JP2023133974A - ポリプロピレン繊維、および、その製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン繊維、および、その製造方法 Download PDF

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安彦 大槻
Yasuhiko Otsuki
友章 水川
Tomoaki Mizukawa
一輝 波戸
Kazuteru Namito
雄士 鞠谷
Yuuji Kikutani
亘 宝田
Wataru Takarada
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Abstract

【課題】高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維およびその製造方法を提供すること。【解決手段】プロピレン系重合体(A)1~15質量部とプロピレン系重合体(B)85~99質量部(重合体(A)と重合体(B)の合計は100質量部)とを含むプロピレン系重合体組成物からなる繊維;プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gであるプロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%及び上記条件で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gであるプロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%〔但し、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%〕;プロピレン系重合体(B):230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが15g/10分~80g/10分かつ(Mw/Mn)が5.0以下。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン繊維、および、その製造方法に関する。
プロピレン系重合体は、各種成形体の材料として広く使用されており、成形方法や用途に応じて要求される特性も異なってくる。例えば、プロピレン系重合体からなるフィルムは、優れた剛性などの機械物性や、光沢などの光学的特性を生かして、食品や雑貨の包装用フィルム、及び繊維の原料として広く利用されている。
例えば、特許文献1には、(A)3未満の分子量分布(Mn/Mw)、0.5%以下の低さの、全プロピレン挿入中のプロピレンモノマーの2,1挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の割合、即ち2,1挿入の割合、及び、20~60g/10分のメルトフローレート(MFR)の値、を有する結晶質アイソタクチックプロピレンポリマー樹脂100重量部;及び(B)5~40cNの溶融強度の値を有する高分子量プロピレンポリマー(B)0.1~1重量部;を含むポリオレフィン組成物およびこの組成物を用いて調製される繊維が開示されている。
特表2008-523231号公報
従来、ポリプロピレン繊維の弾性率と伸び率はトレードオフの関係にあり、弾性率と伸び率を共に向上させることは困難であった。特許文献1に開示された組成物を用いて調製される繊維では、テナシティ(強度)と破断点伸びとの間の良好な特性のバランスが示されることが開示されているが、弾性率を向上させることについて何ら検討はされていない。
本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、高速紡糸成形可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維および複合紡糸繊維を提供することである。また、本発明に係る一実施形態が解決しようとする他の課題は、高速紡糸成形可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維の製造方法を提供することである。
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記プロピレン系重合体(A)を1~15質量部とプロピレン系重合体(B)を85~99質量部(重合体(A)と重合体(B)の合計は100質量部)とを含むプロピレン系重合体組成物からなる繊維;
プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)と135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)とを含み、前記プロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%の範囲にあり、前記プロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲にある〔但し、前記プロピレン系重合体(a1)および前記プロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする〕;
プロピレン系重合体(B):230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが15g/10分~80g/10分であり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5.0以下である。
<2> 前記プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が20以上である<1>に記載の繊維。
<3> 前記プロピレン系重合体組成物の210℃における動的粘弾性の測定において、角周波数が100rad/sのときの貯蔵弾性率G’(100)と角周波数が10rad/sのときの貯蔵弾性率G’(10)との比(G’(100)/G’(10))が4.5~10.0であり、かつ、角周波数が0.1rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.1)と角周波数が0.01rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.01)との比(G’(0.1)/G’(0.01))が3~20である、<1>または<2>に記載の繊維。
<4> 前記プロピレン系重合体組成物の230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが、10~60である<1>~<3>のいずれか1つに記載の繊維。
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載の繊維を含む、複合紡糸繊維。
<6> <1>~<4>のいずれか1つに記載の繊維の製造方法であって、
前記プロピレン系重合体組成物を溶融紡糸する工程を含む、繊維の製造方法。
本発明に係る一実施形態によれば、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維および複合紡糸繊維が提供される。また、本発明に係る一実施形態によれば、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維の製造方法が提供される。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書おいて、高速紡糸とは、紡糸速度が4000m/min以上であることを意味する。
(繊維)
本発明に係る繊維は、下記プロピレン系重合体(A)を1~15質量部と下記プロピレン系重合体(B)を85~99質量部(重合体(A)と重合体(B)の合計は100質量部)とを含むプロピレン系重合体組成物からなる。
プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)と135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)とを含み、前記プロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%範囲にあり、前記プロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲にある〔但し、前記プロピレン系重合体(a1)および前記プロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする〕。
プロピレン系重合体(B):230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが15g/10分~80g/10分であり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5.0以下である。
従来、ポリプロピレン繊維の弾性率と伸び率はトレードオフの関係にあり、弾性率と伸び率を共に向上させることは困難であった。本発明者らが鋭意検討したところ、繊維は上記構成を有することで、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高いことを見出した。この理由は明らかではないが以下のように推定される。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物において、特定の物性値を示すプロピレン系重合体(B)にプロピレン系重合体(B)よりも高分子量であるプロピレン系重合体(A)を適量含有させることにより、溶融紡糸成形性に必要な粘弾性特性および結晶化特性を阻害することなく、高分子量成分であるプロピレン系重合体(A)による配向効果により弾性率を向上させるとともに、長い伸びきり分子鎖が引張時の延伸破壊を抑制する効果を発現するので、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られると推定している。
高速紡糸成形が可能な繊維とは、温度230℃で直径が1mmの紡糸ダイスから吐出量3.00g/minで大気中に重合体組成物を押出したときに、重合体組成物からなる繊維が安定して成形され、かつ、当該繊維の限界の引取り速度が4000m/min以上である繊維を意味する。
以下、本発明に係る繊維の詳細について説明する。
<プロピレン系重合体組成物>
プロピレン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)を1~15質量部と、プロピレン系重合体(B)を85~99質量部(重合体(A)と重合体(B)の合計は100質量部)と、を含む。なお、各要件の測定条件の詳細は、実施例の欄に記載する。
<<プロピレン系重合体(A)>>
プロピレン系重合体(A)は、135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η](以下、単に「極限粘度[η]」ともいう。)が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)と135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)とを含み、前記プロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%の範囲にあり、前記プロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲にある。但し、前記プロピレン系重合体(a1)および前記プロピレン系重合体(a2)の合計量は100質量%である。
〔プロピレン系重合体(a1)〕
プロピレン系重合体(a1)は、特に制限はなく、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~8のα-オレフィンが挙げられる。上記炭素数2~8のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。これらα-オレフィンとしてはエチレンが好ましい。上記炭素数2~8のα-オレフィンは、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
プロピレン系重合体(a1)がプロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとの共重合体である場合、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、共重合体の全構成単位に対して、通常は90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である。炭素数2~8のα-オレフィン(ただし、プロピレンを除く)に由来する構成単位の含有量は、共重合体の全構成単位に対して通常は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維がより得られるという観点から、プロピレン系重合体(A)は、プロピレンの単独重合体が好ましい。
上記構成単位の含有量は、13C-NMR(核磁気共鳴)により測定することができる。
プロピレン系重合体(a1)の極限粘度[η]は、10~12dl/gの範囲にある。プロピレン系重合体(a1)の極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲内であると、プロピレン系重合体組成物から得られる繊維は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い。
上記観点から、プロピレン系重合体(a1)の極限粘度[η]は、好ましくは10.5~11.5dl/gの範囲にある。
極限粘度[η]は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
また、プロピレン系重合体(a1)の含有量は、プロピレン系重合体(a1)および後述のプロピレン系重合体(a2)の合計量は100質量%に対して、20~50質量%の範囲にあり、好ましくは20~45質量%、より好ましくは20~40質量%、さらに好ましくは22~40質量%の範囲にある。
プロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%の範囲にあると、プロピレン系重合体組成物から得られる繊維は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い。
プロピレン系重合体(a1)は1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
〔プロピレン系重合体(a2)〕
プロピレン系重合体(a2)としては、特に制限はなく、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。これらα-オレフィンとしてはエチレンが好ましい。炭素数2~8のα-オレフィンは1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
プロピレン系重合体(a2)がプロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとの共重合体である場合、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、共重合体の全構成単位に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上であり、さらに好ましくは94質量%以上である。炭素数2~8のα-オレフィン(ただし、プロピレンを除く)に由来する構成単位の含有量は、共重合体の全構成単位に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。上記構成単位の含有量は、13C-NMRにより測定することができる。
プロピレン系重合体(a2)の極限粘度[η]は、0.5~3dl/gの範囲にある。プロピレン系重合体(a2)の極限粘度[η]が、0.5~3dl/gの範囲にあると、プロピレン系重合体組成物から得られる繊維は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い。上記観点から、プロピレン系重合体(a2)の極限粘度[η]は、好ましくは0.6~1.5dl/gの範囲にあり、より好ましくは0.8~1.5dl/gの範囲にある。
また、プロピレン系重合体(A)におけるプロピレン系重合体(a2)の含有量は、上記プロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)の合計量は100質量%に対して、50~80質量%の範囲にある。プロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲にあると、プロピレン系重合体組成物から得られる繊維は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い。上記観点から、プロピレン系重合体(a2)の含有量は、プロピレン系重合体(a1)および後述のプロピレン系重合体(a2)の合計量は100質量%に対して、好ましくは55~80質量%、より好ましくは60~80質量%、さらに好ましくは60~78質量%の範囲にある。
プロピレン系重合体(a2)は1種または2種以上用いることができる。
〔添加剤〕
プロピレン系重合体(A)には、プロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)に加えて、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、難燃剤、結晶核剤等の添加剤を配合することができる。添加剤は1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。添加剤の割合は特に制限されず、適宜調節することが可能である。
プロピレン系重合体(A)の230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~5g/10分であり、より好ましくは0.05~4g/10分であり、さらに好ましくは0.1~3g/10分である。プロピレン系重合体(A)のMFRが上記範囲にあると、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られる。
プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、800,000~3,000,000であることが好ましく、820,000~2,000,000であることがより好ましい。
重量平均分子量は、実施例に記載された方法により求められる。
プロピレン系重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、1,400~80,000であることが好ましく、2,000~18,000であることがより好ましい。
重量平均分子量は、実施例に記載された方法により求められる。
高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
<プロピレン系重合体(A)の製造方法>
プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、種々公知の製造方法が挙げられ、例えば、上記物性を満たすプロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)をそれぞれ製造した後、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)とを上記範囲で混合または溶融混練してプロピレン系重合体(A)を得る方法(1);上記物性を満たすプロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)を1つの重合系もしくは2つ以上の重合系で製造してプロピレン系重合体(A)を得る方法(2)が挙げられる。
方法(1)では、例えば、プロピレン系重合体(a1)、プロピレン系重合体(a2)および必要に応じて添加剤等をヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどを用いて混合した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練することによって、上記各成分が均一に分散混合された高品質のプロピレン系重合体(A)を得ることができる。溶融混練時の樹脂温度は、通常は180~280℃であり、好ましくは200~260℃である。
方法(2)では、2段以上の多段重合により、相対的に高分子量のプロピレン系重合体(a1)および相対的に低分子量のプロピレン系重合体(a2)を含むプロピレン系重合体(A)を得ることができる。得られたプロピレン系重合体(A)に、必要に応じて添加剤を添加してもよい。
プロピレン系重合体(A)の好ましい製造方法としては、上記方法(2)が挙げられ、例えば、高立体規則性ポリプロピレン製造用触媒の存在下に、プロピレンを単独で、またはプロピレンと他のモノマーとを併用して、2段以上の多段重合で重合させる方法が挙げられる。
上記方法(2)において、具体的には、第1段目の重合において、実質的に水素の非存在下で、プロピレンまたはプロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとを重合させて、極限粘度[η]が10~12dl/g(好ましくは10.5~11.5dl/g)であり、プロピレン系重合体(a2)に対して相対的に高分子量のプロピレン系重合体(a1)をプロピレン系重合体(A)中の20~50質量%(好ましくは20~45質量%、より好ましくは20~40質量%、さらに好ましくは22~40質量%の範囲)製造し、第2段目以降の重合において、プロピレン系重合体(a1)に対して相対的に低分子量のプロピレン系重合体(a2)を製造する。
第2段目以降の重合において製造される、プロピレン系重合体(a1)に対して相対的に低分子量のプロピレン系重合体(a2)の極限粘度[η]は、0.5~3dl/g(好ましくは0.6~1.5dl/g、より好ましくは0.8~1.5dl/g)である。
なお、この極限粘度[η]は、その段単独で製造されるプロピレン系重合体の極限粘度[η]であり、その段の前段までのプロピレン系重合体を含む全体の極限粘度[η]ではない。
また、第2段目以降の重合において、最終的に得られるプロピレン系重合体(A)の230℃、荷重2.16kgで測定されるMFRは、好ましくは0.01~5g/10分であり、より好ましくは0.05~4g/10分であり、さらに好ましくは0.1~3g/10分となるように調整する。
第2段目以降で製造するプロピレン系重合体(A)の極限粘度[η]の調整方法としては特に制限されないが、分子量調整剤として水素を使用する方法であることが好ましい。
プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の製造順序(重合順序)としては、第1段目で、実質的に水素の非存在下でプロピレン系重合体(a2)に対して相対的に高分子量のプロピレン系重合体(a1)を製造した後、第2段目以降で、例えば水素の存在下でプロピレン系重合体(a1)に対して相対的に低分子量のプロピレン系重合体(a2)を製造することが好ましい。
プロピレン系重合体(A)の製造方法において、第1段目でプロピレン系重合体(a2)を製造した後、第2段目以降でプロピレン系重合体(a1)を製造(すなわち、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の製造順序が逆である)してもよい。
第1段目でプロピレン系重合体(a1)に対して相対的に低分子量のプロピレン系重合体(a2)を製造した後、第2段目以降でプロピレン系重合体(a2)に対して相対的に高分子量のプロピレン系重合体(a1)を製造するためには、第1段目の反応生成物中に含まれる水素などの分子量調整剤を、第2段目以降の重合開始前に限りなく除去する必要があるため、重合装置が複雑になり、また第2段目以降の極限粘度[η]が上がりにくいという点から、第1段目で、プロピレン系重合体(a1)を製造した後、第2段目以降で、プロピレン系重合体(a2)を製造することが好ましい。
多段重合における各段の重合は、連続的に行うこともできるし、バッチ式で行うこともできるが、バッチ式で行うことが好ましい。バッチ式による多段重合で得られた、プロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)を含むプロピレン系重合体(A)は、プロピレン系重合体(a2)に対して超高分子量成分であるプロピレン系重合体(a1)が良好に分散されており、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られる。
プロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)の製造において、プロピレンの単独重合またはプロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとの重合は、スラリー重合、バルク重合など、公知の重合方法で行うことができる。また、重合において、後述するポリプロピレン製造用触媒を使用することが好ましい。
プロピレン系重合体(a1)の製造条件としては、水素の非存在下で、原料モノマーを、重合温度として、好ましくは20~80℃、より好ましくは40~70℃、重合圧力として、一般に常圧~9.8MPa、好ましくは0.2~4.9MPaの条件下でバルク重合して製造することが好ましい。
プロピレン系重合体(a2)の製造条件としては、原料モノマーを、重合温度として、好ましくは20~80℃、より好ましくは40~70℃、重合圧力として、一般に常圧~9.8MPa、好ましくは0.2~4.9MPa、分子量調整剤としての水素が存在する条件下で重合して製造することが好ましい。
<<ポリプロピレン製造用触媒>>
プロピレン系重合体(a1)、プロピレン系重合体(a2)およびプロピレン系重合体(A)の製造に使用することのできるポリプロピレン製造用触媒(以下、単に「触媒」ともいう。)は、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを成分とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物触媒成分と、有機ケイ素化合物等の電子供与性化合物触媒成分とから形成することができるが、代表的なものとして、以下のような触媒成分が使用できる。
〔固体触媒成分〕
固体触媒成分を構成する担体としては、金属マグネシウムと、アルコールと、ハロゲンおよび/またはハロゲン含有化合物とから得られる担体が好ましい。
金属マグネシウムとしては、顆粒状、リボン状、粉末状等のマグネシウムを用いることができる。また、金属マグネシウムは、表面に酸化マグネシウム等の被覆が生成されていないものが好ましい。
アルコールとしては、炭素数1~6の低級アルコールを用いることが好ましく、特に、エタノールを用いると、触媒性能の発現を著しく向上させる担体が得られる。アルコールの使用量は、金属マグネシウム1モルに対して、好ましくは2~100モル、より好ましくは5~50モルである。アルコールは1種または2種以上用いることができる。
ハロゲンとしては、塩素、臭素、および、ヨウ素が好ましく、ヨウ素がより好ましい。また、ハロゲン含有化合物としては、MgCl2、および、MgI2が好ましい。ハロゲン又はハロゲン含有化合物の使用量は、金属マグネシウム1グラム原子に対して、ハロゲン原子又はハロゲン含有化合物中のハロゲン原子が、通常は0.0001グラム原子以上、好ましくは0.0005グラム原子以上、さらに好ましくは0.001グラム原子以上である。ハロゲンおよびハロゲン含有化合物はそれぞれ1種または2種以上用いることができる。
金属マグネシウムと、アルコールと、ハロゲンおよび/またはハロゲン含有化合物とを反応させて、担体を得る方法としては、例えば、金属マグネシウムとアルコールとハロゲンおよび/またはハロゲン含有化合物とを、還流下(例えば:約79℃)で水素ガスの発生が認められなくなるまで(通常20~30時間)反応させる方法が挙げられる。前記反応は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
上記方法により得られた担体を固体触媒成分の合成に用いる場合、乾燥させたものを用いてもよく、また濾別後ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄したものを用いてもよい。このように得られた担体は粒状に近く、しかも粒径分布がシャープである。さらには、粒子1つ1つをとってみても、粒形度のばらつきが小さい。この場合、下記の式(I)で表される球形度(S)が好ましくは1.60未満であり、特に好ましくは1.40未満であり、かつ下記の式(II)で表される粒径分布指数(P)が好ましくは5.0未満、特に好ましくは4.0未満である。
S=(E1/E2)2・・・(I)
式(I)中、E1は粒子の投影の輪郭長を示し、E2は粒子の投影面積に等しい円の周長を示す。
P=D90/D10・・・(II)
式(II)中、D90は質量累積分率が90%に対応する粒子径をいう。すなわち、D90で表される粒子径より小さい粒子群の質量和が全粒子総質量和の90%であることを示している。D10は質量累積分率が10%に対応する粒子径をいう。
固体触媒成分は、通常、上記担体に少なくともチタン化合物を接触させて得られる。チタン化合物による接触は複数回に分けて行ってもよい。チタン化合物としては、例えば、一般式(III)で表されるチタン化合物が挙げられる。
TiX1n(OR1)4-n・・・(III)
式(III)中、X1はハロゲン原子であり、特に塩素原子が好ましく、R1は炭素数1~10の炭化水素基であり、直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましく、R1が複数存在する場合にはそれらは互いに同じでも異なってもよく、nは0~4の整数である。
チタン化合物としては、具体的には、Ti(O-i-C374、Ti(O-C494、TiCl(O-C253、TiCl(O-i-C373、TiCl(O-C493、TiCl2(O-C492、TiCl2(O-i-C372、TiCl4が挙げられ、TiCl4が好ましい。
チタン化合物は1種または2種以上用いることができる。
固体触媒成分は、通常、上記担体にさらに電子供与性化合物を接触させて得られる。電子供与性化合物としては、例えば、フタル酸ジ-n-ブチルが挙げられる。電子供与性化合物は1種または2種以上用いることができる。
上記担体にチタン化合物と電子供与性化合物とを接触させる際に、四塩化ケイ素等のハロゲン含有ケイ素化合物を接触させることができる。ハロゲン含有ケイ素化合物は1種または2種以上用いることができる。
固体触媒成分は、公知の方法で調製することができる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタン等の不活性炭化水素を溶媒として用い、上記溶媒に、上記の担体、電子供与性化合物およびハロゲン含有ケイ素化合物を投入し、撹拌しながらチタン化合物を投入する方法が挙げられる。通常は、マグネシウム原子換算で担体1モルに対して電子供与性化合物は、0.01~10モル、好ましくは0.05~5モルを加え、また、マグネシウム原子換算で担体1モルに対してチタン化合物は、1~50モル、好ましくは2~20モルを加え、0~200℃にて、5分~10時間の条件、好ましくは30~150℃にて30分~5時間の条件で接触反応を行えばよい。反応終了後は、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の不活性炭化水素を用いて、生成した固体触媒成分を洗浄することが好ましい。
また、固体触媒成分は、液状マグネシウム化合物と液状チタン化合物とを、電子供与性化合物の存在下に接触させて得られる成分であってもよい。液状チタン化合物による接触は複数回に分けて行ってもよい。
液状マグネシウム化合物は、例えば、公知のマグネシウム化合物およびアルコールを、好ましくは液状炭化水素媒体の存在下に接触させ、液状とすることにより得られる。マグネシウム化合物としては、例えば、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウムが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキシルアルコールなどの脂肪族アルコールが挙げられる。液状炭化水素媒体としては、例えば、ヘプタン、オクタン、デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。液状マグネシウム化合物を調製する際のアルコールの使用量は、マグネシウム化合物1モルに対して、通常は1.0~25モル、好ましくは1.5~10モルである。
液状マグネシウム化合物は1種または2種以上用いることができる。
液状チタン化合物としては、上述した一般式(III)で表されるチタン化合物が挙げられる。液状マグネシウム化合物に含まれるマグネシウム原子(Mg)1モルに対する、液状チタン化合物の使用量は、通常は0.1~1000モル、好ましくは1~200モルである。液状チタン化合物は1種または2種以上用いることができる。
電子供与性化合物としては、例えば、フタル酸エステル類等のジカルボン酸エステル化合物、無水フタル酸等の酸無水物、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物、ポリエーテル類、酸ハライド類、酸アミド類、ニトリル類、有機酸エステル類が挙げられる。液状マグネシウム化合物に含まれるマグネシウム原子(Mg)1モルに対する、電子供与性化合物の使用量は、通常は0.01~5モル、好ましくは0.1~1モルである。電子供与性化合物は1種または2種以上用いることができる。
接触させる際の温度は、通常は-70~200℃、好ましくは10~150℃である。
〔有機金属化合物触媒成分〕
触媒成分の内、有機金属化合物触媒成分としては、有機アルミニウム化合物が好ましい。有機アルミニウム化合物としては、例えば、一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
AlR2nX2 3-n・・・(IV)
式(IV)中、R2は炭素数1~10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、X2はハロゲン原子またはアルコキシ基であり、塩素原子または臭素原子が好ましく、nは1~3の整数である。
有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムモノエトキシド、エチルアルミニウムセスキクロリドが挙げられる。
有機アルミニウム化合物は1種または2種以上用いることができる。
有機金属化合物触媒成分の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して、通常は0.01~20モル、好ましくは0.05~10モルである。
〔電子供与性化合物触媒成分〕
触媒成分の内、重合系に供する電子供与性化合物成分としては、有機ケイ素化合物が好ましい。有機ケイ素化合物としては、例えば、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシランが挙げられる。
有機ケイ素化合物は1種または2種以上用いることができる。
電子供与性化合物成分の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して、通常は0.01~20モル、好ましくは0.1~5モルである。
-前処理-
上記固体触媒成分は、予備重合等の前処理をしてから、重合に用いることが好ましい。例えば、ペンタン、ヘキサン、ペプタン、オクタン等の不活性炭化水素を溶媒として用い、上記溶媒に、上記の固体触媒成分、有機金属化合物触媒成分、および必要に応じて電子供与性化合物成分を投入し、撹拌しながら、プロピレンを供給し、反応させる。プロピレンは、大気圧よりも高いプロピレンの分圧下で供給し、0~100℃にて、0.1~24時間前処理することが好ましい。反応終了後は、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の不活性炭化水素を用いて、前処理したものを洗浄することが好ましい。
<プロピレン系重合体(B)>
プロピレン系重合体組成物はプロピレン系重合体(B)を含む。プロピレン系重合体(B)は、プロピレンの単独重合体、および、プロピレンとα-オレフィン(ただし、プロピレンを除く)との共重合体が挙げられる。上記共重合体としては、例えば、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、ブロックタイプのプロピレン共重合体(プロピレン単独重合体またはプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体と、非晶性または低結晶性のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体との混合物)、ランダムブロックポリプロピレンが挙げられる。
上記プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~12のα-オレフィンが挙げられる。これらα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンが好ましい。α-オレフィンは1種または2種以上用いることができる。
プロピレン系重合体(B)がプロピレンとα-オレフィン(プロピレンを除く)との共重合体である場合、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、共重合体の全構成単位に対して、通常は90~99.9質量%、好ましくは92~99.5質量%、より好ましくは94~99質量%である。α-オレフィン(ただし、プロピレンを除く)に由来する構成単位の含有量は、共重合体の全構成単位に対して、通常は0.1~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~6質量%である。プロピレンに由来する構成単位の含有量は、13C-NMRにより測定することができる。
プロピレン系重合体(B)としては、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、プロピレンの単独重合体が好ましい。
プロピレン系重合体(B)は、触媒を用いてプロピレンを重合またはプロピレンと他のα-オレフィンとを共重合して得てもよく、また、市販されているポリプロピレン系樹脂であってもよい。
プロピレン系重合体(B)の製造方法において用いる触媒としては、例えば、上述した、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを成分とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物触媒成分と、有機ケイ素化合物等の電子供与性化合物触媒成分とから形成される触媒;メタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒が挙げられる。
プロピレン系重合体(B)は、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が15g/10分~80g/10分であり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5.0以下である。
プロピレン系重合体(B)のMFRが15~80g/10分であると、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られる。上記観点から、MFRが好ましくは18~60g/10分であり、より好ましくは20~30g/10分である。
プロピレン系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、繊維の弾性率および引張伸び率が共に高いという観点から、100,000~300,000であることが好ましく、150,000~250,000であることがより好ましい。
プロピレン系重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、20,000~80,000であることが好ましく、40,000~60,000であることがより好ましい。
プロピレン系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、後述の実施例に記載の測定方法により測定することができる。
プロピレン系重合体(B)の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5.0以下である。プロピレン系重合体(B)の(Mw/Mn)が5.0以下であると、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られる。上記観点から、プロピレン系重合体(B)の(Mw/Mn)は、2~5であることが好ましく、3~5であることがより好ましい。
プロピレン系重合体(B)の、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された値より求められ、具体的には後述する実施例の記載の測定方法により求められる。
また、プロピレン系重合体(B)の(Mw/Mn)は、プロピレン系重合体(B)の組成により調整することができる。
プロピレン系重合体(B)の135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]は、好ましくは1.5dl/gを超え5.0dl/g以下であり、より好ましくは1.5dl/gを超え4.5dl/g以下、さらに好ましくは1.5dl/gを超え4.0dl/g以下である。
極限粘度[η]が上記範囲にあるプロピレン系重合体(B)を用いると、高速紡糸成形が可能であり、かつ、繊維の弾性率および引張伸び率が共に高い。
<<その他の成分(添加剤)>>
プロピレン系重合体組成物は、プロピレン系重合体(A)および(B)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、造核剤、分解剤、顔料、染料、可塑剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、架橋促進剤、補強剤、充填剤、軟化剤、加工助剤、活性剤、吸湿剤、粘着剤、難燃剤、離型剤等の添加剤を含有することができる。
添加剤は1種または2種以上用いることができる。
プロピレン系重合体組成物は、透明性や耐熱性などの改良のため、造核剤を含有してもよい。造核剤としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトール系化合物、有機リン酸エステル系化合物、ロジン酸塩系化合物、C4~C12の脂肪族ジカルボン酸およびその金属塩が挙げられる。これらのうちでは、有機リン酸エステル系化合物が好ましい。
造核剤の含有量としては、プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05~0.5質量部、より好ましくは0.1~0.3質量部である。造核剤は1種または2種以上用いることができる。
プロピレン系重合体組成物において、プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)の合計100質量部に対して、プロピレン系重合体(A)の含有量は1~15質量部であり、好ましくは3~12質量部、より好ましくは3~10質量部である。プロピレン系重合体(A)の含有量が上記範囲にあると、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られる。
プロピレン系重合体(B)の含有量は、プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)の合計100質量部に対して85~99質量部であり、好ましくは88~97質量部、より好ましくは90~97質量部である。プロピレン系重合体(B)の含有量が上記範囲にあると、高速紡糸成形が可能であり、かつ、繊維の弾性率および引張伸び率が共に高い。
高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、プロピレン系重合体組成物の210℃における動的粘弾性の測定において、角周波数が100rad/secのときの貯蔵弾性率G’(100)と角周波数が10rad/secのときの貯蔵弾性率G’(10)との比(G’(100)/G’(10))が4.5~10.0であり、かつ、角周波数が0.1rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.1)と角周波数が0.01rad/secのときの貯蔵弾性率G’(0.01)との比(G’(0.1)/G’(0.01))が3~20であることが好ましい。
高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、プロピレン系重合体組成物の210℃における動的粘弾性評価において、(G’(100)/G’(10))としては、4.5~8.0であることが好ましく、5.0~6.0であることがより好ましい。
高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、(G’(0.1)/G’(0.01))としては、5~18であることが好ましく、8~16であることがより好ましい。
動的粘弾性の測定条件は、後述の実施例の記載の条件と同義であり、(G’(100)/G’(10))および(G’(0.1)/G’(0.01))は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、プロピレン系重合体組成物の、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは10~60g/10分であり、より好ましくは15~30g/10分である。
プロピレン系重合体組成物は、公知の任意の方法を採用して製造することができ、例えば、上記プロピレン系重合体(A)および上記プロピレン系重合体(B)、必要に応じてその他の成分を、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、または前記混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練した後、造粒もしくは粉砕する方法が挙げられる。
本発明では、プロピレン系重合体組成物は、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維が得られるという観点から、バッチ式による多段重合で得られた、プロピレン系重合体(a1)およびプロピレン系重合体(a2)を含むプロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B)とを混合して調製されることが好ましい。
本発明のプロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)とは、少なくとも1種のバイオマス由来モノマー(プロピレン)を含んでいてもよい。例えば、上記重合体を構成する同じ種類のモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、真菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーであり、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC:Percentage of Modern Carbon)が100(pMC)程度であることが好ましい。バイオマス由来モノマー(プロピレン)は、従来から知られている方法により得られる。
本発明のプロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減の観点から好ましい。プロピレン系重合体において、重合用触媒、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料オレフィンがバイオマス由来オレフィンを含んでいても、14C同位体を10-12程度の割合で含む以外の分子構造はバイオマス由来モノマーからなるプロピレン系重合体と化石燃料由来モノマーからなるプロピレン系重合体とは同等である。従って、性能も変わらないとされる。
本発明に係る繊維は、上記プロピレン系重合体組成物からなる繊維である。
繊維の見かけ繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.5~50dtexであり、より好ましくは5~20dtexである。見かけ繊度が前記範囲内であると、製糸操業性や高次加工における工程通過性が良好であり、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維となる。
見かけ繊度は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
繊維の引張強さは、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは5~30cN/dtexであり、より好ましくは10~25cN/dtexである。引張強さが前記範囲内であると、紡糸、延伸工程や製織、製編工程等において糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、高速紡糸成形が可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い繊維となる。
繊維の引張伸び率は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1000~1500%であり、より好ましくは1100~1300%である。繊維が未延伸糸である場合、上記引張伸び率が1500%以下であれば、延伸時の取り扱い性が良好であり、延伸によって機械的特性を向上させることが容易である。
引張伸び率は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
繊維の初期引張抵抗度(弾性率)としては、0.01N/dtex~5.0N/dtexであることが好ましく、0.5N/dtex~3.0N/dtexであることがより好ましく、1.0N/dtex~2.0N/dtexであることがさらに好ましい。
繊維の初期引張抵抗度は、後述の実施例に記載の測定方法により求められる。
本発明に係る複合紡糸繊維は、上記プロピレン系重合体組成物からなる繊維を含むことが好ましい。複合紡糸繊維は、上記プロピレン系重合体組成物からなる繊維以外の繊維を含んでいてもよい。上記プロピレン系重合体組成物からなる繊維以外の繊維としては、例えば、4-メチル-1-ペンテン重合体、ポリエチレン系重合体等を含む繊維等が挙げられる。
複合紡糸繊維の形態としては、特に制限はなく、例えばサイドバイサイド型複合繊維および偏心芯鞘型繊維等を挙げられる。
繊維の断面形状は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円形、扁平形、だるま形、多葉形、多角形などが挙げられる。
<<繊維の製造方法>>
本発明に係る繊維の製造方法は、プロピレン系重合体組成物を溶融紡糸する工程を含むことが好ましい。
プロピレン系重合体組成物を溶融紡糸して得られる繊維は、高速紡糸成形可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高い。溶融紡糸方法としては、公知の溶融紡糸方法を採用することができる。
溶融紡糸に用いられる押出機は、一軸押出機、二軸押出機等の公知の押出機を用いることができる。
押出機の口金(ノズル)の口径は、必要とする繊維の直径(糸径)と、押出機の吐出速度や引き取り速度との関係によって適宜決定されるが、好ましくは0.1~3.0mm程度である。紡糸後の繊維の延伸は必ずしも行う必要はないが、延伸を行う場合には、1.1~10倍、好ましくは2~8倍に繊維を延伸してもよい。
繊維の糸径(平均直径)は、好ましくは0.5~40デニールである。
繊維の製造方法は、プロピレン系重合体組成物を溶融紡糸する工程以外の工程(その他の工程)をさらに含んでいてもよい。その他の工程としては、プロピレン系重合体組成物の原料を混合する工程、プロピレン系重合体組成物を溶融混練する工程等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いたプロピレン系重合体組成物に含まれる重合体として、以下の重合体等を用いた。
下記で得られた重合体および繊維の各種特性の測定、評価は下記の通り行った。
(1)一段階目のプロピレン重合体成分〔プロピレン系重合体(a1)〕及び二段階目のプロピレン重合体成分〔プロピレン系重合体(a2)〕の含有量
重合時に連続的に供給するプロピレンの流量計積算値を用いた物質収支から求めた。
(2)極限粘度[η](dl/g)
極限粘度[η]の測定は、135℃、テトラリン溶媒中で行った。
尚、プロピレン系重合体(a2)の極限粘度[η]2は、下記式より計算した値である。
[η]2=([η]total×100-[η]1×W1)/W2
[η]total:プロピレン系重合体(A)の極限粘度
[η]1:プロピレン系重合体(a1)の極限粘度
W1:プロピレン系重合体(a1)の含有量(%)
W2:プロピレン系重合体(a2)の含有量(%)
(3)メルトフローレート(MFR)(g/10分)
JIS K7210-1:2014に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16kgf(21.2N)にて測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
下記の装置及び条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布曲線から算出される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を分子量分布の広さの指標として評価した。
-GPC測定装置-
カラム:TOSO GMHHR-H(S)HT
検出器:Waters製液体クロマトグラム用
RI検出器 WATERS150C(商品名)
-測定条件-
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン
温度:145℃
(5)貯蔵弾性率G’
以下の装置及び条件で動的粘弾性の測定し、貯蔵弾性率G’を測定し、角周波数が100rad/secのときの貯蔵弾性率G’(100)と角周波数が10rad/secのときの貯蔵弾性率G’(10)との比(G’(100)/G’(10))および角周波数が0.1rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.1)と角周波数が0.01rad/secのときの貯蔵弾性率G’(0.01)との比(G’(0.1)/G’(0.01))をそれぞれ求めた。
装置:Anton Paar社製、Physica MCR301(商品名)
温度:210℃
歪み:10%
角周波数:0.01~100rad/sec
(6)溶融紡糸成形
ペレット状のプロピレン系重合体(A)および/または(B)をスクリュー径20mmの1軸押出機を用い230℃で溶融押出しした後、ギアポンプで流量を調整し、温度230℃で直径が1mmの紡糸ダイスから吐出量=3.00g/minで大気中に押出し、引取り速度を500m/min、1000m/min、および、2000m/minと順次上昇させて糸状樹脂を巻取ることによりポリプロピレン繊維を得た。
その後、引取り速度を1000m/min毎に上昇させてゆき、安定成形できる限界の引取り速度を「限界引取速度」として評価した。限界引取速度が4000m/min以上である場合、高速紡糸成形可能であるといえる。
(7)繊維の引張特性(引張強さ、引張伸び率、および、初期引張抵抗度(弾性率))
上記(6)条件で得られた引取り速度を500m/minおよび2000m/minで巻き取られた繊維を用いて、引張強さ(cN/dtex)および、引張伸び率(%)をJIS L 1013(2010)に準拠した方法で測定した。なお、後述する比較例1は、引取り速度が2000m/minを超えると紡糸成形性が不良になり紡糸することができなかったため、比較例1の物性と比較できる条件として、繊維の引張特性における引取り速度の上限値を2000m/minに設定した。
引張試験は、定速伸長形の試験機を用い、引張試験機のつかみ部(チャック)間のつかみ間隔は4cmとし、引張速度は4cm/minで実施した。サンプル数を10とし、平均値を求めた。
得られた引張強さ(cN/dtex)および、引張伸び率(%)の平均値を表1に示した。
また、弾性率は初期引張抵抗度(N/dtex)を測定して評価を行った。
初期引張抵抗度(N/dtex)は、上記測定方法において応力-伸び率曲線を描き、この曲線から原点の近くで伸張変化する荷重変化に対する荷重変化の最大値(接線角の最大点)を求め、初期引張抵抗度(N/tex)を算出した。
Tri=P/(l’/l)×F
Tri :初期引張抵抗度(N/tex)
P :接線角の最大点における荷重(N)
F0 :正量繊度(tex)
l :試験長(mm)
l’ :荷重-伸び曲線において、接線角の最大点における荷重と横軸との垂線と、接線と横軸との交点との長さ(mm)
(8)繊維の見かけ繊度
下記で得られる繊維をJIS L 1015(2010)に準拠し、振動法により測定した。サンプル数を10とし、平均値を求めた。
<プロピレン系重合体(A)>
<<製造例1>>
(1)マグネシウム化合物の調製
撹拌機付き反応槽(内容積500リットル)を窒素ガスで充分に置換し、エタノール97.2kg、ヨウ素640g、および金属マグネシウム6.4kgを投入し、撹拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応液を減圧乾燥させることにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得た。
(2)固体触媒成分の調製
窒素ガスで充分に置換した撹拌機付き反応槽(内容積500リットル)に、上記マグネシウム化合物(粉砕していないもの)30kg、精製ヘプタン(n-ヘプタン)150リットル、四塩化ケイ素4.5リットル、およびフタル酸ジ-n-ブチル5.4リットルを加えた。系内を90℃に保ち、撹拌しながら四塩化チタン144リットルを投入して110℃で2時間反応させた後、固体成分を分離して80℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン228リットルを加え、110℃で2時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。
(3)前重合触媒の製造
ヘプタン200mL中にトリエチルアルミニウム10mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン2mmol、および上記(2)で得られた固体触媒成分をチタン原子換算で1mmol添加した。内温を20℃に保持し、撹拌しながらプロピレンを連続的に導入した。60分後、撹拌を停止し、結果的に固体触媒1gあたり4.0gのプロピレンが重合した予備重合触媒を得た。
(4)本重合
600リットルのオートクレーブ中にプロピレン336リットル装入し、60℃に昇温した。その後、トリエチルアルミニウム8.7mL、ジシクロペンチルジメトキシシラン11.4mL、上記(3)で得られた前重合触媒を2.9g装入して重合を開始した。重合開始より75分後に、10分間かけて50℃まで降温した(第1段目の重合終了)。
第1段目と同様の条件にて重合したプロピレン系重合体(a1)の極限粘度[η]は11dl/gであった。
降温後、圧力が3.3MPaGで一定となるよう水素を連続的に投入し、151分間重合を行った。次いでベントバルブを開け、未反応のプロピレン(プロピレン系重合体(a2))を、積算流量計を経由させてパージした(第2段目の重合終了)。
こうして、51.8kgのパウダー状のプロピレン系重合体(A)を得た。プロピレン系重合体(A)の極限粘度は、3.49dl/gであった。
上記で得られたプロピレン系重合体(A)と、酸化防止剤として、イルガノックス1010〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製〕2000ppm、イルガホス168〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製〕2000ppm、サンドスタブP-EPQ〔クラリアントジャパン社製〕1000ppm、中和剤として、ステアリン酸カルシウム1000ppmとを混合し、二軸押出機で溶融混練しペレット状のプロピレン系重合体(A)を得た。
このようにして最終的に得られたプロピレン系重合体(A)の230℃、荷重2.16kgで測定されるMFRは1.2g/10分であった。また、物質収支から算出した最終的に得られたプロピレン系重合体(A)に占める第1段目の重合で生成したプロピレン系重合体(a1)の含有量は25質量%であり、第2段目の重合で生成したプロピレン系重合体(a2)の含有量は75質量%であった。
また、プロピレン系重合体(a2)の極限粘度[η]は上記の式に従って求めたところ、0.99dl/gであった。
<プロピレン系重合体(B)>
・(B-1):(株)プライムポリマー製:商品名「Y-2005GP」、プロピレン単独重合体(ホモPP)、MFR=20g/10分、Mw/Mn=4.8
・(B-2):プロピレン単独重合体(ホモPP)、MFR=3.0g/10分g/10分、Mw/Mn=9.8
・(B-3):(株)プライムポリマー製:商品名「F133A」、プロピレン単独重合体(ホモPP)MFR=3.1g/10分、Mw/Mn=5.3
〔実施例1〕
製造例1において得られたプロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B):(B-1)と、を3:97の質量比で(株)日本製鋼所製二軸押出機(型番:TEX30α)を用いて200℃にて溶融混練し、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。
〔実施例2〕
製造例1において得られたプロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B):(B-1)とを5:95の質量比で実施例1と同様の方法で溶融混練し、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。
〔実施例3〕
製造例1において得られたプロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B):(B-1)とを10:90の質量比で実施例1と同様の方法で溶融混練し、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。
〔比較例1〕
製造例1において得られたプロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B):(B-1)とを20:80の質量比で実施例1と同様の方法で溶融混練し、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。
角周波数が100rad/sのときの貯蔵弾性率G’(100)と角周波数が10rad/sのときの貯蔵弾性率G’(10)との比G’(100)/G’(10)が4.15と小さくなり、溶融紡糸成形における限界引取速度が2000m/minに低下し、高速紡糸成形性が損なわれていた。
〔比較例2〕
プロピレン系重合体(B):(B-1)単体で、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。プロピレン系重合体(A)を含まないため、繊維の伸長伸び率、および、初期引張抵抗度は従来レベルであった。
〔比較例3〕
プロピレン系重合体(B):(B-3)により、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。角周波数が100rad/sのときの貯蔵弾性率G’(100)と角周波数が10rad/sのときの貯蔵弾性率G’(10)との比G’(100)/G’(10)が3.54と小さく、溶融紡糸成形における限界引取速度は1000m/minに止まった。
〔比較例4〕
プロピレン系重合体(B):(B-2)は、極限粘度[η]が8dl/gであり成分量が20質量%であるプロピレン系重合体と、極限粘度[η]が1.44dl/gであり成分量が80質量%であるプロピレン系重合体からなる2段重合品である。このプロピレン系重合体(B):(B-2)と、プロピレン系重合体(B):(B-1)と、を10:90の質量比で実施例1と同様の方法で溶融混練し、上記(6)成形条件で溶融紡糸を行って繊維を調製した。
比較例4の繊維は、超高分子量成分であるプロピレン系重合体(B):(B-2)の分散性が不十分であり、溶融紡糸成形における限界引取速度は3000m/minに止まった。
Figure 2023133974000001
表1中、「-」は、該当する成分を含まないか、または、該当する測定項目での値が得られなかったことを意味している。
表1に示されるとおり、実施例1~3の本発明に係る繊維は、比較例1~4の繊維に比べて、高速紡糸成形可能であり、かつ、弾性率および引張伸び率が共に高いことがわかる。また、表1に示されるとおり、本発明に係る繊維は、低引取り速度:500m/minで得られた太い繊維においても弾性率および引張伸び率が共に高いので、本発明に係る繊維は、多段階延伸の原反としての活用も可能であるといえる。

Claims (6)

  1. 下記プロピレン系重合体(A)を1~15質量部とプロピレン系重合体(B)を85~99質量部(重合体(A)と重合体(B)の合計は100質量部)とを含むプロピレン系重合体組成物からなる繊維;
    プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)と135℃、テトラリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)とを含み、前記プロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%の範囲にあり、前記プロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲にある〔但し、前記プロピレン系重合体(a1)および前記プロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする〕;
    プロピレン系重合体(B):230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが15g/10分~80g/10分であり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5.0以下である。
  2. 前記プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が20以上である請求項1に記載の繊維。
  3. 前記プロピレン系重合体組成物の210℃における動的粘弾性の測定において、角周波数が100rad/sのときの貯蔵弾性率G’(100)と角周波数が10rad/sのときの貯蔵弾性率G’(10)との比(G’(100)/G’(10))が4.5~10.0であり、かつ、角周波数が0.1rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.1)と角周波数が0.01rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.01)との比(G’(0.1)/G’(0.01))が3~20である、請求項1または請求項2に記載の繊維。
  4. 前記プロピレン系重合体組成物の230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが、10~60である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の繊維。
  5. 請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の繊維を含む、複合紡糸繊維。
  6. 請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の繊維の製造方法であって、
    前記プロピレン系重合体組成物を溶融紡糸する工程を含む、繊維の製造方法。
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