JP3740654B2 - ブレーキシステム - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、運転者のブレーキペダルの踏み込みによってブレーキをかけた際に、例えば緊急ブレーキの場合のようにペダル踏力に対応するブレーキ力ではブレーキ力が不足するような場合に、そのブレーキ力を大きくするようにしたブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車等の車両のブレーキシステムにおいては、ブレーキペダルのペダル踏力のみでは得られない大きなブレーキ力を得るためやペダル踏力を軽減するため等により、負圧倍力装置を用いてペダル踏力を倍力してマスタシリンダを作動させることが行われている。
【0003】
ところで、近年、自動車においては、パーキングブレーキやブレーキペダルからアクセルペダルへの急なペダル踏み換え操作を必要とすることなく自動車等の車両の坂道発進を簡単に行うことができるようにするために、信号待ちや渋滞路におけるブレーキペダルを踏み続ける操作を不要にしてブレーキ操作による疲労を軽減することができるようにするため、駆動輪の空転時にトラクションコントロールを行うことにより発進や加速を確実に行うことができるようにするため、坂道での車両停止状態を確実に保持するため、走行中での車間距離を自動的に制御するため、下り坂でのオーバースピードを防止する等の車両の走行速度を自動的に抑制するため、サイドブレーキのかけ忘れを防止するため等に用いられるブレーキシステムが開発されている。
【0004】
更に、このようなブレーキシステムにおいて、例えば車両衝突のおそれがきわめて高く、運転者がブレーキペダルを急速にかつ大きなペダル踏力で踏み込んで急ブレーキを作動させたような場合に、ブレーキペダルのペダル踏力不足を自動的に補って、大きなブレーキ力を迅速に得るようにしたブレーキシステムも開発されている。
【0005】
このようなブレーキシステムとして、従来、図6および図7に示すような特開平8ー295226号公報に開示されているブレーキシステムがある。
このブレーキシステム1は、タンデム型の負圧倍力装置2におけるフロント定圧室3が通路4を介して常時負圧源5に接続され、また、リヤ定圧室6が通路7を介して常時フロント定圧室3に連通していて、同様に常時負圧源5に接続されている。また、ブレーキシステム1の図6および図7に示す非作動状態では、負圧倍力装置2における制御弁8の真空弁8bが開きかつ大気弁8aが閉じているとともに、負圧側の電磁弁の第1開閉弁9が連通位置に設定されかつ大気側の電磁弁の第2開閉弁10が遮断位置に設定されている。このため、リヤ変圧室11が通路12、開いた真空弁8b、通路13、ベローズ14で囲まれた内部室15、通路16を介して負圧源5に接続されている。また、フロント変圧室17が通路18を介して常時リヤ変圧室11に連通しており、すなわちフロント変圧室17も負圧源5に接続されている。
【0006】
したがって、フロント変圧室17とフロント定圧室3との間およびリヤ変圧室11とリヤ定圧室6との間には圧力差が生じていないので、フロントおよびリヤダイヤフラムピストン19,20がともに作動しなく、負圧倍力装置2は出力しない。これにより、タンデム型のマスタシリンダ21も作動しなく、各ホイールシリンダ22,23,24,25はブレーキを作動しない。
【0007】
この状態で、通常ブレーキ操作が行われると、ブレーキペダル26の踏み込みにより入力軸27が前進し、真空弁8bが閉じて大気弁8aが開く。これにより、大気が、開いた大気弁8aおよび通路12を通ってリヤ変圧室11に導入されるとともに、通路18を通ってフロント変圧室17に導入される。すると、フロントダイヤフラムピストン19およびリヤダイヤフラムピストン20のそれぞれの前後に圧力差が生じ、フロントダイヤフラムピストン19およびリヤダイヤフラムピストン20が前進するので、バルブボディ28も前進する。このため、出力軸29が前進して負圧倍力装置2が出力し、マスタシリンダ21のピストンを作動する。その場合、リヤ変圧室11に導入された大気は通路30を通って漏出しようとするが、チェックバルブ31によって負圧源5に向かう空気の流れが阻止されているので、リヤ変圧室11の大気の漏出は確実に阻止される。また、このとき、第1および第2開閉弁9,10は切り換えられないので、大気が通路32,16,30およびチェックバルブ31を通ってリヤ変圧室11に導入されることはない。こうして、負圧倍力装置2は制御弁8の大気弁8aを通して各変圧室11,17に導入される大気のみによる出力を発生するようになる。
【0008】
マスタシリンダ21はピストンの作動により2つの液室にマスタシリンダ圧を発生し、一方の液室のマスタシリンダ圧が通路33を通ってリヤホイールシリンダ22,23に供給され、後輪の通常ブレーキが作動する。また、同様に他方の液室のマスタシリンダ圧が通路34、左右の分岐通路34a,34bを通ってフロントホイールシリンダ24,25に供給され、左右前輪の通常ブレーキが作動する。
【0009】
バルブボディ28の前進により、大気弁8aが次第に閉じていき、そして大気弁8aおよび真空弁8bがともに閉じたとき、バルブボディ28の前進が停止する。これにより、負圧倍力装置2の出力は入力軸27の入力を所定のサーボ比で倍力された出力となる。
【0010】
ブレーキペダル26を解放すると、入力軸27が後退して真空弁8bが開く。これにより、フロントおよびリヤの両変圧室17,11内の大気は、通路18、12、開いた真空弁8b、通路13、内部室15および通路16を通って負圧源5の方へ流出する。したがって、フロントダイヤフラムピストン19、リヤダイヤフラムピストン20およびバルブボディ28が後退し、出力軸29およびマスタシリンダ21のピストンも後退してブレーキが解除し、ブレーキシステムは図6および図7に示す非作動状態となる。
【0011】
一方、図6および図7に示すブレーキ非作動状態において、自動ブレーキ作動条件となって、コントローラ35により第1開閉弁9が切り換えられて遮断位置に設定されるとともに、第2開閉弁10が切り換えられて連通位置に設定される。すると、大気が通路32,16,30およびチェックバルブ31を介してリヤ変圧室11に導入され、更に、通路18を介してフロント変圧室17にも導入される。このとき、大気は通路16から内部室15、通路13、開いている真空弁8b、および通路12を介しても両変圧室11,17に導入されるが、開いている真空弁8bの隙間が小さいため、通路30およびチェックバルブ31側の方から両変圧室11,17に迅速に導入されるようになる。
【0012】
これにより、フロントダイヤフラムピストン19およびリヤダイヤフラムピストン20のそれぞれの前後に圧力差が生じ、前述の通常ブレーキの場合と同様にして負圧倍力装置2が作動し、ブレーキが作動する。こうして、自動ブレーキ作動条件となったとき、コントローラ35からの制御信号によって第1および第2開閉弁9,10が切り換えられることにより、自動ブレーキが作動するようになる。
【0013】
また、ブレーキペダル26の通常の踏込による通常ブレーキ作動状態で、自動ブレーキ作動条件が成立すると、前述の自動ブレーキの場合と同様に、コントローラ35は第1および第2開閉弁9,10を切り換える。これにより、大気が通路16,30およびチェックバルブ31を介してリヤ変圧室11に導入されるとともに、更に通路18を介してフロント変圧室17に導入され、通常ブレーキ作動中に自動ブレーキを作動させることができる。この状態で、ブレーキペダル26を解放して通常ブレーキが解除されても、自動ブレーキは自動ブレーキ作動条件が解消するまでは作動したままに保持される。
【0014】
更に、自動ブレーキ作動時に、更にブレーキ力を大きくするために、ブレーキペダル26の踏込による通常ブレーキが作動されると、前述の通常ブレーキの場合と同様に、真空弁8bが閉じて大気弁8aが開くので、大気が大気弁8aを通しても変圧室11,17内に導入される。したがって、自動ブレーキ作動中においても通常ブレーキが作動し、この通常ブレーキ作動により、自動ブレーキによって発生したブレーキ力を高めることができる。この状態で、自動ブレーキが解除されても、通常ブレーキはブレーキペダル26が解放されるまでは作動したままに保持される。
【0015】
更に、例えば車両が衝突するおそれがきわめて高く、運転者がブレーキペダル26を所定値を超えるペダル踏込速度で急速に踏み込んで緊急ブレーキをかけた場合には、まず前述の通常ブレーキと同様にブレーキペダル26の踏み込みで真空弁8bが閉じるとともに大気弁8aが開くので、各変圧室11,17には大気が導入される。これにより、負圧倍力装置2が出力するので、マスタシリンダ21が作動し、ブレーキがかけられる。
【0016】
このとき、ストロークセンサ36からのペダルストローク検出信号によりコントローラ35が算出したペダル踏込速度が所定値を超えるので、コントローラ35は第1開閉弁9を遮断位置に切り換えると同時に第2開閉弁10を連通位置に切り換える。すると、前述の自動ブレーキの場合と同様に、大気が通路32,16,30およびチェックバルブ31を介してリヤ変圧室11およびフロント変圧室17に導入される。これにより、各変圧室11,17の圧力がペダル踏力に対応するよりも高められて負圧倍力装置2の出力が大きくなるため、マスタシリンダ21が発生するマスタシリンダ圧も大きくなってブレーキ力が大きくなる。したがって、緊急ブレーキ作動時等においてブレーキ力不足が確実に補償され、例えば車両衝突等を未然に確実に防止することができるようになる。
【0017】
なお、37はペダル踏力を検出する踏力計であり、38はマスタシリンダ21のマスタシリンダ圧を検出する液圧センサである(液圧ピックアップ;液圧P.U)。また、ABSはアンチスキッド制御装置である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この従来のブレーキシステム1では、ブレーキペダル26の通常の踏込による通常ブレーキ作動状態で、自動ブレーキ作動条件が成立すると、コントローラ35は前述のように第1および第2開閉弁9,10を切り換える。このため、大気が内部室15内に導入されるようになるが、この内部室15内の大気圧により負圧倍力装置2の最大出力が低下することが考えられる。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、通常ブレーキ作動状態で、自動ブレーキが作動しても倍力装置の最大出力が低下するのを防止できるブレーキシステムを提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、通常ブレーキ操作を行うブレーキ操作部材、常時負圧源に連通されている定圧室、ブレーキ非作動時に負圧が導入されるとともにブレーキ作動時に大気が導入される変圧室、前記定圧室と前記変圧室とを区画し前記変圧室に大気が導入されることにより作動するダイヤフラムピストン、前記定圧室側に設けられ、通常時負圧源の連通されるとともに自動ブレーキ作動時大気に選択的に接続される内部室、および前記ブレーキ操作部材によって切り換え制御されて前記変圧室をブレーキ非作動時に前記内部室に連通しかつ大気と遮断するとともにブレーキ作動時に大気に連通しかつ前記内部室と遮断する制御弁を備え、前記ダイヤフラムピストンの作動により出力する負圧倍力装置と、この負圧倍力装置の出力によって作動されてマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダと、このマスタシリンダのマスタシリンダ圧が導入されてブレーキ力を発生するブレーキシリンダと、常時負圧源に接続される負圧導入口、常時大気に接続される大気導入口、および常時前記内部室に接続され、負圧または大気を供給する圧力供給口を有し、前記内部室を、非作動時負圧源に接続するとともに大気から遮断し、作動時前記負圧源から遮断するとともに前記大気に接続するを供給する電磁圧力切換弁と、前記電磁圧力切換弁の圧力供給口側と前記変圧室とを接続する通路に設けられ、前記圧力供給口側から前記変圧室に向かう空気の流れを許容するが前記変圧室から前記圧力供給口側に向かう空気の流れを阻止するチェック弁と、前記マスタシリンダシリンダ圧を検出する液圧センサと、緊急ブレーキ時等の自動ブレーキの必要時に前記内部室に大気を供給するように前記電磁圧力切換弁を切換制御する電子制御装置とを備え、通常ブレーキ作動時は前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作で前記制御弁を切換制御することにより通常ブレーキ作動を行い、自動ブレーキ作動時は電子制御装置が電磁圧力切換弁を切換制御することにより自動ブレーキ作動を行うブレーキシステムにおいて、電子制御装置は、前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で前記自動ブレーキが作動したとき、この自動ブレーキ作動に必要な必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、前記電磁圧力切換弁を切換制御して前記内部室の圧力を低下させた状態で、前記マスタシリンダ圧が上昇するときは前記電磁圧力切換弁を非作動状態に制御し、前記マスタシリンダ圧が低下するときは前記電磁圧力切換弁を最大に作動した状態に制御することを特徴としている。
【0021】
また、請求項2の発明は、前記電磁圧力切換弁の切換量がこの電磁圧力切換弁に供給する電流に比例しており、前記必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、前記電磁圧力切換弁への供給電流を低下させて前記内部室の圧力を低下させ、前記マスタシリンダ圧が上昇するときは前記供給電流を0にし、前記マスタシリンダ圧が低下するときは、自動ブレーキ力が最大となるように前記供給電流を最大にすることを特徴としている。
【0022】
更に、請求項3の発明は、前記電磁圧力切換弁が前記負圧倍力装置に取り付けられ、前記負圧導入口が前記負圧倍力装置の定圧室に連通されているとともに、前記圧力供給口が前記内部室に連通されており、更に、前記チェックバルブが、前負圧倍力装置内に設けられた前記内部室と前記変圧室とを接続する通路に設けられていることを特徴としている。
【0023】
【作用】
このように構成された請求項1の発明においては、電子制御装置は、ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で自動ブレーキが作動した場合、この自動ブレーキに必要な必要マスタシリンダ圧を算出する。更に、電子制御装置は、必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、電磁圧力切換弁を切換制御して内部室の圧力を低下させる。
【0024】
そして、マスタシリンダ圧が上昇するときは、運転者がブレーキ操作部材を強く操作していることになるので、電磁圧力切換弁を非作動状態にする。これにより、内部室の圧力が確実に低下するようになり、ブレーキ操作部材のブレーキ操作による通常ブレーキ作動状態で自動ブレーキが作動しても、負圧倍力装置の最大出力が低下するのが防止され、負圧倍力装置は通常ブレーキ時の全負荷まで確実に出力するようになる。
【0025】
また、マスタシリンダ圧が低下するときは、運転者のブレーキ操作力が不足して大きく操作できない状態であるので、自動制動力が最大となるように電磁圧力切換弁を最大に作動した状態にする。これにより、内部室に多量の大気が導入されるようになり、運転者がブレーキ操作部材を大きく操作できない場合でも、最大の自動制動力で自動ブレーキが行われるように、自動ブレーキにおける負圧倍力装置の出力が最大となる。
【0026】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明に係るブレーキシステムの一実施例を示す図、図2はこのブレーキシステムに用いられる圧力切換弁を示す断面図、図3はこのブレーキシステムに用いられる負圧倍力装置に設けられたチェックバルブの拡大断面図である。なお、前述の図6および図7に示す従来のブレーキシステムの構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0027】
前述の図6に示すブレーキシステム1では、負圧側の第1開閉弁9および大気側の第2開閉弁10がそれぞれ個別に設けた電磁開閉弁から構成されているが、この例のブレーキシステム1は、図1および図2に示すように第1開閉弁9、第2開閉弁10およびソレノイド41が1つのバルブユニットにまとめられて電磁圧力切換弁40として構成されているとともに、1つのソレノイド41で第1および第2開閉弁9,10の開閉が制御されるようになっている。その場合、電磁圧力切換弁40においては、電磁圧力切換弁40の切換量(第1開閉弁9の閉弁量および第2開閉弁10の開弁量)がソレノイド41に供給する電流に比例して設定されている。
【0028】
この電磁圧力切換弁40は負圧倍力装置2に直接取り付けられており、したがってこの例のブレーキシステム1では、図6に示す通路16,30,32は省略されている。
【0029】
図2に示すように、電磁圧力切換弁40は、大気が導入される大気導入口42と、負圧が導入される負圧導入口43と、大気または負圧を供給する圧力供給口44とを備えている。そして、図1に示すようにこのバルブユニット40は、大気導入口42が大気に常時連通し、負圧導入口43が負圧倍力装置2のフロント定圧室3を介して常時負圧源5に連通しているとともに、圧力供給口44が内部室15に常時連通するようにして、負圧倍力装置2のフロントシェル2aに取り付けられている。
【0030】
負圧側の第1開閉弁9は、ソレノイド41によって作動されるアーマチュア45にロッド46を介して連結され、アーマチュア45の移動とともに移動可能な第1弁座47と、下端がこの第1弁座47に着離座可能に移動する段付筒状の第1弁体48と、第1スプリング49とからなり、負圧導入口43と圧力供給口44との間の通路を連通、遮断するように配設されている。また、大気側の第2開閉弁10は、ハウジング50に固定された第2弁座51と、段付筒状の第1弁体48の上端部に取り付けられ、第1弁体48の移動とともにこの第2弁座51に着離可能に移動する第2弁体52と、第2スプリング53とからなり、大気導入口42と圧力供給口44との間の通路を連通、遮断するように配設されている。更に、アーマチュア45は第3スプリング54によって常時上方すなわち第1弁座47が第1弁体48に着座する方向に付勢されている。その場合、第2スプリング53のばね力が最も大きく、次いで第1スプリング49のばね力が大きく、更に第3スプリング54のばね力が最も小さく設定されている。
【0031】
したがって、ソレノイド41が励磁されない非作動時は、第1弁座47は第1スプリング49のばね力によって最下位置に設定され、第1および第2弁体48,52は第2スプリング53のばね力によって、第2弁体52が第2弁座51に着座した最下位置に設定されている。この非作動時では、第1弁体48が第1弁座47から離座して第1開閉弁9が開状態(連通状態)に設定され、第2弁体52が第2弁座51に着座して第2開閉弁10が閉状態(遮断状態)に設定されている。
【0032】
また、前述の図6に示すチェックバルブ31は、この例のブレーキシステム1では、図3に示すように負圧倍力装置2のバルブボディ28に直接設けられている。このチェックバルブ31は、弁体55と、この弁体55が着、離座可能な弁座56と、弁体55を弁座56方向に常時付勢するスプリング57とから構成されており、内部室15から、リヤ変圧室11とフロント変圧室17とを連通する通路18へ向かう大気の流れのみを許容するようになっている。
【0033】
更に、コントローラ35は、前述の公開公報に開示されている機能と同じ機能を発揮するように、同様に判断、算出、制御等の各手段を備えている。更に、この例のコントローラ35は、図4に示すようにストロークセンサ36からのペダルストローク量または踏力計37からのペダル踏力により、ブレーキペダル26の踏込を判断するブレーキペダル踏込判断手段58と、このブレーキペダル踏込判断手段58からのペダル踏込判断信号に基づいて、自動ブレーキに必要なマスタシリンダ21の圧力を算出し、算出した必要マスタシリンダ圧が予めメモリに記憶されている所定圧(例.7MPa)以上であるか否かを判断する必要マスタシリンダ圧算出・判断手段59と、必要マスタシリンダ圧算出・判断手段59からの判断信号または後述するマスタシリンダ圧上昇・低下判断手段61からのマスタシリンダ圧の上昇、低下の判断信号に基づいて、ソレノイド41への電流供給を制御する電流供給制御手段60と、電流供給制御手段60からの制御信号を受けて、液圧センサ38からのマスタシリンダ圧の検出信号に基づいてマスタシリンダ圧の上昇、低下を判断するマスタシリンダ圧上昇・低下判断手段61とを備えている。
【0034】
この例のブレーキシステム1の他の構成は、前述の図6および図7に示すブレーキシステム1、すなわち前述の公開公報に開示されているブレーキシステム1と同じである。
【0035】
このように構成されたこの例のブレーキシステム1においては、ブレーキペダル26の踏込による通常ブレーキ作動時に、自動ブレーキ作動条件が成立して、自動ブレーキが作動されると、次のように通常ブレーキおよび自動ブレーキが制御される。
【0036】
図5はこの場合の各ブレーキ制御を行うためのフローを示す図である。
まず、ステップS1でブレーキペダル26が踏み込まれているか否かが判断される。ブレーキペダル26が踏み込まれていないと判断されたときは、再びステップS1に戻り、その処理を行う。ブレーキペダル26が踏み込まれていると判断されたときは、ステップS2で自動ブレーキ作動条件が成立しているか否かが判断される。自動ブレーキ作動条件が成立していないと判断されたときは、再びステップS1に戻り、ステップS1からの各処理を行う。自動ブレーキ作動条件が成立していると判断されたときは、ステップS3で電磁圧力切換弁40のソレノイド41に電流を供給して、自動ブレーキ動作が行われる。
【0037】
この自動ブレーキの動作は、コントローラ35によってソレノイド41に電流が供給されて、ソレノイド41が励磁されると、ア−マチュア45が図2において上方に移動して、第1弁座47が第1弁体48の下端に当接し、第1開閉弁9が閉じる。これにより、内部室15がフロント定圧室3すなわち負圧源5から遮断される。更に、ア−マチュア45が上方に移動すると、第1弁座47および第1弁体48がともに上方へ移動して、第2弁体52が第2弁座51から離座し、第2開閉弁10が開く。これにより、内部室15と大気とが連通し、大気が大気導入口42から導入され第2開閉弁10を通って圧力供給口44から内部室15に供給される。
【0038】
そして、内部室15の圧力が変圧室17の圧力より小さい間は、チェックバルブ31が閉じているので、内部室15に供給された大気は両変圧室11,17に導入されない。内部室15の圧力が変圧室17の圧力より所定圧高くなると、チェックバルブ31が開き、内部室15に供給された大気はチェックバルブ31および通路18を介して両変圧室11,17に導入され、自動ブレーキによるブレーキがかけられる。
【0039】
次いで、ステップS4でこの自動ブレーキにおいて必要なマスタシリンダ圧が所定圧(例. 7MPa)以上であるか否かが判断される。必要マスタシリンダ圧が所定圧(例. 7MPa)以上でないと判断されたときは、再びステップS1に戻り、ステップS1からの各処理を行う。必要なマスタシリンダ圧が所定圧以上必要であると判断されたときは、ステップS5でソレノイド41への供給電流を所定量低下させて内部室15の圧力を低下させる。すなわち、ソレノイド41への供給電流が低下することにより、スプリング53のばね力で第2弁体52が第2弁座51に着座して第2開閉弁10が閉じ、更にスプリング49のばね力で第1弁体48が第1弁座47から離座して第1開閉弁9が開く。これにより、内部室15に供給された大気が圧力供給口44、第1開閉弁9、負圧導入口43、フロント定圧室3、および通路4を通って負圧源5の方へ排出され、内部室15の圧力が低下する。
【0040】
次いで、ステップS6で、この内部室15の圧力低下によりマスタシリンダ圧が上昇するか否かが判断される。マスタシリンダ圧が上昇すると判断されると、ステップS7で電磁圧力切換弁40のソレノイド41の供給電流を0にする。これは、内部室15の圧力が低下してもマスタシリンダ圧が上昇することは、運転者がブレーキペダル26を強く踏み込んでいて、比較的大きなブレーキ力を必要と判断され、負圧倍力装置2の通常ブレーキ時の最大出力を低下させないようにする必要があるためである。すなわち、ソレノイド41の供給電流を0にすることにより、電磁圧力切換弁40が図2に示す非作動状態に設定される。これにより、内部室15に供給された大気が完全に排出されるので、自動ブレーキ動作は行われず、通常ブレーキのみが引き続き行われる。その場合、内部室15の圧力が低下するので、負圧倍力装置2の最大出力が低下することはなく、負圧倍力装置2は通常ブレーキ時の自動ブレーキ作動時に、通常ブレーキでの最大出力すなわち通常ブレーキの全負荷まで出力を発生させることができる。
【0041】
ステップS6で、内部室15の圧力低下によりマスタシリンダ圧が上昇しない、すなわちマスタシリンダ圧が低下すると判断されると、ステップS8で自動制動力が最大となるように電磁圧力切換弁40のソレノイド41の供給電流を最大にする。これは、内部室15の圧力が低下したとき、マスタシリンダ圧が低下することは、例えば運転者が前述のように緊急ブレーキをかけるため大きなブレーキ力を得ようとしているにもかかわらず、運転者のペダル踏力が不足して、ブレーキペダル26を大きく踏み込めない状態であって大きなブレーキ力が得られないと判断され、自動制動力を最大にする必要があるためである。すなわち、自動制動力が最大となるようにソレノイド41の供給電流を最大にすることにより、電磁圧力切換弁40はその第2開閉弁10の開弁量が最大となる状態に設定される。すると、内部室15には多量の大気が供給され、内部室15の圧力が最大となって、通路18の圧力より大きくなるので、この内部室15の大きな圧力はチェックバルブ31を通って通路18に導入され、更に両変圧室11,17に導入される。これにより、負圧倍力装置2の出力を上昇させることができ、自動制動力を最大にすることができる。したがって、緊急ブレーキ時等において、運転者がブレーキペダル26を大きく踏み込めない場合にも、最大の自動制動力を確実に得ることができるようになる。
この例のブレーキシステム1の他の作用効果は、前述の公開公報に開示されているブレーキシステム1と同じである。
【0042】
なお、第1および第2開閉弁9,10を図6に示すように別体に設けることもできるし、またチェックバルブ31も図6に示すように負圧倍力装置2から離して設けることもできる。
【0043】
また前述の実施例では、本発明を2ブレーキ系統に適用しているが、本発明は2ブレーキ系統以外に単なる1ブレーキ系統にも適用することができるし、また負圧倍力装置2はシングル型負圧倍力装置でもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のブレーキシステムによれば、ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で自動ブレーキが作動した場合は、この自動ブレーキに必要な必要マスタシリンダ圧を算出し、この必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断したときには、電磁圧力切換弁を切換制御して内部室の圧力を低下させ、この状態でマスタシリンダ圧が上昇するときは、電磁圧力切換弁を非作動状態にしているので、内部室の圧力を低下することができる。これにより、ブレーキ操作部材のブレーキ操作による通常ブレーキ作動状態で自動ブレーキが作動しても、負圧倍力装置の最大出力が低下するのを防止でき、負圧倍力装置の出力を通常ブレーキ時の全負荷まで確実に出力させることができるようになる。
【0045】
また、前述の内部室の圧力を低下させた状態で、マスタシリンダ圧が低下するときは、自動制動力が最大となるように電磁圧力切換弁を最大に作動した状態にしているので、内部室に十分な大気を供給することができる。これにより、緊急ブレーキ等の大きな自動制動力が必要なときに運転者がブレーキ操作部材を大きく操作できない場合でも、自動ブレーキにおける負圧倍力装置の出力を最大にすることができ、最大の自動制動力で自動ブレーキを行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るブレーキシステムの実施の形態の一例に使用される負圧倍力装置と電磁圧力切換弁を示す断面図である。
【図2】 図1に示す電磁圧力切換弁の拡大断面図である。
【図3】 図1に示す負圧倍力装置に設けられるチェックバルブの拡大断面図である。
【図4】 図1に示す例のブレーキシステムにおけるコントローラの構成要素の一部を模式的に示す図である。
【図5】 図1に示す例のブレーキシステムにおいて通常ブレーキ作動中の自動ブレーキ作動時におけるブレーキ制御を行うためのフローを示す図である。
【図6】 前述の公開公報に開示された従来のブレーキシステムで、かつ本発明のブレーキシステムの一部を構成するブレーキシステムを示す図である。
【図7】 前述の公開公報に開示された従来の負圧倍力装置で、かつ本発明の負圧倍力装置の一部を構成する負圧倍力装置の断面図である。
【符号の説明】
1…ブレーキシステム、2…負圧倍力装置、3…フロント定圧室、4,7,12,13,16,18,30,32…通路、5…負圧源、6…リヤ定圧室、8…制御弁、8a…大気弁、8b…真空弁、9…第1開閉弁、10…第2開閉弁、11…リヤ変圧室、14…ベローズ、15…内部室、17…フロント変圧室、19…フロントダイヤフラムピストン、20…リヤダイヤフラムピストン、21…タンデムマスタシリンダ、22,23…後輪のホイールシリンダ、24,25…前輪のホイールシリンダ、26…ブレーキペダル、27…入力軸、28…バルブボディ、29…出力軸、31…チェックバルブ、33,34,34a,34b…液圧通路、35…コントローラ、36…ストロークセンサ、37…踏力計、38…液圧センサ(液圧P.U)、40…電磁圧力切換弁、41…ソレノイド、42…大気導入口、43…負圧導入口、44…圧力供給口、47…第1弁座、48…第1弁体、51…第2弁座、52…第2弁体、55…弁体、56…弁座、58…ブレーキペダル踏込判断手段、59…必要マスタシリンダ圧算出・判断手段、60…電流供給手段、61…マスタシリンダ圧上昇・低下判断手段
【産業上の利用分野】
本発明は、運転者のブレーキペダルの踏み込みによってブレーキをかけた際に、例えば緊急ブレーキの場合のようにペダル踏力に対応するブレーキ力ではブレーキ力が不足するような場合に、そのブレーキ力を大きくするようにしたブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車等の車両のブレーキシステムにおいては、ブレーキペダルのペダル踏力のみでは得られない大きなブレーキ力を得るためやペダル踏力を軽減するため等により、負圧倍力装置を用いてペダル踏力を倍力してマスタシリンダを作動させることが行われている。
【0003】
ところで、近年、自動車においては、パーキングブレーキやブレーキペダルからアクセルペダルへの急なペダル踏み換え操作を必要とすることなく自動車等の車両の坂道発進を簡単に行うことができるようにするために、信号待ちや渋滞路におけるブレーキペダルを踏み続ける操作を不要にしてブレーキ操作による疲労を軽減することができるようにするため、駆動輪の空転時にトラクションコントロールを行うことにより発進や加速を確実に行うことができるようにするため、坂道での車両停止状態を確実に保持するため、走行中での車間距離を自動的に制御するため、下り坂でのオーバースピードを防止する等の車両の走行速度を自動的に抑制するため、サイドブレーキのかけ忘れを防止するため等に用いられるブレーキシステムが開発されている。
【0004】
更に、このようなブレーキシステムにおいて、例えば車両衝突のおそれがきわめて高く、運転者がブレーキペダルを急速にかつ大きなペダル踏力で踏み込んで急ブレーキを作動させたような場合に、ブレーキペダルのペダル踏力不足を自動的に補って、大きなブレーキ力を迅速に得るようにしたブレーキシステムも開発されている。
【0005】
このようなブレーキシステムとして、従来、図6および図7に示すような特開平8ー295226号公報に開示されているブレーキシステムがある。
このブレーキシステム1は、タンデム型の負圧倍力装置2におけるフロント定圧室3が通路4を介して常時負圧源5に接続され、また、リヤ定圧室6が通路7を介して常時フロント定圧室3に連通していて、同様に常時負圧源5に接続されている。また、ブレーキシステム1の図6および図7に示す非作動状態では、負圧倍力装置2における制御弁8の真空弁8bが開きかつ大気弁8aが閉じているとともに、負圧側の電磁弁の第1開閉弁9が連通位置に設定されかつ大気側の電磁弁の第2開閉弁10が遮断位置に設定されている。このため、リヤ変圧室11が通路12、開いた真空弁8b、通路13、ベローズ14で囲まれた内部室15、通路16を介して負圧源5に接続されている。また、フロント変圧室17が通路18を介して常時リヤ変圧室11に連通しており、すなわちフロント変圧室17も負圧源5に接続されている。
【0006】
したがって、フロント変圧室17とフロント定圧室3との間およびリヤ変圧室11とリヤ定圧室6との間には圧力差が生じていないので、フロントおよびリヤダイヤフラムピストン19,20がともに作動しなく、負圧倍力装置2は出力しない。これにより、タンデム型のマスタシリンダ21も作動しなく、各ホイールシリンダ22,23,24,25はブレーキを作動しない。
【0007】
この状態で、通常ブレーキ操作が行われると、ブレーキペダル26の踏み込みにより入力軸27が前進し、真空弁8bが閉じて大気弁8aが開く。これにより、大気が、開いた大気弁8aおよび通路12を通ってリヤ変圧室11に導入されるとともに、通路18を通ってフロント変圧室17に導入される。すると、フロントダイヤフラムピストン19およびリヤダイヤフラムピストン20のそれぞれの前後に圧力差が生じ、フロントダイヤフラムピストン19およびリヤダイヤフラムピストン20が前進するので、バルブボディ28も前進する。このため、出力軸29が前進して負圧倍力装置2が出力し、マスタシリンダ21のピストンを作動する。その場合、リヤ変圧室11に導入された大気は通路30を通って漏出しようとするが、チェックバルブ31によって負圧源5に向かう空気の流れが阻止されているので、リヤ変圧室11の大気の漏出は確実に阻止される。また、このとき、第1および第2開閉弁9,10は切り換えられないので、大気が通路32,16,30およびチェックバルブ31を通ってリヤ変圧室11に導入されることはない。こうして、負圧倍力装置2は制御弁8の大気弁8aを通して各変圧室11,17に導入される大気のみによる出力を発生するようになる。
【0008】
マスタシリンダ21はピストンの作動により2つの液室にマスタシリンダ圧を発生し、一方の液室のマスタシリンダ圧が通路33を通ってリヤホイールシリンダ22,23に供給され、後輪の通常ブレーキが作動する。また、同様に他方の液室のマスタシリンダ圧が通路34、左右の分岐通路34a,34bを通ってフロントホイールシリンダ24,25に供給され、左右前輪の通常ブレーキが作動する。
【0009】
バルブボディ28の前進により、大気弁8aが次第に閉じていき、そして大気弁8aおよび真空弁8bがともに閉じたとき、バルブボディ28の前進が停止する。これにより、負圧倍力装置2の出力は入力軸27の入力を所定のサーボ比で倍力された出力となる。
【0010】
ブレーキペダル26を解放すると、入力軸27が後退して真空弁8bが開く。これにより、フロントおよびリヤの両変圧室17,11内の大気は、通路18、12、開いた真空弁8b、通路13、内部室15および通路16を通って負圧源5の方へ流出する。したがって、フロントダイヤフラムピストン19、リヤダイヤフラムピストン20およびバルブボディ28が後退し、出力軸29およびマスタシリンダ21のピストンも後退してブレーキが解除し、ブレーキシステムは図6および図7に示す非作動状態となる。
【0011】
一方、図6および図7に示すブレーキ非作動状態において、自動ブレーキ作動条件となって、コントローラ35により第1開閉弁9が切り換えられて遮断位置に設定されるとともに、第2開閉弁10が切り換えられて連通位置に設定される。すると、大気が通路32,16,30およびチェックバルブ31を介してリヤ変圧室11に導入され、更に、通路18を介してフロント変圧室17にも導入される。このとき、大気は通路16から内部室15、通路13、開いている真空弁8b、および通路12を介しても両変圧室11,17に導入されるが、開いている真空弁8bの隙間が小さいため、通路30およびチェックバルブ31側の方から両変圧室11,17に迅速に導入されるようになる。
【0012】
これにより、フロントダイヤフラムピストン19およびリヤダイヤフラムピストン20のそれぞれの前後に圧力差が生じ、前述の通常ブレーキの場合と同様にして負圧倍力装置2が作動し、ブレーキが作動する。こうして、自動ブレーキ作動条件となったとき、コントローラ35からの制御信号によって第1および第2開閉弁9,10が切り換えられることにより、自動ブレーキが作動するようになる。
【0013】
また、ブレーキペダル26の通常の踏込による通常ブレーキ作動状態で、自動ブレーキ作動条件が成立すると、前述の自動ブレーキの場合と同様に、コントローラ35は第1および第2開閉弁9,10を切り換える。これにより、大気が通路16,30およびチェックバルブ31を介してリヤ変圧室11に導入されるとともに、更に通路18を介してフロント変圧室17に導入され、通常ブレーキ作動中に自動ブレーキを作動させることができる。この状態で、ブレーキペダル26を解放して通常ブレーキが解除されても、自動ブレーキは自動ブレーキ作動条件が解消するまでは作動したままに保持される。
【0014】
更に、自動ブレーキ作動時に、更にブレーキ力を大きくするために、ブレーキペダル26の踏込による通常ブレーキが作動されると、前述の通常ブレーキの場合と同様に、真空弁8bが閉じて大気弁8aが開くので、大気が大気弁8aを通しても変圧室11,17内に導入される。したがって、自動ブレーキ作動中においても通常ブレーキが作動し、この通常ブレーキ作動により、自動ブレーキによって発生したブレーキ力を高めることができる。この状態で、自動ブレーキが解除されても、通常ブレーキはブレーキペダル26が解放されるまでは作動したままに保持される。
【0015】
更に、例えば車両が衝突するおそれがきわめて高く、運転者がブレーキペダル26を所定値を超えるペダル踏込速度で急速に踏み込んで緊急ブレーキをかけた場合には、まず前述の通常ブレーキと同様にブレーキペダル26の踏み込みで真空弁8bが閉じるとともに大気弁8aが開くので、各変圧室11,17には大気が導入される。これにより、負圧倍力装置2が出力するので、マスタシリンダ21が作動し、ブレーキがかけられる。
【0016】
このとき、ストロークセンサ36からのペダルストローク検出信号によりコントローラ35が算出したペダル踏込速度が所定値を超えるので、コントローラ35は第1開閉弁9を遮断位置に切り換えると同時に第2開閉弁10を連通位置に切り換える。すると、前述の自動ブレーキの場合と同様に、大気が通路32,16,30およびチェックバルブ31を介してリヤ変圧室11およびフロント変圧室17に導入される。これにより、各変圧室11,17の圧力がペダル踏力に対応するよりも高められて負圧倍力装置2の出力が大きくなるため、マスタシリンダ21が発生するマスタシリンダ圧も大きくなってブレーキ力が大きくなる。したがって、緊急ブレーキ作動時等においてブレーキ力不足が確実に補償され、例えば車両衝突等を未然に確実に防止することができるようになる。
【0017】
なお、37はペダル踏力を検出する踏力計であり、38はマスタシリンダ21のマスタシリンダ圧を検出する液圧センサである(液圧ピックアップ;液圧P.U)。また、ABSはアンチスキッド制御装置である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この従来のブレーキシステム1では、ブレーキペダル26の通常の踏込による通常ブレーキ作動状態で、自動ブレーキ作動条件が成立すると、コントローラ35は前述のように第1および第2開閉弁9,10を切り換える。このため、大気が内部室15内に導入されるようになるが、この内部室15内の大気圧により負圧倍力装置2の最大出力が低下することが考えられる。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、通常ブレーキ作動状態で、自動ブレーキが作動しても倍力装置の最大出力が低下するのを防止できるブレーキシステムを提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、通常ブレーキ操作を行うブレーキ操作部材、常時負圧源に連通されている定圧室、ブレーキ非作動時に負圧が導入されるとともにブレーキ作動時に大気が導入される変圧室、前記定圧室と前記変圧室とを区画し前記変圧室に大気が導入されることにより作動するダイヤフラムピストン、前記定圧室側に設けられ、通常時負圧源の連通されるとともに自動ブレーキ作動時大気に選択的に接続される内部室、および前記ブレーキ操作部材によって切り換え制御されて前記変圧室をブレーキ非作動時に前記内部室に連通しかつ大気と遮断するとともにブレーキ作動時に大気に連通しかつ前記内部室と遮断する制御弁を備え、前記ダイヤフラムピストンの作動により出力する負圧倍力装置と、この負圧倍力装置の出力によって作動されてマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダと、このマスタシリンダのマスタシリンダ圧が導入されてブレーキ力を発生するブレーキシリンダと、常時負圧源に接続される負圧導入口、常時大気に接続される大気導入口、および常時前記内部室に接続され、負圧または大気を供給する圧力供給口を有し、前記内部室を、非作動時負圧源に接続するとともに大気から遮断し、作動時前記負圧源から遮断するとともに前記大気に接続するを供給する電磁圧力切換弁と、前記電磁圧力切換弁の圧力供給口側と前記変圧室とを接続する通路に設けられ、前記圧力供給口側から前記変圧室に向かう空気の流れを許容するが前記変圧室から前記圧力供給口側に向かう空気の流れを阻止するチェック弁と、前記マスタシリンダシリンダ圧を検出する液圧センサと、緊急ブレーキ時等の自動ブレーキの必要時に前記内部室に大気を供給するように前記電磁圧力切換弁を切換制御する電子制御装置とを備え、通常ブレーキ作動時は前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作で前記制御弁を切換制御することにより通常ブレーキ作動を行い、自動ブレーキ作動時は電子制御装置が電磁圧力切換弁を切換制御することにより自動ブレーキ作動を行うブレーキシステムにおいて、電子制御装置は、前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で前記自動ブレーキが作動したとき、この自動ブレーキ作動に必要な必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、前記電磁圧力切換弁を切換制御して前記内部室の圧力を低下させた状態で、前記マスタシリンダ圧が上昇するときは前記電磁圧力切換弁を非作動状態に制御し、前記マスタシリンダ圧が低下するときは前記電磁圧力切換弁を最大に作動した状態に制御することを特徴としている。
【0021】
また、請求項2の発明は、前記電磁圧力切換弁の切換量がこの電磁圧力切換弁に供給する電流に比例しており、前記必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、前記電磁圧力切換弁への供給電流を低下させて前記内部室の圧力を低下させ、前記マスタシリンダ圧が上昇するときは前記供給電流を0にし、前記マスタシリンダ圧が低下するときは、自動ブレーキ力が最大となるように前記供給電流を最大にすることを特徴としている。
【0022】
更に、請求項3の発明は、前記電磁圧力切換弁が前記負圧倍力装置に取り付けられ、前記負圧導入口が前記負圧倍力装置の定圧室に連通されているとともに、前記圧力供給口が前記内部室に連通されており、更に、前記チェックバルブが、前負圧倍力装置内に設けられた前記内部室と前記変圧室とを接続する通路に設けられていることを特徴としている。
【0023】
【作用】
このように構成された請求項1の発明においては、電子制御装置は、ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で自動ブレーキが作動した場合、この自動ブレーキに必要な必要マスタシリンダ圧を算出する。更に、電子制御装置は、必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、電磁圧力切換弁を切換制御して内部室の圧力を低下させる。
【0024】
そして、マスタシリンダ圧が上昇するときは、運転者がブレーキ操作部材を強く操作していることになるので、電磁圧力切換弁を非作動状態にする。これにより、内部室の圧力が確実に低下するようになり、ブレーキ操作部材のブレーキ操作による通常ブレーキ作動状態で自動ブレーキが作動しても、負圧倍力装置の最大出力が低下するのが防止され、負圧倍力装置は通常ブレーキ時の全負荷まで確実に出力するようになる。
【0025】
また、マスタシリンダ圧が低下するときは、運転者のブレーキ操作力が不足して大きく操作できない状態であるので、自動制動力が最大となるように電磁圧力切換弁を最大に作動した状態にする。これにより、内部室に多量の大気が導入されるようになり、運転者がブレーキ操作部材を大きく操作できない場合でも、最大の自動制動力で自動ブレーキが行われるように、自動ブレーキにおける負圧倍力装置の出力が最大となる。
【0026】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明に係るブレーキシステムの一実施例を示す図、図2はこのブレーキシステムに用いられる圧力切換弁を示す断面図、図3はこのブレーキシステムに用いられる負圧倍力装置に設けられたチェックバルブの拡大断面図である。なお、前述の図6および図7に示す従来のブレーキシステムの構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0027】
前述の図6に示すブレーキシステム1では、負圧側の第1開閉弁9および大気側の第2開閉弁10がそれぞれ個別に設けた電磁開閉弁から構成されているが、この例のブレーキシステム1は、図1および図2に示すように第1開閉弁9、第2開閉弁10およびソレノイド41が1つのバルブユニットにまとめられて電磁圧力切換弁40として構成されているとともに、1つのソレノイド41で第1および第2開閉弁9,10の開閉が制御されるようになっている。その場合、電磁圧力切換弁40においては、電磁圧力切換弁40の切換量(第1開閉弁9の閉弁量および第2開閉弁10の開弁量)がソレノイド41に供給する電流に比例して設定されている。
【0028】
この電磁圧力切換弁40は負圧倍力装置2に直接取り付けられており、したがってこの例のブレーキシステム1では、図6に示す通路16,30,32は省略されている。
【0029】
図2に示すように、電磁圧力切換弁40は、大気が導入される大気導入口42と、負圧が導入される負圧導入口43と、大気または負圧を供給する圧力供給口44とを備えている。そして、図1に示すようにこのバルブユニット40は、大気導入口42が大気に常時連通し、負圧導入口43が負圧倍力装置2のフロント定圧室3を介して常時負圧源5に連通しているとともに、圧力供給口44が内部室15に常時連通するようにして、負圧倍力装置2のフロントシェル2aに取り付けられている。
【0030】
負圧側の第1開閉弁9は、ソレノイド41によって作動されるアーマチュア45にロッド46を介して連結され、アーマチュア45の移動とともに移動可能な第1弁座47と、下端がこの第1弁座47に着離座可能に移動する段付筒状の第1弁体48と、第1スプリング49とからなり、負圧導入口43と圧力供給口44との間の通路を連通、遮断するように配設されている。また、大気側の第2開閉弁10は、ハウジング50に固定された第2弁座51と、段付筒状の第1弁体48の上端部に取り付けられ、第1弁体48の移動とともにこの第2弁座51に着離可能に移動する第2弁体52と、第2スプリング53とからなり、大気導入口42と圧力供給口44との間の通路を連通、遮断するように配設されている。更に、アーマチュア45は第3スプリング54によって常時上方すなわち第1弁座47が第1弁体48に着座する方向に付勢されている。その場合、第2スプリング53のばね力が最も大きく、次いで第1スプリング49のばね力が大きく、更に第3スプリング54のばね力が最も小さく設定されている。
【0031】
したがって、ソレノイド41が励磁されない非作動時は、第1弁座47は第1スプリング49のばね力によって最下位置に設定され、第1および第2弁体48,52は第2スプリング53のばね力によって、第2弁体52が第2弁座51に着座した最下位置に設定されている。この非作動時では、第1弁体48が第1弁座47から離座して第1開閉弁9が開状態(連通状態)に設定され、第2弁体52が第2弁座51に着座して第2開閉弁10が閉状態(遮断状態)に設定されている。
【0032】
また、前述の図6に示すチェックバルブ31は、この例のブレーキシステム1では、図3に示すように負圧倍力装置2のバルブボディ28に直接設けられている。このチェックバルブ31は、弁体55と、この弁体55が着、離座可能な弁座56と、弁体55を弁座56方向に常時付勢するスプリング57とから構成されており、内部室15から、リヤ変圧室11とフロント変圧室17とを連通する通路18へ向かう大気の流れのみを許容するようになっている。
【0033】
更に、コントローラ35は、前述の公開公報に開示されている機能と同じ機能を発揮するように、同様に判断、算出、制御等の各手段を備えている。更に、この例のコントローラ35は、図4に示すようにストロークセンサ36からのペダルストローク量または踏力計37からのペダル踏力により、ブレーキペダル26の踏込を判断するブレーキペダル踏込判断手段58と、このブレーキペダル踏込判断手段58からのペダル踏込判断信号に基づいて、自動ブレーキに必要なマスタシリンダ21の圧力を算出し、算出した必要マスタシリンダ圧が予めメモリに記憶されている所定圧(例.7MPa)以上であるか否かを判断する必要マスタシリンダ圧算出・判断手段59と、必要マスタシリンダ圧算出・判断手段59からの判断信号または後述するマスタシリンダ圧上昇・低下判断手段61からのマスタシリンダ圧の上昇、低下の判断信号に基づいて、ソレノイド41への電流供給を制御する電流供給制御手段60と、電流供給制御手段60からの制御信号を受けて、液圧センサ38からのマスタシリンダ圧の検出信号に基づいてマスタシリンダ圧の上昇、低下を判断するマスタシリンダ圧上昇・低下判断手段61とを備えている。
【0034】
この例のブレーキシステム1の他の構成は、前述の図6および図7に示すブレーキシステム1、すなわち前述の公開公報に開示されているブレーキシステム1と同じである。
【0035】
このように構成されたこの例のブレーキシステム1においては、ブレーキペダル26の踏込による通常ブレーキ作動時に、自動ブレーキ作動条件が成立して、自動ブレーキが作動されると、次のように通常ブレーキおよび自動ブレーキが制御される。
【0036】
図5はこの場合の各ブレーキ制御を行うためのフローを示す図である。
まず、ステップS1でブレーキペダル26が踏み込まれているか否かが判断される。ブレーキペダル26が踏み込まれていないと判断されたときは、再びステップS1に戻り、その処理を行う。ブレーキペダル26が踏み込まれていると判断されたときは、ステップS2で自動ブレーキ作動条件が成立しているか否かが判断される。自動ブレーキ作動条件が成立していないと判断されたときは、再びステップS1に戻り、ステップS1からの各処理を行う。自動ブレーキ作動条件が成立していると判断されたときは、ステップS3で電磁圧力切換弁40のソレノイド41に電流を供給して、自動ブレーキ動作が行われる。
【0037】
この自動ブレーキの動作は、コントローラ35によってソレノイド41に電流が供給されて、ソレノイド41が励磁されると、ア−マチュア45が図2において上方に移動して、第1弁座47が第1弁体48の下端に当接し、第1開閉弁9が閉じる。これにより、内部室15がフロント定圧室3すなわち負圧源5から遮断される。更に、ア−マチュア45が上方に移動すると、第1弁座47および第1弁体48がともに上方へ移動して、第2弁体52が第2弁座51から離座し、第2開閉弁10が開く。これにより、内部室15と大気とが連通し、大気が大気導入口42から導入され第2開閉弁10を通って圧力供給口44から内部室15に供給される。
【0038】
そして、内部室15の圧力が変圧室17の圧力より小さい間は、チェックバルブ31が閉じているので、内部室15に供給された大気は両変圧室11,17に導入されない。内部室15の圧力が変圧室17の圧力より所定圧高くなると、チェックバルブ31が開き、内部室15に供給された大気はチェックバルブ31および通路18を介して両変圧室11,17に導入され、自動ブレーキによるブレーキがかけられる。
【0039】
次いで、ステップS4でこの自動ブレーキにおいて必要なマスタシリンダ圧が所定圧(例. 7MPa)以上であるか否かが判断される。必要マスタシリンダ圧が所定圧(例. 7MPa)以上でないと判断されたときは、再びステップS1に戻り、ステップS1からの各処理を行う。必要なマスタシリンダ圧が所定圧以上必要であると判断されたときは、ステップS5でソレノイド41への供給電流を所定量低下させて内部室15の圧力を低下させる。すなわち、ソレノイド41への供給電流が低下することにより、スプリング53のばね力で第2弁体52が第2弁座51に着座して第2開閉弁10が閉じ、更にスプリング49のばね力で第1弁体48が第1弁座47から離座して第1開閉弁9が開く。これにより、内部室15に供給された大気が圧力供給口44、第1開閉弁9、負圧導入口43、フロント定圧室3、および通路4を通って負圧源5の方へ排出され、内部室15の圧力が低下する。
【0040】
次いで、ステップS6で、この内部室15の圧力低下によりマスタシリンダ圧が上昇するか否かが判断される。マスタシリンダ圧が上昇すると判断されると、ステップS7で電磁圧力切換弁40のソレノイド41の供給電流を0にする。これは、内部室15の圧力が低下してもマスタシリンダ圧が上昇することは、運転者がブレーキペダル26を強く踏み込んでいて、比較的大きなブレーキ力を必要と判断され、負圧倍力装置2の通常ブレーキ時の最大出力を低下させないようにする必要があるためである。すなわち、ソレノイド41の供給電流を0にすることにより、電磁圧力切換弁40が図2に示す非作動状態に設定される。これにより、内部室15に供給された大気が完全に排出されるので、自動ブレーキ動作は行われず、通常ブレーキのみが引き続き行われる。その場合、内部室15の圧力が低下するので、負圧倍力装置2の最大出力が低下することはなく、負圧倍力装置2は通常ブレーキ時の自動ブレーキ作動時に、通常ブレーキでの最大出力すなわち通常ブレーキの全負荷まで出力を発生させることができる。
【0041】
ステップS6で、内部室15の圧力低下によりマスタシリンダ圧が上昇しない、すなわちマスタシリンダ圧が低下すると判断されると、ステップS8で自動制動力が最大となるように電磁圧力切換弁40のソレノイド41の供給電流を最大にする。これは、内部室15の圧力が低下したとき、マスタシリンダ圧が低下することは、例えば運転者が前述のように緊急ブレーキをかけるため大きなブレーキ力を得ようとしているにもかかわらず、運転者のペダル踏力が不足して、ブレーキペダル26を大きく踏み込めない状態であって大きなブレーキ力が得られないと判断され、自動制動力を最大にする必要があるためである。すなわち、自動制動力が最大となるようにソレノイド41の供給電流を最大にすることにより、電磁圧力切換弁40はその第2開閉弁10の開弁量が最大となる状態に設定される。すると、内部室15には多量の大気が供給され、内部室15の圧力が最大となって、通路18の圧力より大きくなるので、この内部室15の大きな圧力はチェックバルブ31を通って通路18に導入され、更に両変圧室11,17に導入される。これにより、負圧倍力装置2の出力を上昇させることができ、自動制動力を最大にすることができる。したがって、緊急ブレーキ時等において、運転者がブレーキペダル26を大きく踏み込めない場合にも、最大の自動制動力を確実に得ることができるようになる。
この例のブレーキシステム1の他の作用効果は、前述の公開公報に開示されているブレーキシステム1と同じである。
【0042】
なお、第1および第2開閉弁9,10を図6に示すように別体に設けることもできるし、またチェックバルブ31も図6に示すように負圧倍力装置2から離して設けることもできる。
【0043】
また前述の実施例では、本発明を2ブレーキ系統に適用しているが、本発明は2ブレーキ系統以外に単なる1ブレーキ系統にも適用することができるし、また負圧倍力装置2はシングル型負圧倍力装置でもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のブレーキシステムによれば、ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で自動ブレーキが作動した場合は、この自動ブレーキに必要な必要マスタシリンダ圧を算出し、この必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断したときには、電磁圧力切換弁を切換制御して内部室の圧力を低下させ、この状態でマスタシリンダ圧が上昇するときは、電磁圧力切換弁を非作動状態にしているので、内部室の圧力を低下することができる。これにより、ブレーキ操作部材のブレーキ操作による通常ブレーキ作動状態で自動ブレーキが作動しても、負圧倍力装置の最大出力が低下するのを防止でき、負圧倍力装置の出力を通常ブレーキ時の全負荷まで確実に出力させることができるようになる。
【0045】
また、前述の内部室の圧力を低下させた状態で、マスタシリンダ圧が低下するときは、自動制動力が最大となるように電磁圧力切換弁を最大に作動した状態にしているので、内部室に十分な大気を供給することができる。これにより、緊急ブレーキ等の大きな自動制動力が必要なときに運転者がブレーキ操作部材を大きく操作できない場合でも、自動ブレーキにおける負圧倍力装置の出力を最大にすることができ、最大の自動制動力で自動ブレーキを行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るブレーキシステムの実施の形態の一例に使用される負圧倍力装置と電磁圧力切換弁を示す断面図である。
【図2】 図1に示す電磁圧力切換弁の拡大断面図である。
【図3】 図1に示す負圧倍力装置に設けられるチェックバルブの拡大断面図である。
【図4】 図1に示す例のブレーキシステムにおけるコントローラの構成要素の一部を模式的に示す図である。
【図5】 図1に示す例のブレーキシステムにおいて通常ブレーキ作動中の自動ブレーキ作動時におけるブレーキ制御を行うためのフローを示す図である。
【図6】 前述の公開公報に開示された従来のブレーキシステムで、かつ本発明のブレーキシステムの一部を構成するブレーキシステムを示す図である。
【図7】 前述の公開公報に開示された従来の負圧倍力装置で、かつ本発明の負圧倍力装置の一部を構成する負圧倍力装置の断面図である。
【符号の説明】
1…ブレーキシステム、2…負圧倍力装置、3…フロント定圧室、4,7,12,13,16,18,30,32…通路、5…負圧源、6…リヤ定圧室、8…制御弁、8a…大気弁、8b…真空弁、9…第1開閉弁、10…第2開閉弁、11…リヤ変圧室、14…ベローズ、15…内部室、17…フロント変圧室、19…フロントダイヤフラムピストン、20…リヤダイヤフラムピストン、21…タンデムマスタシリンダ、22,23…後輪のホイールシリンダ、24,25…前輪のホイールシリンダ、26…ブレーキペダル、27…入力軸、28…バルブボディ、29…出力軸、31…チェックバルブ、33,34,34a,34b…液圧通路、35…コントローラ、36…ストロークセンサ、37…踏力計、38…液圧センサ(液圧P.U)、40…電磁圧力切換弁、41…ソレノイド、42…大気導入口、43…負圧導入口、44…圧力供給口、47…第1弁座、48…第1弁体、51…第2弁座、52…第2弁体、55…弁体、56…弁座、58…ブレーキペダル踏込判断手段、59…必要マスタシリンダ圧算出・判断手段、60…電流供給手段、61…マスタシリンダ圧上昇・低下判断手段
Claims (3)
- 通常ブレーキ操作を行うブレーキ操作部材、常時負圧源に連通されている定圧室、ブレーキ非作動時に負圧が導入されるとともにブレーキ作動時に大気が導入される変圧室、前記定圧室と前記変圧室とを区画し前記変圧室に大気が導入されることにより作動するダイヤフラムピストン、前記定圧室側に設けられ、通常時負圧源の連通されるとともに自動ブレーキ作動時大気に選択的に接続される内部室、および前記ブレーキ操作部材によって切り換え制御されて前記変圧室をブレーキ非作動時に前記内部室に連通しかつ大気と遮断するとともにブレーキ作動時に大気に連通しかつ前記内部室と遮断する制御弁を備え、前記ダイヤフラムピストンの作動により出力する負圧倍力装置と、
この負圧倍力装置の出力によって作動されてマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダと、
このマスタシリンダのマスタシリンダ圧が導入されてブレーキ力を発生するブレーキシリンダと、
常時負圧源に接続される負圧導入口、常時大気に接続される大気導入口、および常時前記内部室に接続され、負圧または大気を供給する圧力供給口を有し、前記内部室を、非作動時負圧源に接続するとともに大気から遮断し、作動時前記負圧源から遮断するとともに前記大気に接続するを供給する電磁圧力切換弁と、
前記電磁圧力切換弁の圧力供給口側と前記変圧室とを接続する通路に設けられ、前記圧力供給口側から前記変圧室に向かう空気の流れを許容するが前記変圧室から前記圧力供給口側に向かう空気の流れを阻止するチェック弁と、
前記マスタシリンダシリンダ圧を検出する液圧センサと、
緊急ブレーキ時等の自動ブレーキの必要時に前記内部室に大気を供給するように前記電磁圧力切換弁を切換制御する電子制御装置とを備え、
通常ブレーキ作動時は前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作で前記制御弁を切換制御することにより通常ブレーキ作動を行い、自動ブレーキ作動時は電子制御装置が前記電磁圧力切換弁を切換制御することにより自動ブレーキ作動を行うブレーキシステムにおいて、
電子制御装置は、前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作状態で前記自動ブレーキが作動したとき、この自動ブレーキ作動に必要な必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、前記電磁圧力切換弁を切換制御して前記内部室の圧力を低下させた状態で、前記マスタシリンダ圧が上昇するときは前記電磁圧力切換弁を非作動状態に制御し、前記マスタシリンダ圧が低下するときは前記電磁圧力切換弁を最大に作動した状態に制御することを特徴とするブレーキシステム。 - 前記電磁圧力切換弁の切換量はこの電磁圧力切換弁に供給する電流に比例しており、前記必要マスタシリンダ圧が所定圧以上であると判断した場合には、前記電磁圧力切換弁への供給電流を低下させて前記内部室の圧力を低下させ、前記マスタシリンダ圧が上昇するときは前記供給電流を0にし、前記マスタシリンダ圧が低下するときは、自動ブレーキ力が最大となるように前記供給電流を最大にすることを特徴とする請求項1記載のブレーキシステム。
- 前記電磁圧力切換弁は前記負圧倍力装置に取り付けられ、前記負圧導入口は前記負圧倍力装置の定圧室に連通されているとともに、前記圧力供給口は前記内部室に連通されており、更に、前記チェックバルブは、前負圧倍力装置内に設けられた前記内部室と前記変圧室とを接続する通路に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のブレーキシステム。
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