JP3736819B2 - 無鉛はんだ合金 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は無鉛はんだ合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉛は有用な金属である反面、毒性を有することもよく知られている。電子機器の製造はほとんどの場合はんだ付けにより行われ、そのはんだには一般にPb−Sn系合金が用いられている。しかし、近年、廃棄された電気製品からの鉛の溶出による地下水汚染が問題となり、アメリカでははんだ中の鉛使用を規制する動きがある。
【0003】
鉛を含有しないはんだとして、JIS Z 3282にSn−Ag系、Sn−Sb系およびSn−Bi系はんだが規定されており、Sn−Ag系およびSn−Sb系が高温用はんだ、Sn−Bi系が低温用はんだとして用いられている。
しかし、これら無鉛はんだ合金は、従来、最も広く用いられている63%(重量%、以下、%は重量%を意味する)Sn−37%Pb合金と比べると、Sn−Ag系およびSn−Sb系合金は融点が高く、Sn−Bi系合金は融点が低いという問題があり、また、被はんだ付け材料へのはんだ濡れ性も劣る。このため、Pb−Sn系はんだを代替する無鉛はんだ合金として実用するにはさらなる改良が必要である。
【0004】
従来、無鉛はんだ合金の融点を下げるため、特開平8−187591号公報では、85〜92%のSnと、1〜6%のAgと、4〜10%のInと、を含有させることにより、固相化温度を167〜212℃の間、および液相化温度を179〜213℃の間としたはんだ合金が開示されている。
また、特開平6−238479号公報では、0.2%以上6.0%以下のZnと、1%以上6%以下のAgと、残りがSnからなる無鉛はんだ合金、および0.2%以上6.0%以下のZnと、1.0%以上6.0%以下のAgと、0.2%以上6.0%以下の%のInと、0.2%以上6.0%以下のBiと、残りがSnからなる無鉛はんだ材料が開示されている。この無鉛はんだ材料はSn−Agはんだ材料の優れた特性を維持しながら、機械的強度およびクリープ抵抗を改善することを目的としている。また、BiまたはInは溶融点を下げる効果を有する旨の開示もある。
【0005】
また、特開平8−187590号公報では、1%以上4%以下のAgを含有し、さらに、BiおよびInの少なくとも1種を含有し、残りがSnからなる合金が開示されている。この無鉛はんだ材料では、室温での引張強度および伸びにおいて、Sn−Pb系合金並みの特性をもたせることを目的としている。
さらに、特開平8−206874号公報では、溶融温度を下げるために、Bi、Inの一方または両方を添加し、0.1%以上20%以下のAgを含有し、さらに0.1%以上25%以下のBiと、0.1%以上20%以下のInのいずれか1種以上を含有し、残りがSnからなる合金が開示されている。
【0006】
ところで、はんだ合金を使用する際に特に必要とされる特性には、溶融特性、濡れ性および機械的特性がある。
溶融特性においては溶融温度が低いことが望まれる。具体的には、Sn−Pb共晶はんだ並みの低い溶融温度が必要である。また合金は、固相化温度と呼ばれる温度で溶融しはじめる(溶融点)が、液相化温度と呼ばれるより高い温度に達するまでは完全には液体にならない。固相化温度と液相化温度の間の範囲(溶融範囲)は、固相と液相が共存するためペースト状領域(ΔT)と呼ばれる。この溶融範囲が狭いことも溶融特性において望まれる。
【0007】
濡れ性も重要な特性である。なぜなら、はんだ付けとは、溶融したはんだを接合部に流入させることによって、固体金属同士を接合するものであり、電気的・機械的に良好な接合部を得るためには、はんだが被接合材によく濡れることが必要とされるからである。電子機器の製造では、何百点もの接合部が、同時にしかも数秒間ではんだ付けされており、はんだの濡れが悪く1ヵ所でもはんだ付けされない部分が発生すると回路基板そのものが不良品となる。したがって、電子用はんだ合金においては、濡れ性は重要な特性である。
【0008】
また、機械的特性も重要な特性である。近年、電子部品の小型化・高集積化の進展および宇宙用(通信衛星等)や自動車用等への適用範囲の拡大により、従来よりも厳しい条件下で電子用はんだが使用されるようになっている。
このような条件下では、電子部品の発熱や使用環境の温度変化により電子部品やプリント基板が熱膨張や熱収縮するため、はんだ接合部には応力や歪みが発生する。こうした熱疲労によって、はんだ接合強度が十分でない場合には、はんだ自体にクラックが発生してはんだ付け部の剥離が生じる。1ヶ所でも剥離が発生すると、電気的な導通がなくなるため電子機器の機能が果たせなくなる。したがって、はんだ付け部の信頼性確保のために機械的特性に優れたはんだ合金が必要である。
【0009】
このような機械的特性について、はんだ合金には、その延性によりはんだ接合部に発生する応力と歪みとを緩和し、クラックの発生を抑制する働きが求められる。従って、はんだの延性は接合部の熱疲労特性を向上させる上で必要不可欠な特性である。特に、高温下での延性の確保、すなわち伸びの確保は最も重要である。
【0010】
さらに、コストも重要な要素である。生産技術上の観点から、従来のSn−Pbはんだ合金から無鉛はんだ合金への移行に当たっては、コスト上昇を最小限に抑える必要がある。コスト上昇を抑えるためには、合金組成の変更による原材料費の上昇や現行の接合プロセスの流用による設備費の増加を抑制することが必要である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
公知のはんだ合金であるSn96.5%、Ag3.5%からなる合金の固相化温度は221℃と高く、濡れ性は75%と良くない。
上記の特開平8−187591号公報記載の合金組成で、最も固相化温度が低いのはSn71.5%、Ag2.6%およびIn25.6%の組成の合金で固相化温度は167.8℃、溶融範囲は11.3℃である。しかしながらこの合金では、Inが25.6%も含まれている。Inの原材料費はkg当たり4万円(1995.3の相場)と非常に高価である。このため、この合金の原材料費を試算すると、従来の63%Sn−37%Pb合金に比べて23倍と非常に高く、大幅なコスト上昇が強いられる。さらにこの合金についての濡れ性および機械的特性についてはまったく述べられておらず、実際、Inの含有により溶融温度の低下が見られるが、濡れ性の改善は見られない。
【0012】
また、特開平6−238479号公報記載の最も溶融温度が低い合金組成は、Sn87.5%、Ag3.5%、Zn1%、Bi4%およびIn4%の合金であり、その溶融温度は197℃である。これ以外の実施例の組成では、前記の温度よりも高い。また溶融範囲の記載はなく、酸化されやすいZnを含んでいるために、はんだ付けを窒素雰囲気中で行う必要があって、現状のはんだ付けのプロセスをそのまま流用することはできない。すなわち、設備の増設が必要となってコストがかかる。また、この合金には、0.2〜10%のCuを含ませることが可能とされており、溶融温度を上昇させたり、濡れ性を改善することを目的としている。また、機械的特性を改善することについては記載されていない。さらに、Cuを含有させたものについては実験例の記載もなく、Cuを含有させる効用については具体的には明示されていない。
【0013】
さらに、特開平8−187590号公報および特開平8−206874号公報で開示されているSn−Ag−Bi−In系合金では、引張特性、特に、高温下での延性(伸び)が室温下での値に比べて小さくなるという欠点がある。さらに、特開平8−206874号公報では、強度向上を目的として、0.1〜3.0%のCuを含有させたSn−Ag−Bi−In系合金を開示している。しかし、0.5%もしくは0.7%のCuが含有しているものしか実施されておらず、さらに、このCuを含有させた合金にはInを含有させていない。即ち、Ag、Bi、InおよびCuをすべて含有させた合金では実施していないため、InとCuとの間の相関関係については明らかにされていない。
【0014】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的はSn−Ag系はんだ合金の融点をさらに下げるとともにコストの上昇を抑え、良好な濡れ性と、室温はもとより高温下においても良好な機械的性質と、を兼ね備えた無鉛はんだ合金の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、Sn−Ag二元合金はんだへのInとBiの複合添加、更にはCuを添加することにより、コスト上昇を抑えながら、Sn−Ag二元合金の融点を下げるとともに濡れ性の改善はもとより、優れた機械的特性をも付与することが可能であることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0016】
本発明の無鉛はんだ合金は、1%以上5%以下のAgと、それぞれ0.1%以上および0.1%以上で両者の合計が4.5%以下のBiおよびInと、0.1%以上1%以下のCuと、を含み、残部がSnと不可避不純物とからなることを特徴とする。
【0017】
本発明の無鉛はんだ合金は、当該分野の公知技術により容易に調整しうる。たとえば、重量で秤取ったSn、Ag、In、BiおよびCuを加熱中の容器に入れる。この場合、部分的に合金を用いてもよい。これらの金属は従来のいずれの溶融技術を用いても溶解でき、当該金属をすべて液体になるまで加熱した後、適当な型に流し込んで冷却される。本発明のはんだ材料は、適当な方法により、棒状、リボン、ワイヤ、粉末など、用途に応じ様々な形状にすることができる。また、急冷法等を用いることにより、リボンや粉末などの作製も可能である。
【0018】
【作用】
本発明の無鉛はんだ合金は、Sn−Ag二元合金にIn、BiおよびCuを複合添加することにより、溶融温度を下げるとともにコストの上昇を抑制し、濡れ性を改善し、優れた機械的特性を付与している。
Agの含有により、はんだ合金中にSn−Ag系金属間化合物が析出し、機械的強度を改善することができる。一般に微小な析出物がマトリックス中に均一に分散するはんだ合金は優れた機械的特性を有する。Agの組成範囲が0.8%未満では、濡れ性の改善効果が見られず、また合金中に析出する粒子量が少ないため機械的強度を改善することができない。また、5.0%を超えると、溶融範囲が大きくなり、濡れ性も損なわれる。
【0019】
Biの添加は、溶融温度を下げるとともに濡れ性を向上させ、さらに引張強さをも向上させることができる。SnとAgにInを単独添加した場合には、はんだ合金は、濡れ性を改善することはできないが、Biを添加することによって濡れ性を改善することができる。このとき、Biの組成範囲が0.1%未満では、溶融温度を下げる効果が小さく、また濡れ性の改善効果も小さく好ましくない。また、14%を超えると濡れ性が損なわれるため好ましくない。
【0020】
Inの添加は、溶融温度を下げるとともに、延性を向上させ、Biとの共存によってさらなる濡れ性の向上を図ることができる。Inの組成範囲が0.1%未満では、溶融温度を下げる効果および濡れ性改善効果が小さく好ましくない。また、10%を超えると、濡れ性が損なわれるため好ましくない。
また、InとBiとを添加することにより融点降下を実現できるだけでなく、変形能と耐クリープ特性に優れた合金とすることができる。このとき、Inの添加だけではInの添加量の増加とともにクリープ特性が低下し、Biの添加だけではBiの添加量の増加とともに変形能が低下してしまう。従って、BiとInの複合添加により、濡れ性および機械的特性のさらなる改善が可能であるが、合計で15%を超えると溶融範囲が大きくなるため好ましくない。
【0021】
さらに、従来の前記合金のIn添加量と本発明の合金のBiおよびInの総添加量は同じであるにも関わらず、より低い固相化温度を有し、なおかつ濡れ性も改善され、さらには原材料費の上昇も抑えられている。
本発明の無鉛はんだ合金では、特にCuの添加により、溶融温度がさらに下がるだけでなく、引張特性などの機械的特性が改善される点が重要である。具体的には、高温下での引張強さおよび伸びが、室温下での値よりも低くなることなく、高温下での延性が改善される点である。また、Cuの添加により、はんだ付け時のCu導体のはんだへの溶解(Cu食われ)を抑制することも副次的に可能となる。
【0022】
このとき、Cuの添加量が0.1%未満では、高温下での機械的特性の改善効果およびCu食われ防止効果が見られないため好ましくない。また、2.0%を超えると引張強さを増加させることができるが、延性に乏しく、かつ溶融範囲も大きくなるため好ましくない。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により説明する。
純度99.9%以上のSn、Ag、Bi、In、Cuを用い、1%以上5%以下のAgと、それぞれ0.1%以上14%以下および0.1%以上10%以下で両者の合計が15%以下のBiおよびInと、0.1%以上2%以下のCuと、を含み、残部がSnと不可避不純物とからなるSn−Ag−Bi−In−Cu系無鉛はんだ合金(試料No.1〜24)を調整した。その組成を表1に示す。なお、試料No.1〜24のうち、No.3〜5,8,11〜13,18,22〜24は、参考例である。また、比較例として(試料No.25〜44)の無鉛はんだ合金を調整し、表2に示した。
【0024】
これらの各無鉛はんだ合金の溶融温度(固相化温度および液相化温度)、溶融範囲(ΔT)、濡れ性および機械的特性について評価を行った。溶融温度については、示差走査熱量測定により昇温過程での熱量変化から求めた。濡れ性については、JIS Z 3197に準じた試験方法で濡れ性試験を行い、広がり率から評価した。
【0025】
機械的特性については、鋳造により作製した丸棒試験片を用い、JIS Z 2241に準じた試験方法で引張試験を行って引張強さおよび伸びを測定し、評価を行った。なお、測定は室温下、および125℃の高温下で行った。
表1および表2に、溶融温度、ΔT、濡れ性、および引張強さおよび伸びの測定結果をそれぞれ併せて示す。なお、濡れ性については、85%以上のものを◎で、80%を超え85%未満のものを○で、80%以下のものを△で示した。また、引張特性である強さについては、4.0kg/mm2以上のものを○で、3.0kg/mm2を超え4.0kg/mm2未満のものを△で、3.0kg/mm2以下のものを×で示した。伸びについては、30%以上のものを○で、10%を超え30%未満のものを△で、10%以下のものを×で示した。さらに、伸びの増減については、高温での伸びの大きさが室温での伸び以上であるものを○で示し、そうでないものを×で示した。
【0026】
【表1】
Figure 0003736819
【0027】
【表2】
Figure 0003736819
【0028】
本実施例のSn−Ag−Bi−In−Cu系無鉛はんだ合金の溶融温度は、160〜205℃と低く、またΔTも狭いことが分かる。また、濡れ性および機械的特性も良好である。また、コストも、たとえばNo.7の合金のコストは比較例のNo.42の合金の1/3程度と安価である。
以下に図に基づいて本発明の無鉛はんだ合金の特性を説明する。
【0029】
図1は、表1に示した本実施例のNo.22、18、13の無鉛はんだ合金、および表2に示した比較例のNo.30、37の無鉛はんだ合金について、Ag添加量と広がり率との関係を示した図である。なお、これら合金のBi、InおよびCuの含有量は、それぞれ5〜6%、2〜3%、0.2〜0.5%である。図1より、Agの含有により濡れ性が向上し、その含有量が1〜5%で優れた濡れ性が得られ、特に3%付近で濡れ性が最良となることがわかる。しかし、Agの含有量が5.5%と多くなると、逆に濡れ性が低下してしまう。
【0030】
図2は、図1で示した各試料につき、Ag添加量とΔTとの関係を示した図である。図2から、Ag含有量が2〜3%付近で最も溶融範囲が小さくなることがわかる。
従って、図1および図2から、Ag含有量を1%以上5%以下、好ましくは1%以上4%以下、より好ましくは1.5%以上3.5%以下とすることにより、優れた濡れ性が得られ、溶融範囲も小さくすることができることがわかる。
【0031】
図3は、表1に示した本実施例のNo.2、4、5の無鉛はんだ合金、および表2に示した比較例のNo.27、29、40の無鉛はんだ合金について、Bi含有量と広がり率との関係を示した図である。なお、これらの合金のAg、InおよびCuの含有量は、それぞれ3%、1.5〜5%、0〜0.2%である。この結果より、Biの含有により濡れ性が向上し、その含有量が0.1〜14%で優れた濡れ性が得られ、特に3〜10%付近で濡れ性が最良になることがわかる。しかし、Biの含有量が30.0%と多くなると、逆に濡れ性が低下してしまう。
【0032】
図4は、図3で示した各試料につき、Bi含有量とΔTとの関係を示した図である。図4より、溶融範囲はBiの含有量の増加とともに大きくなり、14%を超えると50℃以上に達することがわかる。
従って、図3および図4から、Bi含有量を0.1%以上14%以下、好ましくは1%以上9%以下、より好ましくは2%以上7%以下とすることにより、濡れ性を確保し、溶融範囲をも小さくすることができることがわかる。
【0033】
図5は、表1に示した本実施例のNo.1および3の無鉛はんだ合金、および表2に示したNo.25、26、28および39の比較例の無鉛はんだ合金について、In含有量と広がり率との関係を示した図である。なお、これら合金のAg、BiおよびCuの含有量は、それぞれ3%、1.5〜5%、0〜0.2%である。図5より、Inの含有により濡れ性が向上し、その含有量が0.1〜10%で優れた濡れ性が得られ、0.5〜7%付近で濡れ性が最良になることがわかる。しかし、Inの含有量が18.0%と多くなると、逆に濡れ性が低下してしまう。
【0034】
図6は、図4で示した各試料につき、In含有量とΔTとの関係を示した図である。図6より、溶融範囲はInの含有量の増加とともに大きくなり、15%を超えると50℃以上に達することがわかる。
従って、図5および図6から、Inの含有量を0.1%以上10%以下、好ましくは、0.5%以上7%以下、より好ましくは1%以上5%以下とすることにより、濡れ性を確保し、溶融範囲も小さくすることができることがわかる。さらに、コストの面から考慮すると、3%以下が好ましい。
【0035】
図7は、表1に示した本実施例のNo.1〜5の無鉛はんだ合金、および表2に示した比較例のNo.25〜29の無鉛はんだ合金について、BiとInの合計含有量とΔTとの関係を示した図である。なお、これら合金のAgおよびCuの含有量は、それぞれ3%および0.2%である。図7より、溶融範囲への影響に関しては、BiとInは同様の性質を持っていることがわかる。また、両者の合計含有量の増加に伴い、溶融範囲が大きくなり、15%を超えると50℃以上に達することがわかる。
【0036】
従って、BiとInとの合計含有量を15%以下、好ましくは10%、より好ましくは8%以下とすることにより、濡れ性および機械的特性の向上に対する効果を維持しつつ、溶融範囲を小さくすることができる。
図8は、表1に示したNo.22〜24の本実施例の無鉛はんだ合金、および表2に示したNo.31および38の比較例の無鉛はんだ合金について、Cu含有量と、高温での伸びと室温での伸びの比との関係、並びに、Cu含有量と高温での伸びとの関係を示した図である。これら合金のAg、BiおよびInの含有量は、それぞれ1%、5%および2%である。この結果から、Cuを含有しない場合には、高温での伸びが室温に比べて小さいのに対し、Cuの含有により、高温での伸びが改善されていることがわかる。この効果は、0.1〜1.0%付近で極大となっている。また、Cuの含有量が多くなるにつれて、伸びが小さくなり、2%以上での伸びは30%以下になることがわかる。
【0037】
図9は、図8で示した各試料につき、Cuの含有量とΔTとの関係を示した図である。図9から、溶融範囲は、Cuの含有量が0.1〜1%付近で極小となり、2.5%を超えると50℃以上に達することがわかる。
従って、図8および図9から、Cuの含有量を0.1%以上2%以下、好ましくは0.1%以上1%以下、より好ましくは0.1%以上0.5%以下とすることにより、高温での伸びの低下を抑制しつつ溶融範囲を小さくできることがわかる。
【0038】
以上の測定結果より、溶融特性、濡れ性、室温および高温での機械的特性、並びにコストをすべて考慮すると、1%以上5%以下のAgと、それぞれ0.1%以上14%以下および0.1%以上10%以下で両者の合計が15%以下のBiおよびInと、0.1%以上2%以下のCuと、を含み、残部がSnと不可避不純物とからなる無鉛はんだ合金が、トータルバランスで優れることがわかる。
【0039】
また、1%以上4%以下のAgと、それぞれ1%以上9%以下および0.5%以上7%以下で両者の合計が10%以下のBiおよびInと、0.1%以上1%以下のCuと、を含み、残部がSnと不可避不純物とからなる無鉛はんだ合金は、トータルバランスでさらに優れることがわかる。
さらに、1.5%以上3.5%以下のAgと、それぞれ2%以上7%以下および1%以上5%以下で両者の合計が8%以下のBiおよびInと、0.1%以上0.5%以下のCuと、を含み、残部がSnと不可避不純物とからなる無鉛はんだ合金は、トータルバランスでさらに優れることがわかる。
【0040】
例えば、No.7のSn92.8%、Ag3.0%、Bi3.0%、In1.0%、Cu0.2%とした無鉛はんだ合金、No.11のSn90.8%、Ag3.0%、Bi5.0%、In1.0%、Cu0.2%とした無鉛はんだ合金、No.12のSn90.5%、Ag3.0%、Bi5.0%、In1.0%、Cu0.5%とした無鉛はんだ合金、およびNo.14のSn89.8%、Ag3.0%、Bi5.0%、In2.0%、Cu0.2%とした無鉛はんだ合金では、それぞれ濡れ性が85%以上と最良である上に、溶融範囲が20℃以下と狭い。さらに、高温下での機械的特性については、強さが4.0kg/mm2以上でかつ伸びが30%以上であり、高温下での延性が室温下での延性に対して大きく、高温下で優れた機械的特性を有する。
【0041】
【発明の効果】
上述のように、本発明の無鉛はんだ合金は、従来のものと比較して高温での機械的特性、特に延性に優れている。さらに溶融温度も低く、濡れ性にも優れており、低コストで提供可能なため、電子部品などのはんだ付けに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の無鉛はんだ合金および比較例の無鉛はんだ合金について、Ag含有量と広がり率との関係を示す図である。
【図2】図1で示した無鉛はんだ合金について、Ag含有量と溶融範囲(ΔT)との関係を示す線図である。
【図3】本実施例の無鉛はんだ合金および比較例の無鉛はんだ合金について、Bi含有量と広がり率との関係を示す線図である。
【図4】図3で示した無鉛はんだ合金について、Bi含有量と溶融範囲(ΔT)との関係を示す線図である。
【図5】本実施例の無鉛はんだ合金および比較例の無鉛はんだ合金について、
In含有量と広がり率との関係を示す線図である。
【図6】図5で示した無鉛はんだ合金について、In含有量と溶融範囲(ΔT)との関係を示す線図である。
【図7】本実施例の無鉛はんだ合金および比較例の無鉛はんだ合金について、BiとInの合計含有量と溶融範囲(ΔT)との関係を示す線図である。
【図8】本実施例の無鉛はんだ合金および比較例の無鉛はんだ合金について、
Cu含有量と、高温での伸びと室温での伸びとの比と、の関係、並びに、Cu含有量と高温での伸びとの関係を示した線図である。
【図9】図8で示した各試料について、Cuの含有量とΔTとの関係を示した線図である。

Claims (1)

  1. 1重量%以上5重量%以下のAgと、それぞれ0.1重量%以上および0.1重量%以上で両者の合計が4.5重量%以下のBiおよびInと、0.1重量%以上1重量%以下のCuと、を含み、残部がSnと不可避不純物とからなることを特徴とする無鉛はんだ合金。
JP00679597A 1997-01-17 1997-01-17 無鉛はんだ合金 Expired - Lifetime JP3736819B2 (ja)

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