JP3740775B2 - ポリプロピレン系複合繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱ロール方式の不織布製造用に有用な複合繊維の製造方法に関し、更に詳しくは、引張強力及びヒートシール性に優れた不織布用素材として有用なポリプロピレン系熱接着性複合繊維に関する。
【0002】
【従来技術】
熱接着性繊維としては、ポリプロピレンやポリエステルを芯成分とし、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、低融点ポリエステル等を鞘成分としたものが知られている。このような従来の鞘芯型熱接着性繊維は、通常、カード工程によってウェブとしたり、抄紙工程によってシート状とした後、鞘成分の融点以上に加熱し、繊維の接点を融着させることによって不織布に形成している。加熱、融着する方法としては、不織布の用途に応じてサクションバンドドライヤー、サクションドラムドライヤー等の熱風接着法や、ヤンキードライヤー、カレンダーロール等の熱ロール接着法が広く利用されている。
【0003】
近年、不織布の需要の増加に伴い、湿式不織布だけではなく乾式不織布においても比較的コストが安価で生産性が高い熱ロール接着法を採用しようとする傾向が強まっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの熱接着性繊維を材料として熱ロール法によって得られる不織布は、引張強力が充分でない、あるいはヒートシール性が乏しいといった問題を有している。この問題を改良する手段として芯成分に結晶性ポリプロピレン、鞘成分にプロピレンを主体とするコポリマーを配した繊維が提案されているが、引張強力、ヒートシール性共に不十分であり、熱ロール接着法に適した引張強力が高くてヒートシール性に優れた不織布用材料として有用なポリプロピレン系熱接着性繊維の出現が強く要望されていた。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、ポリオレフィン製造用触媒に少量の本(共)重合目的のポリプロピレンおよび特定の固有粘度のポリエチレンを担持させて予備活性化した触媒を使用してプロピレンを本(共)重合させて得られる溶融張力の高いポリプロピレン組成物を複合繊維の鞘成分に用いることにより、引張強力及びヒートシール性に優れた不織布用素材として有用なポリプロピレン系複合繊維を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のポリプロピレン系複合繊維は、鞘成分が、(a)エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηE〕が15〜100dl/gであるポリエチレン0.01〜5重量部、および(b)プロピレン以外のα−オレフィンを0.01〜20重量%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηP〕が0.2〜2.5dl/gであるプロピレン−α−オレフィン共重合体:100重量部からなり、融点が110℃〜150℃であるポリプロピレン樹脂組成物であり、
芯成分が結晶性ポリプロピレンであり、
芯成分と鞘成分の複合比が、鞘成分/芯成分=20/80〜60/40の範囲である。
【0007】
前記の構成においては、ポリプロピレン樹脂が、その230℃における溶融張力(MS)と135℃ のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηT〕との間に、log(MS)>4.24×log〔ηT〕−1.20
で表される関係を有することが好ましい。
【0008】
また前記複合繊維は、熱ロール方式の不織布製造用途に使用されることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂の(a)成分を構成するポリエチレンは、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηE〕が15〜100dl/gのポリエチレンであって、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン−オレフィンランダム共重合体であり、好ましくはエチレン単独重合体もしくはエチレン重合単位を70重量%以上含有するエチレン−オレフィンランダム共重合体、さらに好ましくはエチレン単独重合体もしくはエチレン重合単位を90重量%以上含有するエチレン−オレフィンランダム共重合体が適しており、これらの(共)重合体は1種のみならず2種以上を混合してもよい。
【0010】
(a)成分のポリエチレンの固有粘度〔ηE〕が15dl/g未満であると、得られるポリプロピレン樹脂の溶融張力の向上効果が不十分となり、また固有粘度〔ηE〕の上限については特に限定されないが、(b)成分のポリプロピレンの固有粘度〔ηP〕との差が大きいと,組成物とした際に(b)成分のポリプロピレン中への(a)成分のポリエチレンの分散が悪くなり、結果として溶融張力が上昇しなくなる。さらに製造上の効率からも上限は100dl/g程度とするのがよい。
【0011】
(a)成分のポリエチレンの固有粘度〔ηE〕は15〜100dl/g、好ましくは17〜50dl/gの範囲である。また(a)成分のポリエチレンは135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηE〕を15dl/gにまで高分子量化させる必要があるため、高分子量化の効率面からエチレン重合単位が50重量%以上であることが好ましい。
【0012】
(a)成分のポリエチレンを構成するエチレンと共重合されるエチレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3〜12のオレフィンが好ましく用いられる。
【0013】
具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種以上であってもよい。
【0014】
(a)成分のポリエチレンの密度については、特に限定されないが、具体的には0.880〜0.980g/cm3 程度のものが好適である。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂を構成する(b)成分のプロピレン−α−オレフィン共重合体は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηP〕が0.2〜2.5dl/gのプロピレン以外のα−オレフィンを0.01〜20重量%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体である。
【0015】
(b)成分のプロピレン−α−オレフィン共重合体の固有粘度〔ηP〕は0.2〜2.5dl/gの範囲が、紡糸性等の加工性の面から好ましい。更に好ましくは1.0〜1.8dl/gのものである。
【0016】
(b)成分のプロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するプロピレンと共重合されるプロピレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種以上であってもよい。
【0017】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂は、前記した(a)成分のポリエチレン0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部と(b)成分のプロピレン−α−オレフィン共重合体100重量部からなる。
【0018】
(a)成分のポリエチレンが0.01重量部未満では、得られるポリプロピレン樹脂の溶融張力の向上効果が少なく、また5重量部を越えると効果が飽和しこれ以上の効果が望めず、得られるポリプロピレン樹脂の均質性が損なわれる場合があるので好ましくない。
【0019】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の溶融張力は230℃における溶融張力(MS)と135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηT〕とが
log(MS)>4.24log〔ηT〕−1.20
で表される関係にあることが好ましい。関係式の上限については特に限定されないがあまりにも溶融張力が高いと紡糸性等の加工性が悪化することから、好ましくは、4.24×log〔ηT〕+0.50>log(MS)>4.24×log〔ηT〕−1.05、より好ましくは 4.24×log〔ηT〕+0.24>log(MS)>4.24×log〔ηT〕−1.05、最も好ましくは4.24×log〔ηT〕+0.24>log(MS)>4.24×log〔ηT〕−0.93で示される関係である。
【0020】
ここで、230℃における溶融張力(MS)はメルトテンションテスター2型(東洋精機製作所製)を用いて、温度230℃で溶融させたポリプロピレン樹脂を直径2.095mm、長さ20mmの穴の開いたオリフィスから20mm/分のピストン降下速度で溶融樹脂を23℃の大気中にストランド状に押し出し、このストランドを3.14m/分の速度で引き取る際のストランド状ポリプロピレン樹脂の張力を測定した値(単位:cN)
である。
【0021】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の融点は110〜150℃の範囲であることが好ましい。融点が150℃より高くなると得られる繊維は熱接着性において不十分なものとなり、得られる不織布の引張強力、ヒートシール性が低下し好ましくない。融点が110℃より低くなると得られる繊維の表面摩擦係数が高くなり、カード行程等の不織布加工性が悪化するといった問題が生じるので工業生産的に好ましくない。
【0022】
ここで融点は、DSC7型(パーキンエルマー社製)示差走査型熱量計を用いて窒素雰囲気中で10mgの試料を20℃から230℃まで20℃/minの条件で昇温する。次いで、230℃で10min間保持した後、5℃/minの条件で−20℃まで降温する。さらに−20℃で10min間保持した後、20℃/minの速度で昇温させて得られる吸熱カーブのピーク温度を測定した値である。
【0023】
本発明のポリプロピレン樹脂の製造方法としては、ポリプロピレン樹脂の溶融張力が前記範囲に入っていれば、どのような製造方法を採用してもよいが、以下に詳述するエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンにより予備活性化された触媒の存在下に、プロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンを本(共)重合させる本方法を採用することにより容易に製造することができる。
【0024】
本明細書中において「予備活性化」の用語は、ポリオレフィン製造用触媒の高分子量活性を、プロピレン又はプロピレンと他のオレフィンとの本(共)重合を実施するに先立って、予め活性化することを意味し、ポリオレフィン製造用触媒の存在下にエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとを予備活性化(共)重合して触媒に担持させることにより行う。
【0025】
本発明で好適に使用する予備活性化触媒は、少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、遷移金属原子1モルに対し0.01〜1,000モルの周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機金属化合物(AL1)、および 遷移金属原子1モルに対し0〜500モルの電子供与体(E1)、の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒、ならびに、この触媒に担持した 遷移金属化合物成分1g当たり0.01〜100gの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηB〕が15dl/gより小さい本(共)重合目的のポリプロピレン(B)、および 遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜5,000gの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηA〕が15〜100dl/gであるポリエチレン(A)、からなる前記予備活性化触媒において、遷移金属化合物触媒成分として、ポリオレフィン製造用として提案されている少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分を主成分とする公知の触媒成分のいずれをも使用することができ、中でも工業生産上、チタン含有固体触媒が好適に使用される。
【0026】
チタン含有固体触媒成分としては、三塩化チタン組成物を主成分とするチタン含有固体触媒成分(特公昭56−3356号公報、特公昭59−28573号公報、特公昭63−66323号公報等)、マグネシウム化合物に四塩化チタンを担持した、チタン、マグネシウム、ハロゲン、および電子供与体を必須成分とするチタン含有担持型触媒成分(特開昭62-104810号公報、特開昭62-104811号公報、特開昭62-104812号公報、特開昭57-63310号公報、特開昭57-63311号公報、特開昭58-83006号公報、特開昭58-138712号公報等)などが提案されており、これらのいずれをも使用することができる。
【0027】
有機金属化合物(AL1)として、周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機基を有する化合物、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物などを、前記遷移金属化合物触媒成分と組み合わせて使用することができる。
【0028】
特に、一般式がAlR1 p2 q3-(p+q)(式中、R1およびR2は、アルキル基、シクロアルキル基、アリ−ル基等の炭化水素基およびアルコキシ基の同種または異種を、Xはハロゲン原子を表わし、pおよびqは、0<p+q≦3の正数を表わす)で表わされる有機アルミニウム化合物を好適に使用することができる。
【0029】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−i−ブチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド等のジアルキルアルミニウムモノハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロライド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロライド等のモノアルキルアルミニウムジハライドなどの他ジエトキシモノエチルアルミニウム等のアルコキシアルキルアルミニウムを挙げることができ、好ましくは、トリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムモノハライドを使用する。これらの有機アルミニウム化合物は、1種だけでなく2種類以上を混合して用いることもできる。
【0030】
電子供与体(E1)は、ポリオレフィンの生成速度および/または立体規則性を制御することを目的として必要に応じて使用される。
電子供与体(E1)として、たとえば、エーテル類、アルコール類、エステル類、硫化水素および分子中にSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物などが挙げられる。
【0031】
エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−アミルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ぺントノール、ヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン等が、またフェノール類として、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ナフトール等が挙げられる。
【0032】
エステル類としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アニス酸プロピル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル類、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸モノ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−i−ブチル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、i−フタル酸ジエチル、i−フタル酸ジプロピル、i−フタル酸ジブチル等の芳香族多価カルボン酸エステル類が挙げられる。
【0033】
分子中にSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物として、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール等のシラノール類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
これらの電子供与体は、1種の単独あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
予備活性化触媒において、ポリエチレン(A)は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηA〕が15〜100dl/g、好ましくは17〜50dl/gの範囲のエチレン単独重合体またはエチレン重合単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以下であるエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとの共重合体であり、最終的には本発明に用いるポリプロピレン樹脂の(a)成分のポリエチレンを構成する。したがって、(a)成分のポリエチレンの固有粘度〔ηE〕とポリエチレン(A)の固有粘度〔ηA〕とは、〔ηE〕=〔ηA〕の関係にある。
【0035】
ポリエチレン(A)の遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量は0.01〜5,000g、好ましくは0.05〜2,000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gである。遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量が0.01g未満では、本(共)重合で最終的に得られるポリプロピレン樹脂の溶融張力の向上効果が不十分であり、また5,000gを越える場合にはその効果の向上が顕著でなくなるばかりでなく、最終的に得られるポリプロピレン樹脂の均質性が悪化する場合があるので好ましくない。
【0036】
一方、ポリプロピレン(B)は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηB〕が15dl/gより小さい本(共)重合目的の(b)成分のポリプロピレンと同一組成のポリプロピレンであり、最終的には本発明に用いるポリプロピレン樹脂の(b)成分のポリプロピレンの一部として組み入られる。ポリプロピレン(B)は、ポリエチレン(A)の最終的に得られるポリプロピレン樹脂への分散性を付与する成分であり、その意味からもその固有粘度〔ηB〕は、ポリエチレン(A)の固有粘度〔ηA〕より小さく、最終的に得られるポリプロピレン樹脂の固有粘度〔ηT〕より大きいことが好ましい。
【0037】
一方、ポリプロピレン(B)の遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量は0.01〜100g、換言すれば最終的に得られるポリプロピレン樹脂基準で0.001〜1重量%の範囲が好適である。ポリプロピレン(B)の担持量が小さいと目的とするポリプロピレン樹脂へのポリエチレン(A)の分散性が不十分となり、また大きすぎるとポリエチレン(A)のポリプロピレン樹脂への分散性が飽和してしまうばかりでなく、予備活性化触媒の製造効率の低下を招く。
【0038】
本発明で、好適に使用される予備活性化触媒は、前記少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、有機金属化合物(AL1)および所望により使用される電子供与体(E1)の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒の存在下に、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンを予備(共)重合させてポリプロピレン(B)を生成させ、次いでエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンを予備活性化(共)重合させてポリエチレン(A)を生成させて、遷移金属化合物触媒成分にポリプロピレン(B)およびポリエチレン(A)を担持させる予備活性化処理により製造する。
【0039】
この予備活性化処理において、チタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、触媒成分中の遷移金属1モルに対し0.01〜1,000モル、好ましくは0.05〜500モルの有機金属化合物(AL1)、および触媒成分中の遷移金属1モルに対し0〜500モル、好ましくは0〜100モルの電子供与体(E1)を組み合わせてポリオレフィン製造用触媒として使用する。
【0040】
このポリオレフィン製造用触媒を、エチレンまたはエチレンとその他のオレフィンの(共)重合容積1リットル当たり、触媒成分中の遷移金属原子に換算して0.001〜5,000ミリモル、好ましくは0.01〜1,000ミリモル存在させ、溶媒の不存在下または遷移金属化合物触媒成分1gに対し100リットルまでの溶媒中において、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物0.01〜500gを供給して予備(共)重合させて遷移金属化合物触媒成分1gに対し0.01〜100gのポリプロピレン(B)を生成させ、次いでエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとの混合物0.01g〜10,000gを供給して予備活性化(共)重合させて遷移金属化合物触媒成分1gに対し0.01〜5,000gのポリエチレン(A)を生成させることにより、遷移金属化合物触媒成分にポリプロピレン(B)およびポリエチレン(A)が被覆担持される。
【0041】
本明細書中において、「重合容積」の用語は、液層重合の場合には重合器内の液相部分の容積を、気相重合の場合には重合器内の気相部分の容積を意味する。
遷移金属化合物触媒成分の使用量は、プロピレンの効率的、かつ制御された(共)重合反応速度を維持する上で、前記範囲であることが好ましい。また、有機金属化合物(AL1)の使用量が、少なすぎると(共)重合反応速度が遅くなりすぎ、また大きくしても(共)重合反応速度のそれに見合う上昇が期待できないばかりか、最終的に得られるポリプロピレン組成物中に有機金属化合物(AL1)の残さが多くなるので好ましくない。さらに、電子供与体(E1)の使用量が大きすぎると、(共)重合反応速度が低下する。溶媒使用量が大きすぎると、大きな反応容器を必要とするばかりでなく、効率的な(共)重合反応速度の制御及び維持が困難となる。
【0042】
予備活性化処理は、たとえば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒、オレフィン自身を溶媒とした液相中で行うことができ、また溶媒を用いずに気相中で行うことも可能である。
【0043】
予備活性化処理は、水素の存在下においても実施してもよいが、固有粘度〔ηA〕が15〜100dl/gの高分子量のポリエチレン(A)を生成させるためには、水素は用いないほうが好適である。
【0044】
予備活性化処理においては、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物の予備(共)重合条件は、ポリプロピレン(B)が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01g〜100g生成する条件であればよく、通常、−40℃〜100℃の温度下、0.1MPa〜5MPaの圧力下で、1分〜24時間実施する。またエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとの混合物の予備活性化(共)重合条件は、ポリエチレン(A)が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜5,000g、好ましくは0.05〜2、000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gの量で生成するような条件であれば特に制限はなく、通常、−40℃〜40℃、好ましくは−40℃〜30℃、さらに好ましくは−40℃〜20℃程度の比較的低温度下、0.1MPa〜5MPa、好ましくは0.2MPa〜5MPa、特に好ましくは0.3MPa〜5MPaの圧力下で、1分〜24時間、好ましくは5分〜18時間、特に好ましくは10分〜12時間である。
【0045】
また、前記予備活性化処理後に、予備活性化処理による本(共)重合活性の低下を抑制することを目的として、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物による付加重合を、遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜100gのポリプロピレン(C)の反応量で行ってもよい。この場合、有機金属化合物(AL1)、電子供与体(E1)、溶媒、およびプロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物の使用量はエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとの混合物による予備活性化重合と同様な範囲で行うことができるが、遷移金属原子1モル当たり0.005〜10モル、好ましくは0.01〜5モルの電子供与体の存在下に行うのが好ましい。また、反応条件については−40〜100℃の温度下、0.1〜5MPaの圧力下で、1分から24時間実施する。
【0046】
付加重合に使用される有機金属化合物(AL1)、電子供与体(E1)、溶媒の種類については、エチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとの混合物による予備活性化重合と同様なものを使用でき、プロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物については本(共)重合目的と同様の組成のものを使用する。
【0047】
付加重合で生成するポリプロピレンの固有粘度〔ηC〕は、ポリエチレン(A)の固有粘度〔ηA〕より小さな範囲であり、最終的には本(共)重合後の(b)成分のポリプロピレンの一部として組み入れられる。
【0048】
予備活性化触媒は、そのまま、または追加の有機金属化合物(AL2)及び電子供与体(E2)をさらに含有させたオレフィン本(共)重合触媒として、目的のポリプロピレン樹脂を得るための炭素数2〜12のオレフィンの本(共)重合に用いることができる。
【0049】
前記オレフィン本(共)重合用触媒は、前記予備活性化触媒、予備活性化触媒中の遷移金属原子1モルに対し有機金属化合物(AL2)を活性化触媒中の有機金属化合物(AL1)との合計(AL1+AL2)で0.05〜3,000モル、好ましくは0.1〜1,000モルおよび活性化触媒中の遷移金属原子1モルに対し電子供与体(E2)を予備活性化触媒中の電子供与体(E1)との合計(E1+E2)で0〜5,000モル、好ましくは0〜3,000モルからなる。
【0050】
有機金属化合物の含有量(AL1+AL2)が小さすぎると、プロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンの本(共)重合における(共)重合反応速度が遅すぎ、一方過剰に大きくしても(共)重合反応速度の期待されるほどの上昇は認められず非効率的であるばかりではなく、最終的に得られるポリプロピレン組成物中に残留する有機金属化合物残さが多くなるので好ましくない。さらに電子供与体の含有量(E1+E2)が過大になると(共)重合反応速度が著しく低下する。
【0051】
オレフィン本(共)重合用触媒に必要に応じて追加使用される有機金属化合物(AL2)および電子供与体(E2)の種類については既述の有機金属化合物(AL1)および電子供与体(E1)と同様なものを使用することができる。また、1種の単独使用でもよく2種以上を混合使用してもよい。また予備活性化処理の際に使用したものと同種でも異なっていてもよい。
【0052】
オレフィン本(共)重合用触媒は、前記予備活性化触媒中に存在する溶媒、未反応のオレフィン、有機金属化合物(AL1)、および電子供与体(E1)等を濾別またはデカンテーションして除去して得られた粉粒体またはこの粉粒体に溶媒を添加した懸濁液と、追加の有機金属化合物(AL2)および所望により電子供与体(E2)とを組み合わせてもよく、また、存在する溶媒および未反応のオレフィンを減圧蒸留または不活性ガス流等により蒸発させて除去して得た粉粒体または粉粒体に溶媒を添加した懸濁液と、所望により有機金属化合物(AL2)及び電子供与体(E2)とを組み合わせてもよい。
【0053】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂の製造方法として、前記予備活性化触媒またはオレフィン本(共)重合用触媒の使用量は、重合容積1リットルあたり、予備活性化触媒中の遷移金属原子に換算して、0.001〜1,000ミリモル、好ましくは0.005〜500ミリモル使用する。遷移金属化合物触媒成分の使用量を上記範囲とすることにより、プロピレンまたはプロピレンと組成オレフィンとの混合物の効率的かつ制御された(共)重合反応速度を維持することができる。
【0054】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の本(共)重合は、その重合プロセスとして公知のオレフィン(共)重合プロセスが使用可能であり、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒中で、オレフィンの(共)重合を実施するスラリー重合法、オレフィン自身を溶媒として用いるバルク重合法、オレフィンの(共)重合を気相中で実施する気相重合法、さらに(共)重合して生成するポリオレフィンが液状である液相重合、あるいはこれらのプロセスの2以上を組み合わせた重合プロセスを使用することができる。
【0055】
上記のいずれの重合プロセスを使用する場合も、重合条件として、重合温度は20〜120℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜100℃の範囲、重合圧力は0.1〜5MPa、好ましくは0.3〜5MPaの範囲において、連続的、半連続的、若しくはバッチ的に重合時間は5分間〜24時間程度の範囲が採用される。上記の重合条件を採用することにより、(b)成分のポリプロピレンを高効率かつ制御された反応速度で生成させることができる。
【0056】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の製造方法により好ましい態様においては、本(共)重合において生成する(b)成分のプロピレン−α−オレフィン共重合体の固有粘度が0.2〜2.5dl/gの範囲にあれば、特に複合繊維用成分として特に好適となり、かつ得られるポリプロピレン組成物中に、使用した予備活性化触媒に由来するポリエチレン(A)が0.01〜5重量%の範囲となるように重合条件を選定する。また、公知のオレフィンの重合方法と同様に、重合時に水素を用いることにより得られる(共)重合体の分子量を調整することができる。
【0057】
本(共)重合の終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残さ除去工程、乾燥工程等の後処理工程を経て、目的とする高溶融張力を有するポリプロピレン組成物が最終的に得られる。
【0058】
得られるオレフィン(共)重合体組成物は、230℃の溶融物の周波数ω=100 時の貯蔵弾性率をG´(ω=100 )、周波数ω=10-2時の貯蔵弾性率をG´(ω=10-2)とする時に、
log (G´(ω=100 ))−log (G´(ω=10-2))<2
で表される関係を有することが好ましい。
【0059】
また、オレフィン(共)重合体組成物は、190℃,230℃,250℃での4×10-1(sec-1) の剪断速度における第一法線応力差N1 が、
log (N1 )>−log (MFR)+5
(ただしMFRはメルトフローレート)で表される関係を有することが好ましい。
【0060】
また、オレフィン(共)重合体組成物は、190℃と250℃において、4×10-1(sec-1)の剪断速度における第一法線応力差N1 (190℃)とN1 (250℃)とする時に、
[N1(190℃)−N1(250℃)]/N1(190℃)<0.6
で表される関係を有することが好ましい。
【0061】
また、オレフィン(共)重合体組成物は、190℃と250℃において、3×10-1(sec-1)の剪断速度における溶融張力MS(190℃)とMS(250℃)とする時に、
[MS(190℃)−MS(250℃)]/MS(190℃)<3.1で表される関係を有することが好ましい。
【0062】
また、オレフィン(共)重合体組成物は、230℃の溶融物の歪み500%に条件におけるt=10(sec)の緩和弾性率をG(t=10)とし、t=300(sec)の緩和弾性率をG(t=300)とする時に、
[G(t=10)−G(t=300)]/G(t=10)<1
で表される関係を有することが好ましい。
【0063】
上記オレフィン(共)重合体組成物、例えばポリプロピレン樹脂には、通常、熱可塑性樹脂に添加される各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、分子量降下剤等を本発明の効果を妨げない範囲で適宜配合することができる。
【0064】
本発明において複合繊維の芯成分に用いられる結晶性ポリプロピレンとは、一般に繊維用に使用されている結晶性ポリプロピレンである。
本発明の複合繊維は、上記の鞘成分と芯成分とを公知の鞘芯型複合紡糸装置及び延伸装置を用いて製造することができる。また、スパンボンド方式やメルトブロー方式のように延伸を行わない製造法を用いてもかまわない。
【0065】
鞘成分と芯成分の複合重量比(鞘成分/芯成分)が20/80〜60/40に限定される理由は、鞘成分が20%未満では得られる繊維の熱接着性が低下し、これを用いた不織布も充分な引張強度及びヒートシール性を得ることができなくなり、また、鞘成分が60%を越すと熱接着性は充分であるがウェブ収縮率が高くなり、寸法安定性が低下するからである。
【0066】
尚、鞘成分と芯成分の関係は同心型、偏心型のいずれでも良いが、熱処理時の収縮が少ないことから同心型が好ましい。
通常、熱ロール接着法によって得られた不織布の破壊は、繊維の結合点の破壊によって生ずる。よって、不織布の引張強力は、繊維結合点の強力に依存する。
【0067】
本発明の熱接着性複合繊維は、不織布化時に繊維の結合点を形成する鞘成分の溶融張力が大きく、これが、結合点の高強力につながっていると考えられる。
本発明の熱接着性複合繊維は、鞘成分、芯成分ともポリプロピレンを主体とする重合体であるため、鞘成分と芯成分の親和性が極めて大きく、鞘芯の境界面での剥離が起きにくいことから、熱ロール法によって容易に高強度、高ヒートシール性の不織布を得ることができるのみならず、レーヨン、パルプ等の他素材に対する熱接着性も有しているので、例えばこれらを適当な繊維長のステープルに切断し、混合してウェブを形成した後、熱接着することによって、充分な引張強度を有する不織布を得ることができる。
【0068】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが,本発明はこれに限定されるものではない。実施例、比較例において用いた評価法は次の方法によった。
(1) 固有粘度〔η〕:135℃のテトラリン中で測定した極限粘度を、オストヴァルト粘度計:(三井東圧化学社製)により測定した値(単位:dl/g)。
(2) 溶融張力(MS):メルトテンションテスター2型(東洋精機製作所社製)により測定した値(単位:cN)MFR:JIS K6758に準拠した。
(3) 融点:DSC7型(パーキンエルマー社製)示差走査型熱量計を用いて窒素雰囲気中で10mgの試料を20℃から230℃まで20℃/minの条件で昇温する。次いで、230℃で10min間保持した後、5℃/minの条件で−20℃まで降温する。さらに−20℃で10min間保持した後、20℃/minの速度で昇温させて得られる吸熱カーブのピーク温度を測定した値である。
(4) 不織布引張強度:試料短繊維をミニチュアカード機を用い目付約20g/m2のウェブとし、130℃に加熱した直径165mmの金属ロール(上:凸部面積率が25%のエンボスロール、下:フラットロール)の間に線圧20kg/cm、速度6m/minの条件で通して不織布化する。得られた不織布から機械流れ方向(以下MDと略記することがある)と、それと垂直な方向(以下CDと略記することがある)についてそれぞれ5cm幅の試料片を作成し、引張試験機を用い、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/minで引張強度を測定した値(単位:kg/5cm)。
(5) ヒートシール性:上記不織布引張強度の測定に用いる不織布から幅5cmの試料片を切り出し、ポリプロピレン繊維(2d/f)からなる目付約20g/m2の不織布から切り出した幅5cmの試験片と先端部を長さ1cmだけ重ね合わせ、3kg/cm2 の加圧下3秒間150℃で熱圧着させた複合材料とし、引張試験機を用いてつかみ間隔100mm、引張速度100mm/minで剥離強度を測定した値(単位:kg/5cm)。
(6) ウェブ熱収縮率:試料短繊維をミニチュアカード機によって目付約200g/m2 のウェブとし、熱風循環式乾燥機で145℃、5分間の熱処理を施した場合のウェブのMD方向における収縮率を示す(単位:%)。
【0069】
尚、実施例、比較例に用いたポリプロピレン(PP)は次のように作成した。
PP1
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
撹拌機付きステンレス製反応器中において、デカン0.3リットル、無水塩化マグネシウム48g、オルトチタン酸−n−ブチル170gおよび2−エチル−1−ヘキサノール195gを混合し、撹拌しながら130℃に1時間加熱して溶解させ均一な溶液とした。この均一溶液を70℃に加温し、撹拌しながらフタル酸ジ−i−ブチル18gを加え1時間経過後四塩化ケイ素520gを2.5時間かけて添加し固体を析出させ、さらに70℃に1時間加熱保持した。固体を溶液から分離し、ヘキサンで洗浄して固体生成物を得た。
【0070】
固体生成物の全量を1,2−ジクロルエタン1.5リットルに溶解した四塩化チタン1.5リットルと混合し、次いでフタル酸ジ−i−ブチル36g加え、撹拌しながら100℃に2時間反応させた後、同温度においてデカンテーションにより液相部を除き、再び、1,2−ジクロルエタン1.5リットルおよび四塩化チタン1.5リットルを加え、100℃に2時間撹拌保持し、ヘキサンで洗浄し乾燥してチタン2.8重量%を含有するチタン含有担持型触媒成分(遷移金属化合物触媒成分)を得た。
【0071】
(2)予備活性化触媒の調製
内容積5リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換した後、n−ヘキサン2.8リットル、トリエチルアルミニウム(有機金属化合物(AL1))4ミリモルおよび前項で調整したチタン含有担持型触媒成分を9.0g(チタン原子換算で5.26ミリモル)加えた後、プロピレン20g供給し、−2℃で10分間、予備重合を行った。以上が本発明でいう(b)成分の一部として組み入れられる段落番号[0036]に記載のポリプロピレン(B)である。
【0072】
別途、同一の条件で行った予備重合により生成したポリマーを分析したところ、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、プロピレン2gがポリプロピレン(B)となり、ポリプロピレン(B)の135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηB〕が2.8dl/gであった。
【0073】
反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内の温度を−1℃に保ちつつ、反応器内の圧力が0.59MPaを維持するようにエチレンを反応器に連続的に2時間供給し、予備活性化を行った。以上が本発明でいう(a)成分である。
【0074】
別途、同一の条件で行った予備活性化重合により生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、ポリマーが24g存在し、かつポリマーの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηT2〕が31.4dl/gであった。
【0075】
エチレンによる予備活性化重合で生成したチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリエチレン(A)量(W2)は、予備活性化処理後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリマー生成量(WT2)と予備重合後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリプロピレン(B)生成量(W1)との差として次式で求められる。
【0076】
W2=WT2−W1
また、エチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレン(A)の固有粘度〔ηA〕は、予備重合で生成したポリプロピレン(B)の固有粘度〔ηB〕および予備活性化処理で生成したポリマーの固有粘度〔ηT2〕から次式により求められる。
【0077】
〔ηA〕=(〔ηT2〕×WT2−〔ηB〕×W1)/(WT2−W1)=〔ηE〕
上記式に従ってエチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレン(A)量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり22g、固有粘度〔ηE〕は34.0dl/gであった。
【0078】
反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内にジイソプロピルジメトキシシラン(電子供与体(E1))1.6ミリモルを加えた後、プロピレン20gを供給し、1℃で10分間保持し、予備活性化処理後の付加重合を行った。以上が本発明でいう(b)成分の一部として組み入れられる段落番号[0045]〜[0047]に記載のポリプロピレン(C)である。
【0079】
別途、同一の条件で行った付加重合で生成したポリマーの分析結果は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、ポリマーが26g存在し、かつポリマーの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηT3〕が29.2dl/gであり、上記と同様にして算出した付加重合により生成したポリプロピレンの生成量(W3)は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり2g、固有粘度〔ηC〕は2.8dl/gであった。
【0080】
反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換し、本(共)重合用の予備活性化触媒スラリーとした。
(3)ポリプロピレン組成物の製造(プロピレンの本(共)重合)
内容積500リットルの撹拌機付き、ステンレス製重合器を窒素置換した後、20℃においてn−ヘキサン240リットル、トリエチルアルミニウム(有機金属化合物(AL2))780ミリモル、ジイソプロピルジメトキシシラン(電子供与体(E2))78ミリモルおよび前記で得た予備活性化触媒スラリーの1/2量を重合器内に投入した。引き続いて、プロピレン濃度に対する水素濃度、エチレン濃度およびブテン−1濃度を各々0.08、0.025および0.038になるように供給し、60℃に昇温した後、重合器内の気相部圧力が、0.79MPaを保持しながらプロピレン、水素、エチレンおよびブテン−1を連続的に2時間、重合器内に供給し、本発明でいう(b)成分を占めるプロピレン−α−オレフィンの共重合体を製造した。
【0081】
重合時間経過後、メタノール1リットルを重合器内に導入し、触媒失活反応を60℃にて15分間実施し、引き続き未反応ガスを排出後、溶媒分離、重合体の乾燥を行い、固有粘度〔ηT〕が1.67dl/gのポリマー39.6kgを得た。以上が本発明でいう(a)成分と(b)成分とからなるポリプロピレン樹脂である。
【0082】
得られたポリマーは(a)成分に該当する予備活性化重合によるポリエチレン(A)含有率0.25重量%のポリプロピレン樹脂であり、(b)成分のプロピレン−α−オレフィン共重合体の固有粘度〔ηP〕は1.59dl/gであった。
【0083】
(4)ポリプロピレン樹脂の造粒
得られたポリプロピレン樹脂100重量部に対して、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で1分間撹拌混合した。得られた混合物をスクリュー径40mmの押出機を用いて溶融混練温度230℃にて溶融混練押出し、ペレットを得た。得られたペレットの各種物性を測定したところ、MFRは7.6g/10分、溶融張力は1.3cN、融点は140℃であった。この得られたポリプロピレン樹脂の詳細な諸特性を表1に示した。
【0084】
(4)ポリプロピレン樹脂の造粒
得られた(a)成分と(b)成分とからなるポリプロピレン樹脂100重量部に対して、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で1分間撹拌混合した。得られた混合物をスクリュー径40mmの押出機を用いて溶融混練温度230℃にて溶融混練押出し、ペレットを得た。得られたペレットの各種物性を測定したところ、MFRは7.6g/10分、溶融張力は1.3cN、融点は140℃であった。この得られたポリプロピレン樹脂の詳細な諸特性を表1に示した。
【0085】
【表1】
Figure 0003740775
【0086】
(実施例1)
鞘成分としてPP1を用い、芯成分としてMFRが8g/10minである融点163℃の結晶性ポリプロピレン(ホモポリマー)を用いて、直径0.6mmのノズルを備えた複合紡糸装置により、複合比40/60(鞘成分/芯成分)、紡糸温度310℃、引き取り速度900m/minで紡糸して、単糸繊度が4.2d/fの同心鞘芯型複合繊維を得た。次に、この未延伸糸を延伸倍率2.6倍、延伸温度95℃の条件で延伸を行い、機械捲縮を付与し、80℃で乾燥させた後、38mmに切断して複合繊維ステープルを得た。
【0087】
(実施例2)
複合比を60/40とした以外は実施例1と同様の条件で複合繊維ステープルを得た。
【0088】
(比較例1)
鞘成分をPP2とした以外は、実施例1と同様の条件で複合繊維ステープルを得た。
【0089】
以上の実施例1〜2、比較例1で得られた複合繊維ステープルを用いて、カード機で解繊し、ウェブを形成した後、130℃の熱ロール(加熱エンボスロール)を用いて、線圧力20kg/cmで熱ロール加工して不織布を形成した。得られた不織布の目付は20g/m2 であった。また、得られた不織布の条件と結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
Figure 0003740775
【0091】
表2から明らかな通り、本発明の実施例品は引張強力及びヒートシール性に優れていることが確認できた。
【0092】
【発明の効果】
本発明の複合繊維により得られる熱ロール加工不織布は、触感(風合い)が良く、高強度で、かつ、ヒートシール性に優れる。この不織布は、例えば紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料の表面材、あるいは手術着等の医療用素材として利用することができる。
【0093】
また、本発明の複合繊維を用い、湿式法によって得られた不織布も高強度、高ヒートシール性を有するので、一般の紙分野のみならず、ティーバッグやその他の包装材として広く利用できる。

Claims (4)

  1. 鞘成分が、(a)エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηE〕が15〜100dl/gであるポリエチレン0.01〜5重量部、および(b)プロピレン以外のα−オレフィンを0.01〜20重量%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηP〕が0.2〜2.5dl/gであるプロピレン−α−オレフィン共重合体:100重量部からなり、融点が110℃〜150℃であるポリプロピレン樹脂組成物であり、
    芯成分が結晶性ポリプロピレンであり、
    芯成分と鞘成分の複合比が、鞘成分/芯成分=20/80〜60/40の範囲であるポリプロピレン系複合繊維。
  2. 前記ポリプロピレン樹脂組成物は、エチレンまたはエチレンとその他のオレフィンにより予備活性化された触媒の存在下に、プロピレンまたはプロピレンとその他のオレフィンを本(共)重合させることにより得られたものである請求項1に記載のポリプロピレン系複合繊維。
  3. 前記ポリプロピレン樹脂組成物は、その230℃における溶融張力(MS)と135℃のテトラリン中で測定した固有粘度〔ηT〕との間に、
    log(MS)>4.24×log〔ηT〕−1.20
    で表される関係を有する請求項1または2に記載のポリプロピレン系複合繊維。
  4. 前記ポリプロピレン系複合繊維は、熱ロール方式の不織布製造用途に使用されるものである請求項1または2に記載のポリプロピレン系複合繊維。
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