JP3736999B2 - 車両の横転判定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のロール角およびロール角速度に基づいて該車両が横転する可能性の有無を判定するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のロール角およびロール角速度をパラメータとする二次元マップ上で、ロール角およびロール角速度が大きいところ(原点から離れた領域)に横転領域を設定するとともに、ロール角およびロール角速度が小さいところ(原点を含む領域)に非横転領域を設定し、センサで検出した実際のロール角およびロール角速度をマップ上にプロットした履歴ラインが前記非横転領域から前記横転領域に入ったとき、車両が横転する可能性が有ると判定してアクティブロールバーを起立させるものが、特開平7−164985号公報により公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両が横転する可能性の有無を支配する主要なパラメータは前記ロール角およびロール角速度であるが、それ以外にも車両の横転を助長あるいは抑制するパラメータが存在する。例えば、車両のロール角およびロール角速度が同じであっても、車両の操舵角によって横転可能性の大小が大きく異なってくる。具体的には、ステアリングホイールを左方向に操舵すると車両は右方向にロールし、ステアリングホイールを右方向に操舵すると車両は左方向にロールするため、車両が右方向にロールした状態でステアリングホイールを左方向に操舵すると車両の右方向への横転が助長されてしまい、車両が左方向にロールした状態でステアリングホイールを右方向に操舵すると車両の左方向への横転が助長されてしまう。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両のロール角およびロール角速度に基づいて該車両が横転する可能性の有無を判定する際に、その判定精度を更に向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両のロール角およびロール角速度をパラメータとする二次元マップ上に、ロール角軸上の臨界ロール角とロール角速度軸上の臨界ロール角速度とを結ぶ敷居値ラインを設定し、車両の実際のロール角およびロール角速度の履歴ラインが前記敷居値ラインを原点側から反原点側に横切ったときに車両が横転する可能性が有ると判定する車両の横転判定方法において、前記操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を増加させる方向であるときに前記敷居値ラインを原点側に移動させ、車両のロール角の絶対値を減少させる方向であるときに前記敷居値ラインを反原点側に移動させることを特徴とする車両の横転判定方法が提案される。
【0006】
上記構成によれば、車両のロール角およびロール角速度をパラメータとする二次元マップ上に、ロール角軸上の臨界ロール角とロール角速度軸上の臨界ロール角速度とを結ぶ敷居値ラインを設定し、車両の操舵角の変化方向がロール角の絶対値を増加させる方向であるときに敷居値ラインを原点側に移動させるので、車両の実際のロール角およびロール角速度の履歴ラインが敷居値ラインを原点側から反原点側に横切り易くして横転可能性有りの判定を早めに行うことができ、逆に車両の操舵角の変化方向がロール角の絶対値を減少させる方向であるときに敷居値ラインを反原点側に移動させるので、車両の実際のロール角およびロール角速度の履歴ラインが敷居値ラインを原点側から反原点側に横切り難くして横転可能性を一層正確に判定することができる。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記操舵角から算出される操舵角速度の符号と車両のロール角の符号とを比較し、それらが異なっていれば操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を増加させる方向であると判定し、それらが一致していれば操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を減少させる方向であると判定することを特徴とする車両の横転判定方法が提案される。
【0008】
上記構成によれば、操舵角速度の符号と車両のロール角の符号とが異なっていれば操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を増加させる方向であると判定し、一致していれば操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を減少させる方向であると判定するので、操舵角の変化方向を考慮した一層正確な横転可能性の判定を行うことが可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両の横転の種類を示す図、図2はロール角θおよびロール角速度ωと車両の横転可能性との関係を説明する図、図3は車両の横転可能性の有無を判定するためのマップ、図4はインフレータブルカーテンの制御系のブロック図、図5は横加速度Gyからロール角θの初期値θ0 を算出する手法の説明図、図6は操舵角δに基づく敷居値ラインの移動を示す図、図7は作用を説明するフローチャートである。
【0010】
図1は車両の横転の種類を原因別に分類して示すものである。車両の横転の種類は、横転に至る過程における車両挙動に応じて「単純回転」、「単純回転+横速度」および「発散」に分類され、「単純回転」型の横転は、更に「フリップオーバー」、「クライムオーバー」および「フォールオーバー」に細分類される。「単純回転+横速度」型の横転の代表的なものは「トリップオーバー」と呼ばれ、また「発散」型の横転の代表的なものは「ターンオーバー」と呼ばれる。
【0011】
「フリップオーバー」は、車両の左右一方の車輪が障害物に乗り上げて発生する横転である。「クライムオーバー」は、底部を障害物に乗り上げてタイヤが路面から浮き上がった車両が側方に倒れて発生する横転である。「フォールオーバー」は、車両の左右一方の車輪が路肩を踏み外して発生する横転である。「トリップオーバー」は、車両が横滑りして左右一方のタイヤが縁石等に衝突したときに、この縁石を支点とするロールモーメントにより発生する横転である。「ターンオーバー」は、ダブルレーンチェンジやトリプルレーンチェンジを行うべく、あるいはS字路を通過すべくステアリングホイールを左右に交互に操作したような場合に、そのステアリングホイールの操作の周波数が車両のサスペンションの固有振動の周波数に接近していると、車両のロール角が共振により発散して発生する横転である。
【0012】
図2は車両の横転可能性を判定するための二次元マップの一部(第1象限)を示すもので、縦軸のロール角θは正値(原点の上側)が右ロール角に対応し、横軸のロール角速度ωは正値(原点の右側)が右ロール角速度に対応する。この二次元マップには右下がりの直線よりなる敷居値ラインSが設定されており、敷居値ラインSの原点側、つまりロール角θおよびロール角速度ωが小さい領域が非横転領域とされ、敷居値ラインSの反原点側、つまりロール角θおよびロール角速度ωが大きい領域が横転領域とされる。そして車両の実際のロール角θおよびロール角速度ωの履歴ラインH1 〜H3 が敷居値ラインSを原点側の非横転領域から反原点側の横転領域に横切ると、車両の横転可能性が有ると判定される。
【0013】
履歴ラインH1 は、ロール角θおよびロール角速度ωが共に0の状態(原点)から、ロール角速度ωを0に保持したままロール角θだけをゆっくりと増加させた場合であり、敷居値ラインSが縦軸と交わる切片であるa点においてロール角θが臨界ロール角θCRT に達したときに車両の横転可能性が有ると判定される。このときローリングの支点となるロール方向外側のタイヤを通る鉛直線上に車両の重心位置CGがあり、この状態が車両の横転についての静的な安定限界となる。臨界ロール角θCRT の値は車両の形状や積載状態によって異なるが、一般的に50°程度である。
【0014】
尚、ロール角θが0であっても、大きいロール角速度ωが作用していれば車両が横転する可能性がある。このときのロール角速度ωを臨界ロール角速度ωCRT とする。
【0015】
車両がロール角θの方向と同方向のロール角速度ωを持つ場合には、このロール角速度ωによって横転が助長されるため、ロール角θが臨界ロール角θCRT より小さい状態であっても横転が発生することになる。例えば、ロール角θおよびロール角速度ωの履歴ラインがH2 で示される場合、履歴ラインH2 が敷居値ラインSを原点側から反原点側に横切るb点において車両の横転可能性が有ると判定される。このときのロール角θは前記臨界ロール角θCRT よりも小さい値となる。
【0016】
またロール角θおよびロール角速度ωの履歴ラインがH3 で示される場合には、正値のロール角速度ωが速やかに増加から減少に転じ、更に負値へと移行するために履歴ラインH3 が敷居値ラインSを横切ることがなく、従って車両の横転可能性が無いと判定される。
【0017】
図3は車両の横転可能性を判定するための二次元マップの全体を示すものである。2本の敷居値ラインS,Sは第1象限および第3象限に設定されており、それらの敷居値ラインS,Sは原点を中心とする点対称である。ロール角θが正でロール角速度ωが負である第2象限と、ロール角θが負でロール角速度ωが正である第4象限とに横転領域が設定されていないのは、ロール角θの方向と逆方向のロール角速度ωが発生している状態では車両の横転が発生しないからである。
【0018】
図3には、図1で説明した種々の横転の種類に対応するロール角θおよびロール角速度ωの履歴ラインH4 〜H8 が示される。
【0019】
履歴ラインH4 は、「フリップオーバー」、「クライムオーバー」、「フォールオーバー」等の「単純回転」型の横転に対応するもので、ロール角θの絶対値およびロール角速度ωの絶対値が単純に増加して横転に至っている。
【0020】
履歴ラインH5 は、「トリップオーバー」と呼ばれる「単純回転+横速度」型の横転に対応するもので、車両が横滑りする過程でタイヤが縁石等に衝突して発生するロールモーメントによりロール角速度ωが急激に増加して横転に至っている。
【0021】
履歴ラインH6 ,H7 は、「ターンオーバー」と呼ばれる「発散」型の横転に対応するものである。履歴ラインH6 はダブルレーンチェンジでの横転を示すもので、最初のレーンチェンジで右にロールした車両が次のレーンチェンジで左にロールする過程でロール角θの絶対値が発散し、第3象限の敷居値ラインSを越えて横転に至っている。履歴ラインH7 はトリプルレーンチェンジでの横転を示すもので、最初のレーンチェンジで右にロールした車両が次のレーンチェンジで左にロールし、続くレーンチェンジで再度右にロールする過程でロール角θの絶対値が発散し、第1象限の敷居値ラインSを越えて横転に至っている。
【0022】
履歴ラインH8 は、敷居値ラインSを越える前にロール角θが原点に向かって収束するので、この場合には車両が横転に至ることはない。
【0023】
図4は、車両の横転時に乗員拘束用のインフレータブルカーテンを車室の内側面に沿って展開するための制御系を示すものである。
【0024】
バッテリ11および接地部12間に、インフレータブルカーテンを展開するための高圧ガスを発生するインフレータ13と、点火トランジスタ14とが直列に接続される。電子制御ユニットUからの指令で点火トランジスタ14がONするとインフレータ13が点火して高圧ガスが発生し、この高圧ガスの供給を受けたインフレータブルカーテンが車室の内側面に沿って展開する。車両の横転可能性の有無を判定すべく、電子制御ユニットUには、車体左右方向の加速度である横加速度Gyを検出する横加速度センサ15からの信号と、車両のロール角速度ωを検出するロール角速度センサ16からの信号とが入力される。
【0025】
図5に示すように、車体に固定した横加速度センサ15はイグニッションスイッチをONしたときの横加速度Gyを出力する。イグニッションスイッチをONしたとき車両は停止状態にあるため、車両の旋回に伴う遠心力に起因する横加速度を検出することなく、重力加速度Gの車体左右方向の成分だけを横加速度Gyとして検出する。従って、前記横加速度Gyを用いて、車両のロール角θの初期値θ0 を、θ0 =sin -1Gyにより算出することができる。
【0026】
以上のようにしてイグニッションスイッチをONしたときの横加速度センサ15の出力に基づいて車両のロール角θの初期値θ0 が算出されると、この初期値θ0 にロール角θの変動分を加算することにより車両のロール角θが算出される。即ち、イグニッションスイッチをONした時点から、ロール角速度センサ16が出力するロール角速度ωの積分値∫ωdtをロール角θの変動分として前記初期値θ0 に加算することにより、車両のロール角θが算出される。
【0027】
横加速度センサ15は、車両の自由落下時には横加速度Gyを検出できず、また車両の旋回に伴う遠心力に起因する横加速度を、重力加速度Gの車体左右方向の成分である横加速度Gyと識別できずに誤検出してしまうというデメリットを持つが、この横加速度センサ15が出力する横加速度GyをイグニッションスイッチをONした時点での車両のロール角θの初期値θ0 の算出にだけ使用し、その後の車両のロール角θの算出にはロール角速度センサ16が出力するロール角速度ωの積分値∫ωdtを使用することにより、上記デメリットを解消して正確なロール角θを算出することができる。
【0028】
而して、上述のようにして算出した車両のロール角θと、ロール角速度センサ16が出力するロール角速度ωとが成す座標点の軌跡である履歴ラインを図6に示すマップ上に描き、その履歴ラインが敷居値ラインS,Sを原点側から反原点側に横切ったときに、車両が横転する可能性が有ると判定し、点火トランジスタ14をONしてインフレータブルカーテンのインフレータ13を点火する。
【0029】
ところで、ステアリングホイールを左方向に操舵すると遠心力で車体は右方向にロールし、逆にステアリングホイールを右方向に操舵すると遠心力で車体は左方向にロールする。このとき発生する遠心力の大きさは車両の旋回半径が小さいほど大きくなり、また車速が高い程大きくなる。従って、車両のロール角θおよびロール角速度ωが図3の第1象限にあって車両が右方向に横転する可能性があるときに、ステアリングホイールを左方向に切り増しすると横転が助長される可能性がある。逆に車両のロール角θおよびロール角速度ωが図3の第3象限にあって車両が左方向に横転する可能性があるときに、ステアリングホイールを右方向に切り増しすると横転が助長される可能性がある。
【0030】
そこで、操舵角センサ17で検出した操舵角δの変化方向(つまり操舵角δの時間微分値の符号)が車両のロール角θの絶対値を増加させる方向であるとき、つまりロール角θが正(右方向)であるときに操舵角変化率dδ/dtが負(操舵角δが左方向に増加)する場合と、ロール角θが負(左方向)であるときに操舵角変化率dδ/dtが正(操舵角δが右方向に増加)する場合とに、図6に矢印Aで示すように、敷居値ラインS,Sを原点に近づく方向に移動させる。その結果、ロール角θおよびロール角速度ωの履歴ラインが敷居値ラインS,Sを横切り易くなり、車両の操舵角δの変化方向を考慮した一層正確な横転可能性の判定を行うことが可能となる。
【0031】
一方、検出された操舵角δが車両のロール角θの絶対値を減少させるように作用するとき、つまりロール角θが正(右方向)であるときに操舵角変化率dδ/dtが正(操舵角δが右方向に増加)である場合と、ロール角θが負(左方向)であるときに操舵角変化率dδ/dtが負(操舵角δが左方向に増加)である場合とに、前述と逆に敷居値ラインS,Sを原点から遠ざかる方向に移動させることにより履歴ラインが敷居値ラインS,Sを横切り難くなり、車両の横操舵角δの変化方向を考慮した一層正確な横転可能性の判定を行うことが可能となる。そして上記何れの場合にも、履歴ラインの移動量は検出された横操舵角変化率dδ/dtの大きさに応じて設定される。
【0032】
上記作用を図6および図7に基づいて更に説明する。
【0033】
先ず、ステップS1で横加速度Gy、ロール角速度ωおよび操舵角δを読み込み、ステップS2で横加速度Gyに応じてマップ上の敷居値ラインS,Sを確定する。敷居値ラインS,Sは、マップの縦軸の切片である臨界ロール角θCRT と横軸の切片である臨界ロール角速度ωCRT とが決まれば確定する。本実施例では横加速度Gyによって車両の横転が助長されるとき、臨界ロール角θCRT および臨界ロール角速度ωCRT が共に減少して敷居値ラインS,Sが原点に近づくように設定される。
【0034】
臨界ロール角θCRT および臨界ロール角速度ωCRT が決まると、敷居値ラインS,Sの方程式は、
θ=−(θCRT /ωCRT )ω±θCRT
で与えられる(図3参照)。
【0035】
続くステップS3で操舵角δを微分して操舵角速度dδ/dtを算出する。続くステップS4でロール角θの符号と前記操舵角速度dδ/dtの符号とを比較し、ロール角θの符号と操舵角速度dδ/dtの符号とが異なっていれば、操舵によって車両の横転が助長されると判定し、ステップS5において、前記ステップS2で確定した敷居値ラインS,Sを原点に近づく方向に移動させる。具体的には、前記臨界ロール角θCRT をαだけ減少させて新たな臨界ロール角θCRT を設定し、臨界ロール角速度ωCRT をβだけ減少させて新たな臨界ロール角速度ωCRT を設定することにより、新たな敷居値ラインS,Sを設定する。
【0036】
逆に、前記ステップS4でロール角θの符号と操舵角速度dδ/dtの符号とが一致していれば、操舵によって車両の横転が抑制されると判定し、ステップS6において、前記ステップS2で確定した敷居値ラインS,Sを原点から遠ざかる方向に移動させる。具体的には、前記臨界ロール角θCRT をαだけ増加させて新たな臨界ロール角θCRT を設定し、臨界ロール角速度ωCRT をβだけ増加させて新たな臨界ロール角速度ωCRT を設定することにより、新たな敷居値ラインS,Sを設定する。
【0037】
続いて、現在のロール角θ1 およびロール角速度ω1 の成す座標点Pが横転領域にあるか非横転領域にあるかを判定する。即ち、ステップS7で、上記敷居値ラインSの方程式のωに現在のロール角速度ω1 の値を代入して判定値θ2 を算出する。判定値θ2 は直線ω=ω1 と敷居値ラインSとの交点Qのθ座標である。続くステップS8で、判定値θ2 と現在のロール角θ1 とを比較し、|θ2 |<|θ1 |が成立していれば、ステップS9で現在のロール角θ1 およびロール角速度ω1 の成す座標点Pが横転領域にあると判定され、|θ2 |<|θ1 |が成立しなければ、ステップS10で現在のロール角θ1 およびロール角速度ω1 の成す座標点Pが非横転領域にあると判定される。図6には、座標点Pが横転領域にある場合(|θ2 |<|θ1 |)が示されている。
【0038】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0039】
例えば、実施例では車両の横転可能性の有無の判定をインフレータブルカーテンの展開制御に適用しているが、それをサイドエアバッグの展開制御や格納式ロールバーの展開制御等の他の用途に適用することができる。また車両のロール角θの初期値θ0 を、重力加速度Gの車体上下方向の成分である上下加速度Gzを用いて、θ0 =cos -1Gzにより算出することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、車両のロール角およびロール角速度をパラメータとする二次元マップ上に、ロール角軸上の臨界ロール角とロール角速度軸上の臨界ロール角速度とを結ぶ敷居値ラインを設定し、車両の操舵角の変化方向がロール角の絶対値を増加させる方向であるときに敷居値ラインを原点側に移動させるので、車両の実際のロール角およびロール角速度の履歴ラインが敷居値ラインを原点側から反原点側に横切り易くして横転可能性有りの判定を早めに行うことができ、逆に車両の操舵角の変化方向がロール角の絶対値を減少させる方向であるときに敷居値ラインを反原点側に移動させるので、車両の実際のロール角およびロール角速度の履歴ラインが敷居値ラインを原点側から反原点側に横切り難くして横転可能性を一層正確に判定することができる。
【0041】
また請求項2に記載された発明によれば、操舵角速度の符号と車両のロール角の符号とが異なっていれば操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を増加させる方向であると判定し、一致していれば操舵角の変化方向が車両のロール角の絶対値を減少させる方向であると判定するので、操舵角の変化方向を考慮した一層正確な横転可能性の判定を行うこ とが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車両の横転の種類を示す図
【図2】 ロール角θおよびロール角速度ωと車両の横転可能性との関係を説明する図
【図3】 車両の横転可能性の有無を判定するためのマップ
【図4】 インフレータブルカーテンの制御系のブロック図
【図5】 横加速度Gyからロール角θの初期値θ0 を算出する手法の説明図
【図6】 操舵角δに基づく敷居値ラインの移動を示す図
【図7】 作用を説明するフローチャート
【符号の説明】
S 敷居値ライン
dδ/dt 操舵角速度
δ 操舵角
θ ロール角
θ CRT 臨界ロール角
ω ロール角速度
ω CRT 臨界ロール角速度

Claims (2)

  1. 車両のロール角(θ)およびロール角速度(ω)をパラメータとする二次元マップ上に、ロール角軸上の臨界ロール角(θ CRT )とロール角速度軸上の臨界ロール角速度(ω CRT )とを結ぶ敷居値ライン(S)を設定し、車両の実際のロール角(θ)およびロール角速度(ω)の履歴ラインが前記敷居値ライン(S)を原点側から反原点側に横切ったときに車両が横転する可能性が有ると判定する車両の横転判定方法において、
    前記操舵角(δ)の変化方向が車両のロール角(θ)の絶対値を増加させる方向であるときに前記敷居値ライン(S)を原点側に移動させ、車両のロール角(θ)の絶対値を減少させる方向であるときに前記敷居値ライン(S)を反原点側に移動させることを特徴とする車両の横転判定方法。
  2. 前記操舵角(δ)から算出される操舵角速度(dδ/dt)の符号と車両のロール角(θ)の符号とを比較し、それらが異なっていれば操舵角(δ)の変化方向が車両のロール角(θ)の絶対値を増加させる方向であると判定し、それらが一致していれば操舵角(δ)の変化方向が車両のロール角(θ)の絶対値を減少させる方向であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の横転判定方法。
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