JP3733916B2 - ドラム用フットペダル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バスドラムに用いられるドラム用フットペダルに関し、特にバスドラムのドラムヘッドを打撃するビータ構造を改良したドラム用フットペダルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バスドラムの演奏に用いられるドラム用フットペダルは、フットボードの踏込操作によってビータを回動させ、これによりバスドラムのドラムヘッドを打撃するように構成されている(例:実公昭55−45433号、実公昭58−43035号、特開平8−314447号等)。
【0003】
ドラムヘッドを打撃するビータとしては、図8に示す構造のものが知られている(特開平8−314449号)。すなわち、このビータAは、円板状に形成されたフェルトBと、このフェルトBが一端面に接着剤Dによって貼着された筒体Cとで構成されるもので、前記筒体CをビータロッドEの先端部に軸線が当該ロッドの軸線と直交するように取付けてナット等で固定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のビータAにおいては、フェルトBを筒体Cに接着剤Dによって固着する構造であるため、作業上のばらつきが発生し易く、特にフェルトBが筒体Cに対して偏心して取付けられると外観を損なうという問題があった。また、長期間使用していると、接着剤Dの劣化によりフェルトBが筒体Cから剥離して脱落したり、またはフェルトBの摩耗、損傷等により交換する必要が生じたとき、フェルトBだけを交換するには接着剤Dを必要とし、接着面の前処理を入念に行わないと接着しても剥離し易いため、結局フェルトBを交換するには筒体Cを含むビータA全体を交換する必要があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところはビータに用いられるフェルトの保持が確実で脱落したりすることがなく、またフェルトが摩耗したときにはフェルトのみを交換し得るようにしたドラム用フットペダルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、フットボードの踏込操作に連動して回動しドラムヘッドを打撃するビータを備えたドラム用フットペダルにおいて、ドラムヘッドを打撃する、打楽器の打撃に適した材質からなる打撃部材と、第1のケースおよび第2のケースで構成される保持部材であって、第1のケースおよび第2のケースにより前記打撃部材をビータロッドの軸線方向から挟持するとともに前記打撃部材の後部を収納する収納部を有する保持部材とにより前記ビータを構成したものである。
また、本発明は、打撃部材としてフェルトを用いたものである。
さらに、本発明は、第1のケースと第2のケースをナットによりビータロッドに固定したものである。
【0007】
本発明においては、保持部材が打撃部材を挟持しているので、打撃部材が収納部から脱落するのを防止する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るドラム用フットペダルの一実施の形態を示す外観斜視図、図2はビータの正面図、図3は図2のIII −III 線断面図、図4は同じくビータの平面図、図5(a)、(b)、(c)はフェルトの平面図、正面図および側面図、図6(a)、(b)は第1のケースの断面図および底面図、図7(a)、(b)は第2のケースの断面図および平面図である。
【0009】
図1において、全体を符号1で示すドラム用フットペダルは、床面に設置されるペダルフレーム2を備えている。ペダルフレーム2は、アルミニウム合金等からなりダイキャスト鋳造によって製作されるもので、板状のフレーム本体2Aと、フレーム本体2Aの上面両端部にそれぞれ一体に立設された2本の支柱部2B,2Bとからなり、フレーム本体2Aにヒール3が連結部材4を介して連結されている。また、フレーム本体2Aの上面には、図示を省略したバスドラムの締め枠(フープ)を咬持するクランプ金具5が取付けられている。
【0010】
前記2本の支柱部2B,2Bの上端間には回動軸6が回転自在に横架されている。このため、各支柱部2Bの上端部は軸受部7をそれぞれ構成し、前記回動軸6の端部を軸支する軸受8が取付けられている。回動軸6の中央にはロッカ9が固定されており、またこのロッカ9にはバスドラムのドラムヘッドを打撃するビータ10がビータロッド11を介して取付けられるとともに、フットボード12の前端が踏力伝達部材13を介して連結されている。
【0011】
前記フットボード12は、足を載せるに十分な大きさの平板状に形成されており、後端が前記ヒール3に連結ピンを介して回動自在に連結され、かつ復帰用ばね14によって上方への復帰習性が付与されている。前記復帰用ばね14は、上端が前記回動軸6の一端部に設けたカムプレート15に連結され、下端が一方の支柱部2Bの下端部に設けたばね受部材16に接続されている。なお、本実施の形態においては、踏力伝達部材13として可撓性を有する皮革または樹脂製のバンドを用いた例を示したが、これに限らずタイミングベルト、チェーン等も用いることも可能である。
【0012】
前記フットボード12は通常図1に示す初期位置状態に保持されている。この状態よりフットボード12を踏込操作すると、踏力伝達部材13が引き下げられて回動軸6を回動させる。したがって、ビータ10も回動軸6と一体に回動してバスドラムのドラムヘッドを打撃する。このときのフットボード12の最大踏込角度は、15°程度である。打撃後、フットボード12から踏込操作力を取り除くと、フットボード12は復帰用ばね14のばね力によって上昇し、図に示す元の状態に復帰することにより次の踏込操作を可能にする。
【0013】
次に、本発明の主要部となるビータ10の構造を図2〜図7に基づいてさらに詳述する。
前記ビータ10は、ドラムヘッドを打撃するフェルト20と、このフェルト20の後部を挟持した状態で収納し前記ビータロッド11に取付けられるフェルト保持部材(保持部材)21とで構成されている。
【0014】
前記フェルト20は、図5に示すように正面視形状が左右方向に長い長円形(または矩形)で、平面視形状が円弧状で、側面視形状が台形状に形成されており、前端部がドラムヘッドの打撃を可能にするために前記フェルト保持部材21の開口Fから前方に突出している。また、フェルト20のドラムヘッドを打撃する前面20aは、トーリック面(円弧を、その円弧と同一面内にあり円弧の曲率中心を通らない軸の回りに回転させて得られる面の一部)に形成されている。
【0015】
前記フェルト保持部材21は、合成樹脂の成形品からなり後述するボルト部によって一体的に結合される第1、第2のケース22,23で構成され、前側に前記フェルト20の後部を収納しかつ挟持する収納部25が形成されている。収納部25の開口Fは左右方向に長い長円形で、左右方向の開口幅L(図4)が前記フェルト20の幅L1 より小さく設定されている。また、高さ方向の開口幅H(図2)はフェルト20の高さH1 (図5)より若干小さく設定されている。
【0016】
図6において、前記第1のケース22は、前板22a、上板22b、外板22c、フェルト挾持板22d、円筒部22eおよび補強板22fとで構成されている。前記前板22aは平板状に形成され、前記フェルト挾持板22dとともにフェルト20の後部上方部分を収納する収納空間25Aを形成している。フェルト挾持板22dは、前記前面22aの上端と左右両側縁の上方部分から前方に向かって一体に突設されることにより正面視形状が下向きのコ字状を呈し、左右両側壁部がフェルト20の前記収納空間25Aからの抜けを防止する抜け防止部26を形成している。抜け防止部26は、フェルト20の前板20aの左右両端部を覆うように内側に湾曲している。また、フェルト挾持板22dの左右両側壁の内側面の下端には、第1のケース23との係合部を構成する凹部27が形成されている。
【0017】
前記上板22bは、平面視略半円形に形成され、幅方向中央に前記円筒部22eの中心孔29に連通する凹部28が形成されている。凹部28は後述するナット39が座金40とともに嵌挿されるもので、穴径が前記中心孔29の穴径より大きく設定されている。前記円筒部22eは前記上板22bの下面に一体に垂設されており、中心孔29に前記ビータロッド11が挿通される。
【0018】
前記外板22cは、前記上板22cの下面外周縁に一体に垂設されて上下方向に開口しており、前端が前記前板22aの後面に接続されている。前記補強板22fは、フェルト20によるドラムヘッドの打撃力に耐え得るように前記前板22a、外板22cおよび円筒部22eを連結し補強している。
【0019】
図7に示す前記第2のケース23は、底板23a、フェルト挾持板23bおよび嵌合壁23cとで構成されている。底板23aは、前記第1のケース22の上板22bと略同一の形状で、幅方向中央に前記ビータロッド11が貫通されるとともにビータ10が実質的に保持される保持部31が形成されている。保持部31は貫通孔31aと凹部31bとから形成されている。底板23aとフェルト挾持板23bとの連結部には段差32が設けられている。この段差32の垂直な段差面32aは、前記第1のケース22と第2のケース23を一体的に結合したとき、第1のケース22の前板22aと同一面を形成し、前記フェルト20の前後方向を位置決めする位置決め部を形成している。
【0020】
前記フェルト挾持板23bは、前記底板23aの前端側外周縁に前方および上方に向かって一体に突設されることにより正面視形状が上向きのコ字状で前記フェルト挾持板22dと略上下対称な形状を呈し、このフェルト挾持板23bと前記底板23aとで囲まれた空間が前記フェルト20の後部下方部分を収納する収納空間25Bを形成している。この収納空間25Bは、前記第1、第2のケース22,23を一体的に結合することにより、前記収納空間25Aとともに前記収納部25を形成する。フェルト挾持板23bの左右両側壁部は、フェルト20の前板20aの左右両端部を覆うように内側に湾曲して前記収納部25の開口幅Lを規定し、これによりフェルト20が前記収納空間25Bから抜けるのを防止する抜け防止部34を形成している。フェルト挾持板23bの上端には、前記第1のケース22のフェルト挾持板22dの内側面下部に設けた前記凹部27に係合する薄肉の係合片35が上方に向かって一体に突設されている。
【0021】
前記嵌合壁23Cは、前記底板23aの上面外周縁に上方に向かって一体に突設された不連続(または連続した)な円弧状を呈し、上面に前記第1のケース22の外板22cの内面に下方から嵌合する薄肉の嵌合壁37が一体に突設されている。フェルト20の形成に際しては、少なくとも幅方向の大きさをケース開口幅より大きく形成しておけば、フェルト20の弾力がケースを押さえるので脱落し難い。
【0022】
図3において、前記ビータロッド11の先端部付近には、前記第2のケース23を受け止めて支持する座金41を止めるための凸部43がかしめによって一体に突設され、さらに先端部には前記ナット39が座金40を介して螺合する雄ねじ42が形成されることによりフェルト保持部材21を固定するボルト部を形成している。
【0023】
ビータ10の組み立てとビータロッド11への取付けは以下の手順によって行われる。
▲1▼ビータロッド11の先端部を第2のケース23の保持部31に下方から挿通してストッパ41を凹部31bに嵌合することにより第2のケース23をビータロッド11の先端部に位置付ける。
▲2▼フェルト20を収納空間25Bに上方から嵌挿して背面下部を段差部32の垂直な段差面32aに密接させ、前面20aの両端部をフェルト挟持部23bの左右両側壁の内側面に密接させる。
▲3▼ビータロッド11の先端部を第1のケース22の円筒部22eの中心孔29に下方から挿通して第1のケース22を第2のケース23に上方から嵌合する。これにより、係合片35が凹部27に係合し、係合壁37が外板22cの内面に嵌合する。第1、第2のケース22,23を嵌合すると収納空間25A,25Bが収納部25を形成してフェルト20の後部を収納し、フェルト20の背面が第1のケース22の前板22aに密接する。
▲4▼ビータロッド11の雄ねじ42にナット39を座金40を介して螺合し、第1のケース22を第2のケース23に押し付けと、開口Fの高さ方向の開口幅Hがフェルト20の高さH1 より若干小さく設定されていることから、第1、第2のケース22,23のフェルト挾持板22d,23bがフェルト20の後部をビータロッド11の軸線方向から挟持し収納部25内に固定する。
【0024】
または別の取付け方として、予め第1、第2のケース22,23を嵌合して収納部25内にフェルト20を収納し、しかる後ビータロッド11の先端部を保持部31から円筒部22eの中心孔29に挿通してナット39を雄ねじ42に座金40を介して螺合することにより、第1、第2のケース22,23を一体的に結合するようにしてもよい。
【0025】
このような構造からなるドラム用フットペダル1のビータ取付構造においては、第1、第2のケース22,23のフェルト挾持板22d,23bによってフェルト20の後部を挟持しているので、フェルト22がフェルト保持部材21の収納部25から抜け出したりするおそれがなく、確実に保持することができる。また、フェルト挾持板22d,23bの左右の側壁部分は内側に屈曲してフェルト20の前面両端部に密接することにより抜け防止部26,34を形成しているので、フェルト20が収納部25から脱落するのを一層確実に防止することができる。したがって、接着剤によって収納空間25内に固着したりする必要がなく、フェルト20のフェルト保持部材21への取付作業が簡単かつ容易である。さらに、摩耗等によってフェルト20を交換する必要が生じた場合は、ナット39を外して第1のケース22をビータロッド11から外し、フェルト20を収納部25から取り外せば新しいフェルトと交換することができるため、交換作業も簡単かつ容易で、フェルト保持部材21をそのまま使用することができる。
【0026】
また、フェルト保持部材21のビータロッド11への固定と、フェルト保持部材21によるフェルト20の挟持を、ナット39によって行なっているので、最少部品点数とすることができる。
【0027】
なお、上記した実施の形態においては、フェルト保持部材21を合成樹脂製の成形品によって形成したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、ダイキャスト鋳造によって製作されたアルミニウム等の金属からなる成形品であってもよい。
また、フェルト20の形状は上記実施の形態において示した形状に何ら特定されるものではなく、種々の形状とすることが可能である。例えば前面22aを球面状に形成し、その外周縁部を全周にわたって挟持するようにしてもよい。
また、フェルト20の抜け防止部26,34をフェルト挾持板22d,23bの一部で構成したが、これに限らずピン、段差部等で構成し、フェルト20に食い込ませるようにしてもよい。材質はフェルトに限らず打楽器の打撃に適するものでよく、様々なものが用いられる。
また、ビータロッド11の先端部分のみに雄ねじ42を形成したボルトとして使用する例を示したが、ストッパ41の代わりにナットを使用するために当該部分まで雄ねじを形成してもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るドラム用フットペダルは、ドラムヘッドを打撃する打撃部材と、この打撃部材を挟持するとともに打撃部材の後部を収納する収納部を有する保持部材とによってビータを構成したので、打撃部材の保持が確実で、演奏中に打撃部材が保持部材から脱落するのを確実に防止することができる。
また、本発明は保持部材によって打撃部材を挟持するようにしたので、接着剤を用いて固着する必要がなく、打撃部材の保持部材への取付け、取外し、さらには打撃部材の交換作業を迅速かつ容易に行うことができる。
さらに、本発明は保持部材に打撃部材の抜けを防止する抜け防止部を設けているので、打撃部材の脱落をより一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るドラム用フットペダルの一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】 ビータの正面図である。
【図3】 図2のIII −III 線断面図である。
【図4】 同じくビータの平面図である。
【図5】 (a)、(b)、(c)はフェルトの平面図、正面図および側面図である。
【図6】 (a)、(b)は第1のケースの断面図および底面図である
【図7】 (a)、(b)第2のケースの断面図および平面図である。
【図8】 従来のビータの側面図である。
【符号の説明】
1…ドラム用フットペダル、2…ペダルフレーム、2B…支柱部、6…回動軸、9…ロッカ、10…ビータ、11…ビータロッド、12…フットボード、13…踏力伝達部材、20…フェルト、21…フェルト保持部材、22…第1のケース、23…第2のケース、25…収納部、25A,25B…収納空間、26,34…抜け防止部。
Claims (3)
- フットボードの踏込操作に連動して回動しドラムヘッドを打撃するビータを備えたドラム用フットペダルにおいて、
ドラムヘッドを打撃する、打楽器の打撃に適した材質からなる打撃部材と、
第1のケースおよび第2のケースで構成される保持部材であって、第1のケースおよび第2のケースにより前記打撃部材をビータロッドの軸線方向から挟持するとともに前記打撃部材の後部を収納する収納部を有する保持部材とにより前記ビータを構成したことを特徴とするドラム用フットペダル。 - 打撃部材はフェルトであることを特徴とする請求項1記載のドラム用フットペダル。
- 第1のケースと第2のケースとをナットによりビータロッドに固定したことを特徴とする請求項1または2記載のドラム用フットペダル。
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