JP3738363B2 - 発電型電気自動車の電池制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばエンジンと充放電可能な電池によって駆動する電気モータを組み合わせたハイブリッド自動車のように発電手段を搭載する発電型電気自動車における電池制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費向上等の目的のため、エンジンと電池によって駆動するモータとを装備するHV(ハイブリッド)自動車が注目を集めている。HV自動車に搭載される電池は、主に、加速時等の高負荷運転時には電池から放電され、減速時や一定速度走行等の低負荷運転時には電池が充電される。このような電池の充放電を安定に行うにはSOC(State Of Charge/充電状態)を所定の一定値でバランスさせることが必要であるため、SOCの検出は電池制御において不可欠の技術となっている。
【0003】
電池のSOC(又は残存容量)を検出する方法としては、充放電電流の積算による方法(以下、電流積算方式ともいう)や、電池電圧に基づいてSOCを推定する方法(以下、電圧推定方式ともいう)が知られている。
特開平10ー51906号公報は、中SOC領域において電圧変化が小さいことに鑑み、SOCの常用(許容)上限値或いは常用(許容)下限値における電流・電圧マップだけを予め記憶しておき、検出した電流・電圧をこのマップに入れてSOCを推定し、推定SOCがあらかじめ設定されているSOCの常用上限値に達したら電池を放電する。その後、推定SOCがあらかじめ設定されているSOCの常用下限値に達したら電池を充電する充放電サイクルを強制的に繰り返す電池制御を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、電流積算方式は、電池の充放電電流を逐次検出してこれをSOCの初期値に無限に累算(積算)する方法であるため、次第に積算処理誤差が累積してしまい、正確な検出値が得られいくいという問題があった。
一方、電圧推定方式は、上記累積誤差をもたないものの、たとえばニッケル水素合金電池のように充電分極作用が大きく、電池電圧とSOCとの関係がその充放電履歴により大きく変化してしまうタイプの電池(大ヒステリシス電池ともいう)では、電池電圧とSOCとの関係、あるいは電池電圧と電流と容量との関係をマップとしてあらかじめ記憶していても、充放電履歴が異なるため、電圧データ又は電圧・電流データをこのマップに入れて容量を推定しても、期待した精度が得られないという問題があった。
【0005】
更に、上記従来公報では、電圧−容量特性の傾斜が大きく、比較的高精度に検出可能な高SOC値の場合と低SOC値の場合とで電圧・電流データに基づいてSOC(容量)検出を行い、その結果に基づいて、電池状態を高SOC値と低SOC値との間を強制的に往復させねばならないため、低SOC値側に強制シフトさせた場合には必要な電力が電池から得られにくくなり、高SOC値側に強制シフトさせた場合には回生電力を電池に貯蔵しにくくなり、電池の使い勝手が悪化し、走行機能の低下や燃費の悪化が問題となる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、精度及び使い勝手が優れた発電型電気自動車の電池制御方法を提供することをその目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための各請求項記載の構成によれば、精度及び使い勝手が優れた発電型電気自動車の電池制御方法を実現することができる。
なお、これらの各請求項記載の発電型電気自動車の電池制御方法の共通の特徴部分について以下に説明する。
【0008】
第一に、測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、演算した基準状態電池電圧が所定の目標電圧値Vcとなるように電池の充放電を制御する。
更に詳しく説明すると、電気自動車の電池(走行電力蓄電用電池)では充放電電流状態あるいは充放電電力状態は刻々と変化する使用モードをもつ。一方、電池電圧は、電池の内部抵抗の影響によりその電流の大きさによって変動する。したがって、単に電池電圧と容量とのマップに測定した電池電圧データを導入するだけでは正確な容量推定が困難である。そこで、電池電圧と電流と容量とのマップを記憶し、これに電池電圧データと電流データとを導入して容量を推定することが考えられるが、この場合には、三次元マップを記憶しなければならずメモリの大規模化を招く。
【0009】
また、ニッケル水素電池のような大ヒステリシス電池では充電分極作用などの影響によりSOCと電池電圧との関係が一概に決定できない。
この問題を解決するために、本発明では、得られた電池電圧データと電流データを一度、基準電流状態又は基準電力状態における電池電圧データである基準状態電池電圧に換算する。そして、この基準電流値または基準電力値における常用容量範囲に対応する所定の目標電圧値Vcを設定しておく。
【0010】
このようにすれば、大規模メモリを必要とすることなく、この基準状態電池電圧と目標電圧値Vcとの差を解消するように充放電することにより、電流変動にかかわらず、電池の容量を常にこの目標電圧値Vcに対応する容量範囲に保持することができる。
第二に、電池の略満充電状態からの放電時の容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線上の常用最小容量値P、電池の略完全放電状態からの充電時の容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線上の常用最大容量値Qを設定し、QからPに至らない放電又はPからQに至らない充電を行うので、電池の容量状態(基準状態電池電圧−容量平面上の座標点)を常用最大容量値Qと常用最小容量値Pとの間の常用容量範囲に入れることができる。なお、上記の前に容量状態をP又はQ点にセットするには、電池の略満充電状態から放電させるか、略完全放電状態から充電すればよい。
【0011】
第三に、電池の電圧(基準状態電池電圧)を、P及びQに対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の所定の目標電圧値Vcに収束するように充放電制御を行う。
このようにすれば、基準状態電池電圧が目標電圧値Vcに一致した時点において、目標電圧値Vcに対応する目標容量値と実際の容量との差を非常に小さくすることができる。更に、基準状態電池電圧が常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの範囲内となるように充放電制御することにより、実際の容量が範囲PーQ内から逸脱することを防止することができる。
【0012】
なお、基準状態電池電圧が常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの範囲内となるように運転する代わりに、電流積算などの方法で算出した算出容量を、常用最大電圧値Vqに相当する常用最大容量値Q及び常用最小電圧値Vpに相当する常用最小容量値Pの範囲内に維持する充放電制御を行う場合でも、実際の容量が範囲PーQ内から逸脱することを防止することができる。
【0013】
したがって、充放電履歴による電池電圧と容量との関係の変動を低減して、容量を簡単かつ精度よく上記PーQの範囲内に維持して、過充電や過放電を回避することができる。
更に詳しく説明する。
電気自動車の電池(走行電力蓄電用電池)では充放電電流状態あるいは充放電電力状態は刻々と変化する使用モードをもつ。一方、電池電圧は、ニッケル水素電池のような大ヒステリシス電池では充電分極作用などの影響により放電電圧と充電電圧とが異なるとともに、放電電圧ー容量特性及び充電電圧ー容量特性が大きく変動する。充電分極の大きさは、過去の充放電履歴に依存するので、結局、電池電圧は、電流のみならず過去の充放電履歴(過去の充放電電流または充放電電力の変動実績)に大きく影響される。
【0014】
この問題に対し、本発明者らは多数の実験の結果、次の知見を得た。
基準電流または基準電力の充放電状態(すなわち、電流変動による電池電圧降下の変動の影響を無視できる充放電状態)では、基準状態電池電圧(電池電圧)に対する容量のばらつきは、後述するように所定範囲に収束させることができる。
【0015】
この容量のばらつきの収束を実現するには、略満充電状態(ここでは95%以上の容量状態をいう)からの放電時の容量ー電圧特性(放電時最小電圧特性線)上の常用最小容量値Pと、電池の略完全放電状態(ここでは5%未満の容量状態をいう)からの充電時の容量ー電圧特性(充電時最大電圧特性線)上の所定の常用最大容量値Qとの間で充放電を行えばよい。具体的な制御としてはたとえば、基準状態電池電圧を、P、Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間に保持する電圧制御を行う。なお、充放電履歴の開始は、上記略満充電状態乃至上記略完全放電状態から行う。
【0016】
このようにすれば、充放電状態の変動の繰り返しにかかわらず、容量を常用最小容量値P及び常用最大容量値Qの間に維持することができる。
これは、大ヒステリシス電池においても、基準状態電池電圧とそれに対応する容量は、常用最小容量値Pとそれに放電時最小電圧特性線上で対応する常用最小電圧値Vpとで決定される座標点と、常用最大容量値Qとそれに充電時最大電圧特性線上で対応する常用最大電圧値Vqとで決定される座標点とを両先端とする三日月形状の領域内に存在するという知見に基づくものである。
【0017】
請求項1記載の構成によれば更に、基準状態電池電圧が常用最小電圧値Vpを超えて低下した場合に、常用最大電圧値Vq近傍まで充電し、その後、目標電圧値Vc近傍まで放電する操作を行う。
このようにすれば、目標電圧値Vcとそれに対応する目標容量値とで規定される目標座標点に対する、目標電圧値Vcに一致する基準状態電池電圧とそれに実際に対応する実際の容量値との間の容量ずれを良好に縮小することができる。
【0018】
請求項2記載の構成は、上述した請求項1の発明と超過充電からの回復処理だけが異なる。
すなわち、基準状態電池電圧が常用最小電圧値Vpを超えて低下した後、所定の条件を満足する場合に、満充電(容量95%以上)、好ましくは均等充電を行い、更にその後、放電を行うことで電池の容量を常用最小電圧値Vp近傍に復帰させ、その後、常用最小容量値Pから常用最大容量値Qに至らない所定量の充電を行って電池の容量を常用最大容量値Qと常用最小容量値Pとの間の常用容量範囲に入れる。
【0019】
すなわち、この態様では常用範囲を逸脱した後の好適な時点で満充電を行って、再度、電池の基準状態電池電圧−容量平面上の動作点(座標点)を、放電時最小電圧特性線上の常用最小容量値Pに復帰させることができるので、その後、この容量範囲PーQに対応する電圧範囲で運用することにより、容量ずれの解消を図ることができる。
【0020】
請求項3記載の構成によれば請求項2記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、この満充電は、均等充電(所定基準状態電池電圧に達した後、小電流値で所定時間充電する充電方式をいう)により完全な満充電まで行われるので、その後の放電により動作点を正確に最小電圧特性線上のP点に復帰させ、その後の充電により正確に目標点に復帰させることができる。
【0021】
請求項3記載の構成によれば、電池電圧が常用最小電圧値を所定量超えて超過放電した場合に、常用最大電圧値Vqからこの所定量を超えない範囲まで超過充電し、その後、目標電圧値Vcまで放電する操作を行う。
このようにすると、基準状態電池電圧が目標電圧値Vcに一致する場合の容量を、この目標電圧値Vcに対応する目標容量値に良好に復帰させることができる。
【0022】
請求項5記載の構成によれば請求項1乃至4のいずれか記載の発電型電気自動車の電池制御方法において更に、電池はニッケル水素電池とする。
このようにすれば、大ヒステリシス特性を有するニッケル水素電池を精度よく所定の常用容量範囲で運用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施態様を以下の実施例を参照して説明する。
なお、発電型電気自動車としては、上述のハイブリッド車の他、燃料電池及びその発電電力と負荷の要求電力とのアンバランスを吸収する電池とをもつ燃料電池車などがある。
【0024】
【実施例】
本発明の電池制御方法を用いたパラレルハイブリッド自動車の構成例を図1に示す。
11はエンジン、12はエンジン11の駆動力の一部で発電する交流形式の発電機、13は発電機12から出力される交流電力を直流電力に変換するインバータ、14はニッケル水素電池で構成した組み電池からなる電池装置(単に電池ともいう)である。エンジン11の出力は、トルク分配機15、ギヤ17を介して、車輪18に伝えられる。インバータ13は、発電機12及び電池14から給電されてモータ16を駆動し、あるいはモータ16で回生された電力で電池14を充電する。
【0025】
図2は、図1に示したハイブリッド車の電池14を示すブロック図である。
電池14において、21は電池パック、22は互いに直列接続されて電池パック22を構成する多数の電池モジュール、23は温度センサ、24は各電池モジュール22の電圧を検出する検出回路、25は温度検出回路、26は電流検出回路、27は、電圧検出回路24、温度検出回路25、電流検出回路26からの信号に基づいて電池14の容量を検出するための電池制御マイコン(電池コントローラともいう)である。28は、電池14からのSOC信号などに基づいて電池パック21の充放電を実際に制御する車両コントローラであり、車両コントローラ28は、電池制御マイコン27や車両各部からの入力情報に基づいて、エンジン11、発電機12、インバータ16を制御する。
【0026】
この実施例で用いたニッケル水素電池(単セル)の車両実走行時の電圧−電流特性を図3に示す。
図3中、特性線Lは、所定の定電力(電圧×電流=一定)曲線で、この実施例では、このハイブリッド自動車システムにおける電池パック21の最大放電電力値を電池1セル当たりに換算して示したものである。
【0027】
図3中、破線31は電池容量が満充電状態である場合の電流、電圧特性であり、破線32は、電池容量が、最大放電電力値で放電する場合に電池電圧が最低動作保障電圧V_minに達する値である場合の電流、電圧特性を示す。このように電流、電圧特性は満充電付近では特性31に示すように電圧が高く、電池容量が低下すると特性32のように電圧が低下する。
【0028】
ここで、特性31では電流=0Aの座標点が容量P_max’、電圧V_max’の点で、特性32では電流=0Aの座標点が容量P_min’,電圧V_min’の点である。このように、走行中の電流、電圧特性を測定し、予め定めた定電流値(例えば電流=0A)となるように電圧値を換算してこれを基準状態電池電圧とし、これらの容量値と基準状態電池電圧値とを用いれば、電流変化における電圧変動の影響を取り除くことができる。
【0029】
或いは、満充電付近の電流、電圧特性31では、所定の定電力放電時(ここでは最大放電電力値時)の点がP_max、電圧V_maxで、特性32では上記定電力放電時の点がP_min,電圧V_minの点である。このように、走行中の電流、電圧特性を測定し、予め定めた定電力値となるように電圧値を換算してこれを基準状態電池電圧とし、これらの容量値と基準状態電池電圧値とを用いれば、電力変化における電圧変動の影響を取り除くことができる。
【0030】
このようにして、所定の定電力時(あるいは定電流時)における基準状態電池電圧と容量との関係を求めることができる。
定電力放電時(ここでは最大放電電力値時)の基準状態電池電圧と容量との関係を図4に示し、定電流時の一例として電流=0A時の基準状態電池電圧(開放電圧)と容量との関係を図5に示す。両者はほとんど同じであるので、以下、図4の場合について説明する。
【0031】
図4において、41はSOC100%の状態から放電傾向にあるときに測定した電圧特性(放電時最小電圧特性線)、42は完全放電に近い状態から充電傾向にあるときに測定した電圧特性(充電時最大電圧特性線)である。41と42の特性は大きくずれており、放電傾向と充電傾向の特性には大きなヒステリシスが生じることがわかる。
【0032】
また、43はSOC80%の座標P_Hi(常用最大容量値Q)点からSOC40%の座標P_Lo(常用最小容量値P)点まで放電したときの電圧特性線、44はSOC40%の座標P_Lo点からSOC80%の座標P_Hi点まで充電したときの電圧特性線である。電圧特性線43と44の特性で囲まれたヒステリシスは、電圧特性線41と42に囲まれたヒステリシスに対して、格段に小さくなっていることがわかる。なお、座標P_Hi点の電圧はV_Hi(常用最大電圧値Vq),座標P_Lo点の電圧はV_Lo(常用最小電圧値Vp)である。
【0033】
更に説明すると、SOC80%の座標P_Hi点は、略完全放電状態からの充電時の容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線42上でSOC80%の点と略みなすことができ、したがって、略完全放電状態からSOC80%まで(又はV_Hiまで)充電することにより達することができる。同様に、SOC40%の座標P_Lo点は、略満充電状態からの放電時の容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線43上でSOC40%の点と略みなすことができ、したがって、略満充電状態からSOC40%まで(又はV_Loまで)放電することにより達することができる。
【0034】
図4において、43は、座標P_Hi点から放電する場合の基準状態電池電圧の変化を示す線(常用最小電圧特性線)であり、44は、座標P_Lo点から充放電する場合の基準状態電池電圧の変化を示す線(常用最大電圧特性線)である。したがって、一度、座標P_Hi点又は座標P_Lo点に達した後、容量40〜80%またはそれに相当する基準状態電池電圧V_Hi又はV_Loの間で電池の充放電(以下、標準充放電ともいう)を行う場合には、電池の基準状態電池電圧と容量との関係は、図3の斜線内にあることがわかる。
【0035】
次に、本発明でいう目標電圧値Vc又は参照電圧値として、上記斜線領域のほぼ中心点として、容量60%、基準状態電池電圧(単に電池電圧ともいう)VMの点を設定する。
したがって、標準充放電を行っていれば、電池電圧がVMであるということは、過去の充放電履歴にかかわらず、VMと常用最小電圧特性線43との交点の容量値約55%から、VMと常用最大電圧特性線44との交点の容量値約65%まで容量の変動幅は10%に限定できることがわかる。
【0036】
図5においても同様であり、上記VMに対応するVM’を適当にとれば、電流=0Aの時の電圧がVM’であれば、過去の充放電履歴にかかわらず、容量変動幅を約55%から約65%までと推定できることがわかる。
次に図4における特性線43、44内の充放電特性(基準状態電池電圧ー容量特性)について、更に詳細に調べた結果を図6に示す。
【0037】
61は、座標P_Hi点から放電する場合の常用最小電圧特性線43上の所定点P1からP2まで充電する場合の特性線、62は、P2からP3まで放電する場合の特性線である。
図6から、座標P1から充電傾向で容量が推移する場合の特性線61は座標P_Hi点に収束すること。更に言えば、特性線43上の任意の点から充電する場合は座標P_Hi点に収束することがわかる。一方、座標P2から放電傾向で容量が推移する場合の特性線62は座標P1に収束することがわかる。
【0038】
すなわち、特性線43と44とで囲まれる常用領域内の所定点からの放電は、それ以前の上記所定点までの充電における充電開始点が特性線43上にあればそこに向かうことがわかる。
同様に、特性線43と44とで囲まれる常用領域内の所定点からの充電は、それ以前の上記所定点までの放電における放電開始点が特性線44上にあればそこに向かうことがわかる。
【0039】
すなわち、この常用領域内では、ある状態から一旦放電、或いは充電した後、SOCを基に戻そうとすると、電圧も元の値に戻ろうとすることがわかる。これは、ニッケル水素電池に限らず、充電可能な2次電池全てに共通する特徴で、分極現象と呼ばれている。
ここで、特性線43上で電圧VM時の容量値をSOC1、特性線44上で電圧VM時の容量値をSOC2とする。電圧VMは、目標電圧値Vcとして、容量60%を中心にSOC1とSOC2がプラスマイナス均等になるように定める。
【0040】
この状態で、いま座標P_Hi点から走行を開始した場合を想定する。ハイブリッド自動車の走行中に定電力放電時の電池電圧(基準状態電池電圧)がVMになるように発電機12をコントロ−ルすると、座標P_Hi点は特性43上を推移し、SOCは80%から特性43が電圧VMと交わるSOC1に推移して安定することが、図6からわかる。
【0041】
その後、運転者が電池容量を消費するような走行を行い、例えば座標P1点のSOCまで到達する場合には、今度は特性線61上を電圧VMまで電圧が回復するため、ほぼSOCは60%で安定することがわかる。
即ち、容量の変動範囲をSOC80%〜40%に限定(又は電池電圧をV_Hi〜V_Loに限定)して、電池特性のヒステリシスを小さくすることで、少なくともSOC1からSOC2の範囲でSOCが維持される。更に、充放電を繰り返すと、容量は徐々に目標電圧値Vc(VM)に対応する目標容量値(SOC60%)に収束される。
【0042】
なお、電池のヒステリシス特性が小さい鉛電池等は、電池容量の使用範囲を限定することなく目標とする容量を維持することが可能である。また、電圧VMは電池容量を維持したい容量に対して設定することで、維持する容量を本実施例の60%ではなく任意の容量に変更することが可能である。
(過放電からの回復処理例1)
次に図6において、常用最小電圧特性線43及び常用最大電圧特性線44で囲まれる三日月状の常用範囲から放電側に逸脱した場合について、図7を参照して説明する。
【0043】
いま、動作点(座標)は、SOC1(80%)とSOC2(40%)の間で、かつ、座標Q(P_Hi)点、目標点(目標容量値(60%)、目標電圧値Vc(1.1V))、座標P’点を結ぶ放電特性線45上にあるとする。
この状態で車両要求により放電がB点まで進行し、その後、車両走行負荷の減少により電池充電が可能となったとする。すると、電池はB点からB’点を通ってQ点(厳密にはQ点より少し小さい値となるがほぼQ点とみなせる)に至る充電特性線46上をたどって復帰する。したがって、その後、ほぼQ点から放電させることにより、再び目標点C’に復帰させることができる。
【0044】
すなわち、常用範囲よりも過放電した場合には、単に目標電圧値Vcまで充電するだけでは容量はB’点となり、不足する。そこで、この実施例では、常用範囲よりも過放電した場合には、単に目標電圧値Vcまで充電するだけではなく、常用最大容量値Q(またはそれに相当する常用最大電圧値Vq)近傍まで復帰させた後、目標電圧値Vcまで放電させる。このようにすれば、基準状態電池電圧Vが目標電圧値Vcとなる場合の動作点を目標点C’近傍に良好に復帰させることができる。
【0045】
上記過放電からの回復処理例1を含む具体的な充放電制御の一例を以下に説明する。
まず、検出した電圧データと電流データとのペアから定電力時の基準状態電池電圧(又は定電流時の基準状態電池電圧)を算出する。なお、電圧データは各セルごとに検出することが好ましいが直列に接続される複数のセルの電圧を検出する場合はそれを1セル当たりの値に補正する。
【0046】
次に、動作点を特性線43又は44上に上述の方法(満充電状態からの放電又は完全放電状態からの充電)でもってきた後、電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御する。具体的には、電池電圧V_Hiに達したら充電を禁止し、電池電圧がV_Loに達したら放電を禁止する。これとは別に電流の積算によって仮のSOCを算出しておく。次に、前記比較結果に基づきSOCを補正する。
【0047】
このSOC補正について更に詳しく説明すると、電流積算により求めた容量が目標容量値60%に達した場合に、基準状態電池電圧と目標電圧値VcとしてのVMとの差を求め、この差が0になるまで補償充放電としての充電又は放電を行う。なお、この差は電流積算誤差とみなせるので、電流積算容量の値に累算しない。
【0048】
このようにすれば、その後、次に、電流積算により求めた容量が目標容量値60%に達するまで、積算誤差なしに電流積算容量を用いて容量推定し、この電流積算容量と目標容量値との差に基づいて、この差を解消するように充放電制御することにより、容量を目標容量値に収束させることができる。
なお、上述した電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御する代わりに、電流積算容量がP_Hi〜P_Loの範囲を逸脱しないように充放電制御してもよい。
【0049】
(過放電からの回復処理例2)
上述した(過放電からの回復処理例1)を実施すると、目標電圧値VcにおいてたとえばC’点に復帰させることができる。
しかしながら、この後、常用最大電圧値Vqと常用最小電圧値Vpとの間で目標電圧値Vcに収束させつつ電池を運転する場合、電池の動作点は、Q、O、P、O’、Qを結ぶ以前の範囲内から、Q、C’、P’、B、Qを結ぶ範囲内にシフトする。すなわち、基準状態電池電圧Vが目標電圧値Vcに一致する場合の容量範囲はO〜O’から、C’〜Bにシフトしてしまう。
【0050】
そこで、本実施態様では、このシフトを解消するために、車両状態がそれを許す時間帯を検出してこの時間帯に自動的又は定期的に均等充電を行い、その後、放電により基準状態電池電圧VをP点(常用最小電圧値Vp)に復帰させ、その後、充電により目標電圧値Vcに復帰させる。
これにより、上記シフトを解消することができる。特に、この実施態様では、常用範囲から放電側に逸脱する場合に限り、その後、車両状況が許す場合に均等充電するので、車両走行に支障が生じないという利点がある。なお、均等充電を簡略化して単なる満充放電処理としてもよく、あるいは、通常は満充電処理を行い、時々、均等充電処理を行ってもよい。
【0051】
(過放電からの回復処理例3)
上述した(過放電からの回復処理例1)の欠点は、座標Pが座標P’にシフトするために、常用最小電圧特性線が43から45に、常用最大電圧特性線が44から47にシフトし、その結果、目標電圧値Vcにおける容量幅が低容量側にシフトしてしまう点にある。上述した(過放電からの回復処理例2)を実施してそれを解消することもできるが、便宜的に、次の方法によってもシフトを低減ないし解消することができる。
【0052】
図7において、上記放電側シフトは、常用範囲を超えた過大な放電に起因することは明らかである。そこで、この実施態様では、たとえばB点から充電復帰する場合に、この常用範囲からの超過放電量(容量B(20%)と常用最小容量値P(40%)との差)よりも小さい所定量(超過充電量)だけ常用最大容量値Qより超過充電する。このようにすれば、直前の上記超過放電による動作点左シフトの影響を、直後の上記超過充電による動作点右シフトの影響である程度キャンセルすることができる。
【0053】
したがって、このようにすれば、動作点を良好に上記過放電前の位置に復帰させることができ、目標電圧値Vcにおける容量ばらつきをO、O’の範囲内に近づけることができる。
(過放電からの回復処理例4)
更に、上述した(過放電からの回復処理例3)で、上記超過充電して到達したSOC1を超える動作点から、再度SOC2未満となる超過放電を行う。ただし、今度の超過放電量(超過放電により到達した容量値とSOC2との差)は直前の超過充電量(超過充電により到達した容量値とSOC1との差)より小さくする。このようにすれば、更に、動作点を更に良好に上記過放電前の位置に復帰させることができ、目標電圧値Vcにおける容量ばらつきをO、O’の範囲内に近づけることができる。
【0054】
更に、この方式の一態様として、臨時の目標SOC値を本来の目標容量値60%の両側に交互にスイングし、かつ目標容量値に次第に近づけていくことができる。上記方式は、磁気ヒステリシスを有する磁性膜の残留磁化を解消する交流消磁と同じ方式である。
なお、上記各回復処理例においての所定容量までの充電動作や放電動作は、それらに対応する基準状態電池電圧に基づいて行うことができるが、その他、電流積算容量に基づいて行うこともできる。
【0055】
次に、上述の充放電制御例の更に具体的な制御操作をフローチャートを参照して以下に説明する。
まず、車両コントローラ28の充放電制御を図8を参照して簡単に説明する。
車両コントローラ28は、走行状態及び操作状態に基づいて算出した車両負荷と、電池コントローラ27から受信したSOC信号(電池の現在容量を示す信号)との合計値とエンジン11の出力とが一致するように、エンジン11を制御する原動機コントローラ(図示せず)に指令する制御を行う。ハイブリッド車におけるこの制御自体はこの実施例の要旨ではないのでこれ以上の説明は省略する。
【0056】
車両コントローラ28による、電池14の充放電制御に関する部分の具体的な制御を図8に示す。
ステップ1000では電池コントローラ27からSOCを読み込み、ステップ1002では読み込んだSOCとあらかじめ目標とする目標SOCとの差を求めて、これを電池要求電力値とする。
【0057】
ステップ1004では、算出した電池要求電力値にあらかじめ算出した走行負荷電力を加算して合計負荷電力とし、エンジン出力要求値をこの合計負荷電力に一致させる。
また、車両コントローラ28はエンジン出力と走行負荷電力との差を算出してその差だけ、発電機12又はモータ16を駆動する制御を行うが、この制御もこの実施例の要旨ではないので、説明を省略する。
【0058】
次に、電池コントローラ27におけるSOC決定動作について図9を参照して以下に説明する。
なお、過去において、動作点は以前に特性線43上、又は44上へ上述の方法で設定された後、電池電圧がV_Hi〜V_Loの範囲を逸脱しないようにその充放電を制御されることにより、特性線43と44との間にあるものとする。
【0059】
図9では、まず、ステップ901で走行中の電圧VB、電流IB、温度TBを検出し、電圧VBと電流IBの複数ペアを基に最小2乗法によって内部抵抗Rkを算出し、それを基に基準状態電池電圧として所定電力放電時の電圧(基準状態電池電圧)VBwを算出する(ステップ902)。
VB0=VB+Rk×IB
VBw={VB0+(VB02 −4×Rk×α)0.5}×0.5
なお、αは用いた定電力(ここでは21kW)である。
【0060】
次に、ステップ903によって電流積算法により算出し、ステップ904によって算出したSOCが常用最小容量値Pである40%をより小さい状態(超過放電状態ともいう)かどうか、又は現在、過去の上記超過放電状態からの回復処理中(この実施例では後述するフラグF1又はF2の少なくともどちらかが1である状態)かどうかを調べ、そうでなければステップ907に進み、そうであればステップ906に進む。なお、電流積算方式ではなく、基準状態電池電圧VBwに基づいて予め記憶するマップに基づいて容量を推定してもよい。
【0061】
これは、常用最小容量値Pを超えない限り、推定容量がばらついても大きな問題とはならず、かつ、推定容量が常用最小容量値Pを超えて低下する超過放電時には、基準状態電池電圧VBwに対する容量ばらつきが格段に小さくなるので、少なくとも超過放電は基準状態電池電圧VBwにより過去の充放電履歴にかかわらず実用上ほぼ正確に検出できるからである。更に、図7からわかるように、常用最小容量値Pよりも放電する場合には容量変化に対する基準状態電池電圧VBwの変化が大きく、感度がよいという利点もある。
【0062】
ステップ906では、上記超過放電状態からの回復処理を行う。この回復処理の一例を図10を参照して以下に説明する。
まず、ステップ9060にて、フラグF1が0かどうかを調べる。このフラグF1が1であるということは、超過放電状態(たとえば図7のB点)から充電特性線46をたどって略Q点まで充電中であることを示すフラグである。
【0063】
フラグF1が1であればステップ9063に進み、0であればステップ9061に進み、目標容量値を80%にシフトする。次の、ステップ9062にてフラグF1を1にセットする。
次に、ステップ9063にて、ステップ903で算出したSOCが常用最大容量値Qである80%に達したかどうかを調べ、達していなければステップ907へ進み、達したら、特性線46をたどって略Q点に既に到達したと判断してステップ9064にてフラグF1を0にリセットする。
【0064】
次に、フラグF2が0かどうかを調べる(ステップ9065)。このフラグF2が1であるということは、略Q点から放電特性線45上をたどってC’点に達するまでの間の放電中であることを意味する。
フラグF2が1であればステップ9068へ進み、0であれば目標SOC(目標容量値)を60%に復帰させ(ステップ9066)、フラグF2を1にセットし(ステップ9067)、ステップ9068へ進む。
【0065】
ステップ9068では、上記放電によりステップ903で算出したSOCが60%に達したかどうかを判断し、達しなければステップ907へ進み、達したらフラグF2を0にリセットしてステップ903に進む。
なお、上記実施例では、ステップ903にて積算した容量値により動作点を判定したが、基準状態電池電圧でそれを判定してもよいことはもちろんである。たとえば、略Q点に達したかどうかは基準状態電池電圧VBwとVqとの一致で判定でき、C’点に達したかどうかは基準状態電池電圧VBwとVMとの一致で判定できる。
【0066】
このように制御すれば、図7のB点から略Q点をたどってC’点に動作点をシフトさせることができる。これに対し、B点から単に目標電圧値Vc=VMまで充電するだけでは容量はB’となり、その後、基準状態電池電圧をVp〜Vq間で制御する場合、基準状態電池電圧が目標電圧値Vc=VMである場合の実際の容量のばらつきはC’〜B’となってしまう。
【0067】
ステップ907では、演算された上記SOC及び目標SOCを発電機12等を制御している車両コントローラ28に実際に出力する。ステップ908では、SOCが上限80%と下限40%の範囲かどうかを監視する。このサブルーチンを図11、図12を参照して以下に説明する。
図11において、ステップ1001では、求めたSOCが80%を超えた場合を判別し、ステップ1002によってそれ以上の充電を禁止する充電制限指令をコントローラ12に出力する。なお、ステップ9061〜9063の処理が行われている場合(F1=1)の場合はこの限りではない。ステップ1003では、求めたSOCが40%を下回った場合を判別し、ステップ1004によって回復処理をするための回復処理指令をコントローラ12に出力する。
【0068】
他の方法として図12に示すように、基準状態電池電圧によりSOCの上限、下限を監視してもよい。
詳しく説明すると、ステップ1101で定電力放電時の基準状態電池電圧VBwがSOC80%の電圧に相当するV_Hiを越えた場合、ステップ1102によってそれ以上の充電を防止するために充電制限指令を出力する。なお、ステップ9061〜9063の処理が行われている場合(F1=1)の場合はこの限りではない。ステップ1103で定電力放電時の基準状態電池電圧VBwがSOC40%の電圧に相当するV_Loを下回った場合、ステップ1104によって回復処理をするための回復処理指令をコントローラ12に出力する。なお、この場合、定電力放電時の基準状態電池電圧VBoで上下限を検出するほか、定電流放電時の基準状態電池電圧(例えば、電流=0A時の電圧)VBoで上下限を検出しても良い。
【0069】
ステップ909では、走行が終了したかどうかを調べ、終了したらステップ910によって演算の結果を次回の走行開始時の初期値とするために図示しないメモリ等に保存し、一連の制御を終了する。
なお、上述した回復処理では、既に述べたように、基準状態電池電圧VBwか目標電圧値Vcに一致する場合のSOCのばらつき範囲は厳密には初期状態に回復しない。そこで、この実施例では、超過放電が発生したらその後、所定条件で均等充電(または満充電)を行う。この均等充電開始条件としては、運転者による手動開始でもよいし、あるいは走行状態を判別して自動的に決定してもよい。
【0070】
この均等充電による回復処理を図13を参照して以下に説明する。
まず、ステップ2000で均等充電を開始する。この実施例では、均等充電は満充電電圧Vq近傍まで充電後、微小電流で所定時間充電を継続する充電操作を言い、次にステップ2002で均等充電が完了したかどうかを調べる。
均等充電が完了したら、基準状態電池電圧VBwが常用最小電圧値Vpに達するまで又は電流積算容量が100%から40%になるまで放電し(ステップ2004)、次に、基準状態電池電圧VBwが常用最小電圧値Vpに達するまで又は電流積算容量が40%から60%になるまで充電し(ステップ2006)、ルーチンを終了する。
【0071】
(変形態様)
図9におけるステップ906の他の実施例を以下に説明する。
まず前提となる技術思想を図7を参照して説明する。
たとえばB点まで超過放電した場合、それからQ点を超える所定の容量値たとえばP’点まで充電する場合を考える。この容量値P’から放電する放電特性線(たとえば48)がO点を通るなら、その後、SOC1とSOC2との間で充放電を繰り返す限り、基準状態電池電圧VBwが目標電圧値Vc=VMに一致する状態で、容量値のばらつきの上限はO点となり、容量のばらつきはC’〜Bよりも左にシフトすることがわかる。ただし、このP点を超える超過放電が生じた後に実施するこの超過充電がその前の超過放電より大きければ、後の超過充電の影響野方が大きくなってしまう。
【0072】
前述したように、P点を超えて超過放電する場合の特性は最小電圧特性線41上に近接する。
したがって、予め、超過放電量(P点の容量40%を基準)または到達した最低電圧に対応して、好適な超過充電量(P点の容量80%を基準)又は到達するべき最高電圧を、予めマップに記憶しておくものとする。
【0073】
図14に示すフローチャートを参照して更に具体的に説明すると、ステップ3000では、このマップに基づき、算出した超過放電量(P点の容量40%を基準、図7では20%)または到達した最低電圧(図7ではB点の基準状態電池電圧VBw)に対応して、好適な超過充電量(P点の容量80%を基準)又は到達するべき最高電圧を読み出し、B点からP’点まで超過充電する。
【0074】
次のステップ3000では、上記超過充電量(P点の容量80%を基準)又は到達するべき最高電圧で決定される動作点(ここではP’点)からO点まで放電し、その後、基準状態電池電圧VBwが目標電圧値Vc=VM=1.1Vとなるように制御すればよい。あるいは、電流積算方式により容量を60%に制御する。
【0075】
このようにすれば、より簡単に動作点の復帰をおこなうことができる。
更にこの変形態様によれば、この超過放電を更に超過充電でキャンセルする方式を発展させて、その後、目標容量値から所定量だけ充電側又は放電側に離れた容量値へ交互に充放電しつつ、目標容量値に近づく操作を行うことも可能である。
【0076】
このようにすると、磁気ヒステリシス特性を有する強磁性体の残留磁化を次第に振幅が小さくなる交流磁界で交流消磁する場合と同じく、残留する分極による充放電ヒステリシスをもつ電池においても、基準状態電池電圧が目標電圧値Vcに一致する場合の容量を、この目標電圧値Vcに対応する目標容量値に良好に復帰させることができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池制御方法を用いたパラレルハイブリッド自動車の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示したハイブリッド車の電気系統を示すブロック図である。
【図3】この実施例で用いたニッケル水素電池(単セル)の車両実走行時の電圧−電流特性を示す図である。
【図4】図3に基づいて作成した定電力状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図5】図3に基づいて作成した定電流状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図6】図4における充放電軌跡を示す定電力状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図7】図4における超過放電及びその後の回復充電軌跡を示す定電力状態における電圧−容量特性を示す図である。
【図8】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図9】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図10】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図11】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図12】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図13】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
【図14】この実施例の電池制御方法を示すフローチャートである。
Claims (5)
- 発電手段と、前記発電手段が発電した電力を貯蔵するとともに走行モータに給電する電池とを備える電気自動車の電池制御方法において、
測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、
前記電池の略満充電状態からの放電時の容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線上の所定の常用最小容量値Pを設定し、
前記電池の略完全放電状態からの充電時の容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線上の所定の常用最大容量値Qを設定し、
前記常用最大容量値Qからの前記常用最小容量値Pに至らない所定量の放電又は前記常用最小容量値Pからの前記常用最大容量値Qに至らない所定量の充電を行って前記電池の容量を前記常用最大容量値Qと前記常用最小容量値Pとの間の常用容量範囲に入れ、
前記基準状態電池電圧を、前記常用最小容量値P及び常用最大容量値Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の所定の目標電圧値Vcに収束するように充放電制御を行い、
前記基準状態電池電圧が前記常用最小電圧値Vpを超えて低下した場合に、前記常用最大電圧値Vq近傍まで充電し、その後、前記目標電圧値Vc近傍まで放電する操作を行うことを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 発電手段と、前記発電手段が発電した電力を貯蔵するとともに走行モータに給電する電池とを備える電気自動車の電池制御方法において、
測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、
前記電池の略満充電状態からの放電時の容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線上の所定の常用最小容量値Pを設定し、
前記電池の略完全放電状態からの充電時の容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線上の所定の常用最大容量値Qを設定し、
前記常用最大容量値Qからの前記常用最小容量値Pに至らない所定量の放電又は前記常用最小容量値Pからの前記常用最大容量値Qに至らない所定量の充電を行って前記電池の容量を前記常用最大容量値Qと前記常用最小容量値Pとの間の常用容量範囲に入れ、
前記基準状態電池電圧を、前記常用最小容量値P及び常用最大容量値Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の所定の目標電圧値Vcに収束するように充放電制御を行い、
前記基準状態電池電圧が前記常用最小電圧値Vpを超えて低下した場合に、その後の所定の期間に満充電を行い、更にその後、放電を行うことにより、前記電池の容量を常用最小電圧値Vp近傍に復帰させ、その後、前記常用最小容量値Pからの前記常用最大容量値Qに至らない所定量の充電を行って前記電池の容量を前記常用最大容量値Qと前記常用最小容量値Pとの間の常用容量範囲に入れることを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項2記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、
前記満充電は、均等充電により行われることを特徴とする電気自動車の電池制御方法。 - 発電手段と、前記発電手段が発電した電力を貯蔵するとともに走行モータに給電する電池とを備える電気自動車の電池制御方法において、
測定した電池の測定電圧値及び測定電流値に基づいて所定の基準電流値または所定の基準電力値における電池電圧である基準状態電池電圧を演算し、
前記電池の略満充電状態からの放電時の容量ー電圧特性を示す放電時最小電圧特性線上の所定の常用最小容量値Pを設定し、
前記電池の略完全放電状態からの充電時の容量ー電圧特性を示す充電時最大電圧特性線上の所定の常用最大容量値Qを設定し、
前記常用最大容量値Qからの前記常用最小容量値Pに至らない所定量の放電又は前記常用最小容量値Pからの前記常用最大容量値Qに至らない所定量の充電を行って前記電池の容量を前記常用最大容量値Qと前記常用最小容量値Pとの間の常用容量範囲に入れ、
前記基準状態電池電圧を、前記常用最小容量値P及び常用最大容量値Qに個別に対応する常用最大電圧値Vq及び常用最小電圧値Vpの間の所定の目標電圧値Vcに収束するように充放電制御を行い、
前記基準状態電池電圧が前記常用最小電圧値Vpから所定量だけ超えて低下した場合に、前記基準状態電池電圧が前記常用最大電圧値Vqから前記所定量を超えない範囲で充電し、その後、前記目標電圧値Vcまで放電する操作を行うことを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。 - 請求項1乃至4のいずれか記載の発電型電気自動車の電池制御方法において、前記電池はニッケル水素電池であることを特徴とする発電型電気自動車の電池制御方法。
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