JP3735402B2 - 球技用ボール芯 - Google Patents

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Description

【0001】
【用語の定義】
本明細書中で用いる「動的架橋」とは、ゴムが溶融された熱可塑性樹脂と共に混練されながら架橋されることをいうが、この動的架橋によりゴムを熱可塑性樹脂中に分散させることは、例えば特公平5-29653号公報に開示されている。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、球技用ボール、例えば野球、ソフトボール、ゴルフボール等に用いられる芯材に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来、野球やソフトボール等の球技用ボールはボール芯とそれを被覆する外皮から成る簡単な構造を有している。このボール芯は、古くは合成ゴムとコルク粒とを圧搾造形して成るコルク芯であった。これにゴムテープを巻き付け、その上に外皮を被せて、例えば野球のボールを形成した。また、合成ゴムまたは合成樹脂と適度に混合して一体成形し、これに外皮を被せたもの等も用いられていた。
【0004】
更には、合成ゴムとコルク粒および官能基を有する金属ポリアクリル酸モノマーと熱硬化性樹脂とを混合し、加圧加熱下で化学反応させ3次元架橋成形した芯材を用いる例もある(特公平5-60389号公報)。
【0005】
しかしながら、これまでの芯材では、適度な硬度と良好な反撥性および強い耐久性が得られなかった。また耐久性を得ようとすれば補強性の充填材を配合しなければならず、高比重造形物となってしまい、ボールの重量規格を適合し得なくなり、満足のいく性能を発揮し得ないものであった。
【0006】
また、合成ゴムとコルク粒および官能基を有する金属ポリアクリル酸モノマーと熱硬化性樹脂とを混合し、加圧加熱下で化学反応させ3次元架橋成形した特公平5-60389号公報に記載の芯材を用いる場合でも、成形時間が長く、かつ成形温度等の条件により硬度または反撥性が異なることがあり、性能の安定性に欠けるとともに、成形に手間がかかる欠点を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の球技用ボール芯の有する問題点を解決し、低比重であり、適度な硬度と良好な反撥性、および優れた耐久性を安定して有すると共に、成形時間も短縮し得る、球技用ボール芯を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂中に分散させたゴムエラストマーを架橋剤により動的架橋して、該熱可塑性樹脂中に平均粒径10μm以下を有する架橋ゴムエラストマー粒子を分散させた材料を用いることにより、性能面、成形性面ともに安定した球技用ボール芯が得られるとともに、製造上の効率面でも優れることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、熱可塑性樹脂をマトリックスとし、架橋ゴムエラストマーを極微細に分散することが可能である動的架橋の手法を用いることにより、単なる架橋済みのゴムエラストマーを粉砕混合するよりも微細な粒子を分散可能となり、従来の問題点であった、性能、例えば硬度、反撥性、および耐久性を安定して維持し得る。
【0010】
以下、本発明について更に詳述する。
本発明の球技用ボール芯に使用する樹脂は熱可塑性樹脂であり、射出成形可能なものが好ましい。ボールの感触を考慮して適度な硬度が要求されるため、曲げ弾性率200〜600MPa、好ましくは250〜500MPaを有する方が良い。曲げ弾性率が200MPaより小さければ、ボール硬度が低下し、打球感・耐久性が悪くなる。また、600MPaより大きければ、逆にボールが硬くなり過ぎ、打球感が悪くなる。使用可能な熱可塑性樹脂としては、一般的なもの、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ボールの反撥性や耐久性、および成形性を考慮して、樹脂種としてはアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
【0011】
また、分散されるゴムエラストマーとしては、架橋性を有するものであればよく、ジエン系ゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンエラストマー、シリコーンゴム等が挙げられる。特に、ジエン系ゴム、エチレンプロピレンゴムが好ましい。
【0012】
更に、打球感や硬度に影響を与えるため、熱可塑性樹脂とゴムエラストマーの混合比は、95/5〜30/70(熱可塑性樹脂/ゴムエラストマーの重量比)が好ましく、より好ましくは70/30〜50/50の範囲内である。熱可塑性樹脂とゴムエラストマーの混合比は、95/5よりゴムエラストマーが少なくなれば硬すぎまた割れ易く耐久性に乏しい。30/70よりゴムエラストマーが多くなると、ボールが軟らかくなり過ぎ、打球感、耐久性または反撥性も低下し、ボールとしての硬度が不足し実用的でない。更にゴムエラストマー分が増えると、実際の成形時に樹脂の流れが悪く、加工性の低下につながる。
【0013】
また、これらの動的架橋に用いられる架橋剤としては、過酸化物以外であればいずれも使用可能であり、マトリックスの樹脂を損なわないものであれば差し支えないが、オキシム類、硫黄および加硫促進剤の併用、硫黄単独、加硫促進剤単独等が用いられる。オキシム類の例としては、p-ベンゾイルキノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシムが挙げられる。加硫促進剤の例としては、ジベンゾチアジルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドが挙げられる。それらの配合量としては、ゴムエラストマー100重量部に対して、0.2〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0014】
動的架橋時に、必要に応じて比重調整等のために充填材、分散剤、安定剤、老化防止剤、色素等を含有してもよい。また、成形性を改善するために可塑剤やオイル等を配合してもよい。加えて、通常用いられるコルク粒を配合してもよい。これらの配合量は、アイオノマー/ゴム 100重量部に対して、10〜70重量部である。
【0015】
動的架橋は通常、上記配合物中の内、少なくともアイオノマー樹脂、ジエン系ゴム、架橋剤の3種をニーダー、バンバリー、押出機、ロール等で混合して行う。この3種の混合はアイオノマー樹脂、ジエン系ゴム、架橋剤の順でもよいし、予めロール等で混合したものを動的架橋に付してもよい。但し、予備混合は架橋剤の活性化温度以下で行う必要がある。動的架橋を行う温度は、架橋剤の活性化温度より20℃低い温度から250℃までが適している。例えば、オキシム系の場合、活性化温度が一般に180℃であるので、動的架橋時の温度としては160〜250℃の範囲が適している。また、硫黄および加硫促進剤を併用する場合、活性化温度が一般に150℃程度であるので、動的架橋時の温度としては130〜250℃の範囲が適している。動的架橋時の温度が上記温度より低い場合は、ジエン系ゴムの架橋が起こらないか、あるいは架橋反応の進行が遅いため、生産効率が悪り、また動的架橋時の温度が250℃より高くなると、ジエン系ゴムの劣化が生じ、打球感をソフトにする効果などが十分に発現されなくなる恐れがある。なお、動的架橋の際、ジエン系ゴムの架橋により一旦上昇したトルクが低下し、安定する直前あるいは安定した直後に動的架橋を終了するのが好ましい。
【0016】
動的架橋が終了すると、ゴムエラストマーが熱可塑性樹脂中に微分散される。ゴムエラストマーは粒子状で存在し、その粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下である。10μmより大きくなると、繰り返し打撃によりその粒子が応力集中の原因となり、耐久性低下につながる。更に、最低限度については細かいほど耐久性が優れることがわかっている。動的架橋で得られた材料を成形することにより、球技用ボール芯が得られる。成形方法は限定的でないが、射出成形、プレス成形等が一般的である。
【0017】
本発明では、低比重であり、適度な硬度と良好な反撥性、および優れた耐久性を安定して有すると共に、成形時間も短縮し得る、球技用ボール芯を提供する。
【0018】
上記のようにして得られた球技用ボール芯を外皮で被覆することにより、球技用ボールが得られる。外皮は、例えば野球用ボールであれば、皮革が一般的であり、ゴルフボールではアイオノマー樹脂またはバラタが用いられる。本発明の球技用のボール芯は、球技の種類に拘らず、中実のボールの芯材として有効に用いることができる。
【0019】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜10および比較例1〜4)
表1(実施例)および表2(比較例)に示した配合を、樹脂用押出機により、架橋剤としてp-キノンジオキシムを用いて動的架橋させ、予めペレット化した(押出機条件:160℃)。得られたペレットを射出成形し、ボール芯を得た(成形条件:180℃30秒)。得られたボール芯中に分散された架橋ゴムエラストマー粒子の粒径を表1および表2に示す。続いて、得られたボール芯に外皮(皮革)を被覆し、ボールを得た。得られた各ボールについて、打球感、耐久性および反撥性の評価を行い、その結果を表1および表2に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0020】
(試験方法)
▲1▼打球感
投球機(自社製)を用い、5名のテスターがバットで実打し、その感触を比較した。
評価基準
◎ …非常に良い
○ …良い
△ …少し悪い
× …悪い
▲2▼耐久性
連続打撃試験機(自社製)を用い、100回打撃後の芯の状態を目視評価した。
評価基準
◎ …全く変化なし
○ …変化なし
△ …少しひび
× …割れあり
▲3▼反撥性
2m高さからのリバウンドを評価した。
評価基準
◎ …よく弾む (170cm以上)
○ …弾む (150cm以上)
△ …弾まない (130cm以上)
× …全く弾まない(130cm以下)
【0021】
(試験結果)
【表1】
Figure 0003735402
【表2】
Figure 0003735402
【0022】
アイオノマー1:三井・デュポンポリケミカル(株)製ハイミラン1707、曲げ弾性率 380MPa
アイオノマー2:三井・デュポンポリケミカル(株)製ハイミラン1601、曲げ弾性率 260MPa
ナイロン1 :東レ(株)ペバックス6333 SN00、 曲げ弾性率 340MPa
ナイロン2 :ダイセル・ヒュルス(株)ダイアミド-PAE X4442、 曲げ弾性率 500MPa
EPDM :住友化学(株)製エスプレン505A
BR :日本合成ゴム社製BR-01
PU :野村貿易社製ミセラン76
【0023】
以上の結果より、本発明の実施例1〜10は、比較例1〜4に比較して、打球感、耐久性、反発性ともに優れた球技用ボールを提供する芯材を達成し得ることがわかる。また、射出成形の際に、成形時間は20秒〜1分間であったが、従来の熱硬化性樹脂(メラミン樹脂またはフェノール樹脂)を用いた場合の成形時間少なくとも20〜30分間が必要であることと比較すると大きな成形時間の短縮が達成された。
【0024】
【発明の効果】
本発明の球技用ボール芯は、上記の熱可塑性樹脂中に分散させたゴムエラストマーを架橋剤により動的架橋して、該熱可塑性樹脂中に平均粒径10μm以下を有する架橋ゴムエラストマー粒子を分散させた熱可塑性樹脂で形成することにより、打球感、耐久性および反撥性、並びに製造上の効率を向上させたものである。

Claims (2)

  1. 熱可塑性樹脂中に分散させたゴムエラストマーを架橋剤により動的架橋して、該熱可塑性樹脂中に平均粒径10μm以下を有する架橋ゴムエラストマー粒子を分散させた材料から成る球技用ボール芯であって、該熱可塑性樹脂とゴムエラストマーの配合比が、95 / 5〜30 / 70(熱可塑性樹脂 / ゴムエラストマーの重量比)の範囲であり、該熱可塑性樹脂が曲げ弾性率200〜600MPaを有する球技用ボール芯
  2. 該熱可塑性樹脂がアイオノマー樹脂である請求項1記載の球技用ボール芯。
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