JP3740372B2 - ハイブリッド磁石型直流機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流機における固定子にコイルと永久磁石とを備えたハイブリッド磁石型直流機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より開発が進められている低消費電力で高トルク小型モータは、自動車、OA機器、自販機、医療・福祉機器分野などで幅広く利用されている。通常、この種の分野に用いられているモータは、永久磁石を用いたモータがほとんどで、技術的にかなり成熟している。このため、飛躍的な高効率化、小型高トルク化は難しい。この小型高トルク化のためにハイブリッド磁石を利用したモータが知られている。
【0003】
本出願人がこのような高効率化、小型高トルク化を追求したハイブリッド磁石型直流モータを提案しており、その一例として図5に示す。詳述すると、直流モータ50の電機子51は、モータ回転軸52に外嵌状態に固定された回転鉄心53と、回転鉄心53に巻回された回転コイル54とを有する。回転鉄心53には、その中央部から放射状に複数個のティース53aが延出形成されている。
【0004】
直流モータ50のヨーク55の内周面には、略円環状の固定子56が固定されている。固定子56は、2つの電磁石57,58と一対の永久磁石59,60とを有するハイブリッド磁石として構成され、前記電機子51の外周面と所定のギャップで対向する状態に配置されている。つまり、固定子56は、図5に示すように、2つの電磁石57,58が電機子51を挟んで対向配置された状態で組付けられている。
【0005】
前記電磁石57,58は固定鉄心61,62と、その鉄心部に巻回された固定コイル63,64とを有している。固定鉄心61,62は断面略半円状の板材からなるポールコア65,66を備える。ポールコア65,66は、前記電機子51のティース53aと所定のギャップで対向配置されている。
【0006】
ポールコア65,66は、周方向両側に長く延出する板状の延出部65a,66aを有する。延出部65a,66aはその周方向両端部で屈曲して径方向外側へ延びている。2つのポールコア65,66の各両端部では、径方向に延びる延出部65a,66aが所定距離を隔して対向する状態にある。
【0007】
2つの永久磁石59,60は、2つのポールコア65,66の各両端部で対峙する一対の延出部65a,66a間にそれぞれ挟持されている。すなわち永久磁石59,60のN極は、N極のポールコア65の延出部65aに当接し、永久磁石59,60のS極は、S極のポールコア66の延出部66aに当接している。永久磁石59,60はN極とS極を結ぶ方向がモータ周方向とほぼ一致する向きに配置されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この構造を有する直流モータでは、更なる高トルク化を図るために永久磁石の磁力を多くするには、ポールコアと対面する永久磁石の側面の面積を大きくする必要がある。つまり、図5において、永久磁石59,60の側面59a,60aのモータ径方向寸法を大きくすることによって永久磁石59,60の側面59a,60aの面積を大きくする必要がある。そのため、ハイブリッド磁石部がモータ径方向において厚くなり、ヨーク部径が大きくなってしまう。これは、直流モータの小型化を図る上の問題点となるとともに、直流モータの製造コストが高くなるという問題点となった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化及びコストアップをすることはなくハイブリッド化の効果アップを図ることができるハイブリッド磁石型直流機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、周面に極歯を有する回転鉄心に回転コイルが巻装され整流装置により常に回転力を生じる磁場を発生させる電機子と、前記回転鉄心に近接対向するポールコアを有する固定鉄心に固定コイルが内空が前記電機子を向くように巻装され、周方向に交互に異極性の磁場を発生させる複数の電磁石、及び複数の電磁石の間にそれぞれ設けられN極の固定鉄心にN極を当接しS極の固定鉄心にS極を当接した複数の永久磁石からなるハイブリッド磁石と、前記永久磁石と磁気離間して配置され前記固定鉄心の突部にて接触する磁気透過性の固定ヨークとを備え、前記ポールコアは、前記電磁石の両端から突出する断面三角形の延出部を有し、該延出部には径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面が形成され、その端面に前記永久磁石を当接させたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド磁石型直流機において、前記永久磁石は、断面三角形に形成された2つの磁気部を備え、当該両磁気部がそれぞれ互いに異磁極が当接するように配置したことを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド磁石型直流機において、前記永久磁石は、断面扇形に形成された2つの磁気部を備え、当該両磁気部が扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、それぞれ互いに異磁極が当接するように配置したことを要旨とする。
【0013】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、永久磁石の磁気が電磁石の磁気の方向と同じになるように永久磁石が固定鉄心と当接して配置されているので、電磁石の磁束+永久磁石の磁束という強力な磁束を得ることができる。また、固定コイルの内空は電機子を向いているので、電磁石の磁気方向を電機子側に向くように固定鉄心を屈曲させるなどの形状をとる必要があまりない。このため、固定鉄心から出る磁束がトルクの発生に無駄なく用いられる。
【0014】
さらに、永久磁石はポールコアの延出部の傾斜端面に当接するように配置した。従って、固定鉄心(つまりポールコア)と永久磁石との接触面積を固定ヨークの直径をあまり大きくすることなく広げることができる。その結果、大型化及びコストアップをすることはなく直流機のハイブリッド化の効果アップを図ることができる。しかも、延出部では電磁石の磁気と永久磁石の磁気が同じ極性で発生するので磁束が強力になり、永久磁石の磁束がヨーク側ではなくポールコアに流れやすくなる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、永久磁石の両磁気部は互いに異磁極がそれぞれ当接するように配置した。従って、永久磁石の両磁気部は互いに引き合うことから、永久磁石はより安定に配置されることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、永久磁石の両磁気部は、磁粉の磁化容易方向にて着磁することができるとともに、永久磁石はより安定に配置されることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化したハイブリッド磁石型の直流モータについて、図1〜図3に基づいて説明する。
【0018】
図1は、直流モータの側断面を示す。ハイブリッド磁石型直流機としての直流モータ1のモータハウジング2は、筒状の固定ヨーク3と、固定ヨーク3の両端に固定された2つのエンドフレーム4,5とからなる。エンドフレーム4,5には各々の中心部に軸受6,7が固設されている。固定ヨーク3とエンドフレーム4,5とで形成される空間にはロータ10が収容されている。ロータ10の回転軸11はエンドフレーム4の貫通孔4aからその先端部を一部突出させた状態で、両軸受6,7により回転可能に支持されている。
【0019】
直流モータ1はブラシ式直流モータであって、ロータ10は、回転軸11上に一体的に固定された電機子(アーマチャ)20と、整流子(コンミテータ)21とを有する。整流子21は、エンドフレーム5側の内部に位置するように配置されている。固定ヨーク3とエンドフレーム5との間を内部で略区画するように配置された略円環状の台板22には2つのブラシホルダ23が支持されている。各ブラシホルダ23に保持された2本のブラシ24は、整流子21を挟む両側から整流子21の外周面に当接している。このブラシ24には配線及びコネクタ(いずれも図示省略)を介して直流電流が給電されるようになっている。なお、整流子21、ブラシホルダ23及びブラシ24により、整流装置が構成される。
【0020】
また固定ヨーク3の内周面には、略円環状の固定子(ステータ)30が固定されている。固定子30は、電機子20の外周面と所定のギャップで対向する状態に配置されている。本実施形態の固定子30は、2つの電磁石31,32と2つの永久磁石33,34とを有するハイブリッド磁石として構成される。電磁石31,32は固定鉄心35,36と、その鉄心部に巻回されたコイル(以下、固定コイルと称す)37,38とを有している。
【0021】
以下、電機子20及び固定子30の構造について詳しく説明する。
図3は、直流モータ1の正断面を示す。同図に示すように、電機子20は、回転軸11に外嵌状態に固定された回転鉄心25と、回転鉄心25に巻回されたコイル(以下、回転コイルと称す)26とを有する。回転鉄心25には、その中央部から放射状にかつ等角度間隔に複数個(本実施形態では10個)の極歯としてのティース25aが延出形成されている。
【0022】
隣り合うティース25a間で形成される空間はスロット25bを構成することになる。コイル26は、ティース25aの軸部に巻回された状態でスロット25b内に収容されている。ティース25aに巻回されたコイル26には、整流子21に当接するブラシ24を介して直流電流が通電される。
【0023】
一方、固定子30は、図3に示すように直流モータ1の軸方向から見たときに、2つの電磁石31が電機子20を挟んで対向配置された状態で組付けられている。各電磁石31の固定鉄心35,36は断面略半円状の板材からなるポールコア39,40を備える。ポールコア39,40は、電機子20のティース25aと所定のギャップで対向配置されている。固定鉄心35,36はポールコア39,40の外周面側背面に径方向に延びるように設けられた突部35a,36aを備えている。そして、固定コイル37,38は、内空(コイル軸心方向)が前記電機子20を向く(つまり、固定コイル37,38の軸心方向が電機子20の略径方向となる)ように固定鉄心35,36の突部35a,36aに巻回されている。また、2つの固定コイル37,38はモータ軸方向から見たときに略半円弧をなす状態に対向配置されている。
【0024】
固定コイル37,38は、配線及びコネクタ(いずれも図示省略)を介して直流電流が給電されるようになっている。直流モータ1を駆動させるためにその駆動用のスイッチがオンされると、電機子20の回転コイル26と、電磁石31,32の固定コイル37,38に直流が給電される。固定コイル37,38の巻回方向は、モータ外周面側から見たときに互いに逆巻きになるように設定されている。このため、固定コイル37,38が励磁された時は、図3において、上側に位置する電磁石31のポールコア39がN極に磁化し、下側に位置する電磁石32のポールコア40がS極に磁化するようになっている。
【0025】
ポールコア39,40は、円弧状に形成され、前記電磁石31,32の両端から突出する延出部39b,39c,40b,40cを有している。ポールコア39の両端延出部39b,39cは、その端部が断面三角形に形成され、径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面39d,39eを有している。また、ポールコア40の両端延出部40b,40cは、その端部が断面三角形に形成され、径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面40d,40eを有している。
【0026】
前記永久磁石33は、断面三角形に形成された2つの磁気部33a,33bを備えている。両磁気部33a,33bは互いに異磁極が当接するように配置されている。本実施形態では、磁気部33aは、コア当接面33cがN極となり、他磁気部当接面33dがS極となっている。また、磁気部33bは、コア当接面33fがS極となり、他磁気部当接面33eがN極となっている。つまり、磁気部33aと磁気部33bは、前記他磁気部当接面33dと前記他磁気部当接面33eが当接することによって一体となり永久磁石33を構成している。
【0027】
また、永久磁石33は、前記磁気部33aのコア当接面33c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の一端延出部39bの端面39dに当接し、その他方の磁気部33bのコア当接面33f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の一端延出部40bの端面40dに当接するように配置されている。
【0028】
同様に、前記永久磁石34は、断面三角形に形成された2つの磁気部34a,34bを備えている。両磁気部34a,34bは互いに異磁極が当接するように配置されている。本実施形態では、磁気部34aは、コア当接面34cがN極となり、他磁気部当接面34dがS極となっている。また、磁気部34bは、コア当接面34fがS極となり、他磁気部当接面34eがN極となっている。つまり、磁気部34aと磁気部34bは、前記他磁気部当接面34dと前記他磁気部当接面34eが当接することによって一体となり永久磁石34を構成している。
【0029】
また、永久磁石34は、前記磁気部34aのコア当接面34c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の他端延出部39cの端面39eに当接し、その他方の磁気部34bのコア当接面34f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の他端延出部40cの端面40eに当接するように配置されている。
【0030】
前記永久磁石33,34の固定ヨーク側外面と、固定ヨーク3の内周面との間には、樹脂製板材からなる絶縁材41,42がそれぞれ介装されている。この絶縁材41,42の介在によって、永久磁石33,34と固定ヨーク3との間は磁気離間し、この間の磁気絶縁を確保している。このような磁気絶縁を確保することで、永久磁石33,34の磁束が、必ず各ティース25aと対向するポールコア39,40を経由するように設定されている。
【0031】
一方、電機子20側の回転コイル26は、回転鉄心25において図3における左側略半分の各ティース25aがN極に磁化され、右側略半分の各ティース25aがS極に磁化されるようにその巻き方向が設定されている。そして直流モータ1の駆動時には、ロータ10は図3における反時計回り方向に回転する。
【0032】
次に、このハイブリッド磁石型の直流モータ1の作用を図2に従って説明する。図2(a)は直流モータ1に電源供給していない状態を示し、図2(b)は直流モータ1の固定コイル37,38に電源供給している状態を示す。
【0033】
直流モータ1に電源供給していない時は、回転コイル26にも固定コイル37,38にも直流電流は流されない。図2(a)に示すように両コイル26,37,38の励磁電流が「0」のときは、永久磁石33,34の磁力線Aは、実線で示すように固定子30内のみを通る閉回路を作る。よって、漏れ磁束を無視すればコギングトルクが「0」になる。この結果、直流モータ1が駆動開始するときのコギングが発生し難くなる。
【0034】
また、直流モータ1の固定コイル37,38に電源供給している時には、固定コイル37,38に直流電流が流される。電機子20側の回転コイル26に流れる電流は、ロータ10の回転に同期して向きが切り換わる。その結果、図2(b)における電機子20において、左側略半分に位置する各ティース25aがN極に磁化され、右側略半分に位置する各ティース25aがS極に磁化される。また固定子30側の固定コイル37,38に流れる直流電流によって、図2(b)における固定子30では、上側のポールコア39がN極に磁化し、下側のポールコア40がS極に磁化する。
【0035】
そして、ロータ10の左側略半分のN極に磁化した各ティース25aは、固定子30の上側略半分に位置するN極のポールコア39から反発力を受けるとともに、固定子30の下側略半分に位置するS極のポールコア40から吸引力を受ける。同様に、ロータ10の右側略半分のS極に磁化した各ティース25aは、固定子30の下側略半分に位置するS極のポールコア40から反発力を受けるとともに、固定子30の上側略半分に位置するN極のポールコア39から吸引力を受ける。このため、ロータ10には図2における反時計回り方向の回転駆動力が作用して、直流モータ1は回転駆動する。
【0036】
この際、図2(b)に示すように、固定コイル37,38が作る磁力線Bは、実線に示すような閉回路となる。このとき永久磁石33,34の磁力線Aは、固定コイル37,38の作る磁力線による引き込み作用によってポールコア39,40からティース25aを経由してロータ10側へ引き込まれて、破線に示すように固定コイル37,38の磁力線Bと同じ方向となる。よって、固定コイル37,38の磁力線Bと永久磁石33,34の磁力線Aとが強め合う増幅作用によって、固定子30と電機子20との間を通る磁力線が増幅される。この結果、直流モータ1は大きな駆動トルクで回転する。
【0037】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、永久磁石33,34は、その磁束が電磁石31,32の磁束と同じ方向になるように固定鉄心35,36と当接して配置されているので、電磁石31,32の磁束+永久磁石の磁束という強力な磁束を得ることができる。
【0038】
(2)本実施形態では、永久磁石33,34の両磁気部33a,33b,34a,34bは、ポールコア39,40の延出部39b,39c,40b,40cに対し、そのN極面がN極側の延出部39b,39cの端面39d,39eに、S極面がS極側の延出部40b,40cの端面40d,40eに当接している。従って、延出部39b,39c,40b,40cでは電磁石31,32の磁気と永久磁石33,34の両磁気部33a,33b,34a,34bの磁気が同じ極性で発生するので磁束が強力になり、しかも、永久磁石33,34の磁束が固定ヨーク3側ではなくポールコア39,40に流れやすくなる。
【0039】
また、この構成により、固定鉄心35,36(つまりポールコア39,40)と永久磁石33,34との接触面積は、延出部39b,39c,40b,40cの端面39d,39e,40d,40eの長さを長くすることによって大きくすることができる。その結果、固定鉄心35,36(つまりポールコア39,40)と永久磁石33,34との接触面積を固定ヨーク3の直径をあまり大きくすることなく広げることができる。その結果、直流モータ1の大型化及びコストアップをすることはなくハイブリッド化の効果アップを図ることができる。
【0040】
(3)本実施形態では、固定コイル37,38の内空(コイル軸心方向)は電機子20を向いているので、電磁石31,32の磁気の方向を電機子20側に向くように固定鉄心35,36を屈曲させるなどの形状をとる必要があまりない。このため、固定鉄心35,36から出る磁束がトルクの発生に無駄なく用いられる。
【0041】
(4)本実施形態では、永久磁石33の両磁気部33a,33bは互いに異磁極がそれぞれ当接するように配置し、永久磁石34の両磁気部34a,34bは互いに異磁極がそれぞれ当接するように配置した。従って、永久磁石33の磁気部33aと磁気部33b、及び永久磁石34の磁気部34aと磁気部34bはそれぞれ互いに引き合うことから、永久磁石33,34はより安定に配置されることができる。
【0042】
なお、実施の形態は、上記に限定されず以下の態様でも実施できる。
○ハイブリッド磁石型直流機は、インナーロータ式に限定されない。アウターロータ式で構成することもできる。
【0043】
○ティースの形状や数は、適宜変更できる。
○2つの永久磁石を次のように形成してもよい。詳述すると、図4に示すように、永久磁石43は、断面扇形状に形成された2つの磁気部43a,43bを備えている。両磁気部43a,43bは、扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、互いに異磁極が当接するように配置されている。この場合、磁気部43aは、コア当接面43cがN極となり、他磁気部当接面43dがS極となっている。また、磁気部43bは、コア当接面43fがS極となり、他磁気部当接面43eがN極となっている。つまり、磁気部43aは他磁気部当接面43dからコア当接面43cに向かって湾曲した磁気配向をし、磁気部43bは他磁気部当接面43dからコア当接面43cに向かって湾曲した磁気配向をしている。また、磁気部43aと磁気部43bは、前記他磁気部当接面43dと前記他磁気部当接面43eが当接することによって一体となり永久磁石43を構成している。さらに、永久磁石43は、前記磁気部43aのコア当接面43c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の一端延出部39bの端面39dに当接し、その他方の磁気部43bのコア当接面43f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の一端延出部40bの端面40dに当接するように配置されている。
【0044】
同様に、永久磁石44は、断面扇形状に形成された2つの磁気部44a,44bを備えている。両磁気部44a,44bは、扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、互いに異磁極が当接するように配置されている。この場合、磁気部44aは、コア当接面44cがN極となり、他磁気部当接面44dがS極となっている。また、磁気部44bは、コア当接面44fがS極となり、他磁気部当接面44eがN極となっている。つまり、磁気部44aは他磁気部当接面44dからコア当接面44cに向かって湾曲した磁気配向をし、磁気部44bは他磁気部当接面44dからコア当接面44cに向かって湾曲した磁気配向をしている。また、磁気部44aと磁気部44bは、前記他磁気部当接面44dと前記他磁気部当接面44eが当接することによって一体となり永久磁石44を構成している。さらに、永久磁石44は、前記磁気部44aのコア当接面44c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の他端延出部39cの端面39eに当接し、その他方の磁気部44bのコア当接面44f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の他端延出部40cの端面40eに当接するように配置されている。
【0045】
この構成によれば、上記実施形態の効果に加えて、永久磁石43,44は、磁粉の磁化容易方向にて着磁することができる。
○固定子側の電磁石は2個に限定されない。つまり固定子側(ポールコア)の磁極は、周方向にN極とS極を交互に配置できるのであれば足り、この限りにおいて電磁石は偶数個であればよい。例えば固定子側に4個の電磁石を周方向に配列する構造を採ることもできる。もちろん電磁石を6個以上の複数個とすることもできる。
【0046】
前記実施形態及び別例(各図面を含む)から把握される技術的思想を、以下に記載する。
(1) 請求項1〜3の技術的思想のいずれかにおいて、前記固定鉄心(35,36)は、前記電機子(20)の極歯(25a)と対向する円弧面を有するとともに磁極となるポールコア(39,40)を備える。
【0047】
(2)前記(1)の技術的思想において、前記ポールコア(39,40)は周方向に複数の極歯(25a)と一度に対向するだけの長さを有する。
(3)請求項1〜3及び前記(1)(2)の技術的思想のいずれかにおいて、前記固定鉄心(35,36)には、前記ポールコア(39,40)の外周面側背面に突部(35a,36a)が設けられており、前記固定コイル(37,38)は該突部(35a,36a)に巻回されている。
【0048】
(4)請求項1〜3及び前記(1)〜(3)の技術的思想のいずれかにおいて、前記電磁石(31,32)は2つである。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜3に記載の発明によれば、大型化及びコストアップをすることはなく直流機のハイブリッド化の効果アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のハイブリッド磁石型直流機の側断面図。
【図2】本実施形態のハイブリッド磁石型直流機の作用を説明する断面図。
【図3】本実施形態の直流機の正断面図。
【図4】別例の直流機の正断面図。
【図5】従来のハイブリッド磁石型直流機の正断面図。
【符号の説明】
1…ハイブリッド磁石型直流機としての直流モータ、3…固定ヨーク、20…電機子、25…回転鉄心、25a…極歯としてのティース、26…回転コイル、30…固定子(ステータ)、31,32…固定子を構成する電磁石、33,34,43,44…永久磁石、33a,33b…永久磁石33を構成する両磁気部、34a,34b…永久磁石34を構成する両磁気部、35,36…固定鉄心、35a,36a…固定鉄心を構成する突部、37,38…固定コイル、39,40…ポールコア、39b,39c,40b,40c…ポールコアの延出部、39d,39e,40d,40e…ポールコア延出部の端面、43a,43b…永久磁石43を構成する両磁気部、44a,44b…永久磁石44を構成する両磁気部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流機における固定子にコイルと永久磁石とを備えたハイブリッド磁石型直流機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より開発が進められている低消費電力で高トルク小型モータは、自動車、OA機器、自販機、医療・福祉機器分野などで幅広く利用されている。通常、この種の分野に用いられているモータは、永久磁石を用いたモータがほとんどで、技術的にかなり成熟している。このため、飛躍的な高効率化、小型高トルク化は難しい。この小型高トルク化のためにハイブリッド磁石を利用したモータが知られている。
【0003】
本出願人がこのような高効率化、小型高トルク化を追求したハイブリッド磁石型直流モータを提案しており、その一例として図5に示す。詳述すると、直流モータ50の電機子51は、モータ回転軸52に外嵌状態に固定された回転鉄心53と、回転鉄心53に巻回された回転コイル54とを有する。回転鉄心53には、その中央部から放射状に複数個のティース53aが延出形成されている。
【0004】
直流モータ50のヨーク55の内周面には、略円環状の固定子56が固定されている。固定子56は、2つの電磁石57,58と一対の永久磁石59,60とを有するハイブリッド磁石として構成され、前記電機子51の外周面と所定のギャップで対向する状態に配置されている。つまり、固定子56は、図5に示すように、2つの電磁石57,58が電機子51を挟んで対向配置された状態で組付けられている。
【0005】
前記電磁石57,58は固定鉄心61,62と、その鉄心部に巻回された固定コイル63,64とを有している。固定鉄心61,62は断面略半円状の板材からなるポールコア65,66を備える。ポールコア65,66は、前記電機子51のティース53aと所定のギャップで対向配置されている。
【0006】
ポールコア65,66は、周方向両側に長く延出する板状の延出部65a,66aを有する。延出部65a,66aはその周方向両端部で屈曲して径方向外側へ延びている。2つのポールコア65,66の各両端部では、径方向に延びる延出部65a,66aが所定距離を隔して対向する状態にある。
【0007】
2つの永久磁石59,60は、2つのポールコア65,66の各両端部で対峙する一対の延出部65a,66a間にそれぞれ挟持されている。すなわち永久磁石59,60のN極は、N極のポールコア65の延出部65aに当接し、永久磁石59,60のS極は、S極のポールコア66の延出部66aに当接している。永久磁石59,60はN極とS極を結ぶ方向がモータ周方向とほぼ一致する向きに配置されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この構造を有する直流モータでは、更なる高トルク化を図るために永久磁石の磁力を多くするには、ポールコアと対面する永久磁石の側面の面積を大きくする必要がある。つまり、図5において、永久磁石59,60の側面59a,60aのモータ径方向寸法を大きくすることによって永久磁石59,60の側面59a,60aの面積を大きくする必要がある。そのため、ハイブリッド磁石部がモータ径方向において厚くなり、ヨーク部径が大きくなってしまう。これは、直流モータの小型化を図る上の問題点となるとともに、直流モータの製造コストが高くなるという問題点となった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化及びコストアップをすることはなくハイブリッド化の効果アップを図ることができるハイブリッド磁石型直流機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、周面に極歯を有する回転鉄心に回転コイルが巻装され整流装置により常に回転力を生じる磁場を発生させる電機子と、前記回転鉄心に近接対向するポールコアを有する固定鉄心に固定コイルが内空が前記電機子を向くように巻装され、周方向に交互に異極性の磁場を発生させる複数の電磁石、及び複数の電磁石の間にそれぞれ設けられN極の固定鉄心にN極を当接しS極の固定鉄心にS極を当接した複数の永久磁石からなるハイブリッド磁石と、前記永久磁石と磁気離間して配置され前記固定鉄心の突部にて接触する磁気透過性の固定ヨークとを備え、前記ポールコアは、前記電磁石の両端から突出する断面三角形の延出部を有し、該延出部には径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面が形成され、その端面に前記永久磁石を当接させたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド磁石型直流機において、前記永久磁石は、断面三角形に形成された2つの磁気部を備え、当該両磁気部がそれぞれ互いに異磁極が当接するように配置したことを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド磁石型直流機において、前記永久磁石は、断面扇形に形成された2つの磁気部を備え、当該両磁気部が扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、それぞれ互いに異磁極が当接するように配置したことを要旨とする。
【0013】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、永久磁石の磁気が電磁石の磁気の方向と同じになるように永久磁石が固定鉄心と当接して配置されているので、電磁石の磁束+永久磁石の磁束という強力な磁束を得ることができる。また、固定コイルの内空は電機子を向いているので、電磁石の磁気方向を電機子側に向くように固定鉄心を屈曲させるなどの形状をとる必要があまりない。このため、固定鉄心から出る磁束がトルクの発生に無駄なく用いられる。
【0014】
さらに、永久磁石はポールコアの延出部の傾斜端面に当接するように配置した。従って、固定鉄心(つまりポールコア)と永久磁石との接触面積を固定ヨークの直径をあまり大きくすることなく広げることができる。その結果、大型化及びコストアップをすることはなく直流機のハイブリッド化の効果アップを図ることができる。しかも、延出部では電磁石の磁気と永久磁石の磁気が同じ極性で発生するので磁束が強力になり、永久磁石の磁束がヨーク側ではなくポールコアに流れやすくなる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、永久磁石の両磁気部は互いに異磁極がそれぞれ当接するように配置した。従って、永久磁石の両磁気部は互いに引き合うことから、永久磁石はより安定に配置されることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、永久磁石の両磁気部は、磁粉の磁化容易方向にて着磁することができるとともに、永久磁石はより安定に配置されることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化したハイブリッド磁石型の直流モータについて、図1〜図3に基づいて説明する。
【0018】
図1は、直流モータの側断面を示す。ハイブリッド磁石型直流機としての直流モータ1のモータハウジング2は、筒状の固定ヨーク3と、固定ヨーク3の両端に固定された2つのエンドフレーム4,5とからなる。エンドフレーム4,5には各々の中心部に軸受6,7が固設されている。固定ヨーク3とエンドフレーム4,5とで形成される空間にはロータ10が収容されている。ロータ10の回転軸11はエンドフレーム4の貫通孔4aからその先端部を一部突出させた状態で、両軸受6,7により回転可能に支持されている。
【0019】
直流モータ1はブラシ式直流モータであって、ロータ10は、回転軸11上に一体的に固定された電機子(アーマチャ)20と、整流子(コンミテータ)21とを有する。整流子21は、エンドフレーム5側の内部に位置するように配置されている。固定ヨーク3とエンドフレーム5との間を内部で略区画するように配置された略円環状の台板22には2つのブラシホルダ23が支持されている。各ブラシホルダ23に保持された2本のブラシ24は、整流子21を挟む両側から整流子21の外周面に当接している。このブラシ24には配線及びコネクタ(いずれも図示省略)を介して直流電流が給電されるようになっている。なお、整流子21、ブラシホルダ23及びブラシ24により、整流装置が構成される。
【0020】
また固定ヨーク3の内周面には、略円環状の固定子(ステータ)30が固定されている。固定子30は、電機子20の外周面と所定のギャップで対向する状態に配置されている。本実施形態の固定子30は、2つの電磁石31,32と2つの永久磁石33,34とを有するハイブリッド磁石として構成される。電磁石31,32は固定鉄心35,36と、その鉄心部に巻回されたコイル(以下、固定コイルと称す)37,38とを有している。
【0021】
以下、電機子20及び固定子30の構造について詳しく説明する。
図3は、直流モータ1の正断面を示す。同図に示すように、電機子20は、回転軸11に外嵌状態に固定された回転鉄心25と、回転鉄心25に巻回されたコイル(以下、回転コイルと称す)26とを有する。回転鉄心25には、その中央部から放射状にかつ等角度間隔に複数個(本実施形態では10個)の極歯としてのティース25aが延出形成されている。
【0022】
隣り合うティース25a間で形成される空間はスロット25bを構成することになる。コイル26は、ティース25aの軸部に巻回された状態でスロット25b内に収容されている。ティース25aに巻回されたコイル26には、整流子21に当接するブラシ24を介して直流電流が通電される。
【0023】
一方、固定子30は、図3に示すように直流モータ1の軸方向から見たときに、2つの電磁石31が電機子20を挟んで対向配置された状態で組付けられている。各電磁石31の固定鉄心35,36は断面略半円状の板材からなるポールコア39,40を備える。ポールコア39,40は、電機子20のティース25aと所定のギャップで対向配置されている。固定鉄心35,36はポールコア39,40の外周面側背面に径方向に延びるように設けられた突部35a,36aを備えている。そして、固定コイル37,38は、内空(コイル軸心方向)が前記電機子20を向く(つまり、固定コイル37,38の軸心方向が電機子20の略径方向となる)ように固定鉄心35,36の突部35a,36aに巻回されている。また、2つの固定コイル37,38はモータ軸方向から見たときに略半円弧をなす状態に対向配置されている。
【0024】
固定コイル37,38は、配線及びコネクタ(いずれも図示省略)を介して直流電流が給電されるようになっている。直流モータ1を駆動させるためにその駆動用のスイッチがオンされると、電機子20の回転コイル26と、電磁石31,32の固定コイル37,38に直流が給電される。固定コイル37,38の巻回方向は、モータ外周面側から見たときに互いに逆巻きになるように設定されている。このため、固定コイル37,38が励磁された時は、図3において、上側に位置する電磁石31のポールコア39がN極に磁化し、下側に位置する電磁石32のポールコア40がS極に磁化するようになっている。
【0025】
ポールコア39,40は、円弧状に形成され、前記電磁石31,32の両端から突出する延出部39b,39c,40b,40cを有している。ポールコア39の両端延出部39b,39cは、その端部が断面三角形に形成され、径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面39d,39eを有している。また、ポールコア40の両端延出部40b,40cは、その端部が断面三角形に形成され、径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面40d,40eを有している。
【0026】
前記永久磁石33は、断面三角形に形成された2つの磁気部33a,33bを備えている。両磁気部33a,33bは互いに異磁極が当接するように配置されている。本実施形態では、磁気部33aは、コア当接面33cがN極となり、他磁気部当接面33dがS極となっている。また、磁気部33bは、コア当接面33fがS極となり、他磁気部当接面33eがN極となっている。つまり、磁気部33aと磁気部33bは、前記他磁気部当接面33dと前記他磁気部当接面33eが当接することによって一体となり永久磁石33を構成している。
【0027】
また、永久磁石33は、前記磁気部33aのコア当接面33c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の一端延出部39bの端面39dに当接し、その他方の磁気部33bのコア当接面33f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の一端延出部40bの端面40dに当接するように配置されている。
【0028】
同様に、前記永久磁石34は、断面三角形に形成された2つの磁気部34a,34bを備えている。両磁気部34a,34bは互いに異磁極が当接するように配置されている。本実施形態では、磁気部34aは、コア当接面34cがN極となり、他磁気部当接面34dがS極となっている。また、磁気部34bは、コア当接面34fがS極となり、他磁気部当接面34eがN極となっている。つまり、磁気部34aと磁気部34bは、前記他磁気部当接面34dと前記他磁気部当接面34eが当接することによって一体となり永久磁石34を構成している。
【0029】
また、永久磁石34は、前記磁気部34aのコア当接面34c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の他端延出部39cの端面39eに当接し、その他方の磁気部34bのコア当接面34f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の他端延出部40cの端面40eに当接するように配置されている。
【0030】
前記永久磁石33,34の固定ヨーク側外面と、固定ヨーク3の内周面との間には、樹脂製板材からなる絶縁材41,42がそれぞれ介装されている。この絶縁材41,42の介在によって、永久磁石33,34と固定ヨーク3との間は磁気離間し、この間の磁気絶縁を確保している。このような磁気絶縁を確保することで、永久磁石33,34の磁束が、必ず各ティース25aと対向するポールコア39,40を経由するように設定されている。
【0031】
一方、電機子20側の回転コイル26は、回転鉄心25において図3における左側略半分の各ティース25aがN極に磁化され、右側略半分の各ティース25aがS極に磁化されるようにその巻き方向が設定されている。そして直流モータ1の駆動時には、ロータ10は図3における反時計回り方向に回転する。
【0032】
次に、このハイブリッド磁石型の直流モータ1の作用を図2に従って説明する。図2(a)は直流モータ1に電源供給していない状態を示し、図2(b)は直流モータ1の固定コイル37,38に電源供給している状態を示す。
【0033】
直流モータ1に電源供給していない時は、回転コイル26にも固定コイル37,38にも直流電流は流されない。図2(a)に示すように両コイル26,37,38の励磁電流が「0」のときは、永久磁石33,34の磁力線Aは、実線で示すように固定子30内のみを通る閉回路を作る。よって、漏れ磁束を無視すればコギングトルクが「0」になる。この結果、直流モータ1が駆動開始するときのコギングが発生し難くなる。
【0034】
また、直流モータ1の固定コイル37,38に電源供給している時には、固定コイル37,38に直流電流が流される。電機子20側の回転コイル26に流れる電流は、ロータ10の回転に同期して向きが切り換わる。その結果、図2(b)における電機子20において、左側略半分に位置する各ティース25aがN極に磁化され、右側略半分に位置する各ティース25aがS極に磁化される。また固定子30側の固定コイル37,38に流れる直流電流によって、図2(b)における固定子30では、上側のポールコア39がN極に磁化し、下側のポールコア40がS極に磁化する。
【0035】
そして、ロータ10の左側略半分のN極に磁化した各ティース25aは、固定子30の上側略半分に位置するN極のポールコア39から反発力を受けるとともに、固定子30の下側略半分に位置するS極のポールコア40から吸引力を受ける。同様に、ロータ10の右側略半分のS極に磁化した各ティース25aは、固定子30の下側略半分に位置するS極のポールコア40から反発力を受けるとともに、固定子30の上側略半分に位置するN極のポールコア39から吸引力を受ける。このため、ロータ10には図2における反時計回り方向の回転駆動力が作用して、直流モータ1は回転駆動する。
【0036】
この際、図2(b)に示すように、固定コイル37,38が作る磁力線Bは、実線に示すような閉回路となる。このとき永久磁石33,34の磁力線Aは、固定コイル37,38の作る磁力線による引き込み作用によってポールコア39,40からティース25aを経由してロータ10側へ引き込まれて、破線に示すように固定コイル37,38の磁力線Bと同じ方向となる。よって、固定コイル37,38の磁力線Bと永久磁石33,34の磁力線Aとが強め合う増幅作用によって、固定子30と電機子20との間を通る磁力線が増幅される。この結果、直流モータ1は大きな駆動トルクで回転する。
【0037】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、永久磁石33,34は、その磁束が電磁石31,32の磁束と同じ方向になるように固定鉄心35,36と当接して配置されているので、電磁石31,32の磁束+永久磁石の磁束という強力な磁束を得ることができる。
【0038】
(2)本実施形態では、永久磁石33,34の両磁気部33a,33b,34a,34bは、ポールコア39,40の延出部39b,39c,40b,40cに対し、そのN極面がN極側の延出部39b,39cの端面39d,39eに、S極面がS極側の延出部40b,40cの端面40d,40eに当接している。従って、延出部39b,39c,40b,40cでは電磁石31,32の磁気と永久磁石33,34の両磁気部33a,33b,34a,34bの磁気が同じ極性で発生するので磁束が強力になり、しかも、永久磁石33,34の磁束が固定ヨーク3側ではなくポールコア39,40に流れやすくなる。
【0039】
また、この構成により、固定鉄心35,36(つまりポールコア39,40)と永久磁石33,34との接触面積は、延出部39b,39c,40b,40cの端面39d,39e,40d,40eの長さを長くすることによって大きくすることができる。その結果、固定鉄心35,36(つまりポールコア39,40)と永久磁石33,34との接触面積を固定ヨーク3の直径をあまり大きくすることなく広げることができる。その結果、直流モータ1の大型化及びコストアップをすることはなくハイブリッド化の効果アップを図ることができる。
【0040】
(3)本実施形態では、固定コイル37,38の内空(コイル軸心方向)は電機子20を向いているので、電磁石31,32の磁気の方向を電機子20側に向くように固定鉄心35,36を屈曲させるなどの形状をとる必要があまりない。このため、固定鉄心35,36から出る磁束がトルクの発生に無駄なく用いられる。
【0041】
(4)本実施形態では、永久磁石33の両磁気部33a,33bは互いに異磁極がそれぞれ当接するように配置し、永久磁石34の両磁気部34a,34bは互いに異磁極がそれぞれ当接するように配置した。従って、永久磁石33の磁気部33aと磁気部33b、及び永久磁石34の磁気部34aと磁気部34bはそれぞれ互いに引き合うことから、永久磁石33,34はより安定に配置されることができる。
【0042】
なお、実施の形態は、上記に限定されず以下の態様でも実施できる。
○ハイブリッド磁石型直流機は、インナーロータ式に限定されない。アウターロータ式で構成することもできる。
【0043】
○ティースの形状や数は、適宜変更できる。
○2つの永久磁石を次のように形成してもよい。詳述すると、図4に示すように、永久磁石43は、断面扇形状に形成された2つの磁気部43a,43bを備えている。両磁気部43a,43bは、扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、互いに異磁極が当接するように配置されている。この場合、磁気部43aは、コア当接面43cがN極となり、他磁気部当接面43dがS極となっている。また、磁気部43bは、コア当接面43fがS極となり、他磁気部当接面43eがN極となっている。つまり、磁気部43aは他磁気部当接面43dからコア当接面43cに向かって湾曲した磁気配向をし、磁気部43bは他磁気部当接面43dからコア当接面43cに向かって湾曲した磁気配向をしている。また、磁気部43aと磁気部43bは、前記他磁気部当接面43dと前記他磁気部当接面43eが当接することによって一体となり永久磁石43を構成している。さらに、永久磁石43は、前記磁気部43aのコア当接面43c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の一端延出部39bの端面39dに当接し、その他方の磁気部43bのコア当接面43f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の一端延出部40bの端面40dに当接するように配置されている。
【0044】
同様に、永久磁石44は、断面扇形状に形成された2つの磁気部44a,44bを備えている。両磁気部44a,44bは、扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、互いに異磁極が当接するように配置されている。この場合、磁気部44aは、コア当接面44cがN極となり、他磁気部当接面44dがS極となっている。また、磁気部44bは、コア当接面44fがS極となり、他磁気部当接面44eがN極となっている。つまり、磁気部44aは他磁気部当接面44dからコア当接面44cに向かって湾曲した磁気配向をし、磁気部44bは他磁気部当接面44dからコア当接面44cに向かって湾曲した磁気配向をしている。また、磁気部44aと磁気部44bは、前記他磁気部当接面44dと前記他磁気部当接面44eが当接することによって一体となり永久磁石44を構成している。さらに、永久磁石44は、前記磁気部44aのコア当接面44c(N極)がN極に磁化される前記ポールコア39の他端延出部39cの端面39eに当接し、その他方の磁気部44bのコア当接面44f(S極)がS極に磁化される前記ポールコア40の他端延出部40cの端面40eに当接するように配置されている。
【0045】
この構成によれば、上記実施形態の効果に加えて、永久磁石43,44は、磁粉の磁化容易方向にて着磁することができる。
○固定子側の電磁石は2個に限定されない。つまり固定子側(ポールコア)の磁極は、周方向にN極とS極を交互に配置できるのであれば足り、この限りにおいて電磁石は偶数個であればよい。例えば固定子側に4個の電磁石を周方向に配列する構造を採ることもできる。もちろん電磁石を6個以上の複数個とすることもできる。
【0046】
前記実施形態及び別例(各図面を含む)から把握される技術的思想を、以下に記載する。
(1) 請求項1〜3の技術的思想のいずれかにおいて、前記固定鉄心(35,36)は、前記電機子(20)の極歯(25a)と対向する円弧面を有するとともに磁極となるポールコア(39,40)を備える。
【0047】
(2)前記(1)の技術的思想において、前記ポールコア(39,40)は周方向に複数の極歯(25a)と一度に対向するだけの長さを有する。
(3)請求項1〜3及び前記(1)(2)の技術的思想のいずれかにおいて、前記固定鉄心(35,36)には、前記ポールコア(39,40)の外周面側背面に突部(35a,36a)が設けられており、前記固定コイル(37,38)は該突部(35a,36a)に巻回されている。
【0048】
(4)請求項1〜3及び前記(1)〜(3)の技術的思想のいずれかにおいて、前記電磁石(31,32)は2つである。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜3に記載の発明によれば、大型化及びコストアップをすることはなく直流機のハイブリッド化の効果アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のハイブリッド磁石型直流機の側断面図。
【図2】本実施形態のハイブリッド磁石型直流機の作用を説明する断面図。
【図3】本実施形態の直流機の正断面図。
【図4】別例の直流機の正断面図。
【図5】従来のハイブリッド磁石型直流機の正断面図。
【符号の説明】
1…ハイブリッド磁石型直流機としての直流モータ、3…固定ヨーク、20…電機子、25…回転鉄心、25a…極歯としてのティース、26…回転コイル、30…固定子(ステータ)、31,32…固定子を構成する電磁石、33,34,43,44…永久磁石、33a,33b…永久磁石33を構成する両磁気部、34a,34b…永久磁石34を構成する両磁気部、35,36…固定鉄心、35a,36a…固定鉄心を構成する突部、37,38…固定コイル、39,40…ポールコア、39b,39c,40b,40c…ポールコアの延出部、39d,39e,40d,40e…ポールコア延出部の端面、43a,43b…永久磁石43を構成する両磁気部、44a,44b…永久磁石44を構成する両磁気部。
Claims (3)
- 周面に極歯(25a)を有する回転鉄心(25)に回転コイル(26)が巻装され整流装置(21,24)により常に回転力を生じる磁場を発生させる電機子(20)と、
前記回転鉄心(25)に近接対向するポールコア(39,40)を有する固定鉄心(35,36)に固定コイル(37,38)が内空が前記電機子(20)を向くように巻装され、周方向に交互に異極性の磁場を発生させる複数の電磁石(31,32)、及び複数の電磁石(31,32)の間にそれぞれ設けられN極の固定鉄心(35)にN極を当接しS極の固定鉄心(36)にS極を当接した複数の永久磁石(33,34,43,44)からなるハイブリッド磁石(30)と、前記永久磁石(33,34,43,44)と磁気離間して配置され前記固定鉄心(35,36)の突部(35a,36a)にて接触する磁気透過性の固定ヨーク(3)と
を備え、
前記ポールコア(39,40)は、前記電磁石(31,32)の両端から突出する断面三角形の延出部(39b,39c,40b,40c)を有し、該延出部(39b,39c,40b,40c)には径方向及び周方向に対して共に傾斜し径方向外側に面した端面(39d,39e,40d,40e)が形成され、その端面(39d,39e,40d,40e)に前記永久磁石(33,34,43,44)を当接させたことを特徴とするハイブリッド磁石型直流機。 - 請求項1に記載のハイブリッド磁石型直流機において、
前記永久磁石(33,34)は、断面三角形に形成された2つの磁気部(33a,33b,34a,34b)を備え、当該両磁気部(33a,33b,34a,34b)がそれぞれ互いに異磁極が当接するように配置したことを特徴とするハイブリッド磁石型直流機。 - 請求項1に記載のハイブリッド磁石型直流機において、
前記永久磁石(43,44)は、断面扇形に形成された2つの磁気部(43a,43b,44a,44b)を備え、当該両磁気部(43a,43b,44a,44b)が扇形周方向に湾曲した磁気配向を有し、それぞれ互いに異磁極が当接するように配置したことを特徴とするハイブリッド磁石型直流機。
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