JP3737008B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷としての誘導加熱用の電流型インバータ回路に直流電力を供給するために、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、工作機械の刃等の炭素鋼を焼き入れする等のために、誘導加熱を行う場合には、交流電力を出力するとともに、負荷に応じて、その出力周波数が調節可能となったインバータ装置が利用されている。
インバータ装置は、電力会社が供給する交流電力を利用するために、交流電力を直流電力に変換する整流装置を備えたものが一般的である。
インバータ装置に設けられる整流装置には、サイリスタ等の電力制御素子で形成されたブリッジ回路と、ブリッジ回路で整流した脈動分を含む直流電力を平滑する直流リアクトルと、ブリッジ回路の電力制御素子を点弧制御する制御回路が設けられている。
【0003】
このような整流装置では、特公平8−22145号公報に示されるように、ブリッジ回路の電力制御素子を点弧制御するにあたり、ブリッジ回路から出力される直流パルス電圧の幅を、出力すべき電力に応じて調節するパルス幅制御が採用できる。
このパルス幅制御では、ブリッジ回路で整流した電流が直流リアクトルを介して負荷に供給される整流モードと、ブリッジ回路および負荷が閉回路を形成し、この閉回路に直流リアクトルの誘導電流が循環する閉回路モードとが交互に繰り返されるように、電力制御素子がスイッチングされる。
このように整流装置の電力制御素子をパルス幅制御すれば、低次の高調波が取り除かれるうえ、直流電圧制御の深さにかかわらず力率がほぼ1となり、力率の改善が図れるようになる。
ここで、ブリッジ回路の交流入力部分に、電力制御素子のスイッチング動作により発生する過電圧を吸収するコンデンサを設ければ、整流装置で発生する高調波の交流電源側への逆流がコンデンサに抑制され、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が低減されるようになる。
そのうえ、パルス幅制御により、低次の高調波が抑制され、前述のコンデンサは、高次の高調波を吸収すればよいこととなるので、その静電容量が小さくなり、整流装置全体の小型化が図れる。
【0004】
一方、誘導加熱に用いられる電流型インバータ装置としては、図8に示されるように、三相交流電力をサイリスタ51および直流リアクトル52で直流電力に変換する整流回路50と、この整流回路50からの直流電圧を交流電力に変換するインバータ回路3と、このインバータ回路3から出力される交流電力の周波数を負荷7の共振周波数となるように制御する位相同期ループ回路(以下、「PLL回路」と略す。)40とを備えたインバータ装置60が利用されている。
【0005】
ここで、インバータ回路3には、ブリッジ状に接続された高速スイッチング素子である電力制御用のMOSFET31が設けられている。各MOSFET31には、当該MOSFET31をサージ電圧から保護するブロッキングダイオード32が直列に接続されている。
また、インバータ回路3には、誘導加熱炉等の誘導性の負荷7が接続されている。この負荷7は、その等価回路がインダクタンスLおよびキャパシティCから構成されていると考えられる。この負荷7への電流I1および電圧V1を検出するために、変流器33および変圧器34が設けられている。
PLL回路40には、負荷7への電流I1および電圧V1の位相差を検出する位相比較回路41と、位相比較回路41が検出した位相差に応じて、予め設定された周波数設定値を加減するアナログ加減算器42と、このアナログ加減算器42が出力する電圧に応じた周波数の信号を出力する電圧制御発振器43と、電圧制御発振器43の出力する信号の周波数に応じて、インバータ回路3の各MOSFET31が有するゲートA〜Dへ信号を順次送出するゲート信号制御回路44とが設けられている。
【0006】
このようなインバータ装置60によれば、高周波と見なせる高い周波数の交流電力が発生可能となり、鋼材等の高周波焼き入れに利用可能となる。
そのうえ、負荷7への電流I1および電圧V1の位相差がなくなるように出力の周波数が制御されるので、出力電力の周波数がインダクタンスLおよびキャパシティCからなる負荷7の共振周波数と一致し、負荷7を効率よく運転させることが可能となる。
また、誘導加熱処理が進むにつれて加熱条件が変更される等により、負荷7のインピーダンス、例えば、インダクタンスが減少すると、電流が進み、負荷7の共振周波数は、変動して、インバータ回路3の出力周波数より高い周波数へ移行するが、インバータ回路3の出力周波数も、PLL回路40の動作により、負荷7の共振周波数となるように調節され、効率的な運転の維持が図られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このようなインバータ装置では、負荷のインダクタンスが減少すると、共振周波数が変動するだけでなく、負荷に流れる電流も大きくなるので、負荷への電流を抑制する必要があるが、整流回路の電力制御素子は、一度導通すると、電圧が逆方向に反転するまで、電流を阻止することができないサイリスタであるので、電流抑制が遅れてしまう。
しかも、負荷のインダクタンスが減少すると、出力周波数をより高い周波数に移行させるので、周波数が高くなる分さらに迅速に出力電流を抑制する必要があるにもかかわらず、出力電流の抑制が遅れるので、サージ電圧が大きくなり、交流電源側へ戻る高調波成分が増えるという問題がある。
また、整流装置をパルス幅制御するにあたり、電力制御素子を高速でスイッチングさせるパルス状のキャリア波を用いているので、このキャリア波の高周波成分が電源側に誘導されると、前述のコンデンサでは、キャリア波の高周波成分を吸収できず、当該高周波成分が交流電源側に漏れ、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が低減されないという問題がある。
さらに、交流電源が三相交流とされ、かつ、構内送電線として三相4線式が採用される場合がある。この場合、整流装置の入力側の結線も三相4線式となり、この三相4線式における接地線と各相との間に、整流装置や逆変換装置が発生する高周波成分が誘導されると、この高周波成分は、前述のコンデンサに吸収されず、交流電源側に漏れ、この点からも、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が低減できないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が確実に低減されるようになる電力変換装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、誘導加熱用の高周波電力を発生する電流型インバータに直流電力を供給するために、単相交流電源からの電力を電力制御素子で整流するブリッジ方式の整流回路と、この整流回路から出力されるパルス状に断続する電流を平滑して直流電流にする直流リアクトルと、出力すべき電力に応じて前記電力制御素子の導通時間を制御するパルス幅制御回路とを備えた電力変換装置であって、前記整流回路の前記電力制御素子が高速でスイッチング動作を行うことのできる自己消弧素子であり、前記パルス幅制御回路は、前記自己消弧素子を断続的に点弧させ、前記整流回路で整流した直流電力を前記直流リアクトルを介して前記電流型インバータに供給する整流モードと前記整流回路および前記電流型インバータで閉回路を形成してこの閉回路に前記直流リアクトルの誘導電流を循環させる閉回路モードとを繰り返し、前記整流回路から出力される直流パルス電圧の平均値に応じて前記自己消弧素子の点弧時間を調整してパルス幅を制御することにより前記電力制御素子の導通時間の制御をし、前記整流回路の交流入力部分には、前記自己消弧素子のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサと、前記自己消弧素子の前記スイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトルとが接続されていることを特徴とする。
また、本発明は、誘導加熱用の高周波電力を発生する電流型インバータに直流電力を供給するために、三相交流電源からの電力を電力制御素子で整流するブリッジ方式の整流回路と、この整流回路から出力されるパルス状に断続する電流を平滑して直流電流にする直流リアクトルと、出力すべき電力に応じて前記電力制御素子の導通時間を制御するパルス幅制御回路とを備えた電力変換装置であって、前記整流回路の前記電力制御素子が高速でスイッチング動作を行うことのできる自己消弧素子であり、前記パルス幅制御回路は、前記自己消弧素子を断続的に点弧させ、前記整流回路で整流した直流電力を前記直流リアクトルを介して前記電流型インバータに供給する第1整流モードおよび第2整流モードと前記整流回路および前記電流型インバータで閉回路を形成してこの閉回路に前記直流リアクトルの誘導電流を循環させる閉回路モードとを繰り返し、これら第1整流モード、第2整流モードおよび閉回路モードのそれぞれで費やされる時間の和が、前記三相交流電源からの三相出力電圧の一周期を六等分した期間となる範囲で、前記電流型インバータに供給すべき電力に応じて前記費やされる時間のそれぞれを調整する制御をすることにより、前記電力制御素子の導通時間の制御をし、前記整流回路の交流入力部分には、前記自己消弧素子のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサと、前記自己消弧素子の前記スイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトルとが接続されていることを特徴とする。
このような本発明では、負荷のインダクタンスの減少に対し、出力周波数が上昇するとともに、負荷に流れる電流が大きくなっても、整流回路の自己消弧素子が迅速に動作するので、負荷への電流が迅速に抑制されるようになる。
このため、負荷のインダクタンスが減少し、出力周波数がより高い周波数に変更されても、出力電流の抑制が迅速に行われ、サージ電圧が大きくならず、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が増えることがないうえ、整流回路の自己消弧素子の高速スイッチングにより、負荷の状態に応じた適切な電流が当該負荷に供給されるようになる。
【0010】
以上において、前記整流回路の交流入力部分には、前記自己消弧素子のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサと、前記自己消弧素子の前記スイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトルとが接続されていることが好ましい。
このようにすれば、整流回路の交流入力部分に設けたコンデンサが、自己消弧素子のスイッチング動作により発生する過電圧を吸収するので、モード切替時等のスイッチング動作時に発生する高調波の交流電源側への逆流が抑制されるようになる。
また、整流回路の交流入力部分に設けた交流リアクトルが、コンデンサを通過して交流電源側へ逆流しようとするキャリア波の高周波成分(電流)を阻止するので、整流回路が自己消弧素子をスイッチングさせるキャリア波を発生させても、当該キャリア波の高周波成分が交流電源側に漏れることはない。
これらにより、自己消弧素子のスイッチング動作により発生する雑音としての高調波、および、スイッチング動作に必要な制御信号であるキャリア波に含まれる高周波成分の両方が交流電源側へ逆流せず、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が確実に低減されるようになる。
そのうえ、パルス幅制御により、低次の高調波が抑制されるので、前述のコンデンサは、高次の高調波を吸収できればよく、その静電容量は小さく、また、前述の交流リアクトルは、キャリア波の高周波成分が比較的高い周波数を有しているので、そのインダクタンスは小さい。このため、コンデンサおよび交流リアクトルを設けても、電力変換装置全体の小型化が阻害されることはない。
【0011】
また、前記交流電源からの前記交流電力は、三相交流電力とされ、前記整流回路の入力側の各相の間には、前記コンデンサがそれぞれ接続され、前記整流回路の入力側の各相は、それぞれ前記交流リアクトルを介して前記交流電源の各相と接続されていることをが望ましい。
このようにすれば、スイッチング動作時に発生する高調波(過電圧)が交流電源側に逆流しようとしても、当該高調波をコンデンサが吸収し、かつ、スイッチング動作のための制御信号であるキャリア波の高周波成分が交流電源側に逆流しようとしても、交流リアクトルがその逆流を阻止するので、これらの高調波(過電圧)や高周波成分が交流電源側に漏れることはない。
この際、交流電源が三相交流とされ、かつ、構内送電線として三相4線式が採用されたために、整流回路の入力側の結線も三相4線式とされ、この三相4線式における接地線と各相との間に、整流回路や逆変換装置が発生する高周波成分が誘導される可能性があっても、誘導される高周波成分は、交流リアクトルに阻まれて、交流電源側に逆流しないので、この点からも、交流電源側の電流に含まれる高調波成分が低減される。
【0012】
さらに、自己消弧素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar mode Transistor)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)およびGTO(Gate Turn Off Thyristor)のいずれかの高速スイッチング素子であることが望ましく、特に、IGBTとするのが好ましい。
このような高速スイッチング素子で整流回路を形成すれば、負荷へ出力すべき電力に応じて自己消弧素子の導通時間を細かく調節することができ、きめの細かいパルス幅制御回路が可能となる。これにより、負荷にとって常に最適な電力量が当該負荷に供給されるようになる。
特に、IGBTを採用すれば、高速でスイッチング動作が行えるうえ、導通状態におけるコレクタおよびエミッタ間の直流抵抗が小さく、整流回路、ひいては、インバータ装置全体の効率が良好なものとなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した素子、回路および装置と同じものには同一符号を付し、その説明を省略若しくは簡略にする。
図1には、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1が示されている。この電力変換装置1は、単相交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換するものである。電力変換装置1の出力は、直流電力を交流電力に変換するインバータ装置3に接続されている。これにより、電力変換装置1が変換した直流電力は、インバータ装置3で誘導加熱に必要な高周波電力に変換されるようになっている。
ここで、インバータ装置3は、誘導加熱に用いられる電流型インバータであり、前述したインバータ回路3と同じものである。このインバータ装置3には、前述したPLL回路40(図示略)が設けられており、インバータ装置3から負荷7(図示略)へは、負荷7の共振周波数とされた高周波電力が供給されるようになっている。
【0014】
電力変換装置1には、主要素子として複数の自己消弧素子4を有し、これらの自己消弧素子4で交流電力を整流するブリッジ方式の整流回路10と、この整流回路10から出力されるとともに、パルス状に断続する電流を平滑して直流電流にする直流リアクトル20と、出力すべき電力に応じて自己消弧素子4の導通時間を制御するパルス幅制御回路30とが設けられている。
また、整流回路10の交流入力部分には、自己消弧素子4のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサ5と、自己消弧素子4のスイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトル6とが接続されている。
ここで、整流回路10の自己消弧素子4としては、高速スイッチング素子である電力制御用のMOSFETが採用されている。これらの自己消弧素子4の各々には、当該自己消弧素子4を過大な逆電圧から保護するためのダイオード8が直列に接続されている。
【0015】
直流リアクトル20は、二つの直流リアクトル21,22を備えたものである。直流リアクトル21は、整流回路10の陽極出力側に接続され、直流リアクトル22は、整流回路10の陰極出力側に接続され、これらの直流リアクトル21,22は、磁気的に相互に結合されている。これにより、直流リアクトル21,22には、相手方に流れる直流電流の時間的な変化の大きさに応じた逆起電力が生じ、整流回路10側で発生する脈動や、インバータ装置3側の負荷変動があっても、インバータ装置3に供給される電流が大きく変動しないようになっている。
【0016】
パルス幅制御回路30は、自己消弧素子4を断続的に点弧するとともに、整流回路10から出力される直流パルス電圧の幅を、出力すべき電力に応じて調節するパルス幅制御を行うものである。
パルス幅制御回路30のパルス幅制御は、入力される交流電圧eと、整流回路10から出力される直流電圧Vとを検出・監視し、インバータ装置3への直流電圧が一定の値となるように、整流回路10から出力される直流パルス電圧Vの幅を拡張する方式のものである。これにより、インバータ装置3の消費電力が増大したために、電力変換装置1の出力電流Iが増え、その内部抵抗による電圧降下が大きくなり、インバータ装置3への出力電圧が低下しようとすると、直流パルス電圧Vの幅が拡張され、当該出力電圧の低下が抑制され、インバータ装置3へ供給される電力が増大するようになっている。
【0017】
このパルス幅制御には、後述する整流モードと閉回路モードと設定されてる。パルス幅制御回路30は、整流モードおよび閉回路モードが交互に繰り返されるように、自己消弧素子4のゲートに与えるパルス状の制御信号であるキャリア波を発生し、このキャリア波で自己消弧素子4を適宜点弧するようになっている。
整流モードは、整流回路10で整流した電流を負荷に供給するモードである。
すなわち、整流モードでは、正の半波の入力交流電圧に対して、図2(A)に示されるように、整流回路10の自己消弧素子4A,4Dが点弧され、整流回路10で整流した電流が直流リアクトル20を介してインバータ装置3に供給されるようになっている。
一方、負の半波の入力交流電圧に対しては、図2(C)に示されるように、整流回路10の自己消弧素子4B,4Cが点弧され、整流回路10で整流した電流が直流リアクトル20を介して負荷に供給されるようになっている。
【0018】
閉回路モードは、整流回路10およびインバータ装置3で閉回路を形成し、この閉回路に直流リアクトル20の誘導電流が循環するモードである。
すなわち、閉回路モードでは、正の半波の入力交流電圧に対して、図2(B)に示されるように、整流回路10の自己消弧素子4A,4Bが点弧され、直流リアクトル20に蓄えられた電力がインバータ装置3に供給されるようになっている。
一方、負の半波の入力交流電圧に対しては、図2(D)に示されるように、整流回路10の自己消弧素子4C,4Dが点弧され、直流リアクトル20に蓄えられた電力がインバータ装置3に供給されるようになっている。
このようなパルス幅制御により、低次の高調波が除去され、しかも、直流電圧制御の深さにかかわらず力率がほぼ1となり、力率が改善される。
【0019】
次に、本実施形態の電力変換装置1の動作について説明する。
電力変換装置1に、図3(A)に示されるように、正弦波状に変化する単相の交流電圧eを与える。
すると、交流電圧eが正となる期間T1においては、整流回路10の自己消弧素子4A,4Dが点弧されるとともに、自己消弧素子4B,4Cが消弧される整流モード(図2(A)参照)と、自己消弧素子4A,4Bが点弧されるとともに、自己消弧素子4C,4Dが消弧される閉回路モード(図2(B)参照)とが交互に繰り返される。
ここで、直流パルス電圧Vは、直流パルス電圧Vの平均値に応じて、自己消弧素子4A,4Dの点弧時間を調節することにより、図3(B)に示されるように、その幅W1〜W6が制御される。
なお、閉回路モードから整流モードへ移行する際には、自己消弧素子4Bが消弧され、閉回路に流れる電流が遮断され、直流リアクトル20に蓄積された電磁エネルギーの作用により、大きな過電圧が瞬間的に発生する。
この過電圧は、整流回路10の入力側に設けられたコンデンサ5で吸収され、かつ、当該過電圧により発生する高周波電流は、交流リアクトル6により、交流電源2側へ逆流するのを阻止され、これらの過電圧および高周波電流は、交流電源2には到達しない。
【0020】
一方、交流電圧eが負となる期間T2においては、整流回路10の自己消弧素子4B,4Cが点弧されるとともに、自己消弧素子4A,4Dが消弧される整流モード(図2(C)参照)と、自己消弧素子4C,4Dが点弧されるとともに、自己消弧素子4A,4Bが消弧される閉回路モード(図2(D)参照)とが交互に繰り返される。
ここで、直流パルス電圧Vは、期間T1と同様に、直流パルス電圧Vの平均値に応じて、自己消弧素子4A,4Dの点弧時間を調節することにより、図3(B)に示されるように、その幅W7〜W12 が制御される。
このようなパルス幅制御により、インバータ装置3へは適度な大きさの直流電流が流れ、インバータ装置3の作動に必要な電力が常に供給される。
なお、期間T2においても、閉回路モードから整流モードへ移行する際には、自己消弧素子4Dの消弧により、大きな過電圧が瞬間的に発生するが、この過電圧は、コンデンサ5で吸収され、かつ、当該過電圧による高周波電流は、交流リアクトル6により交流電源2側への逆流が抑制され、これらの過電圧および高周波電流は、殆ど交流電源2には到達しなくなる。
【0021】
前述のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、整流回路10の交流入力部分に、自己消弧素子4のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサ5と、自己消弧素子4のスイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源2側への逆流を阻止する交流リアクトル6とを接続したので、自己消弧素子4のスイッチング動作により発生する過電圧や高調波電流が交流電源2側へ殆ど漏れることがなく、交流電源2の電圧波形および電流波形をきれいな正弦波に維持することができる。
【0022】
また、高周波電流の交流電源2側への逆流を交流リアクトル6で抑制するようにしたので、自己消弧素子4をスイッチングさせるために、整流回路10のパルス幅制御回路30が高調波成分を含むキャリア波を発生させても、当該高周波成分が交流電源側に漏れることはないので、この点からも、交流電源2の電圧波形および電流波形をきれいな正弦波に維持することができる。
【0023】
そのうえ、パルス幅制御を採用することにより、低次の高調波を抑制するようにしたので、コンデンサ5は、高次の高調波を吸収できればよく、その静電容量を小さくでき、また、交流リアクトル6は、キャリア波の高周波成分が比較的高い周波数を有しているので、そのインダクタンスを小さくできる。このため、コンデンサ5および交流リアクトル6を設けても、電力変換装置1全体が大型化することはなく、電力変換装置1全体の小型化を図ることができる。
【0024】
また、誘導加熱を行うための高周波電力を発生するインバータ装置3への電力を常に適切に調節するために、整流回路10側の自己消弧素子4の制御信号であるキャリア波の周波数が高く設定され、キャリア波の高周波成分が交流電源側に漏れやすいものとなっていても、この高周波成分を交流リアクトル6で阻止するようにしたので、当該高周波成分が交流電源2側に漏れることがなく、電力変換装置1を、誘導加熱用の高周波電力を発生するインバータ装置3に直流電力を供給するのに最適なものとできる。
【0025】
さらに、整流回路10の電力制御素子を自己消弧素子4としたので、負荷7のインダクタンスLの減少に対し、出力周波数が上昇するとともに、負荷7に流れる電流が大きくなっても、整流回路10の自己消弧素子4が迅速に動作するので、負荷7への電流が迅速に抑制されるようになる。
このため、負荷のインダクタンスが減少し、出力周波数がより高い周波数に変更されても、出力電流の抑制が迅速に行われ、サージ電圧が大きくならず、交流電源2側の電流に含まれる高調波成分が増えることがない。しかも、整流回路10の自己消弧素子4の高速スイッチングにより、負荷7の状態に応じた適切な電流を負荷7に供給することができる。
【0026】
また、負荷7の一部が短絡した等の負荷異常時には、整流回路10の自己消弧素子4が瞬時に遮断状態となるので、各素子が過負荷となる過負荷時間を大幅に短縮することができる。
さらに、サイリスタのような遮断遅れ時間が解消されるので、インバータ装置3から出力される出力電流の制御の応答性を良好なものとできるうえ、インバータ装置3の出力電流が絞られた場合でも、交流電源2の出力電圧波形を細かく裁断するように、自己消弧素子4が高速でスイッチング動作するので、オーバーシュートやアンダーシュート等のばらつきが発生せず、安定した制御を行うことができる。
【0027】
さらに、自己消弧素子4として、高速スイッチング素子である電力制御用のMOSFETを採用したので、負荷へ出力すべき電力に応じて自己消弧素子4の導通時間をきめ細かく調節することで、きめの細かいパルス幅制御回路が可能となり、この点からも、電力変換装置1を、誘導加熱用の高周波電力を発生するインバータ装置3に直流電力を供給するのに最適なものとできる。
また、パルス幅制御により力率がほぼ1に改善されるので、コンデンサ5および交流リアクトル6の容量が小さくても、高周波成分の交流電源2側への漏洩が充分防止されるようになり、この点からも、電力変換装置1全体が大型化することはなく、電力変換装置1全体の小型化を図ることができる。
【0028】
図4には、本発明の第2実施形態が示されている。本第2実施形態は、前記第1実施形態における単相交流電源2から電力を供給される電力変換装置1を、三相交流電源2Aから電力を供給される電力変換装置1Aとしたものである。
すなわち、交流電力を整流する整流回路10A は、三相交流のu相、v相およびw相の各々を全波整流する一対の自己消弧素子4を三組備えたブリッジ方式のものである。なお、これらの自己消弧素子4の各々には、当該自己消弧素子4を過大な逆電圧から保護するためのダイオード8が直列に接続されている。
これらの自己消弧素子4を点弧制御するパルス幅制御回路30A は、三相交流のu相、v相およびw相の各相の電圧変化と、出力すべき電力とに応じて自己消弧素子4の導通時間を制御するものとなっている。
【0029】
整流回路10A の交流入力部分には、前記第1実施形態と同様に、自己消弧素子4のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサ5U〜5Wと、自己消弧素子4のスイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトル6U〜6Wとが接続されている。
コンデンサ5Uは、整流回路10A の入力側のu相およびv相の間に、コンデンサ5Vは、v相およびw相の間に、コンデンサ5Wは、w相およびu相の間に、それぞれ接続されている。
交流リアクトル6Uは、u相おける交流電源2Aおよび整流回路10A の間に接続され、交流リアクトル6Vは、v相おける交流電源2Aおよび整流回路10A の間に接続され、交流リアクトル6Wは、w相おける交流電源2Aおよび整流回路10A の間に接続されている。
【0030】
次に、本実施形態の電力変換装置1Aの動作について説明する。ここで、交流電源2Aの出力電圧は、図5に示されるように、位相が互いに120°ずつずれた三相交流となっている。
この三相出力電圧は、一周期Tを六等分した期間T1〜T6に注目すると、期間T1〜T6の各々では、二つの相が同じ極性となり、残りの相が逆の極性となっている。このため、逆極性となる一の相を基準として、二つの相の各々について整流すれば、直流電力が得られることが判る。
また、期間T1,T3,T5における各波形は、互いに同形状であり、期間T2,T4,T6における各波形は、期間T1,T3,T5の各波形と正負が逆となっているだけである。このため、期間T1における電力変換装置1Aの動作について説明し、期間T2〜T6における動作については、期間T1における動作と同様となるため説明を省略する。
【0031】
期間T1においては、図6(A)に示されるように、最初に、整流回路10A の自己消弧素子4U+,4V−が点弧されるとともに、残りの自己消弧素子4が消弧される第1整流モードが行われる。
次に、図6(B)に示されるように、整流回路10A の自己消弧素子4W+,4V−が点弧されるとともに、残りの自己消弧素子4が消弧される第2整流モードが行われる。
この後、図6(C)に示されるように、整流回路10A の自己消弧素子4V+,4V−が点弧されるとともに、残りの自己消弧素子4が消弧される閉回路モードが行われる。
【0032】
ここで、第1整流モード、第2整流モードおよび閉回路モードの各々で費やされる時間t1,t2,t3は、その和t1+t2+t3が一周期Tの1/6となっている。
そして、パルス幅制御回路30A は、t1+t2+t3=T/6の条件を満たす範囲で、時間t1,t2,t3の各々を、負荷となるインバータ装置3に供給される電力に応じて調節する。すなわち、インバータ装置3に供給すべき電力を増す場合には、時間t1+t2を延長し、時間t3を短縮し、供給すべき電力を減らす場合には、時間t1+t2を短縮し、時間t3を延長する。
なお、期間T1〜T6の各々において、閉回路モードから整流モードへ移行する際に発生する過電圧は、コンデンサ5U〜5Wのいずれかに吸収され、かつ、当該過電圧により発生する高周波電流は、交流リアクトル6U〜6Wのいずれかにより、交流電源2側へ逆流するのを阻止され、これらの過電圧および高周波電流は、交流電源2Aには到達しない。
【0033】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様な作用・効果を奏することができる他、次のような効果を付加できる。
すなわち、コンデンサ5U〜5Wの各々を、整流回路10A の入力側のu相〜w相の各相間に接続し、かつ、交流リアクトル6U〜6Wの各々を、u相〜w相の各相における交流電源2Aおよび整流回路10A の間に接続したので、自己消弧素子4のスイッチング動作時に発生する高調波(過電圧)が交流電源2A側に逆流しようとしても、当該高調波をコンデンサ5U〜5Wが吸収し、かつ、自己消弧素子4をスイッチング動作させるキャリア波の高周波成分が交流電源側に逆流しようとしても、交流リアクトル6U〜6Wがその逆流を阻止するので、これらの高調波(過電圧)や高周波成分が交流電源2A側へ漏洩しなくなり、交流電源2A側の電流に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0034】
しかも、構内送電線として三相4線式が採用され、交流電源2Aおよび整流回路10A との結線が三相4線式とされたことから、この三相4線式における接地線と各相との間に、整流回路10A やインバータ装置3が発生する高周波成分が誘導される可能性があっても、誘導される高周波成分は、前述の交流リアクトル6U〜6Wに阻まれて、交流電源2A側に逆流しないので、この点からも、交流電源2A側の電流に含まれる高調波成分を低減することができる。
【0035】
図7には、本発明の第3実施形態が示されている。本第3実施形態は、前記第2実施形態におけるMOSFETからなる自己消弧素子4をIGBT(Insulated Gate Bipolar mode Transistor)からなる自己消弧素子9としたものである。
すなわち、電力変換装置1Bは、IGBTからなる自己消弧素子9が電力制御素子として設けられた整流回路10B を備えたものである。
この整流回路10B には、直流リアクトルとして、出力側の正極および負極にそれぞれ別個に接続されたリアクトル23,24が設けられている。なお、これらのリアクトル23,24は、磁気的に分離されている。
リアクトル23,24の一次側には、フリーホイリングダイオード25が接続され、リアクトル23,24の一次側がフリーホイリングダイオード25を介して相互に接続されている。
整流回路10B の出力側に接続されたインバータ装置3Aは、前記第2実施形態における電力制御用のMOSFET31を、IGBT31A としたものであり、この他に前記第2実施形態のインバータ装置3との相違はない。
【0036】
このような本実施形態によっても、前記第1および第2実施形態と同様の作用、効果を達成できる他、整流回路10B の自己消弧素子9をIGBTとしたので、高速でスイッチング動作が行えるうえ、IGBTは、導通状態におけるコレクタおよびエミッタ間の直流抵抗が小さく、整流回路10B 、ひいては、整流回路10B を含んだインバータ装置全体の効率を良好なものとすることができる、という効果を付加できる。
【0037】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、この実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。
例えば、自己消弧素子としては、MOSFETおよびIGBTに限らず、GTO(Gate Turn Off Thyristor)でもよく、要するに、高速スイッチング素子であればよい。
また、前記第2実施形態では、第1整流モード、第2整流モードおよび閉回路モードのを順次繰り返し、1/6周期の間に、3つのモードを行うようにしたが、これに限らず、第1整流モード、閉回路モード、第2整流モードおよび閉回路モードを順次繰り返し、1/6周期の間に、4つのモードを行うようにしてもよい。
【0038】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、交流電源側の電流に含まれる高調波成分を確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置を示す回路図である。
【図2】前記第1実施形態の動作を説明するための図である。
【図3】前記第1実施形態に係る電力変換装置の入出力波形を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置を示す回路図である。
【図5】前記第2実施形態に係る電力変換装置の入力波形を示すグラフである。
【図6】前記第2実施形態の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置を示す回路図である。
【図8】本発明の背景技術に係る電力変換装置を示す回路図である。
【符号の説明】
1,1A,1B 電力変換装置
2,2A 交流電源
3,3A 電流型インバータとしてのインバータ装置
4、9 自己消弧素子
5 コンデンサ
5U〜5W コンデンサ
6 交流リアクトル
6U〜6W 交流リアクトル
10,10A,10B 整流回路
20 直流リアクトル
23,24 直流リアクトルとしてのリアクトル
30,30A パルス幅制御回路

Claims (6)

  1. 誘導加熱用の高周波電力を発生する電流型インバータに直流電力を供給するために、単相交流電源からの電力を電力制御素子で整流するブリッジ方式の整流回路と、この整流回路から出力されるパルス状に断続する電流を平滑して直流電流にする直流リアクトルと、出力すべき電力に応じて前記電力制御素子の導通時間を制御するパルス幅制御回路とを備えた電力変換装置であって、
    前記整流回路の前記電力制御素子が高速でスイッチング動作を行うことのできる自己消弧素子であり、
    前記パルス幅制御回路は、前記自己消弧素子を断続的に点弧させ、前記整流回路で整流した直流電力を前記直流リアクトルを介して前記電流型インバータに供給する整流モードと前記整流回路および前記電流型インバータで閉回路を形成してこの閉回路に前記直流リアクトルの誘導電流を循環させる閉回路モードとを繰り返し、前記整流回路から出力される直流パルス電圧の平均値に応じて前記自己消弧素子の点弧時間を調整してパルス幅を制御することにより前記電力制御素子の導通時間の制御をし、
    前記整流回路の交流入力部分には、前記自己消弧素子のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサと、前記自己消弧素子の前記スイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトルとが接続されている
    ことを特徴とする電力変換装置。
  2. 誘導加熱用の高周波電力を発生する電流型インバータに直流電力を供給するために、三相交流電源からの電力を電力制御素子で整流するブリッジ方式の整流回路と、この整流回路から出力されるパルス状に断続する電流を平滑して直流電流にする直流リアクトルと、出力すべき電力に応じて前記電力制御素子の導通時間を制御するパルス幅制御回路とを備えた電力変換装置であって、
    前記整流回路の前記電力制御素子が高速でスイッチング動作を行うことのできる自己消弧素子であり、
    前記パルス幅制御回路は、前記自己消弧素子を断続的に点弧させ、前記整流回路で整流した直流電力を前記直流リアクトルを介して前記電流型インバータに供給する第1整流モードおよび第2整流モードと前記整流回路および前記電流型インバータで閉回路を形成してこの閉回路に前記直流リアクトルの誘導電流を循環させる閉回路モードとを繰り返し、これら第1整流モード、第2整流モードおよび閉回路モードのそれぞれで費やされる時間の和が、前記三相交流電源からの三相出力電圧の一周期を六等分した期間となる範囲で、前記電流型インバータに供給すべき電力に応じて前記費やされる時間のそれぞれを調整する制御をすることにより、前記電力制御素子の導通時間の制御をし、
    前記整流回路の交流入力部分には、前記自己消弧素子のスイッチング動作の際に発生する過電圧を吸収するコンデンサと、前記自己消弧素子の前記スイッチング動作の際に発生する高周波電流の交流電源側への逆流を阻止する交流リアクトルとが接続されている
    ことを特徴とする電力変換装置。
  3. 求項2に記載の電力変換装置において、
    記整流回路の入力側の各相の間には、前記コンデンサがそれぞれ接続され、
    前記整流回路の入力側の各相は、それぞれ前記交流リアクトルを介して前記交流電源の各相と接続されている
    ことを特徴とする電力変換装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電力変換装置において、
    前記電流型インバータは、その誘導性負荷に共振周波数の高周波電力を供給するものである
    ことを特徴とする電力変換装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電力変換装置において、
    前記自己消弧素子は、IGBT、MOSFETおよびGTOのいずれかのスイッチング素子である
    ことを特徴とする電力変換装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電力変換装置において、
    前記自己消弧素子は、IGBTである
    ことを特徴とする電力変換装置。
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