JP3734084B2 - 光ディスク再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスク記録媒体に記録されている映像情報を読み出して再生する光ディスク再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ビデオカメラで撮影した動画・音声やテレビチューナにより受信したテレビ番組などの映像・音声情報をDVDなどの光ディスクに記録する場合、記録情報量を削減するために、映像信号はMPEG(Moving Picture Experts Group)規格に準拠して圧縮(エンコード)され、この圧縮された音声信号が光ディスクに記録されている。また、音声情報は、MP3(MPEG Audio Layer 3)規格に準拠して圧縮され、この圧縮された音声信号が光ディスクに記録されている。
【0003】
このような光ディスクから記録情報を読み出す際、映像信号(ビデオ信号)はMPEG2規格に準拠して復号(デコード)され、また音声信号(オーディオ信号)はMP3規格に準拠して復号される。これら映像信号と音声信号は、それぞれ別の復号回路(デコーダ素子)によって復号処理されるので、記録情報を再生するには、所定のAV同期信号に基づいて映像信号と音声信号を同期(AV同期)させつつ出力しなければならない。
【0004】
このような、AV同期処理の機能は、ハードウェアによって達成されており、従来の光ディスク再生装置には、映像信号又は音声信号を復号するデコーダ素子(チップ)にAV同期処理機能が組み込まれていた。
【0005】
また、映像・音声データの編集時に映像信号と音声信号の同期ずれが生じた場合、音声データを映像データに対して相対的にずらして再生できるようにした編集/再生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−31879号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、CPUの動作速度の高速化に伴い、従来ハードウェアで処理されていた機能をソフトウェアで達成することにより、ハードウェアの簡略化や低コスト化の実現を図ろうとする傾向にある。これを受けて、光ディスク再生装置の低コスト化の要請から、AV同期処理機能を含まないデコーダ素子が実用化されつつある。
【0008】
音声信号が映像信号に対応して同じ時間だけ記録されていれば、上記のようなAV同期処理機能を含まないデコーダ素子を用いて、AV同期チェックを行わずに再生しても特に画像と音声がずれることはない。ところが、巻戻し/早送り再生等の特殊再生状態から通常再生状態に移行すると、Lip Sync(映像信号と音声信号の同期ずれ)が生じ映像信号が音声信号に対して先行して再生される場合がある。一般的に、映像信号が音声信号よりも若干先行していても、さほど違和感なく映像を楽しむことができる。ところが、映像信号の音声信号に対する先行が100ms程度に達すると、明らかに映像と音声が一致していないこと(いわゆる「口パク」状態)が認識され、違和感が生じる。
【0009】
また、上記特許文献1に示された装置は、編集時に生じたAV同期ずれをハードウェアの追加により解消する装置であり、このようなハードウェア構成では装置の製造コストを低減することができない。さらにまた、一般的に人間の聴覚特性は視覚特性よりも敏感であるので、上記特許文献1に示された装置によって音声信号をずらして再生した場合は、違和感が生じることが多い。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、AV同期処理機能を含まないデコーダ素子を用いた光ディスク再生装置において、映像信号が音声信号に先行した場合に、映像信号と音声信号の同期ずれの修正処理(AV同期処理)をソフトウェアで映像信号をスロー再生させることにより達成することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、光ディスクに記録されている情報を読み出すための記録情報読み出し手段と、この記録情報読み出し手段により読み出された記録情報を映像信号と音声信号に分離する分離手段と、この分離手段により分離された映像信号に対して所定の復号処理を施す映像信号デコーダと、分離手段により分離された音声信号に対して所定の復号処理を施す音声信号デコーダとを備えた光ディスク再生装置において、再生中の復号処理された映像信号及び音声信号から、それぞれ映像と音声の現在の時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、時刻情報取得手段により取得された映像と音声の時刻情報を比較し、映像信号と音声信号とが同期しているか否か、及び映像信号と音声信号とが同期していない場合に、映像信号と音声信号のいずれが先行しているか及びそのずれ時間を判断する同期ずれ判別手段と、同期ずれ判別手段により、映像信号が音声信号よりも略100ms(milliseconds)以上先行していると判断されたとき、再生中の復号処理された映像信号のうち、複数画像の映像信号で1纏まりを構成するVOBU(Video Object Unit)に含まれる先頭の画像の再生時間を長くして、音声信号に対する映像信号の同期ずれを修正し、映像信号に対して音声信号が先行した場合又は音声信号に対する映像信号の先行が略30ms以下になった場合に、音声信号に対する映像信号の同期ずれの修正を停止する同期ずれ修正手段とをさらに備え、同期ずれ修正手段は、VOBUに含まれる先頭の画像の再生時間を長くする際、トップフィールド/ボトムフィールドの垂直同期信号を一回分見送って、次のトップフィールド/ボトムフィールドの垂直同期信号で画像信号をラッチすることにより、1枚の画像を2枚分の表示時間で表示してスロー再生するスロー再生手段を有し、音声信号に対する映像信号の先行を少しずつ修正するようにしたものである。
【0012】
この構成によれば、音声信号に対する映像信号の先行が、明らかに映像と音声が一致していない「口パク」状態と認識されうる略100ms以上に達した場合に、所定画像(コマ)数の画像信号で構成されるVOBUを単位として、VOBUの先頭の映像信号パックの再生時間(表示時間)を同じVOBU中の他の映像信号パックの再生時間よりも長くして(スロー再生)、音声信号と映像信号の時間差を徐々に少なくし、最終的に時間差をなくすることができる。その結果、光ディスクに記録されている映像情報を再生しながら、映像信号と音声信号の同期ずれ(Lip Sync)を修正することができる。また、音声信号に対する映像信号の先行が、同期ずれがほとんど認識されなくなる略30ms以下になった場合に、同期ずれの修正を停止するので、過剰な同期ずれ修正処理により音声信号が映像信号よりも先行するという不都合の発生を防止することができる。
【0013】
VOBUの先頭画像のスロー再生は以下の方法でなされる。すなわち、再生しようとする画像がVOBUの先頭画像のとき、垂直同期信号を一回分見送って、表示画像の更新を行わずに、次の垂直同期信号で表示画像を更新して表示する。これにより、先頭の画像が2回表示され該先頭画像のみが1/2倍速で再生されるので、映像信号の先行が少しずつ修正され、再生映像を見ているユーザに違和感を与えることはほとんどない。
【0014】
さらに、時刻情報取得手段、同期ずれ判別手段及び同期ずれ修正手段は、所定の制御プログラムを記憶したROM、制御プログラムに従って所定の演算処理や判別処理を行うCPU、演算データなどを一時的に記憶するRAMなどで構成することができ、映像信号と音声信号の同期処理機能を含まないデコーダ素子を用いた場合であっても、ソフトウェア処理により映像信号と音声信号の同期処理を行うことができる。
【0015】
請求項2の発明は、光ディスクに記録されている情報を読み出すための記録情報読み出し手段と、この記録情報読み出し手段により読み出された記録情報を映像信号と音声信号に分離する分離手段と、この分離手段により分離された映像信号に対して所定の復号処理を施す映像信号デコーダと、分離手段により分離された音声信号に対して所定の復号処理を施す音声信号デコーダとを備えた光ディスク再生装置において、再生中の復号処理された映像信号及び音声信号から、それぞれ映像と音声の現在の時刻情報を取得し、この映像と音声の時刻情報を比較して、映像信号が音声信号よりも所定時間以上先行していると判断されたとき、再生中の復号処理された映像信号に含まれる所定の画像の再生時間を長くして、音声信号に対する映像信号の先行を修正し、所定の画像とは、再生中の復号処理された映像信号のうち、複数画像分の映像信号の1纏まりを構成するVOBU (Video Object Unit) に含まれる先頭の画像であり、VOBUに含まれる先頭の画像の再生時間を長くして、音声信号に対する映像信号の先行を少しずつ修正するようにしたものである。
【0016】
この構成によれば、音声信号に対して映像信号が所定時間先行している場合に、現在再生中の映像信号に含まれる所定の画像の再生時間を長くして、映像信号に対する音声信号の同期ずれを修正することができる。この機能は、所定の制御プログラムを記憶したROM、制御プログラムに従って所定の演算処理や判別処理を行うCPU、演算データなどを一時的に記憶するRAMなどで構成することができ、映像信号と音声信号の同期処理機能を含まないデコーダ素子を用いた場合であっても、ソフトウェア処理により映像信号と音声信号の同期処理を行うことができる。
【0018】
この構成によれば、VOBUの先頭映像信号パックの再生時間(表示時間)を同じVOBU中の他の映像信号パックの再生時間よりも長くして、音声信号と映像信号の時間差を徐々に少なくし、最終的に時間差をなくすることができる。ここで、VOBUの先頭画像を再生するたびに該先頭画像を1コマずつ長く再生するので、音声信号に対する映像信号の先行は少しずつ修正され、再生された映像を見ているユーザに違和感を与えることはほとんどない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。本発明は、AV同期処理機能を含まないデコーダ素子を用いた光ディスク再生装置において、映像信号と音声信号とが同期せず、映像信号が音声信号よりも先行している場合に、ソフトウェアにより映像信号をスロー再生して映像信号と音声信号の同期の修正処理(AV同期処理)を可能とするものである。
【0020】
本実施形態による光ディスク再生装置の電気的なブロック構成を図1に示す。光ディスク再生装置1は、DVDなどの光ディスク70が所定位置に挿入されているか否かを検知するためのディスク挿入検知部2と、光ディスク70を所定速度で回転させるためのスピンドルモータ3と、光ディスク70に記録されているデータを読み取るための光ピックアップ4と、光ピックアップ4を光ディスク70の半径方向に移動させるための移動モータ5と、光ピックアップ4の半導体レーザ41を制御するためのレーザ駆動部6と、光ピックアップ4の光検知器46からの信号を処理するための信号処理部7と、光ピックアップ4の対物レンズ44の位置を制御するためのサーボ制御部8と、信号処理部7から出力されるデータに所定のデコード処理を施し、映像信号及び音声信号を生成するデコーダ9と、光ディスク再生装置1全体の制御を行う全体制御部10と、ユーザにより操作され、各種の指示を入力するためのリモコン装置11と、リモコン装置11からの信号を受信するリモコン受信部12と、光ディスク再生装置1の各機能に応じて必要な情報を表示する表示部13などで構成されている。デコーダ9により生成された映像信号及び音声信号は、必要に応じてアナログ信号に変換された後、モニタ装置50に出力され、その画面上に映像が再生されると共にスピーカから音声が出力される。
【0021】
光ピックアップ4は、半導体レーザ41、コリメータレンズ42、ビームスプリッタ43、対物レンズ44、集光レンズ45、光検知器46などで構成されている。半導体レーザ41は、全体制御部10から出力される信号に基づいて、レーザ駆動部6によりその発光が制御される。半導体レーザ41から出力されたレーザ光は、コリメータレンズ42、ビームスプリッタ43及び対物レンズ44を介して光ディスク70上に集光される。また、光ディスク70からの反射光は、対物レンズ44を介してビームスプリッタ43に入射し、光軸を略90度曲げられた後、集光レンズ45により光検知器46上に集光される。
【0022】
対物レンズ44は、レンズホルダ47に保持されている。レンズホルダ47の近傍には、磁気作用によりレンズホルダ47を対物レンズ44の光軸方向に移動させるためのフォーカシングコイル48と、磁気作用によりレンズホルダ47を光ディスク70の半径方向に移動させるためのトラッキングコイル49が設けられている。フォーカシングコイル48及びトラッキングコイル49は、それぞれサーボ制御部8により制御され、レンズホルダ47及びその上に保持された対物レンズ44の位置を微調整する。サーボ制御部8は、信号処理部7から出力される信号をモニタしながら、後述するフォーカシングエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ44の位置、すなわちレーザビームの集光位置を調整する。
【0023】
光検知器46は、例えば受光面が複数の領域に分割された分割フォトダイオードなどの光電変換素子であり、その受光面の受光領域ごとに、集光される光ディスク70からの反射光を電気信号に変換して出力する。なお、光ピックアップ4の全体は、リニアモータなどで構成された移動モータ5により、光ディスク70の半径方向に移動される。
【0024】
信号処理部7は、光検知器46から出力される信号から、光ディスク70に記録されているデータに対応したRF信号と、フォーカシングエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成する。RF信号はデコーダ9に出力され、フォーカシングエラー信号及びトラッキングエラー信号はサーボ制御部8に出力される。デコーダ9は、信号処理部7からのRF信号を映像信号及び音声信号に分離し、所定のデコード処理を施して、モニタ装置が再生可能な映像信号及び音声信号を生成する。
【0025】
リモコン装置11は、光ディスク70に記録されている映像の再生や光ディスク再生装置1に備えられている各種機能の選択などを行う際に、ユーザにより操作されるものであり、各種機能に対応した操作キーが設けられている。操作キーを操作すると、各操作キーに対応したコード信号が赤外線信号で送信される。リモコン受信部12は、リモコン装置11からの赤外線信号を受信し、所定の電気信号に変換して全体制御部10に入力する。
【0026】
全体制御部10は、制御プログラムを記憶したROM、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、制御プログラムやデータなどを一時的に記憶するRAMなどで構成されており、リモコン装置11及びリモコン受信部12を介して入力されるユーザの指示に従って、光ディスク再生装置1の全体を制御する。
【0027】
ところで、DVDなどの光ディスクに映像情報を記録する場合、映像信号及び音声信号は、例えば図2に示すように、映画の1作品などを単位とするVOBS(Video Object Set)単位で記録されている。VOBSは、複数のVOB(Video Object)で構成され、各VOBは、それぞれ複数のセル(Cell)で構成されている。セルは、例えば映画の1シーンの単位であり、1シーンの組み合わせがVOBとなる。
【0028】
DVDでは、1つの映画を複数のストーリ展開で見るマルチストーリ機能を備えており、VOBごとに異なったセルの組み合わせを変えることにより、マルチストーリ機能を利用することができる。マルチストーリ機能とは、あらかじめDVDの中に複数のストーリを記録しておき、再生中に表示されるメニュー画面の中からユーザがストーリ展開を選択しうる機能である。
【0029】
セルは、さらに複数のVOBU(Video Object Unit)により構成されている。VOBUは、動画像で0.5秒〜1.0秒程度の単位であり、制御情報データであるナビゲーションパック(NP)、音声信号パック(AP)、MPEG2規格に準拠して圧縮された複数画像(コマ)分の(15〜20フレーム)の映像信号パック(VP)及び副映像信号パック(SP)などで構成されている。
【0030】
本発明は、DVDなどの光ディスク特有の映像情報の記録方式に着目し、映像信号が音声信号よりも先行している場合に、全体制御部10のソフトウェア処理によりデコーダ9を制御し、VOBUを単位として映像信号と音声信号の時間差(AV同期ずれ)を修正するものである。より具体的には、VOBU先頭の映像信号パックの再生時間(表示時間)を同じVOBU中の他の映像信号パックの再生時間よりも長くして、音声信号と映像信号の時間差を徐々に少なくし、最終的に時間差をなくするものである。
【0031】
図3はデコーダ9及び全体制御部10のブロック構成を示している。デコーダ9は、信号処理部7からのRF信号を映像信号と音声信号部分離するための映像/音声分離部91と、分離された映像信号を一時的に格納するための映像信号バッファ92と、分離された音声信号を一時的に格納するための音声信号バッファ93と、映像信号バッファ92から出力される1画像(1コマ)ごとの映像信号を順に、MPEG2規格に準じて復号(デコード)するための映像信号デコーダ94と、音声信号バッファ93から出力される音声信号を、MP3規格に準じて復号するための音声信号デコーダ95などで構成されている。
【0032】
また、全体制御部10は、デコーダ9によって復号化された映像信号及び音声信号から、現在再生中の映像及び音声に関する現在の時刻に関する情報(時刻情報)を取得(抽出)する時刻情報取得部101と、映像信号の時刻情報と音声信号の時刻情報を比較して、映像信号と音声信号が同期しているか否か、映像信号と音声信号とが同期していない場合に、映像信号と音声信号のいずれが先行しているか及びそのずれ時間を判断するための同期ずれ判別部102と、映像信号と音声信号との間に同期ずれが生じている場合に、一定条件の下で同期ずれを修正する同期ずれ修正部103などで構成されている。
【0033】
本実施形態においては、デコーダ9は、AV同期処理機能を有しないMPEGデコーダ素子などで構成されており、AV同期ずれが生じている場合に、全体制御部50が同期ずれ修正部103のソフトウェア処理によってAV同期ずれを修正する。
【0034】
以下、AV同期ずれの修正要領について説明する。AV同期ずれは、上述のように、特殊再生状態から通常再生状態に移行するときに起こる。また、映像信号が音声信号に対して先行する場合のほか、音声信号が映像信号に対して先行する場合もありうる。
【0035】
周知の残像現象のように、人間の視覚の応答速度は遅く、急激な明るさの変化や高速な画像の変化などには対応できない。視覚特性と聴覚特性を比較すると、聴覚特性の方が敏感である。従って、映像信号と音声信号が同期していない場合に、映像信号を音声信号に同期させるように変化させる方が、音声信号を映像信号に同期させるように変化させるよりも、視聴者はその変化に気付きにくいといえる。
【0036】
本実施形態では、このような人間の視覚特性及び聴覚特性に基づき、映像信号が音声信号に対して先行している場合であって、かつ、その同期ずれ時間が、明らかに映像と音声が一致していないと認識されうる100ms以上に達した場合に、映像信号をスロー再生させることによりAV同期ずれの修正処理を行う。
【0037】
時刻情報取得部101は、現在再生中の画像信号及び映像信号について、それぞれ別々に、それらの映像信号及び音声信号に含まれている時刻情報を読み出す。映像信号と音声信号とが同期している場合は、それぞれ別々に読み出した時刻情報は一致する。ところが、映像信号と音声信号とが同期していない場合は、両者は若干ずれている。そこで、同期ずれ判別部102は、時刻情報取得部101により取得された現在再生中の映像信号及び音声信号についての時刻情報を比較する。そして、映像信号が音声信号に対して先行した状態で、かつ、その同期ずれ時間が100ms以上である場合、同期ずれ修正部103に対して、同期ずれ修正処理を行う旨のAV同期モードオン信号を出力する。
【0038】
同期ずれ修正部103は、同期ずれ判別部102からAV同期モードオン信号が出力されている場合、VOBUの先頭の画像(コマ)についての映像信号パックの再生時間(表示時間)を同じVOBU中の他の映像信号パックの再生時間よりも長く再生させるようにして(スロー再生)、音声信号と映像信号の時間差を徐々に少なくする。
【0039】
VOBUの先頭画像のスロー再生は以下の要領でなされる。すなわち、再生しようとする画像がVOBUの先頭画像のとき、同期ずれ修正部103は、映像信号デコーダ94に垂直同期信号を一回分見送って、表示画像の更新を行わないように指令を出力する。この指令を受けた映像信号デコーダ94は、最初の垂直同期信号を見送って表示画像の更新を行わず、次の垂直同期信号で表示画像を更新する。これにより、VOBU先頭の画像が2回表示されることになる。この後、VOBUの先頭画像以外の画像が、通常の再生処理に従い垂直同期信号に同期させて表示される。このようにすれば、VOBUの先頭画像のみが2枚の画像を表示する時間で表示される(1/2倍速で再生される)ので、VOBUの先頭画像を表示させるごとに、映像信号の先行が複数回に分けて少しずつ修正され、再生映像を見ているユーザに違和感を与えることはほとんどない。
【0040】
また、同期ずれ判別部102は、音声信号に対する映像信号の先行が30ms以下になったか否かを判断する。音声信号に対する映像信号の先行が30ms以下の場合、視聴者は映像と音声の同期ずれをほとんど認識することができない。また、映像信号と音声信号の同期ずれがなく、通常の処理を行う場合であっても、1画像の再生時間はせいぜい30ms程度である。従って、音声信号に対する映像信号の先行が30ms以下になった状態で、さらにVOBUの先頭画像の再生時間を長くする同期ずれ修正処理を繰り返すと、逆に映像信号に対して音声信号の方が先行してしまう虞がある。そこで、同期ずれ判別部102は、音声信号に対する映像信号の先行が30ms以下になった場合は、同期ずれ修正部103に対して、同期ずれの修正を停止する旨のAV同期モードオフ信号を出力する。
【0041】
次に、本実施形態における全体制御部50の同期ずれ修正処理について、図4を参照して説明する。このフローは、VOBUに含まれる各画像についての映像信号パックVP(図2参照)を復号処理する際に実行されるものである。
【0042】
まず、同期ずれ判別部102は、AV同期モードがオンしているか否かを判断する(#1)。ここで、AV同期モードオンとは、同期ずれ修正部103に対して同期ずれ修正処理を行わせるために、同期ずれ判別部102から同期ずれ修正部103にAV同期モードオン信号が出力されている状態を意味する。最初、同期ずれ修正処理が行われていない段階では、AV同期モードオン信号は出力されていないので、同期ずれ判別部102は、時刻情報取得部101から出力される映像信号の時刻情報と音声信号の時刻情報とを比較し、映像信号の方が100ms以上先行しているか否かを判断する(#2)。
【0043】
音声信号に対して映像信号の方が100ms以上先行している場合(#2でYES)、同期ずれ修正部103による同期ずれ修正処理を開始すべく、同期ずれ判別部102はAV同期モードオン信号を出力する(#3)。これにより、同期ずれ修正部103は、映像信号と音声信号の同期ずれ修正処理を開始する。
【0044】
#1においてAV同期モードオン信号が出力されている場合、又は#3においてAV同期モードオン信号が出力された場合、同期ずれ修正部103は、次に復号処理する画像がVOBUの先頭の画像か否かを判断する(#4)。本実施形態では、VOBUの先頭の画像の再生時間を長くして映像信号と音声信号のずれを修正するので、#4においてYESの場合に、再生時間が通常の再生時間(例えば30ms)よりも長くなるようにスロー再生処理を行って、映像信号と音声信号のずれを修正する(#5)。一方、次に復号処理する画像がVOBUの先頭の画像でない場合は(#4でNO)、通常の再生時間(30ms)で再生処理を行う(#6)。なお、#2で映像信号の方が100ms以上先行していない場合(#2でNO)も、#6にスキップして、通常の再生処理を行う。
【0045】
#5又は#6で映像信号が再生処理されると、同期ずれ判別部102は、音声信号に対する映像信号の先行が30ms以下であるか否か又は映像信号に対して音声信号の方が先行しているか否かを判断する(#7)。上述のように、本実施形態では、音声信号に対する映像信号の先行が30ms以下になった場合は、過剰な同期ずれ修正処理による音声信号の先行を防止するために、映像信号と音声信号の同期ずれの修正を停止する。また、映像信号に対して音声信号が先行している場合にも、映像信号と音声信号の同期ずれの修正は行わない。そこで、#7においてYESの場合、同期ずれ判別部102は、同期ずれ修正部103に対してAV同期モードオフ信号を出力し、映像信号と音声信号の同期ずれ修正処理を終了する(#8)。また、音声信号に対して映像信号が先行し、かつ、その先行が30msよりも大きい場合(#7でNO)、引き続き映像信号と音声信号の同期ずれ修正処理を行う必要があるので、同期ずれ判別部102はAV同期モードオン信号を出力したまま、処理を終了する。この後、次の画像について、#1よりフローを実行する。
【0046】
なお、上記実施形態では、VOBUの先頭の画像に対して、その再生時間が長くなるように同期ずれ修正処理を行うように構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、VOBUに含まれるその他の画像、例えば特定の順番の画像や最後の画像に対して同期ずれ修正処理を行うように構成してもよい。また、同期ずれ修正処理を開始する場合のAV同期ずれの判断基準時間を100msとしたが、これに限定されるものではなく、100ms前後の時間を設定してもよい。同様に、同期ずれ修正処理を終了する場合のAV同期ずれの判断基準時間を30msとしたが、これに限定されるものではなく、30ms前後の時間を設定してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、音声信号に対する映像信号の先行が、明らかに映像と音声が一致していない「口パク」状態と認識されうる100ms以上に達した場合に、VOBUの先頭の画像のみ再生時間を長くして、音声信号と映像信号の時間差を徐々に少なくすることができる。その結果、映像信号デコーダ及び音声信号デコーダとしてAV同期処理機能を含まない素子を用いた場合であっても、ソフトウェア処理によって、ユーザに違和感を与えることなく映像信号と音声信号の同期ずれを修正することができるようになり、光ディスク再生装置の製造コストを低減することができる。また、映像信号に対して音声信号が先行した場合又は音声信号に対する映像信号の先行がほとんど認識されなくなる30ms以下になった場合に、映像信号と音声信号の同期ずれの修正を停止するので、過剰な同期ずれ修正処理により、音声信号が映像信号よりも先行するという不都合の発生を防止することができる。
【0048】
また、請求項2の発明によれば、音声信号に対して映像信号が所定時間先行している場合に、現在再生中の映像信号に含まれる所定の画像の再生時間を長くして、映像信号と音声信号の同期ずれを修正するので、映像信号デコーダ及び音声信号デコーダとしてAV同期処理機能を含まない素子を用いた場合であっても、ソフトウェア処理によって、映像信号と音声信号の同期ずれを修正することができるようになり、光ディスク再生装置の製造コストを低減することができる。
【0049】
また、VOBUの先頭の画像の再生時間を長くして、音声信号と映像信号の時間差を徐々に少なくするので、再生された映像を見ているユーザに違和感を与えることがほとんどなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による光ディスク再生装置の電気的ブロック構成図。
【図2】 光ディスクに記録されている映像情報の記録状態を示す概念図。
【図3】 上記一実施形態におけるデコーダ及び全体制御部のブロック構成図。
【図4】 上記一実施形態における同期ずれ修正処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 光ディスク再生装置
4 光ピックアップ(記録情報読み出し手段)
10 全体制御部
91 映像/音声分離部(分離手段)
94 映像信号デコーダ
95 音声信号デコーダ
101 時刻情報取得部(時刻情報取得手段)
102 同期ずれ判別部(同期ずれ判別手段)
103 同期ずれ修正部(同期ずれ修正手段)
Claims (2)
- 光ディスクに記録されている情報を読み出すための記録情報読み出し手段と、この記録情報読み出し手段により読み出された記録情報を映像信号と音声信号に分離する分離手段と、この分離手段により分離された映像信号に対して所定の復号処理を施す映像信号デコーダと、前記分離手段により分離された音声信号に対して所定の復号処理を施す音声信号デコーダとを備えた光ディスク再生装置において、
再生中の復号処理された映像信号及び音声信号から、それぞれ映像と音声の現在の時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、
前記時刻情報取得手段により取得された映像と音声の時刻情報を比較し、映像信号と音声信号とが同期しているか否か、及び映像信号と音声信号とが同期していない場合に、映像信号と音声信号のいずれが先行しているか及びそのずれ時間を判断する同期ずれ判別手段と、
前記同期ずれ判別手段により、映像信号が音声信号よりも略100ms(milliseconds)以上先行していると判断されたとき、再生中の復号処理された映像信号のうち、複数画像の映像信号で1纏まりを構成するVOBU(Video Object Unit)に含まれる先頭の画像の再生時間を長くして、音声信号に対する映像信号の同期ずれを修正し、映像信号に対して音声信号が先行した場合又は音声信号に対する映像信号の先行が略30ms以下になった場合に、音声信号に対する映像信号の同期ずれの修正を停止する同期ずれ修正手段とをさらに備え、
前記同期ずれ修正手段は、
VOBUに含まれる先頭の画像の再生時間を長くする際、トップフィールド/ボトムフィールドの垂直同期信号を一回分見送って、次のトップフィールド/ボトムフィールドの垂直同期信号で画像信号をラッチすることにより、1枚の画像を2枚分の表示時間で表示してスロー再生するスロー再生手段を有し、
音声信号に対する映像信号の先行を少しずつ修正するようにしたことを特徴とする光ディスク再生装置。 - 光ディスクに記録されている情報を読み出すための記録情報読み出し手段と、この記録情報読み出し手段により読み出された記録情報を映像信号と音声信号に分離する分離手段と、この分離手段により分離された映像信号に対して所定の復号処理を施す映像信号デコーダと、前記分離手段により分離された音声信号に対して所定の復号処理を施す音声信号デコーダとを備えた光ディスク再生装置において、
再生中の復号処理された映像信号及び音声信号から、それぞれ映像と音声の現在の時刻情報を取得し、この映像と音声の時刻情報を比較して、映像信号が音声信号よりも所定時間以上先行していると判断されたとき、再生中の復号処理された映像信号に含まれる所定の画像の再生時間を長くして、音声信号に対する映像信号の先行を修正し、
前記所定の画像とは、再生中の復号処理された映像信号のうち、複数画像分の映像信号の1纏まりを構成するVOBU (Video Object Unit) に含まれる先頭の画像であり、VOBUに含まれる先頭の画像の再生時間を長くして、音声信号に対する映像信号の先行を少しずつ修正するようにしたことを特徴とする光ディスク再生装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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