JP3739926B2 - 光電子増倍管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電子増倍管に係り、特に、複数のセグメントに分割したへッドオン型の光電子増倍管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような分野の技術として、特開昭63−91950号公報、特公昭58−41617号公報、特開平7−192686号公報、特公平5−59539号公報又は特開昭63−261664号公報がある。これら公報に記載された光電子増倍管は、光入射窓と電子増倍体との間に仕切板を有し、仕切板によって複数のセグメントに分割している。このようなマルチセグメント形式の光電子増倍管は、各セグメント毎に増倍部を配置させ、X線やガンマ線など放射線源の位置を高精度で割り出すためのものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の光電子増倍管は、上述したように構成されているため、次のような課題が存在していた。
【0004】
すなわち、従来の光電子増倍管は、仕切板により、電子収束空間を各セグメント毎に完全に仕切るように構成され、光電子増倍管の内部で複数のセグメント毎に収束電極部を必要としていた。従って、構造が複雑になると共に、組立て工数も増え、コストアップを招来するといった問題点があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、特に、構造が簡単で、部品点数が少なく組立て易い光電子増倍管を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明の光電子増倍管は、光電面を内側にもった光入射窓と電子増倍体との間の電子収束空間内に仕切板を配置させ、仕切板により電子収束空間を複数に分割して複数のセグメントを構成し、各セグメント毎に増倍部をもった光電子増倍管において、仕切板の下方に設けられ、電子収束空間において、隣接するセグメント間を連通させる開口部と、電子増倍体に固定させた固定電極板と、仕切板と固定電極板との間に架け渡された脚部と、電子増倍体に固定させて、固定電極板と仕切板との間に配置させた収束電極板と、収束電極板に設けられて、脚部を非接触状態で貫通させる脚挿入部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この光電子増倍管において、仕切板は、光入射窓に形成した光電面と同電位である必要があり、これに対して、収束電極板は、光電面から放出される電子を各増倍部内に収束させながら入射させるために、光電面の電圧より高い電位を必要とする。その結果、収束電極板上に仕切板を隣接配置させるにあたって、収束電極板と仕切板とを電気的に非接触状態にしておくことが必要である。そこで、収束電極板上の電子収束空間内に仕切板を配置させる場合、仕切板に脚部を設け、収束電極板に設けた脚挿入部内に脚部を非接触状態で挿入することにより、収束電極板と仕切板との非接触状態を確保する。また、電子増倍体に固定した固定電極板に脚部を固定させることにより、仕切板を、電子収束空間内で確実に固定させる。このような構成を採用すると、収束電極板をセグメント毎に個別的に設けることが必要なく、組立て易い光電子増倍管が可能になる。更に、仕切板と収束電極板との間に開口部を積極的に設けることで、光電子増倍管を組み立てる際の光電面形成工程で必要な光電面形成用の蒸着源(例えば、アンチモンビーズやマンガンビーズ等)を、この開口部に配置させることができ、セグメント毎に蒸着源を配置せずとも、必要最小限の蒸着源を電子収束空間内に配置させるだけで、光電面形成用の蒸気に拡散効果に基づいて、光電面を均一に形成することが可能になる。
【0008】
請求項2記載の光電子増倍管において、脚挿入部は、スリット又は穴部であると好ましい。このような構成を採用した場合、脚部を介在させた固定電極板と仕切板との非接触状態を簡単かつ確実に達成することができる。
【0009】
請求項3記載の光電子増倍管において、仕切板の開口部内で、仕切板の真下に光電面形成用の蒸着源を配置すると好ましい。このような構成を採用した場合、光電面形成用の蒸着源から発生する蒸気が仕切板に邪魔されることなく光電面まで均一に達することになり、均質な光電面の形成に寄与する。
【0010】
請求項4記載の光電子増倍管において、仕切板の交差部分には、蒸着源のうちのアンチモンビースを配置すると好ましい。このような構成は、均質な光電面を形成する上で極めて好ましい態様である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による光電子増倍管の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る光電子増倍管の断面図である。同図に示す光電子増倍管1は、四角柱状をなす中空な透明ガラス製のバルブ2を有し、このバルブ2の一端には、ガラス製の光入射窓3が融着固定され、バルブ2の他端には、ステムピン4を環状に固定したガラス製のステム5が融着固定されている。そして、バルブ2と光入射窓3とステム5とで真空容器6を構成している。
【0013】
図1及び図2に示すように、真空容器6内には電子増倍体7が配置され、電子増倍体7の上端には収束電極板8が固定され、この収束電極板8と光入射窓3との間には、電子収束空間S(図4参照)が設けられている。この電子収束空間Sは、光入射窓3から放出した電子を収束電極板8の作用によって収束させながら電子増倍体7内に確実に入射させるための空間である。この電子収束空間Sには十文字状の仕切板9が配置され、この仕切板9によって、電子収束空間S内を4つのセグメントに分割している。そして、この仕切板9により、光入射窓3の内側に形成した光電面10を4分割し、それに対応して、電子増倍体7内に4つの増倍部11を設けている。更に、各増倍部11は、配線12を介してステムピン4に電気的に接続され、それぞれの配線12を各ステムピン4から立ち上げて、配線12に電子増倍体7を固定させることで、電子増倍体7は、真空容器6内での所定の位置に保持されることになる。
【0014】
このような光電子増倍管1の各部品について更に詳述すると、図3に示すように、電子増倍体7は、4枚の側板13で各ダイノードDを挟み付けることで、4つの増倍部11を構成し、各増倍部11で複数段の電子増倍機能を達成させる。また、収束電極板8において、略正方形状の平板をなす収束電極板本体14Aの外周には、一枚の薄板を折曲げ加工又はプレス加工することで作り出される立上げ縁部14が設けられている。更に、収束電極板本体14Aには、各増倍部11に対応して電子入射窓15が4個設けられている。そして、電子増倍体7に対する収束電極板8の組付け固定は、電子増倍体7の側板13の先端に設けた突片16を、収束電極板8に設けた差し込み口17内に挿入させ、突片16の下端に設けた差し込み用切欠き18内にクサビ片19を打ち込むことにより達成させる。
【0015】
光入射窓3の内側は、各セグメントに対応させるように光電面10を4分割して、4個の光電面部分4aを作り出し、各光電面部分4aは凹レンズ形状になっている。これに対して、仕切板9は、略同一形状をなす仕切片9Aと仕切板9Bとを直交させるように、スリット部K(図4参照)を介して嵌合させることで、十文字に形成され、4個の光電面部分4aを仕切るように配置される。また、各仕切片9A,9Bの頂部は、光電面10における各光電面部分4aを仕切る十文字形状の境界線L(図3参照)に対応して湾曲させている。
【0016】
また、各仕切片9A,9Bの両端には、脚部20がそれぞれ一体に形成され、十文字状の仕切板9に4本の脚部20を設けている。そして、各脚部20によって、仕切板9と収束電極板8とを離間させ、そこに開口部Pを形成している(図1参照)。
【0017】
また、仕切板9と収束電極板8との電気的な導通は回避させている。具体的に、図3〜図5に示すように、収束電極板8には、脚部20を貫通させる脚挿入部としてのスリット21が切り込み形成されている。また、脚部20は、収束電極板8と電気的に非接触状態である必要性から、スリット21は、脚部20に触れない切り込み幅を有している。更に、収束電極板8の下側には、側板13に固定させた固定電極板22が配置され、この固定電極板22に仕切板9の脚部20の先端を固定させている。
【0018】
また、固定電極板22は、脚部20を介して仕切板9と電気的に導通させることが必要である。そこで、固定電極板22には、各脚部20の先端を挿入固定させるための脚固定部としての切欠き部23が4個設けられている。そして、各切欠き部23に脚部20の先端をそれぞれ挿入させ、脚部20の先端部20aをL字状に折り曲げた後、この先端部20aと固定電極板22とをスポット溶接することで、固定電極板22に対する仕切板9の固定が達成される。
【0019】
また、固定電極板22は、U字状をなす第1の固定電極板22aと直線状をなす第2の固定電極板22bとで二分割の構成をなす。そこで、電子増倍体7の側板13に設けられた各差し込み用切欠き24内に第1の固定電極板22a及び第2の固定電極板22bをそれぞれ外側から差し込み、第1の固定電極板22aと第2の固定電極板22bとの接合部分をスポット溶接することにより、電子増倍体7に対する固定電極板22の固定を達成する。
【0020】
なお、この固定電極板22の周縁には、バルブ2の内壁面に当接させる爪状のスプリング片25がスポット溶接により固定されている。また、電子増倍体7の下端は、シールド板26により覆っている。そして、バルブ2の上部の内壁面には、光電面10と接触しているアルミ薄膜Aが設けられている。従って、スプリング片25をアルミ薄膜Aと接触させることで、光電面10と仕切板9とを同電位にする。
【0021】
このように、光電子増倍管1は、光入射窓3と電子増倍体7との間の電子収束空間Sに十文字の仕切板9を有し、仕切板9及び4個の増倍部11によって、光電子増倍管1の内部を四つのセグメントに分割されている。このような光電子増倍管1は、4セグメント型の光電子増倍管と称され、各セグメント毎に電子を増倍させることを可能にし、X線やガンマ線などの放射線源の位置の割り出し精度の向上を図っている。また、収束電極板8はセグメント毎に個別的に設けられておらず、組立て易い光電子増倍管1をも可能にする。更に、仕切板8と収束電極板8との間に開口部Pを積極的に設けることで、光電子増倍管1を組み立てる際に光電面形成工程で必要となる光電面形成用の蒸着源(例えば、アンチモンビーズやマンガンビーズ等)28を、この開口部Pに配置させることができる。
【0022】
具体的に、図5及び図6に示すように、仕切片9Bの真下に光電面形成用の蒸着源28を配置させ、この蒸着源28は、アンチモンビーズ28aとマンガンビーズ28bとからなる。これらビース28a,28bは、収束電極板8に固定させたハーメチックシール30から延びるリード線31に固定され、開口部P内に配置させている。ここで、アンチモンビース28aは、収束板9の交差部分すなわち仕切片9Aと9Bとが交差する位置の真下に配置され、このアンチモンビース28aの両側にはマンガンビース28bを配置させている。
【0023】
このように、電子収束空間Sに開口部Pを積極的に設けることで、セグメント毎に蒸着源28を配置せずとも、必要最小限のビーズ28a,28bを電子収束空間S内に配置させるだけでよい。そして、リード線31に電流を流し、ビーズ28a,28bを加熱させることで、ビーズ蒸気が発生し、この蒸気の拡散に基づいて、光電面10の均一な形成を可能にする。また、仕切片9Aと9Bとが交差する位置の真下に、アンチモンビース28aを配置させることは、均質な光電面10を形成する上で極めて好ましい。
【0024】
ここで、本発明の光電子増倍管1の他の実施形態として、図7に示すように、第1の仕切片33Aと第2の仕切片33Bとからなる仕切板33には棒状の脚部34が溶接固定されている。また、収束電極板8において、収束電極板本体14Aには、各脚部34を非接触状態で挿入させる脚挿入部としての穴部35が形成されている。そして、固定電極板22には、各脚部34の先端を挿入固定させるための脚固定部としての穴部36が4個形成されている。そこで、各穴部36に脚部34の先端をそれぞれ挿入させ、脚部34の先端部34aをL字状に折り曲げた後、この先端部34aと固定電極板22とを溶接することで、固定電極板22に対する仕切板33の固定を達成させている。なお、図7において、図3と同一又は同等な構成部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0025】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、図8に示すように3セグメント型の光電子増倍管40の場合、仕切板41は、交差することのない平行な2枚の仕切片41A,41Bにより構成される。そして、各仕切片41A,41Bの真下にアンチモンビース28a及びマンガンビース28bをそれぞれ配置させる。
【0026】
また、図9に示すように8セグメント型の光電子増倍管50の場合、仕切板51は、横に延びた平行な3枚の仕切片51A,51B,51cと、これらに交差するように縦に延びた1枚の仕切片51Dとにより構成される。そして、仕切片51Dの真下に蒸着源28を配置させる。この場合、アンチモンビース28aとマンガンビース28bは、仕切板51の中心位置Oを基準とした対称関係になるようにそれぞれバランス良く配置されている。すなわち、中心位置Oは、光電面10の中心でもあるから、この位置Oを中心として、対称となる位置にアンチモンビース28aとマンガンビース28bとをバランス良く配置させることで、電子収束空間S内でビース蒸気を均一に拡散させることができる。
【0027】
なお、セグメント数に拘わらず、蒸着源28を、光電面10の中心位置Oを基準としてバランスよく配置させることが、光電面10を形成する上で肝要であり、蒸着源28は、必ずしも仕切板の真下にある必要はない。また、セグメント毎に蒸着源を設けてもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明による光電子増倍管は、以上のように構成されているため、次のような効果を得る。すなわち、仕切板の下方に設けられ、電子収束空間において、隣接するセグメント間を連通させる開口部と、電子増倍体に固定させた固定電極板と、仕切板と固定電極板との間に架け渡された脚部と、電子増倍体に固定させて、固定電極板と仕切板との間に配置させた収束電極板と、収束電極板に設けられて、脚部を非接触状態で貫通させる脚挿入部とを備えたことにより、構造が簡単で、部品点数が少なく組立て易い光電子増倍管を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光電子増倍管の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示した光電子増倍管の内部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る光電子増倍管の分解斜視図である。
【図4】図1に示した光電子増倍管の要部を示す拡大断面図である。
【図5】図1に示した光電子増倍管の要部を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る光電子増倍管の横断面図である。
【図7】本発明に係る光電子増倍管の第2の実施形態を示すの要部分解斜視図である。
【図8】本発明に係る光電子増倍管の第3の実施形態を示す横断面図である。
【図9】本発明に係る光電子増倍管の第4の実施形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
S…電子収束空間、P…開口部、1,40,50…光電子増倍管、3…光入射窓、7…電子増倍体、8…収束電極板、9,41,51…仕切板、10…光電面、11…増倍部、20,34…脚部、21…スリット(脚挿入部)、22…固定電極板、28…蒸着源、28a…アンチモンビース、35…穴部(脚挿入部)。
Claims (4)
- 光電面を内側にもった光入射窓と電子増倍体との間の電子収束空間内に仕切板を配置させ、前記仕切板により前記電子収束空間を複数に分割して複数のセグメントを構成し、前記各セグメント毎に増倍部をもった光電子増倍管において、
前記仕切板の下方に設けられ、前記電子収束空間において、隣接する前記セグメント間を連通させる開口部と、
前記電子増倍体に固定させた固定電極板と、
前記仕切板と前記固定電極板との間に架け渡された脚部と、
前記電子増倍体に固定させて、前記固定電極板と前記仕切板との間に配置させた収束電極板と、
前記収束電極板に設けられて、前記脚部を非接触状態で貫通させる脚挿入部とを備えたことを特徴とする光電子増倍管。 - 前記脚挿入部は、スリット又は穴部であることを特徴とする請求項1記載の光電子増倍管。
- 前記仕切板の前記開口部内で、前記仕切板の真下に光電面形成用の蒸着源を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の光電子増倍管。
- 前記仕切板の交差部分には、前記蒸着源のうちのアンチモンビースを配置したことを特徴とする請求項3記載の光電子増倍管。
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