JP3741209B2 - 筒内噴射型内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射型内燃機関に係り、詳しくは、筒内噴射型内燃機関における触媒昇温技術に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
近年、燃費と出力との両立を図るために、燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射型内燃機関が実用化されている。
そして、この種の内燃機関においても、排気通路には排ガス中の有害成分を浄化させるために触媒装置が設けられている。この触媒装置は、所定の活性温度以上でなければ十分な浄化特性を得ることができないため、例えば、アイドル運転等の排ガス温度が低くなるような運転が継続し、触媒装置が不活性状態に陥るような状況では、特開平10−47040号公報に開示されるように、運転モードを排ガス温度が高くなる均一予混合燃焼のモードに切り換えて触媒温度を活性温度に維持するように図らねばならない。
【0003】
また、冷態始動直後においては、触媒装置の早期活性化を図るため、特開平8−100638号公報に開示される如く、筒内噴射型内燃機関の特性を生かして主噴射以外に膨張行程の前半に副噴射を行い、主噴射による主燃焼の火炎伝播を利用して副噴射による燃料を燃焼させ排ガスを昇温させることが考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各公報に開示された技術は、いずれも、全体として排ガス特性は良好となる一方、特開平10−47040号公報に開示の技術では排気温度の上昇度合いがそれほど大きくないために触媒装置の温度維持または昇温のために時間がかかり、また特開平8−100638号公報に開示の技術では触媒装置が十分に昇温するまでの間、触媒昇温だけのために余分な燃料を供給し続ける必要があり、必然的に多くの燃料を使用しなければならず、燃料消費量が嵩み、燃費が悪化するという問題がある。
【0005】
特に、膨張行程において副噴射を行う場合、当該副噴射による燃料は内燃機関の出力には一切寄与しないことになるため、副噴射が長期に亘ると燃費の悪化は避けられず好ましいことではない。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃費の悪化を伴うことなく触媒装置の温度を維持または昇温可能な筒内噴射型内燃機関を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明では、筒内噴射型内燃機関において、触媒装置の昇温が要求されるとき、昇温手段により機関の空燃比が理論空燃比近傍となる燃料量を圧縮行程中に直接燃焼室内へ噴射して成層燃焼を実施し、当該成層燃焼中に生起された一酸化炭素及び燃焼に寄与しない余剰の酸素を、前記触媒装置に供給して酸化反応させるよう噴射時期制御手段により燃料噴射時期を制御し、点火時期制御手段により点火時期を制御することを特徴としている。
【0007】
つまり、機関の空燃比が理論空燃比近傍となるようにして圧縮行程中に燃料が噴射されて成層燃焼が形成され、燃料噴射時期及び点火時期が制御されると、燃料は一箇所に集中して空燃比が局部的にリッチ空燃比となり不完全燃焼が生起されて一酸化炭素(CO)が多く発生する一方、局部的にリッチ空燃比となる領域以外では余剰酸素(O2)が多く存在することになり、これらCOとO2とが同時に排気通路に排出されることになる。そして、このように排出されたCOとO2とが共に触媒装置に供給されると、触媒の作用によってCOとO2とが酸化反応を起こすことになり、当該反応熱により触媒装置が良好に昇温する。
【0008】
従って、触媒装置の昇温が要求されるときにおいて、機関の空燃比を理論空燃比近傍として圧縮行程中に燃料を噴射することで、例えば上記特開平8−100638号公報に開示されるような長期間に亘る副噴射に依らず、燃費を悪化させることなく触媒装置を効率よく良好に昇温させることが可能とされる。
また、請求項2の発明では、成層燃焼が実施されるとき、変更手段により、燃料噴射時期と点火時期との間隔が広くなるよう、請求項3の発明では、燃料噴射時期と点火時期との間隔がクランクアングル幅で40°〜60°となるよう、少なくとも噴射時期制御手段によって設定される燃料噴射時期及び点火時期制御手段によって設定される点火時期のいずれか一方が変更される。
【0009】
これにより、上述の如く機関空燃比を理論空燃比近傍に近づけて成層燃焼を行うと、従来の筒内噴射型内燃機関で実現されていた成層燃焼(例えば、空燃比25以上での燃焼)に比べて主として点火栓近傍の一箇所が極めてリッチな空燃比となり燃焼が悪化するため、従来の成層燃焼より成層度合いを弱めるようにし、極めてリッチな空燃比となる領域を点火栓近傍から若干外す必要があるのであるが、このように、例えば、燃焼室空間が広いときに燃料を噴射させて燃料の拡散をし易くすべく燃料噴射時期を早めたり、ピストン上死点近傍での吸気流(例えば、タンブル流やスワール流等)の崩壊またはスキッシュ流による吸気流の乱れとともに点火すべく点火時期を遅角することで、COを適切に生起させながら上述の燃焼悪化が好適に抑制される。
【0010】
また、点火までに気化が進んだ混合気を点火栓近傍に導くことができることになるので、燃料液滴が点火栓の電極に付着することによる点火栓の絶縁抵抗の低下も回避可能とされる。さらに、燃料噴射時期から点火時期までの間隔が広くなるため、噴射された燃料の霧化時間が確保され、スモークの抑制も可能となる。
また、請求項4の発明では、昇温手段による成層燃焼中に、排ガス中の酸素濃度を検出するセンサの出力に基づき機関の空燃比をフィードバック制御する制御手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
これにより、制御の信頼性を高めることができ、触媒装置の昇温効率が向上する。
また、請求項5の発明では、吸気系に排ガスを還流するようEGRバルブを開弁する排気再循環装置を備え、昇温手段による成層燃焼中に、排ガスの還流を行わないようEGRバルブを閉弁状態とすることを特徴としている。
【0012】
これにより、昇温手段による成層燃焼の実施中における空燃比の変動が抑えられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された本発明に係る筒内噴射型内燃機関の概略構成図が示されており、以下同図に基づいて本発明に係る筒内噴射型内燃機関の構成を説明する。
【0014】
機関本体(以下、単にエンジンという)1は、例えば、燃料噴射モード(運転モード)を切換えることで均一予混合燃焼を行う吸気行程での燃料噴射(吸気行程噴射モード)または成層燃焼を行う圧縮行程での燃料噴射(圧縮行程噴射モード)を実施可能な筒内噴射型火花点火式直列4気筒ガソリンエンジンとされている。そして、この筒内噴射型のエンジン1は、容易にして理論空燃比(ストイキオ)での運転やリッチ空燃比での運転(リッチ空燃比運転)の他、リーン空燃比(空燃比18〜23程度)での運転(リーン空燃比運転)が実現可能とされており、特に圧縮行程噴射モードでは、超リーン空燃比(空燃比25〜50程度)での運転が可能とされている。
【0015】
さらに、当該筒内噴射型のエンジン1は、吸気行程や圧縮行程での燃料噴射のみならず、膨張行程でも燃料を噴射可能とされており、吸気行程或いは圧縮行程で主燃焼のための主噴射を行った後、膨張行程でさらに追加燃料を供給する副噴射を行うような分割噴射(2段噴射)も実施可能とされている。この分割噴射(2段噴射)は、主として膨張行程で副噴射された燃料を正味仕事として寄与させず、膨張行程後半から排気行程中に余剰酸素と反応(燃焼)させることで排気昇温を行うようなものである。
【0016】
図1に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4とともに電磁式の燃料噴射弁6が取り付けられており、これにより、燃焼室8内に燃料を直接噴射可能とされている。
燃料噴射弁6には、燃料パイプを介して燃料タンクを擁した燃料供給装置(共に図示せず)が接続されている。より詳しくは、燃料供給装置には、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとが設けられており、これにより、燃料タンク内の燃料を燃料噴射弁6に対し低燃圧或いは高燃圧で供給し、該燃料を燃料噴射弁6から燃焼室内に向けて所望の燃圧で噴射可能とされている。この際、燃料噴射量は高圧燃料ポンプの燃料吐出圧と燃料噴射弁6の開弁時間、即ち燃料噴射時間とから決定される。
【0017】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に略直立方向に吸気ポートが形成されており、各吸気ポートと連通するようにして吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。そして、吸気マニホールド10の他端にはスロットル弁11が接続されており、該スロットル弁11にはスロットル開度θthを検出するスロットルセンサ11aが設けられている。
【0018】
また、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポートが形成されており、各排気ポートと連通するようにして排気マニホールド12の一端がそれぞれ接続されている。
図中符号13は、クランク角CAを検出するクランク角センサであり、該クランク角センサ13はクランク角CAとともにエンジン回転速度Neを検出可能とされている。また、図中符号14は、エンジン1の冷却水温WTを検出する水温センサであり、該水温センサ14からの温度情報に基づいて、エンジン1が冷態状態にあるか暖機状態にあるかを判定することが可能とされている。
【0019】
なお、当該筒内噴射型のエンジン1は既に公知のものであり、その構成の詳細についてはここでは説明を省略する。
排気マニホールド12としては、排出された未燃燃料成分(未燃HC等の可燃物)を効率よく排気通路内で燃焼させることが可能なよう、反応型排気マニホールドが採用されている。反応型排気マニホールド12は、図1中に示すように、通常の排気マニホールドに比べて各気筒からの排ガスが集中する排気合流部12aの容積が大きく、該排気合流部12aにおいて暫時滞留する未燃燃料成分が余剰酸素と混合し十分に反応(燃焼)するように設計されている。これにより、特に上記分割噴射(2段噴射)による副噴射によって排出された未燃燃料成分(主としてHC)が十分に反応(燃焼)することとなり、排気昇温が良好に実現される。
【0020】
また、同図に示すように、排気マニホールド12には排気管(排気通路)20が接続されており、この排気管20には排気浄化触媒装置30を介してマフラー(図示せず)が接続されている。そして、排気管20にはO2センサ22が設けられている。O2センサ22は、排ガス中のO2の濃度を検出するものであって、これによりエンジン1の実際の空燃比(実A/F)を検出可能となっている。詳しくは、O2センサ22は、ストイキオにおいてその出力が大きく変化するような特性を有しており、具体的には、リッチ空燃比側では出力電圧が大である一方、リーン空燃比側では小(0値近傍)となる特性を有している。故に、O2センサ22を用い、空燃比を故意にリーン−リッチ振動させることで、空燃比をストイキオ近傍にフィードバック制御(O2フィードバック制御ともいい、以下O2−F/B制御という)することが可能とされている。なお、当該O2センサ22は公知のものであり、ここではその構成等の詳細については説明を省略する。
【0021】
排気浄化触媒装置30は、リーン空燃比運転時における排ガス中のNOxをHC存在下で選択的に浄化する選択還元型NOx触媒(以下、単に還元型NOx触媒という)30aと三元触媒30bとの2つの触媒を備えて構成されており、三元触媒30bの方が選択型NOx触媒30aよりも下流側に配設されている。
選択型NOx触媒30aは、公知の如く、三元触媒30bと構造は略同一であるものの、還元雰囲気中においてより多くのNOxを選択的に還元させることが可能に構成された触媒である。
【0022】
そして、三元触媒30bの下流側には排気浄化触媒装置30を通った排ガスの温度、即ち排気温度Texを検出する排気温センサ32が設けられている。なお、排気浄化触媒装置30を通った排ガスの温度は略排気浄化触媒装置30の温度とみなすことができ、故に排気温度Texを検出することによって排気浄化触媒装置30の温度状態を知ることができる。これにより、排気浄化触媒装置30が触媒機能を十分に果たすことができるか否か、即ち選択型NOx触媒30a及び三元触媒30bが活性状態に達しているか否かを検出可能である。
【0023】
さらに、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(電子コントロールユニット)40が設置されており、このECU40により、エンジン1を含めた本発明に係る筒内噴射型内燃機関の総合的な制御が行われる。ECU40の入力側には、上述したスロットルセンサ11a、クランク角センサ13、水温センサ14、O2センサ22、排気温センサ32等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力する。
【0024】
一方、ECU40の出力側には、点火コイルを介して上述した点火プラグ4や燃料噴射弁6等が接続されており、これら点火コイル、燃料噴射弁6等には、各種センサ類からの検出情報に基づき演算された燃料噴射量、燃料噴射時期や点火時期等の最適値がそれぞれ出力される(噴射時期制御手段及び点火時期制御手段)。これにより、燃料噴射弁6から適正量の燃料が適正なタイミングで噴射され、点火プラグ4によって適正なタイミングで点火が実施される。
【0025】
実際には、ECU40では、スロットルセンサ11aからのスロットル開度情報θthとクランク角センサ13からのエンジン回転速度情報Neとに基づいてエンジン負荷に対応する目標平均有効圧Peを求めるようにされており、通常は、当該目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じて燃料噴射モード設定マップ(図示せず)より燃料噴射モード、即ち運転モードを設定するようにされている。例えば、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとが共に小さいときには、運転モードは圧縮行程噴射モード(圧縮リーンモード、即ち圧縮Lモード)とされ、燃料は圧縮行程で噴射され、一方、目標平均有効圧Peが大きくなり或いはエンジン回転速度Neが大きくなると運転モードは吸気行程噴射モードとされ、燃料は吸気行程で噴射される。吸気行程噴射モードには、リーン空燃比とされる吸気リーンモード(吸気Lモード)、実A/Fをストイキオとなるようフィードバック制御する吸気行程O2フィードバックモード(吸気O2−F/Bモード)、及び、リッチ空燃比とされるオープンループモード(吸気O/Lモード)がある。
【0026】
そして、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとから制御目標となる目標空燃比(目標A/F)が設定され、上記適正量の燃料噴射量は、当該目標A/Fに基づいて決定される。
また、各種センサ類からの検出情報に基づき、エンジン1の運転状態に応じて、運転モードは吸気行程或いは圧縮行程において主噴射を行い且つ膨張行程で追加燃料の副噴射を行う分割噴射モード(2段噴射モード)に切り換えられる。
【0027】
さらに、本発明の筒内噴射型内燃機関では、各種センサ類からの検出情報に基づき、排気浄化触媒装置30の温度が低いような状況では、運転モードは、圧縮行程において空燃比をストイキオよりもややリーン寄りのスライトリーン空燃比(例えば、値14.7〜値16)に制御する圧縮行程スライトリーンモード(圧縮S/Lモード)、或いは実A/Fをストイキオ(値14.7)となるようフィードバック制御する圧縮行程O2フィードバックモード(圧縮O2−F/Bモード)に切り換えられる。これにより、排気浄化触媒装置30の昇温が行われるようにされている。
【0028】
以下、本発明に係る排気浄化触媒装置30の昇温制御、即ち上記のように構成された本発明の筒内噴射型内燃機関の作用について説明する。
排気浄化触媒装置30の温度が低いような状況には、エンジン1が作動中に排気温度Texが低下することによって排気浄化触媒装置30が所定の活性温度以下の低温となる場合と、エンジン1が長時間に亘って停止していたために排気浄化触媒装置30が低温となっている場合、即ち冷態始動時の場合の2通りがあり、以下、これらの場合についてそれぞれ説明する。
【0029】
「第1実施形態」
先ず、エンジン1が作動中に排気温度Texが低下して排気浄化触媒装置30が冷却される場合の昇温制御について説明する。
図2を参照すると、エンジン1の作動中に排気浄化触媒装置30が冷却される場合の昇温制御、即ち排気浄化触媒装置30が所定の活性温度以下の低温とならないように抑制する失活抑制制御のうちタイマ制御による場合の制御ルーチンがフローチャートで示されており、図3を参照すると、当該失活抑制制御の制御内容がタイムチャートで示されており、以下、当該図2のフローチャート及び図3のタイムチャートに沿って第1実施形態を説明する。
【0030】
エンジン1が作動中に排気温度Texが低下してしまう場合とは、運転モードが、例えば燃料噴射量が少なく吸入空気量が多く燃焼温度があまり上昇しないような圧縮Lモード等であって、エンジン回転速度Neが低いアイドル運転時のような場合(総称して排気低温運転モードという)が該当する。
先ず、ステップS10では、上記燃料噴射モード設定マップに基づき運転モードが圧縮Lモードであり且つエンジン回転速度Neが低く例えばアイドル運転時と判定され、即ち排気低温運転モードでの運転が開始されたと判定された場合において、当該ルーチンで使用するタイマTを値0にリセットし、計時を開始するようにする(図3(a)、(c)、(d)、(e)、(f)参照)。そして、ステップS12において、排気低温運転モードでの運転を実行する。
【0031】
次のステップS14では、タイマTが所定タイマ時間T1を計時したか否か、即ち排気低温運転モードでの運転が所定タイマ時間T1を超えて継続したか否かを判別する。所定タイマ時間T1は、予め実験等により、例えば、排気低温運転モードでの運転を継続した場合に、排気浄化触媒装置30が所定の活性温度以下、即ち排気温度Texが所定値(失活温度)Tex0以下になったと推定されるまでの時間に設定されている。判別結果が偽(No)の場合には、ステップS12に戻り排気低温運転モードでの運転を継続する。一方、判別結果が真(Yes)の場合、即ちタイマTが所定タイマ時間T1を計時し排気低温運転モードでの運転が所定タイマ時間T1を超えたと判定された場合(図3(d)参照)には、次にステップS16に進む。
【0032】
ステップS16では、排気浄化触媒装置30の昇温を行う前に圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かを判別する。具体的には、エンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vがそれぞれ各対応する所定値以下であるか否かを判別する。
エンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vのいずれかが高い条件では、排気温度が高い通常走行状態とみなすことができ、本制御を用いなくても排気浄化触媒装置30の昇温効果は十分に得られる。故に、ステップS16の判別結果が偽(No)であって、エンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vのいずれかが対応する所定値よりも大きいような場合には、次にステップS18に進む。
【0033】
つまり、エンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vのいずれかが対応する所定値より大きいような場合には、運転者がエンジン1に高出力を要求しており、エンジン1を積極的に運転したいような状況と判断でき、このような場合には、圧縮S/Lモードを実施すると排気浄化触媒装置30の過昇温のおそれがあるため、圧縮S/Lモードでの運転を行わないようにする。
【0034】
従って、この場合には、圧縮S/Lモードでの運転を行わず、つまり排気浄化触媒装置30の昇温制御を行うことなく、ステップS18において、通常制御を実施するようにする。つまり、上記燃料噴射モード設定マップに基づいてエンジン1の運転を行うようにする。
一方、ステップS16の判別結果が真(Yes)で、エンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vのいずれもがそれぞれ対応する所定値以下であると判定された場合には、次にステップS20に進み、圧縮S/Lモードでの運転を行うようにする。
【0035】
圧縮S/Lモードでは、上述したように、圧縮行程において空燃比をストイキオ(値14.7)よりもややリーン寄りのスライトリーン空燃比(例えば、値14.7〜値16)に制御して燃料噴射を行う(昇温手段)。
このようにすると、局部的に極めて燃料濃度の濃いリッチ空燃比状態が筒内に形成され、局部的に酸素が不足するために燃料が不完全燃焼を引き起こし、一酸化炭素(CO)が比較的多く発生することになる。また、このとき、酸素が不足するために、燃焼により発生した水素(H2)がそのまま存在する。
【0036】
一方、圧縮行程噴射モードでの燃焼は成層燃焼であるために、局部的に濃いリッチ空燃比領域から離間した燃焼室8内の部分では、燃焼に寄与しない酸素(O2)が余剰酸素として多く存在している。
即ち、運転モードを圧縮S/Lモードとすると、一酸化炭素(CO)や水素(H2)が比較的多く生成されて排気マニホールド12に排出されると同時に、燃焼に寄与しない余剰の酸素(O2)が排気マニホールド12に排出されることになるのである。
【0037】
つまり、図4を参照すると、空燃比A/Fを変えて圧縮行程噴射を行った場合のO2センサ出力(a)、O2濃度(b)、H2濃度(c)、CO濃度(d)が実線で示され、空燃比A/Fを変えて吸気行程噴射を行った場合の同様の結果が一点鎖線で比較して示されているが、同図に示すように、空燃比をストイキオ近傍として吸気行程噴射を行った場合(一点鎖線)には、均一予混合燃焼となるためにH2濃度は略0vol%、CO濃度は略0.5vol%となっている一方、空燃比をストイキオ近傍として圧縮行程噴射を行った場合(実線)には、O2濃度とともにH2濃度やCO濃度についても十分に高い値を示すのである(例えば、O2濃度:2.0vol%、H2濃度:0.5vol%、CO濃度1.5vol%)。
【0038】
そして、このように一酸化炭素(CO)、水素(H2)と酸素(O2)とが同時に排気マニホールド12に排出されると、上述したように、排気マニホールド12は反応型排気マニホールドであるために、CO、H2、O2が排気合流部12aにおいてある程度良好に酸化反応(燃焼)することになる。また、排ガス中には未燃HCも含まれているため、当該未燃HCについても排気合流部12aにおいてやはり良好に酸化反応(燃焼)することになる。これにより、排気温度がある程度昇温することになり、当該反応熱(燃焼熱)によって排気浄化触媒装置30の昇温が図られることになる。
【0039】
しかしながら、当該圧縮S/Lモードが実施される状況は、排気低温運転モードでの運転が所定タイマ時間T1を超えて実施され、排気温度Texが極めて低い状況であることから、この排気マニホールド12内における反応はそれほど促進されず、故に当該排気昇温による排気浄化触媒装置30の昇温の効果はそれほど高いものではない。
【0040】
従って、CO、H2、O2の殆どは、排気管20を通って排気浄化触媒装置30に達することになる。
ところで、一般に排気浄化触媒装置30の選択型NOx触媒30aと三元触媒30bは、ともに酸素過剰雰囲気において触媒内にO2を貯留する機能を有しており、該貯留したO2によってCO等の有害成分を酸化して無害化するよう構成されている。
【0041】
従って、上記のようにCOやH2とO2とが同時に存在することになると、触媒の作用によってこれらCOやH2が良好に酸化反応することになり、このとき発生する反応熱によって排気浄化触媒装置30が昇温することになる。
即ち、排気低温運転モードでの運転が所定タイマ時間T1を超えて実施されて排気温度Texが極めて低い状況となったときには、運転モードを圧縮S/Lモードとすることで、排気浄化触媒装置30にCO、H2、O2を同時に供給でき、COやH2の酸化反応による反応熱で排気浄化触媒装置30、即ち選択型NOx触媒30aと三元触媒30bとを良好且つ早期に昇温させることができるのである。
【0042】
即ち、図5を参照すると、選択型NOx触媒30aと三元触媒30bとにそれぞれ排気温センサを設け、排気温度Texが所定値(失活温度)Tex0以下となった後、本発明に係る圧縮S/Lモードでの運転を実施した場合の選択型NOx触媒30aの中心部と三元触媒30bの中心部における排気温度Texの時間変化が実線で、また従来の技術のように、均一予混合燃焼での運転を行った場合の時間変化が一点鎖線で示されているが、同図に示すように、圧縮S/Lモード(実線)で運転すると、均一予混合燃焼を実施した場合(一点鎖線)よりも排気温度Texが急速に高温域まで昇温することになり、選択型NOx触媒30aとともに三元触媒30bが早期に昇温することになるのである。
【0043】
なお、同図では三元触媒30bの中心部の排気温度Texが選択型NOx触媒30aの中心部の排気温度Texよりも遅れて昇温しているが、これは、三元触媒30bの方が選択型NOx触媒30aよりも下流にあるために、CO、H2、O2は、その殆どが選択型NOx触媒30a内で反応して先ず選択型NOx触媒30aを昇温させ、その後、選択型NOx触媒30aが十分に昇温し余剰となった反応熱で三元触媒30bが遅れて昇温されることになるためである。
【0044】
そして、この場合、圧縮S/Lモードにおいては、全体としての空燃比はストイキオ(値14.7)近傍の値(例えば、値14.7〜値16)であるので、上記従来の技術のように、触媒装置が活性状態となるまでの間、均一予混合燃焼(例えば、吸気O/Lモード運転)を長時間に亘って実施したり、副噴射を継続実施したりして無闇に燃料消費量を増大させることなく、つまり燃費の悪化なく排気浄化触媒装置30を昇温させることができることになる。
【0045】
ところで、運転モードを圧縮S/Lモードとし、成層燃焼により局部的にリッチ空燃比状態としてCOを多く発生させるような場合、いわゆるスモークとの関係が問題となるが、通常は、図6に示すように、CO濃度とスモーク濃度とは略比例関係にあり、COの量の増大につれてスモークも増大するという関係を有している。つまり、圧縮S/Lモードでの空燃比をリーン空燃比側にして燃料噴射量を少なくするほどCOの発生量が減ることになり、スモークの発生量を抑えることができる。
【0046】
このようなことから、当該圧縮S/Lモードでは、空燃比をリッチ空燃比側ではなくスモークの発生量を極力抑えながらもCOを十分に得られるようなスライトリーン空燃比(例えば、値14.7〜値16)とするようにしている。
また、COの発生量及びスモークの発生量は点火時期と燃料噴射時期(実際には噴射終了時期)との相関性が大きく、特に点火時期と噴射終了時期との間隔に大きく起因していることが分かっている。従って、ここでは、点火時期と噴射終了時期とを、スモークの発生量を少なくでき且つCOを十分に得られるような最適な点火時期と噴射終了時期とに設定するようにしている。
【0047】
図7を参照すると、空燃比を一定(例えば、値15)とした場合の点火時期、噴射終了時期及び点火時期と噴射終了時期との間隔(一点鎖線で示す)とCO濃度(実線)、スモーク濃度(斜線付き実線)との関係がマップが示されているが、実際には、当該マップに基づいて最適な点火時期と噴射終了時期とが設定される。具体的には、例えば、スモークを目視で認識できないレベルとみなせるスモーク濃度の基準値(例えば、スモーク濃度5.0%程度)を設定しておき、スモークの発生量を該基準値に抑えようとした場合に最もCOの発生量が多くなりCO濃度が高い値(例えば、CO濃度1.5%近傍)となるような点火時期と噴射終了時期(設定点)を当該関係マップより読み出すようにする(変更手段)。この設定点とすると、最適な点火時期は例えば5°BTDCとなる一方、最適な噴射終了時期は例えば55°BTDCとなり、点火時期と噴射終了時期との間隔は、同図より例えば50°CA(クランクアングル)となる。
【0048】
また、ここではスモーク濃度が基準値(例えば、スモーク濃度5.0%程度)となるようにして最適な点火時期と噴射終了時期とを設定するようにしているが、実際には、COの発生量とスモークの発生量とを勘案し、COをできるだけ多く発生させるように点火時期と噴射終了時期とを設定してもよいし、またスモークをできるだけ発生させないようにして点火時期と噴射終了時期とを設定してもよい。
【0049】
この場合、具体的には、同図に示すように、COの発生量を多くしたい場合には点火時期と噴射終了時期との間隔を小さくすればよく、逆にスモークの発生量を少なくしたい場合には点火時期と噴射終了時期との間隔を大きくすればよい。実際上は、点火時期と噴射終了時期との間隔が上記50°CAの前後10°程度の範囲内、即ち40°CA〜60°CAの範囲内であればスモークの発生量を十分に少なくでき且つCOを十分に得ることが可能である。つまり、圧縮S/Lモードでは、点火時期と噴射終了時期との間隔は、40°CA〜60°CAの範囲内であるのがよい。
【0050】
なお、排気低温運転モードでの運転が例えばアイドル運転である場合には、運転モードが圧縮S/Lモードとされても、当該アイドル状態を維持する必要があることから、上記スロットル弁11を迂回するよう設けられたバイパス通路(図示せず)のバイパス空気量を設定するとともに、エンジン回転速度Neが所定のアイドル回転速度となるように設定する必要がある。
【0051】
また、運転モードが圧縮Lモードである場合には、通常はNOx低減を目的として排気再循環(EGR)を行うべくEGRバルブ(図示せず)を開弁しているのであるが、当該圧縮S/Lモードが実施されるときには、空燃比の変動等を抑えるため、EGRバルブは閉弁状態とし、EGRは行わないようにする。
以上のように、図2のステップS20において圧縮S/Lモードでの運転を行い、排気浄化触媒装置30の昇温を実施したら、次にステップS22に進む。
【0052】
ステップS22では、タイマTが所定タイマ時間T2を計時したか否か、即ち圧縮S/Lモードでの運転が所定タイマ時間T2を超えて継続したか否かを判別する。所定タイマ時間T2は、上記所定タイマ時間T1と同様、予め実験等により、例えば、排気低温運転モードでの運転後、圧縮S/Lモードでの運転の実行により排気浄化触媒装置30が所定の高温、即ち排気温度Texが所定値Tex1にまで昇温したと推定されるまでの時間に設定されている。そして、判別結果が偽(No)の場合には、ステップS16を経てステップS20において圧縮S/Lモードでの運転を継続する。一方、判別結果が真(Yes)の場合、即ちタイマTが所定タイマ時間T2を計時し、圧縮S/Lモードでの運転が所定タイマ時間T2を超えたと判定された場合(図3(c)参照)には、圧縮S/Lモードでの運転を終了し、次にステップS24に進む。
【0053】
ステップS24では、運転モードを再びもとの運転モードに戻すようにする。つまり、ここでは、排気低温運転モードでの運転を継続するようにする。
「第2実施形態」
第2実施形態では、上記第1実施形態の失活抑制制御をタイマ制御に代えて排気温センサ制御で行った場合の実施形態について説明する。
【0054】
図8を参照すると、エンジン1の作動中に排気浄化触媒装置30が冷却される場合の失活抑制制御のうち排気温センサ制御による場合の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下、当該図8のフローチャートに沿い上記図3のタイムチャートをも参照しながら説明する。
先ず、ステップS30では、排気低温運転モードでの運転の実施により、排気温センサ32によって検出される排気温度Texが上記所定値(失活温度)Tex0以下となったか否かを判別する(図3(b)参照)。つまり、上記第1実施形態ではタイマTの計時による排気温度Texの推定によって基本的に圧縮S/Lモードを行うか否かの判別を行っていたが、ここでは、推定によらずに直接的に排気温度Texを検出して判別を行うようにする。
【0055】
そして、ステップS30の判別結果が偽(No)であれば、ステップS39に進み、圧縮S/Lモードでの運転を行わず、つまり失活抑制制御を行う前の運転モードでの運転を継続する。
一方、ステップS30の判別結果が真(Yes)で、排気温度Texが上記所定値(失活温度)Tex0以下と判定された場合には、ステップS32に進み、上記同様に圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かの判別を行う。なお、この場合の判別条件については上述した通りであり、ここでは説明を省略する。
【0056】
そして、ステップS32の判別結果が偽(No)の場合には、ステップS34に進み、上記同様に通常制御を行う。一方、ステップS32の判別結果が真(Yes)の場合には、次にステップS36に進み、圧縮S/Lモードでの運転を開始する。なお、圧縮S/Lモードの内容についても上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
このようにステップS36において圧縮S/Lモードでの運転を行い、排気浄化触媒装置30の昇温を実施したら、次にステップS38に進む。
ステップS38では、排気温センサ32によって検出される排気温度Texが上記所定値Tex1以上となったか否かを判別する(図3(b)参照)。つまり、上記第1実施形態ではタイマTの計時による排気温度Texの推定によって圧縮S/Lモードを終了するか否かの判別を行っていたが、ここでは、推定によらずに直接的に排気温度Texを検出して圧縮S/Lモードの終了判定を行うようにする。
【0058】
そして、ステップS38の判別結果が偽(No)であれば、ステップS32を経てステップS36において圧縮S/Lモードでの運転を継続する。一方、ステップS38の判別結果が真(Yes)の場合、即ち圧縮S/Lモードでの運転の継続により排気温度Texが上記所定値Tex1以上と判定された場合(図3(b)参照)には、圧縮S/Lモードでの運転を終了し、次にステップS39に進む。
【0059】
ステップS39では、上述したように、運転モードを失活抑制制御を行う前の運転モードに戻して運転を継続する。この場合、実際には排気低温運転モードでの運転を継続することになる。
これにより、圧縮S/Lモードでの運転を必要に応じてより適正に実施できることになり、上記第1実施形態の場合と同様に、燃費の悪化なく且つスモークの発生少なく排気浄化触媒装置30を良好に昇温させることができることになる。
【0060】
「第3実施形態」
次に、エンジン1を冷態始動させる場合の排気浄化触媒装置30の昇温制御について説明する。
図9を参照すると、エンジン1を冷態始動させる際の昇温制御、即ち排気浄化触媒装置30を低温状態から所定の活性温度まで昇温させる冷態始動昇温制御のうちタイマ制御により圧縮S/Lモードでの運転をオープンループ制御(O/L制御)する場合の制御ルーチンがフローチャートで示されており、図10を参照すると、当該冷態始動昇温制御の制御内容がタイムチャートで示されており、以下、当該図9のフローチャート及び図10のタイムチャートに沿って第3実施形態を説明する。
【0061】
先ず、ステップS40では、始動スイッチ(始動SW)、即ちイグニションキー(図示せず)が操作されてオン状態とされ、エンジン1が始動したと判定された場合において、上記第1実施形態の場合と同様に当該ルーチンで使用するタイマTを値0にリセットし、計時を開始するようにする(図10(c)、(d)、(e)参照)。そして、ステップS42において、例えばエンジン回転速度Neがアイドル回転速度より大きい所定値Ne1に達したと判定され、始動判定が完了したら、次にステップS44に進む。なお、図10(a)に示すように、エンジン1の始動後、エンジン回転速度Neが所定値Ne1に達するまでは、始動に十分な燃料を供給すべく運転モードは吸気O/Lモードとされる。
【0062】
ステップS44では、上述の2段噴射を行ってもよいか否かを判別する。
当該第3実施形態では、冷態始動時のように、排気浄化触媒装置30が極めて低温状態にあり十分に活性していないような場合には、上記圧縮S/Lモードでの運転を行っても触媒による酸化反応が促進され難い。故に、この場合には、圧縮S/Lモードでの運転に先だって2段噴射を行い、排気昇温によって予め排気浄化触媒装置30をある程度昇温(予熱)させるようにしており、ここでは、先ず当該2段噴射の実施可否判別を行うようにする。
【0063】
ここでは、上述した圧縮S/Lモードの実施可否判別の場合と同様に、例えば、図示しないアイドルスイッチがオフで、エンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vがそれぞれ各対応する所定値以下であるか否かを判別する。また、水温センサ14からの冷却水温情報WTが、エンジン1が暖機したとみなせる温度、即ち暖機温度WT0以下であるか否かを判別する。冷却水温情報WTが暖機温度WT0以下であるか否かをも判別するのは、特に排気浄化触媒装置30の過昇温を防止することを考慮したためである。
【0064】
ステップS44の判別結果が偽(No)で、トルク不足、過昇温のおそれがあり、2段噴射を実施しない方がよいと判定された場合には、ステップS46において、通常制御を実施するようにする。つまり、上記燃料噴射モード設定マップに基づいてエンジン1の運転を行うようにする。
一方、ステップS44の判別結果が真(Yes)、即ちトルク不足、過昇温のおそれはなく、2段噴射を実施してもよいと判定された場合には、ステップS48において2段噴射を実施する(図10(a)参照)。つまり、吸気行程或いは圧縮行程で主燃焼のための主噴射を行った後、膨張行程でさらに追加燃料を供給する副噴射を行うようにする。これにより、副噴射による未燃燃料成分(主としてHC)が上記反応型排気マニホールドの作用によって良好に反応(燃焼)して排気温度が上昇することになり、排気浄化触媒装置30の昇温が行われる。
【0065】
次のステップS50では、2段噴射の実施後、タイマTが所定タイマ時間T3を計時したか否かを判別する。所定タイマ時間T3は、予め実験等により、例えば、圧縮S/Lモードに切り換えたときに、排気浄化触媒装置30の温度が排気浄化触媒装置30内で酸化反応を開始することができる程度の温度となるまでの時間に設定されている。判別結果が偽(No)の場合には、ステップS44を経てステップS48において2段噴射を継続する。一方、判別結果が真(Yes)の場合、即ちタイマTが所定タイマ時間T3を計時したと判定された場合(図10(d)参照)には、次にステップS52に進む。
【0066】
ステップS52では、上記第1及び第2実施形態の場合と同様に圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かの判別を行う。当該第3実施形態では、判別条件として上述したエンジン回転速度Ne、目標平均有効圧Pe、車速Vに関するものに加え、上記2段噴射の実施可否判別の場合と同様に、冷却水温情報WTが暖機温度WT0以下であるか否かをも判別条件とし、さらに、2段噴射の合計実施時間が所定時間t3以上であるか否かをも判別条件として圧縮S/Lモードの実施可否判別を行う。詳しくは、エンジン回転速度Neが上記アイドル回転速度より大きい所定値Ne1以下であるか否か、目標平均有効圧Peが所定値Pe1以下であるか否か、車速Vが所定値V1以下であるか否かの判別を行うとともに(図10(e)、(f)、(g)参照)、冷却水温情報WTが暖機温度WT0以下であるか否かの判別を行い(図10(b)参照)、さらに、2段噴射の合計実施時間が所定時間t3(t3<T3)以上であるか否かの判別を行う。
【0067】
ここで、2段噴射の合計実施時間が所定時間t3以上であるか否かをも判別条件とするのは、タイマTが所定タイマ時間T3を計時している途中で運転状態の変化によって上記ステップS44の判別結果が一時的に偽(No)となり2段噴射が中断されるような場合には、排気浄化触媒装置30が2段噴射によって十分に昇温しないおそれがあり、このような状態のままでは圧縮S/Lモードでの運転の効果が十分に得られないことを考慮したためである。つまり、2段噴射の合計実施時間が排気浄化触媒装置30を十分に昇温可能な時間、即ち所定時間t3に満たないような場合には、圧縮S/Lモードでの運転の効果が十分に得られないとみなせ、この場合には圧縮S/Lモードでの運転を行わないようにするのである。
【0068】
そして、ステップS52の判別結果が偽(No)の場合には、ステップS54に進み、上記同様に通常制御(例えば、吸気O/Lモード運転)を行う。一方、ステップS52の判別結果が真(Yes)の場合には、次にステップS56に進み、上記第1及び第2実施形態の場合と同様に圧縮S/Lモードでの運転を実施する(図10(a)参照)。
【0069】
このように、先ず2段噴射を実施し、その後に圧縮S/Lモードでの運転を実施するようにすると、冷態始動時でありながら、上記第1及び第2実施形態における失活抑制制御の場合と同様に、排気浄化触媒装置30でCOやH2の酸化反応を良好に促進させ、その反応熱で排気浄化触媒装置30、即ち選択型NOx触媒30aと三元触媒30bとを良好且つ早期に昇温させることができることとなる。
【0070】
ここで、図11を参照すると、本発明に係る圧縮S/Lモードでの運転を行う際に、2段噴射を行った場合(実線)と行わなかった場合(一点鎖線)の選択型NOx触媒30aの入口と中心部における排気温度Texの時間変化がタイムチャートで比較して示されているが、同図に示すように、冷態始動時に先ず2段噴射を行うようにすると、2段噴射による排気昇温によって触媒入口における排気温度Texが急速に上昇して選択型NOx触媒30aが十分に予熱されるため、その後に圧縮S/Lモードでの運転を行ったときには、上記図5で示したと同様に、選択型NOx触媒30aは極めて良好に昇温することになるのである。なお、同図には三元触媒30bについては省略してあるが、三元触媒30bについても上記図5で示したと同様に良好に昇温することとなる。
【0071】
また、図12を参照すると、例えば所定タイマ時間T3に亘り2段噴射を行った後、圧縮S/Lモードでの運転を行った場合(実線)と圧縮S/Lモードでの運転を行うことなく上記均一予混合燃焼での運転を行った場合(一点鎖線)の選択型NOx触媒30aの入口部と中心部及び三元触媒30bの中心部における排気温度Texの時間変化(a)が示され、併せて、排気浄化触媒装置30のNOx浄化効率(b)、CO浄化効率(c)、HC浄化効率(d)の時間変化がそれぞれ圧縮S/Lモードでの運転を行った場合(実線)と上記均一予混合燃焼での運転を行った場合(一点鎖線)とで比較してタイムチャートで示されているが、同図に示すように、冷態始動時にあっては、2段噴射の実施後に圧縮S/Lモード(実線)で運転すると、2段噴射からの切り換え直後、極めて短時間にHC、CO、NOxが共に高い浄化効率を示し、触媒上で活発な反応が起こるので、上記図5で示したと同様に、選択型NOx触媒30aとともに三元触媒30bが、均一予混合燃焼を実施した場合(一点鎖線)よりも早期に昇温することになるのである。
【0072】
ところで、通常、このように2段噴射を行うことは、上述したようにエンジン1の出力には一切寄与しない燃料を余分に供給するために燃費の悪化に繋がるのであるが、図12からも明らかなように、本発明においては排気浄化触媒装置30の昇温のために実施する2段噴射の時間、即ち所定タイマ時間T3は極めて短時間でよく、故に、従来のように2段噴射を長時間に亘り継続的に実施する場合に比べて燃費の悪化を極めて小さく抑えることができることになる。
【0073】
つまり、圧縮S/Lモード(実線)で運転する前に2段噴射を必要最小限の時間だけ実施するようにすることで、冷態始動時において、燃費の悪化を極めて少なく抑えながら効率よく早期に排気浄化触媒装置30を昇温させることができることになるのである。
そして、このように図9のステップS56において圧縮S/Lモードでの運転を行い、排気浄化触媒装置30の昇温を実施したら、次にステップS58に進む。
【0074】
ステップS58では、タイマTが所定タイマ時間T4を計時したか否か、即ち圧縮S/Lモードでの運転が所定タイマ時間T4を超えて継続したか否かを判別する。所定タイマ時間T4は、上記所定タイマ時間T2と同様、予め実験等により、例えば、冷態始動後、2段噴射及び圧縮S/Lモードでの運転の実行により排気浄化触媒装置30が所定の高温、即ち排気温度Texが所定値Tex1にまで昇温したと推定されるまでの時間に設定されている。そして、判別結果が偽(No)の場合には、ステップS52を経てステップS56において圧縮S/Lモードでの運転を継続する。一方、判別結果が真(Yes)の場合、即ちタイマTが所定タイマ時間T4を計時し、圧縮S/Lモードでの運転が所定タイマ時間T4を超えたと判定された場合(図10(c)参照)には、圧縮S/Lモードでの運転を終了し、ステップS59に進む。
【0075】
ステップS59では、上記燃料噴射モード設定マップに基づく通常制御によりエンジン1の運転を行うようにする(例えば、吸気O/Lモード運転)。
「第4実施形態」
第4実施形態では、上記第3実施形態の冷態始動昇温制御においてタイマ制御により圧縮S/Lモードでの運転をオープンループ制御(O/L制御)していたものを圧縮S/Lモードでの運転に代えて圧縮行程O2フィードバック制御(圧縮O2−F/B制御)する場合、即ち圧縮O2−F/Bモードで運転する場合の実施形態について説明する。
【0076】
図13を参照すると、冷態始動昇温制御のうちタイマ制御により圧縮O2−F/Bモードでの運転を行う場合の制御ルーチンがフローチャートで示されており、図14を参照すると、当該冷態始動昇温制御の制御内容がタイムチャートで示されており、以下、当該図13のフローチャート及び図14のタイムチャートに沿って第4実施形態を説明する。
【0077】
なお、図13中、▲1▼で示した部分は上記図9中のステップS40乃至ステップS50までの▲1▼で示した範囲、即ち2段噴射の制御部分と同一の制御であるため説明を省略し、ここでは、上記第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
ステップS60では、圧縮O2−F/Bモードまたは圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かの判別を行う。ここでは、上記第3実施形態における圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かの判別条件と同一の判別条件で判別を行う(図14(c)、(f)、(g)、(h)参照)。そして、判別結果が偽(No)の場合にはステップS62において通常制御(例えば、吸気O2−F/Bモード運転)を行い(図14(b)参照)、一方、判別結果が真(Yes)の場合には、次にステップS64に進む。
【0078】
ステップS64では、O2センサ22が活性状態にあるか否かを判別する。通常、O2センサ22は、ある程度の高温下でその性能を発揮するように構成されており、故に低温のままでは圧縮O2−F/B制御を適正に実施することができない。そこで、当該ステップS64では、O2センサ22が活性状態にあるか否かを判別する。詳しくは、O2センサ22が活性状態にあるか否かは、例えばO2センサ22の出力電圧がリッチ空燃比のもとで所定の出力値、即ち活性判定電圧よりも大きいか否かで判別可能である。判別結果が偽(No)で、O2センサ22が低温であってO2センサ22が活性状態にない(オフ)と判定された場合には、ステップS66に進む(図14(a)参照)。
【0079】
O2センサ22が活性状態にない場合には、上述の如く圧縮O2−F/B制御を適正に実施することができない。故に、この場合には、ステップS60の判別結果を受けて、ステップS66において、上記第3実施形態の場合と同様に圧縮S/Lモードでの運転を実施する(図14(b)参照)。
一方、ステップS64の判別結果が真(Yes)で、O2センサ22の出力電圧が活性判定電圧よりも大きく、O2センサ22が活性状態(オン)と判定された場合には、次にステップS68に進む(図14(a)参照)。
【0080】
ステップS68では、圧縮O2−F/Bモードで運転を行う(図14(b)参照)。つまり、O2センサ22からの出力情報に基づいて空燃比がストイキオになるように制御する。
このように、圧縮O2−F/Bモードで空燃比がストイキオ(値14.7)となるようにフィードバック制御すると、上記図4に示したように、圧縮S/Lモードで空燃比をスライトリーン空燃比(例えば、値14.7〜値16)とした場合と略同様にCO、H2、O2が十分に生成される。つまり、圧縮S/Lモードに代えて圧縮O2−F/Bモードで運転した場合であっても排気浄化触媒装置30を十分に昇温可能である。
【0081】
その上、さらに、このように圧縮O2−F/B制御を行うと、フィードバック制御であることから、上記圧縮S/LモードにおけるO/L制御に比べて極めて制御精度を高めることができることになる。つまり、圧縮O2−F/Bモードでの運転を行うようにすることで、制御の信頼性を高めることができ、排気浄化触媒装置30の昇温効率を向上させることができることになるのである。
【0082】
そして、このように図13のステップS66において圧縮S/Lモードでの運転を行い、或いは、ステップS68において圧縮O2−F/Bモードでの運転を行い、排気浄化触媒装置30の昇温を実施したら、次にステップS70に進む。
ステップS70では、上記第3実施形態の場合と同様に、タイマTが所定タイマ時間T4を計時したか否か、即ち圧縮S/Lモード或いは圧縮O2−F/Bモードでの運転が所定タイマ時間T4を超えて継続したか否かを判別する。判別結果が偽(No)の場合には、ステップS60、64を経てステップS66或いはステップS68において圧縮S/Lモードでの運転、圧縮O2−F/Bモードでの運転を継続する。一方、判別結果が真(Yes)の場合、即ちタイマTが所定タイマ時間T4を計時したと判定された場合(図14(d)参照)には、圧縮S/Lモード或いは圧縮O2−F/Bモードでの運転を終了し、ステップS72に進み、上記燃料噴射モード設定マップに基づく通常制御によりエンジン1の運転を行う(例えば、吸気O2−F/Bモード運転)。
【0083】
「第5実施形態」
第5実施形態では、上記第4実施形態の冷態始動昇温制御においてタイマ制御により圧縮S/Lモードでの運転をオープンループ制御(O/L制御)していたものをタイマ制御に代えて排気温センサ制御で行った場合の実施形態について説明する。
【0084】
図15を参照すると、冷態始動昇温制御のうち排気温センサ制御により圧縮O2−F/Bモードでの運転を行う場合の制御ルーチンがフローチャートで示されており、図16を参照すると、当該冷態始動昇温制御の制御内容がタイムチャートで示されており、以下、当該図15のフローチャート及び図16のタイムチャートに沿って第5実施形態を説明する。
【0085】
なお、上記第4実施形態の場合と同様、図15中、▲1▼で示した部分は上記第3実施形態における図9中のステップS40乃至ステップS50までの▲1▼で示した範囲、即ち2段噴射の制御部分と同一の制御であるため説明を省略し、ここでは、上記第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
ステップS80では、圧縮O2−F/Bモードまたは圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かの判別を行う。この場合においても、上記第3実施形態における圧縮S/Lモードでの運転を行ってもよいか否かの判別条件と同一の判別条件で判別を行う(図16(c)、(f)、(g)、(h)参照)。そして、判別結果が偽(No)の場合にはステップS82において通常制御(例えば、吸気O2−F/Bモード運転)を行い(図16(b)参照)、一方、判別結果が真(Yes)の場合には、次にステップS84に進む。
【0086】
ステップS84では、上記第4実施形態の場合と同様に、O2センサ22が活性状態にあるか否かを判別する。判別結果が偽(No)で、O2センサ22が低温であってO2センサ22が活性状態にないと判定された場合には、ステップS86に進み(図16(a)参照)、上記第4実施形態の場合と同様に、圧縮S/Lモードでの運転を実施する(図16(b)参照)。
【0087】
一方、ステップS84の判別結果が真(Yes)で、O2センサ22の出力電圧が活性判定電圧よりも大きく、O2センサ22が活性状態と判定された場合には、次にステップS88に進み(図16(a)参照)、やはり上記第4実施形態の場合と同様に、圧縮O2−F/Bモードで運転を行う(図16(b)参照)。
そして、ステップS86において圧縮S/Lモードでの運転を行い、或いは、ステップS88において圧縮O2−F/Bモードでの運転を行い、排気浄化触媒装置30の昇温を実施したら、次にステップS90に進む。
【0088】
ステップS90では、上記第2実施形態の場合と同様に、排気温センサ32によって検出される排気温度Texが上記所定値Tex1以上となったか否かを判別する(図16(d)参照)。つまり、上記第4実施形態ではタイマTの計時による排気温度Texの推定によって圧縮O2−F/Bモード或いは圧縮S/Lモードを終了するか否かの判別を行っていたが、ここでは、推定によらずに直接的に排気温度Texを検出して圧縮O2−F/Bモード、圧縮S/Lモードの終了判定を行うようにする。
【0089】
そして、ステップS90の判別結果が偽(No)であれば、ステップS80、84を経てステップS86或いはステップS88において圧縮S/Lモードでの運転、圧縮O2−F/Bモードでの運転を継続する。一方、判別結果が真(Yes)の場合、即ち排気温度Texが上記所定値Tex1以上と判定された場合(図16(d)参照)には、圧縮S/Lモード或いは圧縮O2−F/Bモードでの運転を終了し、ステップS92に進み、上記燃料噴射モード設定マップに基づく通常制御によりエンジン1の運転を行う(例えば、吸気O2−F/Bモード運転)。
【0090】
これにより、圧縮S/Lモード或いは圧縮O2−F/Bモードでの運転を必要に応じてより適正に実施できることになり、上記第4実施形態の場合と同様に、制御の信頼性を高めながら、燃費の悪化なく且つスモークの発生少なく排気浄化触媒装置30をより一層効率よく良好に昇温させることができることになる。
ところで、上記第4及び第5実施形態では、上述したように、O2センサ22が活性状態にあるか否かは、例えばO2センサ22の出力電圧がリッチ空燃比のもとで所定の出力値、即ち活性判定電圧よりも大きいか否かで判別するようにしている。
【0091】
しかしながら、2段噴射が実施される際に全体空燃比がリーン空燃比とされ、さらに、圧縮S/Lモードがスライトリーン空燃比(値14.7〜値16)で行われると、空燃比がリッチ空燃比とされる機会がなく、O2センサ22の活性判定ができないことになる。
そこで、ここでは、さらに、上記第4及び第5実施形態において、O2センサ22を強制的にリッチ空燃比とするO2センサ活性判定制御を併せて実施するようにし、確実にO2センサ22の活性判定がされるようにしている。以下、O2センサ活性判定制御内容について説明する。
【0092】
図17を参照すると、O2センサ活性判定制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下、当該フローチャートに沿い説明する。
図17のステップS100では、上記第3実施形態における図9のステップS40と同様に、始動スイッチ(始動SW)がオン状態とされ、エンジン1が始動したと判定された場合において、当該ルーチンで使用するタイマTを値0にリセットして計時を開始する。そして、ステップS102において、例えばエンジン回転速度Neがアイドル回転速度より大きい所定値Ne1に達したと判定され、始動判定が完了したら、次にステップS104に進む。
【0093】
ステップS104では、O2センサ22の出力電圧が上述した活性判定電圧以下であるか否かを判別する。つまり、当該ステップS104において、上述したようにして、O2センサ22が活性状態にない状態であるか否かを判別する。判別結果が偽(No)、即ちO2センサ22が既に十分に活性状態にあると判定された場合には、ステップS114に進み、O2センサ22の活性は完了と判定する。一方、判別結果が真(Yes)で、O2センサ22が活性状態にないと判定された場合には、次にステップS106に進む。
【0094】
ステップS106では、タイマTが所定タイマ時間T5(例えば、15sec)を計時したか否かを判別する。つまり、エンジン1が始動したと判定された後、所定タイマ時間T5(例えば、15sec)が経過しても未だにO2センサ22が活性状態となっていないかどうかを判別する。判別結果が偽(No)の場合には、ステップS104に戻り、O2センサ22が活性状態にあるか否かを継続して判別する。一方判別結果が真(Yes)の場合、即ちエンジン1の始動後、所定タイマ時間T5(例えば、15sec)経過しても未だにO2センサ22が活性状態となっていないと判定された場合には、次にステップS108に進む。空燃比がリッチ空燃比とされずリーン空燃比のままの場合には、当然にしてO2センサ22は未だ活性状態となっておらず、故にこの場合にはステップS108に進む。
【0095】
ステップS108では、空燃比をN行程(Nは任意の整数)に亘って強制的にリッチ空燃比(エンリッチ)とする。つまり、強制的にO2センサ22の活性判定が可能なようにする。
そして、ステップS110において、今度はO2センサ22の出力電圧が上述した活性判定電圧以上であるか否かを判別する。判別結果が偽(No)で、依然としてO2センサ22が活性状態となっていないと判定された場合には、ステップS112において、所定タイマ時間T5を所定時間αだけ延長し(T5=T5+α)、再びステップS104、106を経てステップS108において強制的に空燃比をリッチ空燃比(エンリッチ)とする。
【0096】
ステップS104の判別結果が真(Yes)とされ、O2センサ22が十分に活性状態になったと判定されたら、ステップS114に進み、O2センサ22の活性は完了と判定する。
これにより、2段噴射が実施される際に全体空燃比がリーン空燃比とされ、さらに、圧縮S/Lモードで空燃比がスライトリーン空燃比とされて運転が行われた場合であっても、確実にリッチ空燃比とされる機会が得られることになり、O2センサ22の活性判定を確実に行うことが可能となる。故に、上記第4及び第5実施形態において、O2センサ22が活性状態にあるときには、常に有効に圧縮O2−F/Bモードでの運転を実施するようにでき、上述した如く、制御の信頼性をより一層高めながら、燃費の悪化なく且つスモークの発生少なく排気浄化触媒装置30を良好に昇温させることができることとなる。
【0097】
なお、本発明は、上述した各実施形態に何ら限定されるものではなく、例えば、上記各実施形態の排気浄化触媒装置30では選択還元型NOx触媒30aと三元触媒30bとを組み合わせているが、排気空燃比がリーン空燃比のときに排ガス中のNOxを吸蔵しストイキオまたはリッチ空燃比のときに吸蔵されたNOxを放出し還元する吸蔵型NOx触媒等を用いるようにしてもよい。つまり、本発明は排気浄化触媒装置の昇温を図るものであって、触媒の種類や個数等には何ら限定されるものではない。
【0098】
また、上記各実施形態では、圧縮S/Lモードにおいて空燃比をスライトリーン空燃比(例えば、値14.7〜値16)に設定しているが、エンジン1より排出されるO2やCOの関係(図4参照)から、空燃比をストイキオに対して若干リッチ空燃比(例えば、値14程度)側に設定するようにしてもよい。
さらに、上記第3乃至第5実施形態では、図9中▲1▼で示した2段噴射の制御部分についてはタイマにて2段噴射の実行期間を計時するようにしているが、例えば、排気温センサを排気通路に設け、排気浄化触媒装置が触媒上で酸化反応可能な状態が当該排気温センサの出力値により検出或いは推定されるまでを実行期間とし2段噴射を実行するようにしてもよい。
【0099】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の請求項1の筒内噴射型内燃機関によれば、機関の空燃比が理論空燃比近傍となる燃料量を圧縮行程中に直接燃焼室内へ噴射して成層燃焼を実施し、当該成層燃焼中に生起された一酸化炭素及び燃焼に寄与しない余剰の酸素を触媒装置に供給して酸化反応させるよう燃料噴射時期及び点火時期を制御するようにしたので、燃費を悪化させることなくCOとO2とを同時に触媒装置に供給して酸化反応を起こさせるようにでき、当該反応熱で触媒装置を効率よく良好に昇温させることが可能である。
【0100】
また、請求項2、3の筒内噴射型内燃機関によれば、成層燃焼が実施されるときには燃料噴射時期と点火時期との間隔が広く、クランクアングル幅で40°〜60°となるようにしたので、特に、噴射された燃料の霧化時間を十分に確保でき、COを適切に生起させながらもスモークの発生を好適に抑制することができる。
また、請求項4の筒内噴射型内燃機関によれば、昇温手段による成層燃焼中に、排ガス中の酸素濃度を検出するセンサの出力に基づき機関の空燃比をフィードバック制御するようにしたので、制御の信頼性を高めることができ、触媒装置の昇温効率を向上させることができる。
【0101】
また、請求項5の筒内噴射型内燃機関によれば、吸気系に排ガスを還流するようEGRバルブを開弁する排気再循環装置を備えている場合において、排気再循環装置は、昇温手段による成層燃焼中には、排ガスの還流を行わないようEGRバルブを閉弁状態とするようにしたので、昇温手段による成層燃焼の実施中にあっては、空燃比の変動を抑えることができ、安定した成層燃焼を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る筒内噴射型内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る、失活抑制制御のうちタイマ制御による場合の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2のタイマ制御による場合の失活抑制制御の制御内容を示すタイムチャートである。
【図4】空燃比A/Fを変えて圧縮行程噴射を行った場合(実線)及び吸気行程噴射を行った場合(一点鎖線)におけるO2濃度(b)、H2濃度(c)、CO濃度(d)を比較して示した図である。
【図5】図2の失活抑制制御に基づき圧縮S/Lモードでの運転を実施した場合(実線)及び従来の均一予混合燃焼での運転を行った場合(一点鎖線)における選択型NOx触媒の中心部と三元触媒の中心部における排気温度Texの時間変化を比較して示したタイムチャートである。
【図6】CO濃度とスモーク濃度との関係を示す図である。
【図7】空燃比を一定(例えば、値15)とした場合の点火時期、噴射終了時期及び点火時期と噴射終了時期との間隔(一点鎖線で示す)とCO濃度(実線)、スモーク濃度(斜線付き実線)との関係を示すマップである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る、失活抑制制御のうち排気温センサ制御による場合の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係る、冷態始動昇温制御のうちタイマ制御により圧縮S/Lモードでの運転をオープンループ制御する場合の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図9のタイマ制御により圧縮S/Lモードでの運転をオープンループ制御する場合の冷態始動昇温制御の制御内容を示すタイムチャートである。
【図11】図9の冷態始動昇温制御に基づき圧縮S/Lモードでの運転を行う際に2段噴射を行った場合(実線)及び行わなかった場合(一点鎖線)における選択型NOx触媒の入口と中心部における排気温度Texの時間変化を比較して示したタイムチャートである。
【図12】図9の冷態始動昇温制御に基づき2段噴射を行った後に圧縮S/Lモードでの運転を行った場合(実線)と圧縮S/Lモードでの運転を行うことなく従来の均一予混合燃焼での運転を行った場合(一点鎖線)における選択型NOx触媒の入口部と中心部及び三元触媒の中心部における排気温度Texの時間変化(a)、及び、排気浄化触媒装置のNOx浄化効率(b)、CO浄化効率(c)、HC浄化効率(d)の時間変化を比較して示したタイムチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態に係る、冷態始動昇温制御のうちタイマ制御により圧縮O2−F/Bモードでの運転を行う場合の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】図13のタイマ制御により圧縮O2−F/Bモードでの運転を行う場合の冷態始動昇温制御の制御内容を示すタイムチャートである。
【図15】本発明の第5実施形態に係る、冷態始動昇温制御のうち排気温センサ制御により圧縮O2−F/Bモードでの運転を行う場合の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図16】図15の排気温センサ制御により圧縮O2−F/Bモードでの運転を行う場合の冷態始動昇温制御の制御内容を示すタイムチャートである。
【図17】O2センサ活性判定制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(機関本体)
4 点火プラグ
6 燃料噴射弁
11 スロットル弁
11a スロットルセンサ
12 排気マニホールド
13 クランク角センサ
14 水温センサ
22 O2センサ
30 排気浄化触媒装置
30a 選択還元型NOx触媒
30b 三元触媒
32 排気温センサ
40 電子コントロールユニット(ECU)
Claims (5)
- 排気通路に設けられ、排ガス中の有害成分を浄化する触媒装置と、
前記触媒装置の昇温が要求されるとき、機関の空燃比が理論空燃比近傍となる量の燃料を圧縮行程中に直接燃焼室内に噴射して成層燃焼を実施する昇温手段と、
燃料噴射時期を制御する噴射時期制御手段と、
点火時期を制御する点火時期制御手段とを備え、
前記昇温手段による成層燃焼中に生起された一酸化炭素及び燃焼に寄与しない余剰の酸素を、前記触媒装置に供給して酸化反応させるよう燃料噴射時期及び点火時期を制御することを特徴とする筒内噴射型内燃機関。 - 前記昇温手段により成層燃焼が実施されるとき、燃料噴射時期と点火時期との間隔が広くなるよう、少なくとも前記噴射時期制御手段により設定される燃料噴射時期及び前記点火時期制御手段により設定される点火時期のいずれか一方を変更する変更手段を備えたことを特徴とする、請求項1記載の筒内噴射型内燃機関。
- 前記変更手段は、燃料噴射時期と点火時期との間隔がクランクアングル幅で40°〜60°となるよう、少なくとも前記噴射時期制御手段により設定される燃料噴射時期及び前記点火時期制御手段により設定される点火時期のいずれか一方を変更することを特徴とする、請求項2記載の筒内噴射型内燃機関。
- 前記昇温手段による成層燃焼中に、排ガス中の酸素濃度を検出するセンサの出力に基づき前記機関の空燃比をフィードバック制御する制御手段を備えたことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の筒内噴射型内燃機関。
- 吸気系に排ガスを還流するようEGRバルブを開弁する排気再循環装置を備え、前記排気再循環装置は、前記昇温手段による成層燃焼中に、排ガスの還流を行わないよう前記EGRバルブを閉弁状態とすることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか記載の筒内噴射型内燃機関。
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