JP3899802B2 - 往復動ピストンエンジンの本体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復動ピストンエンジンの本体構造に関し、特にシリンダブロックに形成されたオイルリターン通路の構造に係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一般的に往復動ピストンエンジンおいては、エンジン各部の摺動部における摩擦損失や摩耗を低減させるとともに、それらの冷却を促し、衝撃圧力を分散させることを目的として、エンジンオイルによる潤滑が行われている。
【0003】
詳しくは、通常、オイルポンプによりオイルパンから吸い上げられたエンジンオイルは、オイルフィルタによって濾過された後にシリンダブロック内のメインギャラリに送られる。そして、そこからクランク軸やピストン、或いはシリンダヘッドの動弁系等に分配され、それらの各摺動部において潤滑や冷却等に供された後に、自然に落下して、オイルパンに戻される。
【0004】
この際、クランク軸やピストンに供給されたオイルはそれらの各摺動部からクランク室に漏れ出て、そこから直接的にオイルパンに落下するようになるが、一方、シリンダヘッドの動弁系等に供給されたオイルは、カム軸やタペット等の各摺動部から漏れ出て、シリンダヘッドのミドルデッキ上を流れ、このミドルデッキからシリンダヘッド及びシリンダブロックを貫通するオイルリターン通路を通って、オイルパンに落下するようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、特に小型乗用車の駆動方式としては前輪駆動方式が主流となっており、この場合にはエンジンからディファレンシャルまでを一体として、車体前方のエンジンルームに横置きに搭載することが一般的である。その一方で、操舵フィーリング等に優れた後輪駆動方式を採用する車両もあり、この場合には通常、エンジンを縦置きに搭載することになるので、自動車用エンジンとしては、大きな仕様変更を行わずに、それらの両方の搭載方式に対応できることが望ましい。
【0006】
しかしながら、一般的に、横置き搭載されたエンジンは、クランク軸が車幅方向に延びるように略水平に配置されることになるのに対して、縦置き搭載の場合には、エンジンの後方にトランスミッションが配置されることから、殆どの場合、エンジンをクランク軸が車体後方に向かってやや下向きになるように、前後に傾斜させて配置することになる。すなわち、横置きと縦置きとではエンジンの傾斜状態が相違し、このことが、オイルリターン通路におけるエンジンオイルの流れに大きな影響を及ぼすと考えられる。
【0007】
例えば、エンジンを車両に横置き搭載する場合、エンジンオイルをシリンダヘッド等に溜まることなく、万遍なく落下させて、オイルパンに戻すためには、複数のオイルリターン通路をエンジンの気筒列方向に互いに間隔を空けて配置すればよい。しかし、このエンジンをそのまま車両に縦置き搭載すると、シリンダヘッドのエンジン後端部近傍にオイルが滞留しやすくなり、このことに起因して、エンジンオイルの流れが滞ると、油膜切れによる焼き付きの生じる虞れがある。
【0008】
これに対し、特にシリンダヘッドやシリンダブロックの後端部にもオイルリターン通路を追加するという構造が考えられる。しかし、シリンダブロックの後端部にはトランスミッションとの結合部があり、パワートレイン全体の剛性を確保するために、該結合部を含むシリンダブロック後端部の構造がかなり制約されることから、このシリンダブロック後端部に望ましい大きさや形状を備えたオイルリターン通路を設けることは、極めて困難である。
【0009】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、往復動ピストンエンジンのシリンダブロックに設けるオイルリターン通路の構成に工夫を凝らして、エンジンを縦置き及び横置きの両搭載方式に対応させながら、その両方の搭載方式において良好なオイルリターン性を確保できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の解決手段では、オイルリターン通路を、シリンダブロックの左右両側壁部においてそれぞれ気筒間に対応する位置に略直線状に設けることで、基本的なオイルリターン性能を良好なものとし、これに加えて、シリンダヘッドの後端部におけるオイルの滞留を防止するために、シリンダブロックの後端部上面から前記オイルリターン通路の途中に合流するように、別の通路を設けたものである。
【0011】
具体的に、請求項1の発明では、エンジンのシリンダブロックにピストンを往復動可能に収容する複数の気筒が並設され、該気筒の並ぶ前後方向に延びる前記シリンダブロックの左右両側壁部には、それぞれ複数のオイルリターン通路が設けられるとともに、前記気筒の周囲を取り囲むようにウォータジャケットが形成されており、さらに当該シリンダブロックの後端壁部にトランスミッションとの結合部が設けられている往復動ピストンエンジンの本体構造前提とする。
【0012】
そして、前記各オイルリターン通路を、前記シリンダブロックを左右いずれか一方向から見て、隣接する2つの気筒間において上下に略直線状に延びるように設け、該各オイルリターン通路の上流端をシリンダブロックの上面に開口させる一方、その下流端をシリンダブロックの下端側に開口させる。そして、前記複数のオイルリターン通路のうち、シリンダブロックの後端部に最も近い後端側オイルリターン通路に、その途中から分岐して、後方の斜め上方に向かって延びるように前記各側壁部に形成した分岐通路を連通させ、この分岐通路の上流端を、前記シリンダブロックの上面において、前記後端側オイルリターン通路の上流端開口部よりも後方に離間させて開口させる一方、該分岐通路の下流端は、シリンダブロックを左右いずれか一方向から見て、前記ウォータジャケットの下端部近傍で後端側オイルリターン通路に接続した構成とする。
【0013】
前記の構成により、シリンダブロックの側壁部における隣接する2つの気筒間に対応する位置に、オイルリターン通路が上下方向に略直線状に延びるように設けられていることで、このオイルリターン通路を通ってオイルパンへ落下するエンジンオイルの流れが極めてスムーズなものとなり、良好なリターン性が得られる。しかも、前記オイルリターン通路が気筒と干渉しないように設けられているので、オイルの流通断面積を十分に確保しつつ、シリンダブロックのコンパクト化が図られる。また、エンジンオイルは気筒間でオイルパンに落下することになるので、クランク軸のカウンターウエイトによるエンジンオイルの掻き上げも少ない。
【0014】
加えて、エンジンオイルをシリンダブロックの後端部上面から前記オイルリターン通路の途中に合流させるように、分岐通路を設けたことで、エンジンを縦置きに搭載して、シリンダブロックの後端部が前端側よりもやや低い状態になっても、シリンダヘッドの後端部にエンジンオイルが滞留することを防止できる。尚、前記分岐通路は、上流端がシリンダブロックの後端部上面に開口していても、下流端はオイルリターン通路に合流するように相対的に前側に位置しているので、トランスミッション結合部との干渉の問題は生じない。
【0015】
その上に、前記の構成では、シリンダブロックの側壁部の後端部近傍において、後端側オイルリターン通路とシリンダブロックの後端縁部との間に、ウォータジャケットを斜め上下方向に跨ぐように分岐通路が設けられることになり、これにより、該側壁部の後端部近傍の剛性が向上する。このことで、シリンダブロックのトランスミッションとの結合剛性が高められ、よって、振動や騒音の低減が図られる。
【0016】
請求項2の発明では、分岐通路の下方に、シリンダブロックの左右両側壁部のうちの少なくとも一方の側壁部から後端壁部に亘って開口するように、凹陥部を設けるものとする。このことで、シリンダヘッドの側壁部から後端壁部に亘るように設けた凹陥部を有効利用すれば、該シリンダヘッドとトランスミッションとを結合する作業を容易化することができる。
【0017】
一方、前記の如き凹陥部が設けられている場合には、シリンダヘッドの後端部に上下方向に延びるようにオイルリターン通路を設けることが事実上、不可能になるので、このような構成のシリンダヘッドにおいて、前記請求項1の発明の作用効果が特に有効なものとなる。
【0018】
請求項3の発明では、前記請求項1の発明において、シリンダブロックの左右両側壁部のうちのいずれか一方の側壁部に、エンジン前端側でかつウォータジャケットに対応する位置において外方に膨出するように、サーモスタットハウジングを設けた。
【0019】
すなわち、一般に、シリンダブロックへの加振力が最も大きいのは、気筒内の燃焼室に対応する位置、言い換えると、シリンダブロックの側壁部を左右方向から見て、ウォータジャケットに対応する位置である。そこで、この発明では、シリンダブロックの側壁部の前端側においてウォータジャケットに対応する位置にサーモスタットハウジングを設けて、この部分の剛性向上を図るようにした。このことで、例えば、前記サーモスタットハウジングからシリンダブロック後端側の後端側オイルリターン通路まで、ウォータジャケットに対応する位置に補強リブを設ければ、側壁部全体の剛性を容易に向上させて、膜振動を低減させることができる。
【0020】
請求項4の発明では、請求項3の発明におけるサーモスタットハウジングを、シリンダブロックの前端側に位置する前端側オイルリターン通路に隣接するように設け、該前端側オイルリターン通路及び後端側オイルリターン通路の周囲のシリンダブロック側壁部に、少なくともウォータジャケットに対応する位置において外方に膨出する膨出部を形成する。そして、前記前端側オイルリターン通路の周囲の膨出部を、前記サーモスタットハウジングと連続するように一体成形し、さらに、前記前端側及び後端側オイルリターン通路の中間のシリンダブロック側壁部に、該各オイルリターン通路の膨出部とそれぞれ連続するように外方に膨出する中間膨出部を一体成形する。そして、前記中間膨出部の内部にオイルセパレータ室を設ける構成とする。
【0021】
この構成では、シリンダブロックの側壁部の前端側において、前端側オイルリターン通路の膨出部がサーモスタットハウジングと連続するように一体成形されるとともに、その膨出部と後端側オイルリターン通路の膨出部とを繋ぐように中間膨出部が一体成形されている。そして、前記請求項3の発明により、前記後端側オイルリターン通路からシリンダブロックの後端縁部にかけて、側壁部の剛性が向上しているので、このシリンダブロック側壁部は、加振力の大きいウォータジャケットに対応する位置において前端部から後端部に亘って補強され、これにより、膜振動を確実に抑制して、振動や騒音を低減することができる。
【0022】
また、前記中間膨出部の内部にはオイルセパレータ室が設けられており、前記したシリンダブロック側壁部の補強を、サーモスタットハウジング、オイルリターン通路、オイルセパレータ室といったそれぞれ独自の機能を有する構造部の配置によって、実現できるので、シリンダブロックの剛性向上と軽量化、コンパクト化との両立が図られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
(エンジン全体構成)
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るエンジン1の外観を示し、このエンジン1は、4つのシリンダs1〜s4(気筒:図8参照)がクランク軸2の延びる方向に直線的に並ぶように設けられた直列4気筒ガソリンエンジンである。このエンジン1は、アルミニウム合金製のシリンダブロック3の上部に、同じくアルミニウム合金製のシリンダヘッド4が組み付けられて、エンジン本体が構成されており、該シリンダヘッド4の上面にシリンダヘッドカバー5が組み付けられる一方、シリンダブロック3の下面にはオイルパン6が組み付けられている。また、このエンジン1は、前記4つのシリンダの並ぶシリンダ列方向、即ちクランク軸2の延びる方向が、図示しない車両の幅方向に概略一致するよう、該車両のエンジンルームに横置きに搭載されるものである。すなわち、前記図1における左側が車両の前側に、また右側が車両の後側にそれぞれ対応し、図2においては左側が車両の右側に、また図の右側が車両の左側にそれぞれ対応している。
【0024】
尚、この明細書では、前記シリンダブロック3及びシリンダヘッド4の長手方向、即ちクランク軸2の延びる方向をエンジン前後方向とし、該クランク軸2の出力端側(図2の右側、図1の紙面手前側)をエンジン1の後側と呼ぶ一方、その反対側(図2の左側、図1の紙面奥側)をエンジン1の前側と呼ぶ。また、図1に示すようにエンジン1の後側から前側を見て、右側をエンジン1の右側と呼び、その反対側をエンジン1の左側と呼ぶものとする。
【0025】
前記エンジン1の本体左側面、即ち図2に示すように車両前方から見たときに正面に見える側には、各シリンダs1,s2,…内の燃焼室に空気を供給するための吸気マニホルド7が配設されている。また、このエンジン左側面におけるエンジン前端側の部位には、図2にのみ示すが、それぞれVベルト8により駆動されるパワステポンプ9、ウォータポンプ10、空調装置用コンプレッサ11等の補機類が配置され、一方、エンジン後側の部位にはスタータモータ12やオイルフィルタ13が配置されている。
【0026】
また、そのエンジン左側面におけるエンジン前側の部位には、シリンダブロック3の上端部近傍においてサーモスタットハウジング15が外方に膨出するように設けられており、このサーモスタットハウジング15を覆う蓋部に一体的に設けられた冷却水導入管16には、図示しないウォータホースが接続されていて、車両のラジエータから供給される冷却水を後述するシリンダブロック3内のウォータジャケットw(図8等参照)に導入するようになっている。
【0027】
尚、図1及び図2に示す符号17は、シリンダヘッド4の後端部に設けられた冷却水導出部であり、この冷却水導出部17の導出管17aには、図示しないウォータホースが接続されていて、シリンダヘッド4のウォータジャケットから排出される冷却水をラジエータに戻すようになっている。また、図2に示す符号18は、オイルパン6内に貯留されているエンジンオイルの量を点検するためのレベルゲージである。
【0028】
前記吸気マニホルド7は、軽量化や吸気温度低減のために、例えばポリアミド樹脂を主材料として射出成形により形成した複数の部材を互いに溶着して、一体としたものである。詳しくは、この吸気マニホルド7は、大きく湾曲する4本の分岐管20,20,…を有し、これらの分岐管20,20,…の各下流端部に亘るように設けられた取付フランジ部(図示せず)がシリンダヘッド4の吸気側側壁部4aに取り付けられている。一方、該4本の分岐管20,20,…の各上流端部はサージタンク21に集合していて、そこからエンジン後方の斜め上方に向かって、共通吸気管22が直線的に延びている。
【0029】
前記共通吸気管22の上流端部には、図外のエアフィルタを介して吸入される空気(吸気)の流通量を調整するためのスロットル弁23が配設されているとともに、該スロットル弁23の弁体23aをバイパスする吸気のバイパス流通量を調節するために、電磁弁からなるアイドルスピードコントロール弁24(以下、ISC弁という)が配設されている。また、この共通吸気管22には、ISC弁24の取付けられている部位の裏側でシリンダヘッド4の吸気側側壁部4aに支持される支持部が設けられており、これにより、前記スロットル弁23やISC弁24等が確実に支持されるようになっている。
【0030】
さらに、前記吸気マニホルド7の分岐管20,20,…の上方に近接して、図1にのみ示すが、各分岐管20に略直交するようエンジン前後方向に延びるフューエルディスパイプ26が配設されている。このフューエルディスパイプ26のエンジン後側の端部には、図示しない燃料供給ホースが接続されて、この燃料供給ホースにより燃料ポンプから送られてくる高圧の燃料がフューエルディスパイプ26を介して、各シリンダ毎のインジェクタに分配供給されるようになっている。また、このフューエルディスパイプ26内の燃料の圧力状態を検出するための燃圧センサ27と、設定圧以上となった高圧の燃料を逃がして、燃料タンクに戻すためのリリーフ弁28とが配設されている。
【0031】
一方、エンジン1の本体右側には、図3に示すように、各シリンダ内の燃焼室から既燃ガスを排出させる排気マニホルド30が取付けられるようになっている。この排気マニホルド30は、互いに長さの等しいステンレス製の薄肉丸パイプをそれぞれ曲げ加工してなる4つの分岐管31,31,…と、プレス加工により形成され、前記各分岐管31の排気上流側の端部がそれぞれ溶接された取付フランジ部32と、反対に該分岐管31,31,…の排気下流側の端部が軸線方向を揃えて束ねられた状態で溶接された集合管33とからなる。
【0032】
また、シリンダヘッド4の排気側側壁部4bには、エンジン1の前後方向に長い台状の突出部が形成され、この突出部の端面が、前記排気マニホルド30の取付フランジ部32と接合される接合面34とされている。そして、この接合面34には、エンジン前後方向に直線的に並んで、各シリンダと個別に連通する4つの排気ポート35,35,…の下流端がそれぞれ開口しており、これらの4つの開口部のうち、エンジン後端部に最も近い第4シリンダの排気ポート35の開口部に隣接して、該開口部に連通しかつ接合面34に開口する異形の凹部36が形成されている。
【0033】
さらに、シリンダヘッド4の後端部には、前記第4シリンダの排気ポート35から排出される排気の一部を吸気マニホルド7に還流させるように、排気ガス還流通路37(以下、EGR通路という)が形成されている。このEGR通路37の上流端は、前記接合面34におけるエンジン後側の端部付近に開口しており、この開口端も前記凹部36と連通している。つまり、前記凹部36は、シリンダヘッド4の排気側側壁部4bにおける接合面34に開口するとともに、前記EGR通路37の開口端とこれに隣接する排気ポート35の下流端開口部とを互いに連通させている。
【0034】
そして、前記排気マニホルド30の取付フランジ部32がガスケット38を介してシリンダヘッド4の前記接合面34に重ね合わされて、スタッドボルト39,39,…によりシリンダヘッド4の排気側側壁部4bに締結固定される。このとき、前記取付フランジ部32のエンジン後側の端部に形成された延出部32aが、前記凹部36とEGR通路37の開口端とを覆う状態になり、これにより、前記第4シリンダの排気ポート35の開口部とEGR通路37の上流端とを連通する容積室、即ちEGR導入空間が形成される。
【0035】
一方、前記排気マニホルド30の集合管35の下端部には、図示しないが、鉄製パイプ部材からなる排気管の上流端部が接続され、この排気管の下流端側が車両のフロア下まで延びていて、そこに排気浄化用の触媒が接続されるようになっている。
【0036】
前記シリンダヘッド4ののエンジン後側の端壁部4cには、前記EGR通路37を通って吸気マニホルド7に還流される排気ガスの流通量を調節するための排気還流制御弁41(以下、EGR弁という)が配設されている。このEGR弁41は、図示しないステッピングモータにより弁体が作動されて、排気ガスの流通量を調節するものであり、上述の如く、シリンダヘッド4の後端壁部4cに設けられた冷却水導出部17に隣接し、かつこの冷却水導出部17の導出管17aに取り付けられるウォータホースに取り囲まれるように配置されている。また、前記冷却水導出部17の上方に近接するように、各シリンダ毎の点火プラグ42,42,…に高圧電流を供給する点火コイルユニット43が配置されている。このようにEGR弁41や点火コイルユニット43が冷却水導出部17に近接して配置されていることによって、該EGR弁41や点火コイルユニット43の過熱が抑制されることになる。
【0037】
尚、前記図1における符号44は、エンジン1の動弁系における吸気側カム軸の回転位置を検出するためのカム角センサであり、また、符号45は、クランク軸2の出力端部に締結固定されるとともに、図外のオートマチックトランスミッション(AT)のトルクコンバータに締結固定されて、エンジン1の出力を該ATに伝達するドライブプレートである。
【0038】
(シリンダブロックの構造)
次に、前記シリンダブロック3の構造について、図4〜12に基づいて詳細に説明する。ここで、図4〜7は、吸気マニホルド7やウォータポンプ10等の補機類を全て取り除いた状態で、エンジン左側から見たシリンダブロック3の吸気側側壁部3a、エンジン右側から見たシリンダブロック3の排気側側壁部3b、シリンダブロック3のエンジン前端壁部3c及びエンジン後端壁部3dをそれぞれ示すものである。
【0039】
また、図8は、シリンダヘッド4を取り外した状態のシリンダブロック3のトップデッキ3eを示し、図9は、オイルパン6を取り外した状態でシリンダブロック3を下方のクランク室58側から見た状態を示す。さらに、図10〜12は、いずれもシリンダブロック3の縦断面構造を示すものであり、それぞれ、図4及び図8におけるX-X断面、XI-XI断面及びXII-XII断面を示す。
【0040】
前記シリンダブロック3は、アルミニウム合金の溶湯を所定圧力下で金型に流し込んで、形成したものであり、図4に示す吸気側側壁部3aには、その前端側の上端部近傍においてエンジン外方に向かって膨出するようにウォータポンプ収容部47が設けられ、かつこのウォータポンプ収容部47に連続するようにサーモスタットハウジング15が設けられている。また、前記ウォータポンプ収容部47やサーモスタットハウジング15の下方には、空調装置用コンプレッサ11の取付ボス部48,48,…が設けられている。
【0041】
一方、前記吸気側側壁部3aの後端側の下端部近傍には、オイルフィルタ13の取付台座部49が設けられており、この取付台座部49の上方には、スタータモータ12の取付ボス部50,50,…が設けられるとともに、該スタータモータ12のピニオンを収容するための凹陥部51が、シリンダブロック3の後端壁部3dに亘るように設けられている。尚、図4及び図5に示す符号52,52,…は、いずれも、シリンダブロック3の側壁部3a,3bを補強するためのリブである。
【0042】
図6に示すように、シリンダブロック3の前端壁部3cには、左右両側においてそれぞれ上端部から下端部に亘って突出する突出壁部54,54が設けられていて、この突出壁部54,54に対して図示しないフロントカバーが取り付けられることで、このフロントカバーと前端壁部3cとの間に動弁系駆動のタイミングチェーンを収容する扁平の空間部が形成されるようになっている。また、その突出壁部54,54のうち、シリンダブロック3の吸気側寄りのもの(図の右側の突出壁部)には、前記したウォータポンプ収容部47内のポンプ室55に連通する円形の開口部が形成されており、さらにその下方には該突出壁部54の内側にオイルポンプ56を収容するオイルポンプ収容空間57が開口している。
【0043】
また、同図において明らかなように、このシリンダブロック3は、左右両側の側壁部3a,3bがそれぞれクランク軸2の軸心Xよりも下方まで延びているディープスカートタイプのものであり、それらの両スカート部に囲まれた部分が、クランク軸2(この図には示さず)を収容するクランク室58とされている。このクランク室58には、図9に示すようにエンジン前後方向に並んで、合計5つの主軸受部59,59,…がシリンダブロック3側に形成されていて、該各主軸受部59にそれぞれ軸受キャップ60,60,…が配置され、さらに、該5つの軸受キャップ60,60,…同士がベアリングビーム61により連結された状態で、ボルト62,62,…により前記主軸受部59,59,…に対して締結固定されるようになっている。
【0044】
図7に示すように、シリンダブロック3の後端壁部3dには、図外のATが取り付けられるAT取付部63が設けられている。すなわち、図8,9に示すように、シリンダブロック3の左右両側壁部3a、3bは後端側ほど広くなるようにコーン形状に拡大されていて、このコーン形状の部分の後端面が、オイルパン6(この図には示さず)後端面とともに略円環形状のフランジ面からなるAT取付部63を構成している。そして、同図に仮想線で示すように、前記AT取付部63のフランジ面にATのケーシングのフランジ面が重ね合わされて、図示しない
ボルトにより締結固定されるようになっている。尚、前記ATのケーシング上端部、即ち締結部63のフランジ面の上端部は、シリンダブロック3のトップデッキ面3eよりも下方に位置している。
【0045】
また、前記後端壁部3dには、スタータモータ12のピニオンを収容する凹陥部51の形状に沿って切り欠きが形成されている。すなわち、凹陥部51は、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aから後端壁部3dに亘るように設けられていることになり、この凹陥部51を有効利用すれば、エンジン1のドライブプレート45をATのトルクコンバータのタービンケースに締結するときに、図12にも示すように、前記凹陥部51内においてドライブプレート45を実際に確認しながら、該凹陥部51内に位置づけた締結ボルト65をドライブプレート45に締結できるようになっている。このような凹陥部51の構成により、エンジン1とATとの結合作業の容易化が図られる。
【0046】
前記シリンダブロック3には、図8,9にそれぞれ示すように、エンジン前端側の第1シリンダs1から後端側の第4シリンダs4まで、4つのシリンダが一体成形されており、この各シリンダs1,s2,…にはそれぞれ鋳鉄製ライナ66,66,…(図9にのみ示す)が圧入されている。また、図8にのみ示すが、シリンダブロック3のトップデッキ3eには、該シリンダブロック3にシリンダヘッド4を取り付けるための合計10個のヘッドボルト孔67,67,…が形成されており、このヘッドボルト孔67,67,…は、平面視で各シリンダs1,s2,…の周囲を等間隔を空けて囲むように4箇所に配置されている。
【0047】
また、図10〜12にも示すように、シリンダブロック3には、前記4つのシリンダS1〜S4を囲むようにウォータジャケットwが設けられている。このウォータジャケットwは、シリンダブロック3の吸気側及び排気側側壁部3a,3bにおいて、それぞれ、シリンダs1〜s4の外形に沿うように屈曲する形状とされ、かつエンジン前端部から後端部に亘って設けられており、その吸気側の部分と排気側の部分とがエンジン前後両端部においてそれぞれ連通するようになっている。さらに、そのウォータジャケットwの形状に沿うように、トップデッキ面3eを貫通する異形の孔部70,70,…が形成されている。
【0048】
また、前記ウォータジャケットwの前端部には、ウォータポンプ10を収容するポンプ室55に連通する通路71の端部が開口され、一方、該ポンプ室55の端部は、隣接するサーモスタットハウジング15内のサーモスタット室72に連通するように、延びている。すなわち、ウォータポンプ収容部47の内部には、図6にも示すように、ポンプ室55の周囲を取り囲む渦巻き状の吐出通路71が形成されており、ウォータポンプ10の運転により前記サーモスタット室72からポンプ室55に吸い込まれた冷却水は、前記吐出通路71を流通して、ウォータジャケットwの前端部に流入するようになっている。
【0049】
そして、そのようにウォータジャケットwの前端部に流入した冷却水は、該ウォータジャケットw内を吸気側と排気側とに分かれてそれぞれエンジン後端側に向かって流れるとともに、シリンダブロック3のトップデッキ3eを貫通する孔部70,70,…を通って、シリンダヘッド4側のウォータジャケットに流れ、このシリンダヘッド4側のウォータジャケットにおいてもエンジン前端側から後端側に向かって流れて、該シリンダヘッド4の後端部に設けられた冷却水導出部17に至る。
【0050】
前記ウォータジャケットwは、図12により明らかなように、各シリンダs1〜s4の上側約半分に対応するくらい、即ち相対的に浅く形成されている。これは、一般的にアルミニウム合金製のシリンダブロックの場合、鋳鉄製シリンダブロックに比べて冷却効率が高くなるので、鋳鉄製シリンダブロックのようにシリンダの略全ての高さ寸法に対応する相対的に深いウォータジャケットを形成する必要がなく、そればかりか、そのようにウォータジャケットを深く形成すると、特に低負荷運転時にシリンダ内燃焼室が冷え過ぎて、熱効率の悪化を招くことになるからである。
【0051】
言い換えると、前記のように浅いウォータジャケットwに対して、ウォータポンプ10を適切に配置しようとすれば、半ば必然的に、この実施形態のエンジン1の如く、ウォータポンプ収容部47やサーモスタットハウジング15がシリンダブロック3の上端部近傍に配置されることになる。
【0052】
(オイル通路の構造)
本発明の特徴は、前記したシリンダブロック3におけるエンジンオイル通路の構造にあり、まず、エンジン1の各摺動部にエンジンオイルを供給する供給側の通路構造から説明すると、図4,6及び図10〜12に示すように、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aに、エンジン前端部から後端部に亘って直線的に延びるようにメインギャラリ80が形成されるとともに、オイルポンプ56から吐出されるエンジンオイルをオイルフィルタ13に導く第1供給路81と、このオイルフィルタ13により濾過されたエンジンオイルを前記メインギャラリ80に導く第2供給路82とが形成されている。
【0053】
すなわち、前記第1供給路81の下流端は、オイルフィルタ13の取付台座部49に開口して、オイルフィルタ13のオイル取入口に連通している。また、前記第2供給路82の上流端も前記取付台座部49に開口して、オイルフィルタ13からのオイル吐出口に連通している。一方、前記オイルギャラリ80は、前端部及び後端部がそれぞれ図示しないプラグにより閉止される一方、図6に示すように、シリンダブロック3の前端壁部3cにおいて左右方向に延びるように形成された第3オイル通路83に連通している。この第3オイル通路83は、図示しないが、タイミングチェーンの張力を調節する油圧式テンショナに圧油を供給するためのものである。尚、前記第3オイル通路83はシリンダブロック3の吸気側からドリルにより穿孔されて、形成されたものであり、吸気側側壁部3aに開口する部分が図示しないプラグにより閉止されている。
【0054】
前記メインギャラリ80には、図9〜12に示すように、クランク軸2を支持する主軸受部59,59,…に対して個別にエンジンオイルを供給するように、相対的に大径の分配通路84,84,…が分岐接続されている。また、図示しないが、メインギャラリ80には、エンジンオイルをシリンダヘッド4側に送るための専用のオイル通路が分岐接続されており、このオイル通路の途中には絞りが形成されていて、前記の如くクランク軸2の主軸受部59,59,…に対する供給油圧を確保しながら、シリンダヘッド4の動弁系等に十分な量のエンジンオイルを供給できるようになっている。
【0055】
次に、エンジン1の各摺動部からオイルパン6へエンジンオイルを戻すリターン側の通路構造を説明すると、前記したようにメインギャラリ80からクランク軸2の主軸受部59,59,…等に供給されたエンジンオイルは該各主軸受部59の摺動面からクランク室58に漏れ出て、そこから直接的にオイルパンに落下する。一方、シリンダヘッド4に供給されたエンジンオイルは、動弁系カム軸の軸受部等からシリンダヘッド4のミドルデッキ上に漏れ出て、このミドルデッキからシリンダヘッド4の底面まで貫通するオイル落とし穴を通って、シリンダブロック3上面に至り、このシリンダブロック3に該オイル落とし穴に連通するように設けられたオイルリターン通路86、87等を通って、クランク室58やオイルパン6に戻されるようになっている。
【0056】
詳しくは、図4,5に示すように、シリンダブロック3の吸気側及び排気側側壁部3a,3bには、それぞれ、第1シリンダs1及び第2シリンダs2の略中央に対応する位置において上下方向に略直線状に延びる前側リターン通路86,86(前端側オイルリターン通路)が設けられている。また、第3シリンダs3及び第4シリンダs4の中間にも同様に後側リターン通路87,87(シリンダブロック後端部に最も近い後端側オイルリターン通路)が設けられている。
【0057】
そして、図8〜11に示すように、前記前側及び後側リターン通路86,87は、いずれも、上流端がシリンダブロック3のトップデッキ3e上面に開口される一方、前側及び後側リターン通路86,87の各下流端は、シリンダブロック3の底面においてオイルパン6の内部に臨むように開口している。また、各リターン通路86,87の下流端側には、その途中でクランク室58に臨むように開口する開口窓部88が設けられていて、エンジン1が車体前後方向に揺動したり、或いは車両の前後加速度による影響を受けて、オイルパン6内の油面が大きく偏ったときでも、オイルの良好なリターン性を確保できるようになっている。
【0058】
前記前側及び後側リターン通路86,87は、いずれも、オイルパン6の内部に臨む下流端開口部の大きさが吸気側側壁部3aのものの方が排気側側壁部3bのものよりも大きくなっている。これは、同図には示さないが、図の時計回り方向に回転するクランク軸2からの風圧によって、オイルパン6内の油面が偏ることを考慮して、この油面の偏りによるオイルリターン性への悪影響を軽減するためのものである。
【0059】
また、前記図4,5に示すように、シリンダブロック3の吸気及び排気側側壁部3a、3bには、それぞれ、前記後端側オイルリターン通路87,87の途中から分岐して、シリンダブロック3後端側の斜め上方に向かって延びる分岐通路90,90が形成されている。この各分岐通路90の上流端は、図8にも示すように、シリンダブロック3のトップデッキ3e上面において、前記後端側オイルリターン通路87,87の上流端開口部よりもさらに後側に離間して、該シリンダブロック3の後端縁部近傍に開口されており、図示しないが、その上流端開口部に対応するようにシリンダヘッド4の後端部に形成されたオイル落とし穴に連通されている。
【0060】
一方、前記各分岐通路90の下流端部は、シリンダブロック3を左右いずれか一方向から見て、ウォータジャケットwの下端部近傍において該ウォータジャケットwの下端部を含むような位置で後側リターン通路87,87に接続されている。言い換えると、前記分岐通路90は、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aの後端側において、スタータモータ12のピニオンが収容される凹陥部51との干渉を避けるように配置されているということができ、また、後側リターン通路87とシリンダブロック3の後端縁部との間に、ウォータジャケットwを斜め上下方向に跨ぐように配置されているということもできる。
【0061】
ここで、前記した前側及び後側リターン通路86,87や分岐通路90は、いずれも閉断面構造とされており、しかも、その周囲のシリンダブロック3の側壁部3a、3bには、図8に明らかなように、少なくともウォータジャケットwに対応する上側の部分において外方に膨出する膨出部が設けられている。従って、該リターン通路86,87や分岐通路90の周囲では、側壁部3a、3bの剛性が高くなる。このことから、前記のような分岐通路90の配置によって、シリンダヘッド3の左右両側壁部3a,3bにおける後側リターン通路87,87から後端縁部までの部分は、トップデッキ3eからウォータジャケットwの下端部よりもやや下側の部分に亘って、該後側リターン通路87と分岐通路90とによって補強され、その剛性が高められている。
【0062】
一方、前記図4,8において明らかなように、シリンダブロック3の吸気側側壁部3aにおいて、前記前側リターン通路86の周囲の膨出部はサーモスタットハウジング15と連続するように一体成形されている。また、該前側リターン通路86と後側リターン通路87との間には、それらの周囲の膨出部とそれぞれ連続するように中間膨出部91(図8にのみ示す)が一体成形されており、この中間膨出部91の内部に、図に仮想線で示すように、オイルセパレータ室92が設けられている。
【0063】
要するに、前記シリンダブロック3の吸気側側壁部3aは、トップデッキ3eからウォータジャケットwの下端部よりも下側の所定位置、即ちシリンダs1〜s4内での燃焼に伴う加振力を最も強く受ける部分において前端縁部から後端側に向かって順に、ウォータポンプ収容部47、サーモスタットハウジング15、前側リターン通路86の膨出部、中間膨出部91、後側リターン通路87の膨出部が互いに連続するように一体成形され、さらに、該後側リターン通路87の膨出部からシリンダヘブロック3の後端縁部までが分岐通路90の膨出部によって繋がれていることで、十分な補強がなされたものである。
【0064】
尚、前記オイルセパレータ室92は、図9にも示すようにクランク室58からのブローバイガスを導くブローバイ通路93,93に連通していて、このブローバイ通路93,93により輸送されてくるブローバイガスからオイルミストを分離させて、図示しない通路を介して吸気マニホルド7の共通吸気管22に供給するとともに、分離させたオイルミストを再びブローバイ通路92によりクランク室58に戻すためのものである。
【0065】
したがって、この実施形態に係る往復動ピストンエンジンの本体構造によれば、シリンダブロック3の左右両側に位置する吸気側及び排気側側壁部3a、3bのそれぞれに、第1シリンダs1及び第2シリンダs2の略中央に対応する位置において上下方向に略直線状に延びる前側リターン通路86,86を設けるとともに、第3シリンダs3及び第4シリンダs4の中間にも同様の後側リターン通路87,87を設けたことで、これらの両方のリターン通路86,87によるエンジンオイルの流れが極めてスムーズなものとなり、基本的に良好なオイルリターン性を得ることができる。
【0066】
しかも、前記の如く、リターン通路86,87がいずれも隣接する2つのシリンダ間に対応する位置に設けられているので、該リターン通路86,87を通って落下したエンジンオイルは、シリンダ間でオイルパン6内に落下するようになり、このことで、クランク軸2のカウンターウエイトによるエンジンオイルの掻き上げを低減することができる。
【0067】
このことはまた、前記両方のリターン通路86,87が、いずれもシリンダs1〜S4と干渉し難い位置に設けられているということであり、従って、リターン通路86,87におけるオイルの流通断面積を十分に確保しながら、シリンダブロック3のコンパクト化を図ることができる。
【0068】
さらに、この実施形態では、前記前側及び後側リターン通路86,87の他に、シリンダヘッド4の後端部のオイル落とし穴を落下してきたエンジンオイルを、シリンダブロック3の後端部上面から前記後側リターン通路87の途中に合流させるように、分岐通路90を設けている。このため、この実施形態のようにエンジン1を車両に横置きに搭載したときだけでなく、エンジン1を縦置きに搭載して、シリンダブロック3の後端部が前端側よりも相対的に低い状態になっても、シリンダヘッド4の後端部にエンジンオイルが滞留することはなく、よって、油膜切れ等の発生を未然に防止することができる。
【0069】
加えて、この実施形態では、前記シリンダブロック3の吸気側側壁部3aにおいて加振力を最も強く受ける上側の部分に、前端部から後端部に亘って連続的に、外方に膨出する部分や閉断面構造の部分を一体成形しているので、該吸気側側壁部3aの剛性を高めて、膜振動を確実に抑制し、振動や騒音を低減することができる。さらに、前記吸気側側壁部3aだけでなく、排気側側壁部3bについても後側リターン通路87,87及び分岐通路90,90の配置によって、シリンダブロック3の後端部近傍の剛性が高められているので、このシリンダブロック3とATとの結合剛性も高めることができ、このことにより、パワートレイン全体として、振動や騒音を一層、低減することができる。
【0070】
しかも、そのようなシリンダブロック3の吸気側側壁部3aの補強を、シリンダブロック3の側壁部3a,3bに本来、設けられるべきサーモスタットハウジング15やリターン通路86,87等の適切な配置構成によって、実現しているので、該シリンダブロック3の剛性の向上と軽量化やコンパクト化とを高い次元で両立することができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明における往復動ピストンエンジンの本体構造によると、エンジンのシリンダブロックの左右両側壁部にそれぞれ複数のオイルリターン通路を設ける場合に、このオイルリターン通路を基本的には、隣接する気筒間に対応する位置に略直線状に設けることで、良好なオイルリターン性を確保し、かつそのエンジンオイルの掻き上げを抑制することができる。さらに、上流端がシリンダブロックの後端部上面に開口する一方、下流端が後端側オイルリターン通路の途中に接続される分岐通路を設けたことで、トランスミッション結合部との干渉を回避しながら、縦置き及び横置きの両方の搭載方式において良好なオイルリターン性を確保することができる。
【0072】
その上に、前記分岐通路をウォータジャケットの下端部近傍で後端側オイルリターン通路に接続するように配置したことで、シリンダブロックとトランスミッションとの結合剛性を高めて、振動や騒音を低減できる。
【0073】
請求項2の発明によると、分岐通路の下方に設けた凹陥部により、シリンダヘッドとトランスミッションとの結合作業を容易化できる。また、このような構成において、前記請求項1の発明の効果が特に有効なものとなる。
【0074】
請求項3の発明によると、シリンダブロック側壁部におけるサーモスタットハウジングの配置により、該側壁部全体の剛性を容易に向上し得るようになる。
【0075】
請求項4の発明によると、シリンダブロックの側壁部において特に加振力の大きい部分を前端部から後端部に亘って補強することで、膜振動を確実に抑制して、振動や騒音を低減することができる。しかも、その補強を、サーモスタットハウジングやオイルリターン通路等の独自の機能を有する構造部の配置によって実現することで、シリンダブロックの剛性向上と軽量化、コンパクト化とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る往復動ピストンエンジンの外観を示す左側後方からの斜視図である。
【図2】 エンジンの外観を示す左側(吸気側)側面図である。
【図3】 シリンダヘッドへの排気系の取付構造を示す右側後方からの斜視図である。
【図4】 シリンダブロックの吸気側側面図である。
【図5】 シリンダブロックの排気側側面図である。
【図6】 シリンダブロックのエンジン前側端面図である。
【図7】 シリンダブロックのエンジン後側端面図である。
【図8】 シリンダブロックの上面図である。
【図9】 シリンダブロックの底面図である。
【図10】 シリンダブロックの内部構造を示す、図4及び図8のX-X線における断面図である。
【図11】 図4及び図8のXI-XI線における断面図である。
【図12】 図4及び図8のXII-XII線における断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
3 シリンダブロック
3a 吸気側側壁部
3b 排気側側壁部
3d 後端壁部
15 サーモスタットハウジング
51 凹陥部
63 AT結合部
86 前側リターン通路(前端側オイルリターン通路)
87 後側リターン通路(後端側オイルリターン通路)
90 分岐通路
91 中間膨出部
92 オイルセパレータ室
s1〜S4 シリンダ(気筒)
w ウォータジャケット
Claims (4)
- エンジンのシリンダブロックにピストンを往復動可能に収容する複数の気筒が並設され、該気筒の並ぶ前後方向に延びる前記シリンダブロックの左右両側壁部には、それぞれ複数のオイルリターン通路が設けられるとともに、前記気筒の周囲を取り囲むようにウォータジャケットが形成されており、さらに当該シリンダブロックの後端壁部にトランスミッションとの結合部が設けられている往復動ピストンエンジンの本体構造において、
前記各オイルリターン通路は、前記シリンダブロックを左右いずれか一方向から見て、隣接する2つの気筒間において上下に略直線状に延びるように設けられ、
前記各オイルリターン通路の上流端がシリンダブロックの上面に開口される一方、その下流端がシリンダブロックの下端側に開口され、
前記複数のオイルリターン通路のうち、シリンダブロックの後端部に最も近い後端側オイルリターン通路には、その途中から分岐して、後方の斜め上方に向かって延びるように前記各側壁部に形成された分岐通路が連通し、
前記分岐通路の上流端は、前記シリンダブロックの上面において、前記後端側オイルリターン通路の上流端開口部よりも後方に離間して開口されている一方、該分岐通路の下流端は、シリンダブロックを左右いずれか一方向から見て、前記ウォータジャケットの下端部近傍で後端側オイルリターン通路に接続されていることを特徴とする往復動ピストンエンジンの本体構造。 - 請求項1において、
分岐通路の下方には、シリンダブロックの左右両側壁部のうちの少なくとも一方の側壁部から後端壁部に亘って開口するように、凹陥部が設けられていることを特徴とする往復動ピストンエンジンの本体構造。 - 請求項1において、
シリンダブロックの左右両側壁部のうちのいずれか一方の側壁部には、エンジン前端側でかつウォータジャケットに対応する位置において外方に膨出するように、サーモスタットハウジングが設けられていることを特徴とする往復動ピストンエンジンの本体構造。 - 請求項3において、
サーモスタットハウジングは、シリンダブロックの前端側に位置する前端側オイルリターン通路に隣接するように設けられ、
前記前端側オイルリターン通路及び後端側オイルリターン通路の周囲のシリンダブロック側壁部には、少なくともウォータジャケットに対応する位置において外方に膨出する膨出部が形成され、
前記前端側オイルリターン通路の周囲の膨出部が前記サーモスタットハウジングと連続するように一体成形され、
前記前端側及び後端側オイルリターン通路の中間のシリンダブロック側壁部に該各オイルリターン通路の膨出部とそれぞれ連続するように外方に膨出する中間膨出部が一体成形され、
前記中間膨出部の内部にオイルセパレータ室が設けられていることを特徴とする往復動ピストンエンジンの本体構造。
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