JP3738916B2 - 誘電体共振器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、キャビティ内にTMモード誘電体共振子を設けてなる誘電体共振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のTMモードを利用した誘電体共振器の構造を図6に示す。以下の図において、点塗り潰し部は導体が形成された部分を示す。
【0003】
図6に示すように、この誘電体共振器は、導波管として機能するキャビティ1内にTM二重モード誘電体共振子2を設けて一体化したものである。誘電体共振子2は、誘電体セラミックスからなり、TMモードを有する2つの四角柱状の共振子2a,2bを互いに直交させて十字形状に一体成形したものである。キャビティ1は、誘電体共振子2とともに一体成形した略四角筒形状の枠体の2つの開口面に側板(図示省略)を取り付けて形成され、外面の全面にはAg等の導体3(以下、キャビティ導体と記す)が形成されている。
【0004】
なお、上記側板は、誘電体セラミックスの表面に導体を形成したもの、金属製の導体板、または誘電体共振器を収納する金属ケースの一部で構成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の誘電体共振器では、誘電体共振器の外形寸法つまりキャビティ1の寸法を一定とした場合、誘電体共振子2の幅W、厚みTを変えることで、共振周波数を変えて、所望の共振周波数を得るようにしている。つまり、各共振子2a,2bのキャビティ1と連設する方向(以下、軸方向と記す)に垂直な方向の断面積を変えて、各共振子2a,2bの両端面間の導体間容量を変えることで、それぞれの共振周波数の設定、変更を行っている。例えば、共振子2a,2bの幅W、厚みTを大きくして、各共振子2a,2bの容量を大きくすることでそれぞれの共振周波数を下げることができる。
【0006】
しかしながら、誘電体共振子2の幅W、厚みTの寸法を大きくするには限界があり、外形寸法を変更することなく実現できる共振周波数の範囲には限界があり、同一外形寸法で広範囲に亘る共振周波数を設定することが困難であった。
【0007】
すなわち、所定の外形寸法で、所望の共振周波数を得ることが困難であり、また、逆に、所定の共振周波数を得るために誘電体共振器を所望の外形寸法に設定できず、誘電体共振器の小形化が困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、以上のような従来の誘電体共振器が持つ問題点を解消し、所定の外形寸法で、所望の共振周波数を得ることができ、よって、より小形の誘電体共振器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、筒形状のキャビティ内に、TMモードを有する2つの四角柱状の共振子を直交させてなる十字形状の誘電体共振子を収納して一体化してなる誘電体共振器において、前記誘電体共振子の交差部に、内面に導体が形成された穴が前記キャビティの二つの開口部を結ぶ方向に少なくとも1つ形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、筒形状のキャビティ内に、TMモードを有する2つの四角柱状の共振子を直交させてなる十字形状の誘電体共振子を収納して一体化してなる誘電体共振器において、前記誘電体共振子の交差部に、内面に導体が形成された穴が前記キャビティの二つの開口部を結ぶ方向に少なくとも1つ形成されるとともに、前記キャビティの外壁から前記誘電体共振子の内部に向かって形成され、内面に形成された導体がキャビティ導体と導通している穴が前記誘電体共振子の内部に向かって少なくとも1つ形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
上記の構成によれば、誘電体共振子に、内面に導体が形成された穴が形成され、誘電体共振子の対向する両端面間に導体が介在するか、または両端面間の距離(寸法)が短くなるかの少なくともいずれかの構成となるので、誘電体共振子の両端面間の導体間容量が大きくなり、誘電体共振子の共振周波数を下げることができる。そして、穴の形状、径、深さ、形成位置等を変えることにより、共振周波数を広範囲に亘って変えることができ、所望の共振周波数に設定することが可能となる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明をその実施例を示す図面に基づいて説明する。図において、従来例と同一または相当する部分、同一機能のものについては同一符号を付す。
【0015】
本発明の第1実施例に係る誘電体共振器の構造を図1に示す。図1(a)は誘電体共振器の外観斜視図、図1(b)は図1(a)のX−X線断面図である。
【0016】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施例の誘電体共振器は、キャビティ1内に十字形状のTM二重モード誘電体共振子2を設けて一体化したものであり、2つの共振子2a,2bの交差部となる誘電体共振子2の中央部には厚み方向(図において上下方向)に断面円形状の穴4aが設けられ、穴4aの内周面の全面にはAg等の導体5が形成されている。穴4aは対向面を貫通して形成されている。導体5が形成された穴4a以外の構成については、従来例の図6に示したものと同様の構成であり、その説明を省略する。
【0017】
この構成においては、各共振子2a,2bの軸方向における中央部には導体5が介在しているので、各共振子2a,2bの対向する両端面間の導体間容量が大きくなり、共振子2a,2bに対応するそれぞれの共振周波数が低下する。すなわち、キャビティ1の寸法及び各共振子2a,2bの寸法を変えることなく、共振周波数を下げることができる。そして、穴4aの径を変えることにより、共振周波数を適宜設定することができる。逆に、共振周波数を一定とした場合、キャビティ1の寸法及び各共振子2a,2bの寸法を小さくすることができる。
【0018】
図2は第1実施例の変形例を示す誘電体共振器の正面図であり、各共振子2a,2bには厚み方向にそれぞれ2つの断面略四角形状の穴4aが形成され、各穴4aの内面にはそれぞれ導体が形成されている。この構成においては、穴4aの径、穴4aの形成位置を変えることにより、共振周波数を変えることができる。
【0019】
このように、誘電体共振子の厚み方向に設けられる穴4aの数、形状、形成位置は特に限定されるものではなく、穴4aの数、形状、形成位置は所望の共振周波数及び他の特性を考慮して適宜設定される。
【0020】
なお、上記実施例では、穴は厚み方向の対向面を貫通して形成されているが、穴の形成方向は幅方向としてもよく、有底の穴であってもよい。
【0021】
次ぎに、本発明の第2実施例に係る誘電体共振器の構造を図3に示す。図3(a)は誘電体共振器の外観斜視図、図3(b)は図3(a)の側面図である。
【0022】
図3(a)及び(b)に示すように、本実施例の誘電体共振器では、共振子2a,2bの両端面にあたるキャビティ1との連設部の中央部にはそれぞれキャビティ1の外壁から共振子2a,2bの内部に向かって、有底の円筒状の穴4bが形成され、各穴4bの内面の全面には導体3aが形成され、導体3aはキャビティ導体3に導通している。つまり、本実施例の穴4bは各共振子2a,2bの軸方向に形成され、キャビティ導体3は穴4bの内面にも連続して形成されている。穴4b以外の構成については、従来例の図6に示したものと同様の構成であり、その説明を省略する。
【0023】
この構成では、各共振子2a,2bのそれぞれの端面にはキャビティ導体3が形成された穴4bが形成され、各共振子2a,2bの対向する両端面間の距離(寸法)が小さくなるので、各共振子2a,2bの両端面間の導体間容量が大きくなり、共振子2a,2bに対応するそれぞれの共振周波数が低下する。すなわち、キャビティ1の寸法及び各共振子2a,2bの寸法を変えることなく、共振周波数を下げることができる。そして、穴4aの径、深さを変えることにより、共振周波数を適宜設定することができる。
【0024】
逆に、共振周波数を一定とした場合、キャビティ1の寸法及び各共振子2a,2bの寸法、つまり誘電体共振器の外形寸法を小さくすることができる。
【0025】
なお、上記実施例では、穴4bは一定の径の筒状に形成されているが、図4に示すように、共振子2a,2bの内部に向かって内径が小さくなるように錐状に形成してもよく、断面形状も略四角形状に形成してもよく、穴4bの形状は特に限定するものではない。また、穴4bの形成位置、数等も特に限定するものではない。
【0026】
次ぎに、本発明の第3実施例に係る誘電体共振器の構造を図5に示す。図5は誘電体共振器の外観斜視図である。
【0027】
図5に示すように、本実施例の誘電体共振器では、2つの共振子2a,2bの交差部には厚み方向に、内面に導体5が形成された円筒状の穴4aが設けられ、共振子2a,2bの両端面にあたるキャビティ1との連設部にはそれぞれキャビティ1の外壁から共振子2a,2bの内部に向かって、有底の略四角錐状の穴4bが設けられ、各穴4bの内面の全面にはキャビティ導体3と導通する導体3aが形成されている。穴4a,4b以外の構成については、従来例の図6に示したものと同様の構成であり、その説明を省略する。つまり、本実施例の誘電体共振器は、第1実施例及び第2実施例に係る構成を組合わせたものであり、誘電体共振子の厚み方向及び軸方向に、内面に導体が形成された穴が設けられている。
【0028】
この構成においては、キャビティ1の寸法及び各共振子2a,2bの寸法を変えることなく、厚み方向に形成された穴4a及び軸方向に設けられた穴4bの内径寸法、形成位置、深さ等を変えることにより、共振周波数を適宜設定することができる。つまり、穴4a及び穴4bを形成することにより、各共振子2a,2bの容量の設定の自由度が増すことができ、所望の共振周波数をより容易に得ることができる。
【0029】
上記各実施例の穴4a,4bは、誘電体共振器の成形時に形成、または誘電体共振器成形後、切削等により形成される。
【0030】
なお、上記各実施例では、各穴4a,4bの内面の全面に導体を形成したもので説明したが、これに限るものではなく、穴の内面の所定の部分にのみ導体を形成するようにしてもよい。この場合、穴の内面に形成される導体の面積、形成箇所等により共振周波数を変えることもできる。
【0031】
また、上記各実施例では、キャビティと一体成形された十字状のTM二重モード誘電体共振子を内蔵した誘電体共振器で説明したが、これに限るものではなく、1つの柱状のTMモード誘電体共振子、あるいは3つの共振子を互いに交差させて一体成形したTMモード誘電体共振子を内蔵したものでもよい。また、誘電体共振子はキャビティと一体成形されたものに限ることはなく、誘電体共振子をAgペースト等でキャビティに焼き付け接合したものでもよい。
【0032】
また、キャビティも表面に導体が形成された6枚のセラミック板をAgペースト等で焼付け張り合わせたもの、または導電性の金属ケースであってもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る誘電体共振器によれば、誘電体共振子に、内面に導体が形成された穴を形成することにより、誘電体共振子の対向する両端面間に導体を介在させる、または両端面間の距離(寸法)を短くするので、誘電体共振子の両端面間の導体間容量が大きくなり、誘電体共振子の共振周波数を下げることができる。そして、穴の形状、径、深さ、形成位置等を変えることにより、共振周波数を広範囲に亘って変えることができる。
【0034】
さらに、穴の内面に形成される導体の面積、形成箇所を変えることにより、共振周波数を変えることもできる。
【0035】
したがって、本発明によれば、所定の外形寸法で所望の共振周波数を得ることができるので、誘電体共振器をより小形化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の第1実施例に係る誘電体共振器の外観斜視図、(b)は、(a)のX−X線断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る誘電体共振器の正面図である。
【図3】(a)は、本発明の第2実施例に係る誘電体共振器の外観斜視図、(b)は、側面図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る誘電体共振器の外観斜視図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る誘電体共振器の外観斜視図である。
【図6】従来の誘電体共振器の外観斜視図である。
【符号の説明】
1 キャビティ
2,2a,2b 誘電体共振子
3 キャビティ導体
4a,4b 穴
3a、5 導体
Claims (2)
- 筒形状のキャビティ内に、TMモードを有する2つの四角柱状の共振子を直交させてなる十字形状の誘電体共振子を収納して一体化してなる誘電体共振器において、
前記誘電体共振子の交差部に、内面に導体が形成された穴が前記キャビティの二つの開口部を結ぶ方向に少なくとも1つ形成されていることを特徴とする誘電体共振器。 - 筒形状のキャビティ内に、TMモードを有する2つの四角柱状の共振子を直交させてなる十字形状の誘電体共振子を収納して一体化してなる誘電体共振器において、
前記誘電体共振子の交差部に、内面に導体が形成された穴が前記キャビティの二つの開口部を結ぶ方向に少なくとも1つ形成されるとともに、
前記キャビティの外壁から前記誘電体共振子の内部に向かって形成され、内面に形成された導体がキャビティ導体と導通している穴が前記誘電体共振子の内部に向かって少なくとも1つ形成されていることを特徴とする誘電体共振器。
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