JP3735414B2 - 音声処理装置および音声処理方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば補聴器、電話、拡声器、音声通信などの分野で用いられる音声処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声信号の伝送系のダイナミックレンジが狭いとき、あるいは難聴者のように受聴可能なダイナミックレンジが狭いとき、対象となる音声信号のレベルの小さい部分は増幅し、大きい部分は制限する手法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように音声信号のダイナミックレンジの圧縮および増幅を行うと、次のような問題点を生じてしまう。
【0004】
(1) 反射や残響のある空間に発声された音声は、受聴地点では反射音・残響音を伴っていることが多い。そして、本来の反射音・残響音のレベルは直接音よりも小さいが、ダイナミックレンジの圧縮および増幅が行われることにより、反射音・残響音のレベルが大きくなるので、相対的に反射音・残響音が目立つようになり、結果として聞き取りにくい音声になる。
【0005】
(2) ダイナミックレンジの圧縮率を大きく設定した場合に、音量も大きくしようとすると、結果的に小さい入力音に対する利得が大きくなるので、暗騒音が目立ったり、ハウリングが生じやすくなる。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明においては、
入力された音声信号のレベルを、言葉の聞き取りが可能な最小レベルである最小可聴値から大きすぎて不快に感じる不快閾値までの範囲に変換する音声処理装置において、
レベル圧縮回路を有し、
このレベル圧縮回路が、上記最小可聴値と、この最小可聴値まで増幅されるべき入力音声レベルと、上記不快閾値と、この不快閾値で制限されるべき入力音声レベルとで設定される入出力レベル変換特性をもつ
ようにした音声処理装置
とするものである。
【0008】
したがって、音声の知覚・理解に必要な音声レベルの範囲が、受聴者の聞きやすいダイナミックレンジ内に増幅および圧縮される。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明を補聴器に適用するとともに、音声帯域を3分割して音声信号の処理を行うようにした場合である。
【0010】
すなわち、マイクロフォン11が受聴用のイヤホン18の後部に設けられ、受聴者の耳部の位置で音声などの集音を行うようにされている。
【0011】
そして、このマイクロフォン11により集音された音声の音声信号がアンプ12を通じてバンドパスフィルタに供給されて有効な周波数帯域、例えば100Hz〜8000Hzの周波数成分の音声信号S13が取り出され、この信号S13がA/Dコンバータ14に供給されて量子化ビット数が例えば16ビットのデジタル音声信号S14にA/D変換され、この信号S14がDSP15に供給される。
【0012】
このDSP15の詳細については後述するが、DSP15は、信号S13の帯域ごとにレベル圧縮を行うように、信号S14を処理し、その処理結果を信号S15として出力するものである。
【0013】
そして、このDSP15からの信号S15が、D/Aコンバータ16に供給されてアナログ音声信号S16にD/A変換され、この信号S16がアンプ17を通じて例えばダイナミック型に構成されたイヤホン18に供給される。したがって、マイクロフォン11により集音された音声を、イヤホン18により聴くことができる。
【0014】
さらに、符号20はマイクロコンピュータを示す。このマイクロコンピュータ20は、DSP15が等価的に実現する回路の特性あるいはパラメータを設定するためのものであり、このため、マイクロコンピュータ20には、処方箋にしたがって調整される半固定の可変抵抗器(トリマ)RHA〜RLA、RHB〜RLBと、受聴者が任意に調整する可変抵抗器RHC〜RLC、RRCとが接続される。そして、これら可変抵抗器RHA〜RRCから得られるアナログ電圧の大きさがマイクロコンピュータ20により検出され、その検出結果にしたがってDSP15が実現する回路の特性あるいはパラメータが制御される。
【0015】
そして、DSP15は、図1に示すように、信号S14の供給される3つのフィルタ51H、51M、51Lと、3つのレベル圧縮回路52H、52M、52Lと、加算回路53とを等価的に実現しているものである。
【0016】
この場合、フィルタ51Hは、ほぼ3kHz以上を通過帯域とするハイパスフィルタとされ、このフィルタ51Hからは信号S13の第3フォルマントおよび子音の成分のデジタル信号S1Hが取り出される。また、フィルタ51Mは、ほぼ1kHz〜3kHzを通過帯域とするバンドパスフィルタとされ、このフィルタ51Mからは信号S13の第2フォルマントの成分のデジタル信号S1Mが取り出される。さらに、フィルタ51Lは、ほぼ1kHz以下を通過帯域とするバンドパスフィルタあるいはローパスフィルタとされ、このフィルタ51Lからは信号S13のピッチおよび第1フォルマントの成分のデジタル信号S1Lが取り出される。
【0017】
そして、これら信号S1H、S1M、S1Lが、レベル圧縮回路52H、52M、52Lにそれぞれ供給される。
【0018】
この場合、レベル圧縮回路52Hは、例えば図2に示すような入出力特性で非線形増幅を行うものである。すなわち、図2において、符号HLは、図1の補聴器を使用する受聴者の最小可聴値(言葉の聞き取りが可能な最小レベル)に対応するレベルを示し、符号UCLは、同じく不快閾値(大きすぎて不快に感じるレベル)に対応するレベルを示す。したがって、HLとUCLとの間のレベル範囲が、対象とする受聴者にとって受聴可能な範囲である。
【0019】
そして、圧縮回路52Hの入出力特性は、実線の折れ線Cで示すように、UCLとHLとを結ぶ直線部分を有するとともに、HL上にニーポイント(折れ曲がり点)PNを有する非線形特性とされる。また、このとき、可変抵抗器RHAを調整すると、UCLが図2の矢印Aの示す範囲で上下し、可変抵抗器RHBを調整すると、HLが矢印Bの示す範囲で上下するようにされる。さらに、可変抵抗器RHCを調整すると、ニーポイントPNが、HL上で左右に変化するようにされる。
【0020】
したがって、圧縮回路52Hの入出力特性のうち、UCLとHLとの間の範囲、すなわち、受聴可能範囲と、この受聴可能範囲における特性の傾きを、可変抵抗器RHA、RHB、RHCにより調整できることになる。
【0021】
例えば、可変抵抗器RHBを調整して図2に破線で示すようにHLを高くすると、入出力特性も破線で示すようになるので、実線の特性の場合に比べ、受聴できる入力音圧レベルの範囲は変化しないが、音声がより大きな音圧で出力されることになる。また、可変抵抗器RHCを調整してニーポイントPNを小入力側に変更すると、入出力特性は鎖線で示すようになるので、実線の特性の場合に比べ、より小さな音圧の音声まで受聴できることになる。
【0022】
さらに、レベル圧縮回路52M、52Lも、レベル圧縮回路52Hと同様に構成されるもので、可変抵抗器RMA〜RMC、RLA〜RLCにより、圧縮回路52M、52LのUCL、HL、ニーポイントPNがそれぞれ変化し、その結果、圧縮回路52M、52Lの入出力特性が変化するようにされている。
【0023】
したがって、可変抵抗器RHA〜RLA、RHB〜RLBを調整することにより、イヤホン18の出力音圧レベルを受聴可能範囲に収めることができ、可変抵抗器RHC〜RLCを調整することにより、入力音圧の範囲を変更することができる。
【0024】
そして、圧縮回路52H、52M、52Lからの信号S2H、S2M、S2Lが加算回路53に供給されて加算され、その加算信号が上記の信号S15として取り出される。
【0025】
さらに、以上の構成だけの場合には、ニーポイントPNを小入力側に変更した場合、小入力に対する利得が大きくなるので、イヤホン18から出力された音声がマイクロフォン11により集音され、ハウリングを生じることがある。あるいは暗騒音まで大きなレベルで出力されることがある。
【0026】
そこで、この発明においては、さらに次のように構成される。すなわち、例えばレベル圧縮回路52Hにおいては、HL上におけるニーポイントPNの左右位置は可変抵抗器RHCにより変更されるが、ニーポイントPNを小入力側に変更する場合には、所定値LIMよりも小入力側には変更できないように、ニーポイントPNの設定可能範囲が制限されるとともに、その制限値LIMは、HLが大きくなるほど大入力側となるように、HLに対応して変更される。
【0027】
図3は、その制限値LIMの一例を示すもので、例えばHLが出力音圧レベルの40dBに対応するときには、制限値LIMは入力音圧レベルの15dBに対応する値とされ、HLが出力音圧レベルの80dBに対応するときには、制限値LIMは入力音圧レベルの26dBに対応する値とされる。
【0028】
また、レベル圧縮回路52M、52Lにおいても、レベル圧縮回路52Hと同様、ニーポイントPNの設定可能範囲の下限が制限される。
【0029】
さらに、レベル圧縮回路52H〜52Lのレベル圧縮動作のリカバリータイム(解除時間)TRCが可変とされるとともに、そのリカバリータイムTRCが可変抵抗器RRCを通じて受聴者により任意に変更できるようにされる。ただし、この場合、UCLとHLとのレベル差が小さいときには、すなわち、圧縮回路52H〜52Lの圧縮率が大きいときには、小さいときに比べ、リカバリータイムTRCが小さくならないように制限される。
【0030】
このような構成によれば、聴力に応じて(処方箋にしたがって)可変抵抗器RHA〜RLA、RHB〜RLBを調整することにより、UCLおよびHLを変更できるので、イヤホン18から出力される音声のレベルを受聴可能範囲に収めることができ、音声を適切に受聴することができる。
【0031】
また、受聴者が可変抵抗器RHC〜RLCを調整することにより、ニーポイントPNの左右位置を変更することができるので、例えば図4に実線で示す入出力特性とすれば、静かな場所で、ささやき声を聴くことができる。あるいは図4の破線の特性とすれば、小さな声を聴くことができ、鎖線の特性とすれば、暗騒音のある場所で、大きな声を聴くことができる。
【0032】
さらに、可変抵抗器RHC〜RLCによりニーポイントPNを変更するとき、ニーポイントPNの設定可能範囲の下限は、例えば図3に示す位置に制限され、これよりも小入力側には設定できないので、ハウリングを防止することができる。また、暗騒音が大きなレベルとなって出力されることもない。
【0033】
図5Aは道路わきにおける会話の音声波形を示し、会話の途切れている期間TNの交通騒音が目立っている。しかし、可変抵抗器RHC〜RLCを調整してニーポイントPNおよび入出力特性を図4の鎖線の状態にすると、図5Bに示すように、期間TNにおける交通騒音は抑圧される。
【0034】
また、例えば図6に示すように、期間TDに直接音が得られ、続く期間TEに反射音・残響音が得られるとする。すると、圧縮回路52H〜52LのリカバリータイムTRCが短い場合には、入力レベルの変化に追従して圧縮回路52H〜52Lの利得が変化するとともに、その利得は入力レベルが小さいときには大きくなる。したがって、リカバリータイムTRCが短い場合には、図6Aに示すように、期間TEに出力される反射音・残響音のレベルは大きくなってしまい、結果として聞き取りにくい音声になってしまう。
【0035】
しかし、この補聴器においては、可変抵抗器RRCによりリカバリータイムTRCを長い状態に設定することができるので、期間TEにおける圧縮回路52H〜52Lの利得は、期間TDの直接音のレベルに対応した小さな値に保持されている。したがって、図6Bに示すように、期間TEに出力される反射音・残響音のレベルは十分に小さくなり、聞き取りやすい音声になる。
【0036】
こうして、上述の補聴器によれば、受聴者の最小可聴値や暗騒音のレベルを考慮し、音声の知覚・理解に必要な音声レベルの範囲を、受聴者の聞きやすいダイナミックレンジ内に増幅および圧縮するようにしているので、目的とする音声だけを適切に受聴者に提供することができる。
【0037】
なお、上述においては、可変抵抗器RHA〜RLC、RRCにより、各種の調整あるいは設定を行うとしたが、プッシュスイッチの操作により調整あるいは設定を行うようにすることもできる。また、暗騒音あるいはノイズレベルが高い場合であれば、電話、拡声器、音声通信などにおいても、有効である。
【0038】
【発明の効果】
この発明によれば、ハウリングが起きにくい設定条件で使用することができ、設定が楽である。また、騒音が大きいときでも、騒音が目立たないようにできる。さらに、利得や圧縮率を大きく設定しても、反射音・残響音までが増幅されることがなく、反射・残響音により邪魔をされずに音声を聴くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明を説明するための特性図である。
【図3】この発明を説明するための特性図である。
【図4】この発明を説明するための特性図である。
【図5】この発明を説明するための波形図である。
【図6】この発明を説明するための波形図である。
【符号の説明】
11…マイクロフォン、13…バンドパスフィルタ、14…A/Dコンバータ、15…DSP、16…D/Aコンバータ、18…イヤホン、20…マイクロコンピュータ、51H〜51L…ハイパスフィルタ、52H〜52L…レベル圧縮回路、53…加算回路、RHA〜RLC、RRC…可変抵抗器
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば補聴器、電話、拡声器、音声通信などの分野で用いられる音声処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声信号の伝送系のダイナミックレンジが狭いとき、あるいは難聴者のように受聴可能なダイナミックレンジが狭いとき、対象となる音声信号のレベルの小さい部分は増幅し、大きい部分は制限する手法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように音声信号のダイナミックレンジの圧縮および増幅を行うと、次のような問題点を生じてしまう。
【0004】
(1) 反射や残響のある空間に発声された音声は、受聴地点では反射音・残響音を伴っていることが多い。そして、本来の反射音・残響音のレベルは直接音よりも小さいが、ダイナミックレンジの圧縮および増幅が行われることにより、反射音・残響音のレベルが大きくなるので、相対的に反射音・残響音が目立つようになり、結果として聞き取りにくい音声になる。
【0005】
(2) ダイナミックレンジの圧縮率を大きく設定した場合に、音量も大きくしようとすると、結果的に小さい入力音に対する利得が大きくなるので、暗騒音が目立ったり、ハウリングが生じやすくなる。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明においては、
入力された音声信号のレベルを、言葉の聞き取りが可能な最小レベルである最小可聴値から大きすぎて不快に感じる不快閾値までの範囲に変換する音声処理装置において、
レベル圧縮回路を有し、
このレベル圧縮回路が、上記最小可聴値と、この最小可聴値まで増幅されるべき入力音声レベルと、上記不快閾値と、この不快閾値で制限されるべき入力音声レベルとで設定される入出力レベル変換特性をもつ
ようにした音声処理装置
とするものである。
【0008】
したがって、音声の知覚・理解に必要な音声レベルの範囲が、受聴者の聞きやすいダイナミックレンジ内に増幅および圧縮される。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明を補聴器に適用するとともに、音声帯域を3分割して音声信号の処理を行うようにした場合である。
【0010】
すなわち、マイクロフォン11が受聴用のイヤホン18の後部に設けられ、受聴者の耳部の位置で音声などの集音を行うようにされている。
【0011】
そして、このマイクロフォン11により集音された音声の音声信号がアンプ12を通じてバンドパスフィルタに供給されて有効な周波数帯域、例えば100Hz〜8000Hzの周波数成分の音声信号S13が取り出され、この信号S13がA/Dコンバータ14に供給されて量子化ビット数が例えば16ビットのデジタル音声信号S14にA/D変換され、この信号S14がDSP15に供給される。
【0012】
このDSP15の詳細については後述するが、DSP15は、信号S13の帯域ごとにレベル圧縮を行うように、信号S14を処理し、その処理結果を信号S15として出力するものである。
【0013】
そして、このDSP15からの信号S15が、D/Aコンバータ16に供給されてアナログ音声信号S16にD/A変換され、この信号S16がアンプ17を通じて例えばダイナミック型に構成されたイヤホン18に供給される。したがって、マイクロフォン11により集音された音声を、イヤホン18により聴くことができる。
【0014】
さらに、符号20はマイクロコンピュータを示す。このマイクロコンピュータ20は、DSP15が等価的に実現する回路の特性あるいはパラメータを設定するためのものであり、このため、マイクロコンピュータ20には、処方箋にしたがって調整される半固定の可変抵抗器(トリマ)RHA〜RLA、RHB〜RLBと、受聴者が任意に調整する可変抵抗器RHC〜RLC、RRCとが接続される。そして、これら可変抵抗器RHA〜RRCから得られるアナログ電圧の大きさがマイクロコンピュータ20により検出され、その検出結果にしたがってDSP15が実現する回路の特性あるいはパラメータが制御される。
【0015】
そして、DSP15は、図1に示すように、信号S14の供給される3つのフィルタ51H、51M、51Lと、3つのレベル圧縮回路52H、52M、52Lと、加算回路53とを等価的に実現しているものである。
【0016】
この場合、フィルタ51Hは、ほぼ3kHz以上を通過帯域とするハイパスフィルタとされ、このフィルタ51Hからは信号S13の第3フォルマントおよび子音の成分のデジタル信号S1Hが取り出される。また、フィルタ51Mは、ほぼ1kHz〜3kHzを通過帯域とするバンドパスフィルタとされ、このフィルタ51Mからは信号S13の第2フォルマントの成分のデジタル信号S1Mが取り出される。さらに、フィルタ51Lは、ほぼ1kHz以下を通過帯域とするバンドパスフィルタあるいはローパスフィルタとされ、このフィルタ51Lからは信号S13のピッチおよび第1フォルマントの成分のデジタル信号S1Lが取り出される。
【0017】
そして、これら信号S1H、S1M、S1Lが、レベル圧縮回路52H、52M、52Lにそれぞれ供給される。
【0018】
この場合、レベル圧縮回路52Hは、例えば図2に示すような入出力特性で非線形増幅を行うものである。すなわち、図2において、符号HLは、図1の補聴器を使用する受聴者の最小可聴値(言葉の聞き取りが可能な最小レベル)に対応するレベルを示し、符号UCLは、同じく不快閾値(大きすぎて不快に感じるレベル)に対応するレベルを示す。したがって、HLとUCLとの間のレベル範囲が、対象とする受聴者にとって受聴可能な範囲である。
【0019】
そして、圧縮回路52Hの入出力特性は、実線の折れ線Cで示すように、UCLとHLとを結ぶ直線部分を有するとともに、HL上にニーポイント(折れ曲がり点)PNを有する非線形特性とされる。また、このとき、可変抵抗器RHAを調整すると、UCLが図2の矢印Aの示す範囲で上下し、可変抵抗器RHBを調整すると、HLが矢印Bの示す範囲で上下するようにされる。さらに、可変抵抗器RHCを調整すると、ニーポイントPNが、HL上で左右に変化するようにされる。
【0020】
したがって、圧縮回路52Hの入出力特性のうち、UCLとHLとの間の範囲、すなわち、受聴可能範囲と、この受聴可能範囲における特性の傾きを、可変抵抗器RHA、RHB、RHCにより調整できることになる。
【0021】
例えば、可変抵抗器RHBを調整して図2に破線で示すようにHLを高くすると、入出力特性も破線で示すようになるので、実線の特性の場合に比べ、受聴できる入力音圧レベルの範囲は変化しないが、音声がより大きな音圧で出力されることになる。また、可変抵抗器RHCを調整してニーポイントPNを小入力側に変更すると、入出力特性は鎖線で示すようになるので、実線の特性の場合に比べ、より小さな音圧の音声まで受聴できることになる。
【0022】
さらに、レベル圧縮回路52M、52Lも、レベル圧縮回路52Hと同様に構成されるもので、可変抵抗器RMA〜RMC、RLA〜RLCにより、圧縮回路52M、52LのUCL、HL、ニーポイントPNがそれぞれ変化し、その結果、圧縮回路52M、52Lの入出力特性が変化するようにされている。
【0023】
したがって、可変抵抗器RHA〜RLA、RHB〜RLBを調整することにより、イヤホン18の出力音圧レベルを受聴可能範囲に収めることができ、可変抵抗器RHC〜RLCを調整することにより、入力音圧の範囲を変更することができる。
【0024】
そして、圧縮回路52H、52M、52Lからの信号S2H、S2M、S2Lが加算回路53に供給されて加算され、その加算信号が上記の信号S15として取り出される。
【0025】
さらに、以上の構成だけの場合には、ニーポイントPNを小入力側に変更した場合、小入力に対する利得が大きくなるので、イヤホン18から出力された音声がマイクロフォン11により集音され、ハウリングを生じることがある。あるいは暗騒音まで大きなレベルで出力されることがある。
【0026】
そこで、この発明においては、さらに次のように構成される。すなわち、例えばレベル圧縮回路52Hにおいては、HL上におけるニーポイントPNの左右位置は可変抵抗器RHCにより変更されるが、ニーポイントPNを小入力側に変更する場合には、所定値LIMよりも小入力側には変更できないように、ニーポイントPNの設定可能範囲が制限されるとともに、その制限値LIMは、HLが大きくなるほど大入力側となるように、HLに対応して変更される。
【0027】
図3は、その制限値LIMの一例を示すもので、例えばHLが出力音圧レベルの40dBに対応するときには、制限値LIMは入力音圧レベルの15dBに対応する値とされ、HLが出力音圧レベルの80dBに対応するときには、制限値LIMは入力音圧レベルの26dBに対応する値とされる。
【0028】
また、レベル圧縮回路52M、52Lにおいても、レベル圧縮回路52Hと同様、ニーポイントPNの設定可能範囲の下限が制限される。
【0029】
さらに、レベル圧縮回路52H〜52Lのレベル圧縮動作のリカバリータイム(解除時間)TRCが可変とされるとともに、そのリカバリータイムTRCが可変抵抗器RRCを通じて受聴者により任意に変更できるようにされる。ただし、この場合、UCLとHLとのレベル差が小さいときには、すなわち、圧縮回路52H〜52Lの圧縮率が大きいときには、小さいときに比べ、リカバリータイムTRCが小さくならないように制限される。
【0030】
このような構成によれば、聴力に応じて(処方箋にしたがって)可変抵抗器RHA〜RLA、RHB〜RLBを調整することにより、UCLおよびHLを変更できるので、イヤホン18から出力される音声のレベルを受聴可能範囲に収めることができ、音声を適切に受聴することができる。
【0031】
また、受聴者が可変抵抗器RHC〜RLCを調整することにより、ニーポイントPNの左右位置を変更することができるので、例えば図4に実線で示す入出力特性とすれば、静かな場所で、ささやき声を聴くことができる。あるいは図4の破線の特性とすれば、小さな声を聴くことができ、鎖線の特性とすれば、暗騒音のある場所で、大きな声を聴くことができる。
【0032】
さらに、可変抵抗器RHC〜RLCによりニーポイントPNを変更するとき、ニーポイントPNの設定可能範囲の下限は、例えば図3に示す位置に制限され、これよりも小入力側には設定できないので、ハウリングを防止することができる。また、暗騒音が大きなレベルとなって出力されることもない。
【0033】
図5Aは道路わきにおける会話の音声波形を示し、会話の途切れている期間TNの交通騒音が目立っている。しかし、可変抵抗器RHC〜RLCを調整してニーポイントPNおよび入出力特性を図4の鎖線の状態にすると、図5Bに示すように、期間TNにおける交通騒音は抑圧される。
【0034】
また、例えば図6に示すように、期間TDに直接音が得られ、続く期間TEに反射音・残響音が得られるとする。すると、圧縮回路52H〜52LのリカバリータイムTRCが短い場合には、入力レベルの変化に追従して圧縮回路52H〜52Lの利得が変化するとともに、その利得は入力レベルが小さいときには大きくなる。したがって、リカバリータイムTRCが短い場合には、図6Aに示すように、期間TEに出力される反射音・残響音のレベルは大きくなってしまい、結果として聞き取りにくい音声になってしまう。
【0035】
しかし、この補聴器においては、可変抵抗器RRCによりリカバリータイムTRCを長い状態に設定することができるので、期間TEにおける圧縮回路52H〜52Lの利得は、期間TDの直接音のレベルに対応した小さな値に保持されている。したがって、図6Bに示すように、期間TEに出力される反射音・残響音のレベルは十分に小さくなり、聞き取りやすい音声になる。
【0036】
こうして、上述の補聴器によれば、受聴者の最小可聴値や暗騒音のレベルを考慮し、音声の知覚・理解に必要な音声レベルの範囲を、受聴者の聞きやすいダイナミックレンジ内に増幅および圧縮するようにしているので、目的とする音声だけを適切に受聴者に提供することができる。
【0037】
なお、上述においては、可変抵抗器RHA〜RLC、RRCにより、各種の調整あるいは設定を行うとしたが、プッシュスイッチの操作により調整あるいは設定を行うようにすることもできる。また、暗騒音あるいはノイズレベルが高い場合であれば、電話、拡声器、音声通信などにおいても、有効である。
【0038】
【発明の効果】
この発明によれば、ハウリングが起きにくい設定条件で使用することができ、設定が楽である。また、騒音が大きいときでも、騒音が目立たないようにできる。さらに、利得や圧縮率を大きく設定しても、反射音・残響音までが増幅されることがなく、反射・残響音により邪魔をされずに音声を聴くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明を説明するための特性図である。
【図3】この発明を説明するための特性図である。
【図4】この発明を説明するための特性図である。
【図5】この発明を説明するための波形図である。
【図6】この発明を説明するための波形図である。
【符号の説明】
11…マイクロフォン、13…バンドパスフィルタ、14…A/Dコンバータ、15…DSP、16…D/Aコンバータ、18…イヤホン、20…マイクロコンピュータ、51H〜51L…ハイパスフィルタ、52H〜52L…レベル圧縮回路、53…加算回路、RHA〜RLC、RRC…可変抵抗器
Claims (5)
- 入力された音声信号のレベルを、言葉の聞き取りが可能な最小レベルである最小可聴値から大きすぎて不快に感じる不快閾値までのレベル範囲に変換する音声処理装置において、
上記最小可聴値およびこの最小可聴値まで増幅されるべき入力音声レベルの交点であるニーポイントと、上記不快閾値およびこの不快閾値で制限されるべき入力音声レベルの交点とを結ぶ入出力レベル変換特性を有するレベル圧縮回路と、
このレベル圧縮回路の動作中に、上記ニーポイントを与える入力音声レベルを任意のレベルに設定する設定手段と、
この設定手段の設定に基づいて上記ニーポイントを入力音声レベルのレベル方向に変更する制御部と
を有する音声処理装置。 - 請求項1に記載の音声処理装置において、
上記制御部は、上記最小可聴値が大きいときには、この最小可聴値まで増幅されるべき入力音声レベルの設定可能範囲の下限を制限する
ようにした音声処理装置。 - 請求項1に記載の音声処理装置において、
上記制御部は、暗騒音レベルが大きいときには、上記最小可聴値まで増幅されるべき入力音声レベルの設定可能範囲の下限を制限する
ようにした音声処理装置。 - 請求項1に記載の音声処理装置において、
上記制御部は、上記入出力レベル特性の圧縮動作のリカバリータイムを変更するリカバリータイム変更手段を更に備えるようにした音声処理装置。 - レベル圧縮回路により、入力された音声信号のレベルを、言葉の聞き取りが可能な最小レベルである最小可聴値から大きすぎて不快に感じる不快閾値までのレベル範囲に変換する音声処理方法であって、
上記レベル圧縮回路に、上記最小可聴値およびこの最小可聴値まで増幅されるべき入力音声レベルの交点であるニーポイントと、上記不快閾値およびこの不快閾値で制限されるべき入力音声レベルの交点とを結ぶ入出力レベル変換特性を与えるとともに、
上記レベル圧縮回路の動作中に、所定の設定手段により、上記ニーポイントを与える入力音声レベルを任意のレベルに設定して上記ニーポイントを入力音声レベルのレベル方向に変更する
ようにした音声処理方法。
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