JP3742336B2 - 航法支援装置、この航法支援装置を搭載する航空機、航法支援方法、および航法支援処理プログラム - Google Patents

航法支援装置、この航法支援装置を搭載する航空機、航法支援方法、および航法支援処理プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機に搭載して使用され、航空機の状態を位置および高度の面から管理する3次元航法に、時間管理の要素を加えた4次元航法を支援するための航法支援装置、この航法支援装置を搭載する航空機、航法支援方法、および航法支援処理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の航法支援装置は、航空機の状態を位置および高度の面から管理する3次元航法に対応している。既存の航法支援システムでは、RNP(Required Navigation Performance)やANP(Actual Navigation Performance)という概念により、横方向(すなわち航空機の進行方向に垂直な方向)の位置精度や飛行間隔などが規定されている。
【0003】
航空機に搭載されるFMC(Flight Management Computer)は、接続される航法センサ群からデータの供給を受け、航法データを計算する。各々の航法センサの状態から推定航法精度ANPが求められ、その値は、RNPで規定された範囲を超えないようにMCDU(Multi-functional Control Display Unit)などを介してパイロットやFMC自身によりモニタされる。航空機の高度は電波高度計や気圧高度計により取得され、目標の高度を維持しているかどうかなどがパイロットやFMCによりモニタされる。また縦方向(すなわち航空機の進行方向)に関しては、例えば前方の航空機から2分間以上の間隔を設けるというように、時間を基準とする運用が実施されている。このように、従来の航法は、航空機の位置を3次元的に管理する。
【0004】
ところで、近年になり航空輸送の高密度化が進んでいる。将来の導入が確実視されているCNS/ATM(Communication Navigation Surveillance / Air Traffic Management)により、航空輸送の高密度化は更に高まると推定される。しかしながら従来の時間間隔を基準とする航空管制では、安全性の確保のために大きなマージンをとらざるを得ず、航空輸送の高密度化に不利である。
【0005】
そこで、飛行間隔を経済的に設定するため、3次元航法に時間管理の要素を採り入れた4次元航法が、新たな概念として提唱されている。これに倣い、近年のFMCには目標到達時刻(RTA:Required Time of Arrival)機能を装備することが一般的であり、航空機の時間管理の支援が推し進められている。
【0006】
このような環境を踏まえ、安全性を維持しつつも航空輸送の経済性の向上を図ることがこれからの社会の要請であり、時間管理による最適な縦方向飛行間隔の設定が航空機の運航において重要な課題となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、安全性を維持しつつ縦方向飛行間隔を適切に設定することが急務となっている。
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、安全性を維持しつつ、経済的な航空輸送を実現可能な航法支援装置、この航法支援装置を搭載する航空機、航法支援方法、および航法支援処理プログラムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、航空機に搭載して使用される航法支援装置にあって、前記航空機の到達すべき時刻が予め設定された目標ポイントに当該航空機が到達すると推定される時刻を求め、この推定到達時刻と前記到達すべき時刻との時間的誤差を算出する例えば演算部1などの誤差算出手段と、この誤差算出手段で算出された時間的誤差を、前記航空機の飛行速度に基づいて距離的誤差に変換する例えば演算部1などの変換手段と、この変換手段で得られた距離的誤差を視覚的に表示する例えば表示部3などの表示手段とを具備することを特徴とする。
また本発明は、表示手段において、距離的誤差に応じた長さの例えばΔPTIMEのような誤差シンボルを、航空機を示す航空機シンボルと共に表示することを特徴とする。
【0009】
このような手段を講じることにより、ウェイポイントなどの目標ポイントへの到達推定到達時刻と、このポイントに到達すべき時刻との差が、誤差算出手段により算出される。そして、この時間的誤差と、航空機の速度とから、距離的誤差が変換手段により算出される。この距離的誤差は、例えば誤差シンボルなどのかたちで表示手段に表示される。
【0010】
したがって本発明によれば、航空機のパイロットは、目標ポイントへの時間的誤差を、距離的誤差として直感的に把握できるようになる。これにより、飛行の安全を確保することが可能になる。さらには、前方を飛行する航空機との間隔を適正に保持することが容易に行なえるようになり、これにより経済的な航空輸送を実現することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係わる航法支援装置を搭載する航空機10の例を示す図である。この航空機10は、慣性航法装置、GPS(Global Positioning System)、DMEなどの種々の航法センサを搭載する。
【0012】
図2は、図1に示される航空機10における操縦席の外観の一例を示す図である。操縦席には、種々の情報を視覚的に表示する表示部3、パイロットによる情報入力を受け付ける操作卓、各種の情報を処理する演算部などが備えられる。
【0013】
図3は、本実施形態に係わる航法支援装置の構成を示す機能ブロック図である。この装置は航空機10に搭載して使用され、演算部1と、入力部2と、表示部3と、音声部4と、航法センサ5と、時計部6とを備える。
【0014】
演算部1は例えばCPU(Central Processing Unit)として実現され、装置を統括的に制御する。入力部2は、操作卓やキーボードなどを備え、システムに種々の情報を入力するために使用される。表示部3は液晶表示器などとして実現され、航空機10のパイロットに種々の情報を視覚的に提供する。音声部4は、必要に応じて警報メッセージを発生させ、パイロットに注意を促す。航法センサ5は、例えばINS、GPS、DMEなどを備え、演算部1に航法計算のための情報を提供する。時計部6は、演算部1に現在時刻を提供する。
【0015】
このような構成において、演算部1はFMCに、入力部2及び表示部3は、MCDUにその機能を内蔵させても良い。時計部6は、一般にコックピット・クロックとして予め航空機10に搭載される。
【0016】
図4は、上記構成の航法支援装置における処理手順を示すフローチャートである。図4のステップS1では、パイロットにより、航空機10の飛行経路、通過すべき目標ポイント、このポイントヘの目標到達時刻(RTA)などの情報が入力部2を介して入力される。以下、時間管理の対象とすべき目標ポイントをWPTRTAと表記する。演算部1は、現在の状況から飛行計画に基づく飛行を続けた場合の目標ポイントへの推定到達時刻(ETA:Estimated Time of Arrival)を計算し、RTAとの時間差により時間管理を実施する。
【0017】
ステップS2では、航法センサ5から与えられるデータに基づき、航空機10の位置(POS)や速度(VEL)などの航法データが演算部1により計算される。次のステップS3では、ステップS1において入力された飛行経路や、ステップS2において得られた航空機10の現在の速度から、WPTRTAまでの所要時間(TIMEWPT)が計算される。ステップS4では、現在時刻が時計部6から取得される。ステップS5では、式(1)に示されるように、現在時刻にTIMEWPTが加算されることにより、ETA(WPTRTAへの推定到達時刻)が算出される。
【数1】
Figure 0003742336
【0018】
図5は、WPTRTA、ETA、RTA、およびTIMEWPTの関係を示す模式図である。このように、TIMEWPTは予めステップS1において設定された飛行経路に沿って定義される。
【0019】
図4におけるステップS6では、次式(2)に基づいて、WPTRTAにおける到達時刻誤差ΔTimeが計算される。
【数2】
Figure 0003742336
【0020】
ステップS7では、ステップS6において算出された到達時刻誤差ΔTimeが、次式(3)に基づいて位置誤差ΔPTIMEに変換される。
【数3】
Figure 0003742336
【0021】
次のステップS8では、ステップS7において算出された位置誤差ΔPTIMEが、航空機10の現在位置(POS)と共に表示部3に表示される。
図6は、表示部3における表示例を示す図である。図中ハッチング部分が、位置誤差ΔPTIMEに相当する。このように、航空機10が予定位置に到達すべき時刻に対して遅れて飛行している場合には、航空機シンボルの進行方向前方に位置誤差ΔPTIMEが表示される。逆に、航空機10が予定時刻よりも進んで飛行している場合には、直シンボルの後方に位置誤差ΔPTIMEが表示される。
【0022】
図4のステップS9では、演算部1において、予め設定された閾値と位置誤差ΔPTIMEとが比較され、その結果に基づいて、ステップS10において警報を発生させるか否かが判定される。またステップS9においては、位置誤差ΔPTIMEが閾値を超えている場合、演算部1によりその程度が判定される。
【0023】
ステップS10における判定の結果に応じて、警報の出力が必要である場合には、ステップS11において、音声部4から音声メッセージによる警報情報が発生される。あるいは、表示部3に、警報情報が表示される。このとき、警報レベルに応じて音声メッセージの出力形態(音声のトーン、読み上げメッセージの違いなど)や、表示される警報の形態(CAUTION、ALERTなど)が変化させられる。
【0024】
そして、ステップS12において、初期入力値の変更が必要か否かがパイロットにより判断される。変更が必要無ければ、処理手順はステップS2に戻る。変更が必要であれば、処理手順は再びステップS1から開始される。
【0025】
以上の処理手順は、RAM(Random Access Memory)などに読み込まれた制御プログラムに基づいて、演算部1のCPU(図示せず)などによりソフトウェア的に実施される。なお、ステップS1〜ステップS4の処理手順は、一般的なFMCが備える。ステップS1の手順は初期設定時に実施されるのに対し、ステップS2〜ステップS12の手順は、リアルタイムで周期的に繰り返される。
【0026】
このように本実施形態では、目標ポイントへの推定到達時刻(ETA)を算出し、目標に到達すべき時刻(RTA)との差を求める。これより得られた時間的誤差に航空機の速度を乗算し、時間的誤差を距離的誤差に変換する。距離的誤差は、ΔPTIMEとして表示部3にシンボル表示する。これにより航空機の飛行に係わる時間的誤差を、距離的誤差としてビジュアル化して表示する。また、距離的誤差が予め定められた閾値を超えた場合には、表示メッセージや音声メッセージなどの警報を発するようにする。これらの警報のレベルは、誤差の程度に応じて段階的に可変される。
【0027】
このようにしたので、パイロットは時間的誤差を距離的誤差として一目瞭然に認識できるようになり、その結果、飛行の安全に寄与できるようになる。すなわち、航空機10の時間誤差を水平方向の位置誤差としてパイロットに知らせることができ、飛行安全を確保しつつ、縦方向(進行方向)の適正な間隔を保ちつつ飛行することを支援することができる。
【0028】
また、航空機側において管理される飛行間隔の確実性をより高められるので、航空管制側にとっては、飛行時間の間隔を狭めることが可能となる。このため航空運輸の経済性を高められる。
【0029】
また本発明では、従来のFMCにおける飛行管理機能のうち、特にETAの機能をベースとして、任意のポイントヘの到達時間誤差を位置誤差に置き換えるようにしているので、既存のシステムに付加すべき構成が最小限で済むため、コスト的にも有利である。
【0030】
さらに、従来の時間による縦方向間隔の管理方式では、航空機の種類によって確保すべき時間間隔を変える必要があった。しかしながら本発明では、時間的誤差を位置的誤差に変換するようにしているので、異なる飛行速度の航空機を一元的に管理することが可能になる。したがって、ヘリコプタなどの低速機から超音速機までを、同一の基準で進行方向の誤差を把握することが可能となる。
【0031】
これらのことから、安全性を維持しつつ、経済的な航空輸送を実現することが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば位置誤差ΔPTIMEの表示部3における描画形態は、直線状に限らない。すなわち、図5に示されるように予定飛行経路が曲がっている場合には、位置誤差ΔPTIMEを飛行経路に沿うように曲げて表示しても良い。
【0032】
また航空機には、距離的誤差の精度を示す指標としてANPが設定される。この値に応じて、警報を発するか否かの判断基準となる閾値を可変するようにしても良い。
このほか、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施を行うことができる。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、安全性を維持しつつ、経済的な航空輸送を実現可能な航法支援装置、この航法支援装置を搭載する航空機、航法支援方法、および航法支援処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係わる航法支援装置を搭載する航空機10の例を示す図。
【図2】 図1に示される航空機10における操縦席の外観の一例を示す図。
【図3】 本発明の実施形態に係わる航法支援装置の構成を示す機能ブロック図。
【図4】 図3に示される構成の航法支援装置における処理手順を示すフローチャート。
【図5】 WPTRTA、ETA、RTA、およびTIMEWPTの関係を示す模式図。
【図6】 図2または図3に示される表示部3における表示例を示す図。
【符号の説明】
1…演算部
2…入力部
3…表示部
4…音声部
5…航法センサ
6…時計部
10…航空機

Claims (14)

  1. 航空機に搭載して使用される航法支援装置において、
    前記航空機の到達すべき時刻が予め設定された目標ポイントに当該航空機が到達すると推定される時刻を求め、この推定到達時刻と前記到達すべき時刻との時間的誤差を算出する誤差算出手段と、
    この誤差算出手段で算出された時間的誤差を、前記航空機の飛行速度に基づいて距離的誤差に変換する変換手段と、
    この変換手段で得られた距離的誤差を視覚的に表示する表示手段とを具備することを特徴とする航法支援装置。
  2. 前記表示手段は、前記航空機を示す航空機シンボルと共に、前記距離的誤差に応じた長さの誤差シンボルを表示することを特徴とする請求項1に記載の航法支援装置。
  3. 前記表示手段は、前記誤差算出手段において算出された時間的誤差の符号に応じて、前記航空機シンボルに対する前記航空機の進行方向前方または進行方向後方に、前記誤差シンボルを表示することを特徴とする請求項2に記載の航法支援装置。
  4. 前記表示手段は、前記航空機の予定航路帯に沿うように前記誤差シンボルを表示することを特徴とする請求項2に記載の航法支援装置。
  5. さらに、前記変換手段で得られた距離的誤差が閾値を超えた場合に、警報を発する報知手段を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の航法支援装置。
  6. 前記報知手段は、前記距離的誤差と前記閾値との差に応じて前記警報のレベルを段階的に変化させることを特徴とする請求項5に記載の航法支援装置。
  7. 前記報知手段は、前記距離的誤差の精度に応じて前記閾値を変化させることを特徴とする請求項5に記載の航法支援装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の航法支援装置を搭載することを特徴とする航空機。
  9. 航空機に使用される航法支援方法であって、
    前記航空機の到達すべき時刻が予め設定された目標ポイントに、当該航空機が到達すると推定される時刻を求める第1ステップと、
    この第1ステップで求められた推定到達時刻と前記到達すべき時刻との時間的誤差を算出する第2ステップと、
    この第2ステップで算出された時間的誤差を、前記航空機の飛行速度に基づいて距離的誤差に変換する第3ステップと、
    この第3ステップで得られた距離的誤差を視覚的に表示する第4ステップとを具備することを特徴とする航法支援方法。
  10. 前記第1ステップは、
    前記航空機の現在位置および速度を求める第5ステップと、
    この第5ステップにおいて求められた現在位置から前記目標ポイントに至る到達距離を算出する第6ステップと、
    この第6ステップにおいて求められた到達距離と前記第5ステップで求められた速度とから前記目標ポイントまでの所用時間を算出する第7ステップと、
    この第7ステップにおいて算出された所用時間を現在時刻に加算して前記推定到達時刻を算出する第8ステップとを含むことを特徴とする請求項9に記載の航法支援方法。
  11. さらに、前記第3ステップにおいて得られた距離的誤差が閾値を超えた場合に、警報を発する第9ステップを具備することを特徴とする請求項9に記載の航法支援方法。
  12. さらに、前記第3ステップにおいて得られた距離的誤差と前記閾値との差に応じて、前記警報のレベルを段階的に変化させる第10ステップを具備することを特徴とする請求項11に記載の航法支援方法。
  13. 前記第1ステップ乃至第4ステップは周期的に繰り返し実施されることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の航法支援方法。
  14. 航空機に搭載されるコンピュータを制御するための航法支援処理プログラムであって、
    前記コンピュータに、
    前記航空機の到達すべき時刻が予め設定された目標ポイントに、当該航空機が到達すると推定される時刻を求める第1ステップと、
    この第1ステップで求められた推定到達時刻と前記到達すべき時刻との時間的誤差を算出する第2ステップと、
    この第2ステップで算出された時間的誤差を、前記航空機の飛行速度に基づいて距離的誤差に変換する第3ステップと、
    この第3ステップで得られた距離的誤差を視覚的に表示する第4ステップとを実施させる命令を記述したことを特徴とする航法支援処理プログラム。
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