JP3745531B2 - 電子写真感光体、電子写真方法、電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、詳しくは、繰り返し使用によっても感光体の帯電電位と残留電位の安定性に優れた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光プリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用されいわゆるデジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要性が益々高まっていくと予想される。
【0003】
一方、カールソンプロセスおよび類似プロセスにおいて繰り返し使用される電子写真感光体の条件としては、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光特性に代表される静電特性が優れていることが要求される。一般に繰り返し使用による帯電性の低下と残留電位の上昇が、感光体の寿命特性を支配することが多くの感光体で経験的に知られており、従来の顔料を電荷発生材として用いた感光体では繰り返し使用による安定性は未だ十分とはいえず、その技術の完成が熱望されていた。
【0004】
ここで主に使用した顔料はオキシチタニウムフタロシアニン(TiOPc)であるがその合成法や電子写真特性に関する文献としては、例えば特開昭57−148745号公報、特開昭59−36254号公報、特開昭59−44054号公報、特開昭59−31965号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報などが挙げられる。しかしながら、これらの方法においても帯電性、残留電位等からみて十分な特性のものは得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真感光体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は下記のとおりである。
【0008】
(1) 導電性支持体上に感光層を設けた電子写真感光体において、該感光層が、乾燥した状態のチタニルフタロシアニンに500〜5000kg/cm 2 の圧力を加えて得られるチタニルフタロシアニンを溶媒と共に分散した塗工液を用いて形成されたことを特徴とする電子写真感光体。
【0009】
(2) 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置において、該電子写真感光体が前記(1)記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
【0010】
(3) 少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が前記(1)又は(2)記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【0011】
(4) 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写、クリーニング、除電を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体として前記(1)又は(2)記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真方法。
(5)前記(1)記載の電子写真感光体に用いるチタニルフタロシアニン。
【0012】
(9) 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写、クリーニング、除電を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体として前記(4)又は(5)記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真方法。
【0013】
加圧処理によりなぜ電気特性が良好となるかは現状では理由が不明である。しかし加圧処理をすることにより顔料中に存在する空孔が少なくなり、それに伴い残留電位あるいは帯電低下の要因となる因子が除去されたことが考えられる。したがって、本方法はオキシチタニウムフタロシアニンに限らずいずれの構造の顔料にても有効と予想される。
【0014】
本発明に用いられる、オキシチタニウムフタロシアニン顔料の基本構造は次の一般式(I)で表わされる。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中X1、X2、X3、X4は各々独立に各種ハロゲン原子を表し、n、m、l、kは各々独立的に0〜4の数字を表す)
顔料の加圧の方法は通常の油圧プレスでよいが、他のいずれの方法にてもよい。圧力は低くても有効であるが50kg/cm2以下では効果が小さい。250kg/cm2以上が好ましく、500kg/cm2以上がより好ましく、1000kg/cm2以上がさらに好ましい。
【0017】
本発明は、特に顔料が限定されるものではないが、例えばオキシチタニウムフタロシアニン顔料を加圧する場合は500〜5000kg/cm2が好ましく、1000〜3000kg/cm2がより好ましい。加圧時に温度を調整することも有効である。
【0018】
以下、本発明を図面に沿って説明する。
【0019】
図1は、本発明に用いられる電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体31上に電荷発生材料と電荷輸送材料を主成分とする単層感光層33が設けられている。
【0020】
図2、3は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが、積層された構成をとっている。
【0021】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
【0022】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、THF、MDC、MEK、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0023】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロンなどの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブよって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0024】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合から述べる。
【0025】
電荷発生層35は、請求項の方法により作成した電荷発生層用顔料を使用して作成する。
【0026】
電荷発生層塗工液は、前記顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0027】
必要に応じて電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0028】
電荷発生層35には、上記の顔料の他にその他の電荷発生材料を併用することも可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。
【0029】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等があげられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
【0030】
電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0031】
電荷輸送層37は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0032】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある、電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0033】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エミナン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独または2種以上混合して用いられる。
【0034】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0035】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0036】
本発明において電荷輸送層37中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
【0037】
次に感光層が単層構成33の場合について述べる。上述した加圧した顔料を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。単層感光層は、電荷発生物質および電荷輸送層物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。さらに、この感光層には上述した電荷輸送材料を添加した機能分離タイプとしてもよく、良好に使用できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0038】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
【0039】
本発明の電子写真感光体には、導電性支持体31と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0040】
これらの下引き層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0041】
本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアクリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
【0042】
本発明においては感光層と保護層との間に中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく通常の塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0043】
次に図面を用いて本発明の電子写真方法ならびに電子写真装置を詳しく説明する。
【0044】
図4は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
【0045】
図5において、感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電チャージャ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
【0046】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0047】
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0048】
かかる光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0049】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびクリーニングブラシ15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行われることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0050】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。
【0051】
これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0052】
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0053】
図5には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は駆動ローラ22a、22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行われる。図5においては、感光体21(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行われる。
【0054】
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施態様を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。図5において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
【0055】
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。
【0056】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等が多く挙げられるが、一般的な例として、図6に示すものが挙げられる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0058】
まず、実施例に用いるオキシチタニウムフタロシアニン顔料の具体的な合成例を述べる。
【0059】
(製造例1)
フタロジニトリル52.5部と1−クロロナフタレン400部を撹拌混合し、窒素気流下で四塩化チタン19部を滴下する。滴下終了後、徐々に200℃まで昇温し、反応温度を190℃〜210℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷し130℃になったところ熱時濾過し、ついで1−クロロナフタレンで粉体が青色になるまで洗浄、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後、乾燥し、42.2部の粗チタニルフタロシアニン顔料を得た。得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち6部を96%硫酸100gに3〜5℃下撹拌、溶解し、濾過した。得られた硫酸溶液を氷水3.5リットル中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキを得た。このウェットケーキに1,2−ジクロロエタン150部を加え、室温下2時間撹拌した後、メタノール250部をさらに加え撹拌、濾過した。これをメタノール洗浄し、さらに乾燥してオキシチタニウムフタロシアニン顔料4.9部を得た。
【0060】
製造例1により得られたオキシチタニウムフタロシアニン顔料のX線回析スペクトルを図7に示す。得られたオキシチタニウムフタロシアニン顔料はブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°および27.2°±0.2°にある結晶形を有していることがわかる。
【0061】
(加圧方法)
上記合成オキシチタニウムフタロシアニンを錠剤成形器に入れ、12トン油圧プレスを使用して設定温度70℃にて加圧した。圧力は1800kg/cm2で加圧時間は3分である。加圧後のX線スペクトルを図8に示す。
【0062】
実施例1
アルミ板上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、積層感光体を作製した。
【0063】
◎下引き層塗工液
二酸化チタン粉末 15部
アルキドメラミン樹脂 3部
2−ブタノン 150部
◎電荷発生層塗工液
前記製造例1の加圧TiOPc顔料粉末 2部
4重量%ポリビニルブチラールのメチルエチルケトン溶液 33部
メチルエチルケトン 67部
イオン交換水 1部
これを2mmジルコニアビーズで20時間分散した後、メチルエチルケトン120部を加えてさらに2時間分散した。
【0064】
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(ポリカZ) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
塩化メチレン 80部
【0065】
【化2】
【0066】
比較例1
加圧処理をしない以外は製造例1と同様にして作成した顔料を使用して実施例1と同様の方法で感光体を作成した。
【0067】
次にこうして得られた積層型電子写真感光体の可視域での感度を調べるためこの感光体に静電複写紙試験装置((株)川口電気製作所製)を用いて暗所で−6kvのコロナ放電を20秒間行って帯電させた後の電位Vm(V)を測定し、さらに20秒間暗所にて放置したのち表面電位V0(V)を測定した。ついで780nmの単色光を感光体表面で5μW/cm2となる光量で照射し−800ボルトからの電位が1/2になるまでの露光量E1/2(μJ/cm2)を算出した。
【0068】
また、露光後30秒後の残留電位V30(V)を調べた。また、5.6μAの電流で800Vとなるような光量で15分間疲労後の結果も示した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
加圧処理を行った場合は暗減衰(V0/Vm)が小さく、残留電位(V30)も小さいことがわかる。
【0071】
製造例2
ジシアノベンゼン20部、チタニルテトラブトキシド15部、尿素5部及び1−オクタノール24部を150〜180℃で加熱し冷却後、メタノール、トルエン、水で洗浄しオキシチタニウムフタロシアニンを合成した。得られたオキシチタニウムフタロシアニン顔料についてのX線回折スペクトルを図9に示す。2θの主要ピークが少なくとも26.2°±0.2°に存在することがわかる。これを70℃温度下で1800kg/cm2で加圧した。加圧後のX線回折スペクトルを図10に示す。
【0072】
実施例2
実施例1において電荷発生層塗工液を以下のものとした以外は同様にして感光体を作成した。
【0073】
◎電荷発生層塗工液
前記の製造例2の加圧TiOPc顔料粉末 2部
メチルエチルケトン 40部
これを2mmジルコニアビーズで20時間分散した後、
4重量%ポリビニルブチラールのメチルエチルケトン溶液 33部
メチルエチルケトン 120部
を加えてさらに2時間分散した。
【0074】
比較例2
顔料に加圧処理を施さない以外は実施例2と同様にして感光体を作成し実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
加圧処理を行った場合は暗減衰(V0/Vm)が小さく、残留電位(V30)も小さいことがわかる。
【0077】
製造例3
製造例1の加圧前の顔料を200kg/cm2で21時間常温で加圧した。得られた顔料のX線回折スペクトルを図11に示す。
【0078】
実施例3
製造例3で得られた加圧顔料を使用した以外は実施例2と同様にして感光体を作成し評価した。
【0079】
比較例3
製造例3において加圧処理を施さない顔料を使用した以外は実施例3と同様にして感光体比較例3を作成した。実施例3、比較例3の結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、顔料に加圧処理を施すことにより繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真感光体が提供される。また、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真方法が提供される。さらに、繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる電子写真感光体を表わす断面図である。
【図2】本発明に用いられる電子写真感光体の他の例を表わす断面図である。
【図3】本発明に用いられる電子写真感光体の他の例を表わす断面図である。
【図4】本発明の電子写真プロセスおよび装置を説明するための図である。
【図5】本発明の電子写真プロセスの他の例の説明図である。
【図6】本発明を適用するプロセスカートリッジの説明図である。
【図7】製造例1のオキシチタニウムフタロシアニン顔料のX線回折スペクトル図である。
【図8】同上顔料の加圧後のX線回折スペクトル図である。
【図9】製造例2のオキシチタニウムフタロシアニン顔料のX線回折スペクトル図である。
【図10】同上顔料の加圧後のX線回折スペクトル図である。
【図11】製造例3の顔料のX線回折スペクトル図である。
Claims (5)
- 導電性支持体上に感光層を設けた電子写真感光体において、該感光層が、乾燥した状態のチタニルフタロシアニンに500〜5000kg/cm 2 の圧力を加えて得られるチタニルフタロシアニンを溶媒と共に分散した塗工液を用いて形成されたことを特徴とする電子写真感光体。
- 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置において、該電子写真感光体が請求項1記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が請求項1又は2記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
- 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写、クリーニング、除電を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体として請求項1又は2記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真方法。
- 請求項1記載の電子写真感光体に用いるチタニルフタロシアニン。
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