JP3733908B2 - ハイポイドギアの設計方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、ハイポイドギアの歯面形状の設計方法に関する。
背景技術
本願出願人は、特開平9−53702号公報において、歯車対の歯面を統一的に記述する方法について提案した。すなわち、最も広く用いられている平行な軸を有する歯車対から、二つの歯車の軸が交わらず、平行でもない位置(ねじれの位置)にある場合にまで統一的に適応できる歯面の記述方法が示された。また、動力伝達用歯車において、歯車の軸を支持する軸受の荷重変動をなくすためには、歯車歯面の接触点の軌跡が直線となることが必要であることが示された。そして、少なくとも一方の歯面がインボリュートヘリコイド面であり、他方の歯面がこれに共役な面である場合が、前記の接触点軌跡が直線となるという条件を満たすことを明らかにした。この結論は、平歯車、はすば歯車などの平行軸歯車において、従来の設計方法と同一の結論となる。
また、対をなす歯車の軸が平行でない場合の従来の歯車設計方法は、経験的に求められるものであった。
対をなす歯車の軸が平行でない場合、一方がインボリュートヘリコイド歯面を有し、他方がこれと共役な歯面を有する歯車対が現実に存在し得るか、またこのような歯面対の効率的な求め方が不明であった。
発明の開示
本発明は、特に、二つの歯車軸が交わらず、かつ平行でもない場合の歯車対の設計方法を提供することを目的とする。
本発明は、交わらず、かつ平行でもない軸を有する歯車対、例えばハイポイドギアの設計方法を提供する。以下、ハイポイドギアの小径歯車をピニオン、大径歯車をギアと呼ぶ。また、本明細書におけるハイポイドギアは、ピニオンが円筒面上に歯が形成された歯車で、ギアが円盤の軸に直交する面に歯が形成された、いわゆるフェースギアも含む。
ハイポイドギアの歯面は、前記の特開平9−53702号公報に示された方法により記述することができる。
まず、(a) 互いに直交する3座標軸のうちの1つがその歯車の回転軸に一致し、他の2座標軸のうちの1つが、その歯車の回転軸とその歯車が噛み合わされるべき相手歯車の回転軸との共通垂線に一致する静止座標系と、(b) 互いに直交する3座標軸のうちの1つが前記静止座標系の3座標軸のうち前記歯車の回転軸に一致するものに一致し、その一致する座標軸を中心にしてその歯車と共に回転するとともに、その歯車の回転角が0であるときに他の2座標軸が前記静止座標系の他の2座標軸にそれぞれ一致する回転座標系と、(c) 前記静止座標系を前記歯車の回転軸を中心に、かつ、その静止座標系の前記他の2座標軸のうちの1つが前記歯車の作用面と平行になるように回転変換した媒介座標系とをそれぞれ想定する。次に、前記媒介座標系において、前記歯車の回転中、その歯車と前記相手歯車との間で互いに噛み合う歯面対の接触点が描く軌跡と、その歯面対に対する各接触点における法線である共通法線の傾き角とをそれぞれ、前記歯車の回転角を助変数とする第1関数によって記述する。また、前記静止座標系において、前記第1関数と、その静止座標系と前記媒介座標系との相対位置関係とに基づき、前記接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ、前記回転角を助変数とする第2関数によって記述する。さらに、静止座標系における接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ取得し、前記回転座標系において、前記第2関数と、その回転座標系と前記静止座標系との相対位置関係とに基づき、前記接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ、前記回転角を助変数とする第3関数によって記述される歯形曲線を取得する。
取得された歯形曲線から、当該歯面対の接触領域を取得する。このとき、一方の歯車(第1歯車)の歯面をインボリュートヘリコイドとし、他方の歯車(第2歯車)は第1の歯車の歯面と共役な歯面を有するものとする。前記取得された接触領域において、歯面対の有効な接触が実現する領域(以下、有効接触領域)はその一部に限定される。まず、この有効接触領域は、接触領域に対する二つの歯車軸の正射影である作用限界線の間に存在する。また、歯車の歯先が形成する面、すなわち歯車の回転によって歯先が描く軌跡面より歯元側に、有効接触領域が存在する。よって、有効接触領域は、前記歯先が形成する面と接触領域の交線(以下、歯先線)と、前記作用限界線の間に存在する。したがって、作用限界線と歯先線により囲まれる領域(すなわち、有効接触領域)が少なくとも歯車の歯幅全体にわたって存在することが望ましい。有効接触領域が歯幅の一部にしか存在しないということは、残りの歯幅部分は、歯車として役に立っていないことになり、このような設計は無意味または無駄である。
また、現実に歯車の歯を形成するためには、歯が必要な強度を有することが必要である。具体的には、正転側と逆転側の歯面に所定の歯厚を与え、また歯の直交する断面形状において歯元を太くする。歯元を太くするためには、正転側の歯面と逆転側の歯面のそれぞれの接触点軌跡がなす角度を適切に選定する必要がある。正転、逆転側歯面の接触点軌跡の交わる角度は、従来のラックの頂角である38〜40°が経験的に適切である。また、正転側の接触点軌跡を、後述する限界軌跡(g2Z、gt、g1K)の一つにほぼ一致させるように選択することが経験的に適切である。
前記の歯を第1歯車に創成するために、等価ラックの形状を取得することが必要となる。等価ラックは、インボリュート平歯車のラックが一般化されたものと考えることができる。
また、前記決定された接触点軌跡により、第2歯車の歯面を取得し、第2歯車の歯先面を与えれば、正転側、逆転側双方の歯先線が求められ、その間隔も取得できる。この間隔が少ない場合、第2歯車の歯先が尖っていることを示している。
有効接触領域はギア小端側で不足しやすく、第2歯車の歯先線間隔(歯先の歯厚)は、大端側で不足しやすい。有効接触領域が小端側で不足した場合は、設計基準点をギアの小端側に移動して再度歯形曲線および有効接触領域の取得を実行する。また、歯先線の間隔が大端側で不足した場合には、設計基準点をギアの大端側に移動して再度歯形曲線および有効接触領域の取得を実行する。小端側で有効接触領域が不足し、同時に大端側で歯先線の間隔が不足した場合には、歯幅を減少させる。
以上の設計過程を、所定のコンピュータプログラムにより記述することにより、コンピュータに実行させることができる。コンピュータには、ギア諸元や変数の選択を受け付ける入力手段が接続され、また設計結果または設計過程の中間段階までの演算結果を出力する出力手段が接続される。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。まず、特開平9−53702号公報にて提案された歯車の設計方法について説明する。
A.新しい歯形論
1.新歯形論における歯形曲線
図1は、ある瞬間に角速度ω1i,ω2i(図示方向が正のベクトル)で回転し、一定の入出力トルクT1 ,T2 (それぞれω1iとω2iと同方向が正のベクトル)を伝達する歯面I,IIが点Pi で接触し、歯面IIに集中荷重の法線力FN2i 、歯面I上にその反作用としてFN1i (=−FN2i )を受けている状態を示している。接触点Pi における歯面I,IIの共通法線を単位ベクトルni で表わすものとすれば、ni は集中荷重の法線力の作用線(有向)をも同時に表わしている。
歯車対がある任意の角度だけ回転したとき、接触点はPj に移り、角速度はω1j,ω2jに、集中荷重の法線力はFN1j ,FN2j に変化したと仮定すれば、Pij は各接触点において共通法線がそれぞれni ,nj となる接触点の軌跡を描くことになる。この接触点の軌跡Pi j と共通法線ni ,nj とを各歯車と共に回転する空間に変換すれば、歯形曲線I,IIが歯面I,IIと全く同じ運動を伝達する空間曲線として定義され、歯面上の集中荷重の移動軌跡(歯当り)を表わすことになる。この歯形曲線I,IIが新歯形論における歯形曲線であり、各点で法線(または面素)をもつ空間曲線になっている。
したがって、歯面I,IIの接触点近傍の接触状態とこの歯車対の力学的な運動を考える場合には、歯面I,IIの替わりに歯形曲線I,IIを考えれば十分である。また、歯形曲線I,IIが与えられれば、全く同じ力学的運動を伝達する歯面I,IIは歯形曲線I,IIを含むとともに互いに干渉しない一対の曲面であればよく、互いに共役な歯面対はその一つであるに過ぎない。
ここで集中荷重とその作用点とは任意の歯面対の分布荷重(接触楕円を形成している)の合力とその作用点を意味している。したがって、接触点は同時に集中荷重の作用点であり、集中荷重に応じたたわみを含んでいる。また、各歯面対は1ピッチの位相差をもつ同一曲面であるから、負荷状態に応じて静止空間に同一の接触点の軌跡(たわみを含む)を描くことになり、複数かみあいの場合には、任意の回転角における隣接する歯面対の分担する集中荷重がピッチ分だけ位相をずらして上記接触点の軌跡上に並んでいる。
2.基本座標系
図2は、接触点の軌跡Pi j 上の任意点をPとし、点Pおよび点Pにおける集中荷重の法線力FN2,FN1、共通法線n(集中荷重の作用線)を座標系C1 ,C2 、座標系Cq1,Cq2を用いて示したものである。
2軸I,IIの軸角Σ、オフセットE(≧0,点C1 と点C2 との距離)およびその角速度ω1 ,ω2 の方向が与えられている。2軸の共通垂線にω2 ×ω1 の方向を正とする方向をもたせ、有向共通垂線vc とするとき、2軸I,IIと共通垂線vc との交点をC1 ,C2 とし、vc 軸に関してC2 がC1 の上にある場合を扱うものとする。ただし、C2 がC1 の下にある場合も全く同様である。
集中荷重の法線力FN2(共通法線n)を含み、各歯車軸I,IIに平行な平面を作用面G1 ,G2 と定義する。したがって、FN2(共通法線n)は作用面G1 ,G2 の交線上にある。作用面G1 ,G2 に接し、各歯車軸を軸とする円筒を基礎円筒と定義し、その半径をRb1,Rb2とする。
歯車IIの座標系C2 ,Cq2を次のように定義する。座標系C2 (u2c,v2c,z2c)はC2 を原点とし、II軸上ω2 の方向にz2c軸をとり、共通垂線vc 上にこれと同方向にv2c軸、両軸に垂直にu2c軸を右手系となるようにとる。座標系Cq2(q2 ,vq2,z2c)は、原点C2 およびz2c軸を共有し、z2c軸を回転軸として平面v2c=0が作用面G2 に平行になるように座標系C2 をχ2 (図示方向が正)だけ回転させた座標系であり、u2c軸はq2c軸に、v2c軸はvq2c 軸になっている。
作用面G2 は座標系Cq2を用いれば、vq2c =−Rb2で表わされ、座標系C2に対しては、平面v2c=0に対する傾き角がχ2 であり、かつ、基礎円筒(半径Rb2)に接する平面となっている。
座標系C2 とCq2との関係は、z2c軸は共通であるから、
2c=q2c cosχ2 −vq2c sinχ2
2c=q2c sin χ2 +vq2c cosχ2
となる。作用面G2 はvq2c =−Rb2であるから、基礎円半径Rb2を用いて表わせば、次式(1)、すなわち、
2c=q2c cosχ2 +Rb2 sinχ2
2c=q2c sinχ2 −Rb2 cosχ2
2c=z2c ・・・(1)
なる諸式が成立する。
共通法線nは作用面G2 上にあり、そのq2c軸成分が正となる方向を向くものと定義すれば、そのq2c軸からの傾き角をψb2(図示方向が正)で表わすことができる。そこで、共通法線nの座標系C2 における傾き角は、有向共通垂線vcに対する作用面G2 の傾き角φ2 (χ2 の余角)とψb2によってn(φ2 ,ψb2)の形で表わすものと定義する。
集中荷重の法線力FN2の方向は共通法線はnの方向を正とし、FN2のq2c軸方向成分、z2c軸方向の成分をそれぞれ、Fq2,Fz2とする。
歯車Iについても全く同様にして座標系C1 (u1C,v1c,z1c)、Cq1(q1C,vq1c ,z1c)、作用面G1 、基礎円半径Rb1、共通法線nの傾き角n(φ1 ,ψb1)を定義することができる。座標系C1 とCq1との関係も、z1c軸は共通であるから全く同様にして、次式(2)、すなわち、
1c=q1c cosχ1 +Rb1 sinχ1
1c=q1c sinχ1 −Rb1 cosχ1
1c=z1c ・・・(2)
なる諸式で表される。
座標系C1 とC2 との関係は、次式(3)、すなわち、
1c=−u2c cosΣ−z2c sinΣ
1c=v2c+E
1c=u2c sinΣ−z2c cosΣ ・・・(3)
なる諸式で表される。
ここで定義された座標系C1 ,C2 、座標系Cq1,Cq2が本発明者が新しく提案する新歯形論の基本座標系である。この基本座標系によって応用範囲を円筒歯車のみならず、ハイポイドギヤ,かさ歯車まで含めて考えることを可能としているのである。
共通法線nの傾き角n(φ1 ,φb1)とn(φ2 ,φb2)との関係は、nが作用面G1 ,G2 の交線上にあることから次のように求められる。nの座標系C2 の各軸方向成分は、
u2c = cosψb2 sinφ2 (Lu2c :nのu2c軸方向成分)
v2c = cosψb2 cosφ2 (Lv2c :nのv2c軸方向成分)
z2c = sinψb2 (Lz2c :nのz2c軸方向成分)
と表すことができる。ただし、共通法線nの絶対値は1である。
座標系C1 の各軸方向成分を座標系C2 の各軸方向成分で表せば、前記式(3)を用いて、
u1c =−Lu2c cosΣ−Lz2c sinΣ(Lu1c :nのu1c軸方向成分)
v1c = Lv2c (Lv1c :nのv1c軸方向成分)
z1c = Lu2c sinΣ−Lz2c cosΣ(Lz1c :nのz1c軸方向成分)
となる。したがって、次式(4)、すなわち、
Figure 0003733908
なる式と、次式(5)、すなわち、
Figure 0003733908
なる式とが得られる。ここで、
φ1 =π/2−χ1
φ2 =π/2−χ2
なる式が成立する。
3.接触点の軌跡とその共通法線
図3は、接触点の軌跡上の点Pと共通法線n、接平面W(作用面G2 との交線wで示されている)および微小角△θ2 だけ回転した後の接触点Pd と共通法線nd 、接平面Wd との関係を座標系C2 ,Cq2上に示したものである。任意の接触点Pおよびその共通法線nの傾き角を歯車IIの回転角θ2 を助変数として、座標系C2 によって、
P{u2c2 ),v2c2 ),z2c2 )}
n{φ2 2 ),ψb22 )}
と表わすものとする。ただし、回転角θ2 は図に示す方向が正である。ここで、
φ2 ( θ2 )=π/2−χ2 ( θ2 )
なる式が成立する。
点Pを前記式(1)により座標系Cq2を用いて表わせば、
P{q2c2 ),−Rb22 ),z2c2 )}
となり、また、接触点の軌跡の接線の作用面G2 上の傾き角をηb22 )とすれば、次式(6)、すなわち、
(dz2c/dθ2 )/(dq2c/dθ2 ) = tanηb22 ) ・・・(6)
なる式が成立する。
歯車IIが微小角△θ2 だけ回転し、接触点PはPd に、共通法線nはnd に変化したと仮定すれば、Pd ,nd は、
d {q2c2 )+△q2c,−Rb22 )+△Rb2,z2c2 )+△z2c
d {π/2−χ2 2 )−△χ2 ,ψb22 )+△ψb2
と表すことができる。
点Pd を通る作用面をG2dとし、G2dが作用面G2 に平行になるように歯車IIをΔχ2 だけ回転させたとき、作用面G2dはG2de に、点Pd はPdeに移動したと仮定する。さらに、点Pdeの作用面G2 への正射影をPdfとする。作用面G2dと点Pd における接平面Wd との交線がwd で表され、wd は上記の移動により作用面G2 上に投影されて点Pdfを通るwd ′で表わされ、また、nd はnd ′で表されている。wd ′と点Pを通る軸直角平面との交点がPdgである。Δθ2 の回転により、wd ′はwに対して作用面G2 上で△θ2 −△χ2 だけ回転した位置にあり、また、wd ′は点Pdfにおいてwに対してΔψb2だけ傾いているから、wd ′のwに対するq2c軸方向の移動量PPdgは、
Figure 0003733908
と表すことができる。したがって、微小角△θ2 による作用面G2 上の微小変位△z2cは、
△z2c〔 tan{ψb22 )+△ψb2}+1/ tan{ηb22 )+Δηb2}〕
=Rb22 )(△θ2 −△χ2
となる。2次の微小量を省略して、
△z2c
=Rb22 )(△θ2 −△χ2 )/{ tanψb22 ) +1/ tanηb22 ) }
と表すことができる。前記式(6)を用いれば、△q2cは、
△q2c
=Rb22 ) (△θ2 −△χ2 )/{ tanψb22 )tanηb22 )+1}
と表すことができる。
△Rb2,△χ2 ,△ψb2,△ηb2はθ2 の関数であるから、△θ2 によって形式的に、
△Rb2=(dRb2/dθ2 )△θ2
△ηb2=(dηb2/dθ2 )△θ2
△χ2 =(dχ2 /dθ2 )△θ2
△ψb2=(dψb2/dθ2 )△θ2
と表すことができる。これらを0からθ2 まで積分すれば、次式(7)、すなわち、
Figure 0003733908
なる諸式が得られる。
積分定数はθ2 =0のときの接触点P0 の座標とその共通法線n0 の傾き角および接触点の軌跡の接線の作用面上の傾き角を示している。この式(7)が接触点の軌跡とその共通法線を座標系Cq2によって表わす、θ2 を助変数とする方程式である。この式(7)を決定するには、設計基準点P0 (θ2 =0)における諸元、すなわち、
0 {q2c (0),−Rb2(0) ,z2c(0)}
ηb2(0)
0 {π/2−χ2 (0), ψb2(0) }
dRb2/dθ2
b2/dθ2
2 /dθ2
b2/dθ2
という合計10個の変数を与えることができればよい。この式(7)が新歯形論の歯形曲線を記述するための基礎式である。また、この式(7)が本発明における第1関数である。
点Pを座標系C2 (u2c,v2c,z2c)に変換すれば、z2cが共通であるから、前記式(1)を用いて、次式(8)、すなわち、
2c2 )=q2c2 )cosχ2 2 )+Rb22 )sinχ2 2 )
2c2 )=q2c2 )sinχ2 2 )−Rb22 )cosχ2 2 )
2c2 )=z2c2 ) ・・・(8)
なる諸式が成立する。この式(8)が本発明における第2関数である。前記式(2),(3),(4)および(5)を用いれば、接触点Pおよびその共通法線nの傾き角を座標系C1 とCq1とにより、θ2 を助変数として、次式(9)、すなわち、
P{u1c2 ),v1c2 ) ,z1c2 ) }
n{φ1 ( θ2 ),ψb12 )}
P{q1c2 ),−Rb12 ) ,z1c2 ) } ・・・(9)
なる式で表すことができる。
4.接触の条件式と歯車Iの回転角θ1
接触点Pの共通法線nは平面G1 ,G2 の交線上にあるから、接触の条件式は、次式(10)、すなわち、
b12 ) (dθ1 /dt)cosψb12 )
=Rb22 ) (dθ2 /dt)cosψb22 ) ・・・(10)
なる式で表される。したがって、角速度比i(θ2 )および歯車Iの回転角θ1 は、次式(11)、すなわち、
Figure 0003733908
なる式で表される。ただし、θ2 =0のとき、θ1 =0とする。
5.歯形曲線の方程式
5.1 歯形曲線IIの方程式
図4は、点Pを歯車IIと共に回転する座標系Cr2(ur2c ,vr2c ,zr2c )で示したものである。座標系Cr2は座標系C2 に対して、原点C2 とz2c軸とを共有し、z2c軸の周りにθ2 で回転する座標系であり、θ2 =0のときur2c 軸はu2c軸と一致しているものとする。接触点の軌跡およびその共通法線は前記式(7)によって与えられるから、座標系Cr2で表した点P(ur2c ,vr2c ,zr2c )およびその法線n(φr2,ψb2)は、次式(12)、すなわち、
χr2=χ2 ( θ2 )−θ2 =π/2−φ2 ( θ2 )−θ2
φr2=φ2 ( θ2 )+θ2
r2c =q2c2 )cosχr2+Rb22 )sinχr2
r2c =q2c2 )sinχr2−Rb22 )cosχr2
r2c =z2c2 ) ・・・(12)
なる式で表される。この式(12)が、本発明における第3関数である。
5.2 歯形曲線Iの方程式
全く同様にして座標系C1 に対して、θ1 で回転する座標系Cr1(ur1c ,vr1c ,zr1c )を定めれば、点P(ur1c ,vr1c ,zr1c )およびその法線n(φr1,ψb1)は前記式(9),(11)を用いて、次式(13)、すなわち、
χr1=χ1 ( θ2 )−θ1 =π/2−φ1 ( θ2 )−θ1
φr1=φ1 ( θ2 )+θ1
r1c =q1c2 )cosχr1+Rb12 )sinχr1
r1c =q1c2 )sinχr1−Rb12 )cosχr1
r1c =z1c2 ) ・・・(13)
なる諸式で表される。ただし、座標系Cr1と座標系C1 とは、θ1 =0のとき一致しているものとする。上記式(12),(13)は一般には角速度比が変化する歯形曲線を表している。
以上説明した3次元歯形論は、歯車対の基本諸元(接触点の軌跡)をピッチ回転体(ピッチ円筒あるいはピッチ円錐)を介さずに直接、歯車対の2回転軸と角速度とによって決まる静止空間に定義するものである。したがって、この歯形論によれば、歯面がインボリュートヘリコイドまたはその近似曲面である円筒歯車からハイポイドギヤまでの全ての歯車対の歯面とその接触の問題を、この静止空間に定義された統一概念(例えば作用平面、歯直角平面、圧力角、ねじれ角等)を用い、共通の比較的簡単な式によって扱うことが可能となる。
6.歯車対の運動と軸受荷重
6.1 歯車IIとIの運動方程式と軸受荷重
図5は、図2の接触点Pにおける歯車IIの集中荷重の法線力FN2および軸受荷重Bz2,Bvq2f,Bvq2r,Bq2f ,Bq2r の関係を、座標系Cq2を用いて示したものである。歯面の潤滑は十分であり、集中荷重の摩擦力成分は無視できるものとする。また、歯車IIは軸受b2a,b2f,b2rによって軸方向にも、半径方向にも剛に支えられていて、軸の剛性も十分大きいものとする。なお、図中、「′」および「”」はそれぞれ、点またはベクトルの対象平面への正射影であることを示すために付されている。
歯車IIは入(出)力トルクT2 および歯車Iから集中荷重の法線力FN2を受けて固定軸IIの周りに回転運動をしているから、歯車IIの運動方程式および軸受荷重の式は、座標系Cq2の各軸に関するトルクと力の釣り合いから、次式(15)、すなわち、
2 (d2 θ2 /dt2 ) =Fq2b22 )+T2
z2=−Fz2=−Fq2 tanψb22 )
vq2r20=Fz2b22 )
q2f +Bq2r =−Fq2
q2f 20=−Fq2{z2c2 )-z2cr }+Fq22c2 )tanψb22 )
vq2f+Bvq2r=0 ・・・(15)
なる諸式が成立する。
ここに、
2 :歯車IIの慣性モーメント
θ2 :歯車IIの回転角
2 :歯車IIの入(出)力トルク(一定)
q2,Fz2:F2Nのq2c,z2c軸方向成分
z2:軸受b2aのz2c軸方向荷重
q2f ,Bq2r :軸受b2f,b2rのq2c軸方向荷重
vq2f,Bvq2r:軸受b2f,b2rのvq2c 軸方向荷重
2cf ,z2cr :軸受b2f,b2rの荷重作用点のz2c座標
20: 軸受b2f,b2rの間隔(z2cf −z2cr >0)
ただし、荷重方向は座標系Cq2の各軸方向に正である。歯車Iについても全く同様である。
6.2 歯車対の運動方程式
歯車IとIIの運動方程式と前記接触の条件式(10)とを連立させれば、歯車対の運動方程式は次式(16)、すなわち、
1 (d2 θ1 /dt2 ) =Fq1b12 )+T1
2 (d2 θ2 /dt2 ) =Fq2b22 )+T2
−Fq1/cosψb12 )=Fq2/cosψb22 )
b12 ) (dθ1 /dt)cosψb12 )
=Rb22 ) (dθ2 /dt)cosψb22 ) ・・・(16)
なる諸式となる。
接触点とその共通法線は前記式(7)によって与えられているから、前記式(16)は未知数θ1 ,θ2 ,Fq1,Fq2の連立方程式になっていて、歯形曲線が与えられた歯車対の運動を記述するための基礎式である。ただし、前記式(16)は接触点の軌跡が連続かつ微分可能な領域でのみ成立する。したがって、接触点の軌跡が微分不可能な点(例えば、噛み合い歯数が変化する点)を含む場合には、その点近傍の運動は別に求める必要があり、前記式(16)だけで歯車対の定常運動を表すことは一般的にはできない。
7.軸受荷重の変動を0とするための条件
歯車対の回転によって歯車IIに生じる荷重変動は、軸受b2a,b2f,b2rの荷重の静止座標系C2 に対する変動としてとらえることができる。そこで、座標系Cq2で表された各軸受荷重を座標系C2 の各軸方向成分に変換すれば、次式(17)、すなわち、
z2c =Bz2 (軸受b2aのz2c軸方向荷重)
u2cf=Bq2f cos χ2 −Bvq2f sinχ2 (軸受b2fのu2c軸方向荷重)
v2cf=Bq2f sin χ2 +Bvq2f cosχ2 (軸受b2fのv2c軸方向荷重)
u2cr=Bq2r cos χ2 −Bvq2r sinχ2 (軸受b2rのu2c軸方向荷重)
v2cr=Bq2r sin χ2 +Bvq2r cosχ2 (軸受b2rのv2c軸方向荷重) ・・・(17)
で表される。
軸受荷重の変動分は上記式(17)の微分を用いて、
(a)軸受b2aのz2c軸方向荷重の変動分
△Bz2c =△Bz2=−ΔFz2
△Fz2=△Fq2 tanψb2+Fq2Δψb2/ cos2 ψb2
△Fq2={△(J2 (d2 θ2 /dt2 ) )−Fq2△Rb2}/Rb2
(b)軸受b2fのu2c,v2c軸方向荷重の変動分
Figure 0003733908
(c)軸受b2rのu2c,v2c軸方向荷重の変動分
Figure 0003733908
と表すことができる。
任意の回転角θ2 における歯車IIの軸受荷重の変動分は、
Δq2c
ΔRb2
Δz2c
Δχ2
Δψb2
Δ(d2 θ2 /dt2 )
という6個の変数の変動分で表すことができる。
入(出)力トルク一定の条件下で歯車IIが回転するとき、回転位置によらず歯車IIの軸受荷重の変動が常に0となるためには、少なくともその変動分が0でなければならないから、次の関係、
ΔBz2c =ΔBu2cf=ΔBv2cf=ΔBu2cr=ΔBv2cr=0
が成立する。したがって、歯車IIの軸受荷重の変動が0となる条件は、次式(18)により、
(1) △χ2 =0
(2) △ψb2=0
(3) △Rb22 ) =0
(4) △z2c2 ) =△q2c2 )tanψb22 )
(5) △(d2 θ2 /dt2 ) =0 ・・・(18)
以上の5項目に整理される。ただし、ここにtは時間を表している。
上記(1)〜(5)の各項目について順次説明する。
(1) △χ2 2 )=0の条件
作用面G2 の傾き角χ2 2 )は一定(χ20とする)である。すなわち、
χ2 2 )=χ2 (0) =χ20=π/2−φ20
となる。
(2) △ψb22 ) =0の条件
接触点における共通法線の作用面G2 上の傾き角ψb22 ) は一定(ψb20 )である。すなわち、
ψb22 )=ψb2(0) =ψb20
となる。
(3) △Rb22 ) =0の条件
接触点における共通法線の接する基礎円筒半径Rb22 )は一定(Rb20 とする)である。すなわち、
b22 )=Rb2(0) =Rb20
となる。
(4) △z2c2 )=△q2c2 )tanψb22 ) の条件
ψb22 )=ψb20 および前記式(7)を用いれば、
△z2c=△q2c2 )tanψb20
ηb22 )=ψb20 =ηb2(0)
となる。すなわち、接触点の軌跡の接線の作用面G2 (q2c−z2c平面)上の傾き角は共通法線のそれに一致しなければならないのである。
条件(1) 〜(4) の結果を前記式(7)に代入し、座標系C2 を用いて表せば、接触点の軌跡およびその共通法線の傾き角は、
2c2 )=Rb20 θ2 cos2 ψb20 +q2c(0)
2c2 )=q2c2 )cosχ20+Rb20 sin χ20
2c2 )=q2c2 )sinχ20−Rb20 cos χ20
2c2 )=Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20 +z2c(0)
n(φ20=π/2−χ20,ψb20 ) ・・・(19)
で表される。この式(19)は、接触点の軌跡が座標系Cq2上で点P0 {q2c(0) ,−Rb20 ,z2c(0) }を通り、座標系C2 に対する傾き角n(φ20=π/2−χ20,ψb20 )の共通法線に一致する直線であることを表している。また、この式(19)は、Rb20 ,ψb20 ,q2c(0) ,χ20およびz2c(0) という5個の変数を特定することによって、接触点軌跡を特定可能となる。
この式(19)を座標系C1 ,Cq1に変換すれば、前記式(9)を用いて点P0 {q1c(0) ,−Rb10 ,z1c(0) }を通り、座標系C1 に対する傾き角n(φ10=π/2−χ10,ψb10 )の直線として表すことができる。したがって、角速度比および歯車Iの回転角は前記式(11)を用いて、
Figure 0003733908
と表すことができる。角速度比は一定(i0 とする)である。
(5) △(d2 θ2 /dt2 ) =0の条件
(d2 θ2 /dt2 ) は一定、すなわち、等加速度運動を意味している。ここで対象としている歯車対は入出力一定の定常運動を仮定しているから、(d2 θ2 /dt2 ) =0、すなわち、等速運動を意味している。さらに、前記式(20)を用いれば、(dθ1 /dt) も一定となるから、歯車Iについても、(d2 θ1 /dt2 ) =0が成立する。したがって、前記式(16)により、
q2b20 =−T2
q1b10 =−T1
が得られる。前記式(20)と作用反作用の式を用いれば、
0 =Fq2b2/(−Fq1b10 )=−T2 /T1
となる。すなわち、歯車対の角速度比i0 は、与えられたトルク比(この場合には入出力についての仮定から一定)でなければならない。
歯車Iに生じる荷重変動についても全く同様にして前記式(18)の条件によって軸受荷重変動0が実現している。したがって、入出力一定で定常運動する歯車対から発生する軸受荷重変動を0にするためには、接触点の軌跡とその共通法線は、次の条件、すなわち、
(a) 接触点が静止空間(座標系C2 上)に任意に与えられたとき、接触点の軌跡はその接触点の共通法線に一致する直線で、しかも、静止空間に固定された直線でなければならない、
(b) しかも、その接触点における角速度比i0 は一定であり、与えられたトルク比に一致しなければならない、
を満たさなければならない。
図6に、軸受荷重変動が0となる作用平面G20、基礎円筒(半径Rb20 )、接触点の軌跡(共通法線n)、集中荷重の法線力FN2の関係を、座標系C2 ,Cq2によって示している。接触点の軌跡がすべての接触領域(複数噛み合い領域を含めて)で同一直線であれば、それは全領域で連続かつ微分可能となるから、軸受荷重変動0の定常運動を実現できることになる。
8.軸受荷重の変動が0となる歯形曲線
8.1 歯形曲線II
座標系C2 に対して原点C2 とz2c軸を共有し、z2c軸の周りにθ2 で回転する座標系を座標系Cr2(ur2c ,vr2c ,zr2c )とすれば、前記式(19)を座標系Cr2に変換して、軸受荷重の変動が0となる歯形曲線IIは、
χr2=χ20−θ2 =π/2−φ20−θ2
r2c =q2c2 )cosχr2+Rb20 sin χr2
r2c =q2c2 )sinχr2−Rb20 cos χr2
r2c =z2c2 )
n(φ20+θ2 ,ψb20 ) ・・・(21)
で求められる。ただし、θ2 =0のとき、ur2c 軸がu2c軸に一致すると仮定する。
8.2 歯形曲線I
全く同様にして座標系C1 に対して、z1c軸の周りにθ1 で回転する座標系を座標系Cr1(ur1c ,vr1c ,zr1c )とする。前記式(19)を座標系C1 ,Cq1に変換すれば、点P0 {q1c(0) ,−Rb10 ,z1c(0) }を通り、座標系C1 に対する傾き角n(φ10=π/2−χ10,ψb10 )の直線となり、この直線上の任意の点は前記式(9)によって与えられているから、この直線を座標系Cr1に変換すれば、軸受荷重の変動が0となる歯形曲線Iは、
χr1=χ10−θ1 =π/2−φ10−θ1
r1c =q1c2 )cosχr1+Rb10 sin χr1
r1c =q1c2 )sinχr1−Rb10 cos χr1
r1c =z1c2 )
n(φ10+θ1 ,ψb10 ) ・・・(22)
で求められる。ただし、θ1 =0のとき、ur1c 軸がu1c軸に一致すると仮定する。
ここで、θ1 =i0 θ2 であることを用い、改めてθ1 を助変数として、q1c2 )とz1c2 )をq1c 1 )とz1c1 )とで置換し直せば、
1c1 )=Rb10 θ1 cos 2 ψb10 +q1c(0)
1c1 )=Rb10 θ1 cos ψb10 sin ψb10 +z1c(0)
χr1=χ10−θ1 =π/2−φ10−θ1
r1c =q1c1 )cosχr1+Rb10 sin χr1
r1c =q1c1 )sinχr1−Rb10 cos χr1
r1c =z1c1 )
n(φ10+θ1 ,ψb10 ) ・・・(23)
が得られる。
実用上はこの式(23)の方が前記式(22)よりも使い易い。前記式(21),(23)は、歯形曲線I,IIがインボリュートヘリコイド上の前記接触点の軌跡に対応する曲線になっていることを示している。歯面としてはこの歯形曲線I,IIを含む任意の互いに干渉しない曲面が使用可能であるが、インボリュートヘリコイドまたはその修整歯面以外の曲面は、実際上上記のような接触点の軌跡とその共通法線を実現することは難しいから、動力伝達用歯車としては不向きである。
前記式(19)を特定するための前記5個の変数Rb20 ,ψb20 ,q2c(0) ,χ20,z2c(0) に代入すべき値を決定する具体的方法を詳細に説明する。
9.対象歯車対
軸受荷重変動が0となる対象歯車対は、前述のように、次のように定義されている。
(1) 2軸の位置関係(軸角Σ,オフセットE),角速度ω10,ω20(ω10≧ω20とする)が与えられ、定角速度比(i0 )の運動を伝達している。なお、角速度ω10,ω20はいずれもベクトルである。
(2) 接触点の軌跡が、接触点の共通法線nに一致する、静止空間に固定された有向直線g0 として与えられ、その作用面がG10,G20とされている。ただし、g0 は接触点の軌跡の方向を表す単位ベクトルであり、nに一致している。
(3) 座標系C1 ,Cq1,C2 ,Cq2が与えられ、接触点の軌跡g0 は座標系C2 ,Cq2によって次のように与えられている。ただし、g0 を座標系C1 ,Cq1および歯車Iの回転角θ1 で表すには、添字2を1に変えればよい。
2c2 )=Rb20 θ2 cos 2 ψb20 +q2c(0)
2c2 )=q2c2 )cosχ20+Rb20 sin χ20
2c2 )=q2c2 )sinχ20−Rb20 cos χ20
2c2 )=Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20 +z2c(0) ・・・(25)
ここで、
θ2 :歯車IIの回転角
2c(0) ,z2c(0) :θ2 =0の接触点のq2c,z2c座標
χ20:歯車IIの作用面G20の傾き角
ψb20 :g0 の作用面G20上の傾き角
b20 :作用面G20の接する基礎円筒の半径
したがって、対象歯車対が、与えられた角速度比i0 の運動を伝達するためには、q2c(0) ,z2c(0) ,Rb20 ,χ20,ψb20 の5個の定数を適切に選択する必要がある。
10.相対回転軸と座標系CS
10.1 相対回転軸
図7は、相対回転軸と座標系CS との関係を示している。2軸IとIIの位置関係およびその角速度ω10,ω20が与えられた時、2軸の共通垂線vc (ω20×ω10の方向に正)と各軸I,IIとの交点をそれぞれC1 ,C2 とし、vc に関してC1 がC2 の下にあるものとする。相対角速度ωr (ベクトル)をωr =ω10−ω20、その軸を相対回転軸Sとする時、相対回転軸Sを含み、かつ、共通垂線vc に垂直な平面を平面SH とし、その平面SH と共通垂線vc との交点をCs とすれば、相対回転軸SはCs を通る直線となっていて、相対回転軸Sの位置は次のように決定することができる。
2軸I(ω10),II(ω20)の平面SH への正射影をそれぞれIs (ω10”),IIs (ω20”)とし、共通垂線vc の正方向から負方向に向かって平面SH を見たとき、IS のIIS に対する角をΩとすれば、ω20×ω10の定義により、Is はIIs に対し、0≦Ω≦π(反時計方向が正)の領域にある。平面SH 上で相対回転軸S(ωr )のIIs に対する角をΩS (反時計方向が正)とすれば、相対回転軸の定義(ωr =ω10−ω20)により、ω10”,ω20”の平面SH 上の相対回転軸に直交する成分が等しくなければならないから、Ωs は次式(26)、すなわち、
sinΩs / sin(Ωs −Ω)=ω10/ω20
または、
sinΓs / sin(Σ−Γs )=ω10/ω20 ・・・(26)
となる。ここで、Σ =π−Ω(軸角)、Γs =π−Ωs である。ただし、いずれも図示の方向に正である。
共通垂線vc 上のCs の位置は次のようにして求められる。図8は、点Cs の相対速度Vs (ベクトル)を示している。仮定により共通垂線vc に関してC1 がC2 の下にあり、かつ、ω10≧ω20であるから、CS はC2 の下にある。点Cs における歯車I,IIの周速度をVs1,Vs2(いずれもベクトル)とすれば、相対速度Vs =Vs1−Vs2 は相対回転軸S上にあるから、Vs1,Vs2(平面SH 上にある)の相対回転軸に直交する成分が常に等しくなければならない。したがって、点Cs における相対速度Vs =Vs1−Vs2は、相対回転軸Sの位置(Γs )によって、平面SH 上で同図に示すようになり、C2 とCs との距離C2 とCs は、次式(27)、すなわち、
2 s =E tanΓs /{ tan(Σ−Γs )+ tanΓs } ・・・(27)
で求められる。この式は0≦Γs ≦πの範囲で成り立つが、Cs の位置はΓs と共に変化し、0≦Γs ≦π/2のときはC1 より上、π/2≦Γs ≦πのときはC1 より下となっている。
10.2 座標系Cs の定義
前記式(26),(27)によって相対回転軸Sを静止空間に決定することができるから、座標系CS を図7に示すように定義する。座標系CS (uc ,vc ,zc )は、Cs を原点とし、有向共通垂線vc をvc 軸、相対回転軸Sをzc 軸(ωr の方向が正)、そして、両軸に垂直に右手系となるようにとられたuc 軸によって構成される。対象歯車対は定角速度比の運動を伝達することが仮定されているから、座標系Cs は静止空間に固定された座標系となり、先に定義された座標系C1 ,C2 およびその派生座標系と共に、定角速度比の運動伝達を行う歯車対を扱う場合における基本座標系である。
10.3 座標系Cs ,C1 ,C2 の関係
点C1 ,C2 を座標系Cs を用いて、C1 (0,vcs1 ,0),C2 (0,vcs2 ,0)と表せば、vcs1 ,vcs2 は、次式(29)のようになる。すなわち、
Figure 0003733908
となる。
c 軸に関してC2 は常にCs の上にあることに注意すれば、vcs1 ,vcs2およびΣ,Γs とによって、座標系Cs と、座標系C1 ,C2 の関係は次式(30),(31)のようになる。すなわち、
1c=uc cos(Σ−Γs ) +zc sin(Σ−Γs )
1c=vc −vcs1
1c=−uc sin(Σ−Γs ) +zc cos(Σ−Γs ) ・・・(30)
2c=−uc cos Γs +zc sin Γs
2c=vc −vcs2
2c=−uc sin Γs −zc cos Γs ・・・(31)
となる。座標系Cs と、座標系C1 ,C2 の関係は、図9に概念的に示されている。
11.座標系Cs による接触点の軌跡g0 の定義
11.1 相対速度と接触点の軌跡g0 との関係
10は、与えられた接触点の軌跡g0 とそのg0 上の任意点Pにおける相対速度Vrs(ベクトル)との関係を示している。なお、図中の「′」,「”」は、点またはベクトルの対象平面への正射影であることを示している。歯面が接触点の軌跡g0 上の任意点Pで接触しているとき、相対回転軸S上の任意点からのPの位置ベクトルをrとすれば、点Pにおける相対速度Vrsは次式(32)で表わすことができる。すなわち、
rs=ωr ×r+Vs ・・・(32)
ここで、
ωr =ω10−ω20
ωr =ω20 sinΣ/sin(Σ−Γs ) =ω10 sinΣ/ sinΓs
s =ω10×〔C1 s 〕−ω20×〔C2 s
s =ω20E sinΓs =ω10Esin(Σ−Γs )
である。ただし、〔C1 s 〕はC1 を始点、Cs を終点とするベクトルを表し、〔C2 s 〕はC2 を始点、Cs を終点とするベクトルを表している。
相対速度Vrsは相対回転軸Sを軸とする円筒面の接平面上にあって、この接平面上におけるVs に対する傾き角ψは次式(33)で表わすことができる。すなわち、
cosψ=|Vs |/|Vrs| ・・・(33)
となる。接触点の軌跡g0 は接触点における歯面の共通法線でもあるから、g0 は相対速度Vrsと点Pにおいて直交している。すなわち、
rs・g0 =0
である。したがって、g0 は点PにおけるVrsに垂直な平面N上の有向直線になっている。平面Nと平面SH との交線をHn とするとき、Hn は一般には相対回転軸Sに交わる直線となり、g0 は交点が無限遠であることを含めれば必ずHn を通ることになる。g0 と平面SH との交点をP0 とすれば、P0 は交線Hn 上にあって、g0 およびP0 は歯車対の種類に応じて次のようになる。
(1) 円筒歯車またはかさ歯車の場合(Σ=0,πまたはE=0)
s =0であるから、Vrsは単に相対回転軸S周りの周速度を意味する。したがって、平面NはS軸を含むから、Hn はSに一致し、接触点の軌跡g0 は必ず相対回転軸Sを通ることになる。すなわち、点P0 は相対回転軸S上にあるのである。したがって、これらの歯車対では、接触点の軌跡g0 は相対回転軸上の任意点P0 を通る任意の有向直線となっている。
(2) 上記以外の歯車の場合(Σ≠0,πまたはE≠0)
ハイポイドギヤ、ねじ歯車またはウォ−ムギヤの場合であり、接触点Pをある位置に選ぶと、その点Pに固有の相対速度Vrs,平面N,直線Hn が決定される。接触点の軌跡g0 はHn 上の任意点P0 を通る直線になっていて、一般には相対回転軸Sを通らない。点Pは任意であるから、g0 は平面SH との交点P0 における相対速度Vrs0 に垂直な平面上の点P0 を通る任意の有向直線でもある。すなわち、前記式(32)は次のように表すことができるのである。すなわち、
rs=Vrs0 +ωr ×〔P0 P〕・g0
ただし、〔P0 P〕は、P0 を始点、Pを終点とするベクトルを表している。したがって、Vrs0 ・g0 =0ならば、Vrs・g0 =0となり、g0 上の任意点Pは接触点である。
11.2 設計基準点の選択
2軸の位置関係と角速度とが与えられた歯車対において、接触点の軌跡g0 が同じ歯車対は同じ歯形曲線をもち、そのどの部分を有効部分とするかの差しかない。したがって、歯車対の設計においては接触点の軌跡g0 を2軸によってきまる静止空間のどこに配置するかが重要であって、設計基準点は接触点の軌跡g0を静止空間に定義するための点にすぎないから、接触点の軌跡g0 上のどこに選んでも本質的な差はない。任意の接触点の軌跡g0 を与えたとき、g0 は交点が無限遠であることも含めて必ず平面SH と交わるから、逆にこの交点を設計基準点としても一般性を失わない。そこで、本実施形態においては、平面SH (円筒歯車、かさ歯車の場合は相対回転軸)上の任意点P0 を設計基準点として与えるものとする。
図11は、設計基準点P0 および接触点の軌跡g0 を座標系Cs を用いて示したものである。座標系Cs によって表示された設計基準点をP0 (uc0,vc0,zc0)とすれば、各座標値は、
c0=Os 0
c0=0
c0=Cs s
と表わすことができる。ただし、円筒歯車、かさ歯車の場合はuc0=0である。また、点Os は設計基準点P0 を通り相対回転軸Sに垂直な平面Ss と相対回転軸Sとの交点である。
11.3 接触点の軌跡g0 の傾き角の定義
点P0 における相対速度Vrs0 は前記式(32)を用いて、
rs0 =ωr ×〔uc0〕+Vs
となる。ここで、〔uc0〕は、Os を始点、P0 を終点とするベクトルを表している。点P0 において相対回転軸Sに平行で、かつ、平面SH に垂直な平面(uc =uc0)をSp とすれば、Vrs0 は平面Sp 上にあって、Vrs0 の平面SH (vc =0)からの傾き角ψ0 は、前記式(33)を用いて、
Figure 0003733908
で表される。ただし、ψ0 はuc0≧0のとき正とし、図10にその方向が示されている。
点P0 を通ってVrs0 に垂直な平面をSn とすれば、平面Sn は平面Ss に大してψ0 だけ傾いた平面になっていて、接触点の軌跡g0 は点P0 を通り平面Sn 上にある任意の有向直線になっている。したがって、g0 の座標系Cs 上における傾き角は、平面Sn の平面Ss (またはvc 軸)からの傾き角ψ0 と、平面Sn 上における平面Sp からの傾き角φn0とによって定義することができ、これをg0 (ψ0 ,φn0) と表わすことにする。φn0は図11に示す方向を正としている。
11.4.座標系Cs によるg0 の定義
図9は、座標系Cs と平面SH ,Ss ,Sp ,Sn およびP0 ,g0 (ψ0 ,φn0)との関係を示したものである。ここで定義された平面SH は従来の理論では、円筒歯車の場合のピッチ平面、かさ歯車の場合の軸平面に対応している。平面Ss は正面であり、平面Sp は円筒歯車の軸平面、かさ歯車のピッチ平面に対応している。また、平面Sn は一般の歯車に拡張された歯直角平面であり、φn0,ψ0 もまた一般の歯車に拡張された歯直角圧力角、ねじれ角と考えることができる。これらの平面によって、一般の歯車対の圧力角やねじれ角が、接触点の共通法線(この場合はg0 )の各平面に対する傾き角として静止空間に対して統一的ただし、ここで定義された平面Sn ,φn0,ψ0 は従来理論のかさ歯車の場合に一致し、他の歯車の場合のそれとは異なる。これは従来理論が、個々の歯車のピッチ平面を基準とし、それは歯車の種類によって静止空間に対して変化するからである。従来の理論では、基準となるピッチ回転体(円筒あるいは円錐)を決めれば、このピッチ回転体に任意の曲面を歯面として固定し、相手歯面を創成すればよく、与える歯面(接触点の軌跡とその法線)に製作上の制限以外に条件はなかったから、むしろP0 の選択(ピッチ回転体の議論)に重点があり、g0 (すなわちg0 を実現する歯面)をどう設計するかの議論は歯面が存在するかどうか以外には殆どなされなかった。歯車対の設計において軸受荷重変動0を実現するためには、P0 の選択よりもg0 の設計が重要である。
軸角ΣとオフセットEおよび角速度の方向とが与えられた歯車対では、接触点の軌跡g0 は一般には設計基準点P0 (uc0,vc0,zc0)と傾き角g0 (ψ0 ,φn0)との5個の独立変数によって座標系Cs で定義できる。本実施形態においては、設計の条件として角速度比i0 およびvc0=0が与えられるから、接触点の軌跡g0 の独立変数は3個になる。すなわち、円筒歯車の場合には、zc0が実質的な意味を持たないから、(zc0),φn0,ψ0 の2個、かさ歯車の場合には、zc0,φn0,ψ0 の3個、ハイポイドギヤやウォームギヤ,ねじ歯車の場合には、zc0,φn0,ψ0 (またはuc0)の3個の独立変数の選択によって静止空間に決定することになる。点P0 を与えたとき、ハイポイドギヤやウォ−ムギヤの場合には、ψ0 は同時に決定され、φn0だけが自由に選べる変数であるが、円筒歯車やかさ歯車の場合には、P0 を相対回転軸上に選ぶから、ψ0 もφn0も自由に選べる変数になっている。
12.接触点の軌跡g0 の座標系O2 ,O1 への変換
12.1 座標系O2 ,Oq2,O1 ,Oq1の定義
図12は、接触点の軌跡g0 を座標系O2 ,Oq2,O1 ,Oq1によって示したものである。座標系O2 (u2 ,v2 ,z2 ),Oq2(q2 ,vq2,z2 )は、設計基準点P0 を通る歯車II軸の軸直角平面Z20とII軸との交点O2 を原点とする座標系であり、座標系C2 ,Cq2をz2c軸方向にC2 2 だけ平行移動したものである。全く同様に座標系O1 (u1 ,v1 ,z1 ),Oq1(q1 ,vq1,z1 )は、点P0 を通る歯車I軸の軸直平面Z10とI軸との交点O1 を原点とする座標系であり、座標系C1 とCq1とをz1c軸方向にC1 1 だけ平行移動したものである。
12.2 接触点の軌跡の座標の変換式
座標系C2 とO2 ,Cq2とOq2,O2 とOq2との関係は、次のようになる。
(1) 座標系C2 とO2
2 =u2c
2 =v2c
2 =z2c−z2c0
ここで、z2c0 =Cs 2s=−(uc0 sinΓs +zc0 cosΓs
(2) 座標系Cq2とOq2
2 =q2c
q2=vq2c
2 =z2c−z2c0
ここで、z2c0 =Cs 2s=−(uc0 sinΓs +zc0 cosΓs
(3) 座標系O2 とOq2(z2 は共通)
2 =q2 cos χ2 +Rb2 sinχ2
2 =q2 sin χ2 −Rb2 cosχ2
χ2 =π/2−φ2
以上となる。
全く同様にして座標系C1 とO1 ,Cq1とOq1,O1 とOq1との関係は、次のようになる。
(4) 座標系C1 とO1
1 =u1c
1 =v1c
1 =z1c−z1c0
ここで、z1c0 =Cs 1s=−uc0sin(Σ−Γs ) +zc0cos(Σ−Γs )
(5) 座標系Cq1とOq1
1 =q1c
q1=vq1c
1 =z1c−z1c0
ここで、z1c0 =Cs 1s=−uc0sin(Σ−Γs ) +zc0cos(Σ−Γs )
(6) 座標系O1 とOq1(z1 は共通)
1 =q1 cos χ1 +Rb1 sinχ1
1 =q1 sin χ1 −Rb1 cosχ1
χ1 =π/2−φ1
(7) 座標系O1 とO2 との関係は、
1 =−u2 cos Σ−(z2 +z2c0 )sin Σ
1 =v2 +E
1 =u2 sin Σ−(z2 +z2c0 )cos Σ−z1c0
以上となる。
12.3 接触点の軌跡の傾き角の変換式
0 を含み歯車軸IIに平行な平面を作用面G20とすれば、座標系O2 上におけるg0 の傾き角は、作用面G20のv2 軸からの傾き角φ20(χ20の余角)と作用面G20上のq2 軸からの傾き角ψb20 とによってg0 (φ20,ψb20 )と表わすことができる。全く同様にして作用面G10を定義し、g0 の傾き角を座標系O1 によってg0 (φ10,ψb10 )と表わすことができる。
図13は、g0 (ψ0 ,φn0)とg0 (φ10,ψb10 )とg0 (φ20,ψb20 )との関係を示したものである。歯車対の回転によって、接触点が接触点の軌跡g0 上をP0 からPに移動したものとし、変位P0 P=Lg (θ2 >0のとき正)とすれば、座標系Cs の各軸方向成分は、
uc=−Lg sin φn0 (Luc:Lg のuc 方向成分)
vc=Lg cos φn0 cosψ0 (Lvc:Lg のvc 方向成分)
zc=Lg cos φn0 sinψ0 (Lzc:Lg のzc 方向成分)
と表わすことができる。
座標系O2 の各軸方向成分は、前記式(31)を用いて、座標系Cs の各軸方向成分によって、
Lu2=−Luc cosΓs +Lzc sinΓs (Lu2:Lg のu2 方向成分)
Lv2=Lvc (Lv2:Lg のv2 方向成分)
Lz2=−Luc sinΓs −Lzc cosΓs (Lz2:Lg のz2 方向成分)
と表わされる。
したがって、g0 (φ20,ψb20 )は、
Figure 0003733908
のようになる。全く同様にしてg0 (φ10,ψb10 )は、
Figure 0003733908
のようになる。式(35),(36),(37),(38)によって、g0 (ψ0 ,φn0)とg0 (φ10,ψb10 )とg0 (φ20,ψb20 )との関係が定まる。実際には上式はφn0,ψ0 以外の変数を与える場合には使いにくいので、g0 (φ10,ψb10 )とg0 (φ20,ψb20 )とを与えた場合の関係式を以下に求めておく。
(1) g0 (φ20,ψb20 )からg0 (ψ0 ,φn0)とg0 (φ10,ψb10 )とを求める関係式
Figure 0003733908
(2) g0 (φ10,ψb10 )からg0 (ψ0 ,φn0) とg0 (φ20,ψb20 )とを求める関係式は、
Figure 0003733908
以上である。
12.4 接触点の軌跡g0 の座標系O2 による表示
次に座標系O2 による接触点の軌跡の方程式について説明する。図14は、接触点の軌跡g0 および対応する歯形曲線IIを示している。θ2 =0のとき、設計基準点P0 で接触し、そのときの接平面をW0 (同図では作用面との交線で表す)とする。歯車IIがθ2 だけ回転した後、接触点はP、接平面はWに移動しているものとする。
(1) 設計基準点P0
設計基準点は座標系Cs によりP0 (uc0,0,zc0) で与えられている。ただし、zc0≧0とし、特に円筒歯車やかさ歯車の場合はuc0=0とする。したがって、座標系O2 により表示された設計基準点をP0 (u2p0 ,−vcs2 ,0)とすれば、式(31)を用いて、u2P0 は、
2p0 =O2s0 =−uc0 cosΓs +zc0 sinΓs ・・・(47)
となる。g0 (φ20,ψb20 )は前記式(35),(36)によって与えられるから、P0 (u2p0 ,−vcs2 ,0)を座標系Oq2に変換し、P0 (q2p0 ,−Rb20 ,0)で表わせば、q2p0 ,Rb20 は、
2p0 =u2p0 cos χ20−vcs2 sin χ20
b20 =u2p0 sin χ20+vcs2 cos χ20
χ20=π/2−φ20 ・・・(48)
となる。
(2) 接触点の軌跡g0 の方程式
前記式(25)を座標系O2 ,Oq2に変換し、その変換後の式(25)に式(48)を代入すれば、接触点の軌跡g0 の方程式は回転角θ2 における接触点Pの座標として、座標系O2 によって次のようになる。ただし、θ2 =0のとき、設計基準点P0 で接触している。すなわち、
2 ( θ2 ) =Rb20 θ2 cos 2 ψb20 +q2p0
2 ( θ2 ) =q2 ( θ2 ) cosχ20+Rb20 sin χ20
2 ( θ2 ) =q2 ( θ2 ) sinχ20−Rb20 cos χ20
2 ( θ2 ) =Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20 ・・・(49)
となる。
12.5 接触点の軌跡g0 の座標系O1 による表示
図15は、接触点の軌跡g0 および対応する歯形曲線Iを示している。g0 (φ10,ψb10 )は前記式(37),(38)によって与えられるから、座標系O2 の場合と全く同様にして、設計基準点P0 (uc0,0,zc0)を座標系O1 ,Oq1に変換し、P0 (u1p0 ,−vcs1 ,0),P0 (q1p0 ,−Rb10 ,0)で表せば、前記式(30)を用いて、u1p0 ,q1p0 ,Rb10 は、
Figure 0003733908
となる。
したがって、接触点の軌跡g0 の方程式は、前記式(25)を座標系O1 ,Oq1およびθ1 で表せば、
θ1 =i0 θ2 (θ2 =0の時、θ1 =0)
1 ( θ1 ) =Rb10 θ1 cos 2 ψb10 +q1p0
1 ( θ1 ) =q1 ( θ1 )cosχ10+Rb10 sinχ10
1 ( θ1 ) =q1 ( θ1 )sinχ10−Rb10 cosχ10
1 ( θ1 ) =Rb10 θ1 cos ψb10 sin ψb10 ・・・(49−1)
となる。接触点の軌跡g0 が静止空間に固定された直線として与えられ、しかも、角速度比が一定であるから、接触点の軌跡の方程式は2軸の位置関係によらず、全く同じ形で表現できることになる。
13.歯形曲線の方程式
13.1 歯形曲線IIの方程式
図14に、歯形曲線IIを歯車IIと共にθ2 で回転する座標系Or2(ur2,vr2,zr2)で示している。座標系Or2は座標系O2 に対して原点O2 およびz2 軸を共有し、θ2 =0のとき一致しているものとする。接触点の軌跡g0 は前記式(49)によって与えられるから、回転座標系Or2で表わした歯形曲線IIの方程式は、
χr2=χ20−θ2 =π/2−φ20−θ2
r2=q2 ( θ2 )cosχr2+Rb20 sin χr2
r2=q2 ( θ2 )sinχr2−Rb20 cos χr2
r2=Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20 ・・・(50)
となる。
13.2 歯形曲線Iの方程式
図15は、歯形曲線Iを座標系O1 および歯車Iと共にθ1 で回転する座標系Or1(ur1,vr1,zr1)で示したものである。座標系Or1は座標系O1 に対して原点O1 およびz1 軸を共有し、θ1 =0のとき一致しているものとする。接触点の軌跡g0 は前記式(49−1)によって与えられているから、回転座標系Or1で表わした歯形曲線Iの方程式は、
χr1=χ10−θ1 =π/2−φ10−θ1
r1=q1 ( θ1 )cosχr1+Rb10 sin χr1
r1=q1 ( θ1 )sinχr1-b10 cos χr1
r1=Rb10 θ1 cos ψb10 sin ψb10 ・・・(53)
となる。
次に、決定された歯形曲線から歯面を決定する具体的方法を図面に基づいて詳細に説明する。
14.対象歯車対の定義
対象とするインボリュート歯車対は次のように定義されているものとする。接触点の軌跡g0 に対応する歯形曲線をそれぞれ歯形曲線I,IIとするとき、歯面IIとして歯形曲線IIを含むインボリュートヘリコイドを与え、歯面IIによって定角速度比i0 で創成された曲面を歯面I(したがって、歯形曲線Iを含む)とする。このように定義されたインボリュート歯車対の歯面を修整して歯形曲線I,IIに沿って接触させれば、軸受荷重変動は0となるから、動力伝達用歯車対としては荷重変動の点から最も有利な歯車対となる。そこで、以下、インボリュート歯車対の関係式、すなわち、インボリュートヘリコイドとその接触領域、共役歯面Iの方程式を説明する。
15.インボリュートヘリコイド(歯面II)の方程式
15.1 作用面G20の方程式
16は、前記式(25)によって与えられた設計基準点P0 および接触点の軌跡g0 を含む作用面G20(傾き角χ20=π/2−φ20)を座標系O2 ,Oq2によって示したものである。点P0 における接平面W0 とG20との交線が直線w0 で表されている。歯車IIがθ2 だけ回転したとき、接触点P0 はPに、w0 はwに移動したものとする。
インボリュートヘリコイドの定義によりw上の任意点の歯面法線nは作用平面G20上にあって、しかもそのq2 軸からの傾き角ψb20 は一定であるから、wは0 上の点Pを通りg0 に直交する直線になっている。したがって、インボリュートヘリコイドは、歯車IIの回転(回転角θ2 )と共にG20上をq2 軸方向にRb20 θ2 だけ平行移動する交線wが、歯車IIに固定された回転する空間(座標系Or2)上に描く軌跡面と定義できる。そこで、直線w上の任意点をQとし、点Qを座標系Or2で表わせば、求めるインボリュートヘリコイドはQの集合として表わすことができる。
w上の任意点Qを通り、wに垂直な作用面G20上の有向直線をn(g0 と同方向を正)とし、nとw0 との交点をQ0 とすれば、座標系Oq2によって表示された点Q0 (q20,−Rb20 ,z20)は次のようになる。
20=q2p0 −z20 tanψb20
したがって、点Qを座標系Oq2によって表せば、Q(q2 ,−Rb20 ,z2 )は、
2 ( θ2 ,z20 )=Rb20 θ2 cos 2 ψb20 +q20
=Rb20 θ2 cos 2 ψb20 +q2p0 −z20 tanψb20
2 ( θ2 ,z20 )=Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20 +z20
となる。さらに点Qを座標系O2 によって表わせば、Q(u2 ,v2 ,z2 )は、
2 ( θ2 ,z20 )=Rb20 θ2 cos 2 ψb20 +q2p0 −z20 tanψb20
2 ( θ2 ,z20 )=q2 ( θ2 ,z20)cosχ20+Rb20 sin χ20
2 ( θ2 ,z20 )=q2 ( θ2 ,z20)sinχ20−Rb20 cos χ20
2 ( θ2 ,z20 )=Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20 +z20 ・・・(54)
となる。この式(54)が座標系O2 によって表わしたθ2 とz20とをパラメータとする作用面G20の方程式であり、θ2 を固定すれば、接平面Wと作用面G20との交線wを、z20を固定すれば作用面上の有向直線nを表わすことになる。接触点の軌跡g0 は点P0 を通る有向直線nでもあるから、z20=0と置けば前記(49)が求められる。
15.2 インボリュートヘリコイドの方程式
図16における直線wを歯車IIと共に回転する座標系に変換すれば、直線wの軌跡はインボリュートヘリコイド(基礎円筒半径Rb20 、ねじれ角ψb20 )を描くから、これを歯面IIとして与えるものとする。この時、点Qにおける有向直線nは歯面法線nになる。
図17は、回転角θ2 における直線wを通るインボリュートヘリコイド(歯面II)上の任意点Pm を座標系O2 上で示したものである。歯面IIがwからさらにξ2 だけ回転したとき、wはwm にきているとすれば、wm とnとの交点Qm は、
Figure 0003733908
と表すことができる。
回転座標系Or2m を回転角θ2 のとき座標系O2 に一致し、z2 軸回りにξ2 だけ回転する座標系とすれば、座標系Or2m によってQm (ur2m ,vr2m ,zr2m )は、
Figure 0003733908
と表わすことができる。
座標系Or2m をξ2 だけθ2 の逆方向に回転させて座標系O2 に重ねれば、Qm はPm に移動する。座標系Or2m 上の点Qm が座標系O2 上の点Pm であり、両者は同じ座標値であるから、点Pm を座標系O2 によって表示すれば、Pm (u2m,v2m,z2m)は、
Figure 0003733908
となる。この式(55)が任意の回転角θ2 における接触点の軌跡g0 上の点Pを通るインボリュートヘリコイド(歯面II)のz20とξ2 とをパラメータとする、座標系O2 による方程式である。θ2 =0とすれば、設計基準点P0 を通る歯面IIとなり、さらにz20=0とすれば、式(50)、すなわち点P0 を通る歯形曲線IIとなる。または、この式(55)は、作用面G20上の点Qm をξ2 だけθ2 の逆方向に回転させた平面G2m上の点Pm の座標系O2 による方程式と考えることができ、点Pを通るインボリュートヘリコイドを座標系O2 上で考えるときには、この方が考えやすい。
16.接触線と接触領域
歯面IIが前記式(55)によって与えられている時、点Pを通る接触線は、θ2 を固定したときの接触の条件式を満たすz20とξ2 との組合せであるから、ξ2 をパラメータとして次のように求められる。
16.1 接触点の共通法線nm (Pm0m
図18は、接触点Pm における接触線PPm および共通法線nm (Pm0m )を示したものである。歯車IIがθ2 だけ回転し、接触点は接触点の軌跡g0 上の点Pにあるものとする。歯面II上にP以外の接触点Pm をとり、その相対速度をVrsm 、その共通法線をnm (|nm |=1)とする。nm と平面SH との交点をPm0、点Pm0の相対速度をVrsm0とすれば、Pm は接触点であるから次の関係式、
Figure 0003733908
が成り立つ。ここで、〔Pm0m 〕は、Pm0を始点、Pm を終点とするベクトルを表している。
相対速度Vrsm0はPm0を通り平面Sp に平行な平面Spm上にあるから、平面Spm上で平面SH に対する傾き角をψm0とする。点Pm0を通りVrsm0に垂直な平面をSnmとすれば、平面Snmはnm (Pm0m )を含むから、点Pm の歯直角平面(ねじれ角ψm0)となっている。一方、接触点Pm およびその共通法線nm は、P0 を通る作用面G20からξ2 だけ傾いた平面G2m上にあるから、座標系O2 で表したnm の傾き角はnm (φ20+ξ2 ,ψb20 )で与えられる。共通法線nm は平面SnmとG2mとの交線上にあることから、座標系Cs と座標系O2 の間の傾き角の変換式(40)を用いれば、平面Snmのねじれ角ψm0を、
tanψm0=tan(φ20+ξ2 )sinΓs − tanψb20 cos Γs /cos(φ20+ξ2 )
と表すことができる。点Pm0の位置を座標系Cs を用いてPm0(ucm0 ,0,zcm0 )とすれば、ψm0とucm0 との関係式(34)から、
cm0 =Om m0=E tanψm0sin(Σ−Γs )sinΓs / sinΣ
cm0 =Cs m ・・・(56)
を得る。
点Pm0を座標系Cs から座標系O2 に変換して、Pm0(u2m0 ,−vcs2 ,z2m0 )で表せば、
2m0 =−ucm0 cos Γs +zcm0 sin Γs
cs2 =E tanΓs /{tan(Σ−Γs )+ tanΓs
2m0 =−ucm0 sin Γs −zcm0 cos Γs −z2cs
2c0 =−uc0 sinΓs −zc0 cosΓs ・・・(57)
となる。ここで、uc0,zc0は、設計基準点P0 のuc ,zc 座標値である。
この式(57)からzcm0 を消去すれば、
2m0 cos Γs +(z2m0 +z2cs )sin Γs =−ucm0 ・・・(58)
を得る。この式(58)が接触点の共通法線nm の平面SH 上の軌跡P0 m0を示している。Pm0は、軌跡P0 m0(前記式(58))と、作用面G2mと平面SH との交線Hg2m との交点であるから、座標系O2 によってξ2 をパラメータとして、
2m0 =Rb20 /cos(φ20+ξ2 ) −vcs2 tan(φ20+ξ2 )
cs2 =E tanΓs /{tan(Σ−Γs ) + tanΓs
2m0 =−z2c0 −(u2m0 cos Γs +ucm0 )/ sinΓs ・・・(59)
と表すことができる。点Pm0を、座標系Oq2を用いてPm0(q2m0 ,−Rb20 ,z2m0 )で表せば、q2m0 は、
2m0 =u2m0 cos χ2m−vcs2 sin χ2m
χ2m=π/2−φ20−ξ2 =χ20−ξ2
となる。これらの式によって共通法線nm を、点Pm0を通り、傾き角がnm (φ20+ξ2 ,ψb20 )の有向直線として、ξ2 をパラメータとして作用面G2m上に表すことができる。
16.2 接触線と接触領域の方程式
図19は、点Qm0(Pm0),Qm (Pm ),Qと点Pとの関係を作用面G20上で示したものである。Pm0,Pm を回転座標系Or2m で表わすと、作用面G2mは位相差ξ2 だけ回転して、作用面G20に重なり、nm はnに、Pm0はQm0に、Pm はQm に移動する。歯面IIと作用面G20との交線をwとし、wとnとの交点をQとすれば、座標系Oq2を用いて、既知点Qm0(q2m0 ,−Rb20 ,z2m0 ),P(q2p,−Rb20 ,z2p)と未知点Q{q2 ( θ2 ,ξ2 ) ,−Rb20 ,z2( θ2 ,ξ2 ) }との間には次の関係、
Figure 0003733908
が成り立つ。したがって、点Qは座標系Oq2を用いて、
Figure 0003733908
ここに、q2p=q2p0 +Rb20 θ2 cos 2 ψb20
2p=Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20
と表すことができる。点Qm はξ2 をパラメータとして座標系Oq2を用いて、
2m( θ2 ,ξ2 ) =q2 ( θ2 ,ξ2 ) +Rb20 ξ2 cos 2 ψb20
2m( θ2 ,ξ2 ) =z2 ( θ2 ,ξ2 ) +Rb20 ξ2 cos ψb20 sin ψb20
と表わすことができる。したがって、座標系O2 によって接触点Pm をPm (u2m,v2m,z2m)で表わせば、各座標値は前記式(55)を用い、ξ2 をパラメータとして、
Figure 0003733908
となる。
この式(61)が任意の回転角θ2 におけるξ2 をパラメータとする接触線(PPm )の座標系O2 による方程式である。ここで、前記式(55)のパラメータz20は接触の条件式からξ2 の関数になっている。したがって、θ2 を変化させることによって、接触線の集合として接触領域を表わすことができる。また、前記式(61)は任意のξ2 におけるθ2 をパラメータとする共通法線nm (Pm0m )の方程式であり、ξ2 を変化させることによって共通法線nm の集合として接触領域を表わしていると考えることもできる。歯面IIとしてインボリュートヘリコイドを用いれば、接触領域は、作用面上のねじれ角ψb20 の有向直線(Pm0m )が歯車II軸方向変位と共にその傾き角φ20+ξ2 を変化させることによって描くねじれた曲面になっている。
17.歯面IIによって創成される歯面Iの方程式
図20は、接触点Pm および共通法線nm (Pm0m )を座標系O1 とOq1で示したものである。前記式(61)で与えられる接触点Pm を座標系O1 ,Oq1で表わし、座標系Or1に変換すれば歯面Iを表わすことになる。点Pm は前記式(61)でPm (u2m,v2m,z2m)として与えられるから、点Pm を座標系O1 上でPm (u1m,v1m,z1m) と表わせば、座標系O2 とO1 との座標変換式によって、各座標値は、
1m=−u2m cosΣ−(z2m+z2c0 )sin Σ
1m=v2m+E
1m=u2m sinΣ−(z2m+z2c0 )cos Σ−z1c0
10=−uc0 sin(Σ−Γs )+zc0 cos(Σ−Γs
と表わすことができる。共通法線nm の傾き角はnm (φ20+ξ2 ,ψb20 )で与えられるから、座標系O2 とO1 との傾き角の変換式である前記式(41)、(42)を用いて、nm (φ1m,ψb1m )を、
Figure 0003733908
と求めることができる。
共通法線nm を含む作用面をG1mとし、座標系Oq1で点Pm をPm (q1m,−Rb1m ,z1m)と表わせば、座標系O1 とOq1との変換式である前記式(52)を用いて、
1m=u1m cosχ1m+v1m sinχ1m
b1m =u1m sinχ1m−v1m cosχ1m
χ1m=π/2−φ1m
となる。点Pm を座標系Or1に変換すれば、共役な歯面Iは、
θ1 =i0 θ2 (θ2 =0の時、θ1 =0)
χr1m =π/2−φ1m−θ1
r1m =q1m cosχr1m +Rb1m sin χr1m
r1m =q1m sinχr1m −Rb1m cos χr1m
r1m =z1m ・・・(62)
と表すことができる。
18.同一インボリュートヘリコイドを一方の歯面とする歯車対の群(インボリュート歯車群)
歯車II軸と歯面IIとして同一インボリュートヘリコイド(基礎円半径Rb20 、ねじれ角ψb20 )およびこの歯面上に点P0 (半径R20)が与えられているものとする。座標系O2 によって、点P0 およびその法線n0 は、
0 (u2p0 ,v2p0 ,0)
0 (φ20, ψb20
φ20+ε20= cos-1( Rb20 /R20 )
ε20= tan-1( v2p0 /u2p0 )
20=√(u2p0 2 +v2p0 2
と表すことができる。本実施形態においては、P0 は平面SH 上に選ばれ、v2p0 =−vcs2 となるから、軸角Σと角速度比i0 (または相対回転軸の軸角Γ s )とを与えれば、Eが求められ、相対回転軸Sおよび相手歯車軸I、すなわち、歯車対が決定される。
図21は、歯車IIを回転させ、点P0 およびその法線n0 を座標系O2 の適当な位置に選択固定し、設計基準点および接触点の軌跡とした場合の、インボリュート歯車群を概念的に描いたものである。また、図中、「S」は、はすば歯車とウォームギヤ(またはねじ歯車)の相対回転軸を示し、「Sb 」は、かさ歯車の相対回転軸を示し、「Shy」は、ハイポイドギヤの相対回転軸を示している。点P0 の位置によってインボリュート歯車群は次のように変化する。
(1) P0 がv2 軸上にあるときには、Σの値によって変化する。
(a) Σ=0またはπのときは、外歯はすば歯車または内歯はすば歯車となる。Γs =0またはπとなり、共役な相手歯面Iもインボリュートヘリコイドとなる。(b) Σ≠0のときは、ウォームギヤまたはねじ歯車となる。ウォームギヤとしてはウォームまたはウォームホイールのいずれかをインボリュートヘリコイドとしたものが実用化されている。特に相手歯面Iにも歯形曲線Iを含むインボリュートヘリコイドを採用した歯車対がインボリュートねじ歯車として使われている。(2) P0 がu2 軸上(P0B)にあるときには、かさ歯車となる。相手歯面にも歯形曲線Iを含むインボリュートヘリコイドを与えたかさ歯車がコニカルギヤとして実用化されている。
(3) P0 が上記以外(P0H)にあるときには、ハイポイドギヤと転位ウォームギヤまたは転位ねじ歯車となる。P0Hが、|ε20|の比較的小さい領域に選ばれれば(図示)、かさ歯車に使いハイポイドギヤを意味し、|ε20|がπ/2の近傍に選ばれれば(P0 付近)、転位ウォームギヤまたは転位ねじ歯車を意味することになる。
B.インボリュートヘリコイドをピニオン歯面とするハイポイドギアの設計
以上、述べてきたように、特開平9−53702号公報において、最も普及している平歯車、はすば歯車などの2軸が平行な歯車から、ハイポイドギアのように2軸が交わらず平行でもない食い違い歯車に関し、その設計方法を統一的に記述する方法が提案された。しかし、特に、食い違い歯車においては、変数の選択によっては、十分な接触領域を得られない場合があった。
以下、食い違い歯車について、有効な噛み合い領域を形成するための変数の選定の方法について説明する。
1.従来の食い違い歯車の設計方法
ここで、食い違い歯車の設計に関し、従来の用いられてきたいくつかの方法について簡単に説明する。
(1) インボリュートフェイスギア
インボリュートフェイスギアは、ピニオンをインボリュート平歯車とし、ギアは円盤の側面(円盤の軸に直交する面)にピニオン歯面と共役の歯面を形成した歯車対である。従来からよく知られ、設計、製作が比較的簡単である軽負荷用として利用されているギアである。平歯車の代わりにはすば歯車を使ったものもあるが、設計製作が難しくなるため平歯車を用いたものに比べて一般的ではない。
(2) スピロイドギア
基準ピニオン円錐(または円筒)を与え、これに接する相手ギア回転体と接触する曲線(ピッチコンタクトローカス)上の相対速度に接する歯筋曲線をピニオン歯筋とし、ギア有効歯面を得るために経験値として軸を含む平面上の圧力角10−30°を与えてピニオン歯面を形成し、相手ギアを創成するものである。しかし、ピニオン歯面は、本発明のインボリュートヘリコイドとは異なり、スクリューヘリコイドになっている。この設計方法においては、ピニオンにインボリュート歯面を採用した場合、ギア比の小さい、すなわちピニオン径の大きいギアに対して、ギアの有効歯面が得られない場合があると考えられる。
(3) グリーソン式ハイポイドギア
グリーソン式ハイポイドギアは、円錐面を使用し、ピニオンもギアも円錐面状に歯を刻んでいる。この方式の諸元決定方法では、ピニオンのねじれ角ψ0p(本発明でいうねじれ角ψ0とは厳密には異なる)をほぼ50°付近に固定して、この付近で経験的に成り立つギア比、オフセット、ギア幅を標準として与えることによって、ほぼ一定した非対称圧力角(例えば14−24°、または10−28°)が成り立つように諸元が与えられる。標準となるギアの形状に対し、いわば幾何学的に相似なギア形状を決定する方法である。したがって、グリーソン方式で推奨する標準から外れたハイポイドギア(例えば高オフセット、ねじれ角の小さいフェースギア)を設計する場合には、経験値がないために、新たに標準から設計をする必要が生じる。
2.対象ハイポイドギア
前述の公報に示された方法により、軸角ΣとオフセットEによって静止空間を、ギア比i0 によって相対速度の場を与えた場合、設計基準点P0 (R20,ψ0 )と点P0 を通る2本の歯面法線g0D(ψ0 ,φn0D ;Cs )とg0C(ψ0 ,φn0C ;Cs )とを与えれば、インボリュートヘリコイド歯面DとCを決定できる。ここで歯面D,Cは、歯車対の正転側歯面、逆転側歯面であり、g0D,g0Cは、それぞれの歯面の法線、すなわち接触点の軌跡である。前述したフェースギアの設計方法では、軸角Σ、オフセットE、ギア比i0 、設計基準点の半径R20またはR10が与えられるが、歯面の接触状態とψ0 ,φn0D ,φn0C の3変数の関係が明確にされていないから、その選択を適切に行うことができず、有効歯面が得られない場合があった。軸角Σ=90°の場合を例にとると、オフセットEが大きく(E/R20>0.25)、ギア比が小さく(i0 =2.5〜5)、ねじれ角ψ0がψ0=35°〜70°の少なくとも一つの場合には、歯幅大端における歯先の尖り、小端における切り下げを不正で、有効な歯面D,Cを形成することができなかった。
本実施形態においては、以下説明するように、インボリュートヘリコイドを一方の歯面とする歯車対の接触領域を求め、これを利用してピニオンとギアによって与えられた噛み合い領域内に有効歯面の存在するψ0 ,φn0D ,φn0C の3変数の選択方法、および後述する等価ラックを利用した歯先尖りや、切り下げのない歯の諸元を決定する。
図22及び以下には、ハイポイドギアの寸法諸元が示されている。
Figure 0003733908
上記のような諸元によって、座標系Cs ,C1 ,C2 が決定している。歯車Iをピニオン、歯車IIをギアとする。以下の説明においては、ピニオンを円筒形状とし、これにインボリュートヘリコイドを与えた場合に、円板上のギアの与えられた大端および小端半径で囲まれる領域内に有効なギア歯面D,Cを得るために、ピニオンのインボリュートヘリコイド面をどのように決定するかについて述べる。
3.等価ラック
本項では、正転側、逆転側歯面D,Cの接触点軌跡g0D,g0Cが設計基準点で交わる2本の有向直線として与えられたとき、2本の接触点の軌跡が作る平面上を移動するラック(等価ラック)に関して説明する。このラックを利用することにより、設計基準点付近で歯車の歯として有効な歯を形成することができる。なお、本項の等価ラックに関する説明は、ハイポイドギアに限らず他の形式のギアについても適用可能である。
3.1 接触点の軌跡g0 ,φn0D ,φn0C
対象とする接触点の軌跡は、前述の公報に従って、次のように与えられるものとする。
(1) 2軸I,IIとその軸角Σ、オフセットE(≧0)と角速度比(ギア比)i0 (≧1、一定)とが与えられ、2軸と共通垂線とによって座標系C1 ,C2 、相対回転軸Sと共通垂線とによって座標系CS が定義され座標系相互間の座標値および有向直線の傾き角の変換が可能になっている。
(2) 軸受荷重変動を0とする接触点の軌跡g0 が、設計基準点P0 (uC0,vC0,zC0;CS )およびその傾き角g0 (ψ0 ,φn0;Cs )によって座標系Cs 上に与えられ、g0 を含む作用面G10,G20を用いて座標系Cq1,Cq2が定義されている。
(3) 設計基準点P0 を通る2軸I,IIの軸直角平面と各歯車軸の交点をO1 ,O2 とするとき、座標系C1 ,Cq1,C2 ,Cq2を原点がO1 ,O2 となるまで各歯車軸方向に平行移動し、座標系O1 ,Oq1,O2 ,Oq2を定義すれば、座標系Oq2,O2 によってg0 上の任意の点P(q2 ,−Rb2,z2 ;Oq2)およびP(u2 ,v2 ,z2 ;O2 )は、前述した式(49)より、
2 ( θ2 ) =Rb20 θ2 cos 2 ψb20 +q2p0
b2( θ2 ) =Rb20
2 ( θ2 ) =Rb20 θ2 cos ψb20 sin ψb20
χ2 ( θ2 ) =χ20=π/2−φ20
2 ( θ2 ) =q2 ( θ2 ) cosχ20+Rb20 sin χ20
2 ( θ2 ) =q2 ( θ2 ) sinχ20−Rb20 cos χ20 ・・・(63)
ここで θ2 :歯車IIの回転角
P(q2 ,−Rb2,z2 ;Oq2):点Pの座標系Cq2表示
0 (φ20,ψb20 ;O2 ):g0 の傾き角の座標系O2 表示
と表すことができる。
(4) 点Pおよびg0 の傾き角を座標系O1 ,Oq1に変換すれば、
P{q1 ( θ1 ) ,−Rb10 ( θ1 ) ,z1 ( θ1 ) ;Oq1
0 (φ10,ψb10 ;O1 ) ・・・(64)
ただし、θ1 =i0 θ2
と表すことができる。
(5) 正転側と逆転側の接触点の軌跡は点P0 で交わり、しかも点P0 付近で切り下げや干渉を起こさない2本の有向直線として与えられるものとする。前述のように、正転側、逆転側の接触点の軌跡の座標系Cs による表示を、それぞれ正転側g0D(ψ0 ,φn0D ;Cs )、逆転側g0C(ψ0 ,φn0C ;Cs )とする。
3.2 限界軌跡gt の定義(平面Sn が、共通垂線を含まない場合)
図23は、ハイポイドギアの平面SH ,Sp ,Sn そして点P0 における速度V10,V20の作る平面St の関係を概念的に示したものである。ここで、平面SH は座標系Cs のvc =0平面、平面Sp はuc =uc0平面、平面Sn はP0 における相対速度Vrs0 に垂直な平面である。
設計基準点P0 は平面SH 上にあるから、相対速度Vrs0 は平面Sp 上にある。一方平面St もVrs0 を含むから、平面St と平面Sp とは相対速度Vrs0 を交線として交わっている。また、平面St と平面Sn とは、直交していて、平面St 上の法線速度Vgt0 をその交線gt (Vgt0 の方向に正)としている。すなわち平面St は、平面Sp をVrs0 を軸として平面Sn 上でφntだけ回転した平面で、従来のピッチ平面に相当している。
平面Sn と歯車軸I,IIとの交点をO1n,O2nとするとき、点P0 の周速度V10,V20は、
10=ω10×〔O1n0
20=ω20×〔O2n0 〕 ・・・(65)
となる。ただし、〔A B〕は点Aを始点、点Bを終点とするベクトルを表す。O1n0 は、平面Sn 上にあるから相対速度Vrs0 に垂直であり、上式からV10にも垂直であるから、平面St に点P0 で、垂直になっている。全く同様にO2n0 は、Vrs0 とV20に垂直であるから、平面St に点P0 で垂直になっている。すなわち、点O1n,P0 ,O2nは一直線上にあるから、これを設計基準垂線Cn (O1nからO2nの方向に正)とする。Cn は点P0 を通る歯車対の中心線である。この関係は点P0 の位置によらない。
点P0 を通る歯面の接平面は相対速度Vrso を含む任意の平面が可能であるから、設計基準垂線Cn を含む接平面WN (平面St に垂直)をもつ歯面は、gt をその接触点の軌跡(接触法線)としている。一般の歯車では点P0 を通る歯面の接平面はこのVrso とCn の作る平面WN に対して適当に傾けられるから、その接触点の軌跡g0 (接触法線)はgt を基準に平面Sn 上で傾けられることになる。そこで、gt を限界軌跡gt と呼ぶことにすれば、その傾き角gt (ψ0 ,φn ;Cs )は、次のように求めることができる。
図24は、平面Sn 上の設計基準垂線Cn およびCn に垂直な限界軌跡gt を描いたものである。点O1n,O2nから平面Sp (平面Sn に垂直)に下ろした垂線の足をO1np ,O2np とすれば、φntは、
Figure 0003733908
と求められる。ただし、各有向線分は座標系Cs の各軸の正方向を正とする。 ハイポイドギアにおいては、vcs2 ,vcs1 ,uc0,zc0は、座標系O1 ,O2 を用いて、
cs2 =E tanΓs /{ tanΓs +tan(Σ−Γs ) }
c0=Esin(Σ−Γs )sinΓs tan ψ0 / sinΣ
c0=(u2p0 +uc0 cosΓs )/ sinΓs
2p0 =−vcs2 / tanε20 (ε20≠0)
cs1 =−Etan(Σ−Γs ) /{ tanΓs +tan(Σ−Γs ) }
c0={u1p0 −uc0cos(Σ−Γs ) }/sin(Σ−Γs )
1p0 =−vcs1 / tan0 (ε10≠0)
と表すことができる。
上式を用いて、式(66)からuc0,zc0,vcs1 ,vcs2 を消去し、整理すれば、
tanφnt= cosΓs /(cosψ0 / tanε20 sinΓs sin ψ0
=cos(Σ−Γs ) /{ cosψ0 / tanε10−sin(Σ−Γs )sinψ0
となる。限界軌跡gt は平面Sp に対して平面Sn 上でφntだけ傾いている。φntはzc 軸の正方向にみて時計方向が正である。
3.3 等価ラックの定義
図25は、相対速度Vrs0 の正方向からみた平面Sn 上の等価ラックを示したものである。点P0 における周速度V10,V20、相対速度Vrs0 =Vs10 −Vs20 、法線速度Vgt0 (限界軌跡gt 方向)、平面Sn 上の接触点の軌跡g0D,g0Cおよびg0D,g0Cをもつ歯面D,Cの接平面WD ,WC (図25では、平面Sn との交線wsD,wsCとで表されている)とが示されている。
周速度V10,V20は、平面St 上で、
10=Vgt0 +Vs10
20=Vgt0 +Vs20
と表すことができる。接平面WD は、平面St と相対速度Vrs0 を共有しているから周速度V10,V20は、
10=(Vg0D +VWsD )+Vs10
20=(Vg0D +VWsD )+Vs20
ここで Vg0D :接平面WD の法線速度(g0D方向)
WsD :接平面WD 上のwsD方向速度
と表すことができる。したがって、点P0 において、常に次の関係
gt0 =Vg0D +VWsD
が成立している。接平面WC についても全く同様にして
gt0 =Vg0C +VWsC
ここで Vg0C :接平面WC の法線速度(g0C方向)
WsC :接平面WC 上のwsC方向速度
と表すことができる。
したがって、法線速度Vg0D ,Vg0C は、Vgt0 のg0D,g0C方向成分として、
g0D =Vgt0 cos(φn0D −φnt)
g0C =Vgt0 cos(φnt−φn0C ) ・・・(67)
として求められる。一方、Vgt0 ,Vg0D ,Vg0C は、
gt0 =Rb2gt(dθ2 /dt)cosψb2gt
g0D =Rb20D(dθ2 /dt)cosψb20D
g0C =Rb20C(dθ2 /dt)cosψb20C
ここで Rb2gt,Rb20D,Rb20C
t ,g0D,g0Cの歯車II(ギア)基礎円筒半径
ψb2gt,ψb20D,ψb20C
t ,g0D,g0Cの歯車II(ギア)作用面上の傾き角
と表すことができる。gt やg0Dおよびg0Cは、静止空間に固定された直線であるから、法線速度Vgt0 ,Vg0D ,Vg0C は常に一定となっている。したがって、g0Dおよびg0C上の任意の点PD ,PC の法線速度Vg0D ,Vg0C は、常に式(67)で表すことができる。
これは歯車の回転によるg0D,g0C上の接触点は、gt を基準線とし、かつ同一接触点の軌跡g0D,g0Cをもち(wsD,wsCを歯形とし)、gt 方向にVgt0 で移動するラックの接触点によって表されていることを意味している。このラックを等価ラックと定義すれば、等価ラックはインボリュート平歯車のラックが一般化されたものである。軸受荷重変動が0の条件を満たすように接触点の軌跡の与えられた全ての歯車(円筒歯車からハイポイドギアまで)の接触の問題はこの等価ラックの接触の問題として扱うことができる。
3.4 等価ラックの諸元
(1) wsD,wsCのCn に対する傾き角(圧力角)
sD,wsCはCn (gt に垂直)に対してそれぞれφn0D −φnt,φnt−φn0C だけ傾いている。φn0D =φn0C =φntが、等価ラックの圧力角0を表している。
(2) ピッチpgt
限界軌跡gt が等価ラックの基準線を示し、そのピッチpgtおよび法線ピッチpn0D ,pn0C は、
Figure 0003733908
と表すことができる。ただし、N2 は歯車IIの歯数である。
(3) 作用歯丈hk
図25において、wsDから1ピッチ(1pg0D)離れた位置をwsDA とし、wsCとwsD,wsDA との交点をRCD,RCDA とすれば、等価ラックの歯先幅が0の限界歯丈hcr(RCDCDH )はRCDCDH がgt に直交していることに注意すれば、
Figure 0003733908
と表すことができる。等価ラック上の工具歯先幅をtcn,クリアランスをcr とすれば、等価ラックの作用歯丈hk (Cn 方向)は、
Figure 0003733908
と表すことができる。
(4) 設計基準点P0 (wsD)に対するwsCの位相角
図25において、Cn 上の点P0 周辺にhk =Q1n2nとなるようにQ1n,Q2nをとり、アデンダムAd2,Ad1を、
0 2n=Ad2 (歯車IIのアデンダム)
0 1n=Ad1=hk −Ad2 (歯車Iのアデンダム)
と定義する。ただし点Q2nは、接触点の軌跡g0D,g0Cの双方が有効な領域の中に含まれるように選ぶこととし、Q2nが点P0 に対してO1n側にあるときAd2≧0とする。
0CとwsCとの交点をPC とすれば、P0 C は、
0 C
=−{Ad2+(hcr−hk)/2}sin(φn0D −φn0C ) /cos(φn0D −φnt)
として求められる。ただし、P0 C はg0Cの方向に正である。
点P0 の回転角θ2 =0であるから、点PC の位相角θ2wsCは、
θ2wsC=(P0 C /pg0C )(2θ2p) ・・・(70)
となる。ここで、2θ2pは歯車IIの角ピッチである。wsCは、wsDに対してθ2w sCだけ遅れた位置にある。これによって点P0 (wsD)に対するwsCの位置が決定したことになる。
sDに対するwsCはの位相角は従来の歯車設計における歯圧の概念(gt上のラックの歯厚をどう決めるか)を一般化したもので、本実施形態では作用歯丈とアデンダムを与えることによって決定する。
4.作用限界点
任意に与えられた接触点の軌跡に対して、数学的には必ず対応する歯形曲線が存在する。しかし、同時に実現できる歯形曲線は、歯車軸を中心とする同一の半径の円弧上において、一つだけしか存在しえない。したがって、歯車軸を軸とする円筒面と接触点軌跡との接点の両側にわたって続く歯形曲線は現実的には存在しない。よって、この接点が接触点軌跡の作用限界点である。また、このことは、作用限界点は、歯車軸から接触点軌跡に対して下ろした垂線の足であること、すなわち歯車軸の正射影であることを示している。
接触点軌跡と歯車軸を軸とする円筒面(半径R2 )との交点をPとすれば、
2 2 =q2 2 +Rb2 2
と表すことができる。接触点Pが作用限界点であるとすれば、点Pで接触点軌跡と円筒面は接しているから、
2 (dR2 /dθ2 ) =q2 (dq2 /dθ2 ) +Rb2(dR2b/dθ2 ) =0
が成立する。式(7)を用いて(dq2 /dθ2 )を消去すれば、
2 (1− dχ2 /dθ2 )/( tanψb2 tanηb2+1)+ dRb2/dθ2 =0
となる。ここで、g0D,g0Cが法線に一致する直線を仮定しているから、dχ2 /dθ2 =0,dR2b/dθ2 =0となり、式は簡単となって、q2 =0となる。
この式をθ2 について解けば、歯車IIに関する作用限界点P2kが求められる。歯車Iに関する作用限界点P1kについても同様にして、
1 (1− dχ1 /dθ1 )/( tanψb1 tanηb1+1)+ dRb1/dθ1 =0
すなわち、上式と同様にして、q1 =0を解けば、作用限界点P1kが求められる。
5.ハイポイドギアにおける設計基準点P0 および平面Sn の傾き角ψ0 の選択 平行な歯車軸を有する歯車対の場合、接触領域の形状は比較的単純であり、常識的な範囲であれば設計基準点P0 の取り方によって、歯面が形成できなくなるということはない。また、与えた設計基準点P0 によって歯面が形成できなかったとしても、これを修正するのは比較的容易である。
しかしながら、後述するように、ハイポイドギアの接触領域は、非常に複雑であり、有効な歯面が形成できなかった場合に、どのように修正すれば有効な歯面を形成できるかは、理解しづらい。以下、ハイポイドギアを効率的に設計する方法、すなわち諸元の選択方法を説明する。
図26は、平面Sn に限界軌跡g2z,gt 、接触点の軌跡g0D,g0Cおよびその等価ラックの関係を示したものである。ここで、限界軌跡g2zは平面Sn とギア軸直平面Z20の交線であり、限界軌跡gt は平面Sn と点P0 の線速度により作られる平面St の交線である。設計基準点P0 の選択は等価ラックの形状を静止空間のどの位置で与えるかを選択することである。本実施形態においては、ピニオンを円筒形状とし、その歯の形状は軸の方向に一定(位相角だけが変化)とする。ギアは小端から大端まで歯の形状は変化する。そして、設計基準点P0 はギアの歯幅中央に選ぶ。すなわち、設計基準点P0 のギア軸に対する半径R20は、
20=(R2h+R2t)/2 ・・・(71)
となる。与えられたギア小端および大端で歯面を成立させるためには、等価ラックの形状または設計基準点P0 の位置を修正する必要がでてくる場合がある。だから、式(71)は、R20の第1近似値を与えていると考えればよい。
設計基準点P0 における相対速度に垂直な平面Sn の傾き各ψ0 は次のように選択する。平面Sn と点P0 を通るギア軸の軸直角平面Z20の交線が限界軌跡g2zであるから、その傾き角g2z(ψ0 ,φn2z ;Cs )およびg2z(φ2z,0;C2 )は、
tanφn2z = sinψ0 /tan Γs
tanφ2z= tanψ0 /sin Γs ・・・(72)
から求められる。本実施形態ではギアの歯先および歯底面は、ギア軸直角平面としているから、ギアの歯が通常の台形形状となるためには、ギア歯面の接平面はギア軸直角平面に対して互いに逆方向に傾かなければならない。したがって、任意の接触点の軌跡g0D,g0Cとは、限界軌跡g2zの周辺にあって、しかもg2zに対して互いに逆方向に傾かなければならない。接触点軌跡g0D,g0Cのギア側の作用限界半径(基礎円半径)Rb20D,Rb20Cは、限界軌跡g2zの基礎円筒半径Rb2z に近いから、ギア歯面がギア小端半径R2t以上で有効であるためには、近似的に次の関係、すなわち
2t≧Rb2z =R20cos(φ2z+ε20)
sin ε20=−vcs2 /R20 ・・・(73)
を満たさなければならない。ただし、かさ歯車の場合は、ε20=0である。
式(72)、(73)からψ0 を求めることができる。i0 が大きければ、式(2)からφ2z≒ψ0 であるから、式(73)は、次式
2t≧R20cos(φ2z+ε20) ・・・(74)
で十分である。R20およびψ0 から設計基準点P0 および限界軌跡g2z,gt が座標系Cs によって平面SH 上に、
0 (uc0,0,zc0;Cs
2z(ψ0 ,φn2z ;Cs
t (ψ0 ,φnt;Cs
c0=E sinΓs cos Γs tan ψ0
c0={√(R20 2 −vcs2 2 )+uc0 cosΓs }/ sinΓs
tan φn1= cosΓs /(−cos ψ0 / tanε20+ sinΓs sin ψ0
と決定される。
以上のようにして決定したR20およびψ0 は第1近似値とみなすべきものであって、この結果得られる歯面の状態によって修正する場合もある。またオフセットやギアの歯幅の要求値が大きすぎる場合、満足できる歯面を与えるR20およびψ0 が存在しないこともある。
座標系O1 ,Oq1,O2 ,Oq2を定めれば、設計基準点P0 および限界軌跡g2z,gt の傾き角を各座標系で表すことができる。
6.接触点の軌跡g0D,g0C
6.1 平面Sn 上のφn0D ,φn0C の変域
ギアの歯に必要な強度を有するようにするため、ギア歯面の接平面wsDとwsCは、ギア軸直角平面Z20に対して互いに逆方向に傾けることが好ましい。よって、接触点軌跡g0D,g0Cは限界軌跡g2zに対して互いに逆方向に傾くように選ばなければならない。つまり、接触点軌跡g0D,g0Cの傾きは、
φn0C ≦φn2z ≦φn0D ・・・(75)
と選ばれる。さらに、接触点軌跡g0D,g0Cは、平面Sn 上で、頂角38°の等価ラックを作るものとすれば、
φn0D −φn0C =38° ・・・(76)
式(75),(76)からφn0D ,φn0C の組み合わせは、
A. φn0C =φn2z , φn0D =φn2z +38°
B. φn2z =φn0D , φn0C =φn2z −38°
C. φn0C =φn2z −19°φn0D =φn2z +19° ・・・(77)
の3通り、またはその周辺で表すことができる。
6.2 インボリュートヘリコイドの接触領域と作用限界線
図27〜30は、ピニオンに限界軌跡g2zを歯面法線とするインボリュートヘリコイド(基礎円筒半径Rb12z、作用面ねじれ角ψb12z)を与えた場合の接触領域を示している。図27は、曲面全体の形状を理解しやすくするための見取り図である。接触領域の式は、ギアにインボリュートヘリコイドを与えた場合と全く同様で、式(61)の添え字2を1に代えることによって求められる。
接触領域は接触点の軌跡とそれにほぼ直交する接触線とによって表されていて、g2z(φ12z =0)から接触点の軌跡がφ1 >0の方向に回転しながらz1 >0の方向に移動して描かれる曲面(接触領域C)と、φ1 <0の方向に回転しながら、z1 >0の方向に移動して描かれる曲面(接触領域D)とから構成されている。インボリュートヘリコイドの歯面法線のうちで接触の条件を満たすものだけが接触法線となり、しかも一本の歯面法線は基礎円筒との接点を挟んで、必ず2カ所で接触法線となりうるから、図28〜30に示すような曲面を描くことになる。
接触点の軌跡のピニオンおよびギアの作用限界点の軌跡(作用限界線)がL1A(ピニオン基礎円筒上にある)およびL2AD ,L2AC で示されている。またギア軸の接触領域への正射影(ギア軸側の作用限界線)が、接触領域とz2 平面との交線と、ギア軸を軸とする円筒面との接点の軌跡L3AD ,L3AC とで示されている。本実施形態では、接触領域はピニオン側に与えられたインボリュートヘリコイドによって決定しているから、ピニオン軸の接触領域への正射影(ピニオン側の作用限界線)はL1Aになっている。円筒歯車では接触領域が平面となり、よって、ピニオン軸およびギア軸の接触領域の正射影は単純な直線となる。しかし、ハイポイドギアの接触領域は、図示されるように、複雑な曲面であるため、ピニオン軸、ギア軸の正射影は、直線とならないばかりか、複数存在し、さらに枝分かれを生じる場合もある。設計基準点P0 に最も近い作用限界線で囲われた領域が実質的に利用できる歯面となる。
さらにギア歯先面をz2h=0(g2zを含むギア軸直角平面)、ギア大端および小端円筒と接触領域の交線がそれぞれR2h,R2tで示されている。
限界軌跡g2zを含みL3AD とL3AC とによって囲まれる接触領域はこの例ではP0 近傍の狭い領域に限られるから、実質的に利用できる歯面は存在しない。したがって、作用限界線、ギアの歯先面、大小端円筒によって囲われる有効接触領域は次に説明するようになる。
有効接触領域Ceff :接触領域C上の作用限界線L3AC 、ギア境界面z2h=0,R2hとによって囲まれる領域(凸凹接触)。
有効接触領域Deff :接触領域D上のギア境界線z2h=0,R2h,R2tとによって囲まれる領域(凸凸接触)。
6.3 接触点の軌跡g0D,g0Cの選択
(1) 式(77)Aの場合
接触点の軌跡g0Cをg2zにとった場合で、有効接触領域Ceff は、図28〜30によって与えられている。有効接触領域Ceff のギア小端側の境界は、作用限界線L3AC によって決まっているから、L3AC よりもギア小端側にはギア歯面は存在しないことになる。したがって、このままの状態で歯面Cを実現するためには、有効接触領域Ceff に合わせてギアの領域(R2t〜R2h)をより大端側に設定し直す必要がある。
(2) 式(77)Bの場合
接触点の軌跡g0Dをg2zにとった場合で、有効接触領域Deff はやはり図28〜30で与えられている。ギアの境界面と接触領域との交線、z2h=0,R2t,R2hは作用限界線L1A,L3AD ,L2AD よりも内側にあるから、式(77)Bの組合わせは与えられたギアの領域内(R2t〜R2h)に有効な歯面Dを実現できる。
図31〜33は、このときの歯面C(φn0c =φn2z−38°)の有効接触領域Ceff を示したものである。g0Cの基礎円筒半径Rb10Cが小さくなったため、L3AC はギア内側に移動子、点P0 の位置で比較すれば図28〜30のCeff に比べてかなり改善されていることがわかる。したがって、g0Cに若干の修正によってギアの領域内(R2t〜R2h)に歯面Cをほぼ実現できることを示している。(3) 式(77)Cの場合
設計基準点P0 の周辺で有効接触領域Ceff (凸凹接触)を確保するためには、上記のようにg0Cをg2zからできるだけ傾けて、ピニオン基礎円筒半径を小さくし、L3AC がギアの小端側(できればその内側)に位置させる必要がある。一方、g0Dをg2zからできるだけ傾けて基礎円筒形を小さくすることは噛み合い率を小さくするだけで、ほとんど意味をもたない。特に自動車用ハイポイドギアのように歯面Dを前進側に利用する場合には、むしろg0Dを、g2zにできるだけ近づけた方が有利である。与えられたギアの領域(R2t〜R2h)で、歯面Dと歯面Cとを同時に成立させるためには、式(77)Bに近い選択(Rb10D>Rb10C)がほとんどの場合に有利である。
インボリュートヘリコイドをピニオンの歯面とする歯車対においては、上記のように凸凹接触側の作用限界線(この場合はL3AC )をギア小端よりも内側にもってくる必要があり、これが非対称圧力角(異なる基礎円筒)を採用する原因となっている。
以上の検討結果から接触点の軌跡g0D,g0Cのそれぞれの傾き角は、
0D(ψ0 ,φn0D =φn2z ;Cs
0C(ψ0 ,φn0C =φn2z −38°;Cs ) ・・・(78)
と決定される。ただし、φn0D は余裕をとってφ n2z よりも若干大きくとる方が実用的である。
7.等価ラックと歯車対の境界面
7.1 等価ラックの諸元
図26には、平面Sn 上の等価ラックの形状が示されている。設計基準点P0 および等価ラックの基準線(限界軌跡)gt および接触点の軌跡g0D,g0Cとが与えられたとき、等価ラックの諸元および設計基準点P0 に対する位置は、次のように求められる。
(1)法線ピッチ pg0D ,pg0C
g0D =2πRb10D cosψb10D/N1 (g0D方向)
g0C =2πRb10C cosψb10C/N1 (g0C方向) ・・・(79)
ここで、N1 :歯車Iの歯数
(2)作用歯丈hk
k =pg0D cos(φnt−φn0C ) /sin(φn0D −φn0C )
−2tcn/{tan(φn0D −φnt) +tan(φnt−φn0C ) } ・・・(80) ここで、tcn:等価ラック上の工具歯先幅
r :クリアランス
(3)ギアのアデンダムAd2
0 2n=Ad2=(u1p0 −Rb10D)sin(φn0D −φnt)/ cosφ10D /cosψb10D
0 1n=Ad1=hk −Ad2 ・・・(81)(4)点P0 (wsD)に対するwsCの位相角θ2wsC
Figure 0003733908
ここで、2θ2p:ギアのピッチ
7.2 ギア歯先面
接触点の軌跡g0D,g0Cは、互いにギア軸直角平面に対して互いに逆方向に傾くから、双方を無理なく実現するためにはギア歯先および歯底面は円錐面であるよりもむしろギア軸直角平面である方が有利である。そこで、点Q2nを通るギア軸直角平面をギア歯先面とする。したがって、
ギア歯先面 z2h=z2Q2n ・・・(83)
ここで、Q2n(u2Q2n,v2Q2n,z2Q2n;O2
となる。
7.3 ピニオン歯先円筒面
ギア歯先面に対応して、ピニオン歯先面を点Q1nを通る円筒面とすれば、ピニオン歯先円筒半径は、
1Q1n=√(u1Q1n 2 +v1Q1n 2 ) ・・・(84)
ここで、Q1Q(u1Q1n,v1Q1n,z1Q1n;O2
となる。
7.4 ピニオン内外端面
ピニオン大小端面はギア大小端円筒面とピニオン軸との交点を通るピニオン直角平面とする。したがって、ピニオン大小端面は、座標系O1 において、
ピニオン大端面 z1h=√(R2h 2 −E2 )−z1c0
ピニオン小端面 z1t=√(R2t 2 −E2 )−z1c0 ・・・(85)
ここで、z1c0 :座標系C1 からO1 への変換定数
8.ピニオンインボリュートヘリコイドの修整
上記のように決定したピニオンインボリュートヘリコイドは、歯面D,Cは互いに異なるリードをもっていて歯先面を円筒とする場合には、例えばピニオン歯先幅が一定にならない、またはピニオン軸方向の位置決めが必要、そして別々に歯面を製作する必要があるなどの実用上の不利益がある。そこで、本実施形態では、歯面D,Cのリードを等しくするため、次のようにピニオンインボリュートヘリコイドを若干修整する。歯面D,Cのリードを等しくする方法は種々考えられるが、ここでは歯面Dは与えられたままとし、歯面Cは次のようにねじれ角ψb10Cだけを調整して(基礎円筒半径Rb10Cはそのまま)歯面Ccとする。
(1) 歯面Ccのねじれ角ψb10CC
歯面Ccのリードは歯面Dのそれに等しいから、ねじれ角ψb10CC は、
tanψb10CC =Rb10C tanψb10D/Rb10D ・・・(86)
より求められる。
(2) 歯車Ccの接触点の軌跡g0CC
設計基準点P0 を通る歯面Cの作用面G10C 上の歯面Ccの接触法線を新たに接触点の軌跡g0CC とすれば、その傾き角は、
0CC (φ10C ,ψb10CC ;O1 ) ・・・(87)
と表される。したがって、座標系Cs で表した、平面SH との交点をP0CC(uc0CC,0,zc0CC;Cs )は、
sinφn0CC=− cosψb10CC sin φ10C sin Γs + sinψb10CC cos Γs
tanψ0CC = tanφ10C cos Γs + tanψb10CC sin Γs / cosφ10C
c0CC=E tanψ0CC cos Γs sin Γs
c0CC=(u1p0 −uc0CC sinΓs )/ cosΓs ・・・(88)
より求められる。
座標系O1 ,Oq1で表せば、
0CC (u1p0 ,−vcs1 ,z1p0CC ;O1
0CC (q1p0C,−Rb10C,z1p0CC ;Oq1
1p0CC =−uc0CC cosΓs +zc0CC sinΓs −z1c0 ・・・(89)
となる。
(3) 歯面Ccの位相角
図34は設計基準点P0 に対する回転角θ1 =0における歯面Cc(g0CC )の接触点PwsCCの関係を示したものである。回転角θ 1 =0のとき歯面Ccは、点P 0 に対して位相角θ 1wsC だけ回転して、しかもg 0CC とは点P wsCC で交わっているから、点P wsCC の点P 0CC に対する位相角θ 1wsCC は、
0CC wsCC=Rb10Cθ1wsC cosψb10CC 1p0CC sinψb10CC
θ1wsCC =2θ1p(P0CwsCC)/pg0CC
g0CC=2πRb10C cosψb10CC /N1 ・・・(90)
ここで、2θ1p:ピニオンの角ピッチ
から求められる。
(4) 接触点の軌跡g0CC の方程式
以上の修整によって最終的に決定する接触点の軌跡g0CC の方程式を座標系O1 ,Oq1で表せば、
Figure 0003733908
となる。設計基準点P0 を通る歯面Ccの法線n0Cは接触法線にはならない。
9. 共役ギア歯面と歯先幅
9.1 共役ギア歯面
図35および図36は、上記のように決定したピニオンインボリュートヘリコイド歯面Dが描く有効接触領域(図35)と創成されたギア共役歯面D(図36)とを描いたものである。R1hはピニオンの歯先円半径を表している。歯面Dの噛み合い率が最大となる接触点の軌跡はg0Dよりも大端側に存在し、約2.1となる。したがって、歯面Dの歯当たりは噛み合い率の最大となる接触点の軌跡に沿って大端側に付けなければならない。
図37および図38は、全く同様にピニオン歯面Ccが描く有効接触領域(図37)と創成されたギア共役歯面Cc(図38)とを描いたものである。選択されたピニオン歯面Ccによって与えられたギアの領域内(R2t〜R2h)に有効接触領域およびギア共役歯面Ccが実現されていることが分かる。接触点の軌跡に沿った噛み合い率は0.9となる。したがって、歯面Ccの歯当たりは歯筋かみ合いを利用するため小端側につけざるを得ない。歯面Ccでは軸受荷重変動0の条件を満たしていない。
9.2 ギア歯先幅
図39は、ギア軸の方向からギアの歯のひとつを観た状態で、上記共役ギア歯面D,Ccとギア軸直角平面Z2h=0(歯先面),Z2h=3,Z2h=6との交線を描いたものである。図中Z2h=0,3,6のそれぞれにおける2本の線の幅がギアの歯厚となる。歯先Z2h=0の歯厚(図中斜線を施した領域)がギア歯先面である。なお、Z2h=0との交線が点P0 で止まっているのは、φn0D ≒φn2z であるから、歯先面での歯面がこれ以上は存在しないことを意味している。
また、図中、前記の平面Z2h=3,6と歯面Ccの交線が、作用限界線L3ACcの左側には延びていないが、これは、この部分に切り下げが生じていることを示している。しかし、7.1項で検討したように、歯先部分ではギア領域内に歯面が実現されている。
一般に円筒ピニオンと円板ギアの組み合わせでは、ギア大端側で歯先尖りを生じるが、本実施形態ではやや大端に向かって歯先幅は狭くはなっているが、ほぼ実用上許容しうる歯先幅は実現している。これは次のような理由による。
本実施形態の場合には、接触点の軌跡g0D,g0Cは互いに限界軌跡g2zの周辺にあってしかもg2zに対して互いに逆方向に傾いているから、g0Dとg0Cのギア側の基礎円筒半径Rb20D,Rb20Cは、g2zの基礎円筒半径Rb2z に近く、その差は小さい。そして、歯面Cを歯面Cc(点P0Cを点P0CC )に修整することによって結果としてその差はさらに小さくなっている。
ピニオンのインボリュートヘリコイドによって描かれる接触点の軌跡g0D,g0Cの周辺の接触領域上の任意の接触点の軌跡をgm とするとき、座標系O1 で与えられたその傾き角gm (φ1m,ψb1m ;O1 )を座標系O2 に変換すれば、その傾き角gm は、
tanφ2m= tanψb10 / cosφ1m
sinψb2m =− cosψb10 sin φ1m ・・・(92)
ただし、Σ=π/2、ψb1m =ψb10 (一定)
と表すことができる。
この設計例のように、i0 が大きく、ψ0 も大きい(60°)場合には、ψb10 は大きく、図28〜30に示すように接触点の軌跡の傾き角φ2mの変化は小さい。したがって、式(92)からψb2m の変化はさらに小さなものとなる。
一方、ギア歯面は、インボリュートヘリコイドの共役歯面であるから、
b2m cos ψb2m =i0 b10 cos ψb10 ・・・(93)
という関係が成り立っている。式(93)からψb2m の変化が小さければ、Rb2m の変化も小さくなる。したがって、ギア歯面D,Ccは近似的に基礎円筒がRb20DとRb20Cであるインボリュートヘリコイドとみなすことができ、その軸直角断面は近似的にインボリュート曲線になっている。Rb20DとRb20Cの差は小さいから二つの近似インボリュート曲線はほぼ平行となっていて、ギアの歯先幅は小端から大端までほぼ一定にある。
以上のように設計変数ψ0 ,φn0D ,φn0C を選ぶことによって従来のフェースギアの欠点であった小端における切り下げと大端における歯先尖りを克服して動力伝達用のインボリュートハイポイドギアを設計することができる。
また、インボリュートヘリコイド歯面を有するハイポイドギアの設計指針として、以下の点が明らかになった。
(1) 設計基準点P0 の半径R20は、ギアの内外半径の中央にとり、点P0 における相対速度に垂直な平面Sn の傾き角ψ0 を、およそ
20=(R2t+R2h)/2
ε20= sin-1(−vcs2 /R20
ψ0 =± cos-1(R2t/R20)−ε20
複号は、+の場合:通常のハイポイドギア(ψ0 ≧−ε20
−の場合:フェースギア(ψ0 <−ε20
となるように決定する。このように定めたψ0 によって、接触領域を構成する個々の接触点の軌跡の作用限界線の半径がギア内半径R2tよりも小さくなる。つまり、作用限界線を歯幅の外側とすることができ、歯幅全体を歯車の噛み合いに利用することが可能となる。
(2) 設計基準点P0 を通るギア軸直角平面Z20と平面Sn との交線を限界軌跡g2zとする。限界軌跡g2zの平面Sn 上の傾き角をg2z(ψ0 ,φn2z ;Cs )とする。点P0 を通る歯面Dの法線(接触点の軌跡)g0Dを限界軌跡g2zの近くに選ぶ。すなわち、g0Dの平面Sn 上の傾き角をg0D(ψ0 ,φn0D ;Cs )とするとき、φn0D を、
φn0D ≒φn2z (φn0D >φn2z
のように選択する。この条件は、点P0 における歯面Dの接触がψ0 選択の結果凸凸接触になっている場合(ψ0 ≧−ε20)である。一方、凸凹接触の場合(ψ0 <−ε20)は反対側歯面Cの法線が上記のように選ばれる。
(3) 点P0 を通る歯面Cの法線(接触点の軌跡)g0Cの平面Sn 上の傾き角をg0C(ψ0 ,φn0C ;Cs )とするとき、φn0C は、
φn0C =φn0D −2φn0R
ただし、2φn0R は等価ラックの頂角であり、30〜50°であり、
通常は38°または40°
のように選ぶ。上記のようにφn0D ,φn0C を選ぶことによって、設計基準点P0 の周囲に、広い有効接触領域を形成することができる。言い換えれば、有効接触領域の境界となる作用限界線の半径がギア内半径R2tよりも小さくすることができる。
(4) (2),(3) で決定された接触点の軌跡g0D,g0Cより定まる基礎円筒の外側にギア歯先面(ギア軸直角平面)を定め、設計基準点P0 の周速度のつくる平面St と平面Sn との交線(限界軌跡gt )を基線とし、g0D,g0Cを歯面法線とする等価ラックを用いて、与えられたピニオンとギアの歯先幅をもつ歯丈およびピニオン歯先面(円筒)を定める。この選択によって、ギア歯先面は、ピニオンの基礎円筒半径Rb10D,Rb10Cの外になる。
(5) 接触点の軌跡g0D,g0Cを歯面法線とするインボリュートヘリコイドをピニオン側またはギア側に与え、さらに相手歯面を創成する。このとき、ピニオン側の歯面Dと歯面Cがほぼ等しいリードとなるように、そしてギア側のg0D,g0Cの接する基礎円筒半径がほぼ等しくなるようにg0Dまたはg0Cを修整する。ピニオンの歯面D,Cを等しいリードに修整することによって、ピニオンの歯先幅が軸方向に一定となる。また、ギア側の基礎円筒半径の修整によって、ギアの歯先幅も半径方向にほぼ等しくなる。
以上のハイポイドギア設計において、図40に示すコンピュータ支援設計システム(CADシステム)により、設計支援がなされるようになっている。このCADシステムは、プロセッサ1およびメモリ2を含むコンピュータ3と入力装置4と、出力装置5と、外部記憶装置6を備えている。外部記憶装置6においては、記録媒体に対してデータの読み書きが行われる。その記録媒体には、前述した歯車設計方法を実施するための歯車設計プログラムがあらかじめ記録されており、必要に応じてプログラムが、ここから読み出され、コンピュータ3により実行される。
このプログラムは、より具体的には、前述したハイポイドギアの設計指針 (1)〜(5) に従って、演算を実行するものである。図41には、演算フローの概略が示されている。まず、ハイポイドギアの設計要求値から、設計基準点P0 の半径R20、平面Sn の傾き角ψ0 を定める(S100)。次に、限界軌跡g2Zから、設計基準点P0 を通る歯面Dの法線(接触点の軌跡)g0Dを定める(S102)。また、設計基準点P0 を通る歯面Cの法線(接触点の軌跡)g0Cを定める(S104)。さらに、接触点の軌跡g0D,g0Cに基づきギア歯先面、ピニオン歯先面を定める(S106)。そして、接触点の軌跡g0D,g0Cを歯面法線とするインボリュートヘリコイドをピニオン側またはギア側の一方にあたえ、さらに相手側を創成する(S108)。形成されたピニオンの歯面C,Dがほぼ等しいリードとなっているかが判定され(S110)、そうでない場合にはステップS102に戻り、接触点軌跡を再度求める。また、形成されたギアの、接触点軌跡g0D,g0Cに接触する基礎円筒半径がほぼ等しくなっているかが判定され(S112)、そうでない場合にはステップS102に戻り接触点軌跡を再度求める。
表1に、計算されたハイポイドギアの諸元を一例を示す。
Figure 0003733908
Figure 0003733908

【図面の簡単な説明】
図1 各座標系の座標軸、歯車の歯面、歯形曲線および接触点の軌跡の概観を示す図である。
図2 各座標系間の関係を説明するための図である。
図3 接触点の軌跡と歯形の求め方を説明するための図である。
図4 接触点の軌跡と歯形曲線を示す図である。
図5 歯車IIに作用する集中荷重と、集中荷重に対する軸受荷重の関係を示す図である。
図6 軸受荷重の変動が0である場合の接触点軌跡を示す図である。
図7 接触点軌跡から歯形曲線を求めるために特定することが必要な5個の変数の値を決定する具体的方法(以下、単に「変数決定方法」という)を説明するために、相対回転軸Sと座標系CS とをそれぞれ示す図である。
図8 上記変数決定方法を説明するために点CS における相対速度VS を示す図である。
図9 上記変数決定方法を説明するために平面SH ,SS ,SP およびSn と共に設計基準点P0 ,相対速度Vrs0 および接触点軌跡g0 をそれぞれ示す図 である。
図10 上記変数決定方法を説明するために点Pにおける相対速度Vrsと接触点の軌跡g0 との関係を示す図である。
図11 上記変数決定方法を説明するために設計基準点P0 における相対速度
rs0 と接触点軌跡g0 とをそれぞれ座標系Cs により示す図である。
図12 上記変数決定方法を説明するために設計基準点P0 と接触点軌跡g0 とをそれぞれ座標系O2 ,Oq2,O1 およびOq1によって示す図である。
図13 上記変数決定方法を説明するために接触点軌跡 0 (ψ0 ,φn0),g0 (φ10,ψb10 )およびg0 (φ20,ψb20 )の関係を示す図である。
図14 上記変数決定方法を説明するために座標系O2 とOr2とによって接触点軌跡g0 と歯形曲線IIとをそれぞれ示す図である。
図15 上記変数決定方法を説明するために座標系O1 r1 とによって接触点軌跡g0 と歯形曲線Iとをそれぞれ示す図である。
図16 歯形曲線から歯面を決定する具体的方法(以下、単に歯面決定方法という)を説明するために、作用面G20を示す図である。
図17 上記歯面決定方法を説明するために回転角θ2 におけるインボリュートヘリコイドを示す図である。
図18 上記歯面決定方法を説明するために共通法線nm (Pm0m )と接触線PPmとをそれぞれ示す図である。
図19 上記歯面決定方法を説明するために作用面G20上における点Qm0(Pm 0),Qm (Pm ),QおよびPの関係を示す図である。
図20 上記歯面決定方法を説明するために座標系O1 とOq1とによって点Pm と共通法線nm とをそれぞれ示す図である。
図21 上記歯面決定方法を説明するために一方の歯面が同一のインボリュートヘリコイドである歯車対の群を示す図である。
図22 ハイポイドギアの諸元を示す図である。
図23 かさ歯車およびハイポイドギアにおける平面SH ,SP ,Sn ,St およびWN の関係を示す図である。
図24 ハイポイドギアの設計基準垂線Cn と限界軌跡gt を示す図である。
図25 平面Sn と等価ラックを示す図である。
図26 接触点軌跡g0D,g0C、限界軌跡g2z,gt および等価ラックの関係を示す図である。
図27 接触領域を示す斜視図である。
図28 ハイポイドギアの有効接触領域と作用限界線の一例を示した図であり、図27のz1 軸に沿って、負の方向に観た図である。
図29 ハイポイドギアの有効接触領域と作用限界線の一例を示した図であり、図27のv1 軸に沿って、負の方向に観た図である。
図30 ハイポイドギアの有効接触領域と作用限界線の一例を示した図であり、図27のu1 軸に沿って、負の方向に観た図である。
図31 ハイポイドギアの有効接触領域と作用限界線の一例を示した図であり、図28に対応し、基礎円筒をより小さくした場合の接触領域を示している。
図32 ハイポイドギアの有効接触領域と作用限界線の一例を示した図であり、図29に対応し、基礎円筒をより小さくした場合の接触領域を示している。
図33 ハイポイドギアの有効接触領域と作用限界線の一例を示した図であり、図30に対応し、基礎円筒をより小さくした場合の接触領域を示している。
図34 設計基準点P0 に対する回転角θ1 =0における歯面Ccの接触点PwsCCの関係を示した図である。
図35 ピニオン歯面Dが描く有効接触領域を示す図である。
図36 図35に示すピニオン歯面Dにより創成されたギア共役歯面Dを示す図である。
図37 ピニオン歯面Ccが描く有効接触領域を示す図である。
図38 図37に示すピニオン歯面Ccにより創成されたギア共役歯面Ccを示す図である。
図39 共役ギア歯面D,Ccとギア軸直角平面(Z2h=0,3,6)の交線を示す図である。
図40 歯車設計を支援するシステムの概略構成図である。
図41 歯車設計の流れを示すフローチャートである。

Claims (12)

  1. ピニオンとギアの歯車対からなり、いずれか一方の歯車が
    インボリュートヘリコイドを歯面とする第1歯車であり、他方がこれと共役な歯面を有する第2歯車であるハイポイドギアを設計する方法であって、
    前記歯車に対して、(a)互いに直交する3座標軸のうちの1つがその歯車の回転軸に一致し、他の2座標軸のうちの1つが、その歯車の回転軸とその歯車が噛み合わされるべき相手歯車の回転軸との共通垂線に一致する静止座標系と、(b)互いに直交する3座標軸のうちの1つが前記静止座標系の3座標軸のうち前記歯車の回転軸に一致するものに一致し、その一致する座標軸を中心にしてその歯車と共に回転するとともに、その歯車の回転角が0であるときに他の2座標軸が前記静止座標系の他の2座標軸にそれぞれ一致する回転座標系と、(c)前記静止座標系を前記歯車の回転軸を中心に、かつ、その静止座標系の前記他の2座標軸のうちの1つが前記歯車の作用面と平行になるように回転変換した媒介座標系とをそれぞれ想定する工程と、
    前記媒介座標系において、前記歯車の回転中、その歯車と前記相手歯車との間で互いに噛み合う歯面対の接触点が描く軌跡と、その歯面対に対する各接触点における法線である共通法線の傾き角とをそれぞれ、前記歯車の回転角を助変数とする第1関数によって記述する工程と、
    前記静止座標系において、前記第1関数と、その静止座標系と前記媒介座標系との相対位置関係とに基づき、前記接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ、前記回転角を助変数とする第2関数によって記述する工程と、
    静止座標系における接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ取得し、前記回転座標系において、前記第2関数と、その回転座標系と前記静止座標系との相対位置関係とに基づき、前記接触点軌跡と共通法線傾き角とをそれぞれ、前記回転角を助変数とする第3関数によって記述される歯形曲線を取得する工程と、
    前記歯形曲線を有する歯面対の接触領域を取得する工程と、
    前記接触領域上に、二つの歯車軸の正射影としての作用限界線を取得し、前記第2歯車の歯面に基づき、前記接触領域上に第2歯車の歯先線を取得し、前記作用限界線と前記歯先線とで挟まれた有効接触領域を取得する工程と、
    前記有効接触領域がギアの歯幅全体にわたって存在することを判定する工程と、
    を有するハイポイドギアの設計方法。
  2. 請求の範囲1に記載のハイポイドギアの設計方法であって、
    前記第1歯車の歯が適切な強度を有するように、当該第1歯車の正転側歯面と逆転側歯面のそれぞれの接触点軌跡相互の角度を取得する工程、
    を有するハイポイドギアの設計方法。
  3. 請求の範囲2に記載のハイポイドギアの設計方法であって、
    前記正転側、逆転側それぞれの歯面の接触点軌跡に基づく歯面を有する等価ラックの諸元を取得する工程と、
    前記等価ラックの諸元に基づき前記第2歯車の正転側歯面と逆転側歯面のそれぞれの歯先線の間隔を取得し、この値が所定の値以上であるかを判定する工程と、
    を有するハイポイドギアの設計方法。
  4. 請求の範囲1に記載のハイポイドギアの設計方法であって、
    前記歯面対を取得する際に、設計基準点をギア歯幅中央付近に設定し、
    前記有効接触領域がギア歯幅の小端側で不足すると判断された場合は、前記設計基準点をギア歯幅の小端側へ移動し、再度有効接触領域を取得する、
    ハイポイドギアの設計方法。
  5. 請求の範囲3に記載のハイポイドギアの設計方法であって、
    前記歯面対を取得する際に、設計基準点をギア歯幅中央付近に設定し、
    前記歯先線の間隔が大端側で不足すると判断された場合は、前記設計基準点をギア歯幅の大端側に移動し、再度有効接触領域を取得する、
    ハイポイドギアの設計方法。
  6. 請求の範囲3に記載のハイポイドギアの設計方法であって、
    前記歯面対を取得する際に、設計基準点をギア歯幅中央付近に設定し、
    前記有効接触領域がギア歯幅の小端側で不足し、かつ前記歯先線の間隔が大端側で不足すると判断された場合は、ギア歯幅を縮小する、
    ハイポイドギアの設計方法。
  7. 請求の範囲1から6のいずれかのハイポイドギアの設計方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  8. 歯車対の一方の歯車の歯面がインボリュートヘリコイド面であるハイポイドギアであって、前記インボリュートヘリコイド歯面を有する歯車の基礎円の半径が正転側と逆転側で異なっている、ハイポイドギア。
  9. 請求の範囲8に記載のハイポイドギアであって、インポリュートヘリコイドを与えた歯車の、正転側と逆転側の歯面のリードが、略等しいハイポイドギア。
  10. 請求の範囲8に記載のハイポイドギアであって、当該ハイポイドギアを構成するピニオンとギアの各々の軸どうしの最短距離であるオフセットEと、ギアの設計点における半径R20との比(E/R20)が0.25より大きい、ハイポイドギア。
  11. 請求の範囲8に記載のハイポイドギアであって、ギア比i0が2.5以上5以下のハイポイドギア。
  12. 請求の範囲8に記載のハイポイドギアであって、ねじれ角ψ0が35°以上70°以下のハイポイドギア。
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