JP3736254B2 - 多気筒内燃機関のシリンダブロック - Google Patents

多気筒内燃機関のシリンダブロック Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒内燃機関のシリンダブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の主要部となるシリンダブロックは、一般に、アルミニウム合金や鋳鉄等を用いて一体に鋳造されるものであり、複数のシリンダが機関の前後方向に沿って配置されていると共に、その下部にクランクケース上部を形成するスカート部が一体に形成されている。
【0003】
そして、前記シリンダブロックの後端側の側部にスタータモータが配設され、このスタータモータの先端部が、前記シリンダブロックの後端部に取り付けられた変速機内部に入り込んだ構成のものが従来から広く知られている。
【0004】
また、シリンダブロックには、シリンダヘッド側からクランクケース内へ潤滑オイルを戻すためのオイル戻し通路が、シリンダブロックの上下方向に沿って形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
シリンダヘッド側からの潤滑オイルを円滑にシリンダブロック下部へ導入するためには、シリンダブロックの後端部にもオイル戻し通路を設けることが好ましいが、上述したように、シリンダブロックの後端側の側部には、前記スタータモータが配設されているため、シリンダブロックの後端部にオイル戻し通路を形成しようとすると、該スタータモータの脇をオイル戻し通路が通る構成となり、前記スタータモータの取り付け位置が前記シリンダブロックの外側に移動してしまい、エンジンが全体として大型化してしまうとういう問題がある。
【0006】
また、前記シリンダブロックの側部にスタータモータが単に配設された構造では、該スタータモータが取り付けられる部分を箱構造によって支持することができず、該スタータモータが取り付けられた部分における前記シリンダブロックの剛性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1に記載の発明は、シリンダヘッドから還流する潤滑オイルをクランクケースに導入するオイル戻し通路が、側壁のシリンダボア間に対応する部分に形成された多気筒内燃機関のシリンダブロックにおいて、シリンダブロックの最端部側に設けられた変速機取付フランジにシリンダブロックの側壁に沿って配設されたスタータモータが取り付けられ、スタータモータが配設される側のシリンダブロックの側壁には、シリンダヘッドの最端部からシリンダブロックの最端部に還流した潤滑オイルをシリンダブロックの最端部に最も近いシリンダボア間のオイル戻し通路に導入し、このオイル戻し通路の上方から還流する潤滑オイルと合流させるバイパス溝が、シリンダブロックの長手方向に沿って形成されていることを特徴としている。オイル戻し通路はその機能上、シリンダブロックを鉛直方向に貫くように形成されるが、シリンダヘッドの最端部から還流する潤滑オイルを、シリンダブロックの最端部にオイル戻し通路を設けて、クランクケースに導入するのではなく、バイパス溝によってシリンダブロックの最端部に隣接するオイル戻し通路に導入することで、シリンダブロック最端部に配設されるスタータモータの配置の自由度が向上する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、スタータモータが配設される側のシリンダブロックの側壁には、シリンダブロック最端部からシリンダブロックの最端部に隣接するシリンダボア間にかけて、シリンダブロックの外側に張り出した膨出部が形成され、膨出部内に、バイパス溝とシリンダブロックの最端部に最も近いシリンダボア間のオイル戻し通路とが設けられ、膨出部は、シリンダブロックのロアデッキ部に連結されていると共に、シリンダブロックの最端部側では変速機取付フランジに設けられたボス部に連結されていることを特徴としている。これによって膨出部及びロアデッキ部からなる箱構造が、シリンダブロックの最端部のスタータモータが取り付けられる部分に形成される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、バイパス溝の底部は、バイパス溝が接続されたオイル戻し通路との接続部分で断面略円弧状を呈し、このオイル戻し通路に対して滑らかに接続されていることを特徴としている。これによって、シリンダブロックの最端部に隣接するオイル戻し通路とバイパス溝の底部との接続部分の応力集中が低減される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、多気筒内燃機関は車両用の内燃機関であり、バイパス溝の底部は、シリンダブロックの長手方向に沿って、車両の旋回時の潤滑性能から要求される所定角度以上の傾斜を有するよう形成されていることを特徴としている。これによって、車両の旋回運転時に、シリンダヘッド最端部から還流する潤滑オイルが逆流することなく、シリンダブロック最端部に隣接するオイル戻し通路に流入する。
【0011】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関のシリンダブロックは、シリンダヘッドの最端部から還流する潤滑オイルをバイパス溝を介し、シリンダブロックの最端部に隣接するオイル戻し通路に流入させることによって、シリンダブロックの最端部に取り付けられるスタータモータの配置の自由度が向上し、エンジン全体のコンパクト化を図ることができると共に、シリンダヘッド最端部からの潤滑オイルの回収を容易にすることができる。
【0012】
また、請求項2のように、シリンダブロックの最端部のスタータモータが取り付けられる部分が、膨出部及びロアデッキ部からなる箱構造で支持されることにより、スタータモータが取り付けられる部分の剛性を上げることができ、総じてシリンダブロック全体の剛性が上げることができる。そのため、シリンダブロックに生じる振動を低減することができる。
【0013】
そして、請求項3に記載の発明は、シリンダブロックの最端部に隣接するオイル戻し通路とバイパス溝の底部との接続部分の応力集中が低減されるので、シリンダブロックの耐久信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、バイパス溝の底部を傾斜させた請求項4の発明では、車両の旋回運転時においても、シリンダヘッド最端部から還流する潤滑オイルが逆流することなく、シリンダブロック最端部に隣接するオイル戻し通路に円滑に流入させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1〜図5は、この発明を直列4気筒内燃機関のシリンダブロック2として構成した実施例を示している。
【0017】
このシリンダブロック2は、例えば鋳鉄あるいはアルミニウム合金等を用いて各部一体に鋳造されたものであって、図1に示すように、シリンダ壁5によって4つのシリンダボア4が機関の前後方向に沿って直列に設けられている。ここで、図1における右側が機関前端部であり、図1の右側から左側に向かって順に第1シリンダボア4a、第2シリンダボア4b、第3シリンダボア4c、第4シリンダボア4dとなっている。
【0018】
図2及び図3に示すように、前記シリンダ壁5の下端に位置するロアデッキ部6には、クランクケースの上部を構成するスカート部8が前記シリンダブロック2下方、すなわち図2における下方に向かって形成されている。
【0019】
また、前記シリンダ壁5の上端側には、その外周を囲むようにウォータジャケット壁9(図1を参照)が形成されている。このウォータジャケット壁9と前記シリンダ壁5との間にはウォータジャケット11が形成されている。つまり、前記シリンダブロック2の側壁は、前記ウォータジャケット壁9、前記シリンダ壁5及び前記スカート部8等によって構成されている。
【0020】
前記スカート部8内部には、各気筒毎に仕切るように、気筒間位置並びに機関の前後両端部に隔壁状のバルクヘッド10が形成されている。このバルクヘッド10の下縁中央部には、クランクシャフト12の上側半分を支持する軸受部14がそれぞれ形成されている。
【0021】
そして、図4に示すように、前記シリンダブロック2の後端部、すなわち図1において左側の端部には、変速機(図示せず)を固定するための変速機取付フランジ18が形成されている。
【0022】
前記変速機は、この変速機取付フランジ18に、図示せぬ取付ボルトによって固定されている。この取付ボルトが挿通される取付ボルト孔20は、その周囲が厚肉に形成されたボス部22に設けられている。
【0023】
前記ボス部22は、本実施例においては、前記変速機取付フランジ18の上辺部24の両端位置、図4における左側側辺部26aの略中央位置及び図4における右側側辺部26bの下端位置にそれぞれ設けられている。そして、前記変速機取付フランジ18の前記各ボス部22が設けられた位置には、前記シリンダブロック2の後端部の軸受部14からクランクシャフト12の半径方向に沿って延長されたリブ28がそれぞれ接続されている。
【0024】
また、前記変速機取付フランジ18には、該変速機取付フランジ18に対する前記変速機の位置決めを行うダウエル孔30が設けられている。
【0025】
前記シリンダブロック2の一方の側部、すなわち図3における左側の側部には、スタータモータ32が配設されている(図1を参照)。
【0026】
このスタータモータ32は、前記変速機取付フランジ18に設けられたスタータモータ取付孔34に該スタータモータ32の一端側を嵌合させることで、該変速機取付フランジ18に対する位置決めを行っていると共に、該変速機取付フランジ18に設けられたスタータモータ取付ボルト孔36,36に挿入される取付ボルト(図示せず)によって、該変速機取付フランジ18に固定される。
【0027】
つまり、前記変速機取付フランジ18のスタータモータ32が配設される側は、図3に示すように、前記シリンダブロック2の側壁よりも外側に張り出すよう形成されている。
【0028】
また、前記スタータモータ取付ボルト孔36,36は、前記スタータモータ取付孔34の上方及び側方に位置し、これらのスタータモータ取付ボルト孔36,36の間に前記スタータモータ取付孔34の中心が位置するように形成されている。
【0029】
前記シリンダブロック2のロアデッキ部6には、前記シリンダブロック2の長手方向に沿ってメインオイルギャラリ38が形成されている。このメインオイルギャラリ38は、前記スタータモータ32が配設される側のロアデッキ部6に形成されており、図4に示すように、前記シリンダブロック2の後端側では、該スタータモータ取付孔34と前記第4シリンダボア4dとの間に位置している。
【0030】
前記スタータモータ32が配設される側のシリンダブロック2の側壁には、オイル戻し通路40,41が形成されている。
【0031】
前記オイル戻し通路40は、前記第2シリンダボア4bと前記第3シリンダボア4cとの間に対応する前記シリンダブロック2の側壁42に形成されている。
【0032】
前記オイル戻し通路41は、前記第3シリンダボア4cと前記第4シリンダボア4dとの間に対応する前記シリンダブロック2の側壁43に形成されている。
【0033】
これらのオイル戻し通路40,41は、前記シリンダボア4の軸方向、すなわち図2の上下方向に沿って形成されており、一端がシリンダヘッド側に開口していると共に、他端がスカート部8の下端に開口している。また、前記オイル戻し通路40,41が設けられた部分の側壁42,43は、オイル戻し通路40,41が設けられていない部分の側壁よりも前記シリンダブロック2の外側に向かって膨出するよう形成されている。
【0034】
前記オイル戻し通路41と前記シリンダブロック2後端部との間に位置するウォータジャケット壁9aの外側には、図3に示すように断面略L字形を呈し、底部45aが前記ウォータジャケット壁9aに接続された隔壁45が設けられている。この隔壁45の機関前方側の端部は、図1に示すように、前記第3シリンダボア4cと前記第4シリンダボア4dとの間の膨出した側壁43に接続され、かつ該隔壁45の機関後方側の端部は、図5に示すように、前記変速機取付フランジ18に設けられたボス部22に接続されている。
【0035】
そして、前記隔壁45と前記ウォータジャケット壁9aとの間には、前記シリンダブロック2の後端部から前記シリンダブロック2の長手方向に沿ったバイパス溝44が形成されている。
【0036】
このバイパス溝44は、前記オイル戻し通路41に接続されている。つまり、前記隔壁45及び前記側壁43からなる膨出部46の内部に、前記オイル戻し通路41及び前記バイパス溝44が形成されている。
【0037】
前記バイパス溝44の底面は前記底部45aによって構成され、前記シリンダブロック2の前端側に向かって所定の傾斜角度αを有するよう形成されている。詳しくは、車両を旋回運転した時に潤滑性能から要求される所定角度以上の傾斜を有するよう形成されており、本実施例では、前記底部45aの傾斜角度αは、前記シリンダブロック2上端面に対して35°以上としている。
【0038】
また、前記底部45aは、前記シリンダブロック2の後端部に隣接するオイル戻し通路41との接続部48が断面略円弧状に形成され、該シリンダブロック2の後端部に隣接する該オイル戻し通路41に対して該底部45が屈曲することなく滑らかに接続されている。
【0039】
尚、この実施例は図3に示すように、前記スカート部8がクランクシャフト12の回転中心付近まで延長されたハーフスカート形式のものである。また、この実施例においては、前記スカート部8の下端が、オイルパン(図示せず)を取り付けるためのオイルパン取付フランジ54となり、このオイルパンとは別体で、前記クランクシャフト12の下半分を支持する軸受けキャップが前記軸受部14に取り付けられる構成となっているが、このような軸受けキャップを備えたラダーフレームをこのスカート部8の下端に取り付けて、このラダーフレームに対してオイルパンを取り付けるよう構成することも可能である。
【0040】
また、前記スタータモータ32が配設されていない側のシリンダブロック2の側壁にもオイル戻し通路51,52,53が形成されており、シリンダヘッドから還流する潤滑オイルは、図2及び図3に矢示するように、オイル戻し通路40,41,51,52,53を介して、シリンダブロック2の下方へ流れるが、シリンダヘッドの後端部から還流する潤滑オイルは、バイパス溝44を介してシリンダブロック2の後端部に隣接するオイル戻し通路41に流入する。
【0041】
このように構成されたシリンダブロック2においては、前記変速機取付フランジ18の前記スタータモータ32が取り付けられる部分が、膨出部46及びロアデッキ部6によって構成された箱構造によって支持することができるので、該変速機取付フランジ18の前記スタータモータ32が取り付けられる部分の剛性が向上し、シリンダブロック2に生じる振動を低減させることができる。
【0042】
そして、隔壁45の底部45aは、シリンダブロック2の後端部に隣接するオイル戻し通路41との接続部48で断面略円弧状を呈し、該オイル戻し通路41と滑らかに接続されているので、該底部45aと該オイル戻し通路41との接続部48における応力集中が低減され、高い耐久性及び信頼性を得ることができる。
また、前記シリンダブロック2の後端部側にバイパス溝44を設けることによって、前記シリンダブロック2の後端部側に前記シリンダブロック2の上下方向に沿ったオイル戻し通路を設けることなくシリンダヘッド2後端部から還流する潤滑オイルを回収することができるので、スタータモータ32をシリンダブロック2の中心に近づけることができ、内燃機関全体のコンパクト化を図ることができると共に、シリンダヘッド2後端部から還流する潤滑オイルの回収性能を向上させることができる。
【0043】
特に、バイパス溝44の底部となる前記隔壁45の底部45aを、シリンダブロック2上端面に対して所定角度(本実施例では35°)以上に傾斜させ、車両が旋回した時においても、該底部45aに沿って潤滑オイルがシリンダヘッド側へと逆流することなく、シリンダブロック2下方のオイルパンに潤滑オイルが円滑に回収されるように構成している。尚、この所定角度は、車両に要求される最大の旋回能力の程度によって決まるものである。
【0044】
また、前記バイパス溝44によって、シリンダヘッドの後端部側から還流する潤滑オイルを前記シリンダブロック2の後端部に隣接するオイル戻し通路41に合流させているので、クランクケース内に落下した潤滑オイルのオイルパンまでの流動距離を短縮することができ、クランクケース内でコネクティングロッド等の可動部品のオイルたたき等により潤滑オイル内に気泡を発生させることなく効率良くオイルパンに潤滑オイルを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内燃機関のシリンダブロックの平面図。
【図2】本発明に係る内燃機関のシリンダブロックの正面図。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図。
【図4】本発明に係る内燃機関のシリンダブロックの後端部側の側面図。
【図5】図2のB−B線に沿った断面図。
【符号の説明】
2…シリンダブロック
4…シリンダボア
22…ボス部
32…スタータモータ
41…オイル戻し通路
44…バイパス溝

Claims (4)

  1. シリンダヘッドから還流する潤滑オイルをクランクケースに導入するオイル戻し通路が、側壁のシリンダボア間に対応する部分に形成された多気筒内燃機関のシリンダブロックにおいて、
    シリンダブロックの最端部側に設けられた変速機取付フランジにシリンダブロックの側壁に沿って配設されたスタータモータが取り付けられ、スタータモータが配設される側のシリンダブロックの側壁には、シリンダヘッドの最端部からシリンダブロックの最端部に還流した潤滑オイルをシリンダブロックの最端部に最も近いシリンダボア間のオイル戻し通路に導入し、このオイル戻し通路の上方から還流する潤滑オイルと合流させるバイパス溝が、シリンダブロックの長手方向に沿って形成されていることを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダブロック。
  2. スタータモータが配設される側のシリンダブロックの側壁には、シリンダブロック最端部からシリンダブロックの最端部に隣接するシリンダボア間にかけて、シリンダブロックの外側に張り出した膨出部が形成され、膨出部内に、バイパス溝とシリンダブロックの最端部に最も近いシリンダボア間のオイル戻し通路とが設けられ、膨出部は、シリンダブロックのロアデッキ部に連結されていると共に、シリンダブロックの最端部側では変速機取付フランジに設けられたボス部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関のシリンダブロック。
  3. バイパス溝の底部は、バイパス溝が接続されたオイル戻し通路との接続部分で断面略円弧状を呈し、このオイル戻し通路に対して滑らかに接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多気筒内燃機関のシリンダブロック。
  4. 多気筒内燃機関は車両用の内燃機関であり、バイパス溝の底部は、シリンダブロックの長手方向に沿って、車両の旋回時の潤滑性能から要求される所定角度以上の傾斜を有するよう形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多気筒内燃機関のシリンダブロック。
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