JP3741834B2 - 偏平型カーボン整流子及びその製造方法 - Google Patents

偏平型カーボン整流子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用燃料供給ポンプ等に用いられる小形モーターの偏平型カーボン整流子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属製の整流子を用いたモーターを組み込んだ自動車用燃料供給ポンプにおいては、劣化又は酸性化したガソリンが使用されると、整流子片がガソリンにより腐食摩耗してモーターの寿命を低下させる。そこで、金属製の整流子片に代えて腐食の虞れのないカーボンセグメントを用いた整流子がいろいろ提案されているところ、カーボンセグメントとモーターの巻線を接続するための接続端子とを接合するための設計、生産技術上の工夫を要する。
かかるカーボンセグメントを用いた整流子として、カーボンセグメントの下面に接触する金属板に同セグメントの内外周面に食い込む固定部材を設け、同セグメントの内外周面の固定部を合成樹脂により封入固定する構造(特開平7−183074号)、カーボン製の整流子片が支持体に直接固着され、整流子片の外周面に接続端子をもつ金属板が固着された構造(特開平8−65966号)、接続端子を備えた金属板上にカーボン製の整流子片をハンダなどにより電気的に接合した構造(特開平8−126258号)、カーボンセグメントの外周面の突部に金属製円筒体の凹部が係合されると共に、該円筒体の接続片がカーボンセグメントの外周面とハンダにより電気的に接合した構造(特開平7−298559号)のものが、公開特許公報により開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のカーボンセグメントを用いた整流子において、後者のものはカーボンセグメントを金属板部材に固定するためにハンダ付け処理を採用しているので、その接合部分が劣化又は酸性化したガソリンによって腐食して導電性が低下する不都合を生ずる。そこで、本発明者は腐食の虞れを有する金属板部材に代えて、耐食性に優れたセラミックス素材を利用することに着目してこの発明を完成するに至った。
【0004】
この発明の目的は、カーボンセグメントと接続端子との接合固定を金属板部材のかしめ加工やハンダ付け処理によらないで強固に施し、耐食性に優れ、低コストで製造することができる偏平型カーボン整流子を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ブラシとの摺動面が回転子の軸方向に対して垂直である偏平型カーボン整流子において、セラミックス製の盆形形状のホルダーの内面中央位置にセラミックス製の筒片を設け、該筒片の外周囲に複数個のカーボンセグメントを微小間隙をおいて円環状に配置し、各カーボンセグメントの外周面と前記ホルダーの内周面との間に接続用端子をそれぞれ挟着し、電気的絶縁性を有する合成樹脂により前記筒片の内面、ホルダーの背面及びその外側面を封入するように一体成形された支持体を設け、該支持体にモーターの回転軸を挿入する軸孔を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の偏平型カーボン整流子において、前記筒片の外周囲に形成された突条と、前記ホルダーの内周面に形成された突条とにより、前記カーボンセグメントの微小間隙が保持されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
同様の目的を達成するために請求項3に記載の発明は、中央の平坦な窪み面に複数個の係止穴が形成された焼成前のセラミックス製の盆形形状のホルダーと、焼成されたセラミックス製の筒片と、接続用端子とを設け、該ホルダーの中心孔に同心状に載置した前記筒片を中心として、複数個のカーボンセグメントと同カーボンセグメントの外周に配置する接続用端子を前記係止穴にそれぞれ装着した後、その状態のものを1000〜1300°Cの不活性ガス雰囲気中で焼成を施し、前記ホルダーを焼締めにより収縮させて各カーボンセグメントの外周面と同ホルダーの内周面との間に前記接続用端子を挟着させ、ついで、電気的絶縁性を有する合成樹脂により前記筒片の内面、ホルダーの背面及びその外側面を覆うように一体成形して同ホルダーと接続用端子の一部を封入固定することを特徴とする。
【0008】
【発明の作用及び効果】
請求項1に記載の偏平型カーボン整流子によれば、電機子の巻線を接続する接続端子はカーボンセグメントの外周面とセラミックス製のホルダーの内周面との間に強固に挟着され、良好な導電性を保持することができる。また、カーボンセグメントと接続端子との接合部分はハンダ層が介在していないため、劣化又は酸性化したガソリンによって腐食する虞れがない。
【0009】
請求項2に記載の偏平型カーボン整流子によれば、カーボンセグメントは筒片の突条とホルダーの突条とにより隣り合うカーボンセグメントの微小間隙が確実に保持されるので、電気的短絡の欠陥を生じる虞れがなく、安定した使用状態が得られる。
【0010】
請求項3に記載の偏平型カーボン整流子の製造方法によれば、セラミックス製のホルダーの焼締めによる収縮作用により接続端子がカーボンセグメントの外周面とホルダーの内周面との間に強固に挟着されて、ホルダーの背面及びその外側面は合成樹脂により一体成形されて同ホルダーと接続用端子の一部が封入固定されることから、耐食性に優れた丈夫な偏平型カーボン整流子を製造することができる。
【0011】
しかして、本発明によれば、カーボンセグメントと接続端子との接合固定を、従来の金属板部材のかしめ加工やハンダ付け処理によらないで、セラミックス素材の焼締めによる収縮作用により強固に施すことができる。しかも、この偏平型カーボン整流子は耐食性に優れており、低コストで製造することができるという利点がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は偏平型カーボン整流子の平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は一組のカーボンセグメントの平面図、図4はホルダーの斜視図、図5は筒片の斜視図、図6は接続端子の斜視図、図7は焼成前のカーボン整流子の平面図、図8は焼成後のカーボン整流子の平面図、図9は図8のB−B線断面図である。
【0013】
図において、Cは給電を行うブラシとの摺動面が回転子の軸方向に対して垂直である偏平型カーボン整流子である。1は周壁3を中央の平坦な窪み面2より少し高く形成したセラミックス製の盆形形状のホルダーであり、該窪み面2には、中心孔4とその中心孔4を中心として放射状に配置された複数個、ここでは8個の係止穴5を形成する(図4)。また、周壁3の内面には一定角度間隔に複数の突条6を設ける。ホルダー1の内面には、複数の突条8を形成したセラミックス製の筒片7が前記中心孔4と同心状に載置され、図1に示すように該筒片7の外周囲に複数個のカーボンセグメント10が微小間隙sをおいて円環状に配置されている。図1、3に示すように、扇形形状のカーボンセグメント10は8個を一組として構成され、その外周中央に、接続端子15の頭部16を挿入する凹部11が形成されている。各カーボンセグメント10の外周端には、前記ホルダー1の突条6に係合する係止部12、12をそれぞれ形成し、前記筒片7の突条8を各カーボンセグメント10の内端部の間に割り込ませて、前記微小間隙sが保持されるように設けられている。
【0014】
各接続端子15は接続片部17を前記係止穴5に通して、各カーボンセグメント10と前記周壁3の内面との間に頭部16をそれぞれ強固に挟着されている。そして、電気的絶縁性を有する合成樹脂により前記筒片7の内面、ホルダー1の背面1a及びその周壁3(外側面)を封入するように一体成形し、合成樹脂により成形された支持体20にモーターの回転軸(図示せず)を挿入する軸孔21を設ける。しかして、偏平型カーボン整流子Cが構成される。
【0015】
つぎに、この偏平型カーボン整流子Cの製造方法について簡単に説明する。
図7に示すように、焼成前のセラミックス製のホルダー1の中心孔4に、焼成されたセラミックス製の筒片7を同心状に載置し、筒片7を中心として複数個のカーボンセグメント10の下面に形成された突部13と同カーボンセグメント10の外周に配置する接続用端子15の接続片部17を前記係止穴5に嵌めて、カーボンセグメント10と接続用端子15をそれぞれ装着する。
その後、その状態のものを1000〜1300°Cの窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で焼成を施し、前記ホルダー1を焼締めにより約10〜20%程度収縮させることによって、各カーボンセグメント10と同ホルダーの周壁3とで前記接続用端子15を強固に挟着させる(図8)。
ついで、電気的絶縁性を有する合成樹脂により前記筒片7の内面、ホルダー1の背面1a及びその周壁3を覆うように一体成形し、同ホルダー1と接続用端子15の一部を封入固定するように設ける。
【0016】
この偏平型カーボン整流子Cの製造方法によれば、カーボンセグメントと接続端子との接合固定を、従来の金属板部材のかしめ加工やハンダ付け処理によらないで、セラミックス素材の焼締めによる収縮作用により強固に施すことができる。しかも、この偏平型カーボン整流子はセラミックス素材を極力用いると共にハンダ付け処理を施さないことから、耐食性に優れており、長期間にわたり安定した性能を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】偏平型カーボン整流子の平面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】一組のカーボンセグメントの平面図
【図4】ホルダーの斜視図
【図5】筒片の斜視図
【図6】接続端子の斜視図
【図7】焼成前のカーボン整流子の平面図
【図8】焼成後のカーボン整流子の平面図
【図9】図8のB−B線断面図
【符号の説明】
C→偏平型カーボン整流子 s→微小間隙
1→ホルダー 1a→ホルダーの背面 2→窪み面 3→周壁(外側面)
4→中心孔 5→係止穴 6→突条 7→筒片 8→突条
10→カーボンセグメント 15→接続用端子 20→支持体 21→軸孔

Claims (3)

  1. ブラシとの摺動面が回転子の軸方向に対して垂直である偏平型カーボン整流子において、セラミックス製の盆形形状のホルダーの内面中央位置にセラミックス製の筒片を設け、該筒片の外周囲に複数個のカーボンセグメントを微小間隙をおいて円環状に配置し、各カーボンセグメントの外周面と前記ホルダーの内周面との間に接続用端子をそれぞれ挟着し、電気的絶縁性を有する合成樹脂により前記筒片の内面、ホルダーの背面及びその外側面を封入するように一体成形された支持体を設け、該支持体にモーターの回転軸を挿入する軸孔を設けたことを特徴とする偏平型カーボン整流子。
  2. 前記筒片の外周囲に形成された突条と、前記ホルダーの内周面に形成された突条とにより、前記カーボンセグメントの微小間隙が保持されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏平型カーボン整流子。
  3. 中央の平坦な窪み面に複数個の係止穴が形成された焼成前のセラミックス製の盆形形状のホルダーと、焼成されたセラミックス製の筒片と、接続用端子とを設け、該ホルダーの中心孔に同心状に載置した前記筒片を中心として、複数個のカーボンセグメントと同カーボンセグメントの外周に配置する接続用端子を前記係止穴にそれぞれ装着した後、その状態のものを1000〜1300°Cの不活性ガス雰囲気中で焼成を施し、前記ホルダーを焼締めにより収縮させて各カーボンセグメントの外周面と同ホルダーの内周面との間に前記接続用端子を挟着させ、ついで、電気的絶縁性を有する合成樹脂により前記筒片の内面、ホルダーの背面及びその外側面を覆うように一体成形して同ホルダーと接続用端子の一部を封入固定することを特徴とする偏平型カーボン整流子の製造方法。
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