JP3737281B2 - 坂道発進補助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車に利用する。本発明は、車両を発進させるときに、ブレーキペダルを解放させても、一時的にブレーキ圧力を保持させる運転補助装置に関する。本発明は、坂道発進補助装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
運転者が坂道で車両を発進させるときには、坂道発進の運転操作を行う。すなわち、運転者は右足でブレーキペダルを踏み、左足でクラッチペダルを踏み、ギヤを発進位置または後退位置に設定してから、クラッチペダルを半クラッチ状態にしながらブレーキペダルを解放し、右足をアクセルペダルに踏みかえる運転操作を行う。このための運転補助装置として坂道発進補助装置が開発された。
【0003】
坂道発進補助装置は、運転者が右足でブレーキペダルを踏み、左足でクラッチペダルを踏み、ギヤを発進位置または後退位置に設定した後に、右足のブレーキペダルを解放してもブレーキ圧力を一時的に保持する装置である。この装置では、クラッチが適正な半クラッチ状態になり、アクセルペダルが踏み込まれエンジン回転速度が適正に上昇してから、ブレーキ圧力が自動的に解放されるように構成されている。この装置が装備された車両では、ブレーキペダルを解放しても一時的にブレーキ圧力が保持されているから、クラッチ操作が適正に行われないことがあっても、車両が運転者の意図する方向と逆方向に発進することを防止することができる。近年この坂道発進補助装置が中型または大型の商業車両に広く普及した。また、この装置は必ずしも坂道でなく平坦な道路であっても、渋滞により停車発進を繰り返すような場面で広く使用されるようになった。
【0004】
このような坂道発進補助装置は、特開平2−28041号公報、特開平7−215185号公報、特開平8−113122号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願出願人は坂道発進補助装置を装備した自動車を製造販売するが、利用者から坂道発進補助装置を装備した車両は、敏速な操作ができない、エンスト(エンジン停止)を起こす、などの苦情が寄せられた。本願発明者はこのような苦情に対応して試験研究を繰り返した。
【0006】
本願出願人はこの対策のひとつとして、エンジンのアイソクロナス制御を提案した(特開平9−170468号公報参照)。これは、エンジンに対する燃料供給量はアクセルの踏みしろに対応するところ、この燃料供給特性を一時的に変更して、アクセルの踏みしろにかかわらず、クラッチが接状態になった後は、エンジン回転速度を維持させるように燃料供給量を急激に増大させるものである。これは坂道発進補助装置に対して有効な改良であるが、なお敏速な運転操作ができないとの不満があった。
【0007】
またこれらの敏速な運転操作に対する不満や、エンストを起こしやすいなどの不満は、とくに車両が急な坂道に停車しているとき、あるいは車両の積載重量が大きいときに発生していることも認識された。
【0008】
本発明はこのような背景に行われたものであって、敏速な運転操作を可能とする坂道発進補助装置を提供することを目的とする。本発明は、エンジン停止を起こしやすい、との苦情を少なくすることができる坂道発進補助装置を提供することを目的とする。本発明はとくに、急な坂道で利用するときに有効な坂道発進補助装置を提供することを目的とする。本発明は、積載量の大きいときに有効な坂道発進補助装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、路面勾配および積載重量が変化しても、その変化に対応して坂道発進を敏速に行いエンジン停止が起きないようにすることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明は、ブレーキ圧力保持用電磁弁と、ブレーキペダル・センサと、クラッチペダル・センサと、ギヤ位置センサと、前記各センサ出力を取込み、ブレーキペダルが踏まれ車速が零になりかつクラッチペダルが踏まれた状態でブレーキペダルが解放されても前記ブレーキ圧力保持弁を一時的に圧力保持状態に維持させる制御手段とを備えた坂道発進補助装置において、前記制御手段は、前記状態でギヤが発進または後退位置に設定されたときアクセルペダルが踏まれなくとも燃料供給量を所定値だけ増大させる手段を含むことを特徴とする。
【0011】
車両進行方向の勾配センサを備え、前記所定値をこの勾配センサの出力値および前記ギヤ位置に対応して設定する手段を含み、さらに、積載量センサを備え、前記所定値をこの積載量センサの出力値に対応して設定する手段を含み、前記制御手段は、燃料供給量を所定値だけ増大させた後にエンジン回転速度が降下するに応じて燃料供給量を増大させる(アイソクロナス制御)手段を含むことが望ましい。
【0012】
クラッチペダルが踏まれ、かつギヤ位置が1速または2速あるいは後退の位置に設定された状態は、発車を意図しての操作であるので、アクセルペダルの操作の有無にかかわらず燃料供給量を所定量だけ増大させ、エンジン回転速度が降下するに応じて燃料供給量を増大させる。その後にクラッチペダルの解放に応じてブレーキ圧力が解放される。
【0013】
これにより、停車後の発進時にはアイドリング回転速度が上昇した状態、すなわちエンジン出力が増大された状態でクラッチの接続が行われるので、エンジンに急な負担がかけられることにより生じるエンジン停止を回避することができ、坂道発進時の運転操作を自動的に敏速に行うことができる。
【0014】
上り勾配の坂道発進に必要とされるエンジン・トルクは、そのときの勾配、設定されたギヤ位置および積載量によって異なるので、増大させる燃料供給量は、勾配センサ、ギヤ位置センサおよび積載量センサの出力が示す勾配、ギヤ位置および積載量に対応させて設定する。これは、例えば、勾配、ギヤ位置および積載量に対応して増大させる燃料供給量をあらかじめマップとして保持し、このマップを参照することによって設定することができ、ハードウェアの変更をともなうことなくソフトウェアにより実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
【0016】
【実施例】
次に、本発明実施例装置を図面に基づいて説明する。図1は本発明実施例装置の要部の構成を示すブロック図である。
【0017】
本発明実施例装置は、ブレーキ圧力保持電磁弁1と、ブレーキペダル・センサ2と、クラッチペダル・センサ3と、ギヤ位置センサ4と、これら各センサ出力を取込み、ブレーキペダルが踏まれ、車速が零になり、かつクラッチペダルのストロークが深く踏まれた状態でブレーキペダル11が解放されてもブレーキ圧力保持電磁弁1を一時的に圧力保持状態に維持させる制御手段10とが備えられる。
【0018】
さらに、本発明の特徴として、車両進行方向の勾配センサ5と、積載量センサ6とが備えられ、制御手段10には、前記状態でギヤが発進または後退位置に設定されたときアクセルペダルが踏まれなくとも燃料供給量を所定値だけ増大させる手段と、前記所定値をこの勾配センサ5の出力値、ギヤ位置センサ4の出力値および積載量センサ6の出力値にそれぞれ対応して設定する手段とが含まれる。
【0019】
制御手段10には、増大させる燃料供給量を設定するためのマップが備えられる。図2は本発明実施例装置の制御手段に備えられる路面勾配とアイドリング回転速度とによる特性が記録されたマップの一例を示す図、図3は本発明実施例装置の制御手段に備えられるアイドリング回転速度と燃料供給量とによる特性が記録されたマップの一例を示す図である。
【0020】
図2に示すマップには、三つのゾーンに区分された路面勾配S(%)に対するエンジン回転速度NE(rpm)が示されている。この例では、路面勾配Sが6(%)以下の範囲をAゾーンとし、このAゾーンにおいて維持しなければならないエンジン回転速度NEは450(rpm)とされる。また、路面勾配Sが6(%)から9(%)までの範囲をBゾーンとし、このBゾーンにおいて維持しなければならないエンジン回転速度NEは600(rpm)とされる。さらに、路面勾配Sが9(%)を越える範囲をCゾーンとし、このCゾーンにおいて維持しなければならないエンジン回転速度NEは750(rpm)とされる。
【0021】
図3に示すマップは、この図2に示すAゾーン、BゾーンおよびCゾーンの三つのゾーン毎のエンジン回転速度NE(rpm)に対する燃料供給量Qを示すアイソクロナス曲線である。各ゾーン毎に設定された維持しなければならないエンジン回転速度NE(rpm)を得るための燃料供給量Q(cm3 /sec)が示されている。この制御曲線はアイソクロナス制御であって、エンジン回転速度が負荷により低下しはじめると、燃料供給量を急激に大きくするように制御する。
【0022】
この図2および図3に示すマップにしたがって発進時における燃料の供給を制御する。例えば、路面勾配Sが7(%)であったとすると図2に示すようにこの勾配はBゾーンに属する。したがってその燃料供給量の制御は図3に示す路面勾配Bゾーンを示す曲線にしたがって行われる。例えば、エンジン回転速度NEが500(rpm)に低下したとすると、維持されるべきエンジン回転速度600(rpm)を得るために必要とされる燃料供給量QはQ1 となる。
【0023】
このような図2および図3に示すマップを例えば大、中、小に区分した積載量およびギヤ位置毎に保持し、ギヤ位置センサ4、勾配センサ5およびエンジン回転速度センサ8の検出出力に対応して選択参照することにより燃料供給量Qを設定する。なお、積載量の区分によってエンジン回転速度NEおよび燃料供給量Qの値は異なり、積載量が大きければその値は大きくなり、積載量が小さければその値は小さくなる。また、設定するギヤ位置によってもその値は異なる。
【0024】
制御手段10には、前記各センサの出力の他にアクセル開度を検出するアクセル・センサ7、およびエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサ8の出力が入力され、制御手段10からはブレーキ圧力保持電磁弁1にその開閉を制御する制御信号が出力される。
【0025】
ここで、このように構成された本発明実施例装置による坂道発進補助動作について説明する。図4は本発明実施例装置の制御手段による坂道発進補助動作の流れを示すフローチャート、図5は本発明実施例装置の動作タイミングチャートである。
【0026】
制御手段10は、ブレーキペダル・センサ2、クラッチペダル・センサ3およびギヤ位置センサ4の出力を取込み、ブレーキペダルが踏まれ、車速が零になり、かつクラッチペダルのストロークが深く踏まれた状態にあるときに、ブレーキペダル11が解放されたか否かを判定する。
【0027】
ブレーキペダルが踏まれた後に解放されていれば、運転者により停車を意図する操作が行われたものとして、ブレーキ圧力保持電磁弁1に制御信号を送出する。ブレーキ圧力保持電磁弁1はこの制御信号にしたがってブレーキ・バルブ12を動作させブレーキ圧力を保持する。
【0028】
このブレーキ圧力を保持した状態で変速ギヤが1速、2速または後退のいずれかに投入されているか否かを判定し、そのいずれかに投入されていれば、ギヤ位置センサ4、勾配センサ5および積載量センサ6の出力を取込み、投入された変速ギヤ位置、路面勾配の区分および積載重量の区分を特定する。
【0029】
この特定した変速ギヤ位置、路面勾配の区分および積載重量の区分にしたがってマップを参照し増大させた燃料供給量Qを設定する。例えば、積載量が前述した大、中、小のいずれかの区分にあり、かつギヤ位置が1速、2速、後退のいずれかに設定されているときに、勾配センサ5が検出した勾配Sが7(%)であったとすると、図2に示すマップ上でBゾーンに属し、この状態で必要とされるエンジン回転速度NEは600(rpm)となる。
【0030】
このとき、エンジン回転速度NEが500(rpm)に低下したとすると、図3に示す路面勾配Bゾーンの曲線から燃料供給量QはQ1 となる。このようにして設定された量の燃料を図5に示すタイミングでエンジンに供給する。
【0031】
これにより、アクセルペダルが踏まれなくても、図5の破線で示す従来の回転速度の立上りより早いタイミングで回転速度が上昇しエンジン・トルクを増大させる。この状態でクラッチ接の操作が行われ急に負荷がかけられても、エンジンはそれを越えるトルクで駆動しているので、発進時に発生しがちなエンジン停止は確実に回避される。
【0032】
制御手段10は、クラッチペダル・センサ3からの出力により、クラッチが接状態になったことを検出すると、ブレーキ圧力保持電磁弁1に制御信号を出力する。ブレーキ圧力保持電磁弁1はこの制御信号にしたがってブレーキ・バルブ12を動作させブレーキ圧力の保持状態を解除する。その後は、エンジン回転速度が降下するに応じて図3に示すアイソクロナス曲線にしたがった制御を行う。
【0033】
図6は本発明実施例装置の制御手段による別の坂道発進補助動作の流れを示すフローチャートである。これは運転者が、ブレーキペダルを踏んだままでギヤを1速、2速または後退に操作したときの制御である。制御手段10はこの図6に示す流れにしたがって制御を行う。
【0034】
すなわち、ブレーキペダルが踏まれ、車速が零になり、かつクラッチペダルのストロークが深く踏まれた状態にあって、変速ギヤが1速、2速または後退の位置のいずれかに投入されると、制御手段10は、ギヤ位置センサ4、勾配センサ5および積載量センサ6の出力を取込み、投入された変速ギヤ位置、路面勾配の区分および積載重量の区分を特定する。
【0035】
この特定した変速ギヤ位置、路面勾配の区分および積載重量の区分にしたがってマップを参照して増大させた燃料供給量Qを設定する。ここで、ブレーキペダルの踏込みが解放されると、前述の動作によりブレーキ・バルブ12を動作させてブレーキ圧力を保持する。
【0036】
この状態でクラッチペダルの踏込みがゆるめられクラッチが接状態になったときに、ブレーキ圧力の保持状態を解除し、負荷の接続によるエンジン回転速度の降下に応じてアイソクロナス曲線にしたがった制御を行う。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、坂道発進時に設定されたギヤ位置、路面勾配および積載重量に応じて増大させる燃料供給量を自動的に設定し、ギヤが発進または後退の位置に設定されたときに、アクセルペダルが踏まれなくとも、設定した燃料供給量をエンジンに供給することができ、これにより、発進時のエンジン・トルクが増大され急に負荷がかかっても敏速な運転操作が自動的に行われ、エンジンが停止することを回避することができる。また、この装置はハードウェアを増設することなくソフトウェアによって多くの費用を要することなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例装置の要部の構成を示すブロック図。
【図2】本発明実施例装置の制御手段に備えられる路面勾配とアイドリング回転速度とによる特性が記録されたマップの一例を示す図。
【図3】本発明実施例装置の制御手段に備えられるアイドリング回転速度と燃料供給量とによる特性が記録されたマップの一例を示す図。
【図4】本発明実施例装置の制御手段による坂道発進補助動作の流れを示すフローチャート。
【図5】本発明実施例装置の動作タイミングチャート。
【図6】本発明実施例装置の制御手段による別の坂道発進補助動作の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 ブレーキ圧力保持電磁弁
2 ブレーキペダル・センサ
3 クラッチペダル・センサ
4 ギヤ位置センサ
5 勾配センサ
6 積載量センサ
7 アクセル・センサ
8 エンジン回転速度センサ
10 制御手段
11 ブレーキペダル
12 ブレーキ・バルブ
Claims (4)
- ブレーキ圧力保持用電磁弁と、ブレーキペダル・センサと、クラッチペダル・センサと、ギヤ位置センサと、前記各センサ出力を取込み、ブレーキペダルが踏まれ車速が零になりかつクラッチペダルが踏まれた状態でブレーキペダルが解放されても前記ブレーキ圧力保持弁を一時的に圧力保持状態に維持させる制御手段とを備えた坂道発進補助装置において、
前記制御手段は、車両が停車状態でクラッチペダルが所定値より深く踏まれブレーキ圧力が保持された状態でギヤが1速または2速の発進位置または後退位置に設定されたときはアクセルペダルが踏まれなくとも燃料供給量を所定値だけ増大させる手段を含む
ことを特徴とする坂道発進補助装置。 - 車両進行方向の勾配センサを備え、前記所定値をこの勾配センサの出力値および前記ギヤ位置に対応して設定する手段を含む請求項1記載の坂道発進補助装置。
- 積載量センサを備え、前記所定値をこの積載量センサの出力値に対応して設定する手段を含む請求項1または2記載の坂道発進補助装置。
- 前記制御手段は、燃料供給量を所定値だけ増大させた後にエンジン回転速度が降下するに応じて燃料供給量を増大させる手段を含む請求項1記載の坂道発進補助装置。
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Publications (2)
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JPH11343888A JPH11343888A (ja) | 1999-12-14 |
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Family Applications (1)
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JP15156798A Expired - Lifetime JP3737281B2 (ja) | 1998-06-01 | 1998-06-01 | 坂道発進補助装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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Families Citing this family (3)
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-
1998
- 1998-06-01 JP JP15156798A patent/JP3737281B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US8090499B2 (en) | 2004-11-23 | 2012-01-03 | GM Global Technology Operations LLC | Anti-rollback control via grade information for hybrid and conventional vehicles |
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JPH11343888A (ja) | 1999-12-14 |
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