JP3739602B2 - ボルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボルト及びナットに係り、特に、自動車等の組み立ての溶接加工やかしめ加工等で使用されるボルト及びナットに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の組み立て等の量産加工において、ネジ部品の締結を行う場合に、予め相手となるナットやボルトを締め付ける板に溶接加工やかしめ加工によって装着しておき、その後にボルトやナットを締結する方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この場合に、予め板に装着しておいたナットあるいはボルトのネジ部に、組み立て作業における他の加工工程で行われる溶接作業や塗装作業で発生するスパッタによって飛散する金属塊や塗装による塗料塊が付着することがある。ネジ部に金属塊や塗料塊が付着すると付着した金属塊や塗料塊によってネジ締結を円滑に行えないという問題があった。
【0004】
これに対し、下記のような種々の方法が提案されている。
【0005】
(1) 予め板部材に固着したネジ部品のネジ部にマスキングやキャッピングを施しておきスパッタによる金属塊の付着や塗料の付着を防止する方法がある。しかし、コストが高くなり、また、マスキング自体がスパッタなどの高熱によってネジ部品からはずれにくくなるという問題がある。
【0006】
(2) 予め板部材に固着したネジ部品のネジ部に特殊コーティングを施してスパッタによる金属塊等を付着しにくくする方法がある。しかし、コストが高くなるという問題がある。
【0007】
(3) 組み込みの締結前に再度タップ加工を行い、付着物を除去する方法がある。しかし、工程が増加するためにコストが高くなり、また、付着物以外のネジ面をも傷めてしまい、ネジ部の強度を低下させるという問題がある。
【0008】
(4) 予め部材に固着したナットをボルトで締め付ける場合、ボルトの先端にテーパ部を形成してこのテーパ部に切り欠き部を少なくとも1個所加工しておく方法がある。この方法は微少な付着物には対応することができるが、強固な大きい付着物には対応することができないという問題がある。
【0009】
(5) 予め部材に固着したボルトをナットで締め付ける場合において、ナットの上面から座面に至るまでの雌ネジに、ネジ山を欠かせた溝部を軸線方向に少なくとも1本形成して、この不完全なネジ部で付着物を除去するという方法がある。しかし、この溝部はナットの上面から座面に至るまでの全体に渡って溝部が形成されており、いわば全体が不完全のネジであり、不完全なネジ部が多いために、ネジ強度が不足するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題を解消し、ネジ部に付着した金属塊や塗料塊があった場合においても円滑にネジ締結を行うことができるボルト及びナットを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明のボルトは、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、前記切り込み部は、前記案内部の底部の中心に対し対称に前記円柱体の直径より小さい幅で切り取られて形成されており、切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された水平切り取り面を有することを特徴とす。
また、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、前記切り込み部は、3個の切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された水平切り取り面を有することを特徴とする。
また、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、前記切り込み部は、半円分だけ切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された半円分の水平切り取り面を有することを特徴とする。
また、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、前記切り込み部は、半円分だけ切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、半円分だけ傾斜して切り取られて形成された傾斜切り取り面を有することを特徴とする。
また、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、切り込み部は、切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、傾斜して切り取られて形成された3個の傾斜切り取り面を有する
ことを特徴とする。
また、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、前記切り込み部は、中央部に切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された2個の水平切り取り面を有し、前記2個の水平切り取り面が前記底面を挟んで両側に形成されていることを特徴とする。
また、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、前記切り込み部は、中央部から120度の角度間隔で拡がる3個の切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された3個の水平切り取り面を有する
ことを特徴とする。
【0012】
また、前記切り込み部は、ほぼ軸線方向に切り取られて形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記正規ネジ部はその前記案内部に近い部分に少なくとも1条に渡って切り欠いて形成した切り欠き部を有することを特徴とする。また、前記切り欠き部は、前記正規ネジ部の前記案内部に近い部分に1条乃至3条に渡って切り欠いて形成されていることを特徴とする。
【0015】
本願発明のナットは、相手雄ネジと螺合可能なネジ部を有するナットであって、前記ネジ部は、相手雄ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部の部分であって前記ネジ部の相手雄ネジとの螺合を開始する部分に、円周方向に等分された複数の角度位置に少なくとも1条に渡る切り欠き部が形成された切り欠きネジ部と、相手雄ネジと正規に螺合可能な前記切り欠きネジ部に続く前記正規ネジ部の部分とを有し、前記切り欠き部の円周方向に切り欠かれた円周方向長さを複数の前記切り欠き部に渡って総計した総和長は、前記正規ネジ部のネジ円周長の半分の長さより短くないことを特徴とする。
【0017】
また、前記切り欠き部の半径方向に切り欠けられた深さは、前記正規ネジ部のネジ山長の1倍乃至2倍の深さであることを特徴とする。
【0018】
また、前記切り欠き部は、前記ネジ部の相手雄ネジとの螺合を開始する部分に、1条乃至2条に渡って切り欠いて形成されていることを特徴とする。
【0019】
上述の発明のボルトにおいて、ボルトを締め付け具で回転させながら案内部を相手雌ネジのネジ孔に挿入する。案内部の円柱外径は相手雌ネジの内径よりわずかに小さいので相手雌ネジのネジ孔との間にほとんど隙間を形成せずに挿入され、また、切り込み部は案内部の底部側に形成されているので、後に続く正規ネジ部がネジ孔へ挿入される前に相手雌ネジのネジ孔に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部3ネジ孔へ挿入されることを容易化することができ、また、相手雌ネジのネジ孔に付着した金属塊等が予め相手雌ネジのネジ孔から露払い的に除去されているので、正規ネジ部がネジ孔へ円滑に挿入されて正規ネジ部のネジ切り欠き部の鋭いエッジによって、相手雌ネジのネジ部の谷や山に付着した金属塊等を剥ぎ取ることができる。
【0020】
上述の発明のナットにおいて、ナットの切り欠き部には、ネジ部のネジ山を切り欠いた鋭いエッジが形成されているので、後に続く正規ネジ部が相手雄ネジと螺合する前に相手雄ネジのネジ部に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部が相手雄ネジのネジ部と螺合することを無理な力を要することなく容易化することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明のボルトの実施の形態について説明する。
【0022】
図1に本発明に係るボルトの一実施形態を示す。ボルト1は、図示しない締め付け具が当てられる頭部2と、相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部3と、正規ネジ部3の下部に続く円柱状の案内部4とを備えている。頭部2の下端には座部2aが形成され、案内部4は相手雌ネジのネジ内径よりわずかに小さい外径を有し、従って案内部4は相手雌ネジの内に接触することはなく密着して挿入可能な外径を有する。案内部4はその底部からほぼ軸線A方向に一部が切り取られて形成された切り込み部5を有する。
【0023】
切り込み部5は、案内部4の底部の中心に対し対称に円柱の直径より小さい幅で切り取られて形成され、案内部4の切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、底面5aとほぼ平行な切り取られて形成された水平切り取り面5cを有する。鉛直切り取り面5bと底面5aと交差する端部と、鉛直切り取り面5bと案内部4の円柱側面と交差する端部と、水平切り取り面5cと案内部4の円柱側面と交差する端部は、ほぼ90度の角度をなしてエッジが形成されている。
【0024】
なお、切り込み部5案内部4はその底部からほぼ軸線A方向に一部が切り取られて形成されているとしたが、切り取ることによって鋭利なエッジが形成されさえすれば必ずしも軸線Aに切り込まれている必要がなく、他の形状の切り込みであってもよい。
【0025】
また、案内部4の側周面の対向する2個所に軸線A方向に切り取られて形成された断面台形型の縦溝7が設けられている。縦溝7と案内部4の側周面との境界端部には、鋭いエッジが形成されている。
【0026】
また、案内部4に近い正規ネジ部3の端部部分にネジ山を含めて約1.5条に渡って切り欠いて形成したネジ切り欠き部6が設けられている。
【0027】
ネジ切り欠き部6は1条乃至3条に渡って形成されていればよい。ネジ切り欠き部6が3条より多く形成される場合には、正規ネジ部3の部分が少なくなり有利でなく、また、ネジ切り欠き部6が1条より少なく形成される場合には、ネジ切り欠き部6に鋭角的なネジ山の部分を切り欠いて形成される鋭いエッジが無くなってしまうからである。
【0028】
また、ネジ切り欠き部6は縦溝7と同一ラインの延長上に位置している。
【0029】
図2(a)はボルト1の底部を示す平面図であり、図2(b)はボルト1の側面図であり、図2(c)はボルト1の頭部2を示す平面図である。図3(a),(b)は図2(a),(b)に示すボルト1の下部を拡大して示す図である。図4(a),(b)はボルト1に対応する雄ネジ圧造ブランクを示す図であり、図4(a),(b)において、符号8は正規ネジ3に対応する部分であり、符号8aはネジ切り欠き部6に対応する部分であり、符号9は案内部4に対応する部分であり、符号9aは切り込み部5に対応する部分であり、符号9bは縦溝7切り込み部5に対応する部分である。
【0030】
次に、ボルト1の作用について説明する。
【0031】
ボルト1の相手となる雌ネジが板に予め溶接加工されており、この雌ネジのネジ孔に、組み立て作業における他の加工工程で溶接作業におけるスパッタによって飛散する金属塊や塗装工程における塗料塊が付着されているとする。
【0032】
まず、ボルト1を相手雌ネジと締結するためにボルト1を締め付け具で回転させながら、案内部4を相手雌ネジのネジ孔に挿入する。案内部4の円柱外径は相手雌ネジの内径よりわずかに小さいので相手雌ネジのネジ孔との間にほとんど隙間を形成せずに挿入される。切り込み部5は案内部4の底部側に形成されているので、相手雌ネジのネジ孔の孔壁から金属塊や塗料塊が突出して付着している場合であってもその突出した金属塊を切り込み部5を回転させてはぎ取ることができる。
【0033】
また、切り込み部5には、鉛直切り取り面5b、底面5a及び水平切り取り面5cに鋭いエッジが形成されているので、後に続く正規ネジ部3がネジ孔へ挿入される前に相手雌ネジのネジ孔に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部3がネジ孔へ挿入されることを容易化することができる。
【0034】
また、案内部4には鋭いエッジが形成された縦溝7が設けられているので、切り込み部5とともに、相手雌ネジのネジ孔の内壁に付着した金属塊等を確実に除去することができる。
【0035】
相手雌ネジのネジ孔に付着した金属塊等が予め相手雌ネジのネジ孔から露払い的に除去されているので、正規ネジ部3がネジ孔へ円滑に挿入される。そして、正規ネジ部3に形成されたネジ切り欠き部6の鋭いエッジによって、相手雌ネジのネジ部の谷や山に付着した金属塊等を剥ぎ取ることができる。
【0036】
次に、図5乃至図10を参照して、ボルトの他の実施形態について説明する。
図5に示すボルトにおいて、切り込み部5は、案内部4の3個の切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、底面5aとほぼ平行な切り取られて形成された水平切り取り面5cを有する。
【0037】
図6に示すボルトにおいて、切り込み部5は、半円分だけ切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、底面5aとほぼ平行な切り取られた形成された半円分の水平切り取り面5cを有する。
【0038】
図7に示すボルトにおいて、切り込み部5は、半円分だけ切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、半円分だけ傾斜して切り取られて形成された傾斜切り取り面5dを有する。
【0039】
図8に示すボルトにおいて、切り込み部5は、切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、傾斜して切り取られて形成された3個の傾斜切り取り面5dを有する。
【0040】
図9に示すボルトにおいて、切り込み部5は、中央部に切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、底面5aとほぼ平行な切り取られて形成された水平切り取り面5cを有する。この場合、2個の水平切り取り面5cが底面5aを挟んで両側に形成されている。
【0041】
図10に示すボルトにおいて、切り込み部5は、中央部から120度の角度間隔で拡がる3個の切り残された底面5aと、軸線Aにほぼ平行な鉛直切り取り面5bと、底面5aとほぼ平行な切り取られて形成された3個の水平切り取り面5cを有する。
【0042】
上述の図5乃至図10に示すボルトにおいても、図1等に示した実施例と同様に、切り込み部5に鋭いエッジが形成されているので、正規ネジ部3がネジ孔へ挿入される前に相手雌ネジのネジ孔に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部3がネジ孔へ挿入されることを容易化することができる。
【0043】
次に、図11乃至図14を参照して、本発明のナットの実施の形態について説明する。
【0044】
相手雄ネジと螺合するナット21は、締め付け具が装着される6角形状の頭部22と、頭部22の下方にある座部23と、相手雄ネジと螺合可能なネジ部24とを備えている。
【0045】
ネジ部24は、相手雄ネジとの螺合を開始する側である座部23の側のネジ部24の部分に形成された切り欠きネジ部25と、切り欠きネジ部25に続く相手雄ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部26とから構成されている。切り欠きネジ部25は、ネジ部24の円周方向に等分に、例えば120度の角度間隔をおいて切り欠いて形成した複数の、例えば3個の切り欠き部27を有する。切り欠き部27は、ナット21の軸線B方向に少なくとも1条に渡って、例えば1.5条に渡って切り欠かれて形成されている。切り欠き部27の切り欠き端部には、ネジ部24のネジ山を切り欠いた鋭いエッジ部が形成されている。
【0046】
切り欠き部27の円周方向に切り欠かれた円周方向長さを3個の切り欠き部27に渡って総計した総和長は、正規ネジ部26のネジ円周長の半分の長さより短くならないように、すなわちネジ部24のネジ半円周長より短くならないように、各々の切り欠き部27は円周方向に十分に切り欠かれて形成されている。切り欠き部27の円周方向長さの総和長が正規ネジ部26のネジ円周長の半分の長さより短い場合としては、個々の切り欠き部27の円周方向に切り欠かれた円周方向長さが非常に短い場合や個々の切り欠き部27の円周方向に切り欠かれた円周方向長さは短くないが個数が少ない場合があるが、いずれの場合も除去されるべき金属塊等のボリュムに対して切り欠いたものを一時的に収容する容積が小さく、効果的に金属塊等を除去することができない。
【0047】
また、切り欠き部27の半径方向に切り欠けられた深さについては、深すぎると、ナットの機械的強度を損う。また、浅すぎると、除去されるべき金属塊等が切り欠き部27の凹部からはみ出てしまい、後に続く正規ネジ部26を相手雄ネジに円滑に螺合させることができなくなる。そこで、切り欠き部27の半径方向に切り欠けられた深さは、正規ネジ部26のネジ山長の1倍乃至2倍の深さに設定することが望ましい。ここで、正規ネジ部26のネジ山長とはネジ山からネジ谷までの深さをいう。
【0048】
ネジ切り欠き部27は1条乃至2条に渡って形成されていればよい。ネジ切り欠き部27が2条より多く形成される場合には、ネジ部24に残存する正規ネジ部26の割合が少なくなり有利でなく、また、ネジ切り欠き部27が1条より少なく形成される場合には、ネジ切り欠き部27に鋭角的なネジ山の部分を切り欠いて形成される鋭いエッジが無くなってしまうからである。
【0049】
図12はナット21を示す断面図であり、図13はナット21に対応する雌ネジ圧造ブランクを示す図であり、図13において、符号28は切り欠きネジ部25に対応する部分であり、符号29は正規ネジ部26に対応する部分である。図14(a)はナット21の底部を示す平面図であり、図14(b)はナット21の側面図であり、図14(c)はナット21の頭部22を示す平面図である。
【0050】
次に、ナット21の作用について説明する。
【0051】
ナット21の相手となる雄ネジが板に予め溶接加工されており、この雄ネジのネジ孔に、組み立て作業における他の加工工程で溶接作業におけるスパッタによって飛散する金属塊や塗装工程における塗料塊が付着されているとする。
【0052】
まず、ナット21を相手雄ネジと締結するためにナット21を締め付け具で回転させながら、切り欠きネジ部25から相手雄ネジのネジ部に螺合させる。切り欠きネジ部25の切り欠き部27には、ネジ部24のネジ山を切り欠いた鋭いエッジが形成されているので、後に続く正規ネジ部26が相手雄ネジと螺合する前に相手雄ネジのネジ部に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部26が相手雄ネジのネジ部と螺合することを無理な力を要することなく容易化することができる。
【0053】
また、切り欠きネジ部25は、ネジ部24の円周方向に等分に配設された複数の切り欠き部27を有するので、切り欠き部27が単一しかない場合に比べて、ナット21を締め付け具で回転させる場合に不均一に分布することから生じ得るる振動等を生じさせることがなくなく、また、複数の切り欠き部27が不等角度間隔に配設される場合に比べて、ナット21を締め付け具で回転させる場合に生じ得る振動等を確実に除去でき、作業効率を高め騒音を低減させることができる。
【0054】
なお、上述の実施例では、複数の切り欠き部27の各々が同じ形状に切り欠かれた場合を示したが、複数の切り欠き部27がネジ部24の円周方向に等分に配設されていればよく、各々の切り欠き部27の形状は必ずしも等しく形成されている必要はない。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明の構成によれば、ネジ部に付着した金属塊や塗料塊があった場合においても円滑にネジ締結を行うことができるボルト及びナットを提供することができる。
【0056】
ボルトの案内部はその底部からほぼ軸線方向に一部が切り取られて形成された切り込み部を有するので、後に続く正規ネジ部がネジ孔へ挿入される前に相手雌ネジのネジ孔に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部3ネジ孔へ挿入されることを容易化することができる。
【0057】
また、ナットのネジ部は、ネジ部の相手雄ネジとの螺合を開始する部分に、円周方向に等分された複数の角度位置に少なくとも1条に渡る切り欠き部が形成された切り欠きネジ部と、相手雄ネジと正規に螺合可能な前記切り欠きネジ部に続く正規ネジ部とを有するので、正規ネジ部が相手雄ネジと螺合する前に相手雄ネジのネジ部に付着した金属塊等を予め露払い的に除去でき、後に続く正規ネジ部が相手雄ネジのネジ部と螺合することを無理な力を要することなく容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボルトの一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に対応するボルトの底面図(a)と側面図(b)と平面図(c)。
【図3】図2(b)の一部を拡大して示す図(a)と図2(a)の一部を拡大して示す図(b)。
【図4】図1に示すボルトに対応する雄ネジ圧造ブランクを示す側面図(a)と底面図(b)。
【図5】図1に示すボルトの変形例を示す側面図(a)と底面図(b)。
【図6】図1に示すボルトの他の変形例を示す側面図(a)と底面図(b)。
【図7】図1に示すボルトのさらに他の変形例を示す側面図(a)と底面図(b)。
【図8】図1に示すボルトの変形例を示す側面図(a)と底面図(b)。
【図9】図1に示すボルトの他の変形例を示す側面図(a)と底面図(b)。
【図10】図1に示すボルトのさらに他の変形例を示す側面図(a)と底面図(b)。
【図11】本発明に係るナットの一実施形態を示す斜視図。
【図12】図11に示すナットに対応する断面図。
【図13】図11に示すナットに対応する雌ネジ圧造ブランクを示す断面図。
【図14】図11に対応するナットの底面図(a)と側面図(b)と平面図(c)。
【符号の説明】
1 ボルト
2 頭部
3 正規ネジ部
4 案内部
5 切り込み部
5a 底面
5b 鉛直切り取り面
5c 水平切り取り面
5d 傾斜切り取り面
6 ネジ切り欠き部
21 ナット
22 頭部
23 座部
24 ネジ部
25 切り欠きネジ部
26 正規ネジ部
27 ネジ切り欠き部
Claims (4)
- 相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、
前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、
前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、
前記切り込み部は、前記案内部の底部の中心に対し対称に前記円柱体の直径より小さい幅で切り取られて形成されており、切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された水平切り取り面を有する
ことを特徴とするボルト。 - 相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、
前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、
前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、
前記切り込み部は、3個の切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された水平切り取り面を有する
ことを特徴とするボルト。 - 相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、
前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、
前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、
前記切り込み部は、半円分だけ切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、半円分だけ傾斜して切り取られて形成された傾斜切り取り面を有する
ことを特徴とするボルト。 - 相手雌ネジと正規に螺合可能な正規ネジ部と、
前記正規ネジ部の下部に続く前記相手雌ネジのネジ内径より小さい外径を有し円柱体の側周面を有する円柱状の案内部とを備え、
前記案内部は、その底部から一部が切り取られて形成された切り込み部を有するとともにその側周面に軸線方向に切り取られて形成された縦溝を有し、
前記切り込み部は、中央部から120度の角度間隔で拡がる3個の切り残された底面と、軸線にほぼ平行な鉛直切り取り面と、前記底面とほぼ平行に切り取られて形成された3個の水平切り取り面を有する
ことを特徴とするボルト。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19767599A JP3739602B2 (ja) | 1999-07-12 | 1999-07-12 | ボルト |
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