができる。したがって、エンジンを4本のチューブで囲みながらも、ライダーは股を大きく広げることなく、左右の踏板に足を載せて走行することができ、足置性も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明を適用したスクータ形自動二輪車の左側面図である。
【図2】 図1の要部の平面図である。
【図3】 図1と同じ自動二輪車の要部の左側面図である。
【図4】 従来例の側面図である。
【図5】 別の従来例の側面図である。
【符号の説明】
11 ヘッドパイプ
17 腰掛式シート
20 上側ダウンチューブ
21 下側ダウンチューブ
22 スイング式リヤアーム
26 低床式踏板
31 リヤクッション
33 エンジン
45 発進クラッチ
48 駆動調車
51 Vベルト式自動変速機
Claims (4)
- ヘッドパイプから後下方へと延びると共に途中で後方へと折れ曲がって腰掛け式シートの前下端部近傍へ延びる左右1対の上側ダウンチューブと、該上側ダウンチューブよりも下方へと間隔をおいて配置される下側ダウンチューブであって上記ヘッドパイプから後下方へと延びると共に途中で後方へと折れ曲がる左右1対の下側ダウンチューブとを備え、下側ダウンチューブの両側に低床式踏板を備えたスクータ形自動二輪車において、
エンジンは、上記4本のダウンチューブで囲まれると共に、シートの前端部と低床式踏板の前端部との前後方向幅間に位置していることを特徴とするスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造。 - 請求項1記載のスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造において、
前記左右一対の下側ダウンチューブは、途中で後方へと折れ曲がってリヤアームの前端支軸近傍へ延び、
前記エンジンは、発進クラッチと共に、前記4本のダウンチューブで囲まれていることを特徴とするスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造。 - 請求項1又は2記載のスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造において、
前記エンジンは、クランク軸が下側ダウンチューブの下端部分よりも上側に位置するように配置されていることを特徴とするスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造において、
前記エンジンのクランク軸と平行で伝動機構を介してクランク軸に連動連結する変速用駆動側回転軸を、前記4本のダウンチューブで囲まれたスペース内に配置し、駆動側回転軸に、発進クラッチ及びVベルト式変速機の駆動調車を設けていることを特徴とするスクータ形自動二輪車のエンジン配置構造。
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