JP3741650B2 - パイ蓋付容器入り食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パイを、加工食品の収納された容器の蓋として成形固定したパイ蓋付き容器入り食品に関する。更に詳しくは、外観、ボリューム、食感、風味の優れたパイ蓋付き容器入り食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
シチュー、カレー、スープ等の加工食品の入った容器にパイ生地を被せ焼成するパイ蓋付容器入り食品の特徴は、パイ生地の歯切れ良く軽い食感とボリュウムのあるドーム状の外観であり、喫食時にスプーンでパイ生地を崩し、シチュー等の加工食品と合わせ、両方の食感と風味を楽しむ食品である。これは薄いパイ生地をシチュー等の加工食品の入った容器に被せ、加熱調理時に発生する水蒸気の発散により大きく膨れ上がり、そして膨らみあがったパイ生地をそのまま焼成することによって得られる。
【0003】
シチューパイに代表される、パイ蓋付容器入り食品は、本来容器の一部である蓋を可食できるパイ生地にすることにより、ボリュウム大きく、パイとシチューの二つの食味、食感を楽しめる点で売り出されている。古くは、高級料理として欧米の食文化に由来するが、現代の日本においては、市販品が多く流通し、我々の身近な食品となっている。市販品の多くはひとりで食する食べきりサイズで、小さめの容器に容量の7割から8割程度のシチュー(100g程度)が入っている。これらのシチューパイはここ数年で一般に定着しつつ、売上も伸びている。しかしながら、成人ひとりが十分満足する量(150〜200g)のシチューをいれたものは少ない。これは、容器の口径が広くなると製品形状にバラツキが生じる問題がある。具体的には、容器の口径が大きくなることで焼成初期にパイ生地が垂れ下がり、シチュー面に漬かり、パイ生地を濡らしてしまう。そして、シチューの粘性によりパイ生地が膨らみあがるのを妨げ、きれいなドーム状の形状ができないからである。また、パイ生地上面と下面(シチューとの接触面)膨れ上がっても、パイ生地に大きな空洞を持ち、パイ生地層の下部は大きく剥離し、シチュー面を覆ってしまう。このようなパイ生地は火が通っているものの、黄色のガム状食感で本来のサクサクした食感が得られない。また、大きめの容器を使い、容器の5割程度までシチューを入れることにより、この問題は解決するが、食する側はパイ生地を割るまで、たっぷりと入ったシチューを意識しており、見栄えが悪いとともに、期待はずれとなり、顧客満足が得られない。
【0004】
以上の様にシチュー等の加工食品を入れた比較的大容量のパイ蓋付容器入り食品をバラツキなく、つくる事は困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シチュー等の加工食品を入れたパイ蓋付容器入り食品を大量に製造する際にバラツキなく製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、パイ蓋付容器入り食品の製造方法において、加熱仕上げ向き加工食品とパイ生地の間に可食性フィルムを配置することにより、容器の口径大きさに関わらず、シチューパイに優れる外観、内層、食感を効果的に付与でき、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の第1は、上面開口型で耐熱性素材にて形成された容器に加熱仕上げ向き加工食品を収納しパイ生地にて開口部を閉塞するように配置し、加熱することにより得られるパイ蓋付容器入り食品の製造方法において、加熱仕上げ向き加工食品とパイ生地の間に、可食性フィルムを配置することを特徴とするパイ蓋付容器入り食品の製造方法に関する。
【0008】
本発明の第2は、上記記載の方法で製造されたパイ蓋付容器入り食品に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0010】
本発明のパイ蓋付容器入り食品に使用する容器としては、上面が開口しており、且つ耐熱性を有していれば、その他の形状、素材について特に限定はない。本発明の製造方法にてパイ蓋付容器入り食品を製造することにより、従来の容器の口径や形状の制約が殆ど解消する。例えば、従来のシチューパイの容器は口径が小さいカップ容器が多く、口径が大きく、背の低い容器は、パイ生地が膨らみにくいため、あまり使われていなかったが、本発明の製造方法では使用することが可能となる。容器の口径としては、好ましくは、直径9cm以上であり更に好ましくは、9〜14cmである。この範囲内であると、本発明の効果が顕著に現れるため好ましい。
【0011】
また、容器の素材としては、具体的には、土器製、陶器製、陶磁器製、金属製、耐熱ガラス、耐熱性樹脂等が例示できる。
【0012】
本発明で用いられる加熱仕上げ向き加工食品とは、最後に加熱工程を経ることにより食するに適した状態になる加工食品を言い、具体的には、オニオンスープ、コーンスープ、ミネストローネ、クラムチャウダー、ポルシチ等のスープ類、ビーフシチュー、テールシチュー、タンシチュー、クリームシチュー等、牛、豚、鶏、羊、鴨、兎等の食肉、サケ、タラ等の魚肉類、にんじん、ジャガイモ、きのこ類、玉葱、豆類、ブロッコリー、アスパラガス等の野菜等を使用したシチュー類、スープスパゲッティー、ラーメン、うどん、煮麺等の汁麺類、カレー、ロールキャベツ、おでん等煮込み料理類、コーヒー、紅茶、ジュース等の飲料類、更には、プリン液、ムース液、スポンジケーキ生地、、スフレ生地、チーズケーキ生地等のデザート菓子なども使用することが可能であり、その商品形態には特に限定はなく、冷凍食品、常温食品、チルド食品、インスタント食品のいずれでもよい。
【0013】
本発明で用いることの出来るパイ生地とは、小麦粉主体に水、必要に応じて油脂、砂糖、食塩、乳化剤、各種呈味量を添加、混捏した生地にバター、マーガリン等の油脂を折り込み、焼成した際に層状を呈する生地を言い、適度に発酵過程を経たデニッシュなどの生地や発酵過程を経ないパイなどの生地が挙げられる。
【0014】
パイ生地の形状としては、容器の開口部を覆うことが出来れば特に限定はなく、所望とする外観等を考慮して適宜選択することが出来る。パイ生地の厚みについても特に限定はないが、好ましくは、1.0〜5.0mm、更に好ましくは、1.5〜3.0mmである。この範囲の厚みであると、パイ蓋付容器入り食品を焼成した際に、きれいなドーム状にパイが膨らみやすい為好ましい。
【0015】
本発明で使用する可食性フィルムとは、容器内の加工食品とパイ生地の直接的な接触を妨げる薄片状の可食性の素材を言い、具体的には、オブラートフィルム、プルランフィルム、ゼラチンフィルム、カードランフィルム等、フィルム性を有す多糖類全般が例示できる。加熱することで溶解しやすい素材であることが、パイ蓋付容器入り食品を加熱した際に加工食品中に溶解するため好ましい。可食性フィルムの形状は特に限定がなく、容器の形状の応じて適宜選択することが出来るが、容器の開口部より小さいことが好ましい。また厚みについても可食性フィルムの素材や、パイ蓋付容器入り食品の加熱温度・時間によって適宜選択することが出来るが、0.01〜0.1mmであることが好ましく、更に好ましくは、0.025〜0.05mmである。この範囲内であるとパイ蓋付容器入り食品を焼成した際に可食性フィルムがすみやかに溶解するため好ましい。
【0016】
本発明のパイ蓋付容器入り食品の製造方法の一例を示す。円柱型の容器に市販のクリームシチューを8分目まで入れ、その上に容器の内径より小さく成型したオブラートフィルムを、好ましくは、加工食品の表面中央部にかかるように配置する。容器の開口部に開口部形状より大きく成型したパイ生地をのせ、開口部より多い部分は、容器の側面に折り曲げ、必要であれば、卵液等を使用して側面にパイ生地を密着させる。その後、好ましくは、200〜230℃のオーブンで約20分焼成する。このようにして得られたパイ蓋付容器入り食品について、パイを破って、中をみると、可食性フィルムは完全に溶解しておりその痕跡を認めることは出来なかった。
【0017】
本発明の製造方法の特徴は、容器の口径が広い、或いはパイ生地が厚い等の原因で、パイ生地がシチュー等の加工食品の表面まで垂れ下がっても、加工食品の表面上に配置した可食性フィルムが間にあるため、直接、パイ生地が加工食品と接触することは免れる。また、調理加熱中は可食性フィルムの溶解前にパイ生地が加工食品の水蒸気により、膨れ上がり焼き上がるため、パイ生地は完全に加工食品の影響を受けない。
【0018】
【実施例】
以下に実施例にて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)シチューパイの製造
内径12cm、深さ4cmの磁器製のボウルに市販のレトルトシチュー(商品名:クリームシチュー、ハウス食品株式会社製)を、容器の高さ8分目まで入れた。厚み0.025mmのオブラートフィルム(商品名:オブラート、伊井化学工業株式会社製)を直径9cmに成型したものをシチューの上にのせた。市販のパイ生地(商品名:F10P、鐘淵化学工業株式会社製)を厚さ1.9mm、直径16cmの円形に成型し、ボウルの上にのせ、はみ出した部分については、ボウルの側面に卵黄液を塗布してパイ生地をボウルに接着させた。これをオーブンで、210℃20分間焼成した。その結果、きれいにパイ生地がドーム状に膨らみ良好な外観を有するパイ蓋付容器入りシチューを得ることが出来た。また、オブラートフィルムについては、完全に溶解していた。
(比較例1)
実施例1において、オブラートフィルムを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてパイ蓋付容器入りシチューを製造した。しかし、焼成開始後2分が経過したところで、パイ生地が垂れ下がり、そのまま、膨らまず、外観の良好なパイ蓋付容器入りシチューを得ることは出来なかった。
(実施例2) プリンパイの製造
内径6cm、深さ5cmの円柱状カップに、常法にて作製したプリン液105mlを入れ、厚さ0.025mmのオブラートフィルム(商品名:オブラート、伊井化学工業株式会社製)を直径5.0cmの円状に成型したものをおいた。厚さ2.0mm、直径10cmに成型した市販のパイカット生地(商品名:C10、鐘淵化学工業株式会社製)を、カップを覆うようにのせ、はみ出した部分については、ボウルの側面に卵黄液を塗布してパイ生地をカップに接着させた。水を張った大型のトレーにこれをのせ、オーブンで190℃25分間焼成した。その結果、きれいにパイ生地がドーム状に膨らみ良好な外観を有するパイ蓋付容器入りプリンを得ることが出来た。また、オブラートフィルムは見あたらなかった。このプリンは、蓋であるパイのサクサク感とプリンのなめらかな食感があいまって、新しい食感の菓子を得ることが出来た。
(比較例2)
実施例2において、オブラートフィルムを使用しなかった以外は、実施例3と同様にしてパイ蓋付容器入りプリンを得ようとした。しかしながら、焼成時初期にパイ生地が垂れ下がり、プリン液に付着し、そのままプリンとパイ生地が付着したまま加熱されたため、パイ自体が、層状に膨らまずゴム様の食感の生地がプリンの上に乗った形のものとなり、外観の食感もあまり良好ではなかった。
【0019】
【発明の効果】
この製法により得られるパイ蓋付容器入り食品はどのような容器を用いても、また容器の7割から8割程度まで、シチュー等の加工食品を入れても、加工食品とパイ生地層の直接的接触が妨げられている為、シチューの水分や粘性によりパイ生地が影響を受けることなく、ドーム状に膨れ上がる。その結果、パイ本来の歯切れ良く軽い食感とボリュウムのある外観を保ちながら、シチュー等の加工食品の味を楽しむという、パイ蓋付容器入り食品本来のコンセプトを付与することが出来る。
Claims (2)
- 上面開口型で耐熱性素材で形成された容器に加熱仕上げ向き加工食品を収納しパイ生地にて開口部を閉塞するように配置し加熱することにより得られるパイ蓋付容器入り食品の製造方法において、加熱仕上げ向き加工食品とパイ生地の間に、可食性フィルムを配置することを特徴とするパイ蓋付容器入り食品の製造方法。
- 請求項1記載の方法で製造されたパイ蓋付容器入り食品。
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- 2002-01-17 JP JP2002008419A patent/JP3741650B2/ja not_active Expired - Fee Related
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