JP3735071B2 - 連続した空隙を有する硬化体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨材と、骨材同士を結合させるセメント系結合材とからなり、内部に十分に大きい連続空隙を形成させ外形状は自然石のような丸みをもたせた硬化体に関するものである。より詳しくは、公園や道路法面等の緑化のみならず、河川、湖沼、海浜等の水辺域においても、自然環境を修復または創造することができ、各種動植物の生息空間を提供することができ、さらには良好な景観を創造することができる、連続空隙を有する硬化体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自然保護の観点から、公園等の野外施設、道路等の法面、あるいは水辺域(河川、湖沼、海浜等)の施設(ないしは構築物)などにおいては、これらの施設ないしその周辺を動植物等の生息に適する環境にし、これらの動植物の繁殖ないしは繁茂を促進することが求められている。
【0003】
そこで、近年、各種動植物がその内部に入り込み、あるいは表面に付着ないし滞留することができる、内部に連続空隙を有するセメント硬化体が提案されている(例えば、特開平9−221371号公報参照)。例えば、河川、湖沼、海浜等の水辺域において、従来は普通のコンクリートで形成されていたブロック等を、内部に連続空隙を有するセメント硬化体で形成すれば、水中ないしは水辺の動植物がブロック内に入り込むことができ、あるいはブロック表面に容易に付着ないしは滞留することができるので、該動植物の繁殖ないし繁茂が促進される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようになセメント硬化体で形成されたブロック等の構築物は、各種動植物の繁殖ないし繁茂を促進することはできるものの、あくまでも人工的につくられたものであるので、自然の景観とは調和せず、これを見る者に違和感を抱かせるといった問題がある。また、従来のセメント硬化体では、内部に形成される連続空隙が比較的小さいので、動植物を十分には繁殖ないし繁茂させることができないといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、自然の景観と調和する連続空隙を有する硬化体を提供することを解決すべき課題とする。さらには、内部に十分な連続空隙を有する硬化体を提供することも解決すべき課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる硬化体は、骨材と、骨材同士を結合させるセメント系結合材とからなり、内部に連続した空隙を有する硬化体であって、自然石に類似した丸みをもつ外形を備えていることを1つの特徴とする。
【0007】
この硬化体は、水辺域(水際域)や陸域において、植物としては藻類、コケ類、草木類を植生させることができ、また、バクテリア、原生動物、多毛類、環形動物、昆虫類の幼虫、甲殻類の幼生、魚類の幼生等、細菌類から小動物群までが生息することができる骨材と、セメント系結合材(セメントモルタルを含む)及び空気層からなる、連続空隙を有する硬化体である。そして、この硬化体は、水中においては水の流れに対する抵抗が少なく安定して設置することができ、かつ景観上、自然と調和する丸みをもった形状(外形)を有している。
【0008】
本発明にかかる上記硬化体は、バクテリアによって生分解される生分解性高分子からなり、太い部分と細い部分とがある紐のような形状の空隙生成材を内部に含んでいることをさらなる特徴とする。
【0009】
すなわち、この硬化体は、硬化体中に、バクテリアによって生分解される生分解性高分子からなる空隙生成材を、混合し、内部に設置し、あるいは製造時において型枠に挿入したものである。これらの生分解性高分子からなる空隙生成材が生分解により硬化体外に抜け出ると、硬化体中には虫食い状態のさらなる連続空隙が形成され、これにより十分な量の連続空隙が確保され、さらに大きな動植物の生息空間を提供する。なお、生分解性高分子としては、例えば、ポリ乳酸樹脂、コラーゲン等のタンパク質、デンプン等の多糖類、ポリグリコール酸樹脂またはポリエチレンスクシナート樹脂などがあげられる。
【0010】
本発明にかかる硬化体において、セメント系結合材としては、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱セメント、ビーライトセメント、アルミナセメント、高炉スラグ微粉末もしくはフライアッシュを混入した混合セメント、または上記セメントのいずれか1つに高分子材料が添加されたものなどを用いることができる。
【0011】
上記各硬化体において、骨材としては、砂利、砕石、各種スラグ、カラミ、シンダーアッシュ、火山性天然軽量骨材、クリンカーアッシュやフライアッシュを主成分として製造した粒状物、頁岩や廃ガラス等を含む人工軽量骨材、重量骨材(例えば、鉄鉱石)等の無機系骨材(例えば、セラミック)、プラスチック等の有機系骨材(例えば、発泡スチロール、ポリプロピレン、硬質塩化ビニール)、および木炭のうちの、いずれか1つの材料または複数の材料を用いることができる。なお、上記硬化体においては、骨材が上記材料中の1つまたは複数のものからなり、セメント系結合材中、または該硬化体もしくはその混合物中に、粒径が0.1〜5mmの細骨材を含んでいる(混入している)のが好ましい。
【0012】
上記各硬化体において、セメント系結合材は、混和材として、フライアッシュ、スラグ微粉末、シリカヒューム、各種粘土、人工または天然のゼオライトおよび木炭粉のうちの少なくとも1つを含んでいるのが望ましく、また、化学混和剤として、AE剤、減水剤、遅延剤、AE減水剤、高性能減水剤、AE高性能減水剤、流動化剤、水中不分離性混和剤、およびアクリル系、酢酸ビニール系または合成ゴム系のエマルジョンのうちの少なくとも1つを含んでいるのが望ましい。
【0013】
上記各硬化体においては、金属製の短・長繊維または無機性もしくは有機性の短・長繊維が混入され、および/または、金属製の網状体または無機性もしくは有機性の網状体が単層または複層で混入されているのが好ましい。
上記各硬化体においては、植物に対する肥料成分、バクテリアまたは小動物類に対する栄養塩類または餌となる物質が混入されているのが好ましい。また、粘土、シルト、細砂もしくはピートモスの単独物または複合物、粘性が必要な場合はCMC等の高分子系材料を添加したものからなるベースに、植物の種子もしくは胞子、乾燥したコケ類もしくは菌体類または小動物の受精卵が混入されてなる材料が、硬化体内に注入され、または硬化体表面に粘結剤とともに吹き付けられているのも好ましい。
【0014】
上記各硬化体は、空隙を有する非常に軽い(見掛け比重が小さい)材料を混入または設置することにより軽量化されていてもよい。
また、逆に、上記各硬化体は、普通コンクリートまたは重量骨材を混入または設置することにより重量化され、水中における安定性(配置ないしは姿勢の安定性)が高められていてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図1は、本発明にかかる連続空隙を有する多数の硬化体1が、川底または水辺域に配置された河川2(ないしは水路)と、該河川2の周囲の状況とを示している。図1に示すように、この硬化体1は、後で詳しく説明するように、基本的には、骨材と、骨材同士を結合させるセメント系結合材とからなり、内部に連続空隙を有している。そして、各硬化体1は、自然石に類似した丸みをもつ外形、すなわち自然石風の外形を備えている。より詳しくは、各硬化体1は、水中においては水の流れに対する抵抗が少なく安定して配置することができ、かつ景観上、自然と調和する丸みをもった形状(外形)を有している。
【0016】
このように、各硬化体1は、自然石風の外形を有しているので、これを見る者に人工物であるとは感じさせず、違和感を抱かせない。このため、河川2ないしその周囲の景観は非常に良好となる。また、後で説明するように、硬化体1に付着しているバクテリアや原生動物が、河川2を流れる水を浄化する。さらに、硬化体1に付着ないしは植生している藻類や水生植物もこの水を浄化する。このため、河川2内の水が清澄なものとなり、該河川2の景観が一層良好となり、また多様性生物がこの河川2に回帰することができる。
なお、硬化体1が比較的浅い水辺に設置された場合は、該硬化体1の内部の連続空隙ないしはその表面に雑草が繁茂し、あるいは小動物類が生息するので、該硬化体1は、一層自然景観と調和する様相となる。
【0017】
前記のとおり、この硬化体1は自然石風の外形を有しているが、以下この硬化体1の外形的な特徴を説明する。
図2(a)、(b)に示すように、一般に、石(自然石)の形状ないし性状を規定する因子(以下、「石形状規定因子」という。)としては、次のものがあげられる。なお、球相当直径とは、石と同体積の球の直径を意味する。
(1)長径:a (2)中間径:b
(3)短径:c (4)上側短径:c1
(5)下側短径:c2 (6)見掛け比重:ρ
(7)重量:w (8)容積:v=w/ρ
(9)球相当直径:d (10)細長率:e=a/c
(11)方形率:s=a/b (12)薄片率:t=b/c
(13)扁平率:f=ab/c (14)球形率:ψ=d/a
(15)容積係数:K=v/(abc)
【0018】
一般に、薄片率tの逆数1/t(=c/b)と、方形率sの逆数1/s(=b/a)とをパラメータとして、石の形状を分類すれば、該形状は、次の4種のものに大別することができる。
▲1▼球 状: 2/3≦b/a≦1 かつ 2/3≦c/b≦1
▲2▼円板状: 2/3≦b/a≦1、 かつ 0<c/b<2/3
▲3▼棒 状: 0<b/a<2/3 かつ 2/3≦c/b≦1
▲4▼葉 状: 0<b/a<2/3 かつ 0<c/b<2/3
図3、図4及び図5は、それぞれ、比較的厚みのある楕円の円板状の石、棒状(c1>c2)の石及び葉状の石の形状の一例を示している。また、図6は、球状の硬化体(ないしは石)の形状の一例を示している。なお、図3〜図5に示す石は、等高線でもってその形状があらわされている。
【0019】
ここで、自然な丸みをもった石としては、b/aの値が0.3〜1.0(望ましくは0.6〜0.8)であり、c/aの値が0.1〜1.0(望ましくは0.3〜0.6)であり、c2/c1の値が0〜1.0(望ましくは0.4〜0.8)である形状のものがあげられる。なお、この形状は、球に近いものの、球ではなく、むしろラグビーボールを押圧してやや平たくしたようなものである(図6参照)。したがって、硬化体1において、b/aの値と、c/aの値と、c2/c1の値とを、それぞれ、上記の範囲内に入るような値に設定すれば、この硬化体1は、自然石に類似した丸みをもつ外形を備えることになる。
【0020】
なお、硬化体1を、例えば図3に示すような、b/aの値が0.4〜0.9であり、c/bの値が0.4〜0.8である、比較的厚みのある楕円の円板状の形状としても、自然石風の形状をもたせることができる。
【0021】
図6に、自然石風の球状硬化体1の具体的な形状の一例を示す。また、この硬化体1の石形状規定因子(段落[0017]参照)の具体的な数値の一例を、次に示す。すなわち、
(1)長径:a=60cm
(2)中間径:b=40cm
(3)短径:c=25cm
(4)上側短径:c1=15cm
(5)下側短径:c2=10cm
(6)見掛け比重:ρ=1.80(空隙率:25%)
とすると、
(7)重量:w=56520g=56.52kg
(8)容積:v=w/ρ=31400cm3
(9)球相当直径:d=39.15cm
(10)細長率:e=a/c=2.4
(11)方形率:s=a/b=1.5
(12)薄片率:t=b/c=1.6
(13)扁平率:f=ab/c=96
(14)球形率:ψ=d/a=0.65(Waddell式による)
(15)容積係数:K=v/(abc)=0.523(藤井式による)
のようになる(1991年に朝倉書店により出版された、岡田、六車編集「コンクリート工学ハンドブック」参照)。
【0022】
次に、硬化体1の内部構造ないしは材料的な特徴を説明する。
図7(a)〜(c)に示すように、硬化体1は、基本的には、骨材3と、骨材3同士を結合させるセメント系結合材4(バインダー)とからなり、内部に連続空隙5を有している。さらに、硬化体1は、バクテリアによって生分解される生分解性高分子(生分解性ポリマー)、例えばポリ乳酸樹脂等からなる、凹凸のある柱状体もしくは紐状体、または中空部に空気、紙等が充填された筒状体の空隙生成材6を含んでいる。なお、空隙生成材6は、凹凸のある柱状の水溶性材料、あるいは凹凸のある柱状または紐状の紙及びオイル(または表面防水紙)であってもよい。
【0023】
ここで、骨材3は、水辺域や陸域において、藻類、コケ類、草木類を植生させることができ、また、バクテリア、原生動物、多毛類、環形動物、昆虫類の幼虫、甲殻類の幼生、魚類の幼生等、細菌類から小動物群までが生息することができる材料で形成されている。具体的には、骨材3としては、砂利、砕石、各種スラグ、カラミ、シンダーアッシュ、火山性天然軽量骨材、クリンカーアッシュやフライアッシュを主成分として製造した粒状物、頁岩や廃ガラス等を含む人工軽量骨材、鉄鉱石等の重量骨材、セラミック等の無機系骨材、プラスチック等の有機系骨材(例えば、発泡スチロール、ポリプロピレン、硬質塩化ビニール)、木炭等を単独で用い、または複数のものを組み合わせて用いることができる。また、骨材3が、上記材料中の1つまたは複数のものからなり、セメント系結合材中、または該硬化体1もしくはその混合物中に、粒径が0.1〜5mmの細骨材を含んでいてもよい。この場合、細骨材は、結合材中においてモルタルとして作用する。
【0024】
セメント系結合材4としては、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱セメント、ビーライトセメント、アルミナセメント、高炉スラグ微粉末もしくはフライアッシュを混入した混合セメント等を用いることができる。なお、セメント系結合材は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の高分子材料が添加されているのが好ましい。
【0025】
セメント系結合材4は、フライアッシュ、スラグ微粉末、シリカヒューム、各種粘土、人工または天然のゼオライト、木炭粉等の混和材料を含んでいるのが好ましい。また、AE剤、減水剤、遅延剤、AE減水剤、高性能減水剤、AE高性能減水剤、流動化剤、水中不分離性混和剤、アクリル系、酢酸ビニール系または合成ゴム系のエマルジョン等の化学混和剤を含んでいるのが、より好ましい。
【0026】
硬化体1が河川2等の所定の位置に配置されたときには、空隙生成材6は、比較的短期間で、バクテリアによって生分解され、生分解(加水分解)によって生成された水、二酸化炭素、メタン等は硬化体外に抜け出る。そして、硬化体1内の空隙生成材6が存在していた部分は、虫食い状態の比較的大きい連続空隙ないしはランダムな空洞となる。かくして、もともと存在した連続空隙5に加えて、空隙生成材6によって生成されたさらに大きな連続空隙が形成され、硬化体1には十分な量の連続空隙が確保される。なお、空隙生成材6が水溶性材料からなる場合は、硬化体1が水中ないしは水辺に設置された後、比較的短期間で空隙生成材6が水中に溶出し、生分解性高分子の場合と同様の作用・効果を奏する。
なお、生分解性高分子としては、ポリ乳酸樹脂のほか、コラーゲン等のタンパク質、デンプン等の多糖類、ポリグリコール酸樹脂あるいはポリエチレンスクシナート樹脂等の脂肪酸ポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0027】
硬化体1においては、金属製の短・長繊維または無機性もしくは有機性の短・長繊維が混入されていてもよい。また、金属製の網状体または無機性もしくは有機性の網状体が単層または複層で敷設されていてもよい。さらには、両方が混入ないし敷設されていてもよい。なお、硬化体1を道路法面や公園に使用する場合、乾燥に対応するために、有機性の短・長繊維に保水性を有する材料を使用することもできる。
【0028】
また、硬化体1においては、植物に対する肥料成分、バクテリアまたは小動物類に対する栄養塩類または餌となる物質が混入されているのが好ましい。このようにすれば、硬化体1あるいはその周辺での動植物の繁殖ないし繁茂が促進され、自然環境の回復ないしは創造をより有効に促進することができる。また、硬化体1内に、粘土、シルト、細砂もしくはピートモス等の単独物または複合物、粘性が必要な場合はCMC等の高分子系材料を添加したものからなるベースに、植物の種子もしくは胞子、乾燥したコケ類もしくは菌体類または小動物の受精卵が混入されてなる材料が注入されていてもよい。あるいは、この材料が硬化体1の表面に粘結剤とともに吹き付けられていてもよい。このようにすれば、硬化体1あるいはその周辺での動植物の繁殖ないし繁茂がより効果的に促進される。また、所望の種類の動植物を生息させることができる。
【0029】
硬化体1は、粒状であっても、またこれより大きい寸法のもの、例えば河川に存在する、両手で抱えることができる程度の比較的大きい自然石と同程度の寸法のものであってもよい。また、さらに大きい岩程度の寸法のものであってもよい。硬化体1が大きい場合は、硬化体1内に、空隙を有する非常に軽量な(比重が小さい)材料、例えば発泡スチロール、空き缶、ペットボトル、中空プラスチック部材等を混入または設置することにより、軽量化するのが好ましい。このようにすれば、硬化体1の運搬ないしは持ち運びが容易となる。
また、逆に、硬化体1を水中で使用する場合等においては、その配置の安定化を図るため、内部に普通コンクリート、自然石、鉄鉱石等を挿入または設置することもできる。
【0030】
なお、この実施の形態では、硬化体1は河川2内に設置されているが、設置が可能な場所は水辺域に限られるわけではなく、公園や道路の法面等の陸域にも硬化体1を支障なく設置することができるのはもちろんである。
【0031】
以下、硬化体1の具体的な構成ないしは製造方法の一例を説明する。
前記の図7(a)〜(c)に示すように、硬化体1は、砂利または砕石からなる骨材3と、セメントモルタルからなるセメント系結合材4と、ポリ乳酸樹脂からなる空隙生成材6とからなり、硬化体1内には本来的な連続空隙5が形成されている。その嵩比重は、普通コンクリートの嵩比重よりも低い値(1.95)となる。なお、セメント系結合材6には、例えば粒径が0.001〜30mm程度の粉粒状肥料又は肥料成分を含浸させた肥料含浸粉体または粒状体が、セメントに対して0.1〜30重量%含まれている。なお、骨材として、砂利ないしは砕石のほかに、スラグ等の前記の各種骨材を用いても、またこれらの混合物を用いてもよい。硬化体1の嵩比重は、これらの骨材3を所定の割合で混合することによって調整することができる。
【0032】
この硬化体1は、例えば、次のような手順で製造される。すなわち、まず、高炉セメントB種(比重:3.02)と、水道水と、高性能減水剤(比重1.02)とが、次の式1〜式3を満たすように配合される(重量部)。
W/Cb=25(%)………………………………………………式1
F/Cb=10(%)………………………………………………式2
Ad/Cb=0.45(%) ………………………………………式3
Cb:高炉セメントB種の量
W :水道水の量
Ad:高性能減水剤の量
F :粒状総合肥料の量(特殊なポリマーまたは特殊セメント等で表面をシールしたもの)
そして、粒径が0.001〜30mmの粉粒状肥料又は肥料成分を含浸させた肥料含浸粉粒体が、高炉セメントB種の量に対して0.1〜30重量%添加される。
【0033】
この配合により、JIS R 5201のフロー値が195〜205mmとなるセメントペースト(結合材)が調製される。次に、このセメントペーストが、粒径13〜20mmの骨材(比重:2.70、空隙率:42%)の空隙に充填される。ここで、空隙へのセメントペーストの充填割合は、次の式4を満たすように設定される。
B/V=40(%)…………………………………………………式4
V:骨材の空隙の体積
B:空隙に充填されるセメントペーストの体積
さらに、ポリ乳酸樹脂からなる所望の量の空隙生成材が添加される。このほかに、硬化体を軽量化するために、発泡スチロール、ペットボトル等を添加してもよく、または大型のものは打設時に設置してもよい。
なお、上記混合物は、全ての材料を一度に混合して調製してもよい。
【0034】
そして、このセメントペーストと骨材と空隙生成材とからなる混合物(多孔質セメント組成物)を用いて、自然石に類似した丸みをもつ外形を備えている成形体が製作される。この成形体は、固化後、その空隙率が24.6%となり、連続空隙を有するとともに、空隙生成材を含む硬化体となる。この空隙生成材は、水辺域等に設置されたときには、バクテリアによって比較的短期間で生分解され、より大きい連続空隙を生成することになるのは、前記のとおりである。
【0035】
このように、この硬化体1によれば、公園や道路法面等の陸域の緑化のみならず、河川、湖沼、海浜等の水辺域においても、自然環境の修復と創造とを促進することができる。そして、各種動植物の生息空間を提供してその周囲の自然環境を保護することができる。さらに、形状が自然石に類似した丸みを有するので、良好な景観を創造することができる。また、硬化体1を、各種水辺域に設置した場合、硬化体1内の空隙内に、環境を浄化する各種バクテリア類が付着ないしは生息し、水を浄化することができる。さらに、硬化体1に小動物や植物類が付着ないし生息し、多様性生物を回帰させる生物生息床としての効力も発揮する。
【0036】
以上、本発明によれば、内部に十分な連続空隙を有し、かつ自然の景観と調和する連続空隙を有する硬化体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる連続空隙を有する硬化体が設置された河川およびその周囲の斜視図である。
【図2】 (a)は石(ないしは硬化体)の形状を示す三面図であり、(b)は球状、円板状、棒状および葉状の石の寸法範囲を示す図である。
【図3】 円板状の石(ないしは硬化体)の形状を示す三面図である。
【図4】 棒状の石の形状を示す三面図である。
【図5】 葉状の石の形状を示す三面図である。
【図6】 本発明にかかる球状の硬化体(ないしは石)の具体的な形状を示す三面図である。
【図7】 (a)は本発明にかかる硬化体の斜視図であり、(b)は(a)に示す硬化体の一部断面図であり、(c)は(a)に示す硬化体の骨材とセメント系結合材と連続空隙とを拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
1…硬化体
2…河川(水路)
3…骨材
4…セメント系結合材(バインダー)
5…連続空隙
6…空隙生成材
Claims (11)
- 骨材と、骨材同士を結合させるセメント系結合材とからなり、内部に連続した空隙を有する硬化体であって、
自然石に類似した丸みをもつ外形を備えていて、
バクテリアによって生分解される生分解性高分子からなり、太い部分と細い部分とがある紐のような形状の空隙生成材を内部に含んでいることを特徴とする連続した空隙を有する硬化体。 - 上記生分解性高分子が、ポリ乳酸樹脂、コラーゲン、デンプン、ポリグリコール酸樹脂またはポリエチレンスクシナート樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 上記セメント系結合材が、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱セメント、ビーライトセメント、アルミナセメント、高炉スラグ微粉末もしくはフライアッシュを混入した混合セメント、または上記セメントのいずれか1つに高分子材料が添加されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 上記骨材が、砂利、砕石、スラグ、カラミ、シンダーアッシュ、火山性天然軽量骨材、クリンカーアッシュまたはフライアッシュを主成分とする粒状物、頁岩または廃ガラスを含む人工軽量骨材、重量骨材、プラスチックおよび木炭のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 上記セメント系結合材中、または該硬化体もしくはその混合物中に、粒径が0.1〜5mmの細骨材が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 上記セメント系結合材が、混和材として、フライアッシュ、スラグ微粉末、シリカヒューム、粘土、人工または天然のゼオライトおよび木炭粉のうちの少なくとも1つを含み、
化学混和剤として、AE剤、減水剤、遅延剤、AE減水剤、高性能減水剤、AE高性能減水剤、流動化剤、水中不分離性混和剤、およびアクリル系、酢酸ビニール系または合成ゴム系のエマルジョンのうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。 - 金属製の短・長繊維または無機性もしくは有機性の短・長繊維が混入され、および/または、金属製の網状体または無機性もしくは有機性の網状体が単層または複層で混入されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 植物に対する肥料成分、バクテリアまたは小動物類に対する栄養塩類または餌となる物質が混入されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 粘土、シルト、細砂もしくはピートモスの単独物もしくは複合物、または、CMCを添加したものからなるベースに、植物の種子もしくは胞子、乾燥したコケ類もしくは菌体類または小動物の受精卵が混入されてなる材料が、硬化体内に注入され、または硬化体表面に粘結剤とともに吹き付けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 空隙を有する材料を混入することにより軽量化されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
- 普通コンクリートまたは重量骨材を混入することにより重量化され、水中における安定性が高められていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の連続した空隙を有する硬化体。
Priority Applications (1)
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